説明

画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラム

【課題】様々な位置姿勢や形状のワークの輪郭線を、精度良く抽出可能な画像処理装置及び画像処理方法並びに画像処理プログラムを提供すること。
【解決手段】撮像部2によりワークWが撮像された元画像を取得する元画像取得部31と、元画像を2値化して元画像からワークの概略領域を特定する領域特定部32と、概略領域を膨張処理する領域膨張処理部34と、膨張処理された概略領域の境界線上に、複数の基準点を設定する基準点設定部35と、元画像から複数のエッジを抽出するエッジ抽出部33と、抽出された複数のエッジと基準点設定部35により設定された複数の基準点とを合成し、複数のエッジの中から複数の基準点のそれぞれに対して予め定められた位置にあるエッジを選択する輪郭エッジ選択部36と、選択された複数のエッジから連続したワークの輪郭線を抽出する輪郭線抽出部37と、を備えた画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが撮像された画像からワークの輪郭線を抽出する画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マシンビジョンの分野においては、エッジ検出フィルタを用いて検出対象となるワークの輪郭線を抽出し、抽出された輪郭線でワークの位置姿勢や寸法等の計測を行うことが実施されている。
【0003】
ここで、検出対象となるワークは、樹脂成型や金属プレス等により形成された部品であることが多く、成型ムラや表面処理のバラつき、傷、汚れ等により表面に微小な凹凸が存在する。そのため、撮像したワークの画像から輪郭線を抽出しようとすると、輪郭線以外のエッジ(以下、「ノイズエッジ」という)が数多く検出され、ノイズエッジによりワークの輪郭線を誤検知してしまう場合がある。
【0004】
これに対しては、輪郭線を含む最小の範囲にエッジ検出フィルタの検出範囲を限定し、輪郭線に相当するエッジのみを抽出するように調整することで、ノイズエッジの抽出を抑制することができる。更に、エッジの形状の特徴や長さからノイズエッジを特定する幾何学的手法やロバスト推定などの統計的手法を用いてノイズエッジを特定し、除去することで、ノイズエッジの抽出を抑制することができる。
【0005】
しかしながら、エッジ検出フィルタの検出範囲に制限を設ける場合、ワークの位置や姿勢の変動を考慮した範囲を設定しなければならず、輪郭線に相当するエッジのみを検出するための範囲設定は困難である。また、幾何学的手法や統計的手法においては、輪郭線に酷似したノイズエッジを検出する場合があり、この場合、ノイズエッジを含む輪郭線情報に基づいた計測になり、精密に輪郭線を抽出できない場合が生じ得る。
【0006】
これに対しては、様々な形状に対応させた複数のテンプレートを揃え、複数のテンプレートをワークの輪郭にマッチングさせながら輪郭を抽出することにより、容易にワークの輪郭を抽出可能な輪郭の抽出方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−16463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の抽出方法においては、対応するテンプレートを有する既知の形状のワークに対しては有効であるが、検出対象の形状がテンプレートに対応しないものや柔軟物等の輪郭線の抽出には用いることができない。
【0009】
そこで、本発明は、様々な位置姿勢や形状のワークの輪郭線を、精度良く抽出可能な画像処理装置及び画像処理方法並びに画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、撮像部により撮像されたワークの元画像を取得する元画像取得手段と、該元画像取得手段により取得された前記元画像を2値化して、該元画像からワークの概略領域を特定する領域特定手段と、該領域特定手段により特定された前記概略領域を膨張処理する膨張処理手段と、前記膨張処理手段により抽出された概略領域の境界線上に、複数の基準点を設定する基準点設定手段と、前記元画像からコントラスト差に基づき、ワークの輪郭に重なるエッジを含む複数のエッジを抽出するエッジ抽出手段と、該エッジ抽出手段により抽出された複数のエッジと前記基準点設定手段により設定された前記複数の基準点とを合成し、前記エッジ抽出手段により抽出された前記複数のエッジの中から前記複数の基準点のそれぞれに対して予め定められた位置にあるエッジを選択するエッジ選択手段と、該エッジ選択手段により選択された複数のエッジから連続したワークの輪郭線を抽出する輪郭線抽出手段と、を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2値化して得られるワークの概略領域を膨張処理して設定する複数の基準点のそれぞれに対して予め定められた位置にあるエッジを選択することで、様々な位置姿勢や形状のワークの輪郭線を精度よく抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットステーションを示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る画像処理装置のハード構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る画像処理装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る画像処理装置による位置姿勢計測処理を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る画像処理装置の輪郭エッジ選択部による輪郭エッジ選択処理を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、本実施形態における画像処理装置による円環部品の輪郭エッジ選択処理を説明するための図であり、(b)は、(a)における(F)の状態を説明するための部分拡大図である。
【図7】(a)は、本実施形態における画像処理装置による不定型部品の輪郭エッジ選択処理を説明するための図であり、(b)は、(a)における(F)の状態を説明するための部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る画像処理装置を有するロボットシステムとしてのロボットステーション1について、図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態に係るロボットステーション1の概略構成について、図1から図3を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るロボットステーション1を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る画像処理装置3のハード構成を示すブロック図である。図3は、本実施形態に係る画像処理装置3の内部構成を示すブロック図である。
【0014】
図1から図3に示すように、ロボットステーション1は、ワークWを撮像する撮像部2と、撮像部2により撮像された元画像からワークWの位置姿勢を計測する画像処理装置3と、ワークWを把持するロボットアーム4,5と、を備えている。本実施形態においては、ロボットアーム4,5は、剛性を持つ支柱により形成されたブース6の架台7の上に配設されており、ロボットアーム4,5の上方に配設された照明8,8の間に撮像部2が配設されている。
【0015】
撮像部2は、架台7の上に搬送あるいは載置された検査対象となるワークWの全体を撮像する。撮像部2は、デジタルカメラ等により構成されており、デジタルカメラの場合には、CCDイメージセンサあるいはCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子と、撮像レンズと、を備えて構成され、撮像によって画像データを取得することができる。
【0016】
図2に示すように、画像処理装置3は、制御部としてのCPU3aを備えており、CPU3aには、バス10に接続されたインターフェイス11を介して、撮像部2、キーボード12及びマウス13が接続されている。キーボード12及びマウス13は、ワークWの輪郭線の抽出や位置姿勢の計測に必要な指定情報、あるいはその他の指示等の入力を可能としている。画像データは、固体撮像素子のピクセル毎に生成された点の集合の情報として取得される。ワークWの輪郭を含む領域を撮像することにより生成された点の集合を認識し、取得した画像データからワークWの輪郭に対応した輪郭線を抽出することができる。輪郭線は点の集合として処理してもよいし、各点同士を連結して、「線」情報に変換して処理したり、後述の複数のエッジから生成される線情報にして処理することもできる。したがって、以下では「輪郭線」の語を点の集合もしくは線情報のいずれの場合も含むものとして説明する。
【0017】
また、CPU3aには、画像を表示するディスプレイ14及び音声を出力するスピーカ15がバスを介して接続されている。ディスプレイ14は、撮像部2により撮像され、CPU3aで所定の処理が行われたワークW等を表示可能としている。スピーカ15は、CPU3aで生成された音声等を出力可能としている。
【0018】
更に、CPU3aには、ROM17及びRAM16がバス10を介して接続されている。ROM16には、画像処理装置3の基本制御に必要なプログラムやワークWの3次元モデル情報等が格納されている。RAM16には、後述する輪郭抽出処理等の作業領域が確保されている。また、バス10には、記録媒体読取部18が接続されており、ワークWの輪郭を抽出する画像処理プログラムやワークWの3次元モデル情報等を記録した記録媒体Dを読み込み、例えばROM17に格納できるようになっている。
【0019】
また、バス10には、通信装置19が接続されており、上述したような記録媒体Dを使用せずに、通信装置19を介してインターネット等から配信される画像処理プログラムやワークWの3次元モデル情報等をダウンロード可能に構成されている。なお、画像処理装置3は、通信装置19を介して端末機からの入力を受信し、この端末機からの要求に基づいて画像処理プログラムを実行(演算)し、実行(演算)結果を端末機に送信するサ−バー機として機能するように構成されてもよい。
【0020】
図3に示すように、画像処理装置3のCPU3aは、元画像取得手段としての元画像取得部31と、領域特定手段としての領域特定部32と、エッジ抽出手段としてのエッジ抽出部33と、膨張処理手段としての領域膨張処理部34と、を備えている。また、画像処理装置3のCPU3aは、基準点設定手段としての基準点設定部35と、エッジ選択手段としての輪郭エッジ選択部36と、輪郭線抽出手段としての輪郭線抽出部37と、位置姿勢計測部38と、を備えている。
【0021】
元画像取得部31は、撮像部2によりワークWが撮像された元画像を取得し、領域特定部32及びエッジ抽出部33に元画像を出力する。領域特定部32は、元画像取得部31から出力された元画像を2値化して、ワークWの概略を構成する概略領域を特定し、特定した概略領域の領域情報を領域膨張処理部34に出力する。エッジ抽出部33は、元画像取得部31から出力された元画像のエッジを抽出する。
【0022】
なお、ここでいうエッジは、ワークW表面に現れるコントラスト差に基づいてこれを繋げてなるコントラスト線として現れるものであり、例えば、ワークWの輪郭に重なるエッジの他に、これ以外を示すエッジ(以下、「偽エッジ」という)を含んでいる。つまり、ここでいうエッジとは、ワークWの輪郭に重なるエッジや偽エッジを含む、元画像に現れる全エッジをいう。
【0023】
領域膨張処理部34は、領域特定部32から出力された領域情報から特定した概略領域を所定量膨張させる膨張処理を行う。なお、所定量膨張させるための膨張処理の回数は、特に決められているものではなく、2値化した概略領域の状態により異なる。基準点設定部35は、膨張処理した概略領域の境界線上に、エッジ検索の起点となる複数の基準点を設定する。
【0024】
輪郭エッジ選択部36は、エッジ抽出部33により抽出された複数のエッジと、基準点設定部35により設定された複数の基準点を合成し、複数の基準点それぞれと最短距離にあるエッジを検索し、これを選択する。輪郭線抽出部37は、輪郭エッジ選択部36により選択された複数のエッジから連続したワークWの輪郭線を抽出する。なお、輪郭エッジ選択部36は、基準点に対して所定の検索範囲内にエッジが存在しない場合には、エッジの検索を終了するように構成されている。
【0025】
位置姿勢計測部38は、ROM16に記憶されたワークWの三次元モデル情報と、輪郭線抽出部37により抽出されたワークWの輪郭線とをフィッティング(照合)させて、ワークWの位置姿勢を計測する(三次元モデルフィッティング処理)。なお、ここでいうワークWの位置姿勢とは、ワークWの位置及びワークWの姿勢を示すものである。
【0026】
ロボットアーム4,5は、6軸制御可能なロボットアームであり、先端部には、各種作業に応じて様々なエンドエフェクタを取り付け可能に形成されている。エンドエフェクタは、人間の手、指に相当する部分である。本実施形態においては、ロボットアーム4,5の一方のロボットアーム4には細かい作業を可能にする小型のエンドエフェクタが装着され、他方のロボットアーム5には比較的大きな部材を扱うエンドエフェクタが装着されている。また、ロボットステーション1内で使用されるコントローラや電源等は、架台7の下部から引き出し可能に収納された電源コントローラボックス9に収納されている。
【0027】
次に、本実施形態に係る画像処理装置3によるワークWの位置姿勢計測処理(位置姿勢計測方法)について、図4から図7(b)を参照しながら説明する。なお、以下においては、撮像部2によりグレースケールにて撮像されたワークWの元画像(以下、「元グレイ画像」という)から位置姿勢を計測する位置姿勢計測処理を用いて説明する。
【0028】
まず、円環形状のワーク(以下、「円環部品」という)の輪郭線を抽出して、円環部品の位置姿勢を計測する位置姿勢計測処理について、図4から図6(b)を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る画像処理装置3による位置姿勢計測処理を示すフローチャートである。図5は、本実施形態に係る画像処理装置3の輪郭エッジ選択部36による輪郭エッジ選択処理を示すフローチャートである。図6(a)は、本実施形態における画像処理装置3による円環部品の輪郭線抽出処理を説明するための図である。図6(b)は、図6(a)における(F)の状態を説明するための部分拡大図である。
【0029】
まず、元画像取得部31により、撮像部2により円環部品を撮像して得られた8bitの元グレイ画像40a(図6(a)に示す(A)参照)を取得する元画像取得処理(元画像取得工程)が行われる(ステップST10)。次に、領域特定部32により、元グレイ画像40aの背景領域と検出対象(円環部品)の領域とを分離している輝度値の差を閾値として、元グレイ画像40aを2値化する領域特定処理(領域特定工程)が行われる。この領域特定処理により、円環部品の概略領域41a(図6(a)に示す(B)参照)が特定される(ステップST20)。このとき、元グレイ画像40aの有するノイズにより生成された孤立点としての空胞領域が存在する場合には、2値化した後に、例えば、モルフォロジー処理等により、空胞領域を消失させておいてもよい。
【0030】
領域特定部32により概略領域41aが特定されると、領域膨張処理部34により概略領域41aの膨張処理(膨張処理工程)が行われる(ステップST30)。領域膨張処理部34は、概略領域41aを所定回数(所定量)膨張処理し、膨張領域42a(図6(a)に示す(C)参照)を生成する。なお、膨張処理は、元グレイ画像40aを2値化した際に概略領域41aに孤立点が発生した場合に、孤立点を消失させて、概略領域41aを平滑化させるのにも有効となる。
【0031】
次に、基準点設定部35により、膨張領域42aの境界線43a,44a上に基準点としての局所エッジの探索点100〜102、200〜202(図6(a)に示す(D)参照)を設定する基準点設定処理(基準点設定工程)が行われる(ステップST40)。探索点100〜102、200〜202は、1隣接画素毎、若しくは所定の間隔で設定される。
【0032】
ここで、元画像取得部31により取得された元グレイ画像40aに対し、エッジ抽出部33により、元グレイ画像40aからエッジ(図6(a)に示す(E)参照)を抽出するエッジ抽出処理(エッジ抽出工程)が行われる(ステップST50)。エッジ抽出処理は、ケニーフィルタやソーベルフィルタ等のエッジ検出により行われる。エッジ抽出処理は、例えば、円環部品の表面上に現れるコントラスト差に基づいて、複数の閾値を設定し、複数の閾値のそれぞれに基づいて仕切られるコントラスト線により現れる線を抽出する。そのため、このエッジには、偽エッジが含まれている。
【0033】
エッジ抽出処理により偽エッジを含む複数のエッジが抽出されると、輪郭エッジ選択部36により、輪郭エッジ選択処理(輪郭エッジ選択工程)が行われる(ステップST60)。輪郭エッジ選択部36は、まず、エッジ抽出部33により抽出された複数のエッジと基準点設定部35により設定された複数の探索点100〜102、200〜202とを合成する(図6(a)に示す(F)参照)。そして、図5に示すように、エッジ抽出部33により抽出された複数のエッジの中から基準点設定部35により設定された複数の探索点100〜102、200〜202のそれぞれと例えば最短距離にあるエッジを探索する(ステップST61)。ここで、図6(b)に示すように、複数の探索点100〜102、200〜202のそれぞれと最短距離にあるエッジがあれば、これを選択し、エッジ情報として登録する(ステップST62、ステップST63)。エッジの選択は、全基準点の探索が終了するまで繰り返し行われる(ステップST64)。なお、エッジを探索するにあたり最短距離にあるエッジを探索する場合を説明したが、ワークの形状によっては基準点に対して予め定められた位置にあるエッジを選択すればよい。例えば、最短距離、基準点からの距離等、エッジの選択の規則を定めて探索の仕方を変えてもよい。以下、他の実施例の場合でも同様である。
【0034】
全基準点のエッジの探索が終了すると、輪郭線抽出部37により、選択された複数の基準点から連続した円環部材の輪郭線を抽出する輪郭線抽出処理(図6(a)に示す(G)参照)が行われる(ステップST70)。例えば、輪郭線抽出部37は、選択されたエッジの端部同士を所定の補正処理により繋げて、連続した輪郭線とする。これにより、円環部材の輪郭線が特定される。
【0035】
輪郭線抽出部37により円環部材の輪郭線が特定されると、次に、位置姿勢計測部38により、円環部材の位置姿勢が計測される(ステップST80)。円環部材の位置姿勢は、ROM16に記憶された円環部材の三次元モデル情報と、輪郭線抽出部37により抽出された円環部材の輪郭線とをフィッティング(三次元モデルフィッティング処理)させることにより行われる。円環部材の三次元モデル情報と円環部材の輪郭線との三次元モデルフィッティング処理により、円環部材の位置姿勢が精密に計測される。なお、ここでは、三次元モデルフィッティング処理の具体的な説明は省略する。
【0036】
次に、非対称形状のワーク(以下、「非対称部品」という)の輪郭線を抽出して、非対称部品の位置姿勢を計測する位置姿勢計測処理について、図4及び図5を援用すると共に、図7(a)及び図7(b)を参照しながら説明する。図7(a)は、本実施形態における画像処理装置3による非対称部品の輪郭エッジ選択処理を説明するための図である。図7(b)は、図7(a)における(F)の状態を説明するための部分拡大図である。なお、ここでいう非対称部品には、例えば、歪形状や不定型部品等も含むものとする。
【0037】
まず、元画像取得部31により、撮像部2により非対称部品を撮像して得られた8bitの元グレイ画像40b(図7(a)に示す(A)参照)を取得する元画像取得処理(元画像取得工程)が行われる(ステップST10)。次に、領域特定部32により、元グレイ画像40bの背景領域と検出対象(非対称部品)の領域とを分離している輝度値の差を閾値として、元グレイ画像40bを2値化する領域特定処理(領域特定工程)が行われる。この領域特定処理により、非対称部品の概略領域41b(図7(a)に示す(B)参照)が特定される(ステップST20)。このとき、元グレイ画像40bの有するノイズにより生成された孤立点としての空胞領域が存在する場合には、2値化した後に、例えば、モルフォロジー処理等により空胞領域を消失させておいてもよい。
【0038】
領域特定部32により概略領域41bが特定されると、領域膨張処理部34により概略領域41bの膨張処理(膨張処理工程)が行われる(ステップST30)。領域膨張処理部34は、概略領域41bを所定回数(所定量)膨張処理し、膨張領域42b(図7(a)に示す(C)参照)を生成する。なお、膨張処理は、元グレイ画像40bを2値化した際に概略領域41bに孤立点が発生した場合に、孤立点を消失させて、概略領域41bを平滑化させるのにも有効となる。
【0039】
次に、基準点設定部35により、膨張領域42bの境界線43b上に基準点としての局所エッジの探索点300〜302(図7(a)に示す(D)参照)を設定する基準点設定処理(基準点設定工程)が行われる(ステップST40)。探索点300〜302は、1隣接画素毎、若しくは所定の間隔で設定される。
【0040】
ここで、元画像取得部31により取得された元グレイ画像40bに対し、エッジ抽出部33により、元グレイ画像40bからエッジ(図7(a)に示す(E)参照)を抽出するエッジ抽出処理(エッジ抽出工程)が行われる(ステップST50)。エッジ抽出処理は、ケニーフィルタやソーベルフィルタ等のエッジ検出により行われる。エッジ抽出処理は、例えば、非対称部品の表面上に現れるコントラスト差に基づいて、複数の閾値を設定し、複数の閾値のそれぞれに基づいて仕切られるコントラスト線により現れる線を抽出する。そのため、このエッジには、偽エッジが含まれている。
【0041】
エッジ抽出処理により偽エッジを含む複数のエッジが抽出されると、輪郭エッジ選択部36により、輪郭エッジ選択処理(輪郭エッジ選択工程)が行われる(ステップST60)。輪郭エッジ選択部36は、まず、エッジ抽出部33により抽出された複数のエッジと基準点設定部35により設定された複数の探索点300〜302とを合成する(図7(a)に示す(F)参照)。そして、図5に示すように、エッジ抽出部33により抽出された複数のエッジの中から基準点設定部35により設定された複数の探索点300〜302のそれぞれと最短距離にあるエッジを探索する(ステップST61)。ここで、図7(b)に示すように、複数の探索点300〜302のそれぞれと最短距離にあるエッジがあれば、これを選択し、エッジ情報として登録する(ステップST62、ステップST63)。エッジの選択は、全基準点の探索が終了するまで繰り返し行われる(ステップST64)。
【0042】
全基準点のエッジの探索が終了すると、輪郭線抽出部37により、選択された複数の基準点から連続した非対称部品の輪郭線を抽出する輪郭線抽出処理(図7(a)に示す(G)参照)が行われる(ステップST70)。例えば、輪郭線抽出部37は、選択されたエッジの端部同士を所定の補正処理により繋げて、連続した輪郭線とする。これにより、非対称部品の輪郭線が特定される。
【0043】
輪郭線抽出部37により非対称部品の輪郭線が特定されると、次に、位置姿勢計測部38により、非対称部品の位置姿勢が計測される(ステップST80)。非対称部品の位置姿勢は、ROM16に記憶された非対称部品の三次元モデル情報と、輪郭線抽出部37により抽出された非対称部品の輪郭線とをフィッティング(三次元モデルフィッティング処理)させることにより行われる。非対称部品の三次元モデル情報と非対称部品の輪郭線との三次元モデルフィッティング処理により、非対称部品の位置姿勢が精密に計測される。なお、ここでは、三次元モデルフィッティング処理の具体的な説明は省略する。
【0044】
以上説明した位置姿勢計測処理(位置姿勢計測方法)は、上記手順に応じたプログラムとして形成し、CPU等のコンピュータで実行するように構成することも可能である。また、このようなプログラムは、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク等の記録媒体、この記録媒体をセットしたコンピュータによりアクセスし、上記プログラムを実行するように構成することも可能である。
【0045】
上述したように、実際のワークの表面は、一見フラットな表面状態であっても、微小な凹凸形状が存在し、照明との相乗作用により、急しゅんな輝度変動が現れ、エッジとして検出される場合がある。そのため、画像のエッジ抽出処理を行うと、輪郭を構成するエッジ以外のノイズエッジが検出される。そして、ノイズエッジを含むエッジ情報を元に、三次元モデルフィッティング処理などの演算を行うと、誤差を含む計測結果となり、正確な位置姿勢の検出ができない場合がある。
【0046】
これに対し、本実施形態に係る画像処理装置3は、2値化などの領域特定処理によりワークの概略領域を特定し、これを膨張処理してワークの輪郭線と膨張処理した概略領域の境界線との間にギャップを与える。そして、膨張処理した概略領域の境界線上に、所定の間隔でエッジの探索点(基準点)を設定し、この探索点から最少距離にあるエッジを、ワークの輪郭を構成するエッジとして選択する。そのため、ノイズエッジの影響を少なくした輪郭線の抽出が可能となる。これにより、輪郭線を精度よく抽出することができる。
【0047】
また、膨張処理した概略領域の境界線上にエッジの探索点を設定し、探索点から最少距離にあるエッジをワークの輪郭を構成するエッジとして選択することで、様々な形状のワークに対応させることができる。
【0048】
更に、ノイズエッジが除去された精度の高いエッジ情報を元に、三次元モデルフィッティング処理などの演算が可能になり、ワークの正確な位置姿勢の検出を行うことができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【0050】
例えば、本実施形態においては、ワークを概略領域として特定し、膨張処理した概略領域との境界に基準点を設定したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、背景を背景領域として特定し、背景領域を収縮させて背景領域との境界に基準点を設けるようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態においては、概略領域41aを所定回数膨張処理して、膨張領域42aを生成したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、膨張処理と収縮処理とを繰り返し行いながら膨張領域42aを生成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ロボットステーション(ロボットシステム)
2 撮像部
3 画像処理装置
3a CPU(制御部)
4 ロボットアーム
5 ロボットアーム
31 元画像取得部(元画像取得手段)
32 領域特定部(領域特定手段)
33 エッジ抽出部(エッジ抽出手段)
34 領域膨張処理部(膨張処理手段)
35 基準点設定部(基準点設定手段)
36 輪郭エッジ選択部(エッジ選択手段)
37 輪郭線抽出部(輪郭線抽出手段)
38 位置姿勢計測部(位置姿勢計測手段)
D 記録媒体
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部により撮像されたワークの元画像を取得する元画像取得手段と、
該元画像取得手段により取得された前記元画像を2値化して、該元画像からワークの概略領域を特定する領域特定手段と、
該領域特定手段により特定された前記概略領域を膨張処理する膨張処理手段と、
前記膨張処理手段により抽出された概略領域の境界線上に、複数の基準点を設定する基準点設定手段と、
前記元画像からコントラスト差に基づき、ワークの輪郭に重なるエッジを含む複数のエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
該エッジ抽出手段により抽出された複数のエッジと前記基準点設定手段により設定された前記複数の基準点とを合成し、前記エッジ抽出手段により抽出された前記複数のエッジの中から前記複数の基準点のそれぞれに対して予め定められた位置にあるエッジを選択するエッジ選択手段と、
該エッジ選択手段により選択された複数のエッジから連続したワークの輪郭線を抽出する輪郭線抽出手段と、を備えた、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記膨張処理手段は、前記概略領域を膨張処理する際に、2値化した際に発生した孤立点を平滑化して消失させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記輪郭線抽出手段により抽出されたワークの輪郭線に、予め記憶された該ワークの三次元モデル情報を照らし合わせて、該ワークの位置姿勢を計測する位置姿勢計測手段と、を備えた、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
搬送されてくるワークを撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像されたワークの位置姿勢を計測する請求項3に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置により計測されたワークの位置姿勢に基づいて、ワークを把持するロボットアームと、を備えた、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項5】
制御部が撮像部により撮像されたワークの元画像を取得する元画像取得工程と、
前記制御部が前記元画像取得工程により取得された前記元画像を2値化して、該元画像からワークの概略領域を特定する領域特定工程と、
前記制御部が前記領域特定工程により特定された前記概略領域を膨張処理する膨張処理工程と、
前記制御部が前記膨張処理工程により膨張処理された概略領域の境界線上に、複数の基準点を設定する基準点設定工程と、
前記制御部が前記元画像からコントラスト差に基づき、ワークの輪郭に重なるエッジを含む複数のエッジを抽出するエッジ抽出工程と、
前記制御部が前記エッジ抽出工程により抽出された複数のエッジと前記基準点設定工程により設定された前記複数の基準点とを合成し、前記エッジ抽出工程により抽出された前記複数のエッジの中から前記複数の基準点のそれぞれに対して予め定められた位置にあるエッジを選択するエッジ選択工程と、
前記制御部が前記エッジ選択工程により選択された複数のエッジから連続したワークの輪郭線を抽出する輪郭線抽出工程と、を備えた、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の各工程をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109691(P2013−109691A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255928(P2011−255928)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】