説明

画像処理装置、画像処理方法

【課題】 撮像装置に取り付けた姿勢センサの、この撮像装置に対する姿勢を、係る姿勢のとりうる頻度を鑑みて求める為の技術を提供すること。
【解決手段】 姿勢センサ1010が取り付けられている撮像装置1020による撮像画像中の指標の撮像画像中における座標値を指標検出部1040が検出する。寄与度算出部1070は、撮像時の撮像装置1020の位置姿勢情報に含まれている姿勢情報が示す姿勢で撮像装置1020が位置する頻度に応じた寄与度を取得する。データ管理部1060は、指標毎に、座標値、撮像画像の撮像時に姿勢センサ1010が計測した姿勢情報、のセットを作成する。較正情報算出部1090は、位置姿勢情報と、パラメータ値と、指標毎に作成したセットと、を用いて、撮像装置1020に対する姿勢センサ1010の姿勢を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置の位置姿勢の補正技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、現実空間と仮想空間との繋ぎ目のない結合を目的とした、複合現実感(MR:Mixed Reality)に関する研究が盛んに行われている。複合現実感の提示を行う画像表示装置は、次のような構成を有する装置によって実現される。即ち、ビデオカメラ等の撮像装置により撮像された現実空間の画像に、撮像装置の位置姿勢に応じて生成された仮想空間の画像(例えばコンピュータグラフィックスにより描画された仮想物体や文字情報等)を重畳描画した画像を表示する装置である。
【0003】
このような画像表示装置の応用としては、市街地を撮像した画像中に含まれる著名な建造物等の名称や案内を仮想空間画像として重畳表示するナビゲーションなどが期待されている。更には、ビルの建設予定地を撮像した画像中に、建設予定のビルのコンピュータグラフィックス映像を重畳表示する景観シミュレーションなども期待されている。
【0004】
これらの応用に対して共通に要求されるのは、現実空間と仮想空間との間の位置合わせをいかに正確に行うかということであり、従来から多くの取り組みが行われてきた。現実空間と仮想空間との間の位置合わせを正確に行うためには、仮想空間の画像を生成するためのカメラパラメータ(内部パラメータ及び外部パラメータ)を、撮像装置のカメラパラメータと常に一致させればよい。撮像装置の内部パラメータが既知であるとすれば、複合現実感における位置合わせの問題は、撮像装置の外部パラメータ、すなわち、現実空間に設定した世界座標系における撮像装置の位置及び姿勢を求める問題に帰結される。
【0005】
現実空間に設定した世界座標系における撮像装置の位置及び姿勢を求める方法として、例えば非特許文献1においては、次のようなことが提案されている。即ち、姿勢センサを用いた撮像装置の姿勢計測と、全地球測位システム等による撮像装置の位置計測との併用によって撮像装置の位置及び姿勢を得ることが提案されている。
【0006】
このような方法に用いられる姿勢センサの代表的なものに、株式会社トキメックのTISS−5−40や、米国InterSense社のInertiaCube2が存在する。これらの姿勢センサは、3軸方向の角速度を検出するジャイロセンサと、3軸方向の加速度を検出する加速度センサによって主に構成されており、それらの計測値の組み合わせによって3軸の姿勢(方位角、ピッチ角、ロール角)を計測する。一般に、ジャイロセンサのみによって得られる角度情報は、ある時刻の姿勢に対する姿勢の相対的な変化のみである。しかし、これらの姿勢センサは、加速度センサによって地球の重力方向を計測することで、傾斜角(すなわち、ピッチ角及びロール角)については重力方向を基準とした絶対角を得ることができることを特徴としている。
【0007】
姿勢センサが出力する姿勢計測値は、世界座標系とは無関係にセンサ自身が定義するセンサ座標系におけるセンサ自身の姿勢を表している。センサ座標系は、例えば上述のTISS−5−40の場合には、重力方向(下方向)をZ軸、このZ軸によって定められるX−Y平面上におけるセンサ初期化時のセンサの正面方向をX軸として定義される。また、InertiaCube2の場合には、重力方向(下方向)をZ軸、このZ軸によって定められるX−Y平面上において、内蔵する地磁気センサがセンサ初期化時に示している北方向をX軸として定義される。このように、姿勢センサによる姿勢計測値は、取得したい情報である世界座標系における計測対象物体(複合現実感を提示する画像表示装置の場合には撮像装置)の姿勢そのものではないことが一般的である。
【0008】
すなわち、姿勢センサによる姿勢計測値をそのまま世界座標系における計測対象物体の姿勢として用いることはできず、何らかの座標変換を行う必要がある。具体的には、センサ自身の姿勢を計測対象物体の姿勢に変換する座標変換(Local Transform)と、センサ座標系における姿勢を世界座標系における姿勢に変換する座標変換(World Transform)が必要となる。
【0009】
World Transformは、センサ座標系の世界座標系に対する姿勢によって定義される変換である。
【0010】
上述したように、センサ座標系は重力の方向に応じて決定される。従って、センサ座標系における重力軸(TISS−5−40やInertiaCube2の場合にはZ軸)が世界座標系においてどのような方向を向いているかは、センサ座標系と世界座標系のそれぞれにおける重力方向の定義から一意に決定可能である。この情報を利用すると、重力軸まわりの回転角に不定性を残した状態で、World Transformを求めることができる。具体的には、世界座標系における鉛直上方向を表す3次元ベクトルlとセンサ座標系における鉛直上方向を示す3次元ベクトルgを用意し、gとlの内積g・lに基づいて両ベクトルの成す角βを算出する。さらに、gとlとの外積により両ベクトルによって構成される平面の法線ベクトルn=g×lを算出する。ベクトルnを回転軸、角度βを回転角とするような座標変換を行う回転行列RWCを算出すると、これが世界座標系に対する重力方向に対応する軸の姿勢となる。この算出方法については、公知の手法によって実現できることが知られている(特許文献1を参照)。よって、World Transformは、重力軸まわりの回転角のみが未知となる。
【0011】
この未知パラメータは、姿勢センサがジャイロセンサであった場合に時間経過と共に発生する、重力軸まわりの姿勢計測値の蓄積誤差である「方位ドリフト誤差」と幾何学的に等価なパラメータである。そこで、未知の値として残された重力軸まわりの回転角を「方位ドリフト誤差の初期値」と解釈すると、このパラメータは、動的に変化するセンサの方位ドリフト誤差の一部とみなすことができる。そして結果的に、World Transformを、(重力軸の関係によって導出可能な)既知の値と考えることができる。また、方位ドリフト誤差の自動計測(自動補正)は、Local Transformが既知であれば、画像情報を利用した公知の手法によって実現できることが知られている(特許文献2を参照)。
【0012】
その既知としたいLocal Transformを算出する方法は、特許文献3に開示されている。係る方法では、現実空間中や対象物体上に世界座標系における配置が既知であるような複数の指標を設置あるいは設定する。そして、既知の情報であるその指標の世界座標系における三次元座標と、撮像装置が撮像した画像内における指標の投影像の座標と、その時点における姿勢センサの出力情報とを利用して、Local Transformを算出する。
【特許文献1】特開2005−107248号公報
【特許文献2】特開2003−203252号公報
【特許文献3】特開2005−326275号公報
【非特許文献1】T.Hollerer,S.Feiner,and J.Pavlik,Situated documentaries:embedding multimedia presentations in the real world,Proc.International Symposium on Wearable Computers’99,pp.79−86,1999.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献3に開示の方法では、姿勢センサを装着した撮像装置の利用時の姿勢情報を考慮したとき、必ずしも有効であるとは言えない。なぜなら、特許文献3に開示の方法は、撮像装置によって撮影された画像情報とその時点における姿勢センサの出力情報を均等に扱い、均等の重みとして計算されるため、較正結果はあらゆる姿勢に対して同程度の推定誤差を含んでいるからである。姿勢センサを装着した撮像装置が利用時にあらゆる姿勢を均等に取る場合には上記方法は有効であるが、上記撮像装置が利用時に取る姿勢の頻度に差異がある場合、得られる較正結果は撮像装置の姿勢によらず同程度の誤差を含むという課題がある。
【0014】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、撮像装置に取り付けた姿勢センサの、この撮像装置に対する姿勢を、係る姿勢のとりうる頻度を鑑みて求める為の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の画像処理装置は以下の構成を備える。
【0016】
即ち、現実空間中に配されている複数の指標のそれぞれについて、当該現実空間中における配置位置を示す配置位置情報を保持する手段と、
姿勢センサが取り付けられている撮像装置を用いて前記現実空間を撮像することで、前記現実空間の画像を取得する手段と、
前記現実空間の画像中における指標を検出し、検出した指標の当該画像中における座標値を求める手段と、
前記現実空間の撮像時に前記姿勢センサが計測した姿勢情報を取得する手段と、
前記現実空間の撮像時における前記撮像装置の位置姿勢情報を取得し、取得した位置姿勢情報に含まれている姿勢情報が示す姿勢で前記撮像装置が位置する頻度に応じたパラメータ値を取得する取得手段と、
前記現実空間の画像中における指標毎に、前記座標値、前記姿勢情報、のセットを作成する作成手段と、
前記位置姿勢情報と、前記パラメータ値と、前記作成手段が指標毎に作成した前記セットと、を用いて、前記撮像装置に対する前記姿勢センサの姿勢を求める計算手段とを備え、
前記計算手段は、
前記位置姿勢情報に基づいて前記配置位置情報が示す配置位置を前記現実空間の画像上に投影した位置と、前記座標値が示す位置と、の誤差を、前記現実空間の画像中におけるそれぞれの指標毎に求め、求めた指標毎の誤差と、パラメータ値と、を用いて、前記撮像装置に対する前記姿勢センサの姿勢を求める
ことを特徴とする。
【0017】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の画像処理方法は以下の構成を備える。
【0018】
即ち、現実空間中に配されている複数の指標のそれぞれについて、当該現実空間中における配置位置を示す配置位置情報を記憶保持する画像処理装置が行う画像処理方法であって、
姿勢センサが取り付けられている撮像装置を用いて前記現実空間を撮像することで、前記現実空間の画像を取得する工程と、
前記現実空間の画像中における指標を検出し、検出した指標の当該画像中における座標値を求める工程と、
前記現実空間の撮像時に前記姿勢センサが計測した姿勢情報を取得する工程と、
前記現実空間の撮像時における前記撮像装置の位置姿勢情報を取得し、取得した位置姿勢情報に含まれている姿勢情報が示す姿勢で前記撮像装置が位置する頻度に応じたパラメータ値を取得する取得工程と、
前記現実空間の画像中における指標毎に、前記座標値、前記姿勢情報、のセットを作成する作成工程と、
前記位置姿勢情報と、前記パラメータ値と、前記作成工程で指標毎に作成した前記セットと、を用いて、前記撮像装置に対する前記姿勢センサの姿勢を求める計算工程とを備え、
前記計算工程では、
前記位置姿勢情報に基づいて前記配置位置情報が示す配置位置を前記現実空間の画像上に投影した位置と、前記座標値が示す位置と、の誤差を、前記現実空間の画像中におけるそれぞれの指標毎に求め、求めた指標毎の誤差と、パラメータ値と、を用いて、前記撮像装置に対する前記姿勢センサの姿勢を求める
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構成によれば、撮像装置に取り付けた姿勢センサの、この撮像装置に対する姿勢を、係る姿勢のとりうる頻度を鑑みて求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照し、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態は、本発明を具体的に実施した場合の一例を示すもので、特許請求の範囲に記載の構成の具体的な実施例の1つである。
【0021】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る画像処理装置は、センサ自身の姿勢を撮像装置の姿勢に変換する為の座標変換情報を取得する。また、本実施形態に係る画像処理装置は、センサの位置姿勢情報の較正結果を確認するために、その較正結果を用いた複合現実感の提示も行う。以下、本実施形態に係る画像処理装置(画像処理方法)について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係るシステムの機能構成例を示すブロック図である。図1に示す如く、現実空間中には複数の指標(P〜P)が配されており、本実施形態に係るシステムは、係る現実空間を撮像するための撮像装置1020と、撮像装置1020による撮像画像を処理する画像処理装置1000とで構成されている。そして更に、撮像装置1020には、画像処理装置1000による校正対象としての姿勢センサ1010が取り付けてある。
【0023】
以下、図1を用いて、本実施形態に係るシステム、及び係るシステムが取り扱う現実空間についてより詳細に説明する。
【0024】
較正対象である姿勢センサ1010は、センサ座標系におけるセンサ自身の姿勢を計測する。姿勢センサ1010は、地球の重力方向を計測可能な傾斜計(不図示)を内部に有しており、センサ座標系の1つの軸(本実施形態ではZ軸)は重力方向とは逆の方向に設定される。姿勢センサ1010が計測した姿勢情報(3自由度の姿勢計測値)は、画像処理装置1000が有する後述のデータ管理部1060からの要求に従って、データ管理部1060へと出力される。
【0025】
また、上述の通り、現実空間中には、撮像装置1020による撮像対象としての指標(基準指標)として、世界座標系における位置が既知である複数個の基準指標Pk(k=1,…,K)が配置されている。ここで、世界座標系とは、現実空間中の1点を原点として定義し、更に、係る原点で互いに直交する3軸を夫々X軸、Y軸、Z軸として定義した座標系である。
【0026】
基準指標Pkは、センサ較正用のデータを取得する時の撮像装置1020によって、少なくとも3個以上の指標が観測されるように設置されていることが望ましい。図1では、4個の基準指標P,P,P,Pが配置されており、そのうちの3個P,P,Pが撮像装置1020の視野内に含まれている状況を示している。
【0027】
基準指標Pkは、例えば、それぞれが異なる色を有する円形状のマーカによって構成してもよいし、それぞれが異なるテクスチャ特徴を有する自然特徴等の特徴点によって構成してもよい。また、ある程度の面積を有する四角形の単色領域によって形成されるような四角形指標を指標として用いることも可能である。撮像装置1020による撮像画像上における投影像の画像座標が検出可能であって、かついずれの指標であるかが識別可能であるような指標であれば、何れの形態であってもよい。
【0028】
撮像装置1020は、このような現実空間を撮像すると、撮像した画像(現実空間の画像、撮像画像)を、画像処理装置1000が有する後述の画像入力部1030に対して出力する。
【0029】
画像入力部1030は、撮像装置1020から受けた撮像画像を、後段の指標検出部1040に対して送出する。
【0030】
指標検出部1040は、画像入力部1030から受けた撮像画像中に位置する基準指標Pkの画像座標uPkを検出する。例えば、基準指標Pkの各々が異なる色を有するマーカによって構成されている場合には、撮像画像上から各々のマーカ色に対応する領域を検出し、係る領域の重心位置を指標の画像座標とする。また、基準指標Pkの各々が異なるテクスチャ特徴を有する特徴点によって構成されている場合には、既知の情報として予め保持している各々の指標のテンプレート画像によるテンプレートマッチングを撮像画像上に施すことにより、指標の画像座標を検出する。また、基準指標として四角形指標を用いる場合は、撮像画像に2値化処理を施した後にラベリングを行い、一定面積以上の領域の中から4つの直線によって形成されているものを指標候補として検出する。さらに、候補領域の中に特定のパターンがあるか否かを判定することによって誤検出を排除することで、最終的な指標の画像座標を求める。また、指標の識別子も取得する。なお、このようにして検出される四角形指標は、ここでは、4つの頂点の個々によって形成される4つの指標であると考える。
【0031】
検出された各々の基準指標Pknの画像座標uPknとその識別子knは、データ管理部1060からの要求に従って、データ管理部1060へと出力される。ここで、n(n=1,,,N)は検出された指標夫々に対するインデックスであり、Nは検出された指標の総数を表している。例えば図1の場合には、N=3であり、識別子k1=1,k2=3,k3=4とこれらに対応する画像座標uPk1,uPk2,uPk3がデータ管理部1060に出力される。
【0032】
位置姿勢入力部1050は、世界座標系における撮像装置1020の位置姿勢情報を求め、求めた位置姿勢情報をデータ管理部1060からの要求に従って、データ管理部1060へと出力する。撮像装置1020の世界座標系における概略位置姿勢には、例えば、6自由度位置姿勢センサを撮像装置1020に装着させ、係るセンサによる出力値を用いてもよい。あるいは、世界座標系における基準指標の世界座標xPkniと、指標検出部1040で得た夫々の基準指標の画像座標と識別子と、をデータ管理部1060から入力する。そして、画像座標と世界座標との対応関係から得られる線形連立方程式を解くことによって、撮像装置1020の世界座標系における位置姿勢情報を推定するようにしても良い。このように、撮像装置1020の世界座標系における位置姿勢を求めるための手法については特には限定しない。
【0033】
データ管理部1060は、指示部1080から「データ取得」の指示(データ取得指示)を受けると、姿勢センサ1010から姿勢計測値を入力し、指標検出部1040から基準指標の画像座標とその識別子を入力する。そして、検出された指標毎に、[姿勢計測値−基準指標の画像座標−基準指標の識別子]のセットデータを作成し、作成した指標毎のセットデータを1つのデータリストに登録する。
【0034】
ここで、姿勢センサ1010から入力される姿勢計測値は、指標検出部1040から入力される基準指標の画像座標を検出した撮像画像の撮像時刻と、同一時刻(略同一時刻を含む)のものである。また、位置姿勢入力部1050が求めた位置姿勢情報は、係る撮影時刻と同一時刻(略同一時刻を含む)における撮像装置1020の位置姿勢を示す。
【0035】
データ管理部1060は、較正情報算出部1090から要求を受けると、生成したデータリストを較正情報算出部1090に出力する。
【0036】
寄与度算出部1070は、位置姿勢入力部1050が求めた位置姿勢情報に含まれている姿勢情報を用いて、パラメータ値としての寄与度ετPknを求める。そして寄与度算出部1070は、求めた寄与度を、先のデータリストに登録する。
【0037】
即ち、上記構成により、1枚の撮像画像から検出された指標毎にセットデータが生成されると共に、係る撮像画像の撮像時の撮像装置1020の姿勢情報に応じて寄与度が特定される。そして、特定された寄与度を、この生成されたそれぞれのセットデータと共に、データリストに登録することができる。
【0038】
寄与度算出部1070には予め、撮像装置1020の姿勢と寄与度との対応関係を示すデータ(関係情報)が登録されている。例えば、撮像装置1020が取りうるある範囲内のそれぞれの姿勢毎に寄与度が設定されている。撮像装置1020を利用する際に頻度の高い姿勢に対応する寄与度ほど高い値となる。このように、撮像装置1020の姿勢と寄与度との対応関係を示すデータは予め作成し、寄与度算出部1070に登録されているものとする。
【0039】
撮像装置1020の利用時の姿勢の頻度は、利用時全てにおける姿勢の頻度としてもよいし、一部の利用時における姿勢の頻度としてもよいし、撮像装置1020と姿勢センサ1010とを共に用いるときの姿勢の頻度としてもよい。
【0040】
ここで、本実施形態に係る寄与度算出部1070が行う寄与度算出処理の詳細について説明する。
【0041】
寄与度ετPknは、撮像装置1020の姿勢(位置姿勢入力部1050によって求められる位置姿勢情報に含まれている姿勢情報)を引数とする重み関数によって算出する。重み関数は正(>0)であり、ロバスト推定手法のひとつであるM推定で用いられるような重み関数(確率論的モデルを作り、観測データとよくあてはまるものにより大きな重み付けを行う関数)であってもよいし、実験的、経験的に求めた関数であってもよい。
【0042】
例えば図2に示す如く、撮像装置1020の姿勢情報を撮像装置1020の水平面に対する傾斜角とし、この傾斜角と撮像装置1020利用時の姿勢の頻度との関係が得られているとする。この場合、頻度が高い姿勢に対しては大きな寄与度を与え、頻度が低い姿勢に対しては小さな寄与度を与えるような重み関数によって寄与度ετPknを定義してもよい。
【0043】
従ってこの場合、寄与度算出部1070は、位置姿勢入力部1050が求めた位置姿勢情報に含まれている姿勢情報を、係る重み関数に入力することで、対応する寄与度を求めることになる。
【0044】
若しくは、次のような方法でもって、撮像装置1020の姿勢情報と撮像装置1020利用時の姿勢の頻度との関係をモデル化しておいてもよい。即ち、傾斜角が0度〜30度であれば寄与度ετPknを0.7、傾斜角が30度〜45度であれば寄与度ετPknを0.5、傾斜角が45度〜90度であれば寄与度ετPknを0.1とする。
【0045】
従ってこの場合、寄与度算出部1070は、位置姿勢入力部1050が求めた位置姿勢情報に含まれている姿勢情報に対応付けられてモデル化されている寄与度を求めることになる。
【0046】
なお、撮像装置1020の水平面に対する傾斜角は公知の技術にて算出できることが知られているため、その説明を省略する。
【0047】
指示部1080は、不図示のオペレータからデータ取得コマンドが入力された時には「データ取得」の指示をデータ管理部1060に対して送出する。また、較正情報算出コマンドが入力されたときには「較正情報算出」の指示を較正情報算出部1090に送信する。指示部1080へのコマンド入力は、例えばキーボードを用いて、特定のコマンドを割り当てたキーを押すことによって行うことができる。また、コマンドの入力は、ディスプレイ上に表示されたGUIを介して等、いずれの方法で行ってもよい。
【0048】
較正情報算出部1090は、指示部1080から「較正情報算出」の指示(算出指示)を受けると、データ管理部1060からデータリストを取得する。そして、取得したデータリストに登録されているそれぞれのセットデータを用いて較正処理(詳しくは後述する)を行い、その結果として得られた較正情報(すなわち、Local Transform)を出力する。また、較正情報の算出過程で得られる、最新の方位ドリフト誤差補正値を出力しても良い。
【0049】
以上説明した構成が、撮像装置1020に装着した姿勢センサ1010の撮像装置1020に対する姿勢情報を取得するための構成である。以下に説明する構成は、上記構成によって得られた較正結果を確認するために複合現実感を提示するための構成である。
【0050】
位置姿勢算出部1100は、姿勢センサ1010から姿勢計測値を入力すると共に、指標検出部1040から基準指標の画像座標とその識別子を入力し、更には、較正情報算出部1090から較正情報を入力する。そしてこれらを用いて、世界座標系における撮像装置1020の位置及び姿勢を算出する。
【0051】
位置姿勢算出部1100は先ず、姿勢センサ1010の方位ドリフト誤差補正値と、世界座標系における撮像装置1020の位置の各々に、初期推定値を設定する。この値は、例えば、初期フレームにおいてはオペレータが対話的に入力してもよいし、前フレームにおける最適化結果を用いてもよい。あるいは、位置姿勢入力部1050における処理工程で得られる値を入力してもよいし、較正情報算出部1090における処理工程で得られる推定値を設定してもよい。続いて、位置姿勢算出部1100は、このようにして設定した姿勢センサ1010の方位ドリフト誤差補正値と、世界座標系における撮像装置1020の位置の推定値とから、世界座標系における撮像装置1020の位置と姿勢を算出する。世界座標系における撮像装置1020の姿勢は、以下の情報に基づいて算出される。
【0052】
・ 較正情報算出部1090から入力する較正情報であるLocal Transform
・ センサ座標系と世界座標系のそれぞれにおける重力方向の定義から一意に決定可能なWorld Transform
・ 方位ドリフト誤差補正値の推定値
・ 姿勢センサ1010から入力される姿勢計測値
そして、その位置と姿勢から算出される基準指標の画像座標の理論値と、基準指標の画像座標の実測値との誤差を、画像ヤコビアンを用いたガウス・ニュートン法のような繰り返し計算によって最小化する。これにより、姿勢センサ1010の方位ドリフト誤差補正値と、世界座標系における撮像装置1020の位置の推定値を最適化する。さらに、得られた推定値から、撮像装置1020の世界座標系における位置及び姿勢を位置姿勢情報として算出し、後段の画像生成部1110に送出する。
【0053】
以上のように、与えられたLocal Transformが正しいという仮定に基づいて姿勢の算出が行われるので、求められた撮像装置1020の姿勢は、Local Transformの正確さを反映したものとなる。
【0054】
画像生成部1110は、位置姿勢算出部1100から位置姿勢情報を受けると、係る位置姿勢情報が示す位置姿勢を有する視点を仮想空間中に設定する。そして係る視点から見た仮想空間の画像を生成する。所定の位置姿勢を有する視点から見た仮想空間の画像を生成するための技術については周知であるので、係る技術についての詳細な説明は省略する。そして画像生成部1110は、生成した仮想空間の画像のデータを、後段の画像合成部1120に対して送出する。
【0055】
画像合成部1120は、撮像装置1020から撮像画像を入力すると共に、画像生成部1110から仮想空間の画像を入力する。そして、撮像画像の上に仮想空間の画像を重畳させた合成画像、即ち、複合現実空間の画像を生成する。撮像画像と仮想空間の画像とを用いて複合現実空間の画像を生成するための処理については周知の技術であるので、これについての説明は省略する。そして画像合成部1120は、生成した複合現実空間の画像のデータを後段の画像表示部1130に送出する。
【0056】
画像表示部1130は、CRTや液晶画面などにより構成されており、画像合成部1120から受けたデータに基づいて、複合現実空間の画像を表示する。係る表示により、オペレータに複合現実感を提示することができる。オペレータは、提示された画像における、現実空間と仮想空間との間の位置合わせの正確さをもって、較正結果の正確さを判断することができる。
【0057】
なお、画像表示部1130は、撮像装置1020と一体化した構成になっていても良い。その場合の撮像装置1020および画像表示部1130は、いわゆる頭部装着型ディスプレイ(Head Mounted Display)となりうる。
【0058】
次に、画像処理装置1000が較正情報を生成するために行う処理について、同処理のフローチャートを示す図3を用いて説明する。
【0059】
先ず、ステップS2010では、指示部1080は、データ取得コマンドがオペレータから入力されたか否かの判定を行う。オペレータは、センサ較正用のデータ取得を行う位置に撮像装置1020を配置した時に、データ取得コマンドを入力する。データ取得コマンドが入力された場合には、指示部1080は、「データ取得」をデータ管理部1060に対して指示すると共に、処理をステップS2020に進める。一方、データ取得コマンドが入力されていない場合には、指示部1080は何等指示をせず、処理をステップS2070に進める。
【0060】
以降の説明では、データ取得コマンドが入力された時刻の識別子として、記号τを使用する。以下では、時刻τが異なるときには、撮像装置1020(視点)の位置及び姿勢が異なっているものとする。すなわち、τは視点の位置姿勢の識別子と考えることもできる)。
【0061】
ステップS2020では、データ管理部1060は、姿勢センサ1010から、時刻τにおいて姿勢センサ1010が計測した3自由度の姿勢計測値を入力する。この姿勢計測値は、3値ベクトルによって内部的に表現される。姿勢を3値によって表現する方法には様々なものが存在するが、ここでは、ベクトルの大きさによって回転角を、ベクトルの向きによって回転軸方向を定義するような3値のベクトルによって表現されているものとする。本実施形態では、ステップS2020においてデータ管理部1060に入力される姿勢計測値を、3次元ベクトルmτ=[ξmτ ψmτ ζmτで表す。
【0062】
ステップS2030では、データ管理部1060は、指標検出部1040から、時刻τにおいて指標検出部1040が検出した基準指標Pknの画像座標uPknとその識別子knを入力する。指標検出部1040は、画像入力部1030を介して撮像装置1020から入力された撮像画像に対して常に基準指標の検出処理を行っている。従って、本ステップの処理により、姿勢センサ1010の姿勢計測値がmτであるときの基準指標の画像座標、識別子を得ることができる。なお、指標検出部1040から入力される情報は、必ずしも全ての基準指標に関するものである必要はなく、その時点で撮像画像上において検出されている基準指標に関する情報であればよい。
【0063】
ステップS2040では、データ管理部1060は、位置姿勢入力部1050から、時刻τにおいて位置姿勢入力部1050が算出した世界座標系における撮像装置1020の位置姿勢情報を入力する。
【0064】
ステップS2050では、データ管理部1060は、寄与度算出部1070が求めた寄与度ετPknを、寄与度算出部1070から入力する。
【0065】
次に、ステップS2060では、データ管理部1060は、入力したデータの組をデータリストLに追加する。具体的には、姿勢センサ1010から入力する姿勢計測値mτをmτi=[ξmτi ψmτi ζmτiとする。また、指標検出部1040から入力する識別子knをkiとする。同じく指標検出部1040から入力する画像座標(座標値)uPknをuPkiとする。また、寄与度算出部1070から入力する寄与度ετPknをετiPkiとする。そして、[mτi,uPki,ki,ετiPki]のセットデータを、i番目のセットデータとしてデータリストLに登録する。ここでi(i=1,,,I)は、データリストLに登録したセットデータの各々に対するインデックスであり、τiはi番目のセットデータが入力された時刻の識別子を表している。また、Iは、データリストに登録したセットデータの総数を表している。
【0066】
以上の処理によって、センサ較正用のデータを取得する動作を行う。
【0067】
以降の処理では、取得したデータを用いて、較正情報を求める。
【0068】
ステップS2070では、データ管理部1060は、現在保持しているデータリストが、較正情報を算出するに足るだけの情報を有しているかどうかの判定を行う。係る判定の結果、有していると判定した場合には処理をステップS2080に進める。一方、有していないと判定した場合には、処理をステップS2010に戻す。
【0069】
データリストが較正情報を算出するに足るだけの情報を有すると判定する為の条件としては、例えば、次のようなものがある。即ち、2フレーム(2つの時刻、2つの視点位置)以上において撮像された、少なくとも異なる3つ以上の基準指標Pkに関するデータが、データリストLに含まれていること、が挙げられる。ただし、入力データの多様性が増すほどに導出される較正情報の精度は向上するので、より多くのデータを要求するように条件を設定してもよい。
【0070】
ステップS2080では、指示部1080は、較正情報算出コマンドがオペレータから入力されたか否かの判定を行う。較正情報算出コマンドが入力された場合には、指示部1080は「較正情報算出」をデータ管理部1060に指示すると共に、ステップS2090に処理を進める。一方、較正情報算出コマンドが入力されていない場合には、指示部1080は何等指示をせず、処理をステップS2010に戻す。
【0071】
較正情報算出部1090は、求めるべき較正情報、すなわちLocal Transformを3値ベクトルωSC=[ξ ψ ζ]として扱う。また、較正情報算出部1090は、Local Transformを較正する過程で、各時刻τにおける世界座標系における撮像装置1020の位置tWCτ=[xtτtτtτ(未知の値)を内部で利用する。さらにまた、較正情報算出部1090は、Local Transformを較正する過程で、各時刻τにおける方位ドリフト誤差の補正値ατ(未知の値)も内部で利用する。以下では、これらの未知パラメータを(3+4T)次元の状態ベクトルs=[ωSCWC1 α … tWCτ ατ … tWCT αで記述する。ここでTは、データリスト中に含まれる、異なるフレーム(異なる時刻、異なる視点位置)の数を表している。
【0072】
ステップS2090では、較正情報算出部1090は、状態ベクトルsに適当な初期値を与える。初期値は、オペレータによる対話的な設定操作等によって予め与えておく。あるいは、tWCτの初期値に関しては、位置姿勢入力部1050にて算出した撮像装置1020の位置情報を利用しても良い。ωSCの初期値に関しては、特許文献1に示された方法によって、おおよそ求めた値を利用しても良い。また、ατiの初期値に関しては、ωSCの初期値を用いて、特願2003−341630号公報に示された方法によって、ある時刻におおよそ求めた値を利用しても良い。
【0073】
ステップS2100では、較正情報算出部1090は、次のような処理を行う。即ち、データリストL中の各セットデータ[mτiPki ki](i=1,2,…,I)、状態ベクトルsから、全てのiに対して、各基準指標Pkiの画像座標の理論値uPki’=[uxiPki’,uyiPki’]を算出する。ここで、基準指標の画像座標の理論値とは、世界座標系における撮像装置1020の位置および姿勢が与えられた時の、世界座標系における位置が既知の基準指標が撮像画像中に見えるべき位置(座標)を指す。即ち、撮像装置1020の位置姿勢情報に基づいて、現実空間中における指標の配置位置を撮像画像上に投影した位置である。
【0074】
ここで、時刻τiにおける世界座標系における撮像装置1020の姿勢は、次のような情報に基づいて算出することができる。
【0075】
・ センサ座標系における姿勢を世界座標系における姿勢に変換する座標変換(World Transform)
・ センサ座標系における姿勢センサ1010自身の姿勢(姿勢センサ1010の姿勢計測値:mτi
・ 方位ドリフト誤差の補正値ατi
・ 姿勢センサ1010自身の姿勢を計測対象物体の姿勢に変換する座標変換(Local Transform:ωSC
従って、理論値uPki’の算出は、世界座標系における撮像装置1020の位置tWCτiと世界座標系における撮像装置1020の姿勢の算出に関与するωSC及びατiからなるsを変数とした以下の式に基づいて行われる。
【0076】
【数1】

【0077】
具体的には、関数Fτi()は、以下の式2,式3によって構成されている。
【0078】
【数2】

【0079】
【数3】

【0080】
式2は、i番目のセットデータを取得した時(姿勢センサ1010の姿勢計測値がmτiである時)の世界座標系における位置がxWPkiである基準指標Pkiの、カメラ座標における位置ベクトルxCiPkiを、sから求める式である。ここで、s=[ωSCWC1 α … tWCτi ατi … tWCT αである。また、カメラ座標系とは、撮像装置1020上の1点を原点として定義し、更に係る原点で互いに直交する3軸を夫々X軸、Y軸、Z軸として定義した座標系である。
【0081】
式3は、xCiPkiから基準指標Pkiの撮像画像上の座標uPki’を求める式である。
【0082】
式3においてfx、fyはそれぞれ、x軸方向及びy軸方向における撮像装置1020の焦点距離であり、較正情報算出部1090が既知の値として予め保持している。更に、現実空間中に配されている複数の指標のそれぞれについて、現実空間中における配置位置を示す配置位置情報についても、較正情報算出部1090が既知の情報として保持しているものとする。
【0083】
また、式2において、RWTは、センサ座標系と世界座標系とのそれぞれにおける重力方向の定義から一意に決定可能なパラメータである、World Transformを表す3X3の回転行列であり、既知の値として較正情報算出部1090が予め保持している。
【0084】
ΔR(ατi)は、方位角方向にατiだけの回転(方位ドリフト誤差補正)を加える3X3の回転行列を表しており、以下の式4によって定義される。
【0085】
【数4】

【0086】
ここで、l=(l,l,l)は、世界座標系における鉛直上方向(地球の重力の反対方向)を表す既知のベクトルを表しており、較正情報算出部1090が予め保持している。
【0087】
TSτiは、i番目のセットデータを取得した時(時刻τi)における姿勢計測値に相当する3×3の回転行列であり、mτiに応じて以下の式5によって定義される。
【0088】
【数5】

【0089】
ただし、θは以下の式6に従う。
【0090】
【数6】

【0091】
SC(ωSC)は、ωSC=[ξ ψ ζ]によって決定されるLocal Transformを表す3×3の回転行列であり、式5における添え字mτiを取り除いた式によって定義される。
【0092】
ステップS2110にて較正情報算出部1090は全てのiに対して、データリストL中の各セットデータに含まれる基準指標Pkiの実際の画像座標uPkiと、対応する画像座標の理論値uPki’との誤差ΔuPkiを以下の式7によって算出する。
【0093】
【数7】

【0094】
ステップS2120にて較正情報算出部1090は全てのiに対して、状態ベクトルsに関する画像ヤコビアンJuisPki(=∂uiPki/∂s)を算出する。係る画像ヤコビアンJuisPkiとは即ち、式1の関数Fτi()を状態ベクトルsの各要素で偏微分した解を各要素に持つ2行×(3+4T)列のヤコビ行列のことである。
【0095】
具体的には、式3の右辺をカメラ座標系上の位置ベクトルxCiPkiの各要素で偏微分した解を各要素に持つ2行×3列のヤコビ行列JuixCiPki(=∂uiPki/∂xCiPki)を算出する。そして更に、式2の右辺を状態ベクトルsの各要素で偏微分した解を各要素に持つ3行×(3+4T)列のヤコビ行列JxCisPki(=∂xCiPki/∂s)を算出する。そして最後に、以下の式8によってJuisPkiを算出する。
【0096】
【数8】

【0097】
ステップS2130にて較正情報算出部1090は、上記処理にて求めた全てのiに対する誤差ΔuPkiとヤコビ行列JuisPki、ステップS2060でデータリストLに追加した各基準指標の寄与度ετiPkiに基づいて、sの補正値Δsを求める。以下、補正値Δsの算出処理について説明する。
【0098】
はじめに、以下の式9に示す如く、全てのiに対する誤差ΔuiPkiを垂直に並べた(2×I)次元の誤差ベクトルUを作成する。
【0099】
【数9】

【0100】
また、以下の式10に示す如く、各基準指標のヤコビ行列JuisPkiを垂直に並べた(2×I)行×(3+4T)列の行列Φを作成する。
【0101】
【数10】

【0102】
次に、各基準指標Pkiに対応する要素(基準指標毎にx座標とy座標の2要素を有する)に対して、この基準指標Pkiの寄与度ετiPkiを対角成分に持つような(2×I)行×(2×I)列の対角行列Wを以下の式11に示す如く作成する。
【0103】
【数11】

【0104】
行列Wを重みとした最小二乗法によってΔsを求めることを考えると、以下の正規方程式12が得られる。
【0105】
【数12】

【0106】
従って、Δsを以下の式13より算出する。
【0107】
【数13】

【0108】
ここで、Δsは(3+4T)次元ベクトルであるので、3個以上の基準指標を2枚の撮像画像上で検出すれば、Δsを求めることができる(未知パラメータ数3+4×2=11<式数2×3×2=12)。このように、撮像装置1020の取り得る姿勢に基づく寄与度を表す行列Wを重みとしてΔsの算出に利用することで、撮像装置1020の取り得る姿勢に応じて各基準指標のΔsの算出への寄与度が変化するという効果を得ることができる。
【0109】
次に、ステップS2140において、較正情報算出部1090は、ステップS2130において算出した補正値Δsを用いて、以下の式14に従ってsを補正し、得られた値を新たなsとする。
【0110】
【数14】

【0111】
次に、ステップS2150において、較正情報算出部1090は、誤差ベクトルUが予め定めた閾値より小さいかどうか、あるいは、補正値Δsが予め定めた閾値より小さいかどうかといった何らかの判断基準を用いて、計算が収束しているか否かの判定を行う。係る判定の結果、計算が収束していない場合には、補正後の状態ベクトルsを初期値として用いて再度、ステップS2100以降の処理を行う。一方、計算が収束した場合には、処理をステップS2160に進める。
【0112】
ステップS2160では、較正情報算出部1090は、得られた状態ベクトルsに含まれるωSCを、Local Transformを示すパラメータとして出力する。また、最新の方位ドリフト誤差補正値を示すパラメータとして、αを一緒に出力しても良いし、撮像装置1020の位置tWCTをあわせて出力しても良い。
【0113】
最後にステップS2170では、較正処理を終了するか否かの判定が行われる。係る判定は、オペレータが、画像処理装置1000に対して、較正処理の終了を指示部1080を用いて指示したか否かを判定することで行われるものとするが、ほかの判定方法を用いても良い。係る判定の結果、較正処理を終了する場合には処理を終了させ、終了しない場合(較正処理の継続(再較正)を指示した場合)には、再びステップS2010へと処理を戻し、データ取得コマンドの入力を待つ。
【0114】
以上説明した、ステップS2090以降の処理は、要約すると次のような処理となる。即ち、位置姿勢入力部1050が求めた位置姿勢情報に基づいて現実空間中における指標の配置位置を撮像画像上に投影した位置と、この指標の撮像画像上における検出画像座標と、の誤差を、撮像画像中におけるそれぞれの指標毎に求める。そして、指標毎の誤差と、寄与度と、を用いて、撮像装置1020に対する姿勢センサ1010の姿勢を求める。
【0115】
以上の処理によって、撮像装置1020に装着した姿勢センサ1010の、撮像装置1020に対する姿勢を取得することができる。なお、本実施形態では更に、上記の処理以降に、較正されたLocal Transformおよび最新の方位ドリフト誤差を示すパラメータの検証工程を行う。係る検証工程とは、これらのパラメータを用いて、位置姿勢算出部1100、画像生成部1110、画像合成部1120、画像表示部1130を利用した複合現実空間の画像の提示である。その処理については、公知の技術であるので、その説明は省略する。
【0116】
そして、本実施形態によれば、撮像装置1020の姿勢を考慮して姿勢センサ1010の撮像装置1020に対する姿勢の推定を行うので、姿勢センサ1010を装着した撮像装置1020を利用する状況に対して、高精度な較正結果を取得することができる。
【0117】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、基準指標の画像座標に関わる特徴量として、点特徴、すなわち、指標の投影像を代表する1点の画像座標を用いていた。また、基準指標Pとして、このような点特徴を抽出可能な指標を用いていた。しかし、基準指標の種類や基準指標の画像座標に関わる特徴量の種類は、これに限定されるものではない。
【0118】
例えば、公知の位置姿勢計測装置(例えば、”D.G.Lowe:Fitting parameterized three−dimensional models to images,IEEE Transactions on PAMI,vol.13,no.5,pp.441−450,1991.”を参照)に用いられているような線特徴を基準指標の画像座標に関わる特徴量として用いて、線特徴を抽出可能な指標(以下、これを線指標と呼ぶ)を基準指標として用いてもよい。
【0119】
例えば、直線の原点からの距離を誤差評価のための基準とし、画像からの検出値dと状態ベクトルsからの推定値dから算出する誤差Δdによって誤差ベクトルUを構成する。そして、dの算出式を状態ベクトルsの各要素で偏微分した解を各要素に持つ1行×(3+4T)列のヤコビ行列Jds(=∂d/∂s)によって行列Φを構成する。これにより、第1の実施形態と同様な枠組みによって位置及び姿勢の計測を行うことが出来る。もちろん、線指標と点指標を併用してもよい。
【0120】
[第3の実施形態]
図1に示した画像処理装置1000を構成する各部はハードウェアでもって構成しても良いが、その一部若しくは全部をソフトウェアでもって構成しても良い。ここで、画像処理装置1000を構成する構成要素には、データを保持、管理する主体として説明したものもある。しかし、このような構成要素をソフトウェアで構成する場合、係る構成要素が保持、管理するものとして説明したデータは、この構成要素に対応するソフトウェアを実行するコンピュータが有するメモリに格納し、この構成要素が係るデータを管理すればよい。
【0121】
図4は、画像処理装置1000に適用可能なコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0122】
CPU401は、RAM402やROM403に格納されているコンピュータプログラム(プログラム)やデータを用いて、コンピュータ全体の制御を行うと共に、本コンピュータを適用する画像処理装置1000が行うものとして上述した各処理を実行する。
【0123】
RAM402は、外部記憶装置406からロードされたプログラムやデータを一時的に記憶するためのエリア、I/F(インターフェース)407を介して外部から受信したデータなどを一時的に記憶するためのエリアを有する。更に、RAM402は、CPU401が各処理を実行する際に用いるワークエリアも有する。このように、RAM402は各種のエリアを適宜提供することができる。
【0124】
ROM403には、本コンピュータの設定データや、ブートプログラムなどが格納されている。
【0125】
操作部404は、キーボードやマウスなどにより構成されており、本コンピュータのユーザが操作することで、各種の指示をCPU401に対して入力することができる。なお、図1に示した指示部1080がソフトウェアにより構成される場合には、指示部1080は、操作部404に対する操作指示をデータ管理部1060や較正情報算出部1090に送出するためのものとなる。
【0126】
表示部405は、CRTや液晶画面などにより構成されており、CPU401による処理結果を画像や文字などでもって表示することができる。なお、表示部405は、図1に示した画像表示部1130に相当する。
【0127】
外部記憶装置406は、ハードディスクドライブ装置に代表される大容量情報記憶装置である。外部記憶装置406には、OS(オペレーティングシステム)や、画像処理装置1000が行うものとして上述した各処理をCPU401に実行させるためのプログラムやデータなどが保存されている。
【0128】
係るプログラムには、図1に示した以下の各部に対応する機能をCPU401に実現させるためのプログラムが含まれている。即ち、位置姿勢入力部1050、寄与度算出部1070、指標検出部1040、データ管理部1060、指示部1080、較正情報算出部1090、位置姿勢算出部1100、画像生成部1110、画像合成部1120のそれぞれである。
【0129】
また、外部記憶装置406に保存されているデータには、上述の説明において既知の情報として説明したものや、図1に示した構成用件によっては、係る構成用件が保存、管理しているものとして説明したデータが含まれている。
【0130】
外部記憶装置406に保存されているプログラムやデータは、CPU401による制御に従って適宜RAM402にロードされ、CPU401による処理対象となる。
【0131】
I/F407には、図1に示した姿勢センサ1010や撮像装置1020が接続され、本コンピュータは係るI/F407を介して姿勢センサ1010からの姿勢計測値を取得したり、撮像装置1020から撮像画像を取得したりする。
【0132】
408は上述の各部を繋ぐバスである。
【0133】
なお、画像処理装置1000に適用可能なコンピュータのハードウェア構成については図4に示した構成に限定するものではなく、様々な構成が考え得る。
【0134】
[その他の実施形態]
また、本発明の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。係る記憶媒体は言うまでもなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0135】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行う。その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0136】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれたとする。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0137】
本発明を上記記録媒体に適用する場合、その記録媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシステムの機能構成例を示すブロック図である。
【図2】撮像装置1020の傾斜角と、その頻度と、の関係を示す図である。
【図3】画像処理装置1000が較正情報を生成するために行う処理のフローチャートである。
【図4】画像処理装置1000に適用可能なコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間中に配されている複数の指標のそれぞれについて、当該現実空間中における配置位置を示す配置位置情報を保持する手段と、
姿勢センサが取り付けられている撮像装置を用いて前記現実空間を撮像することで、前記現実空間の画像を取得する手段と、
前記現実空間の画像中における指標を検出し、検出した指標の当該画像中における座標値を求める手段と、
前記現実空間の撮像時に前記姿勢センサが計測した姿勢情報を取得する手段と、
前記現実空間の撮像時における前記撮像装置の位置姿勢情報を取得し、取得した位置姿勢情報に含まれている姿勢情報が示す姿勢で前記撮像装置が位置する頻度に応じたパラメータ値を取得する取得手段と、
前記現実空間の画像中における指標毎に、前記座標値、前記姿勢情報、のセットを作成する作成手段と、
前記位置姿勢情報と、前記パラメータ値と、前記作成手段が指標毎に作成した前記セットと、を用いて、前記撮像装置に対する前記姿勢センサの姿勢を求める計算手段とを備え、
前記計算手段は、
前記位置姿勢情報に基づいて前記配置位置情報が示す配置位置を前記現実空間の画像上に投影した位置と、前記座標値が示す位置と、の誤差を、前記現実空間の画像中におけるそれぞれの指標毎に求め、求めた指標毎の誤差と、パラメータ値と、を用いて、前記撮像装置に対する前記姿勢センサの姿勢を求める
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
更に、
データ取得指示を入力する手段と、
算出指示を入力する手段とを備え、
前記座標を求める手段、前記取得手段、前記作成手段、は、前記データ取得指示が入力された場合に動作し、
前記計算手段は、前記算出指示が入力された場合に動作する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記撮像装置が取りうる姿勢のそれぞれについて、高い頻度の姿勢ほど高いパラメータ値が割り当てられており、
前記取得手段は、前記現実空間の撮像時における前記撮像装置の位置姿勢情報を取得すると、取得した位置姿勢情報に含まれている姿勢情報に割り当てられているパラメータ値を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
現実空間中に配されている複数の指標のそれぞれについて、当該現実空間中における配置位置を示す配置位置情報を保持する画像処理装置が行う画像処理方法であって、
姿勢センサが取り付けられている撮像装置を用いて前記現実空間を撮像することで、前記現実空間の画像を取得する工程と、
前記現実空間の画像中における指標を検出し、検出した指標の当該画像中における座標値を求める工程と、
前記現実空間の撮像時に前記姿勢センサが計測した姿勢情報を取得する工程と、
前記現実空間の撮像時における前記撮像装置の位置姿勢情報を取得し、取得した位置姿勢情報に含まれている姿勢情報が示す姿勢で前記撮像装置が位置する頻度に応じたパラメータ値を取得する取得工程と、
前記現実空間の画像中における指標毎に、前記座標値、前記姿勢情報、のセットを作成する作成工程と、
前記位置姿勢情報と、前記パラメータ値と、前記作成工程で指標毎に作成した前記セットと、を用いて、前記撮像装置に対する前記姿勢センサの姿勢を求める計算工程とを備え、
前記計算工程では、
前記位置姿勢情報に基づいて前記配置位置情報が示す配置位置を前記現実空間の画像上に投影した位置と、前記座標値が示す位置と、の誤差を、前記現実空間の画像中におけるそれぞれの指標毎に求め、求めた指標毎の誤差と、パラメータ値と、を用いて、前記撮像装置に対する前記姿勢センサの姿勢を求める
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
コンピュータに請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置が有する各手段として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−186288(P2009−186288A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25731(P2008−25731)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】