説明

画像処理装置、画像処理方法

【課題】 輝度に関する統計情報に基づいてエッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定し、回路規模と処理時間を増大させない画像処理装置等を提供できる。
【解決手段】 入力画像データ200のエッジを保存しながら平滑化するエッジ保存型平滑化フィルターの処理を行い、その処理後の画像データに基づく信号を出力するフィルター処理部40と、入力画像データ200を統計的に解析して輝度に関する統計情報202を出力する統計解析部20と、統計情報202に基づいて、エッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定する係数設定部30と、を含む画像処理装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置において高画質の画像を得るためにはノイズ除去の処理が必要である。例えば、一般に入力画像データには撮像時に生じる暗電流や熱雑音等のノイズが含まれ、エッジ強調処理等によってもノイズが生じる場合がある。また、例えばデータが圧縮された画像では、ブロック単位の処理で生じるブロックノイズや高周波成分除去によるモスキートノイズなどを低減する処理が必要である。しかし、単純にローパスフィルターを用いてノイズを低減すると、画像の知覚に必要なエッジまでも同時に失われて画質が劣化する。そこで、エッジを保存しながら平滑化するエッジ保存型平滑化フィルターを用いることが好ましい。
【0003】
エッジ保存型平滑化フィルターとしては例えばεフィルターがある。εフィルターでは、注目画素との信号差が閾値(ε)以下となる周辺画素をフィルター処理に用いることで、エッジを保存しつつノイズリダクション(ノイズの低減)を行う。このときの閾値εはノイズリダクション強度であり、εの値の選択によりフィルターの効果が左右される。特許文献1の発明では、画像の信号レベルとノイズレベルとの相関が高いRGB空間においてノイズレベルを予測してεを定める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−100302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特に画像処理システムの後段に配置された画像処理装置ではRGB各色の信号が入力されるとは限らない。例えば、エッジ強調処理は輝度に基づいて行われる場合がある。その後にエッジ強調処理により生じたノイズをεフィルターで効果的に除去しようとする場合に、特許文献1の発明では、YUV形式の信号をRGB形式に変換することを要する。このことは、回路規模と処理時間を増大させてしまう。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、輝度に関する統計情報に基づいてエッジ保存型平滑化フィルターの係数が設定されるため、回路規模と処理時間を増大させない画像処理装置等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、入力画像データのエッジを保存しながら平滑化するエッジ保存型平滑化フィルターの処理を行い、その処理後の画像データに基づく信号を出力するフィルター処理部と、前記入力画像データを統計的に解析して輝度に関する統計情報を出力する統計解析部と、前記統計情報に基づいて、前記エッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定する係数設定部と、を含む。
【0008】
本発明によれば、統計解析部からの輝度に関する統計情報に基づいて、係数設定部がフィルター処理部におけるエッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定する。このとき、画像データを例えばRGB空間へと変換する作業を要しないので、回路規模や処理時間を増大させない画像処理装置を提供できる。
【0009】
(2)この画像処理装置において、前記統計解析部は、前記入力画像データの輝度の平均値を前記統計情報として出力してもよい。
【0010】
本発明によれば、統計解析部からの輝度に関する統計情報は前記入力画像データの輝度の平均値である。輝度の平均値によって明るい画像であるか、暗い画像であるか等を直ちに判別してノイズレベルを適切に推定することができるので、エッジ保存型平滑化フィルターにおける高い効果を得ることができる。また、平均化することで、ノイズの影響により誤った輝度の情報を出力することを回避することができる。ここで平均値とは、1フレーム分の画像データから平均値を求めてもよいし、所定のサイズの画素ブロック単位で平均値を求めてもよい。画素ブロック単位で平均値を求める場合、演算量は増加するが、各画素ブロックにおける適切なノイズレベルを推定できるので高いフィルター効果を望むことができる。
【0011】
(3)この画像処理装置において、前記フィルター処理部は、前記エッジ保存型平滑化フィルターとしてεフィルターを用いてもよい。
【0012】
本発明によれば、区分線形関数を用いるεフィルターを用いて、比較的少ない演算量で、エッジを保存しながらの平滑化処理を効果的に行うことができる。係数設定部は、統計解析部からの輝度に関する統計情報に基づいて、画像のノイズレベルを適切に推定して閾値εを決定することができる。本発明の画像処理装置ではεフィルターを使用するため、組み込み向け用途にも適している。
【0013】
(4)この画像処理装置において、前記係数設定部は、前記εフィルターのノイズレベル強度を示す係数εを、前記統計情報の値が、入力階調の中央値から乖離するほど大きく設定してもよい。
【0014】
本発明によれば、係数設定部は画像のノイズレベルを、統計情報が入力階調の中央値付近である場合には小さく、そこから乖離するほどに大きくなると推定する。推定されたノイズレベルに応じて、εフィルターでノイズレベル強度を表すεを変更する。ここで、入力階調とは統計情報が入力されるときの階調の事である。例えば、8ビットの入力階調を有する統計情報が中央値である128の場合にはεを最も小さく設定し、中央値から乖離した値である0の場合にはεを大きくとる。このことにより、適切にノイズ除去を行うことができる。
【0015】
(5)この画像処理装置において、前記係数設定部は、前記統計情報がとり得る入力階調のうち複数の代表値に対応する係数εを保持し、前記統計情報の値が前記代表値と異なる場合には、近接する2つの代表値に対応する2つの係数εの線形補間により、前記係数εを求めてもよい。
【0016】
本発明によれば、係数設定部が予め保持しておく係数εの値は複数の代表値に対応する値だけであり、その他の統計情報の値が入力された場合には線形補間によってεを計算する。これにより、係数εを保持するための大きな記憶部を用意する必要はなく、線形補間を用いるので演算量が増大することもない。
【0017】
(6)この画像処理装置において、前記統計解析部は、前記入力画像データの輝度の分散値を出力し、前記係数設定部は、前記分散値が所与の閾値以下の場合には、前記入力階調の中央値に近い前記代表値に対応する係数εを大きくしてもよい。
【0018】
(7)この画像処理装置において、前記係数設定部は、注目画素と周辺画素の各画素の重み付け係数を設定してもよい。
【0019】
これらの発明によれば、係数設定部は統計解析部からの分散値によって輝度の変化が少ない平坦な画像であることを判断することができる。例えば、係数設定部は分散値が所定の閾値以下の場合に、ノイズが目立ちやすい平坦な画像であると判断できる。このとき、前記入力階調の中央値付近の係数εを大きくすることで、ノイズを除去する効果を高めることができる。ここで、中央値付近の係数εを大きくする手法としては、中央値付近のみのεを大きくしてもよいし、全体的にεを大きくしてもよい。また、εフィルターの重み係数を調整することでノイズ除去の効果を高めてもよい。
【0020】
(8)この画像処理装置において、前記係数設定部は、水平画素および垂直画素の少なくとも一方の画素数をカウントするカウンターを含み、前記カウンターの値に基づいて、注目画素が画像処理装置で扱う画素ブロックの外周を構成する画素に該当する場合には、前記係数εを変更してもよい。
【0021】
本発明によれば、例えば符号化などの処理の単位である画素ブロックの外周を構成する画素に生じるブロックノイズを効果的に除去することができる。例えば画素ブロックとは8画素×8画素の正方のブロックであり、その外周とはそのブロックの一番外側に存在する画素の集合である。このような画素では、ブロックノイズによってノイズレベルが大きくなるため、係数εを調整することで確実にノイズ除去が行われるようにする。係数設定部は、水平画素や垂直画素をカウントするカウンターを含み、画素ブロックの外周を構成する画素を判断してもよい。なお、注目画素とはεフィルターの対象となる画素のことであり、走査方式では注目画素は順次変化する。
【0022】
(9)この画像処理装置において、前記フィルター処理部は、前記エッジ保存型平滑化フィルターを施した画像データに、一様な係数を乗じて出力する係数調整部を含んでもよい。
【0023】
本発明によれば、フィルター処理を行った後で一様な係数を乗じることで、画像全体の輝度レベルを所望のレベルに調整することができる。
【0024】
(10)本発明は、入力画像データを統計的に解析して輝度に関する統計情報を出力する統計解析ステップと、前記統計情報に基づいて、前記エッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定する係数設定ステップと、前記入力画像データのエッジを保存しながら平滑化するエッジ保存型平滑化フィルターの処理を行い、その処理後の画像データに基づく信号を出力するフィルター処理ステップと、を含む。
【0025】
本発明によれば、輝度に関する統計情報に基づいてエッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定できる。このとき、画像データを例えばRGB空間へと変換する作業を要しないので、この画像処理方法を用いる装置の回路規模や処理時間の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態における画像処理装置のブロック図。
【図2】図2(A)〜図2(C)はεフィルターを説明するための図。
【図3】図3(A)〜図3(B)はεの算出方法を示す図。
【図4】第1実施形態における画像およびそのブロックを説明するための図。
【図5】第1実施形態のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0029】
1.1.第1実施形態における画像処理装置の構成
図1は、第1実施形態における画像処理装置10のブロック図を示す。画像処理装置10は、統計解析部20、係数設定部30、フィルター処理部40を含む。
【0030】
統計解析部20は、入力画像データ200を構成する画素の輝度について、統計処理により得られた統計情報202を取得して出力する。統計情報202は、例えば本実施形態のように輝度に関する平均値であってもよいし、最大値、最小値、中央値、その他の統計値であってもよい。統計処理の対象となる画素は1フレーム分の画像データに含まれる全ての画素であってもよい。また、符号化などの処理の単位である画素ブロック毎に、そのブロックに含まれる画素について統計処理が行われてもよい。画素ブロックは例えば8画素×8画素であり、フィルター処理の対象である注目画素を含む画素ブロックの統計情報が出力されてもよい。なお、入力画像データ200は例えばYUV形式などの輝度情報を含む画素値で構成されているが、輝度についてのみ分離されて入力画像データ200として入力されてもよい。
【0031】
係数設定部30は、統計情報202に基づいてエッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定する係数設定信号204を出力する。本実施形態では、エッジ保存型平滑化フィルター44はεフィルターであり、係数設定信号204はノイズリダクション強度であるεの値を含んでいてもよい。また、係数設定信号204は、εフィルターの対象である注目画素とその周辺の画素の重み係数を含んでいてもよい。なお、係数設定信号204はεや重み係数の値を含むのではなく、これらの値を指定する選択信号であってもよい。
【0032】
フィルター処理部40は、エッジ保存型平滑化フィルター44によって、入力画像データ200に基づく信号にフィルター処理を施した出力画像データ206を出力する。このとき、係数設定信号204によってフィルター係数が決定される。本実施形態のように、フィルター処理部40は、エッジ保存型平滑化フィルター44の他に、バッファー部42、出力信号調整部46を含んでいてもよい。
【0033】
バッファー部42は、入力画像データ200を一時保存するバッファーを含む。バッファー部42のバッファーはフレームバッファーであってもよいし、ラインバッファーでも他のサイズのバッファーであってもよい。例えば適当なライン数のラインバッファーを用いた場合には、バッファー部42に保持されている画像データ210と、その統計情報202に基づく係数設定信号204とを同時にエッジ保存型平滑化フィルター44に入力することができる。そのため、最適なフィルター係数を用いてフィルター処理を行うことが可能である。
【0034】
出力信号調整部46は、出力画像データ206のレベルを調整する。出力信号調整部46は、エッジ保存型平滑化フィルター44から出力された画像データ212に対して、例えば一律のゲインをかけることで出力画像データ206のレベルを調整してもよい。
【0035】
1.2.εフィルター
εフィルターは、注目画素との信号差が閾値(ε)以下となる周辺画素をフィルター処理に用いることで、エッジを保存しつつノイズリダクションを行う。本実施形態では、エッジ保存型平滑化フィルター44はεフィルターである。
【0036】
図2(A)、図2(B)は、それぞれεフィルター前後における画像の一部の画素位置および画素値を示す。図2(A)では、中央の注目画素の画素値がXであり、その周辺には画素値がX(i=0〜3、5〜8)である周辺画素が存在する。なお、注目画素の画素値はXでもある(X=X)。局所領域220は、注目画素と周辺画素を含む領域である。
【0037】
ここで、画像のデータは走査方式で入力され、注目画素(および局所領域220)は例えばシステムクロックに同期して順次変化する。そして、所定時間の経過後に1フレームの画素の全部についてεフィルターによる処理が行われることになる。
【0038】
図2(B)では、中央の注目画素の画素値はYであり、図2(A)のX(i=0〜8)を入力とするεフィルターの出力値である。εフィルターでは、図2(A)の注目画素だけでなく周辺画素も含めて処理を施す。なお、図2(B)では周辺画素の表記は省略している。
【0039】
図2(C)は、εフィルターで用いられる関数F(t)を表す。F(t)は区分線形関数であって数1で表される。
【0040】
【数1】

本実施形態のεフィルターの処理は関数F(t)を用いて数2で定義される。なお、Y、X、X(i=0〜8)は前記の画素値であり、a(i=0〜8)は重み係数である。ここで、画素値とは本実施形態では輝度を意味する。
【0041】
【数2】

重み係数aは数3の関係を満たし、例えば数4のようなガウス関数に基づいて定められる値であってもよい。
【0042】
【数3】

【数4】

本実施形態のεフィルターは、式(1)および式(2)より、例えば注目画素の画素値Xと周辺画素の画素値X(i=0〜8)との輝度の差がεより大きい場合には、元の画素値から変化しないように処理が行われる。これは、エッジが保存されることを意味する。逆に注目画素の画素値Xと周辺画素の画素値X(i=0〜8)との輝度の差がε以下の場合には、ローパスフィルターとして機能する。このとき、ノイズが除去される。従って、本実施形態の画像処理装置10は、εフィルターを用いてノイズの除去とエッジの保存を両立させることができる。
【0043】
1.3.統計解析部、計数設定部
εフィルターは、εの値が不適切である場合には所望の効果を得ることができない。例えば大きな高周波のノイズを含む画像の画像データが入力された場合、εの値が小さいと出力画像にもノイズが残存する可能性がある。このとき、入力画像データの解析結果に基づいてεの値を大きくするなどの調整が可能であることが好ましい。本実施形態の画像処理装置10は、統計解析部20と係数設定部30を含むことでこのような調整が可能である。
【0044】
図3(A)はεの算出方法の例であり、具体的には係数設定部30がεを算出するのに用いる関数G(x)を表している。ここでは、ε=G(x)とし、xは統計解析部20からの統計情報202である。本実施形態では、統計情報202として輝度の平均値を用いる。輝度は8ビットであり0〜255の値をとり得る。このとき、平均値の対象となる画素は1フレームの画像の全てであってもよいが、本実施形態では後述する画素ブロック単位(8画素×8画素)で平均値を取得する。なお、係数設定部30はG(x)を求める際に、加算や乗算を行ってもよいし、LUT(ルックアップテーブル)を用いてもよい。例えば、統計情報202として値230が入力された場合には、係数設定部30はLUTを用いてG(230)を求めてもよい。
【0045】
図3(A)のように関数G(x)は、入力値xがとり得る値の中央値(ここでは、128)において最もG(x)の値が小さくなるような下に凸の関数である。ここで、極小値は厳密に入力値xがとり得る値の中央値である必要はない。例えば、画素ブロックの輝度の平均値がとり得る最大値(255)である場合には、ノイズの輝度は0〜254の範囲をとり得る。つまり、ノイズレベルが大きなノイズが生じ得る。そのため、高画質の画像を得るためにはエッジ保存よりもノイズの除去を優先させる方がよい。画素ブロックの輝度の平均値がとり得る最小値(0)である場合にも、同様の理由からノイズの除去を優先させる方がよい。一方、画素ブロックの輝度の平均値が中央値(128)である場合には、最大値や最小値に近い場合に比べてノイズレベルは小さい。そのため、ノイズの除去よりもエッジ保存を優先する方がよい。図3(A)の関数G(x)は、中央値付近ではεの値を小さくとりエッジ保存を優先し、中央値から乖離するにしたがってεを大きくとってノイズの除去を優先する。
【0046】
ここで、εの値は注目画素を含む画像の性質に応じて調整してもよい。例えば、係数設定部30は統計解析部20から注目画素を含む画像の分散値を受け取り、分散値がある閾値以下である場合には平坦な画像であると判断して、中央値付近におけるノイズの除去の優先度を上げてもよい。すなわち、中央値付近におけるεの値を大きくするような調整を行ってもよい。
【0047】
また、例えば係数設定部30は分散値を受け取り、画像全体が平坦な画像であると判断した場合には、全体的にノイズの除去の優先度を上げてもよい。例えば、初期の関数がε=G(x)である場合に、ε=G(x)+Cとする調整を行ってもよい。ここで、Cは適当な正の定数である。
【0048】
このように、本実施形態の画像処理装置10は、統計解析部20と係数設定部30によって画像の輝度に関する統計情報に基づいて適切なεを選択することが可能である。そのため、画像データに応じた適切なεを容易に選択、調整することができ、エッジを保存しながら効果的に平滑化を行うフィルターを実現できる。このとき、RGB形式の画像データへの変換作業は不要であり、YUV形式の画像データをそのまま扱うことが可能である。そのため、例えば画像処理システムの後段に位置する表示手段(例えばLCDコントローラー)にも適用できる。
【0049】
図3(B)はεの算出方法の別の例を示す。図3(B)の関数G(x)は代表点におけるεの値を線形補間する。この方法は、係数設定部30の演算量を軽減し、高速処理を行う画像処理装置10を実現することができる。図3(B)の例では、代表点はx=0、64、128、192、255の5点であり、係数設定部30は、これらの代表点に対応するεを保持するだけでよい。例えば、代表点以外のx=230については、近接する2つの代表点192、255の値G(192)、G(255)を用いて数5のように容易に計算することが可能である。
【数5】

【0050】
ここで、本実施形態の画像処理装置10は、前記のように画像処理システムの後段に配置することができる。そして、本実施形態の画像処理装置10のεフィルターによって、画像のデータ圧縮時のブロック処理で生じるブロックノイズや高周波成分除去によるモスキートノイズなども低減することが可能である。
【0051】
図4は、ブロックノイズの効果的に除去する手法を説明するための図である。例えばブロックノイズは画像データ圧縮時の単位である画素ブロックの周囲に生じる。図4では、画素ブロック222は8画素×8画素であり、N画素×M画素の画像300のデータ圧縮処理の単位ブロックである。画像300は8画素×8画素の画素ブロックで分割される。そして、注目画素が画素ブロックの外周を構成する画素である場合に、ブロックノイズを生じやすい。例えば、注目画素と周辺画素を含む局所領域220Aに対してεフィルターの処理を施す場合には、垂直方向のブロックノイズを確実に消去できることが望ましい。また、局所領域220Bに対しては、水平方向のブロックノイズを確実に消去できることが望ましい。
【0052】
本実施形態の画像処理装置10は、例えば係数設定部30が水平方向のピクセル数をカウントするピクセルカウンターや、垂直方向の行数をカウントする行カウンターを含み、カウンターが8の倍数、又はその前後の値になった場合にεの値を大きくするなどの調整を行うことで、より効果的にブロックノイズを除去することが可能になる。
【0053】
また、高周波成分の除去によって生じるモスキートノイズについては、例えば係数設定部30がエッジの抽出を行い、そのエッジの周囲の画素に対してεの値を大きくするなどの調整を行うことでより効果的な除去が可能になる。エッジの抽出には例えばラプラシアンフィルターを用いてもよい。
【0054】
1.4.フローチャート
図5は本実施形態のフローを示す図である。まず、本実施形態の画像処理装置10は、入力データについて輝度に関する統計情報を取得する(S10)。本実施形態では、統計情報とは輝度の平均値であり、画素ブロック単位(8画素×8画素)で平均値を取得する。そして、統計情報である輝度の平均値に基づいて、εフィルターのフィルター係数が設定される(S20)。フィルター係数とは例えばεであるが、式(2)の重み係数aも含めて設定してもよい。また、輝度調整のために一様な係数を乗じる処理が含まれる場合には、そのゲインを設定してもよい。そして、入力画像データ、又はバッファーに保持された画像データに対してεフィルターの処理を行う(S30)。終了指示があれば終了するが(S40Y)、指示がなければ係属して一連の処理が繰り返される(S40N)。この画像処理方法は、輝度に関する統計情報に基づいてエッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定できる。このとき、画像データを例えばRGB空間へと変換する作業を要しないので、本実施形態の画像処理装置10の回路規模や処理時間の増大を抑制することができる。
【0055】
2.変形例
本実施形態の変形例として、εフィルターに代えて他のエッジ保存型平滑化フィルターを用いてもよい。例えば、MTM(Modified Trimmed Mean)フィルターが用いられてもよい。数6はMTMフィルターの処理例を表す式である。なお、式(1)〜式(2)、図2(A)〜図2(B)と同じ記号は重複するため説明を省略する。
【0056】
【数6】

ここで、式(6)のWは、閾値εを用いて数7で表される。
【0057】
【数7】

これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0058】
10…画像処理装置、20…統計解析部、30…係数設定部、40…フィルター処理部、42…バッファー部、44…エッジ保存型平滑化フィルター、46…出力信号調整部、200…入力画像データ、202…統計情報、204…係数設定信号、206…出力画像データ、210…画像データ、212…画像データ、220…局所領域、220A…局所領域、220B…局所領域、222…画素ブロック、300…画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データのエッジを保存しながら平滑化するエッジ保存型平滑化フィルターの処理を行い、その処理後の画像データに基づく信号を出力するフィルター処理部と、
前記入力画像データを統計的に解析して輝度に関する統計情報を出力する統計解析部と、
前記統計情報に基づいて、前記エッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定する係数設定部と、を含む画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記統計解析部は、
前記入力画像データの輝度の平均値を前記統計情報として出力する画像処理装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記フィルター処理部は、
前記エッジ保存型平滑化フィルターとしてεフィルターを用いる画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記係数設定部は、
前記εフィルターのノイズレベル強度を示す係数εを、前記統計情報の値が、入力階調の中央値から乖離するほど大きく設定する画像処理装置。
【請求項5】
請求項3乃至4のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記係数設定部は、
前記統計情報がとり得る入力階調のうち複数の代表値に対応する係数εを保持し、
前記統計情報の値が前記代表値と異なる場合には、近接する2つの代表値に対応する2つの係数εの線形補間により、前記係数εを求める画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置において、
前記統計解析部は、
前記入力画像データの輝度の分散値を出力し、
前記係数設定部は、
前記分散値が所与の閾値以下の場合には、前記入力階調の中央値に近い前記代表値に対応する係数εを大きくする画像処理装置。
【請求項7】
請求項3乃至6に記載の画像処理装置において、
前記係数設定部は、
注目画素と周辺画素の各画素の重み付け係数を設定する画像処理装置。
【請求項8】
請求項3乃至7に記載の画像処理装置において、
前記係数設定部は、
水平画素および垂直画素の少なくとも一方の画素数をカウントするカウンターを含み、
前記カウンターの値に基づいて、注目画素が画像処理装置で扱う画素ブロックの外周を構成する画素に該当する場合には、前記係数εを変更する画像処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の画像処理装置において、
前記フィルター処理部は、
前記エッジ保存型平滑化フィルターを施した画像データに、一様な係数を乗じて出力する係数調整部を含む画像処理装置。
【請求項10】
入力画像データを統計的に解析して輝度に関する統計情報を出力する統計解析ステップと、
前記統計情報に基づいて、前記エッジ保存型平滑化フィルターの係数を設定する係数設定ステップと、
前記入力画像データのエッジを保存しながら平滑化するエッジ保存型平滑化フィルターの処理を行い、その処理後の画像データに基づく信号を出力するフィルター処理ステップと、を含む画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−98861(P2012−98861A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245139(P2010−245139)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】