説明

画像処理装置、画像調整方法、埋め込み強度調整方法、及びプログラム

【課題】写真や絵等に対して埋め込んだ情報を、常に安定に復元できるようにする。
【解決手段】サイズ入力部11からのパターンサイズ、減衰率入力部12からのパターン減衰率、強度入力部13からの埋め込み強度に基づき、パターン作成部14が埋め込みパターンを作成する。一方、画像入力部15は、画像を画像格納部16に格納する。また、埋込情報入力部17からの情報を、埋込情報符号化部18が符号化し、パターン選択部20がこれに対応する埋め込みパターンを選択し、パターン重畳部21が、画像格納部16内の画像における埋込位置制御部19が指定する位置に埋め込みパターンを重畳し、重畳後の画像を画像出力部22が出力する。このとき、階調特性入力部23が入力した出力装置の階調特性と、濃度分布生成部24が生成した画像の濃度分布とに基づいて、画像調整部25が画像を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多階調で表現された画像内に情報を埋め込む画像処理装置等に関し、より詳しくは、画像内の画素値を変更することによって情報を埋め込む画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品等に対し、その販売や管理の効率化のため、商品情報をバーコードやQRコードで付加することが広く行われている。ところが、商品等のパッケージには元々、写真や絵等を用いて綺麗にデザインされた商品ラベルが貼られていることも多い。そこで、商品ラベルとは別にバーコード等を貼り付ける場合、幾つかの不都合が生じる。
まず、元々商品ラベルが貼られているにも関わらず、これに加えてバーコード等を貼り付けるのは余計な手間であり、これがコストアップにつながってしまうという点である。また、商品ラベルの上からバーコード等を貼ってしまうことにより、商品ラベルの価値が低下し、これが売り上げにも影響しかねないという点もある。
【0003】
こうした事情から、商品ラベルのような写真や絵等に対し、それを高画質に保ったまま情報を埋め込むための技術として、MIG(Micro Gradation)の検討が進められてきた(例えば、特許文献1、2参照)。この特許文献1、2では、正方形のブロックを4等分し、対角どうしの濃度の差で情報を記録している。また、ブロックの中心値にピークが出るような濃度勾配をつけることで、高密度に情報を埋め込めるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−140764号公報(第9、10頁、第1、2図)
【特許文献2】特開2004−147253号公報(第10、11頁、第1、2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1、2では、正方形のブロックの領域間に濃度の差を設けることで情報を埋め込んでいる。従って、情報を復元する際には、印刷された紙上でこの濃度の差が認識できるようになっていることが必要である。ところが、画像の所謂ハイライト部やシャドウ部では、出力装置の階調特性が線形ではないため、画像信号の差がそのまま出力画像の濃度の差とならないのが普通である。そして、このような階調特性も個々の出力装置で異なるので、写真や絵等に埋め込んだ情報を安定に復元するには、出力装置の階調特性を考慮して、画像の濃度を調整したり、情報の埋め込み方法を調整したりすることが必要になってくる。
しかしながら、特許文献1、2では、出力装置の階調特性を考慮していないため、埋め込んだ情報を安定に復元できない場合があるという問題点があった。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的は、写真や絵等に対して埋め込んだ情報を、常に安定に復元できるようにすることにある。
本発明の他の目的は、情報を埋め込んだ画像を如何なる階調特性の出力装置で出力したとしても、その情報を安定に復元できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明では、出力装置の階調特性に応じて、画像又はその画像に埋め込む情報の埋め込み強度を調整するようにした。即ち、本発明の画像処理装置は、画像への情報の埋め込みを、その画像における画素値をその情報に応じて変更することにより行うものであり、情報が埋め込まれた画像を出力する装置の階調特性を取得する取得手段と、この取得手段により取得された階調特性に基づいて、画像における画素値又はその画素値の変更の度合(埋め込み強度)を調整する調整手段とを備えている。
ここで、画素値の調整としては、階調特性を解析することにより、画素値の変更を機械的に認識困難な階調範囲(例えば、ハイライト部やシャドウ部)を求め、画像における各画素値がその階調範囲に含まれなくなるように、画像のダイナミックレンジを狭めることが考えられる。
また、画素値の変更の度合の調整としては、階調特性を解析することにより、画素値の変更を機械的に認識困難な階調範囲(例えば、ハイライト部やシャドウ部)を求め、情報が埋め込まれた画像における各画素値がその階調範囲に含まれなくなるように、画素値の変更の度合を大きくすることが考えられえる。
【0008】
また、本発明は、画像を調整するための方法として捉えることもできる。その場合、本発明の画像調整方法は、画像への情報の埋め込みを、その画像における画素値をその情報に応じて変更することにより行うに当たり、その画像を調整するものであり、情報が埋め込まれた画像を出力する装置の階調特性に基づいて、その画像における画素値の変更を機械的に認識可能な階調範囲(例えば、ハイライト部やシャドウ部以外の部分)を求めるステップと、画像における所定の画素値が、階調範囲に含まれていない場合に、その所定の画素値がその階調範囲に含まれるよう、画像のダイナミックレンジを変更するステップとを含んでいる。
【0009】
更に、本発明は、埋め込み強度を調整するための方法として捉えることもできる。その場合、本発明の埋め込み強度調整方法は、画像への情報の埋め込みを、その画像における画素値をその情報に応じて変更することにより行うに当たり、その画素値の変更の度合である埋め込み強度を調整するものであり、情報が埋め込まれた画像を出力する装置の階調特性に基づいて、その画像における画素値の変更を機械的に認識可能な階調範囲(例えば、ハイライト部やシャドウ部以外の部分)を求めるステップと、画像における所定の画素値の変更後の値が、階調範囲に含まれていない場合に、その変更後の値がその階調範囲に含まれるよう、埋め込み強度を変更するステップとを含んでいる。
【0010】
一方、本発明は、コンピュータに画像調整処理を実行させるプログラムとして捉えることもできる。その場合、本発明のプログラムは、画像への情報の埋め込みを、その画像における画素値をその情報に応じて変更することにより行うに当たり、その画像を調整する機能をコンピュータに実現させるものであり、コンピュータに、情報が埋め込まれた画像を出力する装置の階調特性に基づいて、その画像における画素値の変更を機械的に認識可能な階調範囲(例えば、ハイライト部やシャドウ部以外の部分)を求める機能と、画像における所定の画素値が、階調範囲に含まれていない場合に、その所定の画素値がその階調範囲に含まれるよう、画像のダイナミックレンジを変更する機能とを実現させるものである。
【0011】
また、本発明は、コンピュータに埋め込み強度調整処理を実行させるプログラムとして捉えることもできる。その場合、本発明のプログラムは、画像への情報の埋め込みを、その画像における画素値をその情報に応じて変更することにより行うに当たり、その画素値の変更の度合である埋め込み強度を調整する機能をコンピュータに実現させるものであり、コンピュータに、情報が埋め込まれた画像を出力する装置の階調特性に基づいて、その画像における画素値の変更を機械的に認識可能な階調範囲(例えば、ハイライト部やシャドウ部以外の部分)を求める機能と、画像における所定の画素値の変更後の値が、階調範囲に含まれていない場合に、その変更後の値がその階調範囲に含まれるよう、埋め込み強度を変更する機能とを実現させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、写真や絵等に対して埋め込んだ情報を、常に安定に復元することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という)について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像処理装置の構成例を示した図である。
図示するように、本実施の形態における画像処理装置は、サイズ入力部11と、減衰率入力部12と、強度入力部13と、パターン作成部14と、画像入力部15と、画像格納部16と、埋込情報入力部17と、埋込情報符号化部18と、埋込位置制御部19と、パターン選択部20と、パターン重畳部21と、画像出力部22と、階調特性入力部23と、濃度分布生成部24と、画像調整部25とを含んでいる。
【0014】
サイズ入力部11は、図示しないPC(Personal Computer)や操作パネル等から、ユーザが指示するパターンサイズを入力する。減衰率入力部12は、図示しないPCや操作パネル等から、ユーザが指示するパターン減衰率を入力する。強度入力部13は、図示しないPCや操作パネル等から、ユーザが指示する埋め込み強度を入力する。尚、パターンサイズ、パターン減衰率、埋め込み強度については、後で詳しく述べる。また、これらの情報として予め設定されている値を用いる場合は、各入力部を設けない構成でもよい。
パターン作成部14は、入力されたパターンサイズ、パターン減衰率、埋め込み強度に基づいて、2つのパターンを作成する。尚、パターン作成部14の詳細については後述する。
【0015】
画像入力部15は、情報を埋め込む対象となる画像を入力する。ここでの画像の入力方法としては、外部の装置から通信回線を介して入力する形態、自装置にて動作するアプリケーションプログラムから入力する形態、ユーザが指定したファイルを開いて入力する形態等が考えられる。入力された画像は、多階調で表現された画像であり、図示しないPCにより作成された画像であってもよいし、デジタルカメラやスキャナにより入力された自然画像やCG(Computer Graphics)等であってもよい。
画像格納部16は、入力された画像を格納するメモリである。また、この画像に重畳するパターンの画像を格納する場合もある。
【0016】
埋込情報入力部17は、図示しないPC、操作パネル、アプリケーションプログラム等から、画像に埋め込む情報を入力する。ここで、画像に埋め込む情報としては、文字列、数字、画像データ等、様々なものが考えられる。
埋込情報符号化部18は、埋込情報入力部17により入力された情報を、所定の符号化フォーマットに変換し、実際に画像に埋め込む符号化情報を作成する。尚、符号化せずに埋め込むようにしてもよい。
埋込位置制御部19は、予め決められている埋め込みフォーマットに従って、画像格納部16に格納された画像における符号化情報の埋め込み位置を指定する。
【0017】
パターン選択部20は、埋込情報符号化部18により作成された符号化情報に基づいて、パターン作成部14が作成した2つのパターンのうちの一方を選択する。
パターン重畳部21は、埋込位置制御部19が指定した画像格納部16のアドレスに存在する画像ブロックに対して、パターン選択部20が選択したパターンを例えば加算して重畳し、パターンを画像中に埋め込む。尚、加算後の値が最大値(例えば255)を超えるときは、値を最大値(255)にし、加算後の値が負の値になるときは、値を0にする。
画像出力部22は、情報が埋め込まれた画像を、プリンタ等の出力装置に対して出力する。
【0018】
階調特性入力部23は、情報が埋め込まれた画像を出力する出力装置(プリンタ)の階調特性を取得する。ここで、階調特性入力部23は、階調特性を取得するという観点から、取得手段として把握することもできる。尚、階調特性入力部23の詳細については後述する。
濃度分布生成部24は、画像格納部16に格納された画像を解析して濃度分布を生成する。尚、濃度分布生成部24の詳細についても後述する。
画像調整部25は、階調特性入力部23から入力された階調特性と、濃度分布生成部24により生成された濃度分布と、埋め込み強度とに基づいて、画像格納部16に格納された画像を調整する。ここで、画像調整部25は、画像を調整するという観点から、調整手段として把握することもできる。これについても後で詳細な動作を説明するが、例えば、画像のダイナミックレンジの変更を行う。
【0019】
尚、これらの機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、画像処理装置の図示しないCPUが、サイズ入力部11、減衰率入力部12、強度入力部13、パターン作成部14、画像入力部15、埋込情報入力部17、埋込情報符号化部18、埋込位置制御部19、パターン選択部20、パターン重畳部21、画像出力部22、階調特性入力部23、濃度分布生成部24、画像調整部25の各機能を実現するプログラムを、例えばハードディスク等の外部記憶装置からメインメモリに読み込んで、画像処理装置内にこれらの各機能を実現する。
以上、本実施の形態における画像処理装置の構成例について説明した。次に、この構成例のうちの主要な構成要素について、更に詳述する。
【0020】
まず、パターン作成部14について詳述する。パターン作成部14は、サイズ入力部11、減衰率入力部12、強度入力部13により入力された値に基づいて、2つのパターンを作成する。この2つのパターンは以下のような特徴を持つ。
・2つのパターンの対応する画素値どうしを加算すると、全ての画素で値が0になる。
・各々のパターンにおいて、全ての画素値を加算すると0になる。
・各々のパターンは、中心部を通り方向が異なる2本以上のエッジと呼ばれる不連続な画素値を備える。エッジの方向は、例えば垂直線と水平線に沿った方向とすることができる。
更に、
・各々のパターンの持つ画素値の絶対値は中心で最も大きく、中心から離れるほど小さくなる。
という特徴を有しているとよい。
【0021】
図2は、埋め込むパターンの一例の説明図である。上述のような特徴を有するパターンとしては、例えば図2に示したようなものがある。ここで、図2(a)は、ビット値「1」を意味する基本パターン、図2(b)は、ビット値「0」を意味する基本パターンであり、これら双方の全要素に図2(c)又は(d)に示す式が乗ぜられる。これによって、例えば図2(e),(f)に示すようなパターンが生成される。尚、図2(e),(f)では、図示の都合上、濃度の違いをハッチングの違いによって示している。
【0022】
ここで、基本パターンのサイズは、サイズ入力部11で設定される。図2は、パターンサイズが8×8の例を示している。また、図2(c),(d)において、「C」は、強度入力部13により入力された埋め込み強度(単に「強度」ともいう)、「α」は、減衰率入力部12により入力されたパターン減衰率である。更に、「x」は、パターンの中心を原点とした場合の横方向の座標値であり、「y」は、同じくパターンの中心を原点とした場合の縦方向の座標値である。
【0023】
これらのパターンの特徴は、画質への影響をできる限り抑えながら、かつ、その検出を容易にするためのものである。
但し、本実施の形態で用いるパターンは図2に示した例に限られるものではなく、例えば図2(c),(d)に示した式の代わりに他の関数を用いてもよい。また、これらの式中の指数関数部分を省略したり、これらの式を用いずに図2(a),(b)に示すパターンをそのまま用いたりしてもよい。更に、図2に示した例ではエッジ方向を垂直・水平方向としたが、情報を検出する際のエッジ方向と合致している限り、例えば45度及び135度方向のエッジ等、様々な方向をエッジ方向とすることができる。
【0024】
次に、階調特性入力部23について詳述する。
まず、階調特性の求め方としては、出力装置でグラデーションパッチを出力し、それを入力装置で読み取り、階調特性を計測することが考えられる。また、出力装置の階調特性が既に分かっている場合や、プロセスコントローラにて定期的に階調特性を取得しているような場合は、その階調特性を用いるようにしてもよい。
【0025】
図3は、階調特性の一例の説明図である。図において、横軸は、出力装置に伝えられた画像信号を示している。また、縦軸は、この画像信号に基づいて出力装置で実際に印刷した画像の濃度を数値化したものである。尚、図3は、画像信号の1つの色成分、例えば、R、G、BのうちのRに着目した場合の階調特性を示している。この図からも分かる通り、画像信号「0」の付近と、画像信号「255」の付近では、画像信号と濃度の関係は線形になっておらず、画像信号の差が、濃度の差に対応していない状態になっている。
具体的には、濃度の値が「Dh」より大きい部分と、濃度の値が「Ds」より小さい部分において、濃度の差が画像信号の差を反映したものとはなっていない。これを画像信号の側から見ると、画像信号が「H」より大きい部分(ハイライト部)と、画像信号が「S」より小さい部分(シャドウ部)において、画像信号の差の通りの濃度差が再現できていない。
そこで、本実施の形態では、情報を埋め込む部分における画素値がハイライト部やシャドウ部に存在しない状態になるよう、画像のダイナミックレンジを狭める処理を行う。
【0026】
そのために、本実施の形態では、濃度分布生成部24が濃度分布を生成するので、これについて説明しておく。
図4は、濃度分布生成部24で生成される濃度分布の一例を示した図である。これは、一般的なヒストグラム機能を用いて求めることができるものであり、R、G、B各々について、最大値Rmax、Gmax、Bmax、及び、最小値Rmin、Gmin、Bminを求めることができる。
【0027】
その後、画像調整部25が、画像のダイナミックレンジを狭める処理を行う。
図5は、このときの画像調整部25の動作を示したフローチャートである。尚、図5は、R、G、Bの画像信号のうち、Rについての処理を示しているが、G、Bについても同様の処理が行われる。
まず、画像調整部25は、階調特性入力部23から階調特性を受け取り、ハイライトの境界値Hと、シャドウの境界値Sとを求める(ステップ101)。ここで、各境界値は、図3に示した階調特性を解析することによって求めることができる。その解析方法としては、如何なる方法を採用してもよいが、例えば、画像信号と濃度の比が画像信号の値に伴ってどのように変化するかを評価し、変化のしかたが線形とみなせるかどうかをもとに判定することが考えられる。
【0028】
次に、画像調整部25は、濃度分布生成部24から濃度分布を受け取り、色成分Rについて、最大値Rmaxと、最小値Rminとを求める(ステップ102)。
また、画像調整部25は、強度Cも取得する(ステップ103)。尚、ここでは、単に「強度C」と表記するが、図2を用いて説明したように、パターンの中心と周辺部とで強度が異なる場合は、強度Cは、画素の位置の関数として考えるものとする。即ち、パターン選択部20が選択したパターンの画像(埋め込み位置の情報も含む)が、パターン重畳部21を介して画像格納部16に格納されるので、画像調整部25は、このパターンの画像を取得することで、画素の位置に応じた強度を把握することができる。
【0029】
その後、画像調整部25は、埋め込み対象の画像における各画素について以下の処理を行う。
即ち、まず、ある画素に着目し、そのR成分の画素値Rを取得する(ステップ104)。そして、画素値Rがハイライト部に含まれて画素が強度Cを減算する位置にあるか(図5では、「ハイライト(−)」と記す。)、画素値Rがシャドウ部に含まれて画素が強度Cを加算する位置にあるか(図5では、「シャドウ(+)」と記す。)、これらのいずれでもないか、を判定する(ステップ105)。画素値Rがハイライト部に含まれる場合は、原則として画像のダイナミックレンジを狭める必要があるが、着目する画素が図2(a)の左上又は右下の領域、図2(b)の右上又は左下の領域にある場合は、強度Cを減算した後の画素値(R−C)がハイライト部に含まれなくなる可能性があるため、「ハイライト(−)」かどうか判定している。また、画素値Rがシャドウ部に含まれる場合も、同様に、原則として画像のダイナミックレンジを狭める必要があるが、着目する画素が図2(a)の右上又は左下の領域、図2(b)の左上又は右下の領域にある場合は、強度Cを加算した後の画素値(R+C)がシャドウ部に含まれなくなる可能性があるため、「シャドウ(+)」かどうか判定している。
【0030】
その結果、いずれにも該当しないと判定された場合は、何も処理を行わずに、他に画素があるかどうかの判定(ステップ108)に移行する。
一方、「ハイライト(−)」であると判定された場合は、画素値の変更後の値(R−C)がハイライト境界値Hを下回るかどうかを判定し(ステップ106)、下回った場合は、強度Cで情報を埋め込むことで濃度に差が出るものとして、他に画素があるかどうかの判定(ステップ108)に移行する。尚、上述したように、強度Cは、画素の位置の関数であるので、ここでも画素の位置に応じた強度Cを引くものとする。
また、「シャドウ(+)」であると判定された場合は、画素値の変更後の値(R+C)がシャドウ境界値Sを上回るかどうかを判定し(ステップ107)、上回った場合は、強度Cで情報を埋め込むことで濃度に差が出るものとして、他に画素があるかどうかの判定(ステップ108)に移行する。尚、この場合も、強度Cは、画素の位置の関数であるので、画素の位置に応じた強度Cを足すものとする。
【0031】
これに対し、いずれかの画素値について、ステップ106における判定が「No」となった場合、又は、ステップ107における判定が「No」となった場合は、強度Cで情報を埋め込むことにより濃度の差が出ないので、画像調整部25は、画像のダイナミックレンジを変更する(ステップ109)。具体的には、ハイライト部で濃度の差が出ない場合は、画素値Rの最大値Rmaxがハイライト境界値Hに変換されるようにダイナミックレンジを変更し、シャドウ部で濃度の差が出ない場合は、画素値Rの最小値Rminがシャドウ境界値Sに変換されるようにダイナミックレンジを変更する。尚、ここでのダイナミックレンジの変更は、画像入力部15から入力された画像全体について行ってもよいし、その画像のうちの情報を埋め込む部分についてのみ行ってもよい。
そして、画像調整部25は、他に画素がなくなるまでステップ104〜107の処理を繰り返し、他に画素がなくなれば(ステップ108で「No」)、処理を終了する。
【0032】
尚、以上の動作例では、ステップ106にて、強度Cを減算したときにハイライト部を外れるかを判定し、ステップ107にて、強度Cを加算したときにシャドウ部を外れるかを判定するようにした。しかしながら、これらの判定ステップを設けず、画像の埋め込み対象の部分にハイライト部又はシャドウ部に含まれる画素値があれば、ダイナミックレンジを変更して、その画素値がハイライト部又はシャドウ部に含まれなくなるようにしてもよい。
【0033】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態における画像処理装置の構成例を示す図である。
図示するように、本実施の形態における画像処理装置は、サイズ入力部11と、減衰率入力部12と、強度入力部13と、パターン作成部14と、画像入力部15と、画像格納部16と、埋込情報入力部17と、埋込情報符号化部18と、埋込位置制御部19と、パターン選択部20と、パターン重畳部21と、画像出力部22と、階調特性入力部23と、強度調整部26とを含んでいる。
このうち、サイズ入力部11、減衰率入力部12、強度入力部13、パターン作成部14、画像入力部15、画像格納部16、埋込情報入力部17、埋込情報符号化部18、埋込位置制御部19、パターン選択部20、パターン重畳部21、画像出力部22は、第1の実施の形態で述べたものと同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0034】
階調特性入力部23は、情報が埋め込まれた画像を出力する出力装置(プリンタ)の階調特性を取得する。
強度調整部26は、階調特性入力部23から入力された階調特性に基づいて、強度入力部13で入力する埋め込み強度を調整する。ここで、強度調整部26は、埋め込み強度を調整するという観点から、調整手段として把握することもできる。これについては後で詳細な動作を説明するが、例えば、埋め込み強度を可能な限り最大化する。
尚、本実施の形態では、画像のダイナミックレンジの変更は行わないので、濃度分布生成部24は設けていない。
【0035】
尚、これらの機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、画像処理装置の図示しないCPUが、サイズ入力部11、減衰率入力部12、強度入力部13、パターン作成部14、画像入力部15、埋込情報入力部17、埋込情報符号化部18、埋込位置制御部19、パターン選択部20、パターン重畳部21、画像出力部22、階調特性入力部23、強度調整部26の各機能を実現するプログラムを、例えばハードディスク等の外部記憶装置からメインメモリに読み込んで、画像処理装置内にこれらの各機能を実現する。
以上、本実施の形態における画像処理装置の構成例について説明した。次に、この構成例のうちの主要な構成要素について、更に説明を加えておく。
【0036】
まず、パターン作成部14は、本実施の形態においても、サイズ入力部11、減衰率入力部12、強度入力部13により入力された値に基づいて、2つのパターンを作成する。この2つのパターンは、第1の実施の形態で述べたような特徴を持ち、例えば、図2に示したようなパターンが例示される。
また、階調特性入力部23は、出力装置の階調特性を計測し、本実施の形態においても、図3に示したような階調特性を取得する。ここで、画像信号が「H」より大きい部分(ハイライト部)と、画像信号が「S」より小さい部分(シャドウ部)において、画像信号の差の通りの濃度差が再現できないので、本実施の形態では、情報を埋め込み後の画素値がハイライト部やシャドウ部に存在しない状態になるよう、埋め込み強度を大きくする処理を行う。
【0037】
図7は、このときの強度調整部26の動作を示したフローチャートである。尚、図7は、R、G、Bの画像信号のうち、Rについての処理を示しているが、G、Bについても同様の処理が行われる。
まず、強度調整部26は、階調特性入力部23から階調特性を受け取り、ハイライトの境界値Hと、シャドウの境界値Sとを求める(ステップ201)。ここで、各境界値は、図3に示した階調特性を解析することによって求めることができる。その解析方法としては、如何なる方法を採用してもよいが、例えば、画像信号と濃度の比が画像信号の値に伴ってどのように変化するかを評価し、変化のしかたが線形とみなせるかどうかをもとに判定することが考えられる。
【0038】
次に、強度調整部26は、強度Cを取得する(ステップ202)。尚、ここでは、単に「強度C」と表記するが、図2を用いて説明したように、パターンの中心と周辺部とで強度が異なる場合は、強度Cは、画素の位置の関数として考えるものとする。即ち、パターン選択部20が選択したパターンの画像(埋め込み位置の情報も含む)が、パターン重畳部21を介して画像格納部16に格納されるので、画像調整部25は、このパターンの画像を取得することで、画素の位置に応じた強度を把握することができる。
【0039】
その後、強度調整部26は、埋め込み対象の画像における各画素について以下の処理を行う。
即ち、まず、ある画素に着目し、そのR成分の画素値Rを取得する(ステップ203)。そして、画素値Rがハイライト部に含まれて画素が強度Cを減算する位置にあるか(図7では、「ハイライト(−)」と記す。)、画素値Rがシャドウ部に含まれて画素が強度Cを加算する位置にあるか(図7では、「シャドウ(+)」と記す。)、これらのいずれでもないか、を判定する(ステップ204)。画素値Rがハイライト部に含まれる場合は、原則として強度Cを大きくする必要があるが、着目する画素が図2(a)の左上又は右下の領域、図2(b)の右上又は左下の領域にある場合は、強度Cを減算した後の画素値(R−C)がハイライト部に含まれなくなる可能性があるため、「ハイライト(−)」かどうか判定している。また、画素値Rがシャドウ部に含まれる場合も、同様に、原則として強度Cを大きくする必要があるが、着目する画素が図2(a)の右上又は左下の領域、図2(b)の左上又は右下の領域にある場合は、強度Cを加算した後の画素値(R+C)がシャドウ部に含まれなくなる可能性があるため、「シャドウ(+)」かどうか判定している。
【0040】
その結果、いずれにも該当しないと判定された場合は、何も処理を行わずに、他に画素があるかどうかの判定(ステップ209)に移行する。
一方、「ハイライト(−)」であると判定された場合は、画素値の変更後の値(R−C)がハイライト境界値Hを下回るかどうかを判定し(ステップ205)、下回らない場合は、強度Cの加算後の画素値と、強度Cの減算後の画素値とで濃度に差が出るよう、強度Cを大きめにする。ここでは、一例として、強度Cを(R−H)以上の任意の値に変更している(ステップ206)。また、下回った場合は、強度Cで情報を埋め込むことで濃度に差が出るものとして、他に画素があるかどうかの判定(ステップ209)に移行する。尚、上述したように、強度Cは、画素の位置の関数であるので、ここでも画素の位置に応じた強度Cを引くものとする。
【0041】
また、「シャドウ(+)」であると判定された場合は、画素値の変更後の値(R+C)がシャドウ境界値Sを上回るかどうかを判定し(ステップ207)、上回らない場合は、強度Cの加算後の画素値と、強度Cの減算後の画素値とで濃度に差が出るよう、強度Cを大きめにする。ここでは、一例として、強度Cを(S−R)以上の任意の値に変更している(ステップ208)。また、上回った場合は、強度Cで情報を埋め込むことで濃度に差が出るものとして、他に画素があるかどうかの判定(ステップ209)に移行する。尚、この場合も、強度Cは、画素の位置の関数であるので、画素の位置に応じた強度Cを足すものとする。
そして、強度調整部26は、他に画素がなくなるまでステップ203〜208の処理を繰り返し、他に画素がなくなれば(ステップ209で「No」)、処理を終了する。
【0042】
尚、以上の動作例では、個々の画素について強度Cを設定したが、画像入力部15から入力された画像のうち少なくとも情報を埋め込む部分について共通の強度Cを設定するようにしてもよい。
【0043】
以上述べたように、本実施の形態では、出力装置の階調特性に応じて、画像のダイナミックレンジを狭くしたり、情報の埋め込み強度を大きくしたりするようにした。これにより、画像への情報の埋め込みを、その画像における画素値を変更することにより行う場合に、埋め込まれた情報の復元を安定に行うことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像処理装置の構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明の第1及び第2の実施の形態で用いる埋め込みパターンの一例を示した図である。
【図3】本発明の第1及び第2の実施の形態で取得する階調特性の一例を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態で取得する濃度分布の一例を示した図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の画像処理装置における画像調整部の動作を示したフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態における画像処理装置の構成例を示したブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の画像処理装置における強度調整部の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
11…サイズ入力部、12…減衰率入力部、13…強度入力部、14…パターン作成部、15…画像入力部、16…画像格納部、17…埋込情報入力部、18…埋込情報符号化部、19…埋込位置制御部、20…パターン選択部、21…パターン重畳部、22…画像出力部、23…階調特性入力部、24…濃度分布生成部、25…画像調整部、26…強度調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像への情報の埋め込みを、当該画像における画素値を当該情報に応じて変更することにより行う画像処理装置であって、
前記情報が埋め込まれた前記画像を出力する装置の階調特性を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記階調特性に基づいて、前記画像における画素値又は当該画素値の変更の度合を調整する調整手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記階調特性を解析することにより、前記画素値の変更を機械的に認識困難な階調範囲を求め、前記画像における各画素値が当該階調範囲に含まれなくなるように、当該画像のダイナミックレンジを狭めることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記階調特性を解析することにより、前記画素値の変更を機械的に認識困難な階調範囲を求め、前記情報が埋め込まれた前記画像における各画素値が当該階調範囲に含まれなくなるように、当該画像のダイナミックレンジを狭めることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記階調特性を解析することにより、前記画素値の変更を機械的に認識困難な階調範囲を求め、前記情報が埋め込まれた前記画像における各画素値が当該階調範囲に含まれなくなるように、前記画素値の変更の度合を大きくすることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像への情報の埋め込みを、当該画像における画素値を当該情報に応じて変更することにより行うに当たり、当該画像を調整する画像調整方法であって、
前記情報が埋め込まれた前記画像を出力する装置の階調特性に基づいて、当該画像における画素値の変更を機械的に認識可能な階調範囲を求めるステップと、
前記画像における所定の画素値が、前記階調範囲に含まれていない場合に、当該所定の画素値が当該階調範囲に含まれるよう、当該画像のダイナミックレンジを変更するステップと
を含むことを特徴とする画像調整方法。
【請求項6】
前記変更するステップでは、前記所定の画素値の変更後の値が前記階調範囲に含まれている場合に、前記画像のダイナミックレンジを変更しないことを特徴とする請求項5記載の画像調整方法。
【請求項7】
画像への情報の埋め込みを、当該画像における画素値を当該情報に応じて変更することにより行うに当たり、当該画素値の変更の度合である埋め込み強度を調整する埋め込み強度調整方法であって、
前記情報が埋め込まれた前記画像を出力する装置の階調特性に基づいて、当該画像における画素値の変更を機械的に認識可能な階調範囲を求めるステップと、
前記画像における所定の画素値の変更後の値が、前記階調範囲に含まれていない場合に、当該変更後の値が当該階調範囲に含まれるよう、前記埋め込み強度を変更するステップと
を含むことを特徴とする埋め込み強度調整方法。
【請求項8】
画像への情報の埋め込みを、当該画像における画素値を当該情報に応じて変更することにより行うに当たり、当該画像を調整する機能をコンピュータに実現させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記情報が埋め込まれた前記画像を出力する装置の階調特性に基づいて、当該画像における画素値の変更を機械的に認識可能な階調範囲を求める機能と、
前記画像における所定の画素値が、前記階調範囲に含まれていない場合に、当該所定の画素値が当該階調範囲に含まれるよう、当該画像のダイナミックレンジを変更する機能と
を実現させるプログラム。
【請求項9】
前記変更する機能では、前記所定の画素値の変更後の値が前記階調範囲に含まれている場合に、前記画像のダイナミックレンジを変更しないことを特徴とする請求項8記載のプログラム。
【請求項10】
画像への情報の埋め込みを、当該画像における画素値を当該情報に応じて変更することにより行うに当たり、当該画素値の変更の度合である埋め込み強度を調整する機能をコンピュータに実現させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記情報が埋め込まれた前記画像を出力する装置の階調特性に基づいて、当該画像における画素値の変更を機械的に認識可能な階調範囲を求める機能と、
前記画像における所定の画素値の変更後の値が、前記階調範囲に含まれていない場合に、当該変更後の値が当該階調範囲に含まれるよう、前記埋め込み強度を変更する機能と
を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−142619(P2007−142619A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331043(P2005−331043)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】