説明

画像処理装置、追跡システム

【課題】解像度の段階的な切り換えを実現させることを課題とする。
【解決手段】イメージセンサの出力する原画像データからそれより解像度が低い画像データを生成して保持し、外部装置の要求に応じて出力する画像処理装置であって、入力された画像データの解像度を下げる解像度変換処理を行う解像度変換回路を多段に縦続接続してなる画像処理部と、前記各解像度変換回路の出力する各解像度の画像データをそれぞれ保持するデータ記憶部と、前記外部装置の要求に応じて、前記データ記憶部から指定された解像度の画像データを読み出して出力する出力部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、及びそれを備えた追跡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動体の位置に追従させるようにカメラを移動させることで、移動体を追跡する追跡システムが広く知られている。この種の追跡システムは、画像の時間的な変化から移動体を検出し、その位置を特定する。そのため、画像の解像度が高く画素数が多いと画像解析処理が追いつかないことがある。このような課題を解決するものとして、下記特許文献1に開示されたものがある。このものでは、画像の解像度を落として画素数を減らすことで、画像解析処理の高速化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−185480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、解像度を落とすと画像が粗くなるので、画像中の小さな変化は検出できなくなる。そのため、移動体の動きが小さいと、検出が難しくなるという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、解像度の段階的な切り換えを実現させ、移動体の検出を高精度に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像処理装置は、イメージセンサの出力する原画像データからそれより解像度が低い画像データを生成して保持するものであって、入力された画像データの解像度を下げる解像度変換処理を行う解像度変換回路を多段に縦続接続してなる画像処理部と、前記各解像度変換回路の出力する解像度の異なる画像データを保持するデータ記憶部と、前記データ記憶部に記憶された解像度の異なる複数の画像データから一の画像データを、外部からの指令に従って選択的に読み出して出力する出力部と、を備える。
【0006】
本発明の追跡システムは、イメージセンサと、前記イメージセンサを角変位させる駆動装置と、本発明の画像処理装置と、前記画像処理装置の出力する画像データに基づいて移動体を検出し、検出した移動体に前記イメージセンサを追尾させるように前記駆動装置を制御する制御装置と、を備える。
【0007】
この発明では、解像度変換回路を縦続接続しており、各解像度変換回路にて解像度変換処理が行われるごとに解像度が段階的に低がる画像データが生成される。そして、生成された各解像度の画像データはデータ記憶部に記憶される構成となっている。そのため、データ記憶部から必要な解像度の画像データを出力部を通じて選択的に読み出すことで、解像度の段階的な切り換えが可能となる。
【0008】
この発明の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
・解像度変換回路を、解像度変換処理を分担して実行する複数の単位変換回路から構成する。このような構成としておけば、解像度を下げる処理を高速化できる。
【0009】
・各解像度変換回路の解像度変換率を等しくする。このような構成としておけば、各段にて共通の解像度変換回路を用いることが可能となり、画像処理部を安価な構成にできる。
【0010】
・解像度変換処理を、画像データを構成する各画素ブロックに対して平均値フィルタをかけて画素を統合することにより画像の解像度を落とす処理とする。このようにしておけば、処理の負担も少ないし、画像に含まれる不規則な雑音を除去できる。また、画像中のぶれを吸収できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、解像度の段階的な切り換えが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に適用した追跡システムの構成を示すブロック図
【図2】画像データGと解像度との関係を示す図
【図3】移動体の画像を示す図(移動前後を重ねた状態を示す)
【図4】画像処理装置の内部構成を示すブロック図
【図5】画像データを示す図
【図6】単位変換回路の内部構成を示すブロック図
【図7】画像処理装置内におけるデータの流れを説明する図
【図8】アドレスコンバータの作用を説明する図
【図9】実施形態2において、隣接する画素ブロックを重ねて配置した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
1.全体説明
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
図1は追跡システムUのブロック図である。本追跡システムUは追跡装置本体10、画像処理装置50、制御装置100から構成されている。
【0014】
追跡装置本体10はカメラ20と、ジンバル機構30と、駆動装置40とを主体に構成されている。カメラ20は追跡対象を撮影するものであって、集光レンズ21、イメージセンサ25、処理部27などを備える(図4参照)。イメージセンサ25はCCD、CMOSなどの撮像素子を行列状に配置した二次元イメージセンサである。
【0015】
処理部27はイメージセンサ25より出力される撮像データをディジタルデータ(以下、画像データG)に変換して、後述する画像処理装置50に出力するものである。尚、本明細書を通じて、画像データG(G0〜G3の総称)はフレーム単位のデータを指すものとする。
【0016】
ジンバル機構30は上記カメラ20を角変位させるものであり、U字型をなすフレーム31と、アウタジンバル33と、インナジンバル35とを備える。アウタジンバル33とインナジンバル35は、枢支軸を直交させており、この実施形態では、フレーム31に対してアウタジンバル33がX軸周りに回転可能に支持され、アウタジンバル33に対してインナジンバル35がY軸周りに回転可能に支持されている。そして、インナジンバル35に対して、カメラ20が撮影面を、水平に向けた状態で取り付けられている。
【0017】
また、両ジンバル33、35には個々に角度センサ33A、35Aが設けられており、ジンバル33、35の角度を検出する構成となっている。
【0018】
駆動装置40はモータ制御部41、X軸駆動モータ42及びそのドライブ回路43、Y軸駆動モータ44及びそのドライブ回路45から構成されている。X軸駆動モータ42はインナジンバル35をX軸周りに回転させるものであり、また、Y軸駆動モータ44はアウタジンバル33をY軸周りに回転させるものである。
【0019】
そして、駆動装置40には角度センサ33A、35Aから両ジンバルの角度情報が取り込まれると共に、後述する制御装置100から制御指令Sが与えられる構成となっている。そして、制御指令Sが与えられると、モータ制御部41が各ドライブ回路43、45を通じてモータ電流を供給し、各モータ42、44を駆動させる。これにより、制御指令Sに追従させるように両シンバル33、35が軸駆動してカメラ20を水平な姿勢に保ったまま、角変位させる構成となっている。
【0020】
次に、画像処理装置50について説明する。画像処理装置50は、カメラ20の出力する原画像データG0からそれより解像度が低い画像データG1〜G3を生成して保持する機能を担うものであって、画像処理部60とデータ記憶部80と出力部90とを備えてなる。
【0021】
画像処理部60は3つの解像度変換回路61、62、63を備える。初段の解像度変換回路61にはカメラ20の出力する原画像データG0が入力される構成となっている。そして、初段の解像度変換回路61の出力が2段目の解像度変換回路62の入力に接続され、2段目の解像度変換回路62の出力が3段目の解像度変換回路63の入力に接続されている。このように3つの解像度変換回路61〜63は縦続接続されている。
【0022】
そして、各解像度変換回路61〜63は入力された画像データGの解像度を下げる解像度変換処理を行い、解像度を落とした画像データGを次の段の解像度変換回路に出力する。これにより、各段の解像度変換回路61〜63にて、イメージセンサ25から出力された原画像データG0の解像度を段階的に落とした画像データG1〜G3が生成される。
【0023】
データ記憶部80は4つの画像取込部M0〜M3により構成されている。画像取込部M0はイメージセンサ25の出力ラインにバスを介して接続されており、イメージセンサ25の出力する原画像データG0を記憶する構成となっている。
【0024】
また、画像取込部M1は初段の解像度変換回路61の出力ラインにバスを介して接続され、また画像取込部M2は2段目の解像度変換回路62の出力ラインにバスを介して接続され、画像取込部M3は3段目の解像度変換回路63の出力ラインにバスを介して接続されている。
【0025】
これにより、各画像取込部M1〜M3は、各解像度変換回路61〜63にて所定解像度に落とされた各画像データG1〜G3を、バスを介して取り込んで記憶することが可能となる。このようにデータ記憶部80には、原画像データG0を含めると解像度の異なる4つの画像データG0〜G3が記憶(保持)される構成となっている(図2参照)。
【0026】
出力部90は4つのアドレスコンバータF0〜B3から構成されている。これら4つのアドレスコンバータF0〜F3は各画像取込部M0〜M3にそれぞれ対応している。各アドレスコンバータF0〜F3は、次に説明する制御装置100の要求に応じて各画像取込部M0〜M3から画像データG0〜G3を読み出す処理を行い、読み出した画像データG0〜G3を制御装置100に出力する構成となっている。また、出力部90は各解像度の画像データを制御装置100の他、外部回路150へも出力できる構成となっている。
【0027】
制御装置100は本発明の「外部装置」として機能するものであって、画像解析用のプログラムを記憶したROM110、画像解析用のプログラムを実行するCPU120、画像データGを一時記憶する画像メモリ130、不図示のRAMなどを備えた構成となっている。
【0028】
上記制御装置100は、画像処理装置50から出力される画像データGについて、画像解析を行って移動体Zの有無を検出し、移動体Zが検出された場合には、画像データGから移動体Zの変位量、変位方向を算出する。そして得られた変位量、変位方向に基づいて駆動装置40に制御指令Sを出力し、移動体Zに追尾させるようにカメラ20を角変位させる。これにより、視界に入る移動体Zをカメラ20で追跡できる。
【0029】
また、本追跡システムUは、解像度を段階的に落とした複数の画像データG1〜G3を画像処理装置50に記憶させている。そのため、解像度の低い画像データG3にて画像解析を行って移動体Zの検出を行い、移動体Zが検出されたら、後は、移動体Zの状況に合わせて、それに合った解像度の画像データGを画像処理装置50から読み出して画像解析を行えば、如何なる移動体Zも高精度に追跡できる。
【0030】
すなわち、移動体Zの動きが早い場合であれば、画像解析を高速で行う必要がある。従って、このようなときには、解像度の低い画像データG3をそのまま使用して画像解析を行ってやるとよい。このようにすることで、図3の(a)に示すように移動体Zの動きが早くても、それを見失うことなく、確実に追跡できる。
【0031】
また、移動体Zの動きが遅い場合であれば、画像処理装置50から解像度の高い画像データG1を読み出し、それを制御装置100にて画像解析してやるとよい。このようにすれば、画像の細かい変化を検出できるので、図3の(b)に示すように、移動体Zの動きが小さくても、確実に追跡できる。
【0032】
また、本追跡システムUでは専用に設けた画像処理装置50に、解像度を下げる処理(平均値フィルタ処理)を負担させている。そのため、制御装置100のCPU120は画像解析を行うにあたり、解像度を下げる処理(平均値フィルタ処理)を行う必要がない。そのため、CPU120の処理負担を大幅に軽減でき、データ処理能力がそれほど高くないCPUの使用が可能となる。また、解像度を落とした画像データGを画像処理装置50に記憶させているので、容量の大きなメモリを制御装置100が持たなくて済む。以上のことから、制御装置100をシンプル、かつ安価な構成に出来る。
【0033】
2.詳細説明
次に、図4を参照して画像処理装置50の具体的な構成を説明する。画像処理装置50は、既に説明したように、縦続接続された3組の解像度変換回路61〜63を備えている。そして、初段の解像度変換回路61の入力段にはバスラインBL0が設けられ、また、各解像度変換回路61〜63の出力段にはバスラインBL1〜BL3が設けられている。
【0034】
そして、バスラインBL0には画像取込部M0が接続され、バスラインBL1には画像取込部M1が接続され、バスラインBL2には画像取込部M2が接続され、バスラインBL3には画像取込部M3がそれぞれ接続されている。
【0035】
各バスラインBL0〜BL3は、各画素データPのアドレス情報を伝送するためのアドレスバスAと、各画素データPを伝送するためのデータバスDの2系統のバスから構成されている。
【0036】
次に、初段の解像度変換回路61について説明する。解像度変換回路61は、同一構造をなすN個の単位変換回路70(70A〜70Iの総称)から構成されている。尚、図中はN個の単位変換回路のうち、70A〜70Dの4つ単位変換回路のみを示し、他のものは略してある。
【0037】
これら単位変換回路70A〜70Dは、図5の(a)に示すように、2×2の4画素からなる画素ブロックBに平均値フィルタをかけて画素を統合することにより、画像の解像度を下げるものである。
【0038】
図4に示すように、各単位変換回路70A〜70Dは並列的に接続されている。このように、各単位変換回路70A〜70Dを並列的に接続することで、バスラインBL0上を伝送されるデータを各単位変換回路70A〜70Dが共有化でき、平均値フィルタをかける処理を分担して行うことが可能となる。尚、ここで言う分担とは、画素ブロックB1に対して平均値フィルタをかける処理を単位変換回路70Aが担当し、画素ブロックB2に対して平均値フィルタをかける処理を単位変換回路70Bが担当するなど、各単位変換回路70A〜70Dがそれぞれ別の画素ブロックBに対して平均値フィルタをかけることを意味する。
【0039】
係る単位変換回路70A〜70Dの構成は図6に示す通りであり、アドレスバス選択器71、データバス選択器72、アドレス比較器73、演算回路75、EEPROM(Electrically Erasable PROM)76、RAM(Random Access Memory)77などを備える。
【0040】
アドレスバス選択器71は単位変換回路70を入力側のアドレスバスA、又は出力側のアドレスバスAに選択接続させるものである。また、データバス選択器72は単位変換回路70を入力側のデータバスD、又は出力側のデータバスDに選択接続させるものである。尚、データバスDは、D0、D1、D2、D3の総称であり、アドレスバスAは、A0、A1、A2、A3の総称である。
【0041】
アドレス比較器73は、アドレスバスAを通じて入力される画素データPのアドレス情報をEEPROM76に記憶されたアドレス情報と照合し、アドレス情報が一致した時に、それを演算回路75に通知するものである。
【0042】
演算回路75はEEPROM76に記憶された各種データに基づいてデータの入出力を管理すると共に、平均値フィルタ処理を実行して画素ブロックBの画素を統合するものである。
【0043】
そして、各単位変換回路70A〜70DのEEPROM76には、以下のデータが記憶されている。
(1)処理対象となる画素ブロックBの情報(構成画素のアドレス情報)
(2)統合した画素データPを出力する際に付すアドレス情報
(3)平均値フィルタを行うために必要となる行列式などの計算値データ
【0044】
尚、(3)の計算値データは、各単位変換回路70A〜70Dで同じデータが記憶されており、4つの単位変換回路70A〜70Dが、同じ平均値フィルタ処理を実行する構成となっている。
【0045】
また、EEPROM76は周知のように電気的な操作により情報を書き換えることが可能なROMであり、例えば、計算値データを変更することで、フィルタの大きさ、フィルタの特性(単なる平均値に替えて、重み付けを追加するなど)を変更できる構成となっている。
【0046】
そして、2段目の解像度変換回路62、3段目の解像度変換回路63も初段の解像度変換回路61と同様に並列的に接続された複数の単位変換回路70から構成されており、画素ブロックBに平均値フィルタをかける処理を各単位変換回路70にて分担して行う構成となっている。
【0047】
尚、図4中、2段目の解像度変換回路62の単位変換回路は70E〜70Gの3つ単位変換回路のみを示し、他のものは略してある。また、3段目の解像度変換回路63の単位変換回路は70H、70Iの2つ単位変換回路のみを示し、他のものは略してある。
【0048】
次に、画像処理装置50の動作について図7を参照して説明する。尚、画像処理装置50を構成する各単位変換回路70は動作前、いずれも入力側のバスに接続されているものとする。また、以下の説明においてカメラ20から出力される各画素データには符号「P」を付し、解像度変換回路61から出力される画素データには「符号P'」を付し、解像度変換回路62から出力される画素データには「符号P''」を付して、これらを識別する。
【0049】
さて、カメラ20は一回の撮影を行うと、その都度、撮影した原画像データG0を後段の画像処理装置50に出力する。原画像データG0は一列目の画素から順にライン単位で出力される。これにより、画像処理装置50のデータバスD0に、画素データP1、画素データP2、画素データP3、画素データP4の順に、画素データPが出力されてゆく。
【0050】
そして、カメラ20は各画素データPをデータバスD0に出力するのと同時に、画素データPのアドレス情報をアドレスバスA0に出力する。これにより、アドレスバスA0に、画素データP1のアドレスの情報「1」、画素データP2のアドレスの情報「2」、画素データP3のアドレスの情報「3」、画素データP4のアドレス情報「4」が順に出力される。
【0051】
そして、画像処理装置50内では、出力された原画像データG0を画像取込部M0に取り込んで記憶する処理と、出力された原画像データG0の解像度を初段の解像度変換回路61にて落とす処理が並行して行われる。
【0052】
ここでは、初段の解像度変換回路61にて原画像データG0の解像度を如何様に落とすか、その処理を詳しく述べる。まず、解像度変換回路61を構成する各単位変換回路70A〜70Dは、アドレスバスA0からアドレス情報をアドレスバス選択器71により継続的に取り込む。
【0053】
そして、取り込んだアドレス情報が、EEPROM76に記憶されているアドレス情報と一致しているかアドレス比較器73にて比較し、一致していれば、演算回路75の指令により、そのときデータバスD0に流れている画素データPをデータバス選択器72が取り込む。そして、取り込んだ画素データPを演算回路75がRAM77に一時記憶させる。
【0054】
このような取り込み動作を行うことで、各単位変換回路70A〜70Dには、処理対象となる画素ブロックBを構成する各画素データPが順に取り込まれてゆく。例えば、画素ブロックB1について平均値フィルタを行う単位変換回路70Aには、画素ブロックB1を構成する画素データP1、画素データP2が順に取り込まれる。また、画素ブロックB2について平均値フィルタを行う単位変換回路70Bには、画素ブロックB2を構成する画素データP3、画素データP4が順に取り込まれる。
【0055】
その一方、各単位変換回路70A〜70Dがこのようなデータの取り込みを行う間も、カメラ20はデータの読み出しを行い、一列目について各画素データPを出力し終わると、2列目の画素データPを先頭から順に読み出して出力する。
【0056】
これにより、画像処理装置50のデータバスD0に画素データP17、画素データP18、画素データP19、画素データP20の順に、画素データPが出力されてゆく。そして、カメラ20は各画素データPをデータバスD0に出力するのと同時に、画素データPのアドレス情報をアドレスバスA0に出力する。
【0057】
そして、出力されたデータのうち、画素ブロックB1を構成する画素データP17、画素データP18の両データは、単位変換回路70Aに取り込まれ、RAM77に一時記憶される。また、画素ブロックB2を構成する画素データP19、画素データP20は単位変換回路70Bに取り込まれ、RAM77に一時記憶される。
【0058】
かくして、単位変換回路70Aには、画素ブロックB1の全画素データP1、P2、P17、P18が全て取り込まれた状態となり、単位変換回路70Bには、画素ブロックB2の全画素データP3、P4、P19、P20が全て取り込まれた状態となる。
【0059】
そして、画素データPの取り込みが完了すると、その単位変換回路70の演算回路75は、EEPROM76から計算値データを読み出す。そして、取り込んだ4画素に対して平均値フィルタをかけて4画素を統合する。
【0060】
これにより、単位変換回路70AではP1、P2、P17、P18の4つの画素データの平均値が算出され、これら4つの画素データP1、P2、P17、P18が算出された平均値のデータに統合される。
【0061】
また、単位変換回路70BではP3、P4、P19、P20の4画素の平均値が算出され、これら4つの画素データP3、P4、P19、P20が算出された平均値のデータに統合される。
【0062】
各単位変換回路70は平均値フィルタ処理を終えると、アドレスバス選択器71、データバス選択器72の接続先を入力側のバスから出力側のバスに切り換える。そして、各単位変換回路70は統合した画素データP'をデータバスD1に出力し、又そのアドレス情報をアドレスバスA1にそれぞれ出力する。
【0063】
画像取込部M1は、アドレスバスA1からアドレス情報を取り込み、そのときデータバスD1に流れている画素データP'を取り込む。そして、取り込んだ画素データP'をアドレス情報に対応させて順に記憶させてゆく。このような取り込み動作を行うことで、画像取込部M1には各単位変換回路70の出力する画素データP'が取り込まれてゆく。
【0064】
尚、図7の画像取込部M1中に付されている「1'」は、P1、P2、P17、P18の4つの画素データを統合した画素データ「P1'」に付されたアドレス情報であり、この「1'」が付された升目には、画素データ「P1'」が格納される。また、「2'」は、P3、P4、P18、P19の4つの画素データを統合した画素データ「P2'」に付されたアドレスであり、「2'」が付された升目には、画素データ「P2'」が格納される。
【0065】
そして、各単位変換回路70A〜70Eは統合した画素データP'をデータバスD1に出力し、又そのアドレス情報をアドレスバスA1にそれぞれ出力すると、再び、接続先を入力側に切り換えてカメラ20から出力される画素データPを取り込む処理を行う。すなわち、この実施形態では、各単位変換回路70A〜70Dが複数の画素ブロックBを平均値化する設定にしてある。例えば、単位変換回路70Aであれば、図1に示す画素ブロックB1の他、画素ブロックB18を平均値化する設定となっている。
【0066】
そして、各単位変換回路70A〜70Eは、2つ目の画素ブロックBについて、平均値フィルタ処理を終えると、アドレスバス選択器71、データバス選択器72の接続先を入力側のバスから出力側のバスに切り換える。そして、各単位変換回路70A〜70Eは統合した画素データP'をデータバスD1に出力し、又そのアドレス情報をアドレスバスA1にそれぞれ出力する。
【0067】
そして、原画像データG0の全画素ブロックBについて、これを平均値化する処理が完了し、最後の画素ブロックBを統合した画素データP'が画像取込部M1に取り込まれると、画像取込部M1に原画像データG0の解像度を落とした画像データG1が記憶された状態となる。尚、この実施形態では、解像度変換回路61で、2×2の4画素からなる画素ブロックBを平均値化しているから、画像取込部M1に記憶される画像データG1は原画像データG0に対して解像度を1/4(解像度変換率25%)に落としたデータとなる。
【0068】
このように、初段の解像度変換回路61では、原画像データG0の各画素ブロックBに平均値フィルタをかけて画素を統合する処理を、全N個(図中は4個)の単位変換回路70が分担して実行する。そのため、原画像データG0に平均値フィルタをかける処理を極短時間に終わらせることが可能となる。
【0069】
また、各画素ブロックBに平均値フィルタをかけることで、いわゆる「ぶれ」を抑えることが可能となり、移動体Zの検出を容易にできるという利点がある。というのも、一般に、移動体Zの検出は、画像中から時間的な変化をする物体を抽出することにより行われるが、「ぶれ」があると画面全体に変化が現れるので、時間的な変化をする物体の抽出が困難になるからである。
【0070】
続いて、2段目の解像度変換回路62の回路動作の説明を行う。2段目の解像度変換回路62の各単位変換回路70E〜70Gは、1段目の解像度変換回路61からデータが出力されると、アドレスバスA1を通じて出力される1'、2'などのアドレス情報を取り込む。
【0071】
そして、取り込んだアドレス情報が、EEPROM76に記憶されているアドレス情報と一致しているかアドレス比較器73により比較し、一致していれば、そのときデータバスD1に流れている画素データP'を取り込む。そして、取り込んだ画素データP'をRAM77に一時記憶させる。
【0072】
このような取り込み動作を行うことで、各単位変換回路70E〜70Gには、処理対象となる画素ブロックBの各画素データP'が順に取り込まれてゆく。そして、各単位変換回路70E〜70Gの演算回路75は、処理対象となる画素ブロックBの画素データP'を全て取り込むと、初段の単位変換回路70A〜70Dと同様に、EEPROM76から計算値データを読み出して、取り込んだ4画素に対して平均値フィルタをかけて4画素を統合する。
【0073】
これにより、例えば、単位変換回路70EではP1'、P2'、P9'、P10'の4つの画素データの平均値が算出され、これら4つの画素データP1'、P2'、P9'、P10'が算出された平均値のデータに統合される。
【0074】
また、単位変換回路70BではP3'、P4'、P11'、P12'の4画素の平均値が算出され、これら4つの画素データP3'、P4'、P11'、P12'が算出された平均値のデータに統合される。
【0075】
このように、本実施形態では、2段目の解像度変換回路63も初段の解像度変換回路61と同様に、画像データG1の各画素ブロックBに平均値フィルタをかけて画素を統合する処理を、各単位変換回路70E〜70Fが分担して実行する。そのため、画像データG1に平均値フィルタをかける処理を極短時間に終わらせることが可能となる。
【0076】
そして、2段目の解像度変換回路63を構成する各単位変換回路70E〜70Gは平均値フィルタ処理を終えると、アドレスバス選択器71、データバス選択器72の接続先を入力側のバスから出力側のバスに切り換える。そして、各単位変換回路70E〜70Gは統合した画素データP''をデータバスD2に出力し、又そのアドレス情報をアドレスバスA2にそれぞれ出力する。
【0077】
画像取込部M2は、アドレスバスA2からアドレス情報を取り込み、そのときデータバスD2に流れている画素データP''を取り込む。そして、取り込んだ画素データP''をアドレス情報に対応させて順に記憶させてゆく。このような取り込み動作を行うことで、画像取込部M2には各単位変換回路70E〜70Gの出力する画素データP''が取り込まれることとなり、画像データG1の解像度を落とした画像データG2が記憶されることとなる。
【0078】
尚、この実施形態では、解像度変換回路62で、2×2の4画素からなる画素ブロックBに平均値化しているから、画像取込部M2に記憶される画像データG2は、画像データG1に対して解像度を1/4に落としたデータとなる。
【0079】
そして、最終段である3段目の解像度変換回路63でも、初段、2段目の解像度変換回路61、62と同様に画素ブロックBに2×2の4画素の平均値フィルタをかけて画素を統合することで、解像度を1/4に落とす。そして、画像取込部M3に、画像データG2の解像度を1/4倍に落とした画像データG3が記憶されることとなる。
【0080】
このように、カメラ20から出力された原画像データG0は、画像処理装置50に取り込まれると、その後、各段の解像度変換回路61〜63にて解像度を段階的に落とした画像データG1〜G3が生成され、それら各画像データG0〜G3が画像取込部M0〜M3に記憶されるようになっている。
【0081】
尚、画像処理装置50では、カメラ20から原画像データG0が出力される度に、解像度を落とす処理が行われるから、各画像取込部M0〜M3には各解像度の画像データG0〜G3が時系列を追って記憶されることとなる。
【0082】
次に、アドレスコンバータFの動作について説明する。アドレスコンバータFは、制御装置100と各画像取込部Mとの間にてアドレス情報を変換する機能、変換したアドレス情報に従って画像取込部M0〜M3から所定サイズの画素ブロックBを切り出す機能を担っている。
【0083】
図8を参照して詳しく説明すると、今、制御装置100の画像メモリ130に、3×3の9画素分のデータを記憶することが出来、それらの格納先には、A〜Iの9つのアドレス情報が付されていたとする。
【0084】
このような場合において、制御装置100は注目画素のアドレス情報(例えば、D)をデータとして持つ制御信号Srを、例えば、アドレスコンバータF1に与えるだけで、画像取込部M1から必要な大きさの画素ブロックを読み出すことができる。
【0085】
すなわち、制御信号Srを受けると、アドレスコンバータF1はまず、注目画素のアドレス情報を画像取込部M1上のアドレス情報に変換する。そして、アドレスコンバータF1はアドレス情報の変換に続き、変換したアドレス情報の画素を中心画素とする3×3の画素ブロックを割り出す。
【0086】
その後、アドレスコンバータF1は、割り出した画素ブロックを構成する各画素データのアドレス情報を、制御装置100のアドレス情報に合うように振り直す。そして、各画素データを振り直したアドレス情報と共に制御装置100に転送する。これにより、図8の例では、画像取込部M1からアドレス18'の画素を中心画素とする3×3の画素ブロックが切り出され、これが、アドレスコンバータF1を経由して制御装置100側に取り込まれる。
【0087】
このように、本実施形態のものは、注目画素のアドレスの情報さえ指定すれば、アドレスコンバータFが必要な大きさの画素ブロックを画像取込部Mから自動的に切り出し、制御装置100に転送する。従って、制御装置100は、解像度を落とす処理を含め余分な処理をほとんど行う必要がない。
【0088】
そのため、画像データGの画像解析処理にCPU120の処理を集中させることが可能となるので、画像解析処理を高速、高精度に行うことが可能となり、追跡対象となる移動体Zを確実に追跡できる。
【0089】
また、各解像度変換回路61〜63は、共に解像度を1/4に落としており、解像度変換率が等しい。このような構成としておけば、共通の単位変換回路70を用いて解像度変換回路61〜63を構成することが可能となり、画像処理部60を安価な構成にできる。
【0090】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図9によって説明する。
実施形態1では、単位変換回路70により、2×2の4画素からなる画素ブロックBに平均値フィルタをかけて画素を統合するものを例示した。これに対して、実施形態2では、平均値フィルタのサイズを一回り大きくして、3×3の9画素からなる画素ブロックBに平均値フィルタをかけて画素を統合する構成としている。
【0091】
また、各画素ブロックBについても、図9に示すように隣接する画素ブロックBについて画素を一部重ねる設定としている。このように画素の一部を重ねることで、データが離散的にならず連続するから、例えば、エッジ検出など各種の画像処理フィルタを同時にかけることが可能となり、好ましい。
【0092】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0093】
(1)上記実施形態では、画素ブロックに平均値フィルタをかけて画素を統合することにより画像の解像度を落とすようにしたが、解像度を落とす方法はこれに限定されるものではなく、画素ブロックから特徴点の1画素を抽出するもの、或いは単に画素を間引いて解像度を落とすものであってもよい。また、フィルタも平均値フィルタである必要は必ずしもなく、画素を平滑化できればよい。
【符号の説明】
【0094】
20…カメラ
25…イメージセンサ
40…駆動装置
50…画像処理装置
60…画像処理部
61〜63…解像度変換回路
70…単位変換回路
80…データ記憶部
90…出力部
100…制御装置
U…追跡システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージセンサの出力する原画像データからそれより解像度が低い画像データを生成して保持し、外部装置の要求に応じて出力する画像処理装置であって、
入力された画像データの解像度を下げる解像度変換処理を行う解像度変換回路を多段に縦続接続してなる画像処理部と、
前記各解像度変換回路の出力する各解像度の画像データをそれぞれ保持するデータ記憶部と、
前記外部装置の要求に応じて、前記データ記憶部から指定された解像度の画像データを読み出して出力する出力部と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記解像度変換回路は、前記解像度変換処理を分担して実行する複数の単位変換回路からなることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記各解像度変換回路の解像度変換率が等しいことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記解像度変換処理は、画像データを構成する各画素ブロックに対して平均値フィルタをかけて画素を統合することにより画像の解像度を落とす処理であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
イメージセンサと、
前記イメージセンサを角変位させる駆動装置と、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置の出力する画像データに基づいて移動体を検出し、検出した移動体に前記イメージセンサを追尾させるように前記駆動装置を制御する制御装置と、を備える追跡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−226212(P2010−226212A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68525(P2009−68525)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】