説明

画像処理装置、電子機器、プログラム及び画像処理方法

【課題】 白色光の波長領域に対応する第1の画像と特定の波長領域に対応する第2の画像を取得して、第2の画像内の被写体像の種類を判別し、種類に基づいて第1の画像に強調処理を施す画像処理装置、電子機器、プログラム及び画像処理方法等を提供すること。
【解決手段】 画像処理装置は、白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得する第1画像取得部と、特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得する第2画像取得部と、第2の画像内の画素の特徴量に基づいて、第2の画像内に写された被検体像の種類を判別する種類判別部と、判別された被検体像の種類に基づいて、第1の画像に対して強調処理を施す強調部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、電子機器、プログラム及び画像処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、体腔内の組織に対して回転フィルタを用いてR1,G1,B1の3色の光を順次照射し、それらの反射光画像から作成した画像(通常光画像)を用いて診断を行う面順次式の内視鏡システムが広く使用されている。さらに、体腔内の組織に対して前述の3色の光とは特性が異なる2種類の狭帯域光G2とB2を順次照射し、それらの反射光画像から作成した狭帯域光画像を用いて診断を行う内視鏡システムが提案されている(例えば特許文献1)。また、体腔内の組織に対して狭帯域の励起光を照射し、励起光により組織から発生する自家蛍光もしくは薬剤蛍光を取得して作成した蛍光画像を用いて診断を行う内視鏡システムが提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−68113号公報
【特許文献2】特開2007−229053号公報
【特許文献3】特開2000−115553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1のような狭帯域光画像を取得する内視鏡システムを用いて診断を行うことで、例えば通常光画像による視認が困難な扁平上皮癌等の病変部が、正常部とは異なる褐色の領域として描出される。そのため、病変部の発見が容易になることが知られている。
【0005】
また、上述の特許文献2のような蛍光画像を取得する内視鏡システムを用いて診断を行う場合は、腫瘍等の病変部に特異的に集積する性質を持つ蛍光薬剤を使用することで、腫瘍等の病変部だけが蛍光を発生することになり、発見が容易になる。
【0006】
しかしこれらの狭帯域光画像や蛍光画像(これらを合わせて特殊光画像と呼ぶ)は、一般的に通常光画像と比較してかなり異なる色みを有している。さらに照明光が不足するため非常に暗い画像となるため、特殊光画像のみを用いて診断を行うことは難しい。このような理由から、ドクターの診断精度を向上するために、例えば通常光画像と特殊光画像を同時に取得して表示することが考えられる。しかし、これらの画像を並べて同時に表示すると、ドクターが常時複数の画像に注目しながら診断を行うこととなりドクターの負荷が高くなる。また、一時的に1つの画像のみに注目してしまうことで病変部を見逃すことも考えられる。
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、白色光の波長領域に対応する第1の画像と特定の波長領域に対応する第2の画像を取得して、第2の画像内の被写体像の種類を判別し、種類に基づいて第1の画像に強調処理を施す画像処理装置、電子機器、プログラム及び画像処理方法等を提供することができる。また、本発明の幾つかの態様によれば、通常光画像と特殊光画像を用いた診断を行う際にドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止する画像処理装置、電子機器、プログラム及び画像処理方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得する第1画像取得部と、特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得する第2画像取得部と、前記第2の画像内の画素の特徴量に基づいて、前記第2の画像内に写された被検体像の種類を判別する種類判別部と、前記判別された被検体像の種類に基づいて、前記第1の画像に対して強調処理を施す強調部と、を含む画像処理装置に関係する。
【0009】
本発明の一態様では、白色光の波長領域に対応する第1の画像と特定の波長領域に対応する第2の画像を取得して、第2の画像内の被写体像の種類を判別し、種類に基づいて第1の画像に強調処理を施す。そのため状況に応じた様々な強調処理を施すことができる。
【0010】
本発明の他の態様は、白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得する第1画像取得部と、特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得する第2画像取得部と、前記取得された第2の画像の種類に基づいて、前記第1の画像に対して強調処理を施す強調部と、を含む画像処理装置に関係する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、白色光の波長領域に対応する第1の画像と特定の波長領域に対応する第2の画像を取得して、第2の画像に基づいて第1の画像に強調処理を施す。そのため第2の画像の種類が複数存在する場合にも、状況に応じて様々な強調処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】種類判別及び強調処理の手法の説明図。
【図2】本実施形態のシステム構成例。
【図3】色フィルタr,g,bの分光特性。
【図4】色フィルタg2,b2の説明図。
【図5】色フィルタg2,b2の分光特性。
【図6】通常光画像取得部の構成例。
【図7】特殊光画像取得部の構成例。
【図8】色フィルタg2,b2の説明図。
【図9】領域種類判別部の構成例。
【図10】局所領域の分割手法の説明図。
【図11】ソフトウェア処理で用いられるコンピュータの構成例。
【図12】ソフトウェア処理で用いられるコンピュータの構成例。
【図13】本実施形態の処理を説明するためのフローチャート。
【図14】領域種類判別処理を説明するためのフローチャート。
【図15】種類判別及び強調処理の他の手法の説明図。
【図16】領域種類判別部の他の構成例。
【図17】強調部の構成例。
【図18】高周波成分算出部の構成例。
【図19】ウェーブレット変換による多重解像度変換画像の説明図。
【図20】内視鏡画像の説明図。
【図21】多重解像度変換画像における血管と粘膜の対応図。
【図22】領域種類判別処理を説明するための他のフローチャート。
【図23】強調処理を説明するためのフローチャート。
【図24】種類判別及び強調処理の他の手法の説明図。
【図25】領域種類判別部の他の構成例。
【図26】強調部の他の構成例。
【図27】領域種類判別処理を説明するための他のフローチャート。
【図28】本実施形態の他のシステム構成例。
【図29】特殊光画像取得部の他の構成例。
【図30】種類判別及び強調処理の他の手法の説明図。
【図31】本実施形態の他のシステム構成例。
【図32】回転フィルタの構成例。
【図33】フィルタF1の分光特性。
【図34】フィルタF2の分光特性。
【図35】色フィルタg3,r3の説明図。
【図36】色フィルタg3,r3の分光特性。
【図37】色フィルタg3,r3の説明図。
【図38】各タイミングにおけるフィルタと得られる画像の組み合わせの例。
【図39】通常光画像と特殊光画像の取得タイミングの例。
【図40】本実施形態の処理を説明するための他のフローチャート。
【図41】領域種類判別処理を説明するための他のフローチャート。
【図42】種類判別及び強調処理の他の手法の説明図。
【図43】本実施形態の他のシステム構成例。
【図44】回転フィルタの構成例。
【図45】回転フィルタの構成例。
【図46】フィルタF3の分光特性。
【図47】フィルタF4の分光特性。
【図48】色フィルタg4,b4の説明図。
【図49】色フィルタg4の分光特性。
【図50】色フィルタb4の分光特性。
【図51】強調部の他の構成例。
【図52】本実施形態の処理を説明するための他のフローチャート。
【図53】強調処理を説明するための他のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1の実施形態
第1の実施形態の概要を、図1を参照して説明する。
【0014】
本出願人は第2の画像内の被写体像の種類に応じて、第1の画像に施す強調処理を変更する手法を提案している。第1の実施形態においては、A1に示すように、第2の画像とはNBI(Narrow Band Imaging)画像である。この第2の画像内の被写体像の種類を判別する(A2)。ここでは種類判別のために用いられる特徴量は、色相Hである。A3に示すように、Hが5〜35の範囲にあるものを第1の種類とし、Hが170〜200の範囲にあるものを第2の種類とする。またどちらにも該当しないものを第3の種類とする。ここで第1の種類は表層の血管に対応し、第2の種類は深層の血管に対応する。第3の種類はそれ以外のものに対応し、たとえば粘膜等である。
【0015】
種類の判別の後は、強調範囲を決定する。本実施形態においては、強調範囲は第1の種類及び第2の種類(つまりは表層血管及び深層血管)となる(A4)。よって第1の画像(狭義には通常光画像)において強調される範囲はA5に示すような範囲となる。
【0016】
そして設定された強調範囲に対して、所定の方法で強調処理を施す。本実施形態においては、強調処理の方法はA6に示すように、色変換処理である。具体的には後述する式(9)、(10)を用いる。第1の種類と第2の種類で用いるターゲット色及びパラメータgainを変更することで、種類に応じた強調処理を施すことが可能になる。結果としてA7に示すように、血管が強調された通常光画像を取得できる。図1のA7では不図示であるが、第1の種類と第2の種類ではターゲット色が異なるため、表層血管と深層血管は異なった色味で表現されることになる。
【0017】
また、強調処理の方法は観察する部位に応じて変更することも可能である。
【0018】
次に、第1の実施形態に係る内視鏡システムについて、図2を参照して説明する。本実施形態に係る内視鏡システムは、光源部100と、撮像部200と、画像処理部300と、表示部400と、外部I/F部500を備えている。
【0019】
光源部100は、白色光を発生する白色光源110と白色光をライトガイドファイバ210に集光するための集光レンズ120を備えている。
【0020】
撮像部200は、例えば体腔への挿入を可能にするため、細長くかつ湾曲可能に形成されている。また撮像部200は着脱可能な構造をしており、観察する部位によって異なる撮像部が用いられる。一般に内視鏡分野において、撮像部200はスコープと呼ばれており、具体的に用いられるスコープとしては、上部消化器用スコープや下部消化器用スコープ等が挙げられる。
【0021】
撮像部200は、光源部100で集光された光を導くためのライトガイドファイバ210と、該ライトガイドファイバ210により先端まで導かれてきた光を拡散させて被検体に照射する照明レンズ220と、被検体から戻る反射光を集光する対物レンズ230と、集光した反射光を2つに分離するハーフミラー240と、分離された反射光を検出するための第1撮像素子250と第2撮像素子260を備えている。第1撮像素子250は通常光画像を撮影するためのベイヤ配列の色フィルタを持つ撮像素子である。第1撮像素子250の色フィルタR、G、Bは例えば図3に示すような分光特性を持っている。第2撮像素子260は、例えば図4に示すように2種類の色フィルタg2,b2が市松状に配置された撮像素子である。ここで2種類の色フィルタg2,b2は、例えば図5に示すように、b2が390〜445nm、g2が530〜550nmの波長帯域の光を透過させる特性を持つものとする。
【0022】
さらに撮像部200は内部にメモリ280を有しており、メモリ280は各スコープ固有の識別番号を保持している。メモリ280は制御部360に接続されており、制御部360はメモリ280に保持されている各スコープ固有の識別番号を参照することで、使用しているスコープを識別することが可能である。また使用しているスコープを識別することで、観察部位を識別することも可能である。
【0023】
画像処理部300は、2つのAD変換部310,311と通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330と領域種類判別部340と強調部350と制御部360を備えている。制御部360は通常光画像取得部320、特殊光画像取得部330、領域種類判別部340、強調部350に接続されていて、これらを制御するようになっている。
【0024】
外部I/F部500は、この画像処理装置に対するユーザからの入力等を行うためのインターフェースであり、電源のオン/オフを行うための電源スイッチ、撮影操作を開始するためのシャッタボタン、撮影モードやその他各種のモードを切り換えるためのモード切換ボタンなどを含んで構成されている。そして、この外部I/F部500は、入力された情報を、制御部360へ出力するようになっている。
【0025】
AD変換部310は第1撮像素子250から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して出力し、AD変換部311は第2撮像素子260から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して出力する。
【0026】
通常光画像取得部320は、AD変換部310から出力されるデジタル画像信号から通常光画像を取得する。特殊光画像取得部330はAD変換部311から出力されるデジタル画像信号から特殊光画像を取得する。通常光画像取得部320及び特殊光画像取得部330の詳細については後述する。
【0027】
通常光画像取得部320で取得された通常光画像は、強調部350に出力される。また特殊光画像取得部330で取得された特殊光画像は、領域種類判別部340に出力される。領域種類判別部340は特殊光画像内に写っている被検体の種類を判別し、その判別結果を強調部350に出力する。強調部350は領域種類判別部340から出力される判別結果に応じて通常光画像に強調処理を施し、表示部400に出力する。領域種類判別部340、及び強調部350の詳細については後述する。
【0028】
ここで、通常光画像取得部320について図6を用いて説明する。通常光画像取得部320は通常光画像生成部321と通常光画像記憶部322を備えている。通常光画像生成部321はAD変換部310より出力されるデジタル画像信号に対して画像処理を行い、通常光画像を生成する。具体的には、既存の補間処理やホワイトバランス、色変換、階調変換等の処理を行い、通常光画像を生成して出力する。ここで、通常光画像はRGB画像である。通常光画像記憶部322は通常光画像生成部321から出力された通常光画像をメモリに記憶する。
【0029】
次に特殊光画像取得部330について図7を用いて説明する。特殊光画像取得部330は特殊光画像生成部331と特殊光画像記憶部332を備えている。特殊光画像生成部331はAD変換部311より出力されるデジタル画像信号に対して画像処理を行い、特殊光画像を生成する。本実施例では特殊光画像は狭帯域光画像となる。なお、狭帯域光画像はRGB画像である。
【0030】
ここで、特殊光画像生成部331で狭帯域光画像を生成する方法について説明する。前述したように、第2撮像素子260は図4に示されるように、2種類の色フィルタg2,b2が市松状に配置された撮像素子である。従って特殊光画像生成部331には、図8に示すようなデジタル画像信号が入力される。ここで、G2(x,y)はg2フィルタの信号値を表し、B2(x,y)はb2フィルタの信号値を表すものとする。また、x,yは画像座標である。このような画像信号に対してまず補間処理を行い、全画素でg2フィルタの信号値を持つG2画像と、全画素でb2フィルタの信号値を持つB2画像を生成する。補間処理で算出される信号値は、例えば周辺4画素の信号値の平均値とすればよく、例えば図8のG2(1,1)の位置でのb2フィルタの信号値B2(1,1)、及びB2(1,2)位置でのg2フィルタの信号値G2(1,2)は下式(1)、(2)を用いて算出する。
【0031】
B2(1,1) = [ B2(0,1) + B2(1,0) + B2(1,2) + B2(2,1) ] / 4 ・・・・・(1)
G2(1,2) = [ G2(0,2) + G2(1,1) + G2(1,3) + G2(2,2) ] / 4 ・・・・・(2)
【0032】
次に前述の補間処理により生成したG2画像及びB2画像から、通常光画像と同様にR,G,Bの3種類の信号値を有するカラー画像を生成する。ここでは前記カラー画像の座標(x,y)におけるR信号にG2(x,y)を入力し、G,B信号にB2(x,y)を入力することでカラー画像を生成する。特殊光画像生成部331は、生成した前記カラー画像に対してさらにホワイトバランス、階調変換等の処理を行い、狭帯域光画像を生成する。生成した狭帯域光画像は、特殊光画像記憶部332に出力される。特殊光画像記憶部332は特殊光画像生成部331から出力された狭帯域光画像をメモリに記憶する。
【0033】
次に、領域種類判別部340の詳細について説明する。図9は第1の実施形態における領域種類判別部340の構成の一例を説明するブロック図である。領域種類判別部340は、局所領域設定部341と特徴量算出部342と種類判別部343と領域選出部344とを備えている。制御部360は、局所領域設定部341と特徴量算出部342と種類判別部343と領域選出部344に接続されていて、これらを制御するようになっている。
【0034】
局所領域設定部341は特殊光画像取得部330から出力される狭帯域光画像に対して、複数の局所領域を設定する。ここでは狭帯域光画像を矩形領域に分割し、分割した各領域を局所領域として設定する場合を例に挙げて説明する。具体的には例えば図10に示すように、5×5画素を1つの局所領域とする。ここで狭帯域光画像はM×N個の局所領域で構成されていることとし、各領域の座標を(m,n)で示すこととする。また、座標(m,n)の局所領域はa(m,n)として示すこととする。ここでは画像の左上に位置する局所領域の座標を(0,0)とし、右方向をmの正方向、下方向をnの正方向と定義する。局所領域は必ずしも矩形である必要はなく、狭帯域光画像を任意の多角形に分割し、分割されたそれぞれの領域を局所領域に設定できることは言うまでもない。また、局所領域をユーザの指示に応じて任意に設定できるようにしてもよい。また、ここでは後の計算量を削減するために、複数の隣接する画素群からなる領域を1つの局所領域としているが、1画素を1つの局所領域とすることも可能である。この場合も後の処理は全く同様である。
【0035】
特徴量算出部342は局所領域設定部341で設定された全ての局所領域に対して特徴量を算出する。本実施例では特徴量として色相を用いる場合について説明する。
【0036】
ここでは局所領域a(m,n)の色相をH(m,n)と表記する。H(m,n)を算出するため、まず各局所領域における、R,G,B信号の平均値R_ave,G_ave,B_aveを算出する。ここで、平均値R_aveは、各局所領域に含まれる全ての画素におけるR信号の平均値とする。またG_ave,B_aveについても同様に、各局所領域に含まれる全ての画素におけるG,B信号の平均値とする。なお、各信号値は8ビット(0〜255)であるとする。次に、平均値R_ave,G_ave,B_aveから例えば以下の下式(3)〜(8)を用いて各局所領域の色相H(m,n)を算出する。
【0037】
Max = MAX(R_ave, G_ave, B_ave) ・・・・・(3)
ここで、MAX関数は複数の引数の中で最大のものを出力する関数とする。
【0038】
maxが0の場合、
H = 0 ・・・・・(4)
【0039】
maxが0以外の場合、
d = MAX(R_ave, G_ave, B_ave) - MIN(R_ave, G_ave, B_ave) ・・・・・(5)
ここで、MIN関数は複数の引数の中で最小のものを出力する関数とする。
【0040】
さらに、
R_ave, G_ave, B_aveのうち、R_aveが最大の場合、
H = 60 * (G_ave - B_ave) / d ・・・・・(6)
【0041】
R_ave, G_ave, B_aveのうち、G_aveが最大の場合、
H = 60 * {2 + (B_ave - R_ave)} / d ・・・・・(7)
【0042】
R_ave, G_ave, B_aveのうち、B_aveが最大の場合、
H = 60 * {4 + (R_ave - G_ave)} / d ・・・・・(8)
【0043】
なお、Hが<0になった場合には、Hに360を加える。また、H=360の場合、H=0とする。
【0044】
次に、種類判別部343は全ての局所領域に対して算出した色相Hを用いて、局所領域に写っている被検体の種類を判別し、判別結果を領域選出部344に出力する。
【0045】
生体を被検体とした場合、光源部100より生体に照射される光のうち、短波長の光は生体の表面近くで反射されるのに対し、長波長の光は生体深部まで到達する特性がある。一方、前述したように本実施の形態において狭帯域光画像を撮影する撮像素子に用いられる2種類の色フィルタはb2が390〜445nm、g2が530〜550nmの波長帯域の光を透過する特性を持つ。従って、b2フィルタを透過するのは生体の表層で反射された短波長の光であり、g2フィルタを透過するのは、生体の深層で反射された長波長の光である。またこれらの色フィルタの透過帯域の波長は血液中に多く含まれるヘモグロビンに吸収されやすい特徴を持つ。そのため、B2画像には生体表層の血管が描出され、G2画像には生体深層の血管が描出されることになる。
【0046】
本実施の形態において、B2,G2画像から前記カラー画像を生成する際には、前述したように前記カラー画像の座標(x,y)のR信号にG2(x,y)、G,B信号にB2(x,y)信号が入力される。従って、狭帯域光画像のR信号には生体深層の血管情報が含まれ、G,B信号には生体表層の血管情報が含まれることになる。
【0047】
そのため狭帯域光画像上では、生体表層の血管が褐色の領域として描出され、生体深層の血管は青緑色の領域として描出される特徴がある。よって、生体表層の血管と生体深層の血管が異なる色相として描出されるため、特徴量として色相Hを用いることで、生体表層の血管と生体深層の血管を判別することが可能である。ここでは例えば色相Hが5〜35の範囲にある領域を生体表層の血管、色相Hが170〜200の範囲にある領域を生体深層の血管と判別すれば良い。
【0048】
種類判別部343は局所領域設定部341で設定された局所領域のうち、生体表層の血管、若しくは生体深層の血管と判別された全ての局所領域の座標と、該局所領域の種類判別の結果を示すタグ情報を領域選出部344に出力する。ここでタグ情報は、例えば生体表層の血管と判別された場合はタグの値を1とし、生体深層の血管と判別された場合はタグの値を2とすればよい。
【0049】
領域選出部344は、種類判別部343で生体表層、若しくは深層の血管と判別された局所領域a(m,n)の座標と各局所領域が含む画素の情報から、前記局所領域に含まれる全ての画素の位置を算出し、算出した画素位置情報に前述のタグ情報を付加して強調部350に出力する。
【0050】
次に、強調部350の詳細について説明する。強調部350は、領域種類判別部340から出力される画素位置に対応する、通常光画像の全ての画素に対し強調処理を施す。
ここで強調処理は、例えば生体表層の血管と判別された画素、つまりタグの値が1の画素については下式(9)に示す色変換処理を行い、生体深層の血管と判別された画素、つまりタグの値が2の画素については下式(10)に示す色変換処理を行えば良い。
R_out(x, y) = gain * R(x, y) + (1 - gain) * T_R1
G_out(x, y) = gain * G(x, y) + (1 - gain) * T_G1
B_out(x, y) = gain * B(x, y) + (1 - gain) * T_B1 ・・・・・(9)

R_out(x, y) = gain * R(x, y) + (1 - gain) * T_R2
G_out(x, y) = gain * G(x, y) + (1 - gain) * T_G2
B_out(x, y) = gain * B(x, y) + (1 - gain) * T_B2 ・・・・・(10)
【0051】
ただし、上式(9),(10)において、
R(x,y),G(x,y),B(x,y)
: 色変換処理前の通常光画像の座標(x,y)におけるRGB信号値
R_out(x,y),G_out(x,y),B_out(x,y)
: 色変換処理後の通常光画像の座標(x, y)におけるRGB信号値
T_R1, T_G1, T_B1: 生体表層の血管の目標色のRGB信号値
T_R2, T_G2, T_B2: 生体深層の血管の目標色のRGB信号値
とする。ここで、それぞれの目標色を異なる値とすることで、生体表層の血管と生体深層の血管を異なる色として描出することが可能となる。またgainは0〜1の任意の係数である。
【0052】
なお、生体表層の血管の目標色T_R1,T_G1,T_B1、生体深層の血管の目標色T_R2,T_G2,T_B2、及びgainパラメータは、外部I/F部500よりユーザが設定することも可能であるし、観察部位に応じて異なるパラメータを予め設定しておくこともできる。ここで観察部位は、前述したように制御部360がメモリ280に保持されている各スコープ固有の識別番号を参照することでも識別可能であるし、外部I/F部500よりユーザが観察部位を指定する構成としても良い。
【0053】
このような処理を行うことで、生体表層の血管と、生体深層の血管が異なる色として描出されるため、生体表層の血管と生体深層の血管の区別が容易となり、通常光画像と狭帯域光画像を用いた診断を行う際に、ドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止することが可能になる。
【0054】
なお、本実施形態では生体表層の血管、及び生体深層の血管と判別された領域に対し、個別に強調処理を施す例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、生体表層の血管と生体深層の血管のどちらか一方のみを強調する構成とすることも可能である。
【0055】
上述の構成は、生体表層の血管や生体深層の血管等の被検体の種類について、予め優先順位を設けておき、領域種類判別部340において複数の種類の被検体が検出された場合、前記優先順位が最も高い被検体の種類に従い、強調処理の方法を決定することで実現可能である。
【0056】
例えば、大腸部位の診断において腫瘍が発見された場合には、腫瘍表面の血管構造がその腫瘍の良性、悪性を判断する重要な情報となる。そのため大腸部位の診断の際には、生体表層の血管の優先順位を高くすることで、領域種類判別部340で複数の種類の被検体が検出された場合でも、生体表層の血管と判別された領域のみを強調処理することができる。これにより生体表層の血管の視認性が向上し、病変の見逃しを防止することができる。
【0057】
また食道部位の診断の際には、食道静脈瘤などの疾患が懸念されるが、食道静脈瘤は生体の比較的深部に存在するため、生体深層の血管が診断に重要な情報となる。従って食道部位の診断においては、生体深層の血管の優先順位を高くすることで、生体深層の血管と判別された領域のみを強調処理することができるため、生体深層の血管の視認性が向上し、食道静脈流の見逃し防止に有効である。
【0058】
なお、前述した優先順位は外部I/F部500よりユーザが設定しても良いし、観察部位に応じて優先順位を予め設定しておいても良い。ここで、観察部位は前述したように、制御部360がメモリ280に保持されている各スコープ固有の識別番号を参照することで決定することもできるし、ユーザが外部I/F部500により観察部位を指定することもできる。
【0059】
また強調部350における強調処理は、前述の色変換処理に限らず、任意の輝度変換や任意の色変換処理を用いることが可能なことは言うまでもない。
【0060】
また、本実施の形態では、画像処理部300を構成する各部をハードウェアで構成することとしたが、これに限定されるものではなく、例えばカプセル内視鏡などの撮像素子を用いて予め取得された画像に対して、CPUが各部の処理を行う構成とし、CPUがプログラムを実行することによってソフトウェアで実現することとしても良い。あるいは、各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成することとしても良い。
【0061】
撮像部を別体とし、画像処理部300の各部が行う処理をソフトウェアとして実現する場合には、ワークステーションやパソコン等の公知のコンピューターシステムを画像処理装置として用いることができる。そして、画像処理部300の各部が行う処理を実現するためのプログラム(画像処理プログラム)を予め用意し、この画像処理プログラムをコンピューターシステムのCPUが実行することによって実現できる。
【0062】
図11は、本変形例におけるコンピューターシステム600の構成を示すシステム構成図であり、図12は、このコンピューターシステム600における本体部610の構成を示すブロック図である。図11に示すように、コンピューターシステム600は、本体部610と、本体部610からの指示によって表示画面621に画像等の情報を表示するためのディスプレイ620と、このコンピューターシステム600に種々の情報を入力するためのキーボード630と、ディスプレイ620の表示画面621上の任意の位置を指定するためのマウス640とを備える。
【0063】
また、このコンピューターシステム600における本体部610は、図12に示すように、CPU611と、RAM612と、ROM613と、ハードディスクドライブ(HDD)614と、CD−ROM660を受け入れるCD−ROMドライブ615と、USBメモリ670を着脱可能に接続するUSBポート616と、ディスプレイ620、キーボード630およびマウス640を接続するI/Oインターフェース617と、ローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワーク(LAN/WAN)N1に接続するためのLANインターフェース618を備える。
【0064】
さらに、このコンピューターシステム600には、インターネット等の公衆回線N3に接続するためのモデム650が接続されるとともに、LANインターフェース618およびローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワークN1を介して、他のコンピューターシステムであるパソコン(PC)681、サーバ682、プリンタ683等が接続される。
【0065】
そして、このコンピューターシステム600は、所定の記録媒体に記録された画像処理プログラム(例えば図13〜図14)を参照して後述する処理手順を実現するための画像処理プログラム)を読み出して実行することで画像処理装置を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、CD−ROM660やUSBメモリ670の他、MOディスクやDVDディスク、フレキシブルディスク(FD)、光磁気ディスク、ICカード等を含む「可搬用の物理媒体」、コンピューターシステム600の内外に備えられるHDD614やRAM612、ROM613等の「固定用の物理媒体」、モデム650を介して接続される公衆回線N3や、他のコンピューターシステム(PC)681またはサーバ682が接続されるローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワークN1等のように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを記憶する「通信媒体」等、コンピューターシステム600によって読み取り可能な画像処理プログラムを記録するあらゆる記録媒体を含む。
【0066】
すなわち、画像処理プログラムは、「可搬用の物理媒体」「固定用の物理媒体」「通信媒体」等の記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録されるものであり、コンピューターシステム600は、このような記録媒体から画像処理プログラムを読み出して実行することで画像処理装置を実現する。なお、画像処理プログラムは、コンピューターシステム600によって実行されることに限定されるものではなく、他のコンピューターシステム(PC)681またはサーバ682が画像処理プログラムを実行する場合や、これらが協働して画像処理プログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0067】
各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成する場合の一例として、予め取得された通常光画像と狭帯域光画像に対して、図2の領域種類判別部340及び、強調部350の処理をソフトウェアで実現する場合の処理手順を、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
この場合はまず狭帯域光画像をメモリに読み込み(Step1)、次にこの狭帯域光画像と同時に取得された通常光画像をメモリに読み込む(Step2)。次に読み込んだ狭帯域光画像を用いて被検体の種類を判別する(Step3)。領域種類判別ステップ(Step3)の詳細は後述する。その後、判別結果に応じて通常光画像に強調処理を施し、強調処理後の画像を表示画像として出力する(Step4)。強調処理は前述の式9及び10を用いて行う。全ての画像に対して一連の処理が完了した場合は処理を終了し、未処理の画像が残っている場合は同様の処理を継続する(Step5)。
【0069】
次に、図13の領域種類判別ステップ(Step3)での詳細な処理手順について、図14のフローチャートを用いて説明する。局所領域設定ステップでは狭帯域光画像に対して、前述の図10に示されるように複数の局所領域を設定する(Step31)。次に設定した全ての局所領域に対して特徴量を算出する(Step32)。ここでは特徴量の一例として前述の上式(3)〜(8)で示される色相Hを使用する。そして、全ての局所領域で算出した色相Hを基に種類判別処理を行う(Step33)。具体的には、色相Hが5〜35の領域を生体表層の血管、色相が170〜200の領域を生体深層の血管と判別する。さらに生体表層、深層の血管のいずれかに判別された局所領域a(m,n)の座標と、各局所領域が含む画素の情報から、前記領域に含まれる全ての画素の位置を算出し、算出した画素の位置情報と、該画素の判別結果を示すタグ情報を付加して出力する(Step34)。
【0070】
このような処理を行うことで、生体表層の血管と、生体深層の血管が異なる色として表示されるため、生体表層の血管と生体深層の血管の区別が容易となり、通常光画像と狭帯域光画像を用いた診断を行う際に、ドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止することが可能になる。
【0071】
以上の本実施形態では、第1画像取得部(狭義には通常光画像取得部320)は白色光の波長帯域に対応する第1の画像(狭義には白色光画像)を取得し、第2画像取得部(狭義には特殊光画像取得部330)は特定の波長帯域(狭義には狭帯域光や蛍光等の波長帯域)に対応する第2の画像(狭義には狭帯域画像や蛍光画像等の特殊光画像)を取得する。そして種類判別部343は、第2の画像内の画素の特徴量を用いて、第2の画像内に写された被検体像の種類を判別する。強調部350は、種類判別部343の判別に基づいて、第1の画像に対して強調処理を施す。
【0072】
ここで種類とは、後述するように病変に関する種類や、血管に関する種類である。具体的には例えば、第1の種類が病変部であり、第2の種類が正常部である。また、第1の種類が表層血管、第2の種類が深層血管、第3の種類が血管以外(粘膜等)であることも考えられる。
【0073】
また、画素の特徴量とは、具体的には色相Hやエッジ量E、信号値(R,G,B)等が考えられ、観察する対象(強調処理を施したい対象)に応じて適切なものが選択される。
【0074】
これにより、通常光画像(白色光画像)と特殊光画像(NBI画像や蛍光画像等)を取得した上で、特殊光画像において被検体像の種類を判別することが可能になる。そして判別した種類に基づいて、通常光画像に対する強調処理の方法を変更することができる。よって、具体的には例えば、病変部と正常部の判別を行い、病変部のみに強調処理を施すこと等が可能になる。また、表層血管と深層血管の判別を行い、表層血管と深層血管で強調処理の方法を変えることなどもできる。
【0075】
また、強調部350は、被検体像が属する部位に応じて、強調処理の方法を変更してもよい。
【0076】
これにより、観察部位が異なる場合に、強調処理の方法を変更することが可能になる。具体的には例えば、第1の種類が表層血管であり、第2の種類が深層血管、第3の種類が血管以外(粘膜等)である場合を考える。ここで大腸を観察する場合には、腫瘍の表層血管が病変の良性・悪性を判断する重要な情報となる。そのため、第1の種類である表層血管を優先的に強調表示することが考えられる。例えば、第1の種類の色変換処理において、第2の種類の色変換処理に比べて、ターゲット色をより目立ちやすい色に設定することなどが考えられる。また、第2の種類は強調表示を行わないとしてもよい。
【0077】
また、食道静脈瘤では、深層血管が重要な診断情報となるため、食道観察時は第2の種類を優先的に強調表示すればよい。
【0078】
また、第1の画像と第2の画像の少なくとも一方は、画像処理装置の外部に設けられた撮像装置により撮像されてもよい。その場合、撮像装置に関する情報に基づいて、被検体像が属する部位が決定される。
【0079】
これにより、部位を決定する手段として、撮像装置に関する情報を使用することが可能になる。ここで撮像装置とは、例えば内視鏡の挿入部(スコープ)に対応するものである。具体的には、上部消化器用スコープや下部消化器用スコープ等がある。スコープには固有の識別番号があり、例えば識別番号をメモリに格納しておくことで、使用されているスコープを識別することが可能になる。上述したように観察部位により使用されるスコープが異なるため、スコープを識別することで観察部位を特定することが可能になる。
【0080】
また、第2の画像内に複数の被検体像が存在してもよい。その場合、種類判別部343は各被検体像が第1〜第N(Nは2以上の整数)の種類のうち、いずれの種類に属するかを判別する。そして、強調部350は判別結果に応じて強調処理の方法を決定する。
【0081】
これにより、複数の被検体像が一度に検出されたとしても、それぞれを適切な種類に判別した上で、判別結果に応じて強調処理の方法を決定できる。
【0082】
具体的には図1のA1に示すように血管が2本、背景となる粘膜が観察されたとき、被検体像は全部で3つ存在することになる。この場合、N=3はあらかじめ決定されており、3つの被検体像を第1〜第3の種類のどれに属するか、それぞれ判別することになる。図1のA3の場合、左の血管は表層血管であるので第1の種類に、右の血管は深層血管であるので第2の種類に、粘膜は第3の種類にそれぞれ判別される。ここでは1つの種類に1つの被検体像が対応したが、1つの種類に複数の被検体像が対応したり、ある種類には対応する被検体像が存在しないこともありうるのは、当業者には容易に理解可能であろう。
【0083】
そして、強調部350は種類に応じて強調処理の方法を決定できる。具体的には例えば図1のA6に示したように、第1の種類及び第2の種類は、それぞれ異なるパラメータを用いた色変換を行い、第3の種類には強調処理を施さない、ということが考えられる。
【0084】
また、第1〜第Nの種類の各種類には、種類に応じた優先度が設定されていてもよい。そして優先度に基づいて強調処理の方法を決定してもよい。優先度は具体的には、被検体像が属する部位に応じて、強調部350により設定されてもよい。
【0085】
これにより、優先度に基づいた強調処理が可能になる。そして優先度の設定は、被検体像が属する部位に基づいて決めることもできる。具体的には、前述したように大腸の観察では表層血管が重要であり、食道の観察では深層血管が重要である。よって、大腸に属する被検体像を観察する場合には、表層血管が属する種類(図1の例では第1の種類)の優先度を高く設定し、食道を観察する場合には深層血管が属する種類(第2の種類)の優先度を高く設定すればよい。
【0086】
また、強調部350は、優先度の最も高い種類に属する被検体に対して、当該種類に対応する強調方法を用いて強調処理を行ってもよい。
【0087】
これにより、優先度の最も高い種類のみに対して強調処理を行い、他の種類に対して強調処理を行わないことで、相対的に優先度の最も高い種類に属する被検体像を際だたせることが可能になる。
【0088】
また、強調部350は、第1〜第Nの種類のうちの第iの種類に属する被検体像に対しては、第iの強調方法で強調処理を行い、第jの種類に属する被検体像に対しては、第jの強調方法で強調処理を行ってもよい。
【0089】
これにより、第1〜第Nの種類の中で、2以上の任意の数の種類に対して、それぞれの方法を用いて強調処理を行うことが可能になる。前述の表層血管と深層血管の例で言えば、両方の血管が診断において重要な情報になる場合などに、効果を発揮する。
【0090】
また、第2の画像の種類として、複数の種類が存在してもよい。その場合、被検体像の種類及び第2の画像の種類に応じて強調処理の方法が決定される。具体的には、第2の画像の種類がNBI画像であり、被検体像の種類が血管か否かである場合には、血管に対応する領域である対応注目領域に対して強調処理を施す(図1に対応)。
【0091】
ここで、対応注目領域とは、領域選出部344によって、第1の画像内から選出される領域であり、第2の画像における注目領域(被検体像を含む領域)に対応する領域のことである。
【0092】
これにより、被検体像の種類だけでなく、第2の画像の種類も考慮した上で強調処理の方法を決定することが可能になる。具体的には図1に示すように、血管+NBI画像の組み合わせの場合は血管を強調することが考えられる。
【0093】
また、特徴量はエッジ量、色相、彩度などであってもよい。
【0094】
これにより、観察対象等に応じて、様々な特徴量を用いて被検体像の種類を判別することが可能になる。
【0095】
また、被検体像の種類は、病変に関する種類及び血管に関する種類のうち、少なくとも1つの種類であってもよい。
【0096】
これにより、血管か否か、血管は表層血管であるか深層血管であるか、病変か否かといったことを種類として判別することが可能になる。
【0097】
また、特定の波長帯域とは、白色光の波長帯域よりも狭い帯域である。具体的には第1の画像及び第2の画像は生体内画像であり、特定の波長帯域とは、血液中のヘモグロビンに吸収される波長の波長帯域である。さらに具体的には、390nm〜445nmまたは530nm〜550nmの波長帯域である。
【0098】
これにより、生体の表層部及び、深部に位置する血管の構造を観察することが可能になる。また得られた信号を特定のチャンネル(R,G,B)に入力することで、扁平上皮癌等の通常光では視認が難しい病変などを褐色等で表示することができ、病変部の見落としを抑止することができる。なお、390nm〜445nmまたは530nm〜550nmとはヘモグロビンに吸収されるという特性及び、それぞれ生体の表層部または深部まで到達するという特性から得られた数字である。ただし、この場合の波長帯域はこれに限定されず、例えばヘモグロビンによる吸収と生体の表層部又は深部への到達に関する実験結果等の変動要因により、波長帯域の下限値が0〜10%程度減少し、上限値が0〜10%程度上昇することも考えられる。
また、第1の画像および第2の画像は生体内を写した生体内画像であってもよい。そして生体内画像に含まれる特定の波長帯域とは、蛍光物質が発する蛍光の波長帯域であってもよい。具体的には490nm〜625nmの波長帯域である。
【0099】
これにより、AFIと呼ばれる蛍光観察が可能となる。励起光(390nm〜470nm)を照射することで、コラーゲンなどの蛍光物質からの自家蛍光を観察することができる。このような観察では病変を正常粘膜とは異なった色調で強調表示することができ、病変部の見落としを抑止すること等が可能になる。なお490nm〜625nmという数字は、前述の励起光を照射した際、コラーゲンなどの蛍光物質が発する自家蛍光の波長帯域を示したものである。ただし、この場合の波長帯域はこれに限定されず、例えば蛍光物質が発する蛍光の波長帯域に関する実験結果等の変動要因により、波長帯域の下限値が0〜10%程度減少し、上限値が0〜10%程度上昇することも考えられる。また、ヘモグロビンに吸収される波長帯域(540nm〜560nm)を同時に照射し、擬似カラー画像を生成してもよい。
【0100】
また、第1の画像および第2の画像は生体内を写した生体内画像であってもよい。そして生体内画像に含まれる特定の波長帯域とは、赤外光の波長帯域であってもよい。具体的には790nm〜820nmまたは905nm〜970nmの波長帯域である。
【0101】
これにより、IRIと呼ばれる赤外光観察が可能となる。赤外光が吸収されやすい赤外指標薬剤であるICG(インドシアニングリーン)を静脈注射した上で、上記波長帯域の赤外光を照射することで、人間の目では視認が難しい粘膜深部の血管や血流情報を強調表示することができ、胃癌の深達度診断や治療方針の判定などが可能になる。なお790nm〜820nmという数字は赤外指標薬剤の吸収がもっとも強いという特性から、905nm〜970nmという数字は赤外指標薬剤の吸収がもっとも弱いという特性から求められたものである。ただし、この場合の波長帯域はこれに限定されず、例えば赤外指標薬剤の吸収に関する実験結果等の変動要因により、波長帯域の下限値が0〜10%程度減少し、上限値が0〜10%程度上昇することも考えられる。
【0102】
また、本実施形態は、画像処理装置(画像処理部)を含む電子機器にも適用できる。
【0103】
例えば本実施形態にかかる画像処理装置は、内視鏡の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、パーソナルコンピューター等の様々なタイプの電子機器(電圧、電流等の動力源で動作する機器)に搭載することが可能である。
【0104】
また、本実施形態は、第1画像取得部と、第2画像取得部と、種類判別部343と、強調部350としてコンピュータを機能させるプログラムであってもよい。第1画像取得部は白色光の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第1の画像として取得し、第2画像取得部は特定の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第2の画像として取得する。種類判別部343は、第2の画像内の画素の特徴量に基づいて、被検体像の種類を判別する。強調部350は、領域種類判別部340の判別による被検体像の種類に基づいて、第1の画像に対して強調処理を施す。
【0105】
これにより、例えばカプセル型内視鏡などのように、まず画像データを蓄積し、その後、蓄積された画像データに対してPC等のコンピューターシステムでソフトウェア的に処理を行うことが可能になる。
【0106】
また、本実施形態は、第1画像取得部と、第2画像取得部と、強調部350としてコンピュータを機能させるプログラムであってもよい。第1画像取得部は白色光の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第1の画像として取得し、第2画像取得部は特定の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第2の画像として取得する。強調部350は、第2の画像の種類に基づいて、第1の画像に対して強調処理を施す。
【0107】
これにより、例えばカプセル型内視鏡などのように、まず画像データを蓄積し、その後、蓄積された画像データに対してPC等のコンピューターシステムでソフトウェア的に処理を行うことが可能になる。特に、被検体像の種類ではなく、第2の画像の種類に基づいて強調処理を行うことが可能になる。
【0108】
また、本実施形態は、白色光の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第1の画像として取得し、特定の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第2の画像として取得し、第2の画像内の画素の特徴量に基づいて、被検体像の種類を判別し、被検体像の種類に基づいて、第1の画像に対して強調処理を施す画像処理方法であってもよい。
【0109】
これにより、本実施形態の処理を実行可能な、画像処理方法を実現することができる。
【0110】
また、本実施形態は、白色光の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第1の画像として取得し、特定の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第2の画像として取得し、第2の画像の種類に基づいて、第1の画像に対して強調処理を施す画像処理方法であってもよい。
【0111】
これにより、本実施形態の処理を実行可能な、画像処理方法を実現することができる。特に、被検体像の種類ではなく、第2の画像の種類に基づいて強調処理を行うことが可能になる。
【0112】
また本実施形態は、本実施形態の各部(第1画像取得部、第2画像取得部、領域種類判別部、強調部)を実現するプログラムコードが記録されたコンピュータプログラムプロダクトにも適用できる。
【0113】
ここでプログラムコードとは、白色光の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第1の画像として取得する第1画像取得部と、特定の波長帯域における情報を有した被写体像を含む画像を第2の画像として取得する第2画像取得部と、前記第2の画像内の画素の特徴量に基づいて、前記第2の画像内に写された被検体像の種類を判別する領域種類判別部と、前記判別された被検体像の種類に基づいて、前記第1の画像に含まれる信号に対して強調処理を施す強調部と、を実現する。
【0114】
またコンピュータプログラムプロダクトは、例えば、プログラムコードが記録された情報記憶媒体(DVD等の光ディスク媒体、ハードディスク媒体、メモリ媒体等)、プログラムコードが記録されたコンピュータ、プログラムコードが記録されたインターネットシステム(例えば、サーバとクライアント端末を含むシステム)など、プログラムコードが組み込まれた情報記憶媒体、装置、機器或いはシステム等である。この場合に、本実施形態の各構成要素や各処理プロセスは各モジュールにより実装され、これらの実装されたモジュールにより構成されるプログラムコードは、コンピュータプログラムプロダクトに記録される。
【0115】
2.第2の実施形態
第2の実施形態の概要について、図15を参照して説明する。目的は第1の実施形態と同様に、第2の画像内の被写体像の種類を判別し、種類に応じて、第1の画像に対して強調処理を施すことである。
【0116】
第2の実施形態においては、B1に示すように、第2の画像とはNBI画像である。この第2の画像内の被写体像の種類を判別する(B2)。ここでは種類判別のために用いられる特徴量は、色相Hである。B3に示すように、Hが5〜35の範囲にあり、所定の閾値以上の大きさのものを第1の種類とし、それ以外のものを第2の種類とする。ここで第1の種類は病変部に対応し、第2の種類はそれ以外の部分(正常部)に対応する。
【0117】
種類の判別の後は、強調範囲を決定する。本実施形態においては、第1の種類(病変部)が検出されたことを条件に、第1の画像全体に対して強調処理が行われる(B4)。よって第1の画像において強調される範囲はB5に示すような範囲となる。また、第1の種類が検出されなかった場合、強調処理は行われない。
【0118】
そして設定された強調範囲に対して、所定の方法で強調処理を施す。本実施形態においては、強調処理の方法は高長波成分の加算である。具体的には後述するウェーブレット変換等を用いる(B6)。第1の種類が検出されたか否かで、強調処理を変更することで、種類に応じた強調処理を施すことが可能になる。結果としてB7に示すように、血管及び病変部が強調された通常光画像を取得できる。なお、高周波成分の加算は、血管を強調することに対応するが、病変部には血管が密集するという特性があるため、病変部も強調されることになる。
【0119】
次に、第2の実施形態にかかる内視鏡システムについて説明する。本実施形態における内視鏡システムの構成は図2に示す通りである。また、領域種類判別部340及び強調部350以外の処理は第1の実施形態と同様である。
【0120】
本実施の形態における領域種類判別部340の具体的な構成について説明する。基本構成は、図9に示す領域種類判別部340と同等であり、同一の構成には同一の名称と番号を割り当てている。以下、異なる部分のみ説明する。
【0121】
図16は本実施の形態における領域種類判別部340の構成の一例を示すブロック図である。領域種類判別部340は、局所領域設定部341と特徴量算出部342と種類判別部343を備えている。特殊光画像取得部330から出力される狭帯域光画像は、局所領域設定部341に出力される。制御部360は局所領域設定部341、特徴量算出部342、種類判別部343に接続されていて、これらを制御するようになっている。また種類判別部343は強調部350に接続されている。なお、局所領域設定部341、特徴量算出部342の処理は第1の実施形態と同様である。
【0122】
種類判別部343は、特徴量算出部342で算出された全ての局所領域における色相Hを用いて、各局所領域が病変と疑われる領域かどうかを判別し、その結果を強調部350に出力する。本実施の形態で使用している狭帯域光画像においては、扁平上皮癌等の病変部が褐色の領域として描出されるため、特徴量として色相Hを使用することで、病変と疑われる領域かどうかを判別することができる。具体的には色相Hが5〜35の領域を、病変と疑われる領域と判別すればよい。
【0123】
種類判別部343は、狭帯域光画像内に病変と疑われる領域が存在したか否かのフラグ情報を強調部350に出力する。フラグ情報は、例えば全ての局所領域のうち所定の数以上、病変と疑われる領域が存在した場合にはフラグ情報を1とし、存在しない場合にフラグ情報を0とすればよい。
【0124】
なお、局所領域設定部341の設定する局所領域は、5×5の矩形領域には限られない旨を第1の実施形態で述べた。本実施形態では、例えば16×16といった比較的大きな領域を局所領域として設定することが考えられる。これは、病変部には正常部に比べて血管が密集しているという特性によるものである。つまり、5×5のような小さな領域では、血管が密集していなくとも(例えば1本のみであっても)色相Hは5〜35の領域に入ってしまう。そのため画像内の領域が病変であるかどうかの判定は、病変と疑われる領域が密集しているかどうかの判定に基づいて行われる必要がある。すなわち、前述したように、適切な閾値を設定した上で、病変と疑われる領域が閾値以上であるかどうか判断する必要がある。
【0125】
これに対して、16×16のような比較的大きい領域を局所領域として設定した場合、局所領域内に多数の血管が入るだけのスペースを有しているため、Hが5〜35になるためには、血管が密集している必要がある。そのため、画像内の領域が病変であるかどうかの判定は、病変と疑われる領域が1つあるかどうかによって判定することが可能になる。
【0126】
次に、強調部350の構成について説明する。図17は、本実施の形態における強調部350の構成の一例を示すブロック図である。強調部350は、YC分離部351と高周波成分算出部352と高周波成分加算部353とYC合成部354を備えている。通常光画像取得部320から出力される通常光画像は、YC分離部351に出力される。また領域種類判別部340から出力されるフラグ情報は、高周波成分加算部353に出力される。制御部360は、YC分離部351、高周波成分算出部352、高周波成分加算部353、YC合成部354に接続されていて、これらを制御するようになっている。また、YC合成部354は表示部400に接続されている。
【0127】
YC分離部351は、通常光画像取得部320から出力される通常光画像を、公知のYC分離処理を用いて輝度色差信号に変換する。輝度色差信号への変換には、例えば下式(11)を用いれば良い。下式(11)においてYは通常光画像の輝度信号、Cb,Crは色差信号である。
【0128】
YC分離部351は輝度色差信号に変換した通常光画像を、高周波成分算出部352及び高周波成分加算部353に出力する。ここで、高周波成分算出部352には輝度色差信号のうち輝度信号のみが、高周波成分加算部353には輝度色差信号の両方が出力される。
【0129】
【数1】

【0130】
高周波成分算出部352は、例えば公知のウェーブレット変換を用いて通常光画像の輝度信号を多重解像度変換し、多重解像度変換後の輝度信号から高周波成分を抽出して高周波成分加算部353に出力する。高周波成分算出部352の処理については後述する。
【0131】
高周波成分加算部353は領域種類判別部340から出力されるフラグ情報に応じて、YC分離部351から出力される通常光画像の輝度信号に、高周波成分算出部352から出力される高周波成分を加算し、YC合成部354に出力する。
【0132】
YC合成部354は、高周波成分加算部353から出力される通常光画像に対し、公知のYC合成処理を施しRGB画像に変換し、表示部400に出力する。YC合成処理は例えば下式(12)を用いれば良い。
【0133】
【数2】

【0134】
ここで、高周波成分算出部352の処理の詳細を説明する。図18は本実施の形態における、高周波成分算出部352の構成の一例を示した図である。高周波成分算出部352は、多重解像度変換部3521と高周波成分抽出部3522を含む。制御部360は多重解像度変換部3521と高周波成分抽出部3522に接続されていて、これらを制御するようになっている。また、高周波成分抽出部3522は高周波成分加算部353に接続されている。YC分離部351から出力される通常光画像は、多重解像度変換部3521に出力される。
【0135】
多重解像度変換部3521は、YC分離部351から出力される通常光画像の輝度信号に対し、公知のウェーブレット変換を用いて多重解像度変換を行う。ここでは、多重解像度変換後の画像を多重解像度変換画像と表記する。
ウェーブレット変換は、通常光画像の座標(x,y)における輝度信号Y(x,y)と、多重解像度変換画像の座標(i,j)における信号値S(i,j)を用いて下式(13)で表すことができる。ただし、通常光画像の画像幅をImW、画像高さをImHとする。
【0136】
【数3】

【0137】
図19は、多重解像度変換画像と通常光画像の輝度信号の周波数成分との対応関係を示したものである。図19に示すように、多重解像度変換画像において画像左上の領域は通常光画像の輝度信号の低周波成分に相当し、画像右上の領域は通常光画像の輝度信号の水平高周波成分、画像左下の領域は通常光画像の輝度信号の垂直高周波成分、画像右下の領域は通常光画像の輝度信号の対角高周波成分に相当する。
【0138】
一方、図20は内視鏡画像の輝度信号の一例を示したものであり、図21は図20に示す内視鏡画像の輝度信号に対し、ウェーブレット変換を行った結果を示した図である。内視鏡画像において、血管部位は低周波成分と高周波成分の両方が含まれるのに対し、粘膜部位は低周波成分が多く含まれ、高周波成分が少ない特徴がある。そのため、図21に示す多重解像度変換後の画像において、図19に示す低周波成分領域には血管部位及び粘膜部位の両方が分布し、図19に示す水平高周波成分、垂直高周波成分、対角高周波成分領域には血管部位が主に分布することになる。
【0139】
高周波成分抽出部3522は、多重解像度変換部3521から出力される多重解像度変換画像から、後述する方法で高周波成分のみを抽出した高周波成分画像を作成し、作成した画像を高周波成分加算部353に出力する。ここで高周波成分画像は、通常光画像と同じ大きさであり、多重解像度変換画像の水平高周波成分、垂直高周波成分、対角高周波成分のいずれかの成分の組み合わせで構成されるものとする。
具体的には、高周波成分画像の座標(x,y)における信号値H(x,y)は例えば下式(14)により与えられる。ただし、下式(14)においてFloor(a)は実数aの小数点以下を切り捨てる処理を表すものとし、abs_max(a,b,c)は実数a,b,cのうち、絶対値が最大の実数を選出する処理を表すものとする。
【0140】
【数4】

【0141】
高周波成分加算部353は、領域種類判別部340から出力されるフラグ情報に応じて、YC分離部351から出力される通常光画像に強調処理を施してYC合成部354に通常光画像を出力する。
【0142】
具体的には、領域種類判別部340から出力されるフラグ情報が1の場合、つまり病変と疑われる領域が存在する場合には、高周波成分算出部352から出力される高周波成分画像を通常光画像の輝度信号に加算し、加算処理後の通常光画像をYC合成部354に出力する。また、領域種類判別部340から出力されるフラグ情報が0の場合、つまり病変と疑われる領域が存在しない場合には、YC分離部351から出力される通常光画像をそのままYC合成部354に出力する。
【0143】
このような処理を行うことで、病変部と疑われる領域が通常光画像内に写っている場合に、病変の診断に重要となる血管部位が強調して表示されるため、通常光画像と狭帯域光画像を用いた診断を行う際にドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止することが可能になる。
【0144】
また、本実施の形態では画像処理部300を構成する各部をハードウェアで構成することとしたが、第1の実施形態と同様に予め取得された画像に対して、CPUが各部の処理を行う構成とし、CPUがプログラムを実行することによってソフトウェアとして実現することとしてもよい。あるいは各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成することとしてもよい。
【0145】
各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成する場合の一例として、予め取得された通常光画像と狭帯域光画像に対して、図2の領域種類判別部340及び、強調部350の処理をソフトウェアで実現する場合の処理手順について説明する。この場合の処理手順は図13に示す通りで、領域種類判別ステップ(Step3)及び強調処理ステップ(Step4)以外は第1の実施形態と同様である。
【0146】
本実施の形態における図13の領域種類判別ステップ(Step3)での詳細な処理について、図22のフローチャートを用いて説明する。局所領域設定ステップでは狭帯域光画像に対して、第1の実施形態と同様の方法で複数の局所領域を設定する(Step311)。次に、特徴量算出ステップでは設定した全ての局所領域に対して、第1の実施形態と同様の方法で特徴量を算出する(Step312)。ここでは特徴量の一例として色相Hを使用する。種類判別ステップでは、全ての局所領域に対して種類判別処理を行い、病変と疑われる領域が存在したか否かの判別結果をフラグ情報として出力する(Step313)。ここで種類判別処理は、例えば色相Hが5〜35の範囲にある局所領域を病変と疑われる領域と判別する処理とし、全ての局所領域のうち所定の閾値以上、病変と疑われる領域があった場合にはフラグ情報1を出力し、閾値以下の場合にはフラグ情報0を出力する。
【0147】
次に強調処理ステップ(Step4)の詳細な処理について図23のフローチャートを用いて説明する。YC分離処理ステップではまず、通常光画像を式11に示す公知のYC分離処理を用いて輝度色差信号に変換する(Step411)。次に多重解像度変換ステップでは、YC分離処理後の輝度信号に対し、式13に示す公知のウェーブレット変換を用いて多重解像度変換処理を施す(Step412)。そして高周波成分画像作成ステップでは、多重解像度変換後の画像より式14を用いて高周波成分画像を作成する(Step413)。Step414では、Step313より出力されるフラグ情報を参照し、フラグ情報が1の場合はStep415、0の場合はStep416の処理を実行する。Step415では、通常光画像の輝度信号にStep413で作成した高周波成分画像を加算する処理を施す。Step416では式12に示すYC合成処理により通常光画像をRGB信号に変換して出力する。
【0148】
このような処理を行うことで、病変部と疑われる領域が通常光画像内に写っている場合に病変の診断に重要となる血管部位が強調して表示されるため、通常光画像と狭帯域光画像を用いた診断を行う際にドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止することが可能になる。
【0149】
以上の本実施形態では、第2の画像の種類として、複数の種類が存在してもよい。その場合、被検体像の種類及び第2の画像の種類に応じて強調処理の方法が決定される。具体的には、第2の画像の種類がNBI画像であり、被検体像の種類が病変か否かである場合には、画像全体に対して強調処理を施す(図15に対応)。
【0150】
これにより、被検体像の種類だけでなく、第2の画像の種類も考慮した上で強調処理の方法を決定することが可能になる。具体的には図15に示すように、病変+NBI画像の組み合わせの場合は画像全体を強調することが考えられる。
【0151】
また、強調部350は、第1の画像全体に対して、第1の画像の空間周波数のうち、特定の周波数成分を強調する。
【0152】
これにより、ウェーブレット変換等によって得られる多重解像度変換画像から、特定の周波数成分を強調することが可能になる。具体的には例えば、高周波成分を強調(加算処理)することで、高周波成分を多く含む血管部を強調すること等が可能になる。
【0153】
3.第3の実施形態
第3の実施形態の概要について、図24を参照して説明する。目的は第1の実施形態と同様に、第2の画像内の被写体像の種類を判別し、種類に応じて、第1の画像に対して強調処理を施すことである。
【0154】
第3の実施形態においては、C1に示すように、第2の画像とはNBI画像である。この第2の画像内の被写体像の種類を判別する(C2)。ここでは種類判別のために用いられる特徴量は、エッジ量Eである。C3に示すように、エッジ量Eが所定の閾値以上の大きさのものを第1の種類とし、それ以外のものを第2の種類とする。ここで第1の種類は血管に対応し、第2の種類はそれ以外の部分(例えば粘膜)に対応する。
【0155】
種類の判別の後は、強調範囲を決定する。本実施形態においては、第1の画像内の、第1の種類(血管)に対応する部分に対して強調処理が行われる(C4)。よって第1の画像において強調される範囲はC5に示すような範囲となる。
【0156】
そして設定された強調範囲に対して、所定の方法で強調処理を施す。本実施形態においては、強調処理の方法はエッジ量Eの加算である。具体的には第1の画像の輝度成分にエッジ量Eの値を加算する(C6)。第1の種類に対して強調処理を行い、第2の種類に対しては強調処理を行わないことで、種類に応じた強調処理を施すことが可能になる。結果としてC7に示すように、血管が強調された通常光画像を取得できる。
【0157】
次に、第3の実施形態にかかる内視鏡システムについて説明する。本実施形態における内視鏡システムの構成は図2に示す通りである。また、領域種類判別部340及び強調部350以外の処理は第1の実施形態と同様である。
【0158】
本実施の形態における領域種類判別部340の具体的な構成について説明する。基本構成は、図9に示す領域種類判別部340と同等であり、同一の構成には同一の名称と番号を割り当てている。以下、異なる部分のみ説明する。
【0159】
図25は本実施の形態における領域種類判別部340の構成の一例を示すブロック図である。領域種類判別部340は、輝度信号算出部345と特徴量算出部342と種類判別部343を備えている。特殊光画像取得部330からの画像信号は、輝度信号算出部345に出力される。また輝度信号算出部345は特徴量算出部342に接続されており、特徴量算出部342は種類判別部343に接続されている。また種類判別部343は強調部350に接続されている。制御部360は輝度信号算出部345、特徴量算出部342、種類判別部343に接続されていて、これらを制御するようになっている。
【0160】
輝度信号算出部345は特殊光画像取得部330より出力される狭帯域光画像から、全ての画素について輝度信号Yを算出し、特徴量算出部342に出力する。輝度信号の算出には例えば上式(11)を用いれば良い。
【0161】
特徴量算出部342は、輝度信号算出部345から出力される輝度信号を用いて、通常光画像の全ての画素におけるエッジ量Eを算出し、種類判別部343に出力する。ここで、狭帯域光画像の座標(x,y)におけるエッジ量E(x,y)の算出には例えば下式(15)を用いれば良い。
【0162】
【数5】

【0163】
種類判別部343は、特徴量算出部342から出力されるエッジ量を基に、狭帯域光画像の全ての画素について、該画素が血管であるか否かの判別処理を行う。内視鏡画像は血管領域でエッジ量が大きく、粘膜領域ではエッジ量が小さい特徴があるため、エッジ量を用いて血管領域を判別することが可能である。判別処理は例えば下式(16)に示すように、エッジ量E(x,y)が閾値E_aveより大きい場合に、座標(x,y)の画素を血管と判別すれば良い。なお、閾値E_aveは例えば、狭帯域光画像の全ての画素より算出したエッジ量E(x,y)の平均値とすれば良い。種類判別部343は、血管であると判別された全ての画素位置と、該画素におけるエッジ量E(x,y)の情報を強調部350に出力する。
【0164】
E(x,y) > E_ave ・・・・・(16)
【0165】
次に強調部350の具体的な構成について説明する。基本構成は図17に示す強調部350と同等であり、同一の構成には同一の名称と番号を割り当てている。以下、異なる部分のみ説明する。
【0166】
図26は本実施の形態における強調部350の構成の一例を示すブロック図である。強調部350は、YC分離部351とエッジ加算部355とYC合成部354を備えている。YC分離部351はエッジ加算部355に接続されており、エッジ加算部355はYC合成部354に接続されている。またエッジ加算部355は領域種類判別部340と接続されており、エッジ加算部355には前述したエッジ量E(x,y)が出力される。制御部360は、YC分離部351、エッジ加算部355、YC合成部354に接続されておりこれを制御するようになっている。なお、YC分離部351とYC合成部354の処理は第2の実施例と同様である。
【0167】
エッジ加算部355では、領域種類判別部340より出力される全ての画素位置及び該画素におけるエッジ量E(x,y)を用いて、通常光画像に強調処理を施す。具体的には、前記画素位置に対応する通常光画像の画素の輝度信号Y(x,y)に、前記エッジ量E(x,y)を加算する処理を行う。エッジ加算後の通常光画像はYC合成部354に出力される。
【0168】
なお、ここではエッジ量E(x,y)に基づいて、通常光画像に対し輝度変換処理を施す例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記エッジ量に基づいて通常光画像に色変換処理を行っても良い。
【0169】
このような処理を行うことで、血管部位が強調されるため、血管の視認性が向上し、通常光画像と狭帯域光画像を用いた診断を行う際に、ドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止することが可能になる。なお、本実施例では血管判別の際にエッジ量のみを特徴量として用いたが、生体を被検体とした場合はヒダ等の凹凸部位にもエッジ量が多く含まれる。そのため、血管判別の際には前述のエッジ量に加え、さらに第1の実施形態で示したような色相Hを特徴量として用いても良い。
【0170】
また、本実施の形態では画像処理部300を構成する各部をハードウェアで構成することとしたが、第1の実施形態と同様に予め取得された画像に対して、CPUが各部の処理を行う構成とし、CPUがプログラムを実行することによってソフトウェアとして実現することとしてもよい。あるいは各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成することとしてもよい。
【0171】
各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成する場合の一例として、予め取得された通常光画像と狭帯域光画像に対して、図2の領域種類判別部340及び、強調部350の処理をソフトウェアで実現する場合の処理手順を説明する。この場合の処理手順は図13に示す通りで、領域種類判別ステップ(Step3)及び強調処理ステップ(Step4)以外は第1の実施形態と同様である。
【0172】
本実施の形態における図13の領域種類判別ステップ(Step3)での詳細な処理について、図27のフローチャートを用いて説明する。輝度信号算出ステップでは、上式(11)を用いて狭帯域光画像の全ての画素から輝度信号を算出する(Step321)。特徴量算出ステップでは、式15を用いて、エッジ量E(x,y)を算出する(Step322)。種類判別ステップでは、全ての画素について上式(16)に示す判別処理を行い、該画素が血管かどうかを判別する。そして血管と判別された全ての画素位置と該画素におけるエッジ量E(x,y)を出力する(Step323)。
【0173】
強調処理ステップでは、領域種類判別ステップ(Step3)で出力される、血管と判別された画素位置に対応する通常光画像の輝度信号Y(x,y)に対し、エッジ量E(x,y)を加算する処理を行う(Step4)。
【0174】
このような処理を行うことで、血管部位が強調されるため、血管の視認性が向上し、通常光画像と狭帯域光画像を用いた診断を行う際に、ドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止することが可能になる。
【0175】
以上の本実施形態では、強調部350は、第2の画像から算出されたエッジ量に基づいて、第1の画像の対応注目領域に対して、輝度成分又は色成分を強調する。ここで対応注目領域とは前述の通りである。
【0176】
これにより、特徴量としてエッジ量Eを用いた種類の判別及び強調処理を行うことが可能になる。具体的にはエッジ量Eが平均値よりも大きい領域に対して、輝度成分(YCrCbのY成分)や色成分(R,G,B成分)にエッジ量Eを加算することが考えられる。本実施形態では種類の判別(血管か否か)に用いられる特徴量と、強調に用いられるパラメータがともにエッジ量Eとなる。
【0177】
4.第4の実施形態
本発明の第4の実施形態にかかる内視鏡システムについて、図28を参照して説明する。第1〜3の実施形態では2つの撮像素子を用いて通常光画像と特殊光画像を取得したが、ここでは例えばベイヤ配列の色フィルタを持つ第1撮像素子だけから、画像処理を用いて通常光画像と特殊光画像を取得してもよい。本実施形態に係る内視鏡システムは、光源部100と、撮像部200と、画像処理部300と、表示部400と、外部I/F部500を備えている。なお以下では第1の実施形態等と重複する部分については、適宜、その説明を省略する。
【0178】
光源部100は、白色光を発生する白色光源110と集光レンズ120を備えている。
【0179】
撮像部200は、例えば体腔への挿入を可能にするため、細長くかつ湾曲可能に形成されている。また撮像部200は着脱可能な構造をしており、観察する部位によって異なる撮像部が用いられる。一般に内視鏡分野において、撮像部200はスコープと呼ばれており、具体的に用いられるスコープとしては、上部消化器用スコープや下部消化器用スコープ等が挙げられる。
【0180】
撮像部200は、光源部100で集光された光を導くためのライトガイドファイバ210と、該ライトガイドファイバ210により先端まで導かれてきた光を拡散させて被検体に照射する照明レンズ220と、被検体から戻る反射光を集光する対物レンズ230と、集光した反射光を検出するための第1撮像素子250を備えている。第1撮像素子250は例えば通常光画像を撮影するためのベイヤ配列の色フィルタを持つ撮像素子である。第1撮像素子250の色フィルタは例えば図3に示すような分光特性を持っている。
【0181】
さらに撮像部200は内部にメモリ280を有しており、メモリ280は各スコープ固有の識別番号を保持している。メモリ280は制御部360に接続されており、制御部360はメモリ280に保持されている各スコープ固有の識別番号を参照することで、使用しているスコープを識別することが可能である。また使用しているスコープを識別することで、観察部位を識別することも可能である。
【0182】
画像処理部300はAD変換部310と通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330と領域種類判別部340と強調部350と制御部360を備えている。
【0183】
制御部360は領域種類判別部340と強調部350に接続されていてこれらを制御するようになっている。
【0184】
外部I/F部500は、この画像処理装置に対するユーザからの入力等を行うためのインターフェースである。
【0185】
AD変換部310は、第1撮像素子から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して出力する。
【0186】
通常光画像取得部320はAD変換部310から出力されるデジタル画像信号から通常光画像を取得する。特殊光画像取得部330はAD変換部310から出力されるデジタル画像信号から特殊光画像を取得する。
【0187】
特殊光画像取得部330で取得された特殊光画像は、領域種類判別部340に出力される。また通常光画像取得部320で取得された通常光画像は、強調部350に出力される。
【0188】
次に通常光画像取得部320について図6を用いて説明する。通常光画像取得部320は通常光画像生成部321と通常光画像記憶部322を備えている。
【0189】
次に特殊光画像取得部330について図29を用いて説明する。特殊光画像取得部330は特殊光画像生成部331と、特殊光画像記憶部332と、信号抽出部333と、マトリクスデータ設定部334を備えている。特殊光画像生成部331はAD変換部310で変換されて入力されるデジタル画像信号に対して画像処理を行い、特殊光画像を生成する。本実施例では特殊光画像は狭帯域光画像となる。本実施の形態において特殊光画像生成部331に入力されるデジタル画像信号は、通常光画像生成部321に入力されるデジタル画像信号と同じ信号である。
【0190】
ここで、信号抽出部333、マトリクスデータ設定部334及び特殊光画像生成部331において狭帯域光画像を生成する方法について説明する。まず、入力されたデジタル画像信号に対して既存の補間処理を行い、R,G,Bの3チャンネルを持つカラー画像を生成する。この画像は白色光源下で第1撮像素子250を用いて被写体を撮像した場合のカラー画像である。次にこのカラー画像から公知の分光推定技術を用いて、カラー画像の各画素における被写体の分光反射率を推定する。分光推定技術の詳細は例えば特許文献3の[0054]〜[0065]に開示されており、この様な処理を行うことで、例えば各画素が380nmから780nmまで10nm刻みに被写体の分光反射率特性O(λ)を持つような分光画像情報が取得される(ここでλは380〜780)。ここでは画像上の位置(x,y)における分光反射率特性をO(λ)x,yと記述する。また、本実施の形態における白色光源の分光放射率をE(λ)、光学系の分光透過率をL(λ)、第1の実施形態における第2撮像素子260の色フィルタg2,b2に対応する画素の分光感度をそれぞれg2(λ),b2(λ)とする。すると第1の実施形態におけるG2画像及びB2画像に対応する画像G2'画像及びB2'画像の位置(x,y)における信号値G2’(x,y)及びB2’(x,y)は下式(17)、(18)で算出できる。
【0191】
G2'(x,y)=∫E(λ)・O(λ)・L(λ)・g2(λ)dλ ・・・・・(17)
【0192】
B2'(x,y)=∫E(λ)・O(λ)・L(λ)・b2(λ)dλ ・・・・・(18)
【0193】
画像上のすべての位置(x,y)に対してこのような計算を行うことで、第1撮像素子250で得られる画像信号からG2’画像及びB2’画像を取得することができる。
【0194】
次にこのG2’画像及びB2’画像から実施形態1と同様にR,G,Bの3チャンネルを持つカラー画像を生成する。ここでは例えばカラー画像のRチャンネルにG2画像を入力し、GチャンネルとBチャンネルにB2画像を入力することでカラー画像が生成される。特殊光画像生成部331は、生成したカラー画像に対してさらにホワイトバランス、階調変換等の処理を行い、狭帯域光画像として出力する。特殊光画像記憶部332は特殊光画像生成部から出力された特殊光画像を記憶する。
【0195】
通常光画像取得部320及び特殊光画像取得部330で画像が取得された後の処理については、第1〜3の実施形態と同様の処理を行えばよい。
【0196】
以上の本実施形態では、第2画像取得部(狭義には特殊光画像取得部330)は第1の画像に基づいて、第2の画像を生成する。具体的には第2画像取得部は信号抽出部333及びマトリクスデータ設定部334を含む。信号抽出部333は、白色光の波長帯域における信号を抽出する。マトリクスデータ設定部334は、特定の波長帯域における信号を算出するためのマトリクスデータを設定する。そして第2画像取得部は、マトリクスデータを用いて信号抽出部333が抽出した信号から、特定の波長帯域の信号を算出し、第2の画像を生成する。
【0197】
これにより、第1の画像に基づいて第2の画像を生成することができるので、図28に示すように、撮像素子が1つのみでもシステムを実現することが可能になり、挿入部200を小さくすることができる。また部品が少なくてすむためコストを下げる効果も期待できる。
【0198】
5.第5の実施形態
第5の実施形態の概要について、図30を参照して説明する。目的は第1の実施形態と同様に、第2の画像内の被写体像の種類を判別し、種類に応じて、第1の画像に対して強調処理を施すことである。
【0199】
第5の実施形態においては、D1に示すように、第2の画像とは蛍光画像である。この第2の画像内の被写体像の種類を判別する(D2)。ここでは種類判別のために用いられる特徴量は、信号値(具体的にはR,G,Bのいずれか)である。D3に示すように、信号値が所定の閾値以上の大きさのものを第1の種類とし、それ以外のものを第2の種類とする。ここで第1の種類は病変部に対応し、第2の種類はそれ以外の部分(正常部)に対応する。これは、蛍光薬剤は所定の病変部に集中するため、第2の画像において病変部は特定の色味を持つという特性によるものである。
【0200】
種類の判別の後は、強調範囲を決定する。本実施形態においては、第1の画像内の、第1の種類(病変部)に対応する部分に対して強調処理が行われる(D4)。よって第1の画像において強調される範囲はD5に示すような範囲となる。
【0201】
そして設定された強調範囲に対して、所定の方法で強調処理を施す。本実施形態においては、強調処理の方法は信号値の加減算である。具体的には第1の画像のR,G成分から特徴量×gain(gainは所定のパラメータ)を減算し、B成分に特徴量×gainを加算する(D6)。第1の種類に対して強調処理を行い、第2の種類に対しては強調処理を行わないことで、種類に応じた強調処理を施すことが可能になる。結果としてD7に示すように、病変部が強調された通常光画像を取得できる。
【0202】
本発明の第5の実施形態にかかる内視鏡システムについて図31を用いて説明する。本実施形態に係る内視鏡システムは、光源部100と撮像部200と画像処理部300と表示部400と外部I/F部500を備えている。
【0203】
光源部100は、白色光を発生する白色光源110と光源からの出射光をライトガイドファイバ210に集光するための集光レンズ120と、白色光から所定の波長帯域の光を抽出する回転フィルタ130を備えている。
【0204】
回転フィルタ130は図32に示されるように透過率特性の異なる2種類のフィルタF1,F2から構成されている。フィルタF1は例えば図33に示されるように、400〜700nmの波長帯域の光を透過させる特徴を有している。フィルタF1は白色光である。またフィルタF2は図34に示されるように、520〜550nm、及び600〜650nmの2つの波長帯域の光を透過させる櫛形フィルタの特性を有している。フィルタF2により抽出された520〜550nmの波長帯域の光は、CY3のような蛍光薬剤を励起して560〜600nmの波長帯域の蛍光を発生させる特性を有しており、600〜650nmの波長帯域の光は、CY5のような蛍光薬剤を励起して670〜710nmの波長帯域の蛍光を発生させる特性を有している。ここで、蛍光薬剤CY3は食道部位によくみられる扁平上皮癌等の病変部に特異的に集積する性質を持つとする。また蛍光薬剤CY5は、大腸部位によく見られる腫瘍等の病変部に特異的に集積する性質を持つとする。
【0205】
撮像部200は、例えば体腔への挿入を可能にするため、細長くかつ湾曲可能に形成されている。また撮像部200は着脱可能な構造をしており、観察する部位によって異なる撮像部が用いられる。一般に内視鏡分野において、撮像部200はスコープと呼ばれており、具体的に用いられるスコープとしては、上部消化器用スコープや下部消化器用スコープ等が挙げられる。
【0206】
撮像部200には光源部100で集光された光を導くためのライトガイドファイバ210と、該ライトガイドファイバ210により先端まで導かれてきた光を拡散させて被検体に照射する照明レンズ220と、被検体からの反射光を集光する対物レンズ230と、集光された反射光と蛍光とを異なる光路に分岐するダイクロイックミラー240と、分岐された反射光を検出する第1撮像素子250と、第2撮像素子260を備えている。
【0207】
第1撮像素子250は例えば図3に示すようなR,G,Bの分光特性を有するベイヤ型のカラー撮像素子である。また第2撮像素子260は、例えば図35に示されるように2種類の色フィルタg3,r3が市松状に配置された撮像素子である。色フィルタg3,r3は例えば図36に示すように、g3が560〜600nm、r3が670〜710nmの波長帯域の光を透過させる透過率特性を有している。これらの波長帯域は、蛍光薬剤CY3,CY5の蛍光波長にそれぞれ相当する。
【0208】
さらに撮像部200は内部にメモリ280を有しており、メモリ280は各スコープ固有の識別番号を保持している。メモリ280は制御部360に接続されており、制御部360はメモリ280に保持されている各スコープ固有の識別番号を参照することで、使用しているスコープを識別することが可能である。また使用しているスコープを識別することで、観察部位を識別することも可能である。
【0209】
画像処理部300は、2つのAD変換部310,311と通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330と領域種類判別部340と強調部350と制御部360と対応付け部370を備えている。制御部360は通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330と領域種類判別部340と強調部350と対応付け部370に接続されていて、これらを制御するようになっている。
【0210】
さらに制御部360は前述の回転フィルタ130とも接続されており、回転フィルタ130は制御部360からの信号に応じてモータを回転駆動することにより、フィルタF1,F2を順次切り替えて照明光を被検体である体腔内組織に順次照射する。また、制御部360は光路中に配置されているフィルタF1,F2の情報をトリガ信号として通常光画像取得部320、特殊光画像取得部330、対応付け部370に出力するようになっている。
【0211】
外部I/F部500は、この画像処理装置に対するユーザからの入力等を行うためのインターフェースである。
【0212】
AD変換部310は第1撮像素子250から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して出力し、AD変換部311は第2撮像素子260から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して出力する。
【0213】
通常光画像取得部320は、AD変換部310から出力されるデジタル画像信号から通常光画像を取得する。特殊光画像取得部330は、AD変換部311から出力されるデジタル画像信号から特殊光画像を取得する。
【0214】
通常光画像取得部320で取得された通常光画像、及び特殊光画像取得部330で取得された特殊光画像は対応付け部370に出力される。本実施の形態においては、通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330で通常光画像と特殊光画像が交互に取得されるため、対応付け部370はこれらの画像の対応付けを行う。対応付け部370の詳細は後述する。
【0215】
対応付け部370で対応付けされた通常光画像は強調部350に出力される。また同様に対応付け部370で対応付けされた特殊光画像は領域種類判別部340に出力される。領域種類判別部340は特殊光画像内に写っている被検体の種類を判別し、その判別結果を強調部350に出力する。強調部350は領域種類判別部340から出力される判別結果に応じて通常光画像に強調処理を施し表示部400に出力する。領域種類判別部340、及び強調部350の詳細については後述する。
【0216】
次に通常光画像取得部320について図6を用いて説明する。通常光画像取得部320は通常光画像生成部321と通常光画像記憶部322を備えている。通常光画像生成部321は制御部360から送られてくるトリガ信号により、フィルタF1が光路中に位置する期間を識別し、フィルタF1が光路中に位置する期間内に第1撮像素子から送られてくるアナログ画像信号から変換されたデジタル画像信号に対して画像処理を行い、通常光画像を生成する。具体的には、既存の補間処理やホワイトバランス、色変換、階調変換等の処理を行い、通常光画像を生成して出力する。ここで、通常光画像はRGB画像である。通常光画像記憶部322は、通常光画像生成部321から出力された通常光画像をメモリに記憶する。
【0217】
次に特殊光画像取得部330について図7を用いて説明する。特殊光画像取得部330は特殊光画像生成部331と特殊光画像記憶部332を備えている。特殊光画像生成部331は制御部360から送られてくるトリガ信号により、フィルタF2が光路中に位置する期間を識別し、フィルタF2が光路中に位置する期間内に第2撮像素子から送られてくるアナログ画像信号から変換されたデジタル画像信号に対して画像処理を行い、特殊光画像を生成する。本実施例において、特殊光画像は蛍光画像となる。蛍光画像はRGB画像である。
【0218】
ここで、特殊光画像生成部331で蛍光画像を生成する方法について説明する。前述したように第2撮像素子260は、図37に示されるように2種類の色フィルタg3,r3が市松状に配置された撮像素子である。従って特殊光画像生成部331には、図37に示されるようなデジタル画像信号が入力される。ただし、G3(x,y)はg3フィルタの信号値を表し、R3(x,y)はr3フィルタの信号値を表すものとする。また、x, yは画像座標である。このような画像信号に対してまず補間処理を行い、全画素でg3フィルタの信号値を持つG3画像と、全画素でr3フィルタの信号値を持つR3画像を生成する。補間処理は例えば、前述した式(1),(2)と同様の方法で行えばよい。
【0219】
次にG3画像及びR3画像から、通常光画像と同様にR,G,Bの3種類の信号値を持つカラー画像を生成する。ここでは例えば、前記カラー画像の座標(x,y)のR信号にR3(x,y)を入力し、G,B信号にG3(x,y)を入力することでカラー画像が生成される。特殊光画像生成部331は、生成したカラー画像に対してさらにホワイトバランス、階調変換等の処理を行い、蛍光画像として出力する。特殊光画像記憶部332は特殊光画像生成部331から出力された蛍光画像をメモリに記憶する。
【0220】
図38は光路中に位置するフィルタの種類と、通常光画像記憶部322及び特殊光画像記憶部332で記憶される画像を示した図である。まずタイミング1で光路中にフィルタF1が挿入される。この時、照射される照明光は白色光であり、通常光画像記憶部322には通常光画像が記憶され、特殊光画像記憶部332には画像が記憶されない。次にタイミング2で光路中にフィルタF2が挿入される。この時照射される照明光は励起光であり、特殊光画像記憶部332には薬剤蛍光が集積した病変部から発生する蛍光が疑似カラー画像として記憶され、通常光画像記憶部322には画像が記憶されない。通常光画像記憶部322と特殊光画像記憶部332はそれぞれ複数枚の画像を記憶できるようになっている。
【0221】
次に、対応付け部370の詳細を説明する。本実施の形態においては、通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330で通常光画像と蛍光画像が交互に取得されるため、対応付け部370はこれらの画像の対応付けを行う。ここで本実施の形態における対応付け部370の処理について具体的に説明する。
【0222】
図39は通常光画像記憶部322に記憶された画像が取得されたタイミングと、特殊光画像記憶部332に記憶された画像が取得されたタイミングを示した図である。対応付け部370は制御部360からの制御信号に従って、通常光画像記憶部322と特殊光画像記憶部332から、画像が取得されたタイミングの差が最も小さくなる様に対応づけられた通常光画像と蛍光画像を1枚ずつ読み出す。ここでは最初に読みだされる画像はタイミング1で取得された通常光画像とタイミング2で取得された蛍光画像であり、次に読みだされる画像はタイミング2で取得された蛍光画像とタイミング3で取得された通常光画像である。対応付け部370はこのようにして画像の取得と同じタイミング間隔で通常光画像と蛍光画像の両方を取得することができる。
【0223】
次に、領域種類判別部340の処理について説明する。領域種類判別部340の構成は第1の実施形態と同様で図9に示す通りである。また局所領域設定部341の処理も第1の実施形態と同様である。
【0224】
特徴量算出部342では観察部位に応じて特徴量を算出する。前述したように、本実施の形態で用いる蛍光薬剤CY3は食道部位によく見られる扁平上皮癌等の病変部に特異的に集積する性質を持ち、また蛍光薬剤CY5は大腸部位によく見られる腫瘍等の病変部に特異的に集積する性質を持つ。そのため、食道を診断する際には蛍光薬剤CY3の蛍光信号が入力されているGまたはB信号を特徴量として用い、大腸を観察する際には蛍光薬剤CY5の蛍光信号が入力されているR信号を特徴量として用いれば良い。ここで観察部位は、前述したように制御部360がメモリ280に保持されている各スコープ固有の識別番号を参照することで決定することもできるし、外部I/F部500によりユーザが観察部位を指定する構成としても良い。
【0225】
ここでは大腸部位を診断する場合を例に挙げて説明する。大腸部位を診断する際、特徴量算出部342は局所領域設定部341で設定された全ての局所領域について、各局所領域内の全ての画素のR信号の平均値を算出する。そして、算出したR信号の平均値を特徴量として種類判別部343に出力する。ここでは、局所領域a(m,n)の特徴量をf(m,n)と表記する。
【0226】
種類判別部343では、特徴量算出部342で算出された各局所領域内における特徴量f(m,n)を基に、各局所領域に写っている被検体の種類を判別する。
【0227】
本実施の形態で用いる蛍光薬剤CY5は腫瘍等の病変部位に特異的に集積するため、腫瘍等の病変部が存在する局所領域は、病変部が存在しない局所領域に比べ、特徴量f(m,n)が大きくなる傾向がある。従って、各局所領域における特徴量f(m,n)が閾値F_thよりも大きい場合に、該局所領域を腫瘍等の病変部と判別すればよい。ここで閾値F_thは例えば、下式(19)に示すように各局所領域における特徴量f(m,n)の平均値とすればよい。
【0228】
【数6】

【0229】
種類判別部343は、腫瘍等の病変部と判別された全ての局所領域座標と該局所領域における特徴量f(m,n)、及び判別結果を示すタグ情報を領域選出部344に出力する。ここでタグ情報は例えば、腫瘍等の病変部と判別された領域のタグ情報を1とすれば良い。
【0230】
領域選出部344は種類判別部343で腫瘍等の病変部と判別された局所領域a(m,n)の座標と、局所領域が含む全ての画素の情報から、該局所領域における全ての画素位置を算出し、算出した画素位置と前述のタグ情報、及び特徴量f(x,y)を強調部350に出力する。ここで、各画素位置における特徴量f(x,y)は、該画素位置が属する局所領域a(m,n)における特徴量f(m,n)とすればよい。
【0231】
次に、強調部350の詳細について説明する。強調部350は、領域種類判別部340から出力される画素位置に対応する通常光画像の全ての画素に対し、強調処理を施す。強調処理を施された通常光画像は表示部400に出力される。
【0232】
ここで強調処理は、例えば腫瘍等の病変部と判別された画素、つまりタグの値が1の画素については式20に示す色変換処理を行えばよい。
【0233】
R_out(x,y) = R(x,y) - gain * f(x,y)
G_out(x,y) = G(x,y) - gain * f(x,y)
B_out(x,y) = B(x,y) + gain * f(x,y) ・・・・・(20)
【0234】
ただし、式20において、
R(x, y), G(x, y), B(x, y)
:色変換処理前の通常光画像の座標(x, y)におけるR, G, B信号値
R_out(x, y), G_out(x, y), B_out(x, y)
:色変換処理後の通常光画像の座標(x, y)におけるR, G, B信号値
である。
【0235】
また、gainは0〜1の任意の係数である。ここで、gainは外部I/F部500よりユーザが設定しても良いし、観察部位に応じて異なる値を予め設定しておくこともできる。なお、観察部位は前述したように、制御部360がメモリ280に保持されている各スコープ固有の識別番号を参照することでも識別可能であるし、外部I/F部500よりユーザが観察部位を指定する構成としてもよい。
【0236】
このような処理を行うことで、腫瘍等の病変部が正常部位とは異なる、青みの強い領域として描出されるため、通常光画像と蛍光画像を用いた診断を行う際に、ドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止することが可能になる。
【0237】
なお、本実施の形態では、前述した特徴量に基づいて通常光画像に対し色変換処理を施す例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記特徴量に基づき任意の色変換処理や輝度変換処理を行っても良い。
【0238】
また、本実施の形態では蛍光薬剤を使用したが、例えば従来、AFI(Auto Fluorescence Imaging)として知られている技術のように、生体中のコラーゲンから発生する自家蛍光を観察するような構成にしてもよい。この場合は励起光として390〜470nmの波長帯域の光を使用し、第2撮像素子の色フィルタの透過特性を、前述の自家蛍光の波長帯域である490〜625nmに変更すればよい。
【0239】
さらに、例えば従来、IRI(Infra red Imaging)として知られている技術のように、ICGを静脈注射した上で2つの赤外光(790〜820nm及び905〜970nmの波長帯域の光)を照明光として使用し、それらの反射光画像から疑似カラー画像を生成し、特殊光画像として使用してもよい。
【0240】
また、本実施の形態では、画像処理部300を構成する各部をハードウェアで構成することとしたが、第1の実施形態と同様に、予め取得された画像に対して、CPUが各部の処理を行う構成とし、CPUがプログラムを実行することによってソフトウェアとして実現することとしてもよい。あるいは、各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成することとしてもよい。
【0241】
各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成する場合の一例として、予め取得された通常光画像と蛍光画像に対して、図31の領域種類判別部340、強調部350及び対応付け部370の処理をソフトウェアで実現する場合の処理手順を、図40のフローチャートを用いて説明する。
【0242】
本実施の形態では通常光画像と蛍光画像が交互に取得されているため、まずそれぞれの画像を取得したタイミング情報に基づいて前述の方法でこれらの画像の対応付けを行う(Step11)。次に蛍光画像をメモリに読み込み(Step12)、この特殊光画像と対応づけられた通常光画像をメモリに読み込む(Step13)。
【0243】
領域種類判別ステップ(Step14)の詳細は図41に示す通りである。まず、局所領域設定ステップでは、第1の実施形態と同様に蛍光画像に対して局所領域を設定する(Step141)。特徴量算出ステップでは前述した方法で、診断している部位に応じて各局所領域の特徴量を算出する(Step142)。種類判別ステップでは前述した閾値処理により各局所領域が腫瘍等の病変部かどうか判別処理を行う(Step143)。領域選出ステップでは、病変部と判別された局所領域の座標と、各局所領域が含む画素の情報から、前記局所領域に含まれる画素の位置を算出する(Step144)。
【0244】
強調処理ステップ(Step15)は、上式(19)に示した方法で通常光画像に対し強調処理を施す。そして、すべての画像に対して一連の処理が完了した場合は処理を終了し、未処理の画像が残っている場合は同様の処理を継続する(Step16)。
【0245】
以上の本実施形態では、種類判別部343は、被検体像が属する部位に応じて、特徴量の算出処理を変更する。
【0246】
これにより、被検体像の種類の判別に用いられる特徴量を、観察している部位に応じて変更することが可能になる。具体的には、蛍光薬剤CY3とCY5を用いた観察において、CY3の蛍光信号G3はG及びBチャンネルに入力され、CY5の蛍光信号R3はRチャンネルに入力されているとする。ここで、CY3は食道部位によく見られる扁平上皮癌等の病変に集積しやすく、CY5は大腸部位によく見られる腫瘍等の病変に集積しやすいという特徴がある。そのため食道を観察する際には、CY3の蛍光信号G3が入力されているGまたはB信号を特徴量として用い、大腸を観察する際には、CY5の蛍光信号R3が入力されているR信号を特徴量として用いることが考えられる。
【0247】
また、強調部350は、強調処理として、第2の画像から算出された色に関する特徴量に基づいて、第1の画像内の対応注目領域に対して、輝度成分又は色成分を強調する。
【0248】
これにより、強調処理として、色に関する特徴量(上述したように食道の場合にはGまたはB信号、大腸の場合にはR信号)を対応注目領域の輝度成分(Y成分)または色成分(R,G,B成分)に加算する処理を行うことが可能になる。
【0249】
6.第6の実施形態
第6の実施形態の概要について、図42を参照して説明する。目的は第1の実施形態と同様に、第2の画像内の被写体像の種類を判別し、種類に応じて、第1の画像に対して強調処理を施すことである。ただし、本実施形態では、第2の画像を複数種類取得することが可能なシステム構成となっているため、被写体像の種類の他に、第2の画像の種類も考慮する必要がある点が特徴である。
【0250】
まずE1に示すように、第2の画像の種類を判別する。ここではE2に示すように、蛍光画像を取得する場合と、E3に示すようにNBI画像を取得する場合とが考えられる。第2の画像が蛍光画像であるか、NBI画像であるかに応じて、この後の処理が異なる。そのため、第2の画像の種類に応じて、第1の画像に対して強調処理を施すことが可能になる。
【0251】
なお、第2の画像として蛍光画像が得られた場合の以降の処理は、図30(第5の実施形態)と同様であり、NBI画像が得られた場合の以降の処理は図24(第3の実施形態)と同様である。
【0252】
次に、第6の実施形態にかかる内視鏡システムについて図43を用いて説明する。本実施形態に係る内視鏡システムは、光源部100と撮像部200と画像処理部300と表示部400と外部I/F部500を備えている。
【0253】
光源部100は、白色光を発生する白色光源110と、光源からの出射光をライトガイドファイバ210に集光するための集光レンズ120と、白色光から所定の波長帯域の光を抽出する、第1回転フィルタ140及び第2回転フィルタ150を備えている。
【0254】
ここで、これら2つの回転フィルタは、排他的に制御されるものとする。具体的には、第1回転フィルタ140が白色光源110から出力される光の光路に挿入される場合は、第2回転フィルタ150は前記光路に挿入しないものとする。逆に第2回転フィルタ150が前記光路に挿入される場合は、第1回転フィルタ140は前記光路に挿入しないものとする。回転フィルタの切り替えは、例えば外部I/F部500よりユーザが指定するものとし、ユーザの指定に従って、制御部360が前述した2つの回転フィルタを排他的に制御する構成とすれば良い。
【0255】
第1回転フィルタ140は、図44に示されるように透過率特性の異なるフィルタF1,F3から構成されている。フィルタF1は、図33に示されるように400nm〜700nmの波長帯域の光を透過させる特性を有している。フィルタF3は、図46に示されるように600nm〜650nmの波長帯域の光を透過させる特性を有している。フィルタF3により抽出された600〜650nmの波長帯域の光は、CY5のような蛍光薬剤を励起して670〜710nmの波長帯域の蛍光を発生させる特性を有している。ここで蛍光薬剤CY5は、腫瘍等の病変部に特異的に集積する性質を持つとする。
【0256】
また第2回転フィルタ150は、図45に示されるように透過率特性の異なるフィルタF1,F4から構成されている。フィルタF4は、図47に示されるように390nm〜445nmと、530〜550nmの2つの波長帯域の光を透過させる櫛形フィルタの特性を有している。なお、第2回転フィルタ150が有するフィルタF1の特性は、第1回転フィルタ140が有するフィルタF1の特性と同一である。
【0257】
撮像部200は、例えば体腔への挿入を可能にするため、細長くかつ湾曲可能に形成されている。撮像部200には光源部100で集光された光を導くためのライトガイドファイバ210と、該ライトガイドファイバ210により先端まで導かれてきた光を拡散させて被検体に照射する照明レンズ220と、被検体からの反射光を集光する対物レンズ230と、集光された反射光を異なる光路に分岐するダイクロイックミラー240と、分岐された反射光を検出する第1撮像素子250と、第2撮像素子260を備えている。
【0258】
第1撮像素子250は例えば図3に示すようなR,G,Bの分光特性を有するベイヤ型のカラー撮像素子である。また第2撮像素子260は、例えば図48に示されるように2種類の色フィルタg4,b4が市松状に配置された撮像素子である。色フィルタg4は、例えば図49に示すように530〜550nm、及び670〜710nmの2つの波長帯域の光を透過させる櫛形フィルタの特性を有している。また色フィルタb4は、例えば図50に示すように、390〜445nm、及び670〜710nmの2つの波長帯域の光を透過させる櫛形フィルタの特性を有している。ここで、2種類の色フィルタg4,b4に共通する透過帯域である670〜710nmの波長帯域は、蛍光薬剤CY5の蛍光波長に相当する。
【0259】
画像処理部300は、2つのAD変換部310,311と通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330と強調部350と制御部360と対応付け部370を備えている。制御部360は通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330と強調部350と対応付け部370に接続されていて、これらを制御するようになっている。
【0260】
さらに制御部360は、第1回転フィルタ140と第2回転フィルタ150とも接続されており、前記2つの回転フィルタは、制御部360からの信号に応じてモータを回転駆動することにより、フィルタF1,F3若しくはF1,F4を順次切り替えて、照明光を被検体である体腔内組織に順次照射する。また制御部360は、光路に挿入されている回転フィルタの情報、及び光路中に配置されているフィルタF1,F3,F4の情報を通常光画像取得部320、特殊光画像取得部330、強調部350、対応付け部370に出力するようになっている。ここで制御部360が出力する情報は、フラグ信号とトリガ信号の2種類である。フラグ信号は、第1回転フィルタ140と第2回転フィルタ150のうち、どちらの回転フィルタが光路に挿入されているかを識別するための信号である。またトリガ信号は、光路中に配置されているフィルタF1,F3,F4を識別するための信号である。
【0261】
外部I/F部500は、この画像処理装置に対するユーザからの入力等を行うためのインターフェースである。
【0262】
AD変換部310は第1撮像素子250から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して出力し、AD変換部311は第2撮像素子260から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して出力する。
【0263】
通常光画像取得部320は、AD変換部310から出力されるデジタル画像信号から通常光画像を取得する。特殊光画像取得部330は、AD変換部311から出力されるデジタル画像信号から特殊光画像を取得する。
【0264】
通常光画像取得部320で取得された通常光画像、及び特殊光画像取得部330で取得された特殊光画像は対応付け部370に出力される。本実施の形態においては、通常光画像取得部320と特殊光画像取得部330で、通常光画像と特殊光画像が交互に取得されるため、対応付け部370はこれらの画像の対応付けを行う。対応付け部370の処理は第5の実施形態と同様である。
【0265】
対応付け部370で対応付けされた通常光画像及び特殊光画像は強調部350に出力される。強調部350は、特殊光画像の種類に応じて通常光画像に強調処理を施し、表示部400に出力する。なお、強調部350の詳細については後述する。
【0266】
次に通常光画像取得部320について図6を用いて説明する。通常光画像取得部320は通常光画像生成部321と通常光画像記憶部322を備えている。通常光画像生成部321は制御部360から送られてくるトリガ信号により、フィルタF1が光路中に位置する期間を識別し、フィルタF1が光路中に位置する期間内に第1撮像素子250から送られてくるアナログ画像信号から変換されたデジタル画像信号に対して画像処理を行い、通常光画像を生成する。具体的には、既存の補間処理やホワイトバランス、色変換、階調変換等の処理を行い、通常光画像を生成して出力する。ここで、通常光画像はRGB画像である。通常光画像記憶部322は、通常光画像生成部321から出力された通常光画像をメモリに記憶する。なお、通常光画像記憶部322は複数枚の画像を記憶できるようになっている。
【0267】
次に特殊光画像取得部330について図7を用いて説明する。特殊光画像取得部330は特殊光画像生成部331と特殊光画像記憶部332を備えている。特殊光画像生成部331は制御部360から送られてくる前記フラグ信号により、前述した2つの回転フィルタのうち、どちらの回転フィルタが光路に挿入されているかを識別し、その識別結果に応じて特殊光画像を生成する。ここでは、前記光路中に第1回転フィルタ140が挿入されている場合と、第2回転フィルタ150が挿入されている場合のそれぞれについて、特殊光画像の生成方法を説明する。
【0268】
第1回転フィルタ140が光路に挿入されている場合、特殊光画像取得部330は前記トリガ信号よりフィルタF3が光路中に位置する期間を識別し、フィルタF3が光路中に位置する期間内にAD変換部311から出力されるデジタル画像信号に対して画像処理を行い、特殊光画像を生成する。フィルタF3は、前述したように蛍光薬剤CY5を励起させ、蛍光を発生させる波長帯域の光を透過する特性を有している。ここで蛍光薬剤CY5の蛍光波長の帯域は670〜710nmである。一方、第2撮像素子260に用いられる色フィルタg4,b4は、両者ともに前記蛍光波長の帯域を透過する特性を有している。従って第2撮像素子260から出力される信号は、CY5の蛍光信号となる。そのため本実施の形態において、第1回転フィルタ140が光路中に挿入されている場合に取得される特殊光画像は、蛍光画像となる。特殊光画像生成部331は、AD変換部311より出力されるデジタル画像信号に対して既存の階調変換処理を行うことで蛍光画像を生成し、生成した蛍光画像を特殊光画像記憶部332に出力する。ここで、蛍光画像はモノクロ画像である。特殊光画像記憶部332は、特殊光画像生成部331から出力された蛍光画像をメモリに記憶する
【0269】
また、第2回転フィルタ150が光路に挿入されている場合、特殊光画像取得部330は前記トリガ信号よりフィルタF4が光路中に位置する期間を識別し、フィルタF4が光路中に位置する期間内にAD変換部311から出力されるデジタル画像信号に対して画像処理を行い、特殊光画像を生成する。ここでフィルタF4は前述したように、390〜445nmと530〜550nmの2種類の狭帯域光を透過させる特性を有している。一方、第2撮像素子260は前述したように、図48に示すように2種類の色フィルタg4,b4が市松状に配置された撮像素子である。またg4は530〜550nmの波長帯域の光を透過する特性を有し、b4は390〜445nmの波長帯域の光を透過する特性を有している。従って、第2回転フィルタ150が光路中に挿入されている場合、特殊光画像生成部331に入力されるデジタル画像信号は、第1の実施形態で示した特殊光画像生成部331に入力されるデジタル画像信号と同等となる。そのため、特殊光画像生成部331は第1の実施形態と同様の方法で狭帯域光画像を生成し、生成した狭帯域光画像を特殊光画像記憶部332に出力する。ここで、狭帯域光画像はRGB画像である。特殊光画像記憶部332は、特殊光画像生成部331から出力された狭帯域光画像をメモリに記憶する。なお、特殊光画像記憶部332は複数枚の画像を記憶できるようになっている。
【0270】
次に、強調部350の詳細について説明する。強調部350は、図51に示されるように、特徴量算出部356と特徴量加算部357より構成される。対応付け部370により通常光画像との対応付けがなされた特殊光画像は、特徴量算出部356に出力される。また対応付け部370により特殊光画像との対応付けがなされた通常光画像は、特徴量加算部357に出力される。制御部360は特徴量算出部356と特徴量加算部357に接続されていて、これらを制御するようになっている。
【0271】
特徴量算出部356は、特殊光画像の種類に応じて特徴量を算出する。具体的には、制御部360から送られてくるフラグ信号を参照して、光源部100において2つの回転フィルタのうち、どちらの回転フィルタが光路に挿入されているかを識別し、識別結果に応じて特徴量を算出する。
【0272】
前記光路に第1回転フィルタ140が挿入されている場合、対応付け部370より出力される特殊光画像は、前述したようにモノクロの蛍光画像となる。この場合、特徴量算出部356は入力された蛍光画像の全ての画素位置(x,y)における信号値を特徴量として、特徴量加算部357に出力する。ここでは、画素位置(x,y)における特徴量をf’(x,y)と表記する。
【0273】
一方、前記光路に第2回転フィルタ150が挿入されている場合、対応付け部370より出力される特殊光画像は狭帯域光画像となる。この場合、特徴量算出部356は入力された狭帯域光画像の輝度信号より、式15を用いて特殊光画像の全ての画素についてエッジ量E(x,y)を算出し、算出したエッジ量E(x,y)を特徴量f’(x,y)として特徴量加算部357に出力する。
【0274】
特徴量加算部357は、特殊光画像の種類に応じて、通常光画像に対し強調処理を施す。特殊光画像の種類の判別方法は、前述したように制御部360から送られてくるフラグ信号を参照すればよい。
【0275】
前記光路に第1回転フィルタ140が挿入されている場合、特徴量加算部357は上式(20)と同様の方法で通常光画像に色変換処理を施す。ここでは、特徴量算出部356で算出した特徴量に基づいて、通常光画像に対し色変換処理を施す例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記特徴量に基づき任意の色変換処理や輝度変換処理を行っても良い。
【0276】
一方、前記光路に第2回転フィルタ150が挿入されている場合、特徴量加算部357は特徴量算出部356より出力される特徴量f’(x,y)を、通常光画像の輝度信号Y(x,y)に加算する処理を施す。ここでは、特徴量算出部356で算出した特徴量に基づいて、通常光画像に対し輝度変換処理を施す例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記特徴量に基づき任意の色変換処理や輝度変換処理を行っても良い。
【0277】
このような処理を行うことで、蛍光画像を特殊光画像として取得する場合には、腫瘍等の病変部が正常部位とは異なる色として描出される。さらに狭帯域光画像を特殊光画像として取得する場合には、病変の診断に重要な血管部位が強調して描出される。
【0278】
以上に示した構成により、特殊光画像の種類に応じて通常光画像を強調処理することが可能となり、通常光画像と特殊光画像を用いた診断を行う際に、ドクターの負荷を低減しながら病変部の見逃しを防止することが可能になる。
【0279】
なお、本実施形態においては、光路に挿入されている回転フィルタの情報をフラグ信号として用い、特殊光画像の種類を判別する方法を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば第2撮像素子260から出力される信号をもとに、特殊光画像の種類を判別することも可能である。
【0280】
ここで、第2撮像素子260から出力される信号をもとに、特殊光画像の種類を判別する方法について説明する。第2撮像素子260は、図48で示されるように2種類の色フィルタg4とb4を市松状に並べた撮像素子である。また、本実施形態において第1回転フィルタ140が光路に挿入されている場合、第2撮像素子260より出力される信号は、前述したようにCY5の蛍光信号となる。従って、色フィルタg4を有する全ての画素から出力される信号の平均値G4_aveと、色フィルタb4を有する全ての画素から出力される信号の平均値B4_aveはほぼ等しくなる。
【0281】
一方、第2回転フィルタ150が光路に挿入されている場合、第2撮像素子260より出力される信号は、前述したように色フィルタg4に関しては波長帯域530〜550nmの狭帯域信号、色フィルタb4に関しては波長帯域390〜445の狭帯域信号となり、g4とb4で異なる波長帯域の信号が出力される。そのため、前述した信号の平均値G4_aveとB4_aveは異なる値となる。従って、前述した平均値G4_ave, B4_aveを比較することで、特殊光画像の種類を判別することも可能である。
【0282】
また、本実施の形態では、画像処理部300を構成する各部をハードウェアで構成することとしたが、第1の実施形態と同様に、予め取得された画像に対して、CPUが各部の処理を行う構成とし、CPUがプログラムを実行することによってソフトウェアとして実現することとしてもよい。あるいは、各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成することとしてもよい。
【0283】
各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成する場合の一例として、予め取得された通常光画像と特殊光画像に対して、図43の強調部350及び対応付け部370の処理をソフトウェアで実現する場合の処理手順を、図52のフローチャートを用いて説明する。
【0284】
本実施の形態では通常光画像と特殊光画像が交互に取得されているため、まずそれぞれの画像を取得したタイミング情報に基づいて、第5の実施形態と同様の方法で、これらの画像の対応付けを行う(Step21)。次に特殊光画像をメモリに読み込み(Step22)、この特殊光画像と対応づけられた通常光画像をメモリに読み込む(Step23)。さらに、特殊光画像の種類を識別するためのフラグ信号をメモリに読み込む(Step24)。
【0285】
強調処理ステップ(Step25)の詳細は図53に示す通りである。まず、特殊光画像識別ステップでは、フラグ信号を参照して特殊光画像の種類を識別する(Step251)。次に特徴量算出ステップでは、特殊光画像の種類に応じて特徴量を算出する(Step252)。具体的には、特殊光画像が蛍光画像であった場合、蛍光画像の信号値を特徴量F’(x,y)とし、また特殊光画像が狭帯域光画像であった場合には、狭帯域光画像の輝度信号から式15を用いてエッジ量を算出し、算出したエッジ量を特徴量f’(x,y)とする。特徴量加算ステップではStep252と同様に、特殊光画像の種類に応じて通常光画像に強調処理を施す(Step253)。具体的には、特殊光画像の種類が蛍光画像であった場合、Step252で算出された特徴量と上式(20)を用いて通常光画像に色変換処理を施す。また特殊光画像の種類が狭帯域光画像であった場合、Step252で算出された特徴量を、通常光画像の輝度信号に加算する処理を施す。
【0286】
そして、すべての画像に対して一連の処理が完了した場合は処理を終了し、未処理の画像が残っている場合は同様の処理を継続する(Step26)。
【0287】
以上の本実施形態では、第1画像取得部(狭義には通常光画像取得部320)は白色光の波長帯域に対応する第1の画像(狭義には白色光画像)を取得し、第2画像取得部(狭義には特殊光画像取得部330)は特定の波長帯域(狭義には狭帯域光や蛍光等の波長帯域)に対応する第2の画像(狭義には狭帯域画像や蛍光画像等の特殊光画像)を取得する。そして強調部350は、第2の画像の種類に基づいて、第1の画像に対して強調処理を施す。
【0288】
ここで第2の画像の種類は、NBI画像及びAFI画像を含んでもよい。そして強調部350は第2の画像がNBI画像かAFI画像かに応じて、強調処理の方法を変更してもよい。
【0289】
これにより、通常光画像(白色光画像)と特殊光画像(NBI画像や蛍光画像等)を取得した上で、特殊光画像の種類に基づいて、通常光画像に対する強調処理の方法を変更することができる。よって、具体的には例えば、特殊光画像がNBI画像の場合には第3の実施形態と同様の処理を行い、蛍光画像の場合には第5の実施形態と同様の処理を行うことなどが可能になる。
【0290】
以上、本発明を適用した6つの実施の形態1〜6およびその変形例について説明したが、本発明は、各実施の形態1〜6やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、発明の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施の形態1〜6や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、各実施の形態1〜6や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。
【0291】
また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の画像、第2の画像等)と共に記載された用語(通常光画像、特殊光画像等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0292】
100 光源部、110 白色光源、120 集光レンズ、130 回転フィルタ、
140 回転フィルタ、150 回転フィルタ、200 撮像部、
210 ライトガイドファイバ、220 照明レンズ、230 対物レンズ、
240 ハーフミラー、250 撮像素子、260 撮像素子、
270 ダイクロイックミラー、280 メモリ、300 画像処理部、
310 変換部、311 変換部、320 通常光画像取得部、
321 通常光画像生成部、322 通常光画像記憶部、330 特殊光画像取得部、
331 特殊光画像生成部、332 特殊光画像記憶部、333 信号抽出部、
334 マトリクスデータ設定部、340 領域種類判別部、341 局所領域設定部、
342 特徴量算出部、343 種類判別部、344 画素情報出力部、
345 輝度信号算出部、350 強調部、351 分離部、
352 高周波成分算出部、353 高周波成分加算部、354 合成部、
355 エッジ加算部、356 特徴量算出部、357 特徴量加算部、
360 制御部、370 対応付け部、400 表示部、500 外部I/F部、
600 コンピューターシステム、610 本体部、615 ドライブ、
616 ポート、617 インターフェース、618 インターフェース、
620 ディスプレイ、621 表示画面、630 キーボード、640 マウス、
650 モデム、670 メモリ、682 サーバ、683 プリンタ、
3521 多重解像度変換部、3522 高周波成分抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得する第1画像取得部と、
特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得する第2画像取得部と、
前記第2の画像内の画素の特徴量に基づいて、前記第2の画像内に写された被検体像の種類を判別する種類判別部と、
前記判別された被検体像の種類に基づいて、前記第1の画像に対して強調処理を施す強調部と、
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記種類判別部は、
前記被検体像が属する部位に応じて、前記特徴量の算出処理を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記強調部は、
前記被検体像が属する部位に応じて、前記強調処理の方法を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記第1の画像および前記第2の画像の少なくとも一方は、
当該画像処理装置の外部に設けられた撮像装置により撮像されたものであり、
前記強調部は、
前記第1の画像と前記第2の画像の少なくとも一方を撮像した前記撮像装置に関する情報に基づいて、前記被検体像が属する部位を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記被検体像として、前記第2の画像内に複数の被検体像が存在し、
前記種類判別部は、
前記複数の被検体像の各被検体像が、第1〜第N(Nは2以上の整数)の種類のうち、いずれの種類に属するかを判別し、
前記強調部は、
前記種類判別部の判別結果に応じて、強調処理の方法を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1〜第Nの種類の各種類には、種類に応じた優先度が設定されており、
前記強調部は、
前記被写体像の種類に応じて設定された前記優先度に基づいて、強調処理の方法を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記強調部は、
前記被検体像が属する部位に応じて、前記被検体像の種類に対する前記優先度を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記強調部は、
前記優先度の最も高い種類に属する前記被検体像に対して、前記被検体像の種類に対応する強調方法を用いて、強調処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項5において、
前記強調部は、
前記第1〜第Nの種類のうちの第i(1≦i≦N)の種類に属する前記被検体像に対して、前記第iの種類に対応する強調方法を用いて強調処理を行い、第j(1≦j≦N、j≠i)の種類に属する前記被検体像に対して、前記第jの種類に対応する強調方法を用いて強調処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記第2の画像の種類として、複数の種類が存在し、
前記強調部は、
前記被検体像の種類および前記第2の画像の種類に応じて、前記強調処理の方法を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記第2の画像内の、前記被検体像を有する注目領域に対応する対応注目領域を、前記第1の画像から選出する領域選出部を含み、
前記強調部は、
前記被検体像の種類が血管であり、かつ、前記第2の画像の種類がNBI画像である場合、前記血管に対応する領域である前記対応注目領域を、前記強調処理を施す範囲として決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項10において、
前記強調部は、
前記被検体像の種類が病変であり、かつ、前記第2の画像の種類がNBI画像である場合、前記第1の画像全体を、前記強調処理を施す範囲として決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記強調部は、
前記強調処理として、前記第1の画像全体に対し、その第1の画像の空間周波数のうち、特定の周波数成分を強調することを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
請求項1において、
前記第2の画像内の、前記被検体像を有する注目領域に対応する対応注目領域を、前記第1の画像から選出する領域選出部を含み、
前記強調部は、
前記強調処理として、前記第2の画像から算出されたエッジ量に基づいて、前記第1の画像内の前記対応注目領域に含まれる信号の輝度成分または色成分を強調することを特徴とする画像処理装置。
【請求項15】
請求項1において、
前記第2の画像内の、前記被検体像を有する注目領域に対応する対応注目領域を、前記第1の画像から選出する領域選出部を含み、
前記強調部は、
前記強調処理として、前記第2の画像から算出された色に関する特徴量に基づいて、前記第1の画像内の前記対応注目領域に含まれる信号の輝度成分または色成分を強調することを特徴とする画像処理装置。
【請求項16】
請求項1において、
前記特徴量は、
エッジ、色相または彩度を示す量であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項17】
請求項1において、
前記被検体像の種類は、
病変に関する種類、および血管に関する種類のうち少なくとも1つの種類を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項18】
請求項1において、
前記特定の波長帯域は、
前記白色光の波長帯域よりも狭い帯域であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項19】
請求項1において、
前記第1の画像および前記第2の画像は生体内を写した生体内画像であり、
前記生体内画像に含まれる前記特定の波長帯域は、
血液中のヘモグロビンに吸収されやすい波長の波長帯域であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項20】
請求項19において、
前記特定の波長帯域は、
390ナノメータ〜445ナノメータ、または530ナノメータ〜550ナノメータであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項21】
請求項1において、
前記第1の画像および前記第2の画像は生体内を写した生体内画像であり、
前記生体内画像に含まれる前記特定の波長帯域は、
蛍光物質が発する蛍光の波長帯域であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項22】
請求項21において、
前記特定の波長帯域は、
490ナノメータ〜625ナノメータの波長帯域であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項23】
請求項1において、
前記第1の画像および前記第2の画像は生体内を写した生体内画像であり、
前記生体内画像に含まれる前記特定の波長帯域は、
赤外光の波長帯域であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項24】
請求項23において、
前記特定の波長帯域は、
790ナノメータ〜820ナノメータ、または905ナノメータ〜970ナノメータの波長帯域であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項25】
請求項1において、
前記第2画像取得部は、
前記取得された第1の画像をもとに、前記第2の画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項26】
請求項25において、
前記第2画像取得部は、
前記取得された第1の画像から、白色光の波長帯域における信号を抽出する信号抽出部を含み、
前記第2画像取得部は、
前記抽出された信号をもとに、前記特定の波長帯域における信号を含む前記第2の画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項27】
請求項26において、
前記第2画像取得部は、
前記白色光の波長帯域における信号から、前記特定の波長帯域における信号を算出するためのマトリクスデータを設定するマトリクスデータ設定部を含み、
前記第2画像取得部は、
前記設定されたマトリクスデータを用いて、前記白色光の波長帯域における信号から前記特定の波長帯域における信号を算出して、前記第2の画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれかに記載の画像処理装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項29】
白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得する第1画像取得部と、
特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得する第2画像取得部と、
前記取得された第2の画像の種類に基づいて、前記第1の画像に対して強調処理を施す強調部と、
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項30】
請求項29において、
前記第2の画像の種類は、
NBI画像及びAFI画像の種類を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項31】
請求項30において、
前記強調部は、
前記第2の画像の種類が、NBI画像であるかAFI画像であるかに応じて、強調処理の方法を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項32】
白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得する第1画像取得部と、
特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得する第2画像取得部と、
前記第2の画像内の画素の特徴量に基づいて、前記第2の画像内に写された被検体像の種類を判別する種類判別部と、
前記判別された被検体像の種類に基づいて、前記第1の画像に対して強調処理を施す強調部として、
コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項33】
白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得する第1画像取得部と、
特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得する第2画像取得部と、
前記取得された第2の画像の種類に基づいて、前記第1の画像に対して強調処理を施す強調部として、
コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項34】
白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得し、
特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得し、
前記第2の画像内の画素の特徴量に基づいて、前記第2の画像内に写された被検体像の種類を判別し、
前記判別された被検体像の種類に基づいて、前記第1の画像に対して強調処理を施すことを特徴とする画像処理方法。
【請求項35】
白色光の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第1の画像として取得し、
特定の波長帯域における情報を有した被検体像を含む画像を第2の画像として取得し、
前記取得された第2の画像の種類に基づいて、前記第1の画像に対して強調処理を施すことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【公開番号】特開2011−135983(P2011−135983A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296964(P2009−296964)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】