説明

画像処理装置およびプログラム並びに画像診断装置

【課題】心臓再同期療法の有効症例の予測に適した、左心室非同期の評価を安定に行うことができる画像診断装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置やMR装置などの画像診断装置において、被検体の心臓の内部構造を表す時系列的な画像に基づいて、心臓の複数の局所領域における心筋壁厚の時間変化を求め(S5,S6)、この心筋壁厚の時間変化に基づいて、上記複数の局所領域における心筋壁厚の大きさまたは変化速度が所定の条件、例えば最大となる心位相のばらつきの程度が反映された指標値を算出する(S7,S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の左心室非同期の評価に適した画像処理装置およびそのためのプログラム(program)並びに画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の電気刺激の伝達に異常があると、左心室の少なくとも一部において収縮タイミング(timing)がうまく合わなくなる現象(左心室非同期)が起こり、心臓のポンプ(pump)機能を十分果たせない場合がある。このような場合の治療法として、心臓の異常部分に外部から適切なタイミングで電気刺激を与えて症状を改善する心臓再同期療法(CRT;Cardiac
Resynchronization Therapy)が知られている。
【0003】
しかし、心臓再同期療法の効果が認められない無効症例(non-responder)もかなりの割合で存在することが報告されており、心臓再同期療法の効果が認められる有効症例(responder)の正確な予測は、心臓再同期療法における重要な課題の一つとなっている。
【0004】
従来、このような有効症例を予測する代表的な方法として、心エコー(echo)による方法、すなわち超音波診断装置を用いた組織ドプラ(Doppler)法やスペックルトラッキング(speckle
tracking)法により心臓の左心室の非同期を評価する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−500550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、心エコーによる方法では、得られる情報の正確さが操作者の熟練度に依存し、また再現性や客観性が高くない。
【0007】
このような事情により、心臓の左心室非同期を安定に評価することができる画像処理装置およびそのためのプログラム並びに画像診断装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点の発明は、被検体の心臓の内部構造を表す時系列的な画像に基づいて、前記心臓の複数の局所領域における心筋壁厚の時間変化を求める手段と、該心筋壁厚の時間変化に基づいて、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の大きさまたは変化速度が所定の条件となる心位相のばらつきの程度が反映された指標値を算出する手段を備えている画像処理装置を提供する。
【0009】
第2の観点の発明は、前記指標値が、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚が最大となる心位相のばらつき度である上記第1の観点の画像処理装置を提供する。
【0010】
第3の観点の発明は、前記指標値が、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の増大方向の変化速度が最大となる心位相のばらつき度である上記第1の観点の画像処理装置を提供する。
【0011】
第4の観点の発明は、前記指標値が、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の減少方向の変化速度が最大となる心位相のばらつき度である上記第1の観点の画像処理装置を提供する。
【0012】
第5の観点の発明は、前記指標値が、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚が最大となる心位相のばらつき度、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の増大方向の変化速度が最大となる心位相のばらつき度、および前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の減少方向の変化速度が最大となる心位相のばらつき度のうち少なくとも2つの加算値、平均値、二乗加算値、または二乗平均値である上記第1の観点の画像処理装置を提供する。
【0013】
第6の観点の発明は、前記ばらつき度が、標準偏差である上記第2の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を提供する。
【0014】
第7の観点の発明は、前記複数の局所領域が、米国心臓病学会(AHA)が提唱しているセグメントモデル(segment model)の少なくとも2つのセグメントである上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を提供する。
【0015】
第8の観点の発明は、前記複数の局所領域での心筋壁厚の時間変化を表すグラフ(graph)を生成する生成手段をさらに備えている上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を提供する。
【0016】
第9の観点の発明は、コンピュータ(computer)を、上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置として機能させるためのプログラムを提供する。
【0017】
第10の観点の発明は、前記被検体を撮影して前記時系列的な画像を得る撮影手段と、上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置とを備えている画像診断装置を提供する。
【0018】
第11の観点の発明は、前記撮影手段が、前記被検体をX線CT(Computed tomography)撮影する上記第10の観点の画像診断装置を提供する。
【0019】
第12の観点の発明は、前記撮影手段が、前記被検体をMR撮影する上記第10の観点の画像診断装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
上記観点の発明によれば、時系列的な画像から心臓の複数の局所領域における心筋壁厚の時間変化を求めるので、心臓の収縮運動に関する情報を、操作者の熟練度に依存しないで、正確に、また高い再現性や客観性を持って得ることができる。また、心筋壁厚が最大となる心位相が収縮末期に相当することを利用して、求めた心筋壁厚の時間変化を基に、複数の局所領域における収縮タイミングのばらつきの程度を表す指標値を算出することができる。その結果、心臓の左心室非同期を安定に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のX線CT装置の構成ブロック(block)図である。
【図2】本実施形態のX線CT装置における左心室非同期評価処理に係る部分の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態のX線CT装置による左心室非同期評価処理の流れを示すフローチャート(flowchart)である。
【図4】心筋壁厚を算出する複数の局所領域としての17セグメントモデルを示す図である。
【図5】心筋壁厚の算出例を示す図である。
【図6】時間−壁厚曲線とその1次微分曲線の生成例を示す図である。
【図7】補間処理後の時間−壁厚曲線と補間処理後のその1次微分曲線の例を示す図である。
【図8】最大駆出速度到達時間(TPE)、収縮末期到達時間(TES)、最大充満速度到達時間(TPF)の定義を説明する図である。
【図9】時間−壁厚曲線のグラフおよび左心室非同期指標値の表示結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照して発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施形態のX線CT装置の構成ブロック図である。このX線CT装置100は、操作コンソール(console)1、撮影テーブル(table)10、走査ガントリ(gantry)20とを具備している。
【0024】
操作コンソール1は、操作者の入力を受け付ける入力装置2と、画像再構成処理などを実行する中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得した投影データを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、投影データから再構成したCT画像等を表示するモニタ(monitor)6と、プログラムやデータ、CT画像などを記憶する記憶装置7とを具備している。
【0025】
撮影テーブル10は、被検体を載置して走査ガントリ20のボア(bore)に対し搬入搬出するクレードル(cradle)12を具備している。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。
【0026】
走査ガントリ20は、X線管21と、X線コントローラ(controller)22と、コリメータ(collimator)23と、X線検出器24と、データ収集部DAS(Data
Acquisition System)25と、被検体の体軸の回りにX線管21などを回転させる回転部コントローラ26と、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10とやり取りする制御コントローラ29とを具備している。
【0027】
本実施形態におけるX線CT装置の構成は概ね上記の通りである。この構成のX線CT装置において、投影データの収集は例えば次のように行われる。
【0028】
まず、被検体を走査ガントリ20の回転部15の空洞部に位置させた状態でz方向の位置を固定し、X線管21からのX線ビーム(beam)を被検体に照射し(X線の投影)、その透過X線をX線検出器24で検出する。そして、この透過X線の検出を、X線管21とX線検出器24を被検体の周囲で回転させて、投影角度すなわちビュー(view)角度を変化させながら投影データ収集を行う。
【0029】
検出された各透過X線は、DAS25でディジタル(digital)値に変換されて投影データとしてデータ収集バッファ5を介して操作コンソール1に転送される。スキャン方式としては、コンベンショナルスキャン(conventional
scan)すなわちアキシャルスキャン(axial scan)や、ヘリカルスキャン(helical scan)を考えることができる。
【0030】
操作コンソール1は、走査ガントリ20から転送されてくる投影データを中央処理装置3の固定ディスク(disk)HDDに格納するとともに、例えば、所定の再構成関数と重畳演算を行い、逆投影処理により断層像を再構成する。ここで、操作コンソール1は、スキャン処理中に走査ガントリ20から順次転送されてくる投影データからリアルタイム(real
time)に断層像を再構成し、常に最新の断層像をモニタ6に表示させることが可能である。さらに、固定ディスクHDDに格納されている投影データを呼び出して改めて画像再構成を行わせることも可能である。
【0031】
以下、本実施形態のX線CT装置における左心室非同期評価処理について説明する。
【0032】
図2は、本実施形態のX線CT装置における左心室非同期評価処理に係る部分の機能ブロック図である。
【0033】
本実施形態のX線CT装置は、左心室非同期評価処理に係る部分として、投影データ収集部301、画像再構成部302、心筋輪郭検出部303、心筋壁厚算出部304、グラフ生成部305、特定心位相検出部306、局所領域選択部307、非同期指標算出部308、および表示制御部309を有している。
【0034】
また、図3は、本実施形態のX線CT装置による左心室非同期評価処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートに対応するプログラムは、固定ディスク(hard disk)HDD等からなる記憶装置7にインストール(install)されている画像処理プログラムに含まれ、中央処理装置3によって実行されるものである。
【0035】
ステップ(step)S1では、投影データ収集部301が、走査ガントリ20を制御して、被検体の心臓に対する投影データ収集を行う。本例では、心拍同期によるスキャンを行い、心臓41hの複数ビューの投影データを1心拍分程度収集する。スキャン方式は、アキシャルスキャンやヘリカルスキャンなど、いずれの方式であってもよい。なお、アキシャルスキャンの場合で、心臓がz方向の検出器幅内に納まらない場合には、スキャン範囲を分割して複数回のスキャンを行うことにより、心臓全体の投影データを収集する。
【0036】
ステップS2では、画像再構成部302が、ステップS1で収集された投影データを基に、所定の心位相間隔で画像再構成を行う。本例では、心位相5%の間隔で計20の各心位相について、心臓41hの各スライス(slice)の画像再構成を行う。例えば、逆投影する投影データのビュー範囲を心位相5%分ずつビュー方向(時間軸方向)にずらしながら画像再構成を繰り返す。これにより、心臓41hに対する計20の時系列的な3次元画像が得られる。なお、一般的に、画像再構成を行う心位相の間隔が小さいほど、後述する左心室非同期指標値の計算精度は向上する。しかし、この心位相の間隔が小さいと演算量が膨大になるので、現在の計算機の性能を考慮すると、例えば心位相3〜10%程度の間隔で画像再構成を行うのが妥当である。
【0037】
ステップS3では、心筋輪郭検出部303が、ステップS2で得られた各心位相の3次元画像ごとに、心筋の輪郭(境界)を検出する。本例では、心位相5%間隔で再構成された計20の3次元画像について、心臓41hの心筋の内壁および外壁を輪郭として検出する。輪郭の検出方法は、公知の方法、例えば特開平08−279033号公報や特開平06−189937号公報に開示されている方法を用いることができる。
【0038】
ステップS4では、心筋壁厚算出部304が、ステップS3で検出された心筋の輪郭を基に、各心位相の3次元画像ごとに、心臓の複数の局所領域における心筋壁厚を算出する。この複数の局所領域は、例えば、米国心臓病学会(AHA;American Heart Association)が提唱している17セグメントモデルや20セグメントモデルにおける各セグメント(局所領域)とすることができる。
【0039】
本例では、心位相5%の間隔で再構成された計20の3次元画像について、局所領域ごとに心筋壁厚を算出する。局所領域は、図4に示すような17セグメントモデルにおける各セグメントseg1〜seg17とする。図4(a)は、17セグメントモデルのポーラー・マップ(polar map)PMである。また、図4(b)は、hz方向を長軸とする心臓41hの斜視図であり、17セグメントモデルを用いて複数のセグメントに分割した様子を示している。第1〜第6セグメントseg1〜seg6は心基部側に相当し、第17セグメントseg17は心尖部側に相当する。図5に心筋壁厚の算出例を示す。この例では、ある心位相の3次元画像から得られる心臓41hの短軸像を基に、その心位相における心臓41hの第1〜第6セグメントseg1〜seg6での心筋壁厚WT1〜WT6が算出される様子を示している。なお、図5において、RVは右心室、LVは左心室を示している。
【0040】
ステップS5では、グラフ生成部505が、ステップS4で得られた各心位相における各局所領域の心筋壁厚を基に、局所領域ごとに、時間−壁厚曲線とその1次微分曲線を生成する。図6に時間−壁厚曲線とその1次微分曲線の生成例を示す。この例では、第1〜第3セグメントseg1についての各曲線を示しているが、本実施形態の場合、実際には第1〜第17セグメントすべてについて各曲線を生成することになる。
【0041】
ステップS6では、グラフ生成部505が、ステップS5で生成された時間−壁厚曲線とその1次微分曲線に対して、時間軸方向の補間処理を行う。心位相3〜10%程度の間隔で算出された心筋壁厚の1心拍分の時間変化データは、十個から数十個のプロット(plot)で構成される。この場合、図6の例からも分かるように、曲線の滑らかさに欠け、時間分解能が不十分となることが多い。このままでは、これ以降のステップにおける計算精度に問題が生じる可能性があるため、ここでは、補間処理によってデータの連続性や実効的な時間分解能を改善する。補間処理の方法は、公知の補間方法でよいが、高次スプライン(spline)補間やベジェ(bezier)補間などの非線形補間法が望ましい。図7に、補間処理後の時間−壁厚曲線と補間処理後の1次微分曲線の例を示す。図7では、第1〜第3セグメントseg1についての心位相5%の間隔のデータを、データ点数すなわちサンプリング(sampling)数が20倍になるよう補間しており、実効的に心位相0.25%の間隔のデータに相当する。
【0042】
ステップS7では、特定心位相検出部506が、第1〜第17セグメントseg1〜seg17の各セグメントに対して、ステップS6で得られた補間処理後の時間−壁厚曲線とその1次微分曲線を基に、最大駆出速度到達時間(TPE;Time to peak Ejections)、収縮末期到達時間(TES;Time to peak Systoles)、最大充満速度到達時間(TPF;Time
to peak Fillings)を検出する。図8に示すように、TPEは、心筋壁厚の増大方向の変化速度が最大となる時間(時相)、すなわち1次微分曲線における最大ピークを与える時間である。TESは、心筋壁厚が最大となる時間(時相)、すなわち時間−壁厚曲線における最大ピークを与える時間である。また、TPFは、心筋壁厚の減少方向の変化速度が最小となる時間(時相)、すなわち1次微分曲線における最小ピークを与える時間である。
【0043】
ステップS8では、局所領域選択部507が、必要に応じて、操作者が指定した任意のセグメントを、左心室の非同期を評価する指標値(左心室非同期指標値)の算出対象となるセグメントとして選択する。ただし、少なくとも2つ以上のセグメントを選択する。このとき、17セグメントすべてを選択してもよいし、例えば17セグメントのうち心尖部の第17セグメントを除いた領域や、いわゆるアンテリア(anterior)領域等の特定の領域のみを選択してもよい。このように特定の領域のみを指標値の計算対象とすることで、任意の注目心筋の非同期を評価することができる。
【0044】
ステップS9では、非同期指標算出部308が、ステップS8で選択されたセグメントを算出対象として、左心室非同期の指標値を算出する。具体的には、次の数式1〜3のように、TPE,TES,TPFのセグメント間のばらつき度、例えば標準偏差を、R−R間隔(時間)で正規化した値を算出する。R−R間隔で正規化することで、心拍に依らず客観的な比較が可能となる。
【0045】
【数1】

【0046】
Index_TPE,Index_TES,Index_TPFは、それぞれ単独で左心室非同期指標値とすることもできるが、これらのうち少なくとも2つの加算値、平均値、二乗加算、二乗平均等を左心室非同期指標値としてもよい。
【0047】
ステップS10では、表示制御部309が、ステップS6で生成されたグラフや、ステップS7で特定されたTPE,TES,TPFの位置、ステップS9で算出された左心室非同期の指標値をモニタ6に表示する。
【0048】
図9に、時間−壁厚曲線のグラフおよび左心室非同期指標値の表示結果の例を示す。図中の破線は、各セグメントの時間−壁厚曲線におけるTESの位置を示している。図9の例では、左心室非同期指標として、Index_TESを表示している。図9(a)の例におけるIndex_TESは3.3であり、左心室非同期の重篤度が低いと考えられる。一方、図9(b)の例におけるIndex_TESは18.9であり、左心室非同期の重篤度が高いと考えられる。一般的に、左心室非同期の重篤度が低いと、心臓再同期療法の効果が認められる有効症例となる可能性が高く、同重篤度が高いと、同療法の無効症例となる可能性が高いと言われている。したがって、本実施形態によって算出された左心室非同期指標値を参照することで、対象症例が有効症例であるか否かを正確かつ安定に予測できるものと考えられる。
【0049】
以上、本実施形態によれば、時系列的な画像から心臓の複数の局所領域における心筋壁厚の時間変化を求めるので、心臓の収縮運動に関する情報を、操作者の熟練度に依存しないで正確に、また高い再現性や客観性を持って得ることができる。また、心筋壁厚が最大となる心位相が収縮末期に相当することを利用して、求めた心筋壁厚の時間変化を基に、複数の局所領域における収縮タイミングのばらつきの程度を表す指標値を算出することができる。その結果、心臓の左心室非同期を安定に評価することができる。
【0050】
また、一般的に、心臓の各局所領域における収縮タイミングを知るための方法としては、心軸から心筋壁までの距離を求める方法が考えられる。この場合、心筋壁だけでなく、心軸も検出することになるが、心軸は実体がない分、心筋壁より検出精度が悪くなることが予想される。一方、本実施形態では、心臓の各局所領域における収縮タイミングを知るための方法として、心筋壁厚を求める方法を採用しているので、心軸から心筋壁までの距離を求める方法よりも、その検出精度がよいため、収縮タイミングをより正確に知ることができる。
【0051】
また、左心室の非同期を評価する従来法としては、心エコーによる方法の他に、心臓のSPECT画像から、局所容積の時間変化に基づいて左心室の非同期を評価する方法が知られている(例えば、非特許文献 Quantification of left ventricular regional using ECG-gated
myocardial perfusion SPECT. Ann Nucl Med 2006;20(7):449-456を参照されたい)。しかし、SPECT画像による方法では、空間分解能が低く、さらにSPECT装置による検査費用が高価で検査施設にも限りがある。本実施形態では、X線CT装置を用いて左心室非同期を評価しようとしており、X線CT装置や心臓CT検査の普及を考えると、SPECT画像による方法と比べて多くの施設で評価が可能である。
【0052】
また、本実施形態では、左心室非同期指標値も、理論・計算式ともにシンプル(simple)であり、再現性や繰り返し性が高い。
【0053】
なお、発明の実施形態は、上記実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更・追加等が可能である。
【0054】
例えば、本実施形態は、発明をX線CT装置に適用した場合の例であるが、発明をMR装置に適用することも可能である。この場合、心臓の時系列的な画像は、MR撮影によって取得される。なお、MR装置やMR装置による心臓検査の普及を考えると、X線CT装置と同様、SPECT画像による従来法に比べて多くの施設で評価が可能である。
【0055】
また例えば、本実施形態は、心臓の時系列的な画像を得る撮影手段を含んでいる画像診断装置としているが、撮影手段を含まず、心臓のX線投影データ、心臓のMRデータ、あるいは心臓の画像を読み込み、そのデータを基に上述の処理を行って左心室非同期指標値を算出する画像処理装置もまた、発明の一実施形態である。さらに、コンピュータをこのような画像処理装置として機能させるためのプログラムもまた発明の一実施形態である。
【符号の説明】
【0056】
1…操作コンソール
2…入力装置
3…中央処理装置
5…データ収集バッファ
6…モニタ
7…記憶装置
10…撮影テーブル
12…クレードル
15…回転部
20…走査ガントリ
21…X線管
22…X線コントローラ
23…コリメータ
24…X線検出器
25…データ収集部DAS
26…回転部コントローラ
29…制御コントローラ
30…スリップリング
301…投影データ収集部
302…画像再構成部
303…心筋輪郭検出部
304…心筋壁厚算出部
305…グラフ生成部
306…特定心位相検出部
307…局所領域選択部
308…非同期指標算出部
309…表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心臓の内部構造を表す時系列的な画像に基づいて、前記心臓の複数の局所領域における心筋壁厚の時間変化を求める手段と、
該心筋壁厚の時間変化に基づいて、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の大きさまたは変化速度が所定の条件となる心位相のばらつきの程度が反映された指標値を算出する手段とを備えている画像処理装置。
【請求項2】
前記指標値は、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚が最大となる心位相のばらつき度である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記指標値は、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の増大方向の変化速度が最大となる心位相のばらつき度である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記指標値は、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の減少方向の変化速度が最大となる心位相のばらつき度である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記指標値は、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚が最大となる心位相のばらつき度、前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の増大方向の変化速度が最大となる心位相のばらつき度、および前記複数の局所領域における前記心筋壁厚の減少方向の変化速度が最大となる心位相のばらつき度のうち少なくとも2つの加算値、平均値、二乗加算値、または二乗平均値である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ばらつき度は、標準偏差である請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記複数の局所領域は、米国心臓病学会(AHA)が提唱しているセグメントモデルの少なくとも2つのセグメントである請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記複数の局所領域での心筋壁厚の時間変化を表すグラフを生成する生成手段をさらに備えている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
前記被検体を撮影して前記時系列的な画像を得る撮影手段と、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の画像処理装置とを備えている画像診断装置。
【請求項11】
前記撮影手段は、前記被検体をX線CT撮影する請求項10に記載の画像診断装置。
【請求項12】
前記撮影手段は、前記被検体をMR撮影する請求項10に記載の画像診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−90722(P2012−90722A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239696(P2010−239696)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】