説明

画像処理装置およびプログラム

【課題】対称性のある図形を選択領域として容易に設定できるようにする。
【解決手段】入力した分割数Nに基づいてN本の分割線を対象画像上に描画して対象画像をN個の分割領域に分割し(e)、分割領域の範囲内でユーザーから指定領域B1の指定を入力し(f)、折りたたんだ紙を指定領域の形状に切ったあとその形状の紙を広げることでできる切り絵模様の形状の領域を、指定領域B1を指定領域B2〜B6に展開することで形成し(g)、これを対象画像における選択領域として設定する(h)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置として、対象画像のうちユーザーが選択した領域を選択領域として設定して、選択領域のみについて例えば切り取りや複写などの処理を行うものが知られている。例えば、特許文献1に記載の消去範囲制御装置では、編集中の対象画像に対してユーザーからの消去可能範囲の入力と暫定消去範囲の入力とを受付け、消去可能範囲と暫定消去範囲との論理和を求め、求めた論理和を実消去範囲として設定し、対象画像のうち実消去範囲のみ消去する処理を行っている。こうすることで、消去可能範囲を設定せずに実消去範囲を直接設定する場合と比べてユーザーが消去したくない部分を誤って選択して消去することを防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−105210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の消去範囲制御装置では、消去可能範囲等の選択はマウスで画面上のポインタを動かすフリーハンドにより行っている。そのため、形状によってはユーザーが所望する形状に領域を選択することが難しい場合があった。例えばハート型や星形などのように対称性を持つ形状の領域を選択する場合に、フリーハンドで対称性よく選択することは困難であった。一方、ユーザーが所望する形状の領域を選択できるように予め様々な選択領域の形状を用意しておくことも考えられるが、ユーザーが希望する全ての形状について予め用意しておくことは困難である。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、対称性のある図形を選択領域として容易に設定できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の画像処理装置は、
対象画像のうちの一部の領域を選択領域として設定する画像処理装置であって、
ユーザーからの指示を入力可能な入力手段と、
画像を表示可能な表示手段と、
前記入力手段を介して前記ユーザーから分割数N(Nは2以上の偶数)の指定を入力する分割数入力処理と、前記対象画像における所定の点から該対象画像の外縁まで伸びるN本の分割線を、隣り合う該分割線同士のなす角が等しくなるように前記対象画像上に描画して前記表示手段に表示させる分割線表示処理と、前記対象画像において前記N本の分割線により分割されたN個の分割領域のうちの1つの領域中で前記入力手段を介して前記ユーザーから指定領域の指定を入力する指定領域入力処理と、前記入力された指定領域を他の(N−1)個の前記分割領域中に展開するにあたり、隣り合う前記分割領域中の指定領域が互いを隔てる前記分割線を軸として線対称となるようにして、該展開後のN個の指定領域からなる形状を形成し、該展開後のN個の指定領域を前記選択領域として設定する選択領域設定処理とを行う制御手段と、
を備えたものである。
【0008】
この画像処理装置は、入力手段を介してユーザーから分割数N(Nは2以上の偶数)の指定を入力する分割数入力処理と、対象画像における所定の点から対象画像の外縁まで伸びるN本の分割線を、隣り合う分割線同士のなす角が等しくなるように対象画像上に描画して表示手段に表示させる分割線表示処理と、対象画像においてN本の分割線により分割されたN個の分割領域のうちの1つの領域中で入力手段を介してユーザーから指定領域の指定を入力する指定領域入力処理と、入力された指定領域を他の(N−1)個の分割領域中に展開するにあたり、隣り合う分割領域中の指定領域が互いを隔てる分割線を軸として線対称となるようにして、展開後のN個の指定領域からなる形状を形成し、展開後のN個の指定領域を選択領域として設定する選択領域設定処理とを行う。こうすれば、ユーザーが分割数Nを指定し、表示された分割線を見ながら指定領域を指定するだけで、指定領域を展開した対称性のある図形が選択領域として設定される。このため、例えばユーザーが選択領域の全ての形をフリーハンドで指定する場合と比べて、対称性のある図形を選択領域として容易に設定することができる。
【0009】
本発明の画像処理装置において、前記制御手段は、前記対象画像における前記所定の点の位置を前記ユーザーから前記入力手段を介して入力したときは、該入力された点の位置を前記所定の点の位置として設定する点位置設定処理を行う手段としてもよい。こうすれば、選択領域の中心点をユーザーが設定できるため、選択領域を所望の位置に設定しやすくなる。
【0010】
本発明の画像処理装置において、前記制御手段は、前記分割線表示処理で表示した分割線の回転角度を前記入力手段を介して前記ユーザーから入力したときは、前記分割線同士のなす角を保ったまま該分割線を前記所定の点を中心に前記回転角度だけ回転させた位置に描画して前記表示手段に表示させる分割線回転処理を行う手段としてもよい。こうすれば、選択領域の分割線の傾きをユーザーが設定できるため、選択領域を所望の向きに設定しやすくなる。
【0011】
本発明の画像処理装置において、前記制御手段は、前記分割線表示処理で表示した前記N本の分割線のうち所定の1本の分割線を基準分割線として、該基準分割線と該基準分割線と隣り合う前記分割線をドラッグする指示を前記入力手段を介して前記ユーザーから入力したときは、該ドラッグ後の分割線と前記基準分割線とのなす角に最も近い角θ(θは180の約数)を導出し、360°/θを変更後の分割数Nに設定して再度前記分割線表示処理を行う分割数変更処理を行う手段としてもよい。こうすれば、基準分割線と隣り合う分割線をドラッグすることで分割数Nを容易に変更することができる。
【0012】
本発明のプログラムは、コンピューターを上述したいずれかの画像処理装置として機能させるものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターに配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムをコンピューターに実行させれば、上述のいずれかの態様の本発明の画像処理装置として機能するため、本発明の画像処理装置と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プリンター20の外観を示す外観斜視図。
【図2】プリンター20の機能ブロックを示すブロック図。
【図3】選択領域印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図4】選択領域印刷処理の様子を示す説明図。
【図5】分割線変更処理の一例を示すフローチャート。
【図6】N本の分割線のうちの2本のみを表示する様子を示す説明図。
【図7】指定領域の入力の変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるプリンター20の外観を示す外観斜視図であり、図2は、本実施形態のプリンター20の機能ブロックを示すブロック図である。
【0015】
本実施形態のプリンター20は、印刷機構40(図2参照)を内蔵しL版サイズの用紙に印刷を行なうフォトプリンターとして構成されており、その外観としては、図1に示すように、本体21の上面には本体21を持ち運ぶための取っ手22が、本体21の背面にはセットした用紙を自動給紙するオートシートフィーダー23が、本体21の側面には電源をオンオフするための電源ボタン26が、それぞれ設けられている。また、本体21の前面には、印刷機構40により印刷された用紙を保持する排紙トレイ24と、画像データや印刷時の設定を確認するための液晶ディスプレイ(LCD)25と、排紙トレイ24に隣接した位置の赤外線通信ポート28とが設けられている。赤外線通信ポート28は、受光部が内蔵されており、リモートコントロール装置30の発光部30aからの発光を受光することにより、リモートコントロール装置30のボタン操作によってプリンター20を遠隔操作できるようになっている。なお、リモートコントロール装置30は、プリンター20を遠隔操作するためのボタン類として、電源をオンオフするための電源ボタン31と、印刷中に押されると印刷を中止し画像選択画面で押されると印刷枚数や画像データの選択を解除するストップ/設定クリアボタン32と、トップメニュー画面を表示するためのトップメニューボタン33と、印刷枚数を設定するための印刷枚数設定ボタン(印刷枚数を1枚ずつ増やすプラスボタンおよび印刷枚数を1枚ずつ減らすマイナスボタン)34と、項目や設定値を選択するための上下左右ボタン35と、項目を決定したり次の画面に進むためのOKボタン36と、一つ前の画面に戻る戻るボタン37と、印刷を開始する印刷ボタン38と、設定画面を表示する設定ボタン39などを備える。
【0016】
印刷機構40は、図2に示すように、左右方向(主走査方向)にループ状に架け渡されたキャリッジベルト43により駆動されガイド42に沿って左右に往復するキャリッジ41と、キャリッジ41にシアン・マゼンタ・イエロー・ブラック等の各色のインクを供給するインクカートリッジ44と、各インクカートリッジ44から供給された各インクに圧力をかけてノズルから用紙Sに向けてインクを吐出する印刷ヘッド45と、副走査方向に用紙Sを搬送する搬送ローラー46とを備える。インクカートリッジ44は、印刷機構40の下方に取り付けられており、インクカートリッジ44がキャリッジ41上に搭載されていない、いわゆるオフキャリッジタイプである。印刷ヘッド45は、ここでは圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用しているが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用してもよい。
【0017】
LCD25は、LCDコントローラー54による表示制御を受けて文字や図形,記号などを表示すると共にユーザーにより指やタッチペンによる入力操作が可能な静電容量方式のタッチパネル付き液晶ディスプレイである。LCD25は、本実施形態では、960ドット×240ドットの画素により構成されている。
【0018】
また、本実施形態のプリンター20は、その制御系としては、図2に示すように、プリンター全体の制御を司るメインコントローラー60と、印刷機構40を制御するプリンターASIC48と、赤外線通信ポート28を介して入力した赤外線信号を操作信号として処理する赤外線通信コントローラー52と、LCD25を表示制御するLCDコントローラー54と、メモリーカードスロット56に挿入されたメモリーカードMCに対するデータの書き込みや読み出しを制御するメモリーカードコントローラー58と、を備え、これらはバス59を介して互いに電気的に接続されている。
【0019】
メインコントローラー60は、CPU61を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムや各種データ、各種テーブルなどを記憶するROM62と、一時的にデータを記憶するRAM63と、書き換え可能で電源を切ってもデータは保持されるフラッシュメモリー64と、電源ボタン26からの操作信号を入力するインターフェース65(I/F)とを備える。このメインコントローラー60は、メモリーカードスロット56に挿入されたメモリーカードMCから画像データなどを入力したり、赤外線通信コントローラー52からの操作信号や印刷機構40の各部からの検出信号などを入力したりする。また、メインコントローラー60は、メモリーカードMCに画像データなどのデータを保存したり、プリンターASIC48への指令信号やLCDコントローラー54への制御信号を出力したりする。
【0020】
このプリンター20では、トップメニューボタン33が押されると、図示しないトップメニュー画面を表示して各種項目の選択を受け付ける。トップメニュー画面には、メモリーカードMCやフラッシュメモリー64に記憶されている画像データを順次再生するための「スライドショー」,画像データをそのまま印刷するための「写真の印刷」,ユーザーから入力した指定領域を展開して切り絵模様の形状の選択領域を形成し画像データのうちの一部の領域を選択領域として設定して印刷する選択領域印刷などを行なうための「いろいろな印刷」,メモリーカードMC内のデータをフラッシュメモリー64にバックアップするための「データ管理」の項目がある。ユーザーは、これらの項目のいずれかを上下左右ボタン35により選択し、OKボタン36を押すことにより決定することができる。
【0021】
次に、こうして構成された本実施形態のプリンター20の動作、特に、上述した選択領域印刷を行う際の動作について説明する。図3は、選択領域印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ユーザーによりトップメニュー画面で「いろいろな印刷」が選択された後に、さらに「選択領域印刷」が選択されたときに実行される。
【0022】
選択領域印刷処理ルーチンが実行されると、メインコントローラー60のCPU61は、まず、選択領域を設定する対象画像の選択をユーザーから入力する処理を実行する(ステップS100)。この処理は、メモリーカードMCやフラッシュメモリー64内に記憶されている画像データの一覧をLCD25が表示するようCPU61がLCDコントローラー54を制御し、表示した画像データの一覧からユーザーのボタン操作によって選択された画像データを対象画像として入力するものとした。続いて、入力した対象画像のうちの一部を選択領域として設定するための図示しない設定画面を表示する(ステップS110)。設定画面には、ステップS100で選択された対象画像が表示される。
【0023】
続いて、CPU61は、分割数N(Nは2以上の偶数)の指定をユーザーから入力する(ステップS120)。ここで、分割数Nとは、対象画像を複数の分割領域に分割する際の分割線の数であり分割領域の数である。この処理は、例えば、CPU61が分割数Nを指定するようユーザーに指示するメッセージと分割数Nのデフォルト値(例えば値4)とをLCD25に表示させ、ユーザーが上下左右ボタン35の操作を入力すると操作に応じて分割数Nの値を増減させてLCD25に表示させ、ユーザーがOKボタン36を押したときの値を分割数Nの値として入力することにより行う。そして、分割数Nを入力すると、CPU61は、対象画像における所定の基準点から対象画像の外縁まで伸びるN本の分割線を設定画面の対象画像上に描画してLCD25に表示させる(ステップS130)。なお、N本の分割線は隣り合う分割線同士のなす角が等しくなるようにする。また、所定の基準点のデフォルト位置は、対象画像の中心に定められている。図4(a)に、分割数Nとして値4が指定されたときの対象画像の様子を示す。図示するように、分割数Nが値4のときには、隣り合う分割線同士のなす角が等しくなるように、すなわち、なす角が90°となるようにして4本の分割線を対象画像上に描画する。なお、表示されている4本の分割線のうち基準点から真上に伸びる分割線は基準分割線であり、他の分割線と異なる色で描画するなどユーザーが基準分割線と他の分割線とを区別できるようにしてLCD25に表示する。本実施形態では、ステップS130では、基準分割線は必ず基準点から真上に伸びるように描画し、これを基準として他の分割線を描画するものとした。このN本の分割線により、対象画像がN個の分割領域に分割される。
【0024】
次に、CPU61は、ステップS130で表示した分割線の変更をユーザーから受け付ける分割線変更処理を行う(ステップS140)。図5は、分割線変更処理の一例を示すフローチャートである。ここで、選択領域印刷処理の説明を中断して、分割線変更処理について説明する。
【0025】
この分割線変更処理では、CPU61は、まず、基準点の位置がユーザーから入力されたか否かを判定する(ステップS300)。基準点の位置の入力は、例えば、ユーザーがリモートコントロール装置30のボタン操作を行って設定画面に設けられた図示しない基準位置入力欄に基準点の位置(対象画像における座標)を入力したり、LCD25に表示された基準点をユーザーが指やタッチペンでドラッグしたりすることにより行う。そして、基準点の位置がユーザーから入力されたときには、入力された位置を基準点の位置として設定し、この基準点の位置を基準としてN本の分割線を対象画像上に描画し直してLCD25に表示する(ステップS310)。この処理は、基準点の位置が異なる点以外は上述したステップS130の処理と同様である。図4(b)に、図4(a)から基準点の位置を変更した場合の対象画像の様子を示す。
【0026】
ステップS300で基準点の位置が入力されないとき又はステップS310で変更後の基準点の位置を基準としてN本の分割線を表示したときは、分割線を回転させる回転角度の指定がユーザーから入力されたか否かを判定する(ステップS320)。回転角度の指定は、例えば、ユーザーがリモートコントロール装置30のボタン操作を行って設定画面に設けられた図示しない回転角度入力欄に回転角度を入力したり、LCD25に表示された基準分割線をユーザーが指やタッチペンでドラッグしたりすることにより行う。なお、ドラッグにより行う場合には、本実施形態では、基準分割線をドラッグすると基準分割線が基準点を中心に回転するものとし、その回転角度をユーザーの指定として入力するものとした。そして、回転角度の指定がユーザーから入力されたときには、N本の分割線同士のなす角を保ったままN本の分割線を基準点を中心に指定された回転角度だけ回転させ、回転後の分割線を対象画像上に描画してLCD25に表示する(ステップS330)。図4(c)に、図4(b)から分割線をθ1だけ回転させた場合の対象画像の様子を示す。
【0027】
ステップS320で回転角度が指定されないとき又はステップS330で分割線を回転させたときは、基準分割線と隣り合う分割線をドラッグする指示がユーザーから入力されたか否かを判定する(ステップS340)。分割線をドラッグする指示は、LCD25に表示された分割線をユーザーが指やタッチペンでドラッグすることにより行う。そして、ドラッグする指示がユーザーから入力されたときは、ドラッグ後における基準分割線とドラッグされた分割線とのなす角θ2を導出し(ステップS350)、導出した角θ2に最も近い角θ(θは180の約数)を導出する(ステップS360)。そして、分割数Nを値360°/θに再設定して(ステップS370)、再設定後の分割数Nに基づいてN本の分割線をLCD25に表示する(ステップS380)。このステップS350〜S380の処理は、ユーザーのドラッグ操作に基づいて分割数Nを変更する処理である。例えば、図4(c)の状態では基準分割線と隣り合う分割線L1,L2とのなす角は90°である。この状態から、図4(d)に示すようにユーザーが基準分割線と隣り合う分割線L1を基準分割線に近づける方向にドラッグした場合、ステップS350で導出したドラッグ後のなす角θ2が75°<θ2≦90°の範囲にあるときには、ステップS360でこの角θ2に最も近い角θとして値90°が導出される(値90の次に大きい180の約数は値60であることから、角θ2が75°<θ2≦90°の範囲であれば角θ2に最も近い角θは90°となるため)。そのためステップS370では再設定後の分割数Nは引き続き値4となり、ステップS380の処理を行っても分割線の本数や位置は変わらない。一方、ステップS350で導出したドラッグ後のなす角θ2が52.5°<θ2≦75°の範囲にあるときには、ステップS360でこの角θ2に最も近い角θとして値60°が導出される(値60の次に大きい180の約数は45であることから、角θ2が52.5°<θ2≦75°の範囲であれば角θ2に最も近い角θは60°となるため)。そのためステップS370では分割数Nとして値6が再設定され、ステップS380の処理により図4(e)に示すように対象画像における基準点から対象画像の外縁まで伸びる6本の分割線がLCD25に表示される。なお、ステップS360において角θを180°の約数としているのは、N本の分割線について隣り合う分割線同士のなす角が等しくなるようにするためには分割線同士のなす角が180の約数である必要があるからである。また、ステップS380の処理は、上述したステップS310で基準点の位置が変更されている場合やステップS330で基準点から基準分割線の伸びる向きが変更されている場合に変更後の基準点の位置や基準分割線の伸びる向きを保つこと以外は、上述したステップS130と同様に行う。
【0028】
ステップS340で分割線のドラッグがなされないとき又はステップS380で再設定後の分割数Nに基づいてN本の分割線をLCD25に表示したときは、ユーザーがOKボタン36を押したか否かを判定する(ステップS390)。そして、OKボタン36が押されていないと判定したときには、ステップS300に戻ってステップS300〜S390の処理を繰り返す。一方、OKボタン36が押されたと判定したときには、分割線変更処理を終了する。この分割線変更処理により、ステップS130で表示された分割線を、ユーザーの所望の位置,向き,本数に変更することができる。
【0029】
図3の選択領域印刷処理ルーチンの説明に戻る。ステップS140の分割線変更処理が終了すると、CPU61は、N本の分割線により分割されたN個の分割領域のうちの1つの領域中でユーザーから指定領域の指定を入力する(ステップS150)。なお、この処理において、ユーザーからの指定領域の指定は、LCD25に表示されたいずれか1つの分割領域について、その分割領域を構成する2つの分割線をまたぐようにユーザーが指やタッチペンでLCD25をなぞることで行うものとした。また、CPU61は、ユーザーがなぞった軌跡とその軌跡を含む分割領域を構成する2つの分割線とで囲まれる領域を指定領域として入力するものとした。図4(f)に、指定領域が指定されたときの対象画像の様子を示す。図示するように、ユーザーがなぞった軌跡が、分割領域A1を構成する分割線L3,L4をまたぐ線L5であったとすると、CPU61は、線L5と分割線L3,L4とで囲まれた領域B1を指定領域として入力する。
【0030】
そして、ステップS150でユーザーから指定領域の指定を入力すると、CPU61は、入力した指定領域を、指定領域を含む分割領域以外の他の(N−1)個の分割領域に展開して、展開後の領域をLCD25に表示すると共に選択領域として設定する(ステップS160)。なお、この展開は、隣り合う分割領域中の指定領域が互いを隔てる分割線を軸として線対称となるように行う。例えば、ステップS150で図4(f)の指定領域B1を入力したときには、ステップS160では指定領域B1を展開することで図4(g)のように指定領域B2〜B6を形成して、指定領域B1〜B6からなる領域を選択領域として表示する。なお、図4(g)では、指定領域B1〜B6を見やすくするために対象画像を省略して図示しているが、実際は対象画像上に指定領域B1〜B6を重ねて表示する。この展開は、例えば、分割線L4を軸として指定領域B1と線対称な指定領域B2を形成し、分割線L5を軸として指定領域B2と線対称な指定領域B3を形成し、分割線L6を軸として指定領域B3と線対称な指定領域B4を形成し、分割線L7を軸として指定領域B4と線対称な指定領域B5を形成し、基準分割線を軸として指定領域B5と線対称な指定領域B6を形成することで行うことができる。すなわち、順次隣り合う分割領域に互いを隔てる分割線を軸として指定領域と線対称な領域を形成していくことで行うことができる。このようなステップS160の処理を行うことで、折りたたんだ紙を指定領域の形状に切ったあとその形状の紙を広げることでできる切り絵模様の形状の領域を指定領域を展開することで形成し、切り絵模様の形状の領域を選択領域として設定する処理を行うことができる。
【0031】
ステップS160で選択領域の表示及び設定を行うと、ユーザーがOKボタン36又は戻るボタン37のいずれかを押したかを判定する(ステップS170)。そして、戻るボタン37が押されたと判定したときには、ステップS160で行った選択領域の表示及び設定を取り消して(ステップS180)、ステップS140に戻ってステップS140〜S170の処理を繰り返す。例えば、図4(g)の状態でユーザーが戻るボタン37を押したときには、CPU61は図4(g)における選択領域の表示及び設定を取り消すため、LCD25に表示される対象画像は図4(e)の状態に戻る。そして、その後ステップS140以降の処理を行うことになる。一方、ステップS170でOKボタン36が押されたと判定したときには、対象画像のうち選択領域以外を削除してLCD25に表示する(ステップS190)。図4(g)の指定領域B1〜B6からなる選択領域が設定された状態でOKボタン36が押されてステップS190の処理を行ったときの様子を図4(h)に示す。なお、ステップS190の処理では、図4(h)に示すように分割線及び基準点を表示しないものとしたが、表示してもよい。
【0032】
ステップS190で選択領域以外を削除すると、ユーザー印刷ボタン38が押されるまで待ち(ステップS200)、印刷ボタン38が押されると、選択領域以外の削除された対象画像を印刷する印刷処理を実行して(ステップS210)、本ルーチンを終了する。なお、印刷処理は、選択領域以外の削除された対象画像の画像データ(RGBデータ)をリサイズしてCMYKデータに色変換し、色変換後のCMYKデータにハーフトーン処理を施すことにより2値化して印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいて印刷機構40を制御することにより行う。
【0033】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のリモートコントロール装置30やタッチパネルとしてのLCD25が本発明の入力手段に相当し、表示画面としてのLCD25が表示手段に相当し、CPU61が制御手段に相当する。
【0034】
以上説明した本実施形態のプリンター20によれば、リモートコントロール装置30やLCD25を介してを介してユーザーから分割数Nの指定を入力する処理と、対象画像における所定の基準点から対象画像の外縁まで伸びるN本の分割線を、隣り合う分割線同士のなす角が等しくなるように対象画像上に描画してLCD25に表示させる処理と、対象画像においてN本の分割線により分割されたN個の分割領域のうちの1つの領域中で入力手段を介してユーザーから指定領域の指定を入力する指定領域入力処理と、入力された指定領域を他の(N−1)個の分割領域中に展開するにあたり、隣り合う分割領域中の指定領域が互いを隔てる分割線を軸として線対称となるようにして、展開後のN個の指定領域からなる形状を形成し、展開後のN個の指定領域を選択領域として設定する選択領域設定処理とを行う。このため、例えばユーザーが選択領域全ての形をフリーハンドで指定する場合と比べて、対称性のある図形を選択領域として容易に設定することができる。また、選択領域の中心となる基準点の位置をユーザーが設定できるため、選択領域を対象画像における所望の位置に設定しやすくなる。さらに、選択領域の分割線の回転角度すなわち傾きをユーザーが設定できるため、対象画像における選択領域を所望の向きに設定しやすくなる。さらにまた、基準分割線に隣り合う分割線をドラッグすることで、分割数Nを容易に変更することができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0036】
例えば、上述した実施形態では、ステップS120で分割数Nを入力する処理を行うものとしたが、この処理を行わず、分割数Nは予め決められていて変更できないものとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、ステップS130においてN本の分割線を表示するものとしたが、N本の分割線のうちの一部、例えば2本のみを表示するものとしてもよい。この場合のステップS130で表示する対象画像及び分割線の様子を図6に示す。このようにした場合でも、ステップS150で図6における基準分割線と分割線と対象領域の外縁とからなる分割領域の領域内でユーザーから指定領域の指定を入力するものとし、ステップS160で指定領域を展開する処理を行うことで、上述した実施形態と同様に選択領域を設定することができる。すなわち、指定領域を展開する際にN本の分割線を用いれば選択領域は設定できるため、N本の分割線全てをLCD25に表示しておく必要はない。
【0038】
上述した実施形態では、ステップS160で選択領域を設定したあと、ステップS190で対象画像のうち選択領域以外を削除してこれを印刷するものとしたが、選択領域を設定した後の処理はこれに限られない。例えば、対象画像のうち選択領域のみを削除してこれを印刷するものとしてもよいし、設定した選択領域をコピーして他の画像データに貼り付ける処理を行うものとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、ステップS350〜S360の処理では、ユーザーのドラッグに応じて分割数Nを再設定するものとしたが、ステップS120と同様に直接分割数Nをユーザーから入力するものとしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、ステップS150でフリーハンドによりユーザーから指定領域の指定を入力するものとしたが、他の方法で入力してもよい。例えば、ユーザーがLCD25上の2点に触れることでその2点を結ぶ直線を指定できるものしてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、ステップS150でユーザーがなぞった軌跡とその軌跡を含む分割領域を構成する2つの分割線とで囲まれる領域を指定領域として入力するものとしたが、指定領域の指定方法はこれに限られるものではない。例えば、ユーザーがなぞった軌跡と分割領域を構成する2つの分割線と対象画像の外縁とで囲まれる領域を指定領域としてもよい。また、ユーザーがLCD25上をなぞることで、1つの分割領域を2つに分割するような線を指定し、分割された2つの分割領域のうちどちらを指定領域とするかをユーザーが選択するものとしてもよい。あるいは、ユーザーがLCD25をなぞることで隣り合う分割線にまたがる線を2本引き、隣り合う分割線と2本の線とで囲まれる領域を指定領域としてもよい。この場合の一例を図7に示す。図示するように、ユーザーが隣り合う分割線L10,L11にまたがる2本の線L8,L9を引いた場合に、この分割線L10,L11及び線L8,L9で囲まれる領域を指定領域としてステップS150で入力してもよい。この場合、これをステップS160で展開することで図7のように中央に穴が空いた形状の選択領域が設定される。この図7のように指定領域を指定するものとすれば、複雑な形状の選択領域を設定したい場合にユーザーは簡易な操作で設定を行うことができる。
【0042】
上述した実施形態では、LCD25をタッチパネル付きの液晶ディスプレイにより構成し、LCD25を介してユーザーからの指示を入力するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、マウスを接続して使用するなど、入力や指定を如何なる入力デバイスを介して受け付けるものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、本発明をプリンター20に適用して説明したが、原稿の読み取りが可能なスキャナーを備えるマルチファンクションプリンターに適用するものとしたり、FAX機能を備えるFAX装置に適用するものとしてもよい。また、本発明をトリミング装置の形態とするものとしてもよい。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
20 プリンター、21 本体、22 取っ手、23 オートシードフィーダー、24 排紙トレイ、25 液晶ディスプレイ、26 電源ボタン、28 赤外線通信ポート、30 リモートコントロール装置、30a 発光部、31 電源ボタン、32 ストップ/設定クリアボタン、33 トップメニューボタン、34 印刷枚数設定ボタン、35 上下左右ボタン、36 OKボタン、37 戻るボタン、38 印刷ボタン、39 設定ボタン、40 印刷機構、41 キャリッジ、42 ガイド、43 キャリッジベルト、44 インクカートリッジ、45 印刷ヘッド、46 搬送ローラー、47 キャッピング装置、48 プリンターASIC、52 赤外線通信コントローラー、54 LCDコントローラー、56 メモリーカードスロット、58 メモリーカードコントローラー、60 メインコントローラー、61 CPU、62 ROM、63 RAM、64 フラッシュメモリー、65 インターフェース(I/F)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象画像のうちの一部の領域を選択領域として設定する画像処理装置であって、
ユーザーからの指示を入力可能な入力手段と、
画像を表示可能な表示手段と、
前記入力手段を介して前記ユーザーから分割数N(Nは2以上の偶数)の指定を入力する分割数入力処理と、前記対象画像における所定の点から該対象画像の外縁まで伸びるN本の分割線を、隣り合う該分割線同士のなす角が等しくなるように前記対象画像上に描画して前記表示手段に表示させる分割線表示処理と、前記対象画像において前記N本の分割線により分割されたN個の分割領域のうちの1つの領域中で前記入力手段を介して前記ユーザーから指定領域の指定を入力する指定領域入力処理と、前記入力された指定領域を他の(N−1)個の前記分割領域中に展開するにあたり、隣り合う前記分割領域中の指定領域が互いを隔てる前記分割線を軸として線対称となるようにして、該展開後のN個の指定領域からなる形状を形成し、該展開後のN個の指定領域を前記選択領域として設定する選択領域設定処理とを行う制御手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記対象画像における前記所定の点の位置を前記ユーザーから前記入力手段を介して入力したときは、該入力された点の位置を前記所定の点の位置として設定する点位置設定処理を行う手段である、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記分割線表示処理で表示した分割線の回転角度を前記入力手段を介して前記ユーザーから入力したときは、前記分割線同士のなす角を保ったまま該分割線を前記所定の点を中心に前記回転角度だけ回転させた位置に描画して前記表示手段に表示させる分割線回転処理を行う手段である、
請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記分割線表示処理で表示した前記N本の分割線のうち所定の1本の分割線を基準分割線として、該基準分割線と該基準分割線と隣り合う前記分割線をドラッグする指示を前記入力手段を介して前記ユーザーから入力したときは、該ドラッグ後の分割線と前記基準分割線とのなす角に最も近い角θ(θは180の約数)を導出し、360°/θを変更後の分割数Nに設定して再度前記分割線表示処理を行う分割数変更処理を行う手段である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
コンピューターを、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−198800(P2012−198800A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63061(P2011−63061)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】