説明

画像処理装置およびプログラム

【課題】部分画像に対して補正処理を行う際の,処理負荷が小さい画像処理装置およびプログラムを提供すること。
【解決手段】PC1(プリンタドライバ4)は,1つの印刷対象画像(原画像A)を基にその部分画像を印刷する際,先ず,その原画像Aを複製する。そして,原画像Aと原画像の複製AAとの一方を利用して画像補正用の補正値を取得する。また,他方を利用して拡大画像を作成し,さらにその拡大画像からその拡大画像の一部分の画像である部分画像A1〜A4を作成する。つまり,一方の画像から補正値を取得し,他方の画像から部分画像を作成する。そして,その補正値を利用して,その部分画像A1〜A4に対して画像補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,印刷データを作成する画像処理装置およびプログラムに関する。さらに詳細には,印刷対象の画像を拡大する機能を有する画像処理装置およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,1つの印刷対象画像を複数の画像に分割して印刷する技術がある。代表的なものとしては,例えば,ポスター印刷がある。このポスター印刷では,原画像を拡大し,その拡大画像をN×M枚(Nは縦方向の分割数,Mは横方向の分割数)の画像に分割し,分割した画像を1枚ずつ印刷する。
【0003】
この他,原画像から分割された画像を印刷指示する技術としては,例えば,特許文献1に開示された画像処理装置がある。この画像処理装置では,同じ画像から抽出された画像が複数ある場合に,それらの相関を保つため,ホワイトバランス等の補正においては共通の補正値を利用して補正処理を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−211314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の技術には,次のような問題があった。すなわち,原画像を拡大し,その拡大画像の一部分である部分画像を印刷する際,補正値を決定する際のメモリ負荷が大きい。例えば,特許文献1に開示された技術では,共通の補正値を利用して補正処理を行う全ての部分画像について,それらの画素値をサンプリングしなければ補正値が決定しないため,処理負荷が大きくなる。例えば,この技術をポスター印刷に適用すると,原画像拡大後の,N×M倍の画像のサンプリングが必要となり,補正値を決定する際のメモリ負荷が非常に大きくなる。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,部分画像に対して補正処理を行う際の,処理負荷が小さい画像処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像処理装置は,印刷対象の原画像を複製する複製手段と,原画像と原画像の複製との一方を利用して画像補正用の補正値を取得する取得手段と,原画像と原画像の複製との他方を利用してその画像を拡大した画像である拡大画像を作成し,さらにその拡大画像からその拡大画像の一部分の画像である部分画像を作成する作成手段と,作成手段によって作成された部分画像に対して取得手段によって取得した補正値を利用して画像補正を行う補正手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像処理装置は,部分画像を印刷する際,先ず,原画像を複製する。そして,原画像とその複製との一方を利用して画像補正用の補正値を取得する。また,他方を利用して拡大画像を作成し,さらにその拡大画像からその拡大画像の一部分の画像である部分画像を作成する。つまり,一方の画像から補正値を取得し,他方の画像から部分画像を作成する。そして,その補正値を利用して,その部分画像に対して画像補正を行う。部分画像は,例えばポスター印刷のように,拡大画像に対して印刷領域が重ならないように複数ページに分割された画像であってもよいし,例えば拡大印刷のように,拡大画像の一部から抽出された画像であってもよい。
【0009】
すなわち,本発明の画像処理装置では,部分画像の印刷にて補正値を取得する際,原画像あるいは原画像の複製を用いることから,その補正値の取得に必要な画像は,原画像1ページ分である。このことから,補正値を取得する際のメモリ負荷は,拡大画像あるいは全部分画像から補正値を取得する場合と比較して小さい。そして,原画像から得られた補正値を部分画像に反映することで,原画像の特性を部分画像に反映できる。
【0010】
また,本発明の画像処理装置の作成手段は,拡大画像を少なくとも2ページ分の画像に分割した部分画像を作成し,補正手段は,全ての部分画像に対して補正値を利用して画像補正を行うとよい。ポスター印刷等の複数の部分画像を作成する場合においては,各部分画像で統一感のある補正処理を行うことが望まれる。この構成のように,全ての部分画像に対して同じ補正値を利用することで,統一感ある補正処理を省メモリで実現できる。
【0011】
また,上記の画像処理装置は,補正手段によって補正される部分画像の印刷装置への出力を,全ての部分画像の補正が完了する前に開始するとよい。この構成により,印刷の待ち時間を短縮できる。
【0012】
また,本発明の画像処理装置の取得手段は,補正値を取得したことを契機に,取得の際に利用した画像をメモリから消去するとよい。メモリを早期に解放することで,メモリを有効活用できる。
【0013】
また,本発明の画像処理装置の複製手段は,作成手段による拡大画像の作成が不要な印刷ジョブの場合,原画像を複製しないとよい。また,補正手段による画像補正が不要な印刷ジョブの場合,原画像を複製しないとよい。無闇に複製を作成すると処理負荷が大きくなる。そのため,拡大画像の作成が不要な場合は原画像を複製しないようにすることで,処理負荷の増大を回避できる。
【0014】
また,本発明は,コンピュータを,印刷対象の原画像を複製する複製手段と,原画像と原画像の複製との一方を利用して画像補正用の補正値を取得する取得手段と,原画像と原画像の複製との他方を利用してその画像を拡大した画像である拡大画像を作成し,さらにその拡大画像からその拡大画像の一部分の画像である部分画像を作成する作成手段と,作成手段によって作成された部分画像に対して取得手段によって取得した補正値を利用して画像補正を行う補正手段として機能させることを特徴とするプログラムを含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,部分画像に対して補正処理を行う際の,処理負荷が小さい画像処理装置およびプログラムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係るプリントシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るプリンタドライバの機能構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る印刷処理(ポスター印刷)の手順を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態に係るデータ送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態のポスター印刷のデータの流れを示す図である。
【図6】従来の形態のポスター印刷のデータの流れを示す図である。
【図7】実施の形態に係る印刷処理(拡大印刷)の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明にかかる画像処理装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,XPS(XML Paper Specification )形式の画像データを処理するプリンタドライバがインストールされたパーソナルコンピュータ(以下,単に「PC」とする)に本発明を適用したものである。なお,XPSは一例であって他のマークアップ言語であっても本発明を適用可能である。
【0018】
[プリントシステムの構成]
本形態のプリントシステム100は,図1に示すように,プリンタ2と,画像処理装置としてのPC1とを備えている。プリントシステム100では,PC1とプリンタ2とがUSBケーブルを介して接続されている。なお,プリントシステム100を構成するプリンタおよびPCは各1台に限るものではなく,それぞれ複数台接続してもよい。また,PC1とプリンタ2との接続は,USBケーブルに限らず,その他のシリアル通信ケーブル,パラレル通信ケーブル,有線LANケーブル,さらには無線LAN等の無線通信経路であってもよい。
【0019】
PC1は,各種処理を実行するCPU11と,当該PC1の起動時にCPU11が行う起動処理のプログラム(BIOS)等を記憶したROM12と,CPU11が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM13と,各種のプログラムやデータを記憶したハードディスクドライブ(HDD)14とを有している。
【0020】
また,PC1は,キーボードやマウス等からなる操作部15と,液晶ディスプレイ等からなる表示部16と,プリンタ2との間で信号のやりとりを行うプリンタポートインターフェース17(本形態では,USBインターフェース等)と,LAN,インターネット等のネットワークを介して信号のやりとりを行うネットワークインターフェース18とを有している。
【0021】
さらに,PC1のHDD14には,オペレーティングシステム(OS)や,画像データを編集可能なアプリケーションプログラム(例えば,文書作成ソフト,作図ソフト,表計算ソフト,写真データ編集ソフト等)や,プリンタ2にPDL形式で記述された印刷データを送信するプリンタドライバが記憶されている。
【0022】
プリンタ2は,各種処理を実行するCPU21と,当該プリンタ2の起動時にCPU21が行う起動処理のプログラム等を記憶したROM22と,CPU21が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM23と,各種のプログラムやデータ等を記憶したハードディスクドライブ(HDD)24とを有している。
【0023】
また,プリンタ2は,当該プリンタ2の筐体外部に配設された複数のボタンからなる操作部25と,同じく筐体外部に配設された液晶表示パネル等からなる表示部26と,PC1との間で信号のやりとりを行うプリンタポートインターフェース27(本形態では,USBインターフェース)と,LAN,インターネット等のネットワークを介して信号のやりとりを行うネットワークインターフェース28とを有している。
【0024】
さらに,プリンタ2は,記録媒体としての用紙やOHPシートに画像を形成する印字部30を有している。印字部30は,電子写真方式,インクジェット方式,その他の一般的な画像形成方式を採用していればよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0025】
また,PC1に組み込まれたアプリケーションプログラムの一部は,印刷機能を備えており,この印刷機能によって文書データあるいは画像データ等の印刷対象の原画像がプリンタドライバに対して送られる。プリンタドライバは,アプリケーションプログラムからの原画像に基づいて,プリンタ2で印刷するために必要なPDL形式の印刷データを作成する。
【0026】
プリンタドライバが作成した印刷データは,プリンタポートインターフェース17を経由してプリンタ2へと送信される。プリンタ2は,印刷データを受信することで印字部30を稼働する。そして,印刷データに基づいて,ユーザが選択した記録媒体にユーザの所望の画像を形成する。
【0027】
[プリンタドライバの構成]
続いて,PC1に組み込まれているプリンタドライバ4について説明する。プリンタ2用のプリンタドライバ4は,各種の加工処理を実行するソフトウェアモジュール(本形態では,DLL)を「機能フィルタ」として備えている。機能フィルタは,バージョンアップやアドイン等を行うことにより,追加したり削除したりあるいは機能を拡張したりすることが可能である。
【0028】
本形態のプリンタドライバ4は,図2に示すように,制御部41と,ユーザインターフェース(UI)部42と,フィルタ設定ファイル43と,フィルタ部44と,フィルタ実行部45とを有している。
【0029】
制御部41は,アプリケーションプログラム(以下,「アプリケーション7」とする)からの要求を受け付けるとともに必要に応じて情報を送り返す機能を有している。本形態のプリンタドライバ4としては,アプリケーション7から原画像および加工情報が記憶された印刷ジョブデータを受け付ける。この他,プリンタドライバ4自身が所有する機能の表示指示等を受け付ける。なお,実際には,アプリケーション7から出力される印刷ジョブデータはスプーラに蓄積され,順次にプリンタドライバ4に送り込まれるが,本形態では説明の簡略化のためにスプーラを省略して説明する。
【0030】
UI部42は,各種の加工処理の設定を行うユーザインターフェースを提供する機能を有している。本形態のプリンタドライバ4では,例えばポスター印刷の設定画面が表示される。そして,その設定画面への入力操作によって,例えば分割数が設定される。UI部42の各種の設定画面は,アプリケーション7等から制御部41を介して読み出される。読み出し先のアプリケーション7では,各設定画面の設定内容を取得する。そして,アプリケーション7では,UI部42での設定内容を印刷ジョブデータに付加し,当該印刷ジョブデータをプリンタドライバ4に送り込む。
【0031】
フィルタ設定ファイル43は,プリンタドライバ4が所有する機能フィルタの構成情報をXPSファイルとして記憶している。具体的には,フィルタの種類およびそのフィルタモジュールの参照先が記憶されている。例えば,本形態では,「コピー」,「ポスター」,「レンダリング」,「拡大」の各機能フィルタがその機能を実行するモジュール名とともに記憶されている。なお,機能フィルタの構成情報の記憶方法としては,XPS形式のファイルに限らず,例えばHTML形式やCSV形式のファイルであってもよい。
【0032】
フィルタ部44は,プリンタドライバ4が所有する機能フィルタ51〜54のライブラリ群によって構成されている。機能フィルタ51〜54は,DLLとして提供されており,各機能フィルタの利用時には個別にメモリに読み出される。
【0033】
具体的に本形態では,少なくとも,機能フィルタ51として原画像の複製を作成する「コピーフィルタ」(複製手段の一例),機能フィルタ52として原画像を拡大し,さらにその拡大画像を分割する「ポスターフィルタ」(作成手段の一例),機能フィルタ53としてXPS形式の画像データをページ基準言語の印刷データに展開する「レンダリングフィルタ」(取得手段,補正手段の一例),機能フィルタ54として原画像を拡大する「拡大フィルタ」(作成手段の一例)を有している。この他,ウォータマーク,オフセット,画像回転等,各種の画像処理を実現するフィルタを有していてもよい。
【0034】
なお,レンダリングフィルタ53については,画像補正機能も兼ねる。具体的に,本形態のレンダリングフィルタ53では,XPS形式の画像データをビットマップ形式の画像データに展開し,そのビットマップ形式の画像データに対してホワイトバランス等の画像補正を実行する。
【0035】
フィルタ実行部45は,印刷ジョブデータに付加された加工情報に従って,原画像に加工処理を施す機能を有している。加工処理を行う際には,フィルタ設定ファイル43の内容に従って機能フィルタ51〜54をメモリに読み出し,加工情報に指示された加工処理の設定に従って加工処理を実行する。加工処理が終了した画像は,PDL形式の印刷データに変換されてプリンタ2に送られる。
【0036】
[プリンタドライバの動作]
[印刷処理]
[第1の形態]
続いて,プリンタドライバ4が印刷ジョブデータを受け付けたことを契機に実行される印刷処理について,図3のフローチャートを参照しつつ説明する。印刷処理では,印刷ジョブに付加された加工情報に基づいて種々の加工処理を行うが,本形態ではポスター印刷に着目した動作について説明する。
【0037】
第1の形態の印刷処理では,先ず,受信した印刷ジョブデータの加工情報を解析し,ページごとに,ポスター印刷設定がオンであり,かつ補正設定がオンであるか否かを判断する(S101)。ポスター印刷設定は,ポスター印刷を行う設定がなされている場合にはオンになり,なされていない場合にはオフになっている。同様に,補正設定は,原画像について画像補正(例えば,ホワイトバランスやエッジ強調)を行う設定がなされている場合にはオンになり,なされていない場合にはオフになっている。
【0038】
ポスター印刷設定がオンであり,かつ補正設定がオンである場合には(S101:YES),コピーフィルタ51を利用して原画像を複製する(S102)。複製された画像である複製画像は,原画像の前のページの画像として印刷ジョブデータに追加される。その後,挿入した複製画像については,ポスター印刷設定をオフに,解析フラグをオンに設定する。解析フラグは,後述するS107のデータ送信処理で利用される。さらに,複製画像のページ情報として,原画像に設定されていたポスター印刷の分割数を設定する(S103)。すなわち,ポスター印刷が設定された印刷ジョブは,S102〜S103の処理によって,ポスター印刷の対象となる原画像の複製が作成され,ポスター印刷設定がオフの複製画像とポスター印刷設定がオンの原画像とが連続したページとなる印刷ジョブに加工される。
【0039】
S103での複製画像のページ設定の後,あるいはポスター印刷設定と補正設定との少なくとも一方がオンでなければ(S101:NO),再度,ページごとに,ポスター印刷設定がオンであるか否かを判断する(S104)。
【0040】
ポスター印刷設定がオンであれば(S104:YES),ポスターフィルタ52を利用して,ポスター印刷として分割される分割数分(N×M枚)を複製する(S105)。そして,S105で複製された各複製画像(以下,「分割画像」とする。部分画像の一例)のページ情報として,拡大率と,それぞれのブロックに応じたオフセットを設定する(S106)。
【0041】
なお,S102による原画像の複製画像については,S103によってポスター印刷設定がオフに設定されている。そのため,S105〜S106は,複製画像に後続する原画像について行われ,S102の複製画像については行われない。
【0042】
各分割画像のページ情報の設定の後,あるいはポスター印刷設定がオンでなければ(S104:NO),レンダリングフィルタ53を利用して,各ページの画像に対応する印刷データを作成し,その印刷データをプリンタ2に送信するデータ送信処理を実行する(S107)。データ送信処理の後,印刷処理を終了する。
【0043】
図4は,S107のデータ送信処理の手順を示している。データ送信処理では,先ず,未送信のページがあるか否かを判断する(S121)。未送信のページがない,すなわち全ページの印刷データの送信が完了している場合には(S121:NO),データ送信処理を終了する。
【0044】
未送信のページがある場合には(S121:YES),未送信のページのうちの先頭ページを抽出し,レンダリング処理を行う(S122)。本形態のプリンタドライバ4は,XPS形式のデータを扱うものであり,XPS形式のデータをビットマップ形式のデータに変換する。
【0045】
次に,解析フラグがオンしているか否かを判断する(S123)。解析フラグはS103によってオンすることから,S123は処理対象のページの画像がS102で複製された複製画像であるか否かを判断することと等価である。
【0046】
解析フラグがオンしている場合には(S123:YES),処理対象のページの画像に対して画像解析を行う(S124)。この画像解析によって,例えば,ホワイトバランスの調整に必要な補正値を取得する。そして,画像解析の結果を,静的なメモリエリアあるいはHDD14に保存する(S125)。
【0047】
次に,解析結果を反映するページ数である反映ページ数を設定する(S126)。具体的には,S103で設定されたポスター印刷の分割数を,反映ページ数に設定する。その後,S124での画像解析の対象となったページの画像をメモリから消去し(S127),印刷データを送信することなく,S121に戻る。そして,次のページの処理を行う。すなわち,複製画像に後続する分割画像についての処理に移行する。
【0048】
一方,解析フラグがオンしていない場合には(S123:NO),補正設定がオンであるか否かを判断する(S141)。補正設定がオンであれば(S141:YES),反映ページ数が0より大きいか否かを判断する(S142)。反映ページ数は,初期値が0もしくは負数である。そして,ポスター印刷での複製画像の解析を行った後にのみS126にて設定される。そのため,画像補正が必要なポスター印刷の場合にのみ,反映ページ数が0より大きくなる。
【0049】
反映ページ数が0より大きい場合には(S142:YES),反映ページ数を1つ減算し(S143),S125で保存した補正値を読み出して画像補正を行う(S144)。すなわち,原画像1ページ分の複製である複製画像から取得した補正値を利用して,分割画像の補正を行う。
【0050】
一方,反映ページ数が0以下の場合には(S142:NO),抽出した画像データに対して画像解析を行う(S151)。そして,画像解析の結果を保存する(S152)。その後,S152で保存した補正値に基づいて画像補正を行う(S144)。
【0051】
S144の画像補正後,あるいは補正設定がオンでなければ(S141:NO),抽出したページの画像を,PDL形式に変換して印刷データを作成し(S145),その印刷データをプリンタ2に送信する(S146)。送信後は,送信済みの印刷データを消去し(S147),S121に戻って次のページの処理を行う。そして,これらの処理を,未送信のページがなくなるまで繰り返す。
【0052】
図5は,本形態の印刷処理においてポスター印刷を行った場合の,画像データの流れを図示したものである。本形態では,先ず,コピーフィルタ51を介して,原画像Aを複製し,複製画像AAを取得する(S102)。その後,ポスターフィルタ52を介して,原画像Aの拡大および分割(例えば,4分割)を行って分割画像A1,A2,A3,A4を取得する(S105〜S106)。
【0053】
その後,複製画像AA,分割画像A1,A2,A3,A4の順に,データ送信処理の中で処理する。具体的に,データ送信処理では,先ず,レンダリングフィルタ53を介して,複製画像AAを利用して画像補正用の補正値を取得する(S124)。その後,同じくレンダリングフィルタ53を介して,その補正値を利用して分割画像A1,A2,A3,A4に対して画像補正を行う(S144)。これにより,分割画像A1,A2,A3,A4は,原画像と同等の複製画像から得られた補正値を利用して補正処理を行うことになる。つまり,分割画像A1,A2,A3,A4は,共通の補正値を利用することになり,補正度合のばらつきを抑制できる。また,補正値を取得する際,原画像の複製1ページ分を用いる。よって,メモリ負荷が小さい。
【0054】
その後,複製画像AAについては,PDL形式に変換されることなく消去される。一方,分割画像A1,A2,A3,A4については,PDL形式に変換され,プリンタ2に送信される。
【0055】
図6は,比較例として,従来のポスター印刷における画像データの流れを示す図である。比較例では,原画像Aを複製することなく,ポスターフィルタ52を介して,原画像Aの拡大および分割(例えば,4分割)を行って分割画像A1,A2,A3,A4を作成する。その後,レンダリングフィルタ53を介して,それぞれの分割画像A1,A2,A3,A4に対して画像解析を行う。
【0056】
このとき,各分割画像A1,A2,A3,A4で共通の補正値を得ようとすると,全ての分割画像を記憶する,すなわち4ページ分の画像を記憶する必要があり,メモリ負荷が大きくなる。一方で,各分割画像の印刷領域についてのみ画像解析を行うと,1ページ分のメモリで実現できるが,各分割画像で異なる補正値となることがあり,各分割画像の相関がとれなくなる。
【0057】
[第2の形態]
続いて,印刷処理の他の形態について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。第2の形態では,加工処理として拡大処理を行う。なお,第1の形態と同様の処理については同じ符号を付し,説明を省略する。
【0058】
第2の形態の印刷処理では,先ず,受信した印刷ジョブデータの加工情報を解析し,ページごとに,拡大印刷設定がオンであり,かつ補正設定がオンであるか否かを判断する(S201)。拡大印刷設定は,拡大印刷を行う設定がなされている場合にはオンになり,なされていない場合にはオフになっている。
【0059】
拡大印刷設定がオンであり,かつ補正設定がオンである場合には(S201:YES),コピーフィルタ51を利用して原画像を複製する(S102)。複製された画像である複製画像は,原画像の前のページの画像として印刷ジョブデータに追加される。その後,挿入した複製画像については,拡大印刷設定をオフに,解析フラグをオンに設定する。さらに,複製画像のページ情報として,分割数を1に設定する(S203)。
【0060】
S203での複製画像のページ設定の後,あるいは拡大印刷設定と補正設定との少なくとも一方がオンでなければ(S201:NO),再度,ページごとに,拡大印刷設定がオンであるか否かを判断する(S204)。
【0061】
拡大印刷設定がオンであれば(S204:YES),ページ情報として,拡大率とオフセットを設定する(S206)。このS206を行うには,拡大フィルタ54を利用する。
【0062】
なお,S102による原画像の複製画像については,S203によって拡大印刷設定がオフに設定されている。そのため,S206は,複製画像に後続する原画像について行われ,S102の複製画像については行われない。
【0063】
原画像のページ情報の設定の後,あるいは拡大印刷設定がオンでなければ(S204:NO),データ送信処理を実行する(S107)。データ送信処理は,第1の形態と同様である。つまり,S102で作成された複製画像から補正値を取得し,その補正値を原画像の画像補正で利用する。そして,複製画像は消去し,原画像はPDL形式の印刷データに変換してプリンタ2に送信する。データ送信処理の後,印刷処理を終了する。
【0064】
このように拡大処理であっても,複製画像から補正値を取得し,その補正値を原画像の画像補正で利用する。これにより,補正値を取得する際,拡大画像全体を解析する必要がなく,メモリ負荷は小さい。
【0065】
以上詳細に説明したように実施の形態のプリンタドライバ4は,ポスター印刷や拡大印刷等の,拡大画像の一部分である部分画像の印刷にて補正値を取得する際,原画像の複製を用いることから,その補正値の取得に必要な画像は,原画像1ページ分である。このことから,補正値を取得する際のメモリ負荷は,拡大画像あるいは全分割画像から補正値を取得する場合と比較して小さい。そして,原画像の複製から得られた補正値を各部分画像に反映することで,原画像の特性を全ての部分画像に反映でき,部分画像同士の相関を図ることができる。
【0066】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置としてはプリンタに限るものではなく,コピー機,FAX,あるいは画像形成機能を有する複合機等であってもよい。また,画像処理装置としてはPCに限るものではなく,ワークステーション,携帯情報端末装置等であってもよい。
【0067】
また,実施の形態では,複製画像を画像解析の対象とし,原画像からポスター印刷用の分割画像を作成しているが,逆であってもよい。すなわち,原画像を画像解析の対象とし,複製画像からポスター印刷用の分割画像を作成してもよい。
【0068】
また,実施の形態では,画像補正が完了したページについては,直ちにPDL形式に変換してプリンタ2に送信しているが,これに限るものではない。例えば,複数ページの画像補正あるいはPDL形式への変換が完了するのを待って,複数ページ分を纏めてプリンタ2に送信してもよい。なお,画像補正が完了したページを直ちに送信することで,印刷の早期完了が期待できる。
【符号の説明】
【0069】
1 パーソナルコンピュータ
2 プリンタ
4 プリンタドライバ
41 制御部
44 フィルタ部
45 フィルタ実行部
51 コピーフィルタ
52 ポスターフィルタ
53 レンダリングフィルタ
54 拡大フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の原画像を複製する複製手段と,
前記原画像と前記原画像の複製との一方を利用して画像補正用の補正値を取得する取得手段と,
前記原画像と前記原画像の複製との他方を利用してその画像を拡大した画像である拡大画像を作成し,さらにその拡大画像からその拡大画像の一部分の画像である部分画像を作成する作成手段と,
前記作成手段によって作成された部分画像に対して前記取得手段によって取得した補正値を利用して画像補正を行う補正手段と,
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像処理装置において,
前記作成手段は,前記拡大画像を少なくとも2ページ分の画像に分割した部分画像を作成し,
前記補正手段は,全ての部分画像に対して前記補正値を利用して画像補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載する画像処理装置において,
前記補正手段によって補正される部分画像の印刷装置への出力を,全ての部分画像の補正が完了する前に開始することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記取得手段は,前記補正値を取得したことを契機に,取得の際に利用した画像をメモリから消去することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記複製手段は,前記作成手段による拡大画像の作成が不要な印刷ジョブの場合,原画像を複製しないことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記複製手段は,前記補正手段による画像補正が不要な印刷ジョブの場合,原画像を複製しないことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータを,
印刷対象の原画像を複製する複製手段と,
前記原画像と前記原画像の複製との一方を利用して画像補正用の補正値を取得する取得手段と,
前記原画像と前記原画像の複製との他方を利用してその画像を拡大した画像である拡大画像を作成し,さらにその拡大画像からその拡大画像の一部分の画像である部分画像を作成する作成手段と,
前記作成手段によって作成された部分画像に対して前記取得手段によって取得した補正値を利用して画像補正を行う補正手段と,
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−49908(P2012−49908A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191268(P2010−191268)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】