画像処理装置および画像処理プログラム
【課題】線を含む画像を印刷する場合に、線とその線近傍に印刷される図形との間に位置ズレが生じても線近傍の印刷の質感を維持することができる画像処理装置及び画像処理プログラムを提供すること。
【解決手段】MFP1は、画像データを階調処理する場合に、図形から所定間隔以内に線が位置する図形データについては、ドット集中型の印刷パターンを形成する線近傍用データ12b2を使用して階調処理し、それ以外のデータについては、万線パターンを形成するディザデータ12b1を使用して階調処理する。線近傍の図形データをドット集中型の印刷パターンにより形成することで、図7(c)で示すように位置ズレした場合でも枠線301と四角形302とが影響し合うことを抑制でき、印刷の質感を維持することができる。
【解決手段】MFP1は、画像データを階調処理する場合に、図形から所定間隔以内に線が位置する図形データについては、ドット集中型の印刷パターンを形成する線近傍用データ12b2を使用して階調処理し、それ以外のデータについては、万線パターンを形成するディザデータ12b1を使用して階調処理する。線近傍の図形データをドット集中型の印刷パターンにより形成することで、図7(c)で示すように位置ズレした場合でも枠線301と四角形302とが影響し合うことを抑制でき、印刷の質感を維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関し、特に、線を含む画像を印刷する場合に、線とその線近傍に印刷される図形との間に位置ズレが生じても線近傍の印刷の質感を維持することができる画像処理装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数色で構成される画像データをプリンタで印刷する場合に、画像データの各画素の色をプリンタで印刷可能な印刷色(例えば、CMYK)毎のデータに分離し、その分離されたデータを印刷色毎に印刷して画像を形成する画像処理装置が知られている。
【0003】
図9は、タンデム方式のレーザプリンタによって各印刷色毎に画像データが印刷されている様子を概略的に示した図である。図9に示すように、タンデム方式のレーザプリンタは、印刷色毎にドラムを有し、各ドラムが並列に設置されている。タンデム方式では、各ドラムが同時に印刷を進行するため印刷速度は速いが、各ドラムによる印刷の位置がズレ易く、印刷の位置ズレ(色ズレ)が起こり易いという問題点がある。
【0004】
一方、図10(a)は、パーソナルコンピュータ(以下「PC」と称す)の外観図を示したものである。PCの画面には、画像データ300が表示されており、画像データ300は、枠線301と、枠線301の内側に形成される四角形302とにより構成されている。枠線301は、ある色(例えば、黒色)で形成されており、四角形302は、枠線301と異なる色(例えば、シアン)で全域が塗り潰されている。
【0005】
図10(b)は、タンデム方式のレーザプリンタで画像データ300を印刷した記録用紙の一例を示した図である。図10(b)において、図面に向かって右側には画像データ300が印刷された記録用紙を示し、左側には印刷された記録用紙の一部(図中X領域)を拡大した拡大図を示している。図10(b)は、画像データ300が記録用紙に、正常に印刷された状態を示しており、枠線301と四角形302とは位置ズレ無く印刷されている。なお、四角形302は、図10(b)の左側の拡大図に示すように、規則的に密に並んだ平行線のパターン(万線パターン)により形成されている。そして、この平行線の太さや数、さらには形状を画像の濃淡に応じて変化させることで、色の階調を表現している。
【0006】
図11(a),(b)は、タンデム方式のレーザプリンタで図10(a)の画像データ300を印刷した記録用紙の一例を示している。図11(a),(b)の各々において、図面に向かって右側には画像データ300が印刷された記録用紙を示し、左側には印刷された記録用紙の一部(図中X領域)を拡大した拡大図を示している。画像データ300を記録用紙に印刷した場合に、本来は枠線301内に印刷されるべき四角形302が、図11(a)は図面に向かって右側に印刷位置がズレて印刷された状態を、図11(b)は図面に向かって左側に印刷位置がズレて印刷された状態を、それぞれ示している。
【0007】
図11(a)のX領域では、枠線301と四角形302と間に隙間が生じて印刷されている。このように枠線301と四角形302との間に隙間が生じると、図11(a)の右図に示すように、実線で形成される枠線301のうち、万線パターンとの間に隙間がある枠線301は、万線パターンの影響により点線で形成されているように見える。また、図11(b)の左側のX領域では、枠線301を越えて四角形302がはみ出して印刷されている。このように枠線301を越えて四角形302がはみ出すと、図11(b)の右図に示すように、実線で形成される枠線301のうち、万線パターンのはみ出しが見られる枠線301は、万線パターンの影響により波線で形成されているように見える。
【0008】
そして、上記問題点を解決するために、特許文献1では、図12(a)に示すように枠線301を太く印刷している。このように枠線301を通常より太く印刷すれば、枠線301と四角形302の印刷位置がズレたとしても、枠線301が太く印刷されている分、四角形302は枠線301を太くした範囲に印刷される。よって、枠線301と万線パターンとの間に隙間が無くなり、図12(c)に示すように枠線301は点線に見えなくなる。同様に、枠線301を越えて四角形302がはみ出す場合でも、図12(b)に示すように枠線301を太くすることにより、はみ出し部分が線で塗り潰されるので、図12(c)に示すように枠線301は波線に見えなくなる。
【特許文献1】特開平10−264453号公報(0046段落など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術を用いて、画像データ300を印刷すると、図11(c)に示すように、枠線301がPCで表示されていたよりも太く印刷されるため、PCに表示されている画像データ300(図9参照)と同様な質感の印刷結果を得られないという問題点があった。
【0010】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、線を含む画像を印刷する場合に、線とその線近傍に印刷される図形との間に位置ズレが生じても線近傍の印刷の質感を維持することができる画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、請求項1記載の画像処理装置は、線データを形成する線描画命令及び前記線データ以外の図形データを形成する図形描画命令を含む画像データに従って、描画領域に前記線データ及び前記図形データを形成する描画手段を備えたものであり、前記図形データを所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理するディザ処理手段と、そのディザ処理手段で用いられる前記ディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムで前記図形データを階調処理する階調処理手段と、前記描画領域に形成された図形データの位置から所定間隔以内に線データが形成されているかを判定する判定手段とを備え、その判定手段により、所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された図形データについては、その階調処理を前記階調処理手段により行い、所定間隔以内に前記線データが形成されていないと判定された図形データについては、その階調処理を前記ディザ処理手段により行う。
【0012】
請求項2記載の画像処理装置は、請求項1記載の画像処理装置において、前記階調処理手段は、ドット集中型のディザパターンを形成するディザデータを用いたディザ法で前記図形データを階調処理する。
【0013】
請求項3記載の画像処理装置は、請求項1記載の画像処理装置において、前記階調処理手段は、前記ディザ処理手段で用いられる前記ディザデータよりも線数が多いディザデータを用いたディザ法で前記図形データを階調処理する。
【0014】
請求項4記載の画像処理装置は、請求項1記載の画像処理装置において、前記階調処理手段は、誤差拡散法で前記図形データを階調処理する。
【0015】
請求項5記載の画像処理装置は、請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置において、前記描画手段は、前記描画領域に前記線データとして画素値及び前記図形データとして画素値を形成するものであり、前記画像データから前記線描画命令及び前記図形描画命令を読み込む命令読込手段と、その命令読込手段で読み込んだ前記線描画命令及び前記図形描画命令に従って、前記描画手段により前記描画領域に画素値を形成し、その画素値が前記線描画命令に従って形成された画素値であるか及び前記図形描画命令に従って形成された画素値であるかを示す属性を属性記憶領域に記憶する属性記憶手段とを備え、前記判定手段は、前記属性記憶領域に記憶された画素値の属性に基づいて、前記描画領域に形成された前記図形データの位置から所定間隔以内に前記線データが形成されているかを判定する。
【0016】
請求項6記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置において、前記判定手段は、前記図形描画命令に基づく画素値により形成される画素から、上下方向の第1所定数の画素の中または左右方向の第2所定数の画素の中に、前記線描画命令に基づく画素値により形成される画素が含まれるかを判定する。
【0017】
請求項7記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置において、前記ディザデータは、前記描画領域に形成される画素のうち、上下方向に連続する第3所定数の画素と左右方向に連続する前記第3所定数の画素とで定まる画素に対応するディザパターンを形成するためのデータあり、前記所定間隔は、前記第3所定数の整数倍の画素である。
【0018】
請求項8記載の画像処理装置は、請求項7記載の画像処理装置において、前記所定間隔は、8の整数倍の画素である。
【0019】
請求項9記載の画像処理装置は、請求項1から8のいずれかに記載の画像処理装置において、前記判定手段により、前記図形データの位置から前記所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された場合は、前記所定間隔以内に前記線データが形成されている領域の前記図形データを前記階調処理手段により階調処理する。
【0020】
請求項10記載の画像処理プログラムは、線データを形成する線描画命令及び線データ以外の図形データを形成する図形描画命令を含む画像データを処理するコンピュータに実行させるプログラムであって、前記画像データに従って描画領域に前記線データ及び前記図形データを形成する描画ステップと、前記線データ及び前記図形データを所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理するディザ処理ステップと、そのディザ処理ステップで用いられる前記ディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムで前記図形データを階調処理する階調処理ステップと、前記描画領域に形成された前記図形データの位置から所定間隔以内に前記線データが形成されているかを判定する判定ステップとを前記コンピュータに実行させるものであり、その判定ステップにより、所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された図形データについては、その階調処理を前記階調処理ステップにより行い、所定間隔以内に前記線データが形成されていないと判定された図形データについては、その階調処理を前記ディザ処理ステップにより行わせる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の画像処理装置によれば、描画手段により描画領域に形成される線データ及び図形データは、ディザ処理手段または階調処理手段により階調処理される。ディザ処理手段では、所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理され、階調処理手段では、ディザ処理手段で用いられるディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムを用いて階調処理される。ここで、判定手段により、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理手段により階調処理される。よって、図形データをディザ処理手段により階調処理すると、線に影響を与えるディザパターンが形成される場合であっても、線近傍の図形データは、階調処理手段により階調処理されるので、ディザパターンが線に与える影響を抑制することができる。したがって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0022】
請求項2記載の画像処理装置によれば、請求項1記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段により、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理手段により、ドット集中型のディザパターンを形成するディザデータを用いたディザ法で階調処理される。ドット集中型のディザパターンは線に影響を与え難いので、図形と線との間に隙間が生じたり、図形が線からはみ出しても、印刷された線に影響を与え難い。よって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0023】
請求項3記載の画像処理装置によれば、請求項1記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段により、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理手段により、ディザ処理手段で用いられるディザデータよりも線数が多いディザデータを用いたディザ法で階調処理されるので、線近傍の画像データがより精細なパターンで形成されることとなり、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0024】
請求項4記載の画像処理装置によれば、請求項1記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段により、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理手段により、誤差拡散法で階調処理される。誤差拡散法で階調処理されたパターンは、図形と線との間に隙間が生じたり、図形から線がはみ出しても、印刷された線に影響を与え難い。よって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0025】
請求項5記載の画像処理装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置の奏する効果に加え、命令読込手段により画像データから線描画命令と図形描画命令とが読み込まれると、属性記憶手段により、その読み込まれた線描画命令と図形描画命令とに従って、描画手段により描画領域に画素値が形成され、その画素値が線描画命令と図形描画命令とに従って形成された画素値であるかを示す属性が属性記憶領域に記憶される。判定手段により、属性記憶領域に記憶された画素値の属性に基づいて、描画領域に形成された図形データの位置から所定間隔以内に線データが形成されているかが判定されるので、図形データを形成する1つの画素から、所定間隔以内に線データを形成する画素が形成されているか否かを判定することができるという効果がある。
【0026】
請求項6記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段は、図形描画命令により形成される画素から、上下方向の第1所定数の画素の中または左右方向の第2所定数の画素の中の4方向の画素について判定するので、線データの存否を確実に判断することができるという効果がある。また、上下左右の4方向の画素について線データの存否を判定するので、上下方向と左右方向と斜め方向との8方向の画素ついて判定するよりも判定処理が少なくて済むため、処理が速いという効果がある。
【0027】
請求項7記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置の奏する効果に加え、所定間隔は、第3所定数の整数倍の画素であるので、その所定間隔にディザデータを用いてディザパターンを形成することができるという効果がある。
【0028】
請求項8記載の画像処理装置は、請求項7記載の画像処理装置の奏する効果に加え、所定間隔は、8の整数倍の画素であるので、その所定間隔に、例えば縦8×横8のディザデータを用いて縦8×横8のディザパターンを形成することができるという効果がある。
【0029】
請求項9記載の画像処理装置は、請求項1から8のいずれかに記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段により、図形データの位置から所定間隔以内に線データが形成されていると判定された場合は、所定間隔以内に線データが形成されている領域の図形データを階調処理手段により階調処理するので、線近傍のディザパターンが線に与える影響を抑制することができる。したがって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0030】
請求項10記載の画像処理プログラムによれば、描画ステップにより描画領域に形成される線データ及び図形データは、ディザ処理ステップまたは階調処理ステップにより階調処理される。ディザ処理ステップでは、所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理され、階調処理ステップでは、ディザ処理手段で用いられるディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムを用いて階調処理される。ここで、判定ステップにより、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理ステップにより階調処理される。よって、図形データをディザ処理ステップにより階調処理すると、線に影響を与えるディザパターンが形成される場合であっても、線近傍の図形データは、階調処理ステップにより階調処理されるので、ディザパターンが線に与える影響を抑制することができる。したがって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における画像処理装置を有した多機能周辺装置(以下、「MFP(Multi Function Peripheral)」と称す)1とパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と称す)31との接続関係を示した接続図である。このMFP1は、プリンタ機能、スキャナ機能、及び、コピー機能などの各種の機能を有している。図1に示すように、MFP1とPC31とは、USBケーブル200より接続されており、お互いにデータ通信を行うことができるように構成されている。PC31は画像データを、USBケーブル200を介してMFP1に送信し印刷させることができる。
【0032】
MFP1の本体の前面には、開口部2が設けられ内部が上下に仕切られている。開口部2の下側には、複数枚の記録用紙を積層収納可能な給紙カセット3が挿入されている。給紙カセット3は、A4サイズ、レターサイズ、はがきサイズ等にカットされた記録用紙が収納可能に構成されている。開口部2の上側は記録済みの記録用紙が排紙される排紙部4となっており、記録済みの記録用紙は矢印A方向に排出される。
【0033】
開口部2の上部には、スキャナ機能やコピー機能の実行時における原稿読取などのための画像読取装置(図示しない)が配置されている。原稿カバー体5の下側には、原稿を載置するための載置用ガラス板が設けられており、原稿を読み取る場合は、原稿カバー体5を上側に開き、載置用ガラス板上に原稿を載置し、原稿カバー体5を閉じて原稿を固定する。操作キー15の原稿読取ボタンを押下すると、載置用ガラス板の下側に設けられている原稿読取り用のスキャナ20により原稿紙面の画像が読み取られる。読み取られた画像データは後述のRAM13(図2参照)における所定の記憶領域に格納される。なお、スキャナ20にて原稿を読み取るセンサーは、例えばCIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Devide)が用いられている。
【0034】
原稿カバー体5の前方には、操作キー15が設けられており、より具体的には、数値や文字などを入力する入力キー群15aと、各種コマンドを入力するコマンド入力キー群15bと、メニューや操作手順や実行中の処理の状態を表示するためのLCD16とが設けられている。利用者は、上記操作キー15を押下することで、電源のオン/オフや、各機能の切り替えなどの操作を行うことができる。そして、LCD16には、操作キー15の押下に対応する情報が表示されるので、印刷する画像データやプリンタ21(図2参照)などの各種情報を確認することができる。
【0035】
開口部2の前面であって、入力キー群15aの下方には、メモリカードを挿入するためのメモリカードスロット22が設けられている。なお、MFP1には、メモリカードに格納されている画像データをプリンタ機能によってPC31を介さすに印刷することができるダイレクト印刷機能を有している。また、図示しないが、開口部2の背面には、USBケーブル200の一端側が差し込まれる接続口であるUSBインターフェイス18(図2参照)が開口している。USBケーブル200の一端側を、USBインターフェイス18の接続口に接続し、他端側をPC31のUSBインターフェイス36(図2参照)に接続することにより、MFP1とPC31とはUSBケーブル200を介してデータ通信可能となるように構成されている。
【0036】
次に、図2を参照して、MFP1とPC31との電気的構成について説明する。図2は、MFP1とPC31との電気的構成を示すブロック図である。MFP1は、CPU11、ROM12、RAM13、操作キー15、LCD16、スピーカ17、USBインターフェイス18、スキャナ20、プリンタ21、メモリカードスロット22とを主に有している。また、MFP1のCPU11、ROM12、RAM13は、バスライン26を介してお互いに接続されている。さらに、MFP1の操作キー15、LCD16、スピーカ17、USBインターフェイス18、スキャナ20、プリンタ21、メモリカードスロット22、バスライン26は、入出力ポートを介してお互いに接続されている。
【0037】
MFP1のCPU11は、ROM12やRAM13に記憶される固定値やプログラム或いは、MFP1が有している各機能の制御や、USBインターフェイス18を介して送受信される各種信号に従って、入出力ポート27と接続された各部を制御するものである。ROM12は書換不可能なメモリであり、MFP1で実行される各種の制御プログラムを記憶する領域である制御プログラム領域12aと、複数のディザデータが記憶されるディザマトリックスメモリ12bとが設けられている。
【0038】
制御プログラム領域12aには、例えば、後述する図3、図4、図6のフローチャートに示す画像処理プログラム(特許請求の範囲に記載の画像処理プログラムの一例)などが記憶されている。ディザマトリックスメモリ12bには、画像データを階調処理するためのディザデータ12b1と、線近傍の画像データを階調処理するための線近傍用データ12b2とが記憶されている。
【0039】
ここで、ディザデータについて説明する。記録用紙に画像を記録する場合は、多値(例えば、RGB)で形成される画像から、2値(例えば、白と黒)の画像が形成される。例えば、レーザプリンタであれば、「トナーを記録用紙に転写して画素を形成する」、又は、「トナーを記録用紙に転写して画素を形成しない」の2種類の状態で画像が形成される。その2種類の状態で、画像の階調を表現するために、ディザデータが用いられる。ディザデータは、例えば、縦8×横8の閾値の行列で構成されており、その閾値の行列と、画像データのうち、ある場所の縦8×横8の画素を構成する画素値とが比較される。画素値が閾値よりも大きい場合は「トナーを転写する画素」とし、また画素値が閾値よりも小さい場合は「トナーを転写しない画素」として、縦8×横8の画素の印刷パターンが形成される。そして、残りの画像データに対しても同様な処理を繰り返すことで、2値で画像の階調が表現される。
【0040】
本実施形態では、ディザデータ12b1を用いて画像データを階調処理して印刷すると、万線パターンが形成される。万線パターンとは、平行線を規則的に密に並べたように見える印刷パターンのことであり、平行線の間隔や太さ、または角度や数などを変化させることにより階調を表現するものである。ディザデータ12b1を用いて画像データ300を階調処理して印刷すると、図7(a),(b)の左側の拡大図に示すように、枠線301と四角形302とは、万線パターンにより形成される。図を分かり易くするために、枠線301は、直線で示している。
【0041】
また、線近傍用データ12b2を用いて画像データ300を階調処理して印刷すると、図7(a),(b)の右側の拡大図における領域303(特許請求の範囲に記載の領域の一例)に示すドット集中型の印刷パターンにより四角形302が形成される。
【0042】
ドット集中型の印刷パターンとは、所定数の画素で構成されるブロック(例えば縦8×横8画素)を規則的に並べ、各ブロックの中心を基準として、ドット形状を大きくしたり小さくすることにより階調を表現するものである。このドット集中型の印刷パターンは、枠線301と四角形302との間に隙間が生じて印刷されたり、枠線301を越えて四角形302がはみ出して印刷された場合でも、図7(c)に示すように枠線301と四角形302とが影響し合うことを抑制でき、印刷の質感を維持することができる印刷パターンである。
【0043】
RAM13は、各種のデータを一時的に記憶するための書換可能なメモリであり、描画命令メモリ13a、描画領域13b、罫線記憶領域13c、色変換領域13d、2値化データ領域13eとが設けられている。
【0044】
描画命令メモリ13aは、PC31から画像データが入力される領域である。画像データについて詳細は後述するが、画像を形成するための各種描画命令を有したページ記述言語(PDL)で構成されており、その各種描画命令に基づいて、描画領域13bに画像データが形成される。
【0045】
描画領域13bは、描画命令に従って形成されるRGB形式のビットマップ画像データ(以下、「ビットマップデータ」と称す)が記憶される領域である。ビットマップデータとは、格子状に画素を並べて画像を形成するための公知のデータ形式であり、各画素の色を示す画素値が、それぞれの画素について記憶されているデータである。
【0046】
罫線記憶領域13cは、描画領域13bに記憶されるビットマップデータの各画素が、線や図形を形成する画素であるかのステータスを記憶するための領域である。線描画命令に基づいて形成された画素のステータスは「1」と設定され、図形描画命令に基づいて形成さえた画素のステータスは「2」と設定される。また、初期化された場合は、「0」と設定される。以後、説明を分かり易くするために、値が「0」の場合は「OFF」と表記し、「1」の場合は「線」と表記し、「2」の場合は「図」と表記する。
【0047】
色変換領域13dは、ビットマップデータの形成が終了した描画領域13bにおける各画素値が、RGB形式からCMYK形式に変換されて記憶される領域である。変換されたCMYK形式の各画素値は、複数の色(ここでは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック))データに分割され、2値化データ領域に記憶される。
【0048】
2値化データ領域13eは、色変換領域13dに記憶されるCMYK形式のビットマップデータを、プリンタ21で印刷可能な印刷色毎(CMYKの4色)に2値化したデータが記憶される領域である。2値化されたデータは、プリンタ21に送信することで、記録用紙に印刷される。
【0049】
スピーカ17は、操作キー15の操作音やエラー発生時の注意音を利用者に報知するものである。プリンタ21は、詳しくは図示しないが、図9の概念図に示すようにタンデム方式のレーザプリンタである。プリンタ21は、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のトナーを使用する印刷ドラム、紙送り装置を備えカラー印刷を行うことができる。
【0050】
PC31は、CPU32、ROM33、RAM34、ハードディスク35、USBインターフェイス36、入力装置37、表示装置38とを主に有し、これらはバスライン40を介してお互いに接続されている。
【0051】
CPU32は、ROM33やRAM34やハードディスク35に記憶される固定値やプログラム或いは、PC31が有している各機能の制御や、USBインターフェイス36を介して送受信される各種信号に従って、バスライン40により接続された各部を制御する。
【0052】
USBインターフェイス36は、USBケーブル200を用いてPC31と接続することで、MFP1とのデータ通信を可能にする既知の回路である。入力装置37は、PC31を管理したり、ハードディスク35に格納された各種アプリケーションソフトを利用する場合に使用するものであり、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置で構成される。表示装置38は、PC31を管理したり、画像処理ソフトを利用する場合に使用するものであり、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成される。
【0053】
図3は、MFP1の画像処理を示すフローチャートであり、PC31で形成された画像データが、描画命令メモリ13a(図2参照)に入力された場合に実行される画像処理である。ここで画像データは、プリンタを制御するためのページ記述言語(PDL)で構成されているものとして説明する。ページ記述言語は、画像データを形成するためのプログラミング言語であり、簡単な描画命令で複雑な画像を形成することができる。描画命令は、大別すると、線を形成する線描画命令と、図形(四角形や円など)を形成する図形描画命令と、文字を形成する文字描画命令と、ビットマップデータを形成するイメージ描画命令の4つに分類される。
【0054】
本実施形態の画像処理では、まず、画像形成処理(S1)が実行される。図4のフローチャートを参照して、画像形成処理について説明する。画像形成処理では、始めに、描画領域13bと罫線記憶領域13cとを初期化する(S11)。ここでの初期化とは、描画領域13bのビットマップデータを消去し、罫線描画領域13cの全てのステータスを「OFF」に設定することである。
【0055】
次に、描画命令メモリ13aから描画命令を1命令読み取り(S12)、読み取った描画命令に基づいて、描画領域13bにRGB形式の画素値を記憶する(S13)。そして、読み取った描画命令は何であるかを判定し(S14)、それが線描画命令である場合は、罫線記憶領域13cにおいて、描画領域13bに記憶した画素に対応する位置のステータスの値を「線」に設定する(S15)。一方、読み取った描画命令が、図形描画命令である場合は、罫線記憶領域13cにおいて、描画領域13bに記憶した画素に対応する位置のステータスの値を「図」に設定する(S16)。
【0056】
一方、その他の描画命令である場合は、ステータスの値を変更せずに「OFF」の状態を維持し、S17の処理に移る。このS11からS17の処理を行うことによって、「図」のステータスを示す画素から、所定間隔以内に「線」のステータスを示す画素が形成されているか否かを判定することができる。
【0057】
ここで、図4のフローチャートのS12からS17の処理で、描画領域13bと罫線記憶領域13cとに書き込まれるデータついて、図5を参照して説明する。
【0058】
図5は、描画領域13bと罫線記憶領域13cとの内容を概略的に示したイメージ図である。図面に向かって左側には、描画領域13bのイメージ図を示し、右側には罫線記憶領域13cのイメージ図を示している。罫線記憶領域13cに記憶されるステータスの状態を分かり易く説明するために、罫線記憶領域13cのイメージ図は、「線」を示すステータスを“黒の実線”で示し、「図」を示すステータスを“灰色の塗り潰し”で示し、「OFF」を示すステータスを“無地(記載なし)”で示して説明する。
【0059】
図5(a)は、イメージ描画命令に基づく画像と、文字描画命令に基づく文字が書き込まれた状態を示している。図5(a)に示すように、イメージ描画命令や文字描画命令が読み込まれた場合は、その描画命令に基づいて描画領域13bにビットマップや文字の画素が形成されるが、罫線記憶領域13cには何も形成されない(S12、S13)。
【0060】
図5(b)は、図5(a)の状態に、線描画命令に基づく線や罫線と、図形描画命令に基づく図形とが書き込まれた状態を示している。図5(b)に示すように、線描画命令や図形描画命令が読み込まれた場合は、罫線記憶領域13cに描画領域13bに形成された各画素に対応するステータスの値が記憶される(S14〜S16)。
【0061】
ここで、図4のフローチャートの説明に戻る。次に、描画命令メモリ13aに入力された描画命令を全て読み取ったかを判定し(S17)、描画命令メモリ13aに入力された描画命令を全て読み取った場合は(S17:Yes)、S18の処理に移る。一方、描画命令メモリ13aに入力された描画命令を全て読み取っていない場合は(S17:No)、S12の処理へ戻り、前述したS12からS16の各処理を繰り返す。
【0062】
次に、罫線記憶領域13cから、1つのステータス値を読み取り(S18)、読み取ったステータスの値が「図」に設定されているかを判定する(S19)。読み取ったステータスの値が「図」に設定されている場合は(S19:Yes)、読み取ったステータスから所定間隔以内に、「線」に設定されたステータスがあるかを判定する(S20)。本実施形態では、所定間隔として、上下方向に検索する画素数である第1所定数と左右方向に検索する画素数である第2所定数とは同一の値とし、ディザデータを用いた印刷パターンを形成するために必要な縦方向(又は横方向)の最小画素数を用いる。例えば、ディザデータが縦8×横8のマトリックスで形成されている場合は、8(特許請求の範囲に記載の第3所定数の一例)画素分を所定間隔として設定する。そして、この判定では、「図」に設定されているステータスから、上下方向と左右方向との4方向のステータスについて値を判定するので、上下方向と左右方向と斜め方向との8方向のステータスついて値を判定するよりも判定処理が少なくて済むため、処理が速い。
【0063】
S20の処理において、読み取ったステータスから所定間隔以内に、「線」に設定されたステータスがない場合は(S20:No)、読み取ったステータスの値を「OFF」に設定する(S21)。一方、S19の処理において、読み取ったステータスの値が「図」に設定されていない場合と(S19:No)、S20の処理において読み取ったステータスから所定間隔以内に「線」に設定されたステータスがある場合(S20:Yes)とは、ステータスの値を変更せずに、S22の処理に移る。
【0064】
そして、罫線記憶領域13cのステータスを全て読み取ったかを判断し(S22)、罫線記憶領域13cのステータスを全て読み取っていない場合は(S22:No)、S18の処理に戻り、前述したS18からS21の各処理を繰り返す。一方、罫線記憶領域13cのステータスを全て読み取った場合は(S22:Yes)、画像形成処理を終了する。この図4のフローチャートの処理により、図形描画命令で形成された画素のうち、所定間隔以内に線描画命令で形成された画素があるものを記憶しておくことができる。
【0065】
図5(c)は、図5(b)の状態で、「図」に設定されているステータスのうち、所定間隔以内に「線」に設定されたステータスがあるものが残された状態を示している。画像形成処理(S1)によれば、図5(c)に示す内容のデータが、描画領域13bと罫線記憶領域13cとに形成される(S18〜S21)。
【0066】
次に、図3のフローチャートに示す印刷データ変換処理(S2)を実行する(図3参照)。印刷データ変換処理(S2)について、図6のフローチャートを参照して説明する。印刷データ変換処理(S2)では、始めに、描画領域13bから、1つの画素値(RGB)を読み取り(S31)、読み取った画素値をRGB形式から、公知の手法にてCMYK形式に変換し、読み取った画素の位置に対応する色変換領域13dの位置に、その値を記憶する(S32)。次に、罫線記憶領域13cにおいて、読み取った画素の位置に対応するステータスの値が「図」であるか判定し(S33)、読み取った画素の位置に対応するステータスの値が「図」である場合は(S33:Yes)、線近傍用データ12b2を用いて、CMYK形式に変換した画素値を2値化し、各色(CMYK)の値をそれぞれ2値化データ領域13eに記憶する(S34)。一方、読み取った画素の位置に対応するステータスの値が「図」でない場合は(S33:No)、ディザデータを用いて画素値(CMYK)を2値化し、各色(CMYK)の値をそれぞれ2値化データ領域に記憶する(S35)。
【0067】
次に、描画領域13bの画素値を全て読み取ったか判断し(S36)、描画領域13bの画素値を全て読みっていない場合は(S36:No)、S31の処理に戻り、前述したS31からS35の各処理を繰り返す。一方、描画領域13bの画素値を全て読み取った場合は(S36:Yes)、処理を終了する。
【0068】
この図6のフローチャートの処理により、描画領域13bにおいて、図形描画命令で形成された画素のうち、線描画命令で形成された画素から所定間隔以内に位置する画素を、線近傍用データ12b2を用いて2値化処理することができる。
【0069】
印刷データ変換処理(S2)の終了後は、2値化データ領域13eに記憶した、CMYKに2値化したデータを、それぞれプリンタ21に送信し(S3)、処理を終了する(図3参照)。
【0070】
次に、図7を参照して、画像データ300(図9参照)をMFP1で階調処理し、プリンタ21で印刷した場合の印刷結果について説明する。
【0071】
図7(a)、(b)において、図面に向かって左側は、通常のレーザプリンタで印刷位置のズレが生じた場合の拡大図を、図面に向かって右側の図は、画像データ300(図10参照)をMFP1で階調処理して印刷した場合の拡大図を示している。そしてこれらは、図7(c)に示す記録用紙の一部(図中領域X)を拡大した拡大図である。それぞれの拡大図は、印字位置がズレて印刷された状態を示している。MFP1では、画像データ300(図10参照)の所定の領域を線近傍用データ12b2(図2参照)を用いて階調処理され、その他の領域をディザデータ12b1(図2参照)を用いて階調処理される。
【0072】
それぞれの四角形302において、所定間隔以内に枠線301が位置する領域303では、線近傍用データ12b2が使用される。そして本実施形態の線近傍用データではドット集中型の印刷パターンが形成される。それ以外の領域は、ディザデータ12b1が使用されて万線パターンが形成される。このように、線近傍の図形データをドット集中型の印刷パターンにより形成することで、図7(c)で示すように位置ズレした場合でも枠線301と四角形302とが影響し合うことを抑制でき、印刷の質感を維持することができる。また、枠線301も太くしないため、画像データ300(図10参照)に近い印刷結果を得ることができる。
【0073】
これに対し、図7(a)、(b)において、図面に向かって左側の図は、画像データ300(図10参照)をディザデータ12b1(図2参照)のみを用いて階調処理した場合の拡大図であり、共に印刷位置がズレて印刷された状態を示している。それぞれの四角形302は、ディザデータ12b1が使用されて階調処理されているため、万線パターンにより形成されている。このような場合は、枠線301と四角形302とが万線パターンの影響で、図7(a)は、図10(a)の右図に示すように、実線と点線とで形成されているように見え、図7(b)は、図10の(b)の右図に示すように、実線と波線とで形成されているように見えてしまうという不具合が生じ得るのである。
【0074】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0075】
例えば、上記実施形態では、線近傍用データ12b2として、ドット集中型の印刷パターンを形成するディザデータを用いたが、ディザデータ12b1により形成される万線パターンよりも線数が多いディザデータを用いて階調処理を行うように構成してもよい。
【0076】
図8(a)は、線近傍用データ12b2として、ディザデータ12b1により形成される万線パターンよりも線数が多いディザデータを用いて画像データ300(図10参照)を階調処理し、プリンタ21で印刷した記録用紙の一例を示した図である。図8(a)に示すような印刷パターンを形成し、線と印刷パターンとに生じる影響を抑えても良い。この階調処理で形成される印刷パターンは、線と図形との間に隙間が生じたり、はみ出しが生じても、印刷された線に影響を与えにくいので、線近傍の印刷の質感を維持することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、線近傍用データ12b2として、ドット集中型の印刷パターンを形成するディザデータを用いたが、ディザ法とは異なるアルゴリズム(例えば、誤差拡散法)により作成されたデータで階調処理を行うように構成してもよい。
【0078】
図8(b)は、線近傍用データ12b2として、誤差拡散法を用いて画像データ300(図10参照)を階調処理し、プリンタ21で印刷した記録用紙の一例を示した図である。図8(b)に示すような印刷パターンを形成し、線と印刷パターンとに生じる影響を抑えても良い。誤差拡散法で階調処理されたパターンは、線と図形との間に隙間が生じたり、はみ出しが生じても、印刷された線に影響を与えにくいので、線近傍の印刷の質感を維持することができる。
【0079】
また、万線パターンを形成する階調処理よりも、誤差拡散法で印刷パターンを形成する階調処理は複雑であるため、画像データの階調処理には時間が掛かる。しかしながら、画像データ全体にではなく、線近傍の一部分の図形データについてのみ誤差拡散法で印刷パターンを形成する階調処理を行うので、画像データの階調処理の時間は短く、かつ、印刷の質感を維持することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、上下方向を検索する所定距離を示す第1所定数と、左右方向を検索する所定距離を示す第2所定数とは同一の値としたが、第1所定数と第2所定数とを異なる数で構成しても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、MFP1により画像データを階調処理しているが、PC31のハードディスク35に、上記実施形態の階調処理を行うプログラムを記憶しておき、PC31で画像データの階調処理を行っても良い。
【0082】
また、上記実施形態では、PC31からMFP1の描画命令メモリ13aに画像データが入力されるが、メモリカードスロット22に挿入された携帯用フラッシュメモリカードに記憶されている画像データを、MFP1の操作キー15を用いて描画命令メモリ13aに入力しても良い。
【0083】
また、上記実施形態ではMFPによる例を挙げたが、通常のレーザプリンタでの実施でもよい。
【0084】
また、上記実施形態では所定間隔を8ピクセルとしたが、ディザの基準単位の倍数以内であってもよいし、10ピクセル以内のように基準単位にこだわらなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態における画像処理装置を有したMFPとPCとの接続図である。
【図2】MFPとPCとの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】MFPの画像処理を示すフローチャートである。
【図4】MFPの画像形成処理を示すフローチャートである。
【図5】描画領域と罫線記憶領域との内容を概略的に示したイメージ図である。
【図6】MFPの印刷データ変換処理を示すフローチャートである。
【図7】画像データをMFPで階調処理し、プリンタで印刷した記録用紙の一例を示す図である。
【図8】ドット集中型とは異なる階調処理を行い、プリンタで印刷した記録用紙の一例を示す図である。
【図9】従来のタンデム方式のレーザプリンタを概略的に示した図である。
【図10】従来の画像形成装置により、PCに表示された画像データを印刷した記録用紙の一例を示す図である。
【図11】従来の画像形成装置により、位置ズレが生じて画像データが印刷された記録用紙の一例を示す図である。
【図12】従来の画像形成装置により印刷された記録用紙であって、線を太く印刷した記録用紙の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 MFP(画像処理装置)
12b1 ディザデータ(所定のディザデータ)
12b2 線近傍用データ(所定のディザデータとは異なるディザデータ)
13b 描画領域
13c 罫線記憶領域(属性記憶領域)
S12 命令読込手段、命令読込ステップ
S13 描画手段、描画ステップ
S14、S15、S16 属性記憶手段
S19、S20、S21 判定手段、判定ステップ
S34 階調処理手段、階調処理ステップ
S35 ディザ処理手段、ディザ処理ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関し、特に、線を含む画像を印刷する場合に、線とその線近傍に印刷される図形との間に位置ズレが生じても線近傍の印刷の質感を維持することができる画像処理装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数色で構成される画像データをプリンタで印刷する場合に、画像データの各画素の色をプリンタで印刷可能な印刷色(例えば、CMYK)毎のデータに分離し、その分離されたデータを印刷色毎に印刷して画像を形成する画像処理装置が知られている。
【0003】
図9は、タンデム方式のレーザプリンタによって各印刷色毎に画像データが印刷されている様子を概略的に示した図である。図9に示すように、タンデム方式のレーザプリンタは、印刷色毎にドラムを有し、各ドラムが並列に設置されている。タンデム方式では、各ドラムが同時に印刷を進行するため印刷速度は速いが、各ドラムによる印刷の位置がズレ易く、印刷の位置ズレ(色ズレ)が起こり易いという問題点がある。
【0004】
一方、図10(a)は、パーソナルコンピュータ(以下「PC」と称す)の外観図を示したものである。PCの画面には、画像データ300が表示されており、画像データ300は、枠線301と、枠線301の内側に形成される四角形302とにより構成されている。枠線301は、ある色(例えば、黒色)で形成されており、四角形302は、枠線301と異なる色(例えば、シアン)で全域が塗り潰されている。
【0005】
図10(b)は、タンデム方式のレーザプリンタで画像データ300を印刷した記録用紙の一例を示した図である。図10(b)において、図面に向かって右側には画像データ300が印刷された記録用紙を示し、左側には印刷された記録用紙の一部(図中X領域)を拡大した拡大図を示している。図10(b)は、画像データ300が記録用紙に、正常に印刷された状態を示しており、枠線301と四角形302とは位置ズレ無く印刷されている。なお、四角形302は、図10(b)の左側の拡大図に示すように、規則的に密に並んだ平行線のパターン(万線パターン)により形成されている。そして、この平行線の太さや数、さらには形状を画像の濃淡に応じて変化させることで、色の階調を表現している。
【0006】
図11(a),(b)は、タンデム方式のレーザプリンタで図10(a)の画像データ300を印刷した記録用紙の一例を示している。図11(a),(b)の各々において、図面に向かって右側には画像データ300が印刷された記録用紙を示し、左側には印刷された記録用紙の一部(図中X領域)を拡大した拡大図を示している。画像データ300を記録用紙に印刷した場合に、本来は枠線301内に印刷されるべき四角形302が、図11(a)は図面に向かって右側に印刷位置がズレて印刷された状態を、図11(b)は図面に向かって左側に印刷位置がズレて印刷された状態を、それぞれ示している。
【0007】
図11(a)のX領域では、枠線301と四角形302と間に隙間が生じて印刷されている。このように枠線301と四角形302との間に隙間が生じると、図11(a)の右図に示すように、実線で形成される枠線301のうち、万線パターンとの間に隙間がある枠線301は、万線パターンの影響により点線で形成されているように見える。また、図11(b)の左側のX領域では、枠線301を越えて四角形302がはみ出して印刷されている。このように枠線301を越えて四角形302がはみ出すと、図11(b)の右図に示すように、実線で形成される枠線301のうち、万線パターンのはみ出しが見られる枠線301は、万線パターンの影響により波線で形成されているように見える。
【0008】
そして、上記問題点を解決するために、特許文献1では、図12(a)に示すように枠線301を太く印刷している。このように枠線301を通常より太く印刷すれば、枠線301と四角形302の印刷位置がズレたとしても、枠線301が太く印刷されている分、四角形302は枠線301を太くした範囲に印刷される。よって、枠線301と万線パターンとの間に隙間が無くなり、図12(c)に示すように枠線301は点線に見えなくなる。同様に、枠線301を越えて四角形302がはみ出す場合でも、図12(b)に示すように枠線301を太くすることにより、はみ出し部分が線で塗り潰されるので、図12(c)に示すように枠線301は波線に見えなくなる。
【特許文献1】特開平10−264453号公報(0046段落など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術を用いて、画像データ300を印刷すると、図11(c)に示すように、枠線301がPCで表示されていたよりも太く印刷されるため、PCに表示されている画像データ300(図9参照)と同様な質感の印刷結果を得られないという問題点があった。
【0010】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、線を含む画像を印刷する場合に、線とその線近傍に印刷される図形との間に位置ズレが生じても線近傍の印刷の質感を維持することができる画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、請求項1記載の画像処理装置は、線データを形成する線描画命令及び前記線データ以外の図形データを形成する図形描画命令を含む画像データに従って、描画領域に前記線データ及び前記図形データを形成する描画手段を備えたものであり、前記図形データを所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理するディザ処理手段と、そのディザ処理手段で用いられる前記ディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムで前記図形データを階調処理する階調処理手段と、前記描画領域に形成された図形データの位置から所定間隔以内に線データが形成されているかを判定する判定手段とを備え、その判定手段により、所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された図形データについては、その階調処理を前記階調処理手段により行い、所定間隔以内に前記線データが形成されていないと判定された図形データについては、その階調処理を前記ディザ処理手段により行う。
【0012】
請求項2記載の画像処理装置は、請求項1記載の画像処理装置において、前記階調処理手段は、ドット集中型のディザパターンを形成するディザデータを用いたディザ法で前記図形データを階調処理する。
【0013】
請求項3記載の画像処理装置は、請求項1記載の画像処理装置において、前記階調処理手段は、前記ディザ処理手段で用いられる前記ディザデータよりも線数が多いディザデータを用いたディザ法で前記図形データを階調処理する。
【0014】
請求項4記載の画像処理装置は、請求項1記載の画像処理装置において、前記階調処理手段は、誤差拡散法で前記図形データを階調処理する。
【0015】
請求項5記載の画像処理装置は、請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置において、前記描画手段は、前記描画領域に前記線データとして画素値及び前記図形データとして画素値を形成するものであり、前記画像データから前記線描画命令及び前記図形描画命令を読み込む命令読込手段と、その命令読込手段で読み込んだ前記線描画命令及び前記図形描画命令に従って、前記描画手段により前記描画領域に画素値を形成し、その画素値が前記線描画命令に従って形成された画素値であるか及び前記図形描画命令に従って形成された画素値であるかを示す属性を属性記憶領域に記憶する属性記憶手段とを備え、前記判定手段は、前記属性記憶領域に記憶された画素値の属性に基づいて、前記描画領域に形成された前記図形データの位置から所定間隔以内に前記線データが形成されているかを判定する。
【0016】
請求項6記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置において、前記判定手段は、前記図形描画命令に基づく画素値により形成される画素から、上下方向の第1所定数の画素の中または左右方向の第2所定数の画素の中に、前記線描画命令に基づく画素値により形成される画素が含まれるかを判定する。
【0017】
請求項7記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置において、前記ディザデータは、前記描画領域に形成される画素のうち、上下方向に連続する第3所定数の画素と左右方向に連続する前記第3所定数の画素とで定まる画素に対応するディザパターンを形成するためのデータあり、前記所定間隔は、前記第3所定数の整数倍の画素である。
【0018】
請求項8記載の画像処理装置は、請求項7記載の画像処理装置において、前記所定間隔は、8の整数倍の画素である。
【0019】
請求項9記載の画像処理装置は、請求項1から8のいずれかに記載の画像処理装置において、前記判定手段により、前記図形データの位置から前記所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された場合は、前記所定間隔以内に前記線データが形成されている領域の前記図形データを前記階調処理手段により階調処理する。
【0020】
請求項10記載の画像処理プログラムは、線データを形成する線描画命令及び線データ以外の図形データを形成する図形描画命令を含む画像データを処理するコンピュータに実行させるプログラムであって、前記画像データに従って描画領域に前記線データ及び前記図形データを形成する描画ステップと、前記線データ及び前記図形データを所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理するディザ処理ステップと、そのディザ処理ステップで用いられる前記ディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムで前記図形データを階調処理する階調処理ステップと、前記描画領域に形成された前記図形データの位置から所定間隔以内に前記線データが形成されているかを判定する判定ステップとを前記コンピュータに実行させるものであり、その判定ステップにより、所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された図形データについては、その階調処理を前記階調処理ステップにより行い、所定間隔以内に前記線データが形成されていないと判定された図形データについては、その階調処理を前記ディザ処理ステップにより行わせる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の画像処理装置によれば、描画手段により描画領域に形成される線データ及び図形データは、ディザ処理手段または階調処理手段により階調処理される。ディザ処理手段では、所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理され、階調処理手段では、ディザ処理手段で用いられるディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムを用いて階調処理される。ここで、判定手段により、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理手段により階調処理される。よって、図形データをディザ処理手段により階調処理すると、線に影響を与えるディザパターンが形成される場合であっても、線近傍の図形データは、階調処理手段により階調処理されるので、ディザパターンが線に与える影響を抑制することができる。したがって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0022】
請求項2記載の画像処理装置によれば、請求項1記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段により、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理手段により、ドット集中型のディザパターンを形成するディザデータを用いたディザ法で階調処理される。ドット集中型のディザパターンは線に影響を与え難いので、図形と線との間に隙間が生じたり、図形が線からはみ出しても、印刷された線に影響を与え難い。よって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0023】
請求項3記載の画像処理装置によれば、請求項1記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段により、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理手段により、ディザ処理手段で用いられるディザデータよりも線数が多いディザデータを用いたディザ法で階調処理されるので、線近傍の画像データがより精細なパターンで形成されることとなり、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0024】
請求項4記載の画像処理装置によれば、請求項1記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段により、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理手段により、誤差拡散法で階調処理される。誤差拡散法で階調処理されたパターンは、図形と線との間に隙間が生じたり、図形から線がはみ出しても、印刷された線に影響を与え難い。よって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0025】
請求項5記載の画像処理装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置の奏する効果に加え、命令読込手段により画像データから線描画命令と図形描画命令とが読み込まれると、属性記憶手段により、その読み込まれた線描画命令と図形描画命令とに従って、描画手段により描画領域に画素値が形成され、その画素値が線描画命令と図形描画命令とに従って形成された画素値であるかを示す属性が属性記憶領域に記憶される。判定手段により、属性記憶領域に記憶された画素値の属性に基づいて、描画領域に形成された図形データの位置から所定間隔以内に線データが形成されているかが判定されるので、図形データを形成する1つの画素から、所定間隔以内に線データを形成する画素が形成されているか否かを判定することができるという効果がある。
【0026】
請求項6記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段は、図形描画命令により形成される画素から、上下方向の第1所定数の画素の中または左右方向の第2所定数の画素の中の4方向の画素について判定するので、線データの存否を確実に判断することができるという効果がある。また、上下左右の4方向の画素について線データの存否を判定するので、上下方向と左右方向と斜め方向との8方向の画素ついて判定するよりも判定処理が少なくて済むため、処理が速いという効果がある。
【0027】
請求項7記載の画像処理装置は、請求項5記載の画像処理装置の奏する効果に加え、所定間隔は、第3所定数の整数倍の画素であるので、その所定間隔にディザデータを用いてディザパターンを形成することができるという効果がある。
【0028】
請求項8記載の画像処理装置は、請求項7記載の画像処理装置の奏する効果に加え、所定間隔は、8の整数倍の画素であるので、その所定間隔に、例えば縦8×横8のディザデータを用いて縦8×横8のディザパターンを形成することができるという効果がある。
【0029】
請求項9記載の画像処理装置は、請求項1から8のいずれかに記載の画像処理装置の奏する効果に加え、判定手段により、図形データの位置から所定間隔以内に線データが形成されていると判定された場合は、所定間隔以内に線データが形成されている領域の図形データを階調処理手段により階調処理するので、線近傍のディザパターンが線に与える影響を抑制することができる。したがって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【0030】
請求項10記載の画像処理プログラムによれば、描画ステップにより描画領域に形成される線データ及び図形データは、ディザ処理ステップまたは階調処理ステップにより階調処理される。ディザ処理ステップでは、所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理され、階調処理ステップでは、ディザ処理手段で用いられるディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムを用いて階調処理される。ここで、判定ステップにより、所定間隔以内に線データが形成されていると判定された図形データについては、階調処理ステップにより階調処理される。よって、図形データをディザ処理ステップにより階調処理すると、線に影響を与えるディザパターンが形成される場合であっても、線近傍の図形データは、階調処理ステップにより階調処理されるので、ディザパターンが線に与える影響を抑制することができる。したがって、図形データと線データとが位置ズレを起こして印刷される場合でも、線近傍の印刷の質感を維持することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における画像処理装置を有した多機能周辺装置(以下、「MFP(Multi Function Peripheral)」と称す)1とパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と称す)31との接続関係を示した接続図である。このMFP1は、プリンタ機能、スキャナ機能、及び、コピー機能などの各種の機能を有している。図1に示すように、MFP1とPC31とは、USBケーブル200より接続されており、お互いにデータ通信を行うことができるように構成されている。PC31は画像データを、USBケーブル200を介してMFP1に送信し印刷させることができる。
【0032】
MFP1の本体の前面には、開口部2が設けられ内部が上下に仕切られている。開口部2の下側には、複数枚の記録用紙を積層収納可能な給紙カセット3が挿入されている。給紙カセット3は、A4サイズ、レターサイズ、はがきサイズ等にカットされた記録用紙が収納可能に構成されている。開口部2の上側は記録済みの記録用紙が排紙される排紙部4となっており、記録済みの記録用紙は矢印A方向に排出される。
【0033】
開口部2の上部には、スキャナ機能やコピー機能の実行時における原稿読取などのための画像読取装置(図示しない)が配置されている。原稿カバー体5の下側には、原稿を載置するための載置用ガラス板が設けられており、原稿を読み取る場合は、原稿カバー体5を上側に開き、載置用ガラス板上に原稿を載置し、原稿カバー体5を閉じて原稿を固定する。操作キー15の原稿読取ボタンを押下すると、載置用ガラス板の下側に設けられている原稿読取り用のスキャナ20により原稿紙面の画像が読み取られる。読み取られた画像データは後述のRAM13(図2参照)における所定の記憶領域に格納される。なお、スキャナ20にて原稿を読み取るセンサーは、例えばCIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Devide)が用いられている。
【0034】
原稿カバー体5の前方には、操作キー15が設けられており、より具体的には、数値や文字などを入力する入力キー群15aと、各種コマンドを入力するコマンド入力キー群15bと、メニューや操作手順や実行中の処理の状態を表示するためのLCD16とが設けられている。利用者は、上記操作キー15を押下することで、電源のオン/オフや、各機能の切り替えなどの操作を行うことができる。そして、LCD16には、操作キー15の押下に対応する情報が表示されるので、印刷する画像データやプリンタ21(図2参照)などの各種情報を確認することができる。
【0035】
開口部2の前面であって、入力キー群15aの下方には、メモリカードを挿入するためのメモリカードスロット22が設けられている。なお、MFP1には、メモリカードに格納されている画像データをプリンタ機能によってPC31を介さすに印刷することができるダイレクト印刷機能を有している。また、図示しないが、開口部2の背面には、USBケーブル200の一端側が差し込まれる接続口であるUSBインターフェイス18(図2参照)が開口している。USBケーブル200の一端側を、USBインターフェイス18の接続口に接続し、他端側をPC31のUSBインターフェイス36(図2参照)に接続することにより、MFP1とPC31とはUSBケーブル200を介してデータ通信可能となるように構成されている。
【0036】
次に、図2を参照して、MFP1とPC31との電気的構成について説明する。図2は、MFP1とPC31との電気的構成を示すブロック図である。MFP1は、CPU11、ROM12、RAM13、操作キー15、LCD16、スピーカ17、USBインターフェイス18、スキャナ20、プリンタ21、メモリカードスロット22とを主に有している。また、MFP1のCPU11、ROM12、RAM13は、バスライン26を介してお互いに接続されている。さらに、MFP1の操作キー15、LCD16、スピーカ17、USBインターフェイス18、スキャナ20、プリンタ21、メモリカードスロット22、バスライン26は、入出力ポートを介してお互いに接続されている。
【0037】
MFP1のCPU11は、ROM12やRAM13に記憶される固定値やプログラム或いは、MFP1が有している各機能の制御や、USBインターフェイス18を介して送受信される各種信号に従って、入出力ポート27と接続された各部を制御するものである。ROM12は書換不可能なメモリであり、MFP1で実行される各種の制御プログラムを記憶する領域である制御プログラム領域12aと、複数のディザデータが記憶されるディザマトリックスメモリ12bとが設けられている。
【0038】
制御プログラム領域12aには、例えば、後述する図3、図4、図6のフローチャートに示す画像処理プログラム(特許請求の範囲に記載の画像処理プログラムの一例)などが記憶されている。ディザマトリックスメモリ12bには、画像データを階調処理するためのディザデータ12b1と、線近傍の画像データを階調処理するための線近傍用データ12b2とが記憶されている。
【0039】
ここで、ディザデータについて説明する。記録用紙に画像を記録する場合は、多値(例えば、RGB)で形成される画像から、2値(例えば、白と黒)の画像が形成される。例えば、レーザプリンタであれば、「トナーを記録用紙に転写して画素を形成する」、又は、「トナーを記録用紙に転写して画素を形成しない」の2種類の状態で画像が形成される。その2種類の状態で、画像の階調を表現するために、ディザデータが用いられる。ディザデータは、例えば、縦8×横8の閾値の行列で構成されており、その閾値の行列と、画像データのうち、ある場所の縦8×横8の画素を構成する画素値とが比較される。画素値が閾値よりも大きい場合は「トナーを転写する画素」とし、また画素値が閾値よりも小さい場合は「トナーを転写しない画素」として、縦8×横8の画素の印刷パターンが形成される。そして、残りの画像データに対しても同様な処理を繰り返すことで、2値で画像の階調が表現される。
【0040】
本実施形態では、ディザデータ12b1を用いて画像データを階調処理して印刷すると、万線パターンが形成される。万線パターンとは、平行線を規則的に密に並べたように見える印刷パターンのことであり、平行線の間隔や太さ、または角度や数などを変化させることにより階調を表現するものである。ディザデータ12b1を用いて画像データ300を階調処理して印刷すると、図7(a),(b)の左側の拡大図に示すように、枠線301と四角形302とは、万線パターンにより形成される。図を分かり易くするために、枠線301は、直線で示している。
【0041】
また、線近傍用データ12b2を用いて画像データ300を階調処理して印刷すると、図7(a),(b)の右側の拡大図における領域303(特許請求の範囲に記載の領域の一例)に示すドット集中型の印刷パターンにより四角形302が形成される。
【0042】
ドット集中型の印刷パターンとは、所定数の画素で構成されるブロック(例えば縦8×横8画素)を規則的に並べ、各ブロックの中心を基準として、ドット形状を大きくしたり小さくすることにより階調を表現するものである。このドット集中型の印刷パターンは、枠線301と四角形302との間に隙間が生じて印刷されたり、枠線301を越えて四角形302がはみ出して印刷された場合でも、図7(c)に示すように枠線301と四角形302とが影響し合うことを抑制でき、印刷の質感を維持することができる印刷パターンである。
【0043】
RAM13は、各種のデータを一時的に記憶するための書換可能なメモリであり、描画命令メモリ13a、描画領域13b、罫線記憶領域13c、色変換領域13d、2値化データ領域13eとが設けられている。
【0044】
描画命令メモリ13aは、PC31から画像データが入力される領域である。画像データについて詳細は後述するが、画像を形成するための各種描画命令を有したページ記述言語(PDL)で構成されており、その各種描画命令に基づいて、描画領域13bに画像データが形成される。
【0045】
描画領域13bは、描画命令に従って形成されるRGB形式のビットマップ画像データ(以下、「ビットマップデータ」と称す)が記憶される領域である。ビットマップデータとは、格子状に画素を並べて画像を形成するための公知のデータ形式であり、各画素の色を示す画素値が、それぞれの画素について記憶されているデータである。
【0046】
罫線記憶領域13cは、描画領域13bに記憶されるビットマップデータの各画素が、線や図形を形成する画素であるかのステータスを記憶するための領域である。線描画命令に基づいて形成された画素のステータスは「1」と設定され、図形描画命令に基づいて形成さえた画素のステータスは「2」と設定される。また、初期化された場合は、「0」と設定される。以後、説明を分かり易くするために、値が「0」の場合は「OFF」と表記し、「1」の場合は「線」と表記し、「2」の場合は「図」と表記する。
【0047】
色変換領域13dは、ビットマップデータの形成が終了した描画領域13bにおける各画素値が、RGB形式からCMYK形式に変換されて記憶される領域である。変換されたCMYK形式の各画素値は、複数の色(ここでは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック))データに分割され、2値化データ領域に記憶される。
【0048】
2値化データ領域13eは、色変換領域13dに記憶されるCMYK形式のビットマップデータを、プリンタ21で印刷可能な印刷色毎(CMYKの4色)に2値化したデータが記憶される領域である。2値化されたデータは、プリンタ21に送信することで、記録用紙に印刷される。
【0049】
スピーカ17は、操作キー15の操作音やエラー発生時の注意音を利用者に報知するものである。プリンタ21は、詳しくは図示しないが、図9の概念図に示すようにタンデム方式のレーザプリンタである。プリンタ21は、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のトナーを使用する印刷ドラム、紙送り装置を備えカラー印刷を行うことができる。
【0050】
PC31は、CPU32、ROM33、RAM34、ハードディスク35、USBインターフェイス36、入力装置37、表示装置38とを主に有し、これらはバスライン40を介してお互いに接続されている。
【0051】
CPU32は、ROM33やRAM34やハードディスク35に記憶される固定値やプログラム或いは、PC31が有している各機能の制御や、USBインターフェイス36を介して送受信される各種信号に従って、バスライン40により接続された各部を制御する。
【0052】
USBインターフェイス36は、USBケーブル200を用いてPC31と接続することで、MFP1とのデータ通信を可能にする既知の回路である。入力装置37は、PC31を管理したり、ハードディスク35に格納された各種アプリケーションソフトを利用する場合に使用するものであり、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置で構成される。表示装置38は、PC31を管理したり、画像処理ソフトを利用する場合に使用するものであり、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成される。
【0053】
図3は、MFP1の画像処理を示すフローチャートであり、PC31で形成された画像データが、描画命令メモリ13a(図2参照)に入力された場合に実行される画像処理である。ここで画像データは、プリンタを制御するためのページ記述言語(PDL)で構成されているものとして説明する。ページ記述言語は、画像データを形成するためのプログラミング言語であり、簡単な描画命令で複雑な画像を形成することができる。描画命令は、大別すると、線を形成する線描画命令と、図形(四角形や円など)を形成する図形描画命令と、文字を形成する文字描画命令と、ビットマップデータを形成するイメージ描画命令の4つに分類される。
【0054】
本実施形態の画像処理では、まず、画像形成処理(S1)が実行される。図4のフローチャートを参照して、画像形成処理について説明する。画像形成処理では、始めに、描画領域13bと罫線記憶領域13cとを初期化する(S11)。ここでの初期化とは、描画領域13bのビットマップデータを消去し、罫線描画領域13cの全てのステータスを「OFF」に設定することである。
【0055】
次に、描画命令メモリ13aから描画命令を1命令読み取り(S12)、読み取った描画命令に基づいて、描画領域13bにRGB形式の画素値を記憶する(S13)。そして、読み取った描画命令は何であるかを判定し(S14)、それが線描画命令である場合は、罫線記憶領域13cにおいて、描画領域13bに記憶した画素に対応する位置のステータスの値を「線」に設定する(S15)。一方、読み取った描画命令が、図形描画命令である場合は、罫線記憶領域13cにおいて、描画領域13bに記憶した画素に対応する位置のステータスの値を「図」に設定する(S16)。
【0056】
一方、その他の描画命令である場合は、ステータスの値を変更せずに「OFF」の状態を維持し、S17の処理に移る。このS11からS17の処理を行うことによって、「図」のステータスを示す画素から、所定間隔以内に「線」のステータスを示す画素が形成されているか否かを判定することができる。
【0057】
ここで、図4のフローチャートのS12からS17の処理で、描画領域13bと罫線記憶領域13cとに書き込まれるデータついて、図5を参照して説明する。
【0058】
図5は、描画領域13bと罫線記憶領域13cとの内容を概略的に示したイメージ図である。図面に向かって左側には、描画領域13bのイメージ図を示し、右側には罫線記憶領域13cのイメージ図を示している。罫線記憶領域13cに記憶されるステータスの状態を分かり易く説明するために、罫線記憶領域13cのイメージ図は、「線」を示すステータスを“黒の実線”で示し、「図」を示すステータスを“灰色の塗り潰し”で示し、「OFF」を示すステータスを“無地(記載なし)”で示して説明する。
【0059】
図5(a)は、イメージ描画命令に基づく画像と、文字描画命令に基づく文字が書き込まれた状態を示している。図5(a)に示すように、イメージ描画命令や文字描画命令が読み込まれた場合は、その描画命令に基づいて描画領域13bにビットマップや文字の画素が形成されるが、罫線記憶領域13cには何も形成されない(S12、S13)。
【0060】
図5(b)は、図5(a)の状態に、線描画命令に基づく線や罫線と、図形描画命令に基づく図形とが書き込まれた状態を示している。図5(b)に示すように、線描画命令や図形描画命令が読み込まれた場合は、罫線記憶領域13cに描画領域13bに形成された各画素に対応するステータスの値が記憶される(S14〜S16)。
【0061】
ここで、図4のフローチャートの説明に戻る。次に、描画命令メモリ13aに入力された描画命令を全て読み取ったかを判定し(S17)、描画命令メモリ13aに入力された描画命令を全て読み取った場合は(S17:Yes)、S18の処理に移る。一方、描画命令メモリ13aに入力された描画命令を全て読み取っていない場合は(S17:No)、S12の処理へ戻り、前述したS12からS16の各処理を繰り返す。
【0062】
次に、罫線記憶領域13cから、1つのステータス値を読み取り(S18)、読み取ったステータスの値が「図」に設定されているかを判定する(S19)。読み取ったステータスの値が「図」に設定されている場合は(S19:Yes)、読み取ったステータスから所定間隔以内に、「線」に設定されたステータスがあるかを判定する(S20)。本実施形態では、所定間隔として、上下方向に検索する画素数である第1所定数と左右方向に検索する画素数である第2所定数とは同一の値とし、ディザデータを用いた印刷パターンを形成するために必要な縦方向(又は横方向)の最小画素数を用いる。例えば、ディザデータが縦8×横8のマトリックスで形成されている場合は、8(特許請求の範囲に記載の第3所定数の一例)画素分を所定間隔として設定する。そして、この判定では、「図」に設定されているステータスから、上下方向と左右方向との4方向のステータスについて値を判定するので、上下方向と左右方向と斜め方向との8方向のステータスついて値を判定するよりも判定処理が少なくて済むため、処理が速い。
【0063】
S20の処理において、読み取ったステータスから所定間隔以内に、「線」に設定されたステータスがない場合は(S20:No)、読み取ったステータスの値を「OFF」に設定する(S21)。一方、S19の処理において、読み取ったステータスの値が「図」に設定されていない場合と(S19:No)、S20の処理において読み取ったステータスから所定間隔以内に「線」に設定されたステータスがある場合(S20:Yes)とは、ステータスの値を変更せずに、S22の処理に移る。
【0064】
そして、罫線記憶領域13cのステータスを全て読み取ったかを判断し(S22)、罫線記憶領域13cのステータスを全て読み取っていない場合は(S22:No)、S18の処理に戻り、前述したS18からS21の各処理を繰り返す。一方、罫線記憶領域13cのステータスを全て読み取った場合は(S22:Yes)、画像形成処理を終了する。この図4のフローチャートの処理により、図形描画命令で形成された画素のうち、所定間隔以内に線描画命令で形成された画素があるものを記憶しておくことができる。
【0065】
図5(c)は、図5(b)の状態で、「図」に設定されているステータスのうち、所定間隔以内に「線」に設定されたステータスがあるものが残された状態を示している。画像形成処理(S1)によれば、図5(c)に示す内容のデータが、描画領域13bと罫線記憶領域13cとに形成される(S18〜S21)。
【0066】
次に、図3のフローチャートに示す印刷データ変換処理(S2)を実行する(図3参照)。印刷データ変換処理(S2)について、図6のフローチャートを参照して説明する。印刷データ変換処理(S2)では、始めに、描画領域13bから、1つの画素値(RGB)を読み取り(S31)、読み取った画素値をRGB形式から、公知の手法にてCMYK形式に変換し、読み取った画素の位置に対応する色変換領域13dの位置に、その値を記憶する(S32)。次に、罫線記憶領域13cにおいて、読み取った画素の位置に対応するステータスの値が「図」であるか判定し(S33)、読み取った画素の位置に対応するステータスの値が「図」である場合は(S33:Yes)、線近傍用データ12b2を用いて、CMYK形式に変換した画素値を2値化し、各色(CMYK)の値をそれぞれ2値化データ領域13eに記憶する(S34)。一方、読み取った画素の位置に対応するステータスの値が「図」でない場合は(S33:No)、ディザデータを用いて画素値(CMYK)を2値化し、各色(CMYK)の値をそれぞれ2値化データ領域に記憶する(S35)。
【0067】
次に、描画領域13bの画素値を全て読み取ったか判断し(S36)、描画領域13bの画素値を全て読みっていない場合は(S36:No)、S31の処理に戻り、前述したS31からS35の各処理を繰り返す。一方、描画領域13bの画素値を全て読み取った場合は(S36:Yes)、処理を終了する。
【0068】
この図6のフローチャートの処理により、描画領域13bにおいて、図形描画命令で形成された画素のうち、線描画命令で形成された画素から所定間隔以内に位置する画素を、線近傍用データ12b2を用いて2値化処理することができる。
【0069】
印刷データ変換処理(S2)の終了後は、2値化データ領域13eに記憶した、CMYKに2値化したデータを、それぞれプリンタ21に送信し(S3)、処理を終了する(図3参照)。
【0070】
次に、図7を参照して、画像データ300(図9参照)をMFP1で階調処理し、プリンタ21で印刷した場合の印刷結果について説明する。
【0071】
図7(a)、(b)において、図面に向かって左側は、通常のレーザプリンタで印刷位置のズレが生じた場合の拡大図を、図面に向かって右側の図は、画像データ300(図10参照)をMFP1で階調処理して印刷した場合の拡大図を示している。そしてこれらは、図7(c)に示す記録用紙の一部(図中領域X)を拡大した拡大図である。それぞれの拡大図は、印字位置がズレて印刷された状態を示している。MFP1では、画像データ300(図10参照)の所定の領域を線近傍用データ12b2(図2参照)を用いて階調処理され、その他の領域をディザデータ12b1(図2参照)を用いて階調処理される。
【0072】
それぞれの四角形302において、所定間隔以内に枠線301が位置する領域303では、線近傍用データ12b2が使用される。そして本実施形態の線近傍用データではドット集中型の印刷パターンが形成される。それ以外の領域は、ディザデータ12b1が使用されて万線パターンが形成される。このように、線近傍の図形データをドット集中型の印刷パターンにより形成することで、図7(c)で示すように位置ズレした場合でも枠線301と四角形302とが影響し合うことを抑制でき、印刷の質感を維持することができる。また、枠線301も太くしないため、画像データ300(図10参照)に近い印刷結果を得ることができる。
【0073】
これに対し、図7(a)、(b)において、図面に向かって左側の図は、画像データ300(図10参照)をディザデータ12b1(図2参照)のみを用いて階調処理した場合の拡大図であり、共に印刷位置がズレて印刷された状態を示している。それぞれの四角形302は、ディザデータ12b1が使用されて階調処理されているため、万線パターンにより形成されている。このような場合は、枠線301と四角形302とが万線パターンの影響で、図7(a)は、図10(a)の右図に示すように、実線と点線とで形成されているように見え、図7(b)は、図10の(b)の右図に示すように、実線と波線とで形成されているように見えてしまうという不具合が生じ得るのである。
【0074】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0075】
例えば、上記実施形態では、線近傍用データ12b2として、ドット集中型の印刷パターンを形成するディザデータを用いたが、ディザデータ12b1により形成される万線パターンよりも線数が多いディザデータを用いて階調処理を行うように構成してもよい。
【0076】
図8(a)は、線近傍用データ12b2として、ディザデータ12b1により形成される万線パターンよりも線数が多いディザデータを用いて画像データ300(図10参照)を階調処理し、プリンタ21で印刷した記録用紙の一例を示した図である。図8(a)に示すような印刷パターンを形成し、線と印刷パターンとに生じる影響を抑えても良い。この階調処理で形成される印刷パターンは、線と図形との間に隙間が生じたり、はみ出しが生じても、印刷された線に影響を与えにくいので、線近傍の印刷の質感を維持することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、線近傍用データ12b2として、ドット集中型の印刷パターンを形成するディザデータを用いたが、ディザ法とは異なるアルゴリズム(例えば、誤差拡散法)により作成されたデータで階調処理を行うように構成してもよい。
【0078】
図8(b)は、線近傍用データ12b2として、誤差拡散法を用いて画像データ300(図10参照)を階調処理し、プリンタ21で印刷した記録用紙の一例を示した図である。図8(b)に示すような印刷パターンを形成し、線と印刷パターンとに生じる影響を抑えても良い。誤差拡散法で階調処理されたパターンは、線と図形との間に隙間が生じたり、はみ出しが生じても、印刷された線に影響を与えにくいので、線近傍の印刷の質感を維持することができる。
【0079】
また、万線パターンを形成する階調処理よりも、誤差拡散法で印刷パターンを形成する階調処理は複雑であるため、画像データの階調処理には時間が掛かる。しかしながら、画像データ全体にではなく、線近傍の一部分の図形データについてのみ誤差拡散法で印刷パターンを形成する階調処理を行うので、画像データの階調処理の時間は短く、かつ、印刷の質感を維持することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、上下方向を検索する所定距離を示す第1所定数と、左右方向を検索する所定距離を示す第2所定数とは同一の値としたが、第1所定数と第2所定数とを異なる数で構成しても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、MFP1により画像データを階調処理しているが、PC31のハードディスク35に、上記実施形態の階調処理を行うプログラムを記憶しておき、PC31で画像データの階調処理を行っても良い。
【0082】
また、上記実施形態では、PC31からMFP1の描画命令メモリ13aに画像データが入力されるが、メモリカードスロット22に挿入された携帯用フラッシュメモリカードに記憶されている画像データを、MFP1の操作キー15を用いて描画命令メモリ13aに入力しても良い。
【0083】
また、上記実施形態ではMFPによる例を挙げたが、通常のレーザプリンタでの実施でもよい。
【0084】
また、上記実施形態では所定間隔を8ピクセルとしたが、ディザの基準単位の倍数以内であってもよいし、10ピクセル以内のように基準単位にこだわらなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態における画像処理装置を有したMFPとPCとの接続図である。
【図2】MFPとPCとの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】MFPの画像処理を示すフローチャートである。
【図4】MFPの画像形成処理を示すフローチャートである。
【図5】描画領域と罫線記憶領域との内容を概略的に示したイメージ図である。
【図6】MFPの印刷データ変換処理を示すフローチャートである。
【図7】画像データをMFPで階調処理し、プリンタで印刷した記録用紙の一例を示す図である。
【図8】ドット集中型とは異なる階調処理を行い、プリンタで印刷した記録用紙の一例を示す図である。
【図9】従来のタンデム方式のレーザプリンタを概略的に示した図である。
【図10】従来の画像形成装置により、PCに表示された画像データを印刷した記録用紙の一例を示す図である。
【図11】従来の画像形成装置により、位置ズレが生じて画像データが印刷された記録用紙の一例を示す図である。
【図12】従来の画像形成装置により印刷された記録用紙であって、線を太く印刷した記録用紙の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 MFP(画像処理装置)
12b1 ディザデータ(所定のディザデータ)
12b2 線近傍用データ(所定のディザデータとは異なるディザデータ)
13b 描画領域
13c 罫線記憶領域(属性記憶領域)
S12 命令読込手段、命令読込ステップ
S13 描画手段、描画ステップ
S14、S15、S16 属性記憶手段
S19、S20、S21 判定手段、判定ステップ
S34 階調処理手段、階調処理ステップ
S35 ディザ処理手段、ディザ処理ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線データを形成する線描画命令及び前記線データ以外の図形データを形成する図形描画命令を含む画像データに従って、描画領域に前記線データ及び前記図形データを形成する描画手段を備えた画像処理装置であって、
前記図形データを所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理するディザ処理手段と、
そのディザ処理手段で用いられる前記ディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムで前記図形データを階調処理する階調処理手段と、
前記描画領域に形成された図形データの位置から所定間隔以内に線データが形成されているかを判定する判定手段とを備え、
その判定手段により、所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された図形データについては、その階調処理を前記階調処理手段により行い、所定間隔以内に前記線データが形成されていないと判定された図形データについては、その階調処理を前記ディザ処理手段により行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記階調処理手段は、ドット集中型のディザパターンを形成するディザデータを用いたディザ法で前記図形データを階調処理することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記階調処理手段は、前記ディザ処理手段で用いられる前記ディザデータよりも線数が多いディザデータを用いたディザ法で前記図形データを階調処理することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記階調処理手段は、誤差拡散法で前記図形データを階調処理することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記描画手段は、前記描画領域に前記線データとして画素値及び前記図形データとして画素値を形成するものであり、
前記画像データから前記線描画命令及び前記図形描画命令を読み込む命令読込手段と、
その命令読込手段で読み込んだ前記線描画命令及び前記図形描画命令に従って、前記描画手段により前記描画領域に画素値を形成し、その画素値が前記線描画命令に従って形成された画素値であるか及び前記図形描画命令に従って形成された画素値であるかを示す属性を属性記憶領域に記憶する属性記憶手段とを備え、
前記判定手段は、前記属性記憶領域に記憶された画素値の属性に基づいて、前記描画領域に形成された前記図形データの位置から所定間隔以内に前記線データが形成されているかを判定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記図形描画命令に基づく画素値により形成される画素から、上下方向の第1所定数の画素の中または左右方向の第2所定数の画素の中に、前記線描画命令に基づく画素値により形成される画素が含まれるかを判定することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ディザデータは、前記描画領域に形成される画素のうち、上下方向に連続する第3所定数の画素と左右方向に連続する前記第3所定数の画素とで定まる画素に対応するディザパターンを形成するためのデータあり、
前記所定間隔は、前記第3所定数の整数倍の画素であることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記所定間隔は、8の整数倍の画素であることを特徴とする請求項7記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記判定手段により、前記図形データの位置から前記所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された場合は、前記所定間隔以内に前記線データが形成されている領域の前記図形データを前記階調処理手段により階調処理することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
線データを形成する線描画命令及び線データ以外の図形データを形成する図形描画命令を含む画像データを処理するコンピュータに実行させる画像処理プログラムにおいて、
前記画像データに従って描画領域に前記線データ及び前記図形データを形成する描画ステップと、
前記線データ及び前記図形データを所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理するディザ処理ステップと、
そのディザ処理ステップで用いられる前記ディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムで前記図形データを階調処理する階調処理ステップと、
前記描画領域に形成された前記図形データの位置から所定間隔以内に前記線データが形成されているかを判定する判定ステップとを前記コンピュータに実行させるものであり、
その判定ステップにより、所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された図形データについては、その階調処理を前記階調処理ステップにより行い、所定間隔以内に前記線データが形成されていないと判定された図形データについては、その階調処理を前記ディザ処理ステップにより行わせることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項1】
線データを形成する線描画命令及び前記線データ以外の図形データを形成する図形描画命令を含む画像データに従って、描画領域に前記線データ及び前記図形データを形成する描画手段を備えた画像処理装置であって、
前記図形データを所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理するディザ処理手段と、
そのディザ処理手段で用いられる前記ディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムで前記図形データを階調処理する階調処理手段と、
前記描画領域に形成された図形データの位置から所定間隔以内に線データが形成されているかを判定する判定手段とを備え、
その判定手段により、所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された図形データについては、その階調処理を前記階調処理手段により行い、所定間隔以内に前記線データが形成されていないと判定された図形データについては、その階調処理を前記ディザ処理手段により行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記階調処理手段は、ドット集中型のディザパターンを形成するディザデータを用いたディザ法で前記図形データを階調処理することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記階調処理手段は、前記ディザ処理手段で用いられる前記ディザデータよりも線数が多いディザデータを用いたディザ法で前記図形データを階調処理することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記階調処理手段は、誤差拡散法で前記図形データを階調処理することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記描画手段は、前記描画領域に前記線データとして画素値及び前記図形データとして画素値を形成するものであり、
前記画像データから前記線描画命令及び前記図形描画命令を読み込む命令読込手段と、
その命令読込手段で読み込んだ前記線描画命令及び前記図形描画命令に従って、前記描画手段により前記描画領域に画素値を形成し、その画素値が前記線描画命令に従って形成された画素値であるか及び前記図形描画命令に従って形成された画素値であるかを示す属性を属性記憶領域に記憶する属性記憶手段とを備え、
前記判定手段は、前記属性記憶領域に記憶された画素値の属性に基づいて、前記描画領域に形成された前記図形データの位置から所定間隔以内に前記線データが形成されているかを判定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記図形描画命令に基づく画素値により形成される画素から、上下方向の第1所定数の画素の中または左右方向の第2所定数の画素の中に、前記線描画命令に基づく画素値により形成される画素が含まれるかを判定することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ディザデータは、前記描画領域に形成される画素のうち、上下方向に連続する第3所定数の画素と左右方向に連続する前記第3所定数の画素とで定まる画素に対応するディザパターンを形成するためのデータあり、
前記所定間隔は、前記第3所定数の整数倍の画素であることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記所定間隔は、8の整数倍の画素であることを特徴とする請求項7記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記判定手段により、前記図形データの位置から前記所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された場合は、前記所定間隔以内に前記線データが形成されている領域の前記図形データを前記階調処理手段により階調処理することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
線データを形成する線描画命令及び線データ以外の図形データを形成する図形描画命令を含む画像データを処理するコンピュータに実行させる画像処理プログラムにおいて、
前記画像データに従って描画領域に前記線データ及び前記図形データを形成する描画ステップと、
前記線データ及び前記図形データを所定のディザデータを用いたディザ法により階調処理するディザ処理ステップと、
そのディザ処理ステップで用いられる前記ディザデータとは異なるディザデータを用いたディザ法により又はディザ法とは異なるアルゴリズムで前記図形データを階調処理する階調処理ステップと、
前記描画領域に形成された前記図形データの位置から所定間隔以内に前記線データが形成されているかを判定する判定ステップとを前記コンピュータに実行させるものであり、
その判定ステップにより、所定間隔以内に前記線データが形成されていると判定された図形データについては、その階調処理を前記階調処理ステップにより行い、所定間隔以内に前記線データが形成されていないと判定された図形データについては、その階調処理を前記ディザ処理ステップにより行わせることを特徴とする画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−193176(P2008−193176A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22438(P2007−22438)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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