説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】画質を確保しながらRIP処理の高速化が可能である画像処理装置および画像処理方法を提供する。
【解決手段】PDLデータをRIP処理する画像処理方法であって、前記PDLデータに含まれるオブジェクトが展開される出力フレームとして、第1フレームか、前記第1フレームの解像度より低い解像度を有する第2フレームかを決定するステップを有する。当該前記ステップにおいては、前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値以下である場合、前記第1フレームが出力フレームとして決定し(S106)、前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値を超えている場合(S104のYES)、前記第2フレームが出力フレームとして決定する(S105)。なお、前記基準解像度は、前記第1フレームの解像度未満かつ前記第2フレームの解像度以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトブック等のビットマップ画像を多用したデータの印刷が増加している。しかし、ビットマップ画像データのRIP処理(ラスタライズ処理:Raster Image Processing)は、テキストデータやグラフィックスデータと比較して時間がかかり、また、これにより、印刷速度の低下を引き起こす虞もある。さらに、プリントエンジンの高解像度化も進んでおり、高解像度でRIP処理を行う必要があり、RIP処理の高速化が厳しい状況である。
【0003】
そのため、RIP処理の際、解像度が重視される文字データおよび図形データを、高解像度かつ低階調数の画像メモリに展開する一方、画像データを低解像度かつ高階調数の画像メモリに展開することで、RIP処理の高速化を図っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、色変換処理の際、色数によって、入力オブジェクトが文字、図形あるいは写真であるかを認識し、入力オブジェクトに最適な色変換パラメータに切り換えて色変換を行うものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−342314号公報
【特許文献2】特開平9−200549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、2つの画像メモリを有する前記技術は、例えば、画像データに高解像度の線画が含まれる場合、展開される画像メモリが低解像度であるため、前記線画の劣化が発生し、高画質のデータを得ることが困難である問題を有する。
【0007】
また、色変換パラメータを切り換える前記技術は、解像度の変更は行っておらず、処理の高速化を図ることが困難である。
【0008】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、画質を確保しながらRIP処理の高速化が可能である画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0010】
(1)PDLデータをRIP処理する画像処理装置であって、
前記PDLデータに含まれるオブジェクトが展開される出力フレームとして、第1フレームか、前記第1フレームの解像度より低い解像度を有する第2フレームかを決定するインタプリタ部を有しており、
前記インタプリタ部は、
前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値以下である場合、前記第1フレームを出力フレームとして決定し、
前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値を超えている場合、前記第2フレームを出力フレームとして決定し、
前記基準解像度は、前記第1フレームの解像度未満かつ前記第2フレームの解像度以上である
ことを特徴とする画像処理装置。
【0011】
(2)前記オブジェクトの色空間を出力用の色空間に変換する色変換部をさらに有し、前記オブジェクトに含まれる色数は、前記色変換部による変換の際にカウントされることを特徴とする前記(1)に記載の画像処理装置。
【0012】
(3)前記第1フレームに展開されたラスターデータと、前記第2フレームに展開されたラスターデータとを合成して得られる画像データを、印刷するプリントエンジンをさらに有することを特徴とする前記(1)又は前記(2)に記載の画像処理装置。
【0013】
(4)前記第1フレームの解像度は、前記プリントエンジンの解像度と同一であることを特徴とする前記(3)に記載の画像処理装置。
【0014】
(5)前記基準解像度は、前記第2フレームの解像度と同一であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0015】
(6)ネットワークを経由して接続されるクライアントから転送されるPDLデータを受信するデータ受信部をさらに有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0016】
(7) PDLデータをRIP処理する画像処理方法であって、
前記PDLデータに含まれるオブジェクトが展開される出力フレームとして、第1フレームか、前記第1フレームの解像度より低い解像度を有する第2フレームかを決定するステップを有しており、
前記ステップにおいては、
前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値以下である場合、前記第1フレームが出力フレームとして決定し、
前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値を超えている場合、前記第2フレームが出力フレームとして決定し、
前記基準解像度は、前記第1フレームの解像度未満かつ前記第2フレームの解像度以上である
ことを特徴とする画像処理方法。
【0017】
(8)前記オブジェクトの色空間を出力用の色空間に変換する色変換ステップをさらに有し、前記オブジェクトに含まれる色数は、前記色変換ステップによる変換の際にカウントされることを特徴とする前記(7)に記載の画像処理方法。
【0018】
(9)前記第1フレームに展開されたラスターデータと、前記第2フレームに展開されたラスターデータとを合成して得られる画像データを、プリントエンジンによって印刷する印刷ステップをさらに有することを特徴とする前記(7)又は前記(8)に記載の画像処理方法。
【0019】
(10)前記第1フレームの解像度は、前記プリントエンジンの解像度と同一であることを特徴とする前記(9)に記載の画像処理方法。
【0020】
(11)前記基準解像度は、前記第2フレームの解像度と同一であることを特徴とする前記(7)〜(10)のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【0021】
(12)ネットワークを経由して接続されるクライアントから転送されるPDLデータを受信するデータ受信ステップをさらに有することを特徴とする前記(7)〜(11)のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る画像処理装置および画像処理方法によれば、入力オブジェクトの属性がイメージであり、入力オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、入力オブジェクトに含まれる色数が閾値以下である場合、入力オブジェクトが線画/図形画像であると判断されて、第1フレームが出力フレームとして決定される。第1フレームは、第2フレームに比較して高解像度であるため、解像度が重視される線画/図形画像の画質の劣化が抑制される。一方、入力オブジェクトの属性がイメージであり、入力オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、入力オブジェクトに含まれる色数が閾値を超えている場合、入力オブジェクトが写真画像であると判断されて、第2フレームが出力フレームとして決定される。第1フレームに比較し低解像度の第2フレームにおける展開時間は、第1フレームにおける展開時間に比較して短くなるため、写真画像と判断された入力オブジェクトの処理が、高速化される。また、写真画像は、線画/図形画像に比較して低解像度であったとしても画質の劣化が目立たないため、線画/図形画像であると判断された入力オブジェクトを第1フレームに展開したデータと、写真画像と判断された入力オブジェクトを第2フレームに展開したデータとを合成して得られる画像の画質を確保することができる。つまり、画質を確保しながらRIP処理の高速化が可能である画像処理装置および画像処理方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示される画像処理装置が接続されるネットワークの構成を説明するための概略図である。
【図3】図1に示される画像処理装置のプリンタコントローラに組み込まれたプログラムの構成およびデータフローを説明するための概略図である。
【図4】PostScriptの描画命令の一例を説明するための図表である。
【図5】図3に示されるインタプリタ部に係る高解像度フレームを示している概略図である。
【図6】図3に示されるインタプリタ部に係る低解像度フレームを示している概略図である。
【図7】図3に示されるインタプリタ部に係る色数カウントテーブルの一例を説明するための図表である。
【図8】本発明の実施形態に係る画像処理方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8に示される合成工程を説明するための概略図である。
【図10】図8に示されるフレーム決定および展開工程を説明するためのフローチャートである。
【図11】図9に示される色数判断ルーチンを説明するためのフローチャートである。
【図12】色数が1である場合の色数カウントテーブルを示している図表である。
【図13】色数が閾値を超えた場合の色数カウントテーブルを示している図表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置を説明するためのブロック図、図2は、図1に示される画像処理装置が接続されるネットワークの構成を説明するための概略図である。
【0026】
本発明の実施形態に係る画像処理装置100は、コピー機能、プリンタ機能およびスキャン機能を有するMFP(Multi−Function Peripheral)からなり、プリンタコントローラ120およびプリントエンジン140を有しており、ネットワーク400を経由して接続されるクライアント200,300から転送されるプリントジョブを受信して、印刷処理を行うために使用される。
【0027】
ネットワーク400は、イーサネット(登録商標)、トークンリング、およびFDDI(Fiber−Distributed Data Interface)等の規格によりコンピュータやネットワーク機器同士を接続する構内情報通信網(LAN:Local Area Network)、LAN同士を専用線で接続した広域情報通信網(WAN:Wide Area Network)、インターネット、これらの組み合わせ等の各種のネットワークからなる。ネットワークプロトコルは、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)である。ネットワーク400に接続される機器の種類および台数は、図2に示される構成に限定されない。
【0028】
クライアント200,300は、本体部、ディスプレイおよび入力装置を有するコンピュータ装置によって構成され、各種のアプリケーションがインストールされている。アプリケーションは、例えば、電子文書を作成するための文書作成プログラムや、電子文書を印刷するためのドライバープログラムである。電子文書の規格は、例えば、XPS(XML Paper Specification)や、PDF(Portable Document Format)である。
【0029】
ドライバープログラムは、画像処理装置100が対応可能な記述言語形式による印刷データを作成し、これをプリントジョブとしてネットワーク400を介して画像処理装置100に送信する。記述言語形式は、PostScript(登録商標)やPCL(Printer Control Language)等のPDL(ページ記述言語:Page Description Language)である。
【0030】
プリンタコントローラ120は、クライアント200,300から転送されたPDLデータをラスターデータに変換し、当該ラスターデータをプリントエンジン140に転送するために使用され、CPU122、RAM124、HDD126、NIC128およびエンジンインターフェース130を有し、これらは、バス134を経由して相互に接続されている。
【0031】
CPU122は、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ等から構成される制御回路であり、プリンタコントローラ120の各機能は、それに対応するプログラムをCPU122が実行することにより発揮される。
【0032】
RAM124は、作業領域として一時的にプログラムおよびデータを記憶する高速のランダムアクセス記憶装置である。HDD126は、プリンタドライバやオペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを格納する大容量のランダムアクセス記憶装置である。HDD126に格納されるプログラムには、クライアント200,300から転送されたPDLデータをRIP処理(ラスタライズ処理:Raster Image Processing)するためのプログラムが含まれる。
【0033】
NIC128は、所謂LANボードからなる通信部であり、ネットワーク400に接続するための通信機能をプリンタコントローラ120に追加する拡張装置である。
【0034】
エンジンインターフェース130は、プリントエンジン140と通信するための専用インタフェース(VIF:ビデオインタフェース)であり、転送用バッファ132が接続されており、RIP処理が完了したラスターデータ(ページデータ)を、順次、プリントエンジン140へ転送するために使用される。なお、RS−232(Recommended Standard 232)C、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers))1394、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルインタフェース、IEEE1284等のパラレルインタフェース、独自規格によるインタフェースを、VIFの代わりに適宜適用することも可能である。なお、転送用バッファ132は、ラスターデータを、プリントエンジン140に転送する際に、一時的に保存するための専用バッファである。
【0035】
プリントエンジン140は、例えば、プリンタコントローラ120から転送されるラスターデータを印刷するために使用され、制御部142、原稿読み取り装置144、印刷装置146、記憶装置148、操作部150およびエンジンインターフェース152を有し、これらは、バス154を経由して相互に接続されている。
【0036】
制御部142は、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ等から構成される制御回路であり、プリントエンジン140の各機能は、それに対応するプログラムを制御部142が実行することにより発揮される。
【0037】
原稿読み取り装置144は、原稿画像から画像データを生成するためのCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを備えているスキャナからなり、ADF(自動原稿搬送装置:Auto Document Feeder)を有する。ADFは、単数もしくは複数枚の原稿を、一枚ずつ所定の読み取り位置に搬送するために使用される。
【0038】
印刷装置146は、帯電、露光、現像、転写および定着工程を含む電子写真式プロセス等の作像プロセスを用いて、記録媒体である用紙上に画像を形成するエンジンを有しており、プリンタコントローラ120や原稿読み取り装置144からのデータを、印刷するために使用され、用紙を供給するための給紙トレイおよび手差しトレイを有する。
【0039】
記憶装置148は、各種プログラムおよび各種データを記憶するリードオンリーメモリ(ROM)から構成される読取り専用の記憶装置と、作業領域として一時的にプログラムおよびデータを記憶する高速のRAMから構成されるランダムアクセス記憶装置と、プリンタドライバやオペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを記憶する大容量記憶装置とが適宜組み合わされて構成されており、例えば、プリンタコントローラ120や原稿読み取り装置144からのデータを保存するために使用される。
【0040】
操作部150は、液晶タッチパネルおよびキーボードを有し、プリントジョブの進行状況やエラーの発生状況を表示すると共に、種々の操作(入力)が可能となるように構成されており、設定をユーザに提示するための出力手段と、ユーザ指示を取得するための入力手段とを兼ねている。キーボードは、コピー枚数等を設定するテンキー、動作の開始を指示するスタートキー、動作の停止を指示するストップキー等からなる複数のキーを有している。
【0041】
エンジンインターフェース152は、プリンタコントローラ120と通信するための専用インタフェース(VIF:ビデオインタフェース)であり、エンジンインターフェース130と接続される。
【0042】
次に、プリンタコントローラ120の動作を詳述する。
【0043】
図3は、図1に示される画像処理装置のプリンタコントローラに組み込まれたプログラムの構成およびデータフローを説明するための概略図、図4は、PostScriptの描画命令の一例を説明するための図表、図5および図6は、図3に示されるインタプリタ部に係る高解像度フレームおよび低解像度フレームを示している概略図、図7は、図3に示されるインタプリタ部に係る色数カウントテーブルの一例を説明するための図表である。
【0044】
プリンタコントローラ120に組み込まれているプログラムは、データ受信部、インタプリタ部、色変換部および画像転送部を有しており、HDD126に保存され、起動時にRAM124に展開されて実行される。
【0045】
データ受信部は、NIC128経由で受信したクライアント200,300からのPDLデータをRAM124に格納し、インタプリタ部に転送するモジュールである。インタプリタ部は、RAM124に確保された高解像度フレーム(第1フレーム)F(図5参照)および低解像度フレーム(第2フレーム)F(図6参照)を利用し、PDLデータに含まれるオブジェクトをラスターデータに展開するモジュールである。エンジン解像度と同一の解像度を有し、低解像度フレームは、エンジン解像度より低い解像度を有し、それぞれ、CMYK(シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、キー(Key))毎に4つのフレームから構成される。
【0046】
色変換部は、インタプリタ部による展開の際に、入力オブジェクト(受信したPDLデータのオブジェクト)の色空間を出力用の色空間に変換するためのモジュールである。例えば、入力オブジェクトの色は、RGB(赤(Red)、緑(Green)、青(Blue))、CMYK、Gray Scale等の色空間で指定されるが、プリントエンジン140のサポートする色空間はCMYKのみであるため、入力色空間からCMYKへの色変換を行う必要があるためである。画像転送部は、RAM124のフレームメモリに展開されたラスターデータを、エンジンインターフェース130を経由してプリントエンジン140に転送するモジュールである。尚、上記のフレームメモリとして、1頁分のデータを格納する容量を確保する形態、1頁を複数のバンドに分割した際の1バンド分のデータを格納する容量を確保する形態、の何れも取り得るが、本実施形態においては、前者を採用しているものとする。
【0047】
フレームとしての高解像度フレームと低解像度フレームの切り換えは、PDLデータの描画命令のコマンド、入力オブジェクトの解像度および入力オブジェクトに含まれる色数を考慮して、実行される。
【0048】
PDLデータの描画命令のコマンドは、PDLデータに含まれる入力オブジェクトの属性が、テキスト(Text)、グラフィックス(Graphics)あるいはイメージ(Image)であるか否かを判断するために使用される。
【0049】
PDLデータの描画命令は、通常、テキスト、グラフィックスおよびイメージ毎に異なる描画コマンドで記述される。例えば、図4に示されるように、描画コマンド「(text)show」は、テキストを描画するための命令であり、文字列の後のshowコマンドを受けて、インタプリタは、テキストを描画する。描画コマンド「10 10 100 100 rectfill」は、グラフィックスを描画するための命令であり、位置とサイズ指定の後に矩形を描画するためのコマンドが配置されている。描画コマンド「image 5152535455…」は、イメージを描画するための命令である。
【0050】
したがって、PDLデータの描画命令のコマンドを解析することによって、PDLデータに含まれる入力オブジェクトの属性を判断することができる。なお、入力オブジェクトの属性がテキストあるいはグラフィックスである場合、解像度が重視されるため、展開先として一義的に高解像度フレームが適用される。
【0051】
入力オブジェクトの解像度は、入力オブジェクトの属性がイメージである場合において、基準解像度より低い解像度を有するオブジェクトを決定し、当該オブジェクトの展開先として低解像度フレームを適用するために使用される。基準解像度は、本実施の形態においては、低解像度フレームの解像度と同一である。
【0052】
入力オブジェクトに含まれる色数は、入力オブジェクトの属性がイメージでありかつ基準解像度を超える解像度を有する場合において、閾値以下の色数を有する入力オブジェクトを線画画像と判断し、当該オブジェクトの展開先として高解像度フレームを適用し、閾値を超える色数を有する入力オブジェクトを写真画像と判断し、当該オブジェクトの展開先として低解像度フレームを適用するために使用される。低解像度フレームにおける展開時間は、高解像度フレームにおける展開時間に比較して短くなるため、写真画像と判断された入力オブジェクトの処理が、高速化される。また、写真画像は、線画/図形画像に比較して低解像度であったとしても画質の劣化が目立たないため、合成して得られる画像の画質を実質的に確保することができる。つまり、画質を確保しながらRIP処理の高速化を図ることができる。
【0053】
入力オブジェクトに含まれる色数は、色数カウントテーブルを利用して管理される。色数カウントテーブルは、図7に示されるように、入力オブジェクトのC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびK(キー)の色値が格納される欄を有する。そして、C、M、YおよびKの色値の全てが同一である場合は登録済みの色と同じであると判断され、それ以外の場合は異なる新たな色と判断され、当該色の色値が、数カウントテーブルに登録される。本実施の形態においては、色数の閾値として「5」が設定されており、例えば、色数が閾値以下の場合、高解像度フレームが設定され、色数が閾値を超える場合、低解像度フレームが設定される。なお、色数の閾値は、「5」に限定されない。また、入力オブジェクトがR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の色空間で表現される場合、色数カウントテーブルは、R,G,及びBの色値を格納するものとすれば良く、入力オブジェクトがグレースケールで表現される場合、色数カウントテーブルは、グレースケールの階調値を格納するものとすれば良い。そして、入力オブジェクトの色表現種別に応じてこれら色数カウントテーブルを適宜切り替えて使用することとすればよい。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係る画像処理方法を説明する。
【0055】
図8は、本発明の実施形態に係る画像処理方法を説明するためのフローチャート、図9は、図8に示される合成工程を説明するための概略図である。なお、図8に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、HDD126にプログラムとして記憶されており、CPU122によって実行される。
【0056】
本発明の実施形態に係る画像処理方法は、図8に示されるように、PDL受信工程、フレーム決定および展開工程、合成工程、転送工程および印刷工程を有する。
【0057】
PDL受信工程においては、NIC128経由で受信したクライアント200,300からのPDLデータが、RAM124の所定領域に格納される。
【0058】
フレーム決定および展開工程においては、入力オブジェクトの属性、入力オブジェクトの解像度および入力オブジェクトに含まれる色数を考慮して、展開先の出力フレームとして低解像度フレームか高解像度フレームかが決定される。そして、この決定に応じて入力オブジェクトは、低解像度或いは高解像度でラスターデータに展開され、RAM124に確保された低解像度フレーム領域或いは高解像度フレーム領域に展開される。
【0059】
合成工程においては、図9に示されるように、ラスターデータに展開後の低解像度フレームFと高解像度フレームFとが合成される。詳しくは、まず、RAM124に格納される高解像度フレームFが、画像転送部によって、転送用バッファ132に転送される。次に、RAM124に格納される低解像度フレームFが、転送用バッファ132に転送される。その際、低解像度フレームFの拡大処理が実行される。例えば、高解像度フレームFの解像度が、低解像度フレームFの解像度の2倍の場合、低解像度フレームFの画像を2倍に拡大する。そして、低解像度フレームFは、転送用バッファ132に格納されている高解像度フレームFと合成される。
【0060】
転送工程においては、得られた合成画像のラスターデータが転送用バッファ132に一旦格納された後で、エンジンインターフェース130,152を経由して、順次、プリントエンジン140へ転送される。
【0061】
印刷工程においては、プリンタコントローラ120から転送された合成画像のラスターデータが、プリントエンジン140の印刷装置146によって、用紙に印刷される。
【0062】
次に、フレーム決定および展開工程を詳述する。
【0063】
図10は、図8に示されるフレーム決定および展開工程を説明するためのフローチャート、図11は、図9に示される色数判断ルーチンを説明するためのフローチャート、図12は、色数が1である場合の色数カウントテーブルを示している図表、図13は、色数が閾値を超えた場合の色数カウントテーブルを示している図表である。なお、図10および図11に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、HDD126にプログラムとして記憶されており、CPU122によって実行される。
【0064】
フレーム決定および展開工程においては、まず、入力オブジェクト(受信したPDLデータのオブジェクト)の属性が、PDLデータの描画命令のコマンドに基づき、テキスト/グラフィックスであるか否かが判断される(ステップS10)。入力オブジェクトがテキスト/グラフィックスである場合(ステップS10のYES)、高解像度フレームが出力フレームとして決定され、入力オブジェクトが高解像度でラスタライズされて高解像度フレームに展開される(ステップS11)。
【0065】
入力オブジェクトの属性がイメージである場合(ステップS10のNO)、入力オブジェクトの解像度が、基準解像度以下であるか否かが判断される(ステップS12)。入力オブジェクトの解像度が基準解像度以下である場合(ステップS12のYES)、低解像度フレームが出力フレームとして決定され、入力オブジェクトが低解像度でラスタライズされて低解像度フレームに展開される(ステップS13)。
【0066】
入力オブジェクトの解像度が基準解像度を超えている場合(ステップS12のNO)、色数判断ルーチン(ステップS14)が実行される。
【0067】
色数判断ルーチンにおいては、図11に示されるように、まず、最初の画素(1画素目)の色値が色数カウントテーブル(図7参照)に格納される(ステップS100)。そして、全ての画素の検査が終了したか否かが判断される(ステップS101)。全ての画素の検査が終了している場合(ステップS101のYES)、高解像度フレームが出力フレームとして決定され、入力オブジェクトが高解像度でラスタライズされて高解像度フレームに展開される(ステップS106)。
【0068】
次の画素が存在する場合(ステップS101のNO)、次の画素の色値が、色数カウントテーブルに存在しているか否かが判断される(ステップS102)。次の画素の色値が色数カウントテーブルに存在している場合(ステップS102のYES)、プロセスは、ステップS101にリターンする。
【0069】
次の画素の色値が色数カウントテーブルに存在していない場合(ステップS102のNO)、当該色値が、色数カウントテーブルに追加登録される(ステップS103)。
【0070】
そして、色数カウントテーブルに登録されている色数が、閾値を超えているか否かが判断される(ステップS104)。色数カウントテーブルに登録されている色数が閾値以下である場合(ステップS104のNO)、プロセスは、ステップS101にリターンする。色数カウントテーブルに登録されている色数が閾値を超えている場合(ステップS104のYES)、低解像度フレームが出力フレームとして決定され、入力オブジェクトが低解像度でラスタライズされて低解像度フレームに展開される(ステップS105)。
【0071】
例えば、閾値が「5」に設定されている場合、色数カウントテーブルに色値が1つしか含まれないと(図12参照)、入力オブジェクトは線画/図形画像と判断され、高解像度フレームが出力フレームとして決定される。また、色数カウントテーブルに色値が6つ含まれると(図13参照)、それ以降の色数カウントテーブルとの比較は行われず、入力オブジェクトは写真画像と判断され、低解像度フレームが出力フレームとして決定される。したがって、上述のように、低解像度フレームにおける展開時間は、高解像度フレームにおける展開時間に比較して短くなるため、写真画像と判断された入力オブジェクトの処理が、高速化され、また、写真画像は、線画/図形画像に比較して低解像度であったとしても画質の劣化が目立たないため、合成して得られる画像の画質を確保することができる。
【0072】
なお、色変換部において入力オブジェクトの色空間を出力用の色空間に変換する際、入力オブジェクトについて1画素ずつ色変換が実行される。そのため、前記色数判断は、その際、色数のカウントを行うことが好ましい。
【0073】
以上のように、本実施の形態において、入力オブジェクトの属性がイメージであり、入力オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、入力オブジェクトに含まれる色数が閾値以下である場合、入力オブジェクトが線画/図形画像であると判断されて、高解像度フレーム(第1フレーム)が出力フレームとして決定されるため、解像度が重視される線画/図形画像の画質の劣化が抑制される。一方、入力オブジェクトの属性がイメージであり、入力オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、入力オブジェクトに含まれる色数が閾値を超えている場合、入力オブジェクトが写真画像であると判断されて、低解像度フレーム(第2フレーム)が出力フレームとして決定される。低解像度フレームにおける展開時間は、高解像度フレームにおける展開時間に比較して短くなるため、写真画像と判断された入力オブジェクトの処理が、高速化される。また、写真画像は、線画/図形画像に比較して低解像度であったとしても画質の劣化が目立たないため、線画/図形画像であると判断された入力オブジェクトを高解像度フレームに展開したデータと、写真画像と判断された入力オブジェクトを低解像度フレームに展開したデータとを合成して得られる画像の画質を確保することができる。つまり、画質を確保しながらRIP処理の高速化が可能である画像処理装置および画像処理方法を提供することが可能である。
【0074】
なお、フレーム決定および展開工程のステップS12において適用される解像度の判定に適用される基準解像度は、低解像度フレームの解像度と同一としたが、高解像度フレーム未満かつ低解像度フレームの解像度を超える値に設定することも可能である。例えば、基準解像度を、高解像度フレームの解像度と同一であるエンジン解像度と一致させ、入力オブジェクトの解像度がエンジン解像度未満である場合には低解像度フレームを出力フレームとして決定し、入力オブジェクトを低解像度フレームに展開することも可能である。この場合、エンジン解像度と、低解像度フレームの解像度との間に位置する解像度を持つ入力オブジェクトの場合、展開時に画像劣化が生じる可能性があるが、低解像度で処理されるため処理を高速化できるメリットを有する。
【0075】
基準解像度は、固定せずにプリントの印刷速度を切り替えるモードに応じて変更することも可能である。例えば、判定の基準となる解像度として、通常モードの場合には低解像度を設定し、高速モードの場合には高解像度に設定することも可能である。この場合、高速モードでは、画質が劣化する箇所(オブジェクト)が増えるが高速処理が可能となる。
【0076】
また、プリントエンジンの出力解像度が複数存在する場合、出力解像度に合わせて低解像度フレーム(第2フレーム)の解像度を適宜決定することも可能である。
【0077】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、画像処理装置は、MFP、プリンタ等の画像形成装置に内蔵された形態に限定されず、画像形成装置に接続されたパーソナルコンピュータとして構成されていてもよい。
【0078】
なお、本発明に係る手段、方法およびプログラムは、専用のハードウェア回路によっても実現することも可能である。また、プログラムされたコンピュータ装置によって本発明を実現する場合、コンピュータ装置を動作させるプログラムは、フロッピーディスクやCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供したり、記録媒体によらず、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供したりすることも可能である。この場合、プログラムは、通常、コンピュータ装置のハードディスク等のランダムアクセス記憶装置に転送されて記憶される。また、プログラムは、単独のアプリケーションソフトウェアとして提供されてもよいし、コンピュータ装置の一機能としてそのコンピュータ装置のソフトウェアに組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 画像処理装置、
120 プリンタコントローラ、
122 CPU、
124 RAM、
126 HDD、
128 NIC、
130 エンジンインターフェース、
132 転送用バッファ、
134 バス、
140 プリントエンジン、
142 制御部、
144 原稿読み取り装置、
146 印刷装置、
148 記憶装置、
150 操作部、
152 エンジンインターフェース、
154 バス、
200,300 クライアント、
400 ネットワーク、
高解像度フレーム、
低解像度フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDLデータをRIP処理する画像処理装置であって、
前記PDLデータに含まれるオブジェクトが展開される出力フレームとして、第1フレームか、前記第1フレームの解像度より低い解像度を有する第2フレームかを決定するインタプリタ部を有しており、
前記インタプリタ部は、
前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値以下である場合、前記第1フレームを出力フレームとして決定し、
前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値を超えている場合、前記第2フレームを出力フレームとして決定し、
前記基準解像度は、前記第1フレームの解像度未満かつ前記第2フレームの解像度以上である
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記オブジェクトの色空間を出力用の色空間に変換する色変換部をさらに有し、前記オブジェクトに含まれる色数は、前記色変換部による変換の際にカウントされることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1フレームに展開されたラスターデータと、前記第2フレームに展開されたラスターデータとを合成して得られる画像データを、印刷するプリントエンジンをさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1フレームの解像度は、前記プリントエンジンの解像度と同一であることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記基準解像度は、前記第2フレームの解像度と同一であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
ネットワークを経由して接続されるクライアントから転送されるPDLデータを受信するデータ受信部をさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
PDLデータをRIP処理する画像処理方法であって、
前記PDLデータに含まれるオブジェクトが展開される出力フレームとして、第1フレームか、前記第1フレームの解像度より低い解像度を有する第2フレームかを決定するステップを有しており、
前記ステップにおいては、
前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値以下である場合、前記第1フレームが出力フレームとして決定し、
前記オブジェクトの属性がイメージであり、前記オブジェクトの解像度が基準解像度を超えており、かつ、前記オブジェクトに含まれる色数が閾値を超えている場合、前記第2フレームが出力フレームとして決定し、
前記基準解像度は、前記第1フレームの解像度未満かつ前記第2フレームの解像度以上である
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
前記オブジェクトの色空間を出力用の色空間に変換する色変換ステップをさらに有し、前記オブジェクトに含まれる色数は、前記色変換ステップによる変換の際にカウントされることを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記第1フレームに展開されたラスターデータと、前記第2フレームに展開されたラスターデータとを合成して得られる画像データを、プリントエンジンによって印刷する印刷ステップをさらに有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記第1フレームの解像度は、前記プリントエンジンの解像度と同一であることを特徴とする請求項9に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記基準解像度は、前記第2フレームの解像度と同一であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項12】
ネットワークを経由して接続されるクライアントから転送されるPDLデータを受信するデータ受信ステップをさらに有することを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−121275(P2011−121275A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280728(P2009−280728)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】