説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】背景領域との濃度差が小さく、線領域の幅が数ドットしかない、低濃度の細線の途切れを緩和し、細線の再現性を向上する画像処理装置および画像処理方法を提供する。
【解決手段】記録媒体116上に記録材のドットからなる画像を形成する画像形成装置1において、入力されたデータをM(Mは1以上の整数)値化する第1のハーフトーン処理手段、画像形成装置1が備えた記録材の色へ色分解する色分解処理手段、前記色分解処理により算出された各色材値をN(Nは1以上の整数)値化する第2のハーフトーン処理手段、前記2つハーフトーン処理の組み合わせを選択するハーフトーン処理組み合わせ選択手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力画像の階調数より少ない階調への階調変換を行い出力画像データを作成する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタなどの記録装置において、多値の入力画像データを記録媒体上に形成されるドットの記録信号にあたるN値データ(Nは1以上の整数で入力画像の階調数より小さい)に変換する方法として、誤差拡散法が広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-125856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の誤差拡散方法では、誤差拡散処理への入力値が小さい場合、ドットの生成遅延が発生しやすい。これにより、背景領域との濃度差が小さく、線領域の幅が数ドットしかない低濃度の細線が途切れるあるいは消失するという問題があった。
【0005】
この問題に対し、特許文献1においては、入力データを語差拡散法を用いてN値化する際の誤差データあるいはN値化平均誤差データに基づいて入力データを補正する方法を提案している。誤差データに基づく誤差拡散が十分でないときは、N値化平均誤差データを用いて誤差拡散が行われる。
【0006】
しかしながら、上述の方法では、誤差拡散が十分か否かの判定処理を実施するためハーフトーン処理の回路が複雑化し処理が増大する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、入力されたデータをM(Mは1以上の整数)値化する第1のハーフトーン処理手段、画像形成装置が備えた記録材の色へ色分解する色分解処理手段、前記色分解処理により算出された各色材値をN(Nは1以上の整数)値化する第2のハーフトーン処理手段、前記2つハーフトーン処理の組み合わせを選択するハーフトーン処理組み合わせ選択手段を有し、前記第1のハーフトーン処理手段は、入力の階調特性に対する出力特性がより線形なデータに対してハーフトーン処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、背景領域との濃度差が小さく、線領域の幅が数ドットしかない、低濃度の細線の途切れを緩和し、細線の再現性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施例の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施例の画像処理装置における処理を示すフローチャートである。
【図3】印刷条件をユーザーが選択するUIである。
【図4】各ハーフトーン処理と色分解処理におけるデータの流れを示す図である。
【図5】入力データの階調特性とインク量の関係を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施例の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図7】第2実施例の画像処理装置における処理を示すフローチャートである。
【図8】誤差拡散処理回路を示す図である。
【図9】本実施例で低濃度の細い線の途切れが緩和される結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本発明を好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
[実施例1]
図1は、本発明の画像処理の構成を示す図である。画像形成装置1はプリンタインタフェースまたはネットワークインタフェースにより印刷装置11に接続されている。図1において、101はデータ入力端子であり、102は入力データを格納するバッファである。
【0012】
実施例1において、102に格納される入力データは画像データと印刷条件に関する情報である。ここで、印刷条件とは、図3に示されるようなプリンタドライバのUI上で、ユーザが指定する「301出力メディアの種類」や「302優先画質(印刷用途)」等を示す。103はハーフトーン処理組み合わせ選択部である。104はハーフトーン処理部1、107はハーフトーン処理部2で、本実施例では各処理部に入力されたデータに対して誤差拡散によりハーフトーン処理を実行する。106は色分解処理部で色分解用LUT105を参照して色分解処理を行う。なお、本実子例では、1つ以上の色分解LUTを保持している。
【0013】
108はハーフトーン処理後のハーフトーン画像データを格納するバッファである。109は一連の処理後に形成された印字データを印刷装置11に出力する出力端子である。印刷装置11は、記録ヘッド113を記録媒体116に対して相対的に縦横に移動することにより、記録媒体116上に画像を形成する。記録ヘッドは一つ以上のノズルから構成され、各ノズルからインクを吐出して記録媒体116上にドットを形成する。114は記録ヘッドを移動するための移動部である、ヘッド制御部112によって制御されている。
【0014】
115は記録媒体を搬送する搬送部である。111はインク色および吐出量選択部であり、画像処理装置1により形成され、ハーフトーン画像格納バッファ110に読み込まれた画像データの出力量に対応して、記録ヘッド113に搭載されるインク色と記録ヘッド113が吐出可能なインク吐出量の中から、インク色と吐出量を選択する。ただし、本実施例では、画像処理装置1と印刷装置11を任意のインターフェースで接続する構成を示したが、これに限らず、印刷装置内に画像処理装置1の回路構成と同じ構成を持つ画像処理モジュールを搭載する構成を用いてもよい。
【0015】
図2に示すフローチャートを用いて本発明にかかる動作を説明する。まず多階調のカラー入力画像データと印刷条件が入力端子101により入力され、入力データバッファ102に格納される(ステップS101)。次に、ユーザーが設定した「302優先画質(印刷用途)にしたがって103ハーフトーン処理組み合わせ選択部で、ハーフトーン処理の組み合わせを選択する(ステップS102)。例えば、図3にしめすように「302優先画質(印刷用途)」で、CADの図面のような主に線で構成された入力でーーたを出力する用途として、「線画」が選択された場合には、入力データ多階調データは104のハーフトーン処理部1でM値化(Mは1以上の整数)され(ステップS103)、M値データは106の色分解処理部に渡される。
【0016】
次に、ステップS104で色分解LUT105を用いた色分解処理が実施され、ハーフトーン画像データとして108のバッファに格納される(ステップS110)。一方、図3に示すUIで「302優先画質(印刷用途)」として、「線画・イラスト」が選択された場合には、まず、104ハーフトーン処理部1でM値化(Mは1以上の整数)を行い(ステップS105)、色分解LUT105を用いた色分解処理(ステップS106)され、107ハーフトーン処理部2において色分解後のデータに対してN値化(Nは1以上の整数)され(ステップS107)、ハーフトーン画像データとして108のバッファに格納される(ステップS110)。さらに、図3のUIで「302優先画質(印刷用途)」として、「写真」が選択された場合には、入力画像データは色分解LUT105を用いた色分解処理(ステップS108)され、107ハーフトーン処理部2において色分解後のデータに対してN値化(Nは1以上の整数)され(ステップS109)、ハーフトーン画像データとして108のバッファに格納される(ステップS110)。
【0017】
図4および図5を用いて、ハーフトーン処理組み合わせ選択処理(ステップS102)以降の処理におけるデータの流れおよび、線画に対して前述する処理フローを実施することで、低濃度の細い線の途切れを緩和することが可能となるかを説明する。
【0018】
図4では、前述した組み合わせフローにおける、各処理部の入出力の関係とデータの流れを示した図である。本実施例において、入力データRGBは8ビット(0−255)は、ユーザーが指定した「優先画質(印刷用途)」により図4(a)(b)(c)のいずれかのフローで処理され各色(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック)毎のハーフトーン画像データが生成される。なお、一般的なインクジェットプリンタのような2値記録値記録法により階調を表現する出力装置では、図4(b)に示すような画像形成フローが実現されている。図4(b)では入力RGB(8ビット)で示される各画素値を、色分解LUTを用いて次式の通りCMYKのインク値(8ビット)に変換される。
【0019】
C=C_LUT_3D(R,G,B) (1)
M=M_LUT_3D(R,G,B) (2)
Y=Y_LUT_3D(R,G,B) (3)
K=K_LUT_3D(R,G,B) (4)
ここで、式(1)から(4)の右辺に定義される各関数が色分解LUT105に該当する。色分解LUTはR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3入力値から、各インク色へのインク色への出力値が定まり、ハーフトーン処理において量子化される。
【0020】
図5に、入力値Rが0から255をとった場合に、色分解処理によって、CMYK各インク量がどのような値をとるか示す。図5では横軸に入力値Rのデジタルカウント値(0:白−255:赤)、縦軸にインク量(0−255)を取る。図5に示すように、一般的なプリンタで使用されるような色材は着弾した紙面上で光学的ドットゲインが発生する影響で、入力階調との関係が非線形になる。これにより、低濃度の線を表現する場合には、色分解処理後の各色のインク量は302の領域で示すように小さい値となりハーフトーン処理に入力される値も小さくなる。よって、ドットの生成遅延が発生しやすくなり、低濃度の細い線が途切れやすくなる。
【0021】
一方、本実施例で「優先画質(印刷用途)」で「線画」が選択された場合には、図4(a)のフローで各処理が実施される。ハーフトーン処理部1に入力される値は入力のRGBであるため、図5で示したように、低濃度の細線のハーフトーン処理への入力値が小さくなることはないので、線の途切れや消失が発生を緩和することができる。
【0022】
さらに図9を用いて、図4(a)のフローにより、図4(b)の処理フローと比較して、入力画像の低濃度の細い線の途切れが緩和される理由について述べる。なお、図9(a)は入力多値画像、図9(b)(c)はハーフトーン処理後の2値画像であり、図9(b)はシアンプレーン、図9(c)はRプレーンの2画像を示す。まず、ハーフトーン処理と色分解処理の順番が図4(b)のフローを取る場合を説明する。図4(b)のフローにおいて、入力画像内の細い線の画素値のR成分(簡単化のためにR成分のみを持つ画像とする)が図5に示すa_inの時(図9(a)の画像)、色分解LUTにより、シアンのインク値C2および、マゼンタのインク量M2はa_outに変換され、ハーフトーン処理部に入力される。図5から明らかなように、a_outは微小な値のため、ハーフトーン処理で実施される誤差拡散処理の入力値が小さくなり、誤差の伝播によるドットの生成遅延が発生する。その結果、入力画像における低濃度の細い線は、図9(b)に示すように、途切れやすくなる。
【0023】
対して、ハーフトーン処理と色分解処理の順番が図4(a)のフローを取る場合、入力画像内の細い線の画素値のR成分が図5のa_inの時、ハーフトーン処理部に入力されるRの信号値R’は図5のa_Rとなる。ハーフトーン処理に入力されるR成分R’=a_Rは前述したシアン、マゼンタのインク量a_outと比較すると大きな値となるため、誤差の伝播によるドットの生成遅延が発生しにくくなる。その結果、図9(c)に示すように、低濃度の細い線の途切れが緩和される。
【0024】
また、本実施例においては、ハーフトーン処理を行うモジュールが2つ存在するが、各ハーフトーン処理部におけるハーフトーン処理は、いずれも図8のブロック図で示されるような誤差拡散処理で実現されるため、実施には2つのモジュールを構成する必要はない。前述した組み合わせのフローによって、誤差拡散処理の回路に対する入力値や、使用する誤差拡散係数405や量子化閾値401が異なるのみである。よって、誤差拡散処理の回路が複雑化することなく、簡単な構成で実現することが可能である。
[実施例2]
次に、本発明の実施形態2を説明する。図6は第2の実施例の画像処理の構成を示す図、図7は処理の流れを示すフローチャートである。これは、入力データ解析部203を持ち入力データを解析して、204ハーフトーン処理組み合わせ選択部でハーフトーン処理の組み合わせを選択するための情報を得る。205ハーフトーン処理部1以降の構成は第1の実施形態と同様であるので省略する。入力データ解析部203では、例えば、入力データに含まれ、任意のアプリケーションで指定される「線」を示すオブジェクト数をカウントした合計値T_lineと全オブジェクト(例えば「グラフィックス」「文字」等)の総数Tallをハーフトーン処理組み合わせ部204に渡す(ステップS202)。ハーフトーン処理組み合わせ部204では、全オブジェクトの総数T_allに対する線オブジェクト数T_lineの割合との任意の閾値Th1およびTh2を比較して、ハーフトーン処理の組み合わせを選択する(ステップS203)。
【0025】
なお、本実施例における閾値Th1は0.5以上、1.0以下の実数で、Th2は0以上0.5より小さい実数とする。例えば、全オブジェクトの総数T_allに対する線オブジェクト数T_lineの割合T_line/T_allがTh1以上の場合、つまり線オブジェクトの割合が全オブジェクト数の半分以上である場合には、入力画像は線画であると判断し、ハーフトーン処理1(ステップS204)、色分解処理(ステップS205)を順に実施して、ハーフトーン画像を生成し、209ハーフトーン画像格納バッファにハーフトーン画像を格納する(ステップS211)。
【0026】
また、図7に示すように、T_line/T_allがTh1よい小さく閾値Th2より大きい場合には、入力画像データに対して、ハーフトーン処理1(Sステップ206)、色分解処理(ステップS207)、ハーフトーン処理2(ステップS208)を順に実施しハーフトーン画像を作成する。さらに、全オブジェクトの総数に対する線オブジェクト数の割合T_line/T_allが閾値Th2より小さい場合には、入力データに「線」がほとんど含まれないと判断し、入力画像データに対して、色分解処理(ステップS209)、ハーフトーン処理2(ステップS210)を順に実施しハーフトーン画像を作成する。
【0027】
なお、入力データ解析によって得られ、ハーフトーン組み合わせ選択に利用される情報はこれに限らず、例えば、線オブジェクト総数のみを取得し選択に利用する方法や、写真を示すような「イメージ」オブジェクト総数のみを取得し選択に利用する方法などが挙げられる。ただし、入力データに線が多く含まれる場合には、入力画像データをハーフトーン処理1、色分解処理の順に処理し、入力データに階調性を重視する写真等のイメージが多く含まれる場合には、入力画像データを、色分解処理、ハーフトーン処理2の順に処理するように判定のための閾値を設定することが望ましい。
【符号の説明】
【0028】
1 画像形成装置
101 画像データ入力端子
102 入力データ格納バッファ
103 ハーフトーン処理組み合わせ選択部
104 ハーフトーン処理部1
105 色分解用LUT
106 色分解処理部
107 ハーフトーン処理部2
108 ハーフトーン画像格バッファ
109 画像データ出力端子
11 印刷装置
110 ハーフトーン格納バッファ
111 インク色及び吐出量選択部
112 ヘッド制御部
113 記録ヘッド
114 移動部
115 搬送部
116 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に記録材のドットから形成さる画像データを作成する画像処理装置において、入力されたデータをM(Mは1以上の整数)値化する第1のハーフトーン処理手段、画像形成装置が備えた記録材の色へ色分解する色分解処理手段、前記色分解処理により算出された各色材値をN(Nは1以上の整数)値化する第2のハーフトーン処理手段、前記2つハーフトーン処理の組み合わせを選択するハーフトーン処理組み合わせ選択手段を有し、前記第1のハーフトーン処理手段は、入力の階調特性に対する出力特性がより線形なデータに対してハーフトーン処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ハーフトーン処理組み合わせ選択手段は、出力用途によって、前記第1のハーフトーン処理手段と、前記第2のハーフトーン処理手段の組み合わせを選択することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ハーフトーン処理組み合わせ選択手段は、入力データによって、前記第1のハーフトーン処理手段と、前記第2のハーフトーン処理手段の組み合わせを選択することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
記録媒体上に記録する画像データを作成する画像処理方法において、入力されたデータをM(Mは1以上の整数)値化する第1のハーフトーン処理工程、画像形成装置が備えた記録材の色へ色分解する色分解処理工程、前記色分解処理により算出された各色材値をN(Nは1以上の整数)値化する第2のハーフトーン処理工程、前記2つハーフトーン処理の組み合わせを選択するハーフトーン処理組み合わせ選択工程を有し、前記第1のハーフトーン処理工程は、入力の階調特性に対する出力特性がより線形なデータに対してハーフトーン処理を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
前記ハーフトーン処理組み合わせ選択工程は、出力用途によって、前記第1のハーフトーン処理工程と、前記第2のハーフトーン処理工程の組み合わせを選択することを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記ハーフトーン処理組み合わせ選択工程は、入力データによって、前記第1のハーフトーン処理工程と、前記第2のハーフトーン処理工程の組み合わせを選択することを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−38733(P2013−38733A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175513(P2011−175513)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】