説明

画像処理装置及びプログラム

【課題】超音波画像と、超音波診断装置とは異なる種類の医用画像診断装置により撮影された医用画像との位置合わせを精度良く行なうこと。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置が有する画像処理部17は、擬似超音波画像生成部17bと、指標算出部17cと、位置合わせ部17dとを備える。擬似超音波画像生成部17bは、超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像内に描出された各組織の物理的特性と、音源情報とに基づいて、当該3次元医用画像を擬似的に超音波画像に変換した擬似超音波画像を生成する。指標算出部17cは、擬似超音波画像と超音波画像との類似性を表す指標を算出する。位置合わせ部17dは、擬似超音波画像生成処理及び指標算出処理を、音源情報を変更することで繰り返して実行させ、指標が最適となった擬似超音波画像の3次元医用画像における位置に基づいて、位置合わせを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2次元や3次元の医用画像間の位置合わせは、一般的に、輝度差(Intensity difference)、相互相関係数(Correlation coefficient)、画像均一比(Ratio image uniformity)、相互情報量(Mutual Information)などの指標を算出することで行なわれている。
【0003】
ここで、輝度差や相互相関係数は、算出速度が速いものの、異なる種類の医用画像間(マルチモダリティの画像間)での位置合わせに適用すると、医用画像間のコントラストが非常に異なることで、位置合わせの精度が悪くなる場合がある。このため、輝度差や相互相関係数は、同一種類の医用画像間での位置合わせに用いられることが多い。一方、画像均一比と相互情報量とは、コントラストが非常に異なる医用画像間でも、位置合わせの精度を保てるため、マルチモダリティの画像間での位置合わせに用いられることが多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「マルチモダリティの画像位置合わせと重ね合わせ」,日本放射線技術学会雑誌,2003, Vol.59,No.1, page1-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した従来の技術は、超音波画像と、超音波診断装置とは異なる種類の医用画像診断装置により撮影された医用画像との位置合わせの精度が必ずしも保証されない場合があった。すなわち、X線CT(Computed Tomography)画像は、被検体を透過したX線を検出して再構成される医用画像であり、MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像は、高周波磁場を印加することで被検体から発せられる磁気共鳴信号を検出して再構成される医用画像である。一方、超音波画像は、超音波プローブから送信した超音波が被検体内で反射された反射波を受信して生成される医用画像である。このため、超音波画像は、X線CT画像やMRI画像とは異なる特有の性質を有する。
【0006】
超音波画像に特有な性質としては、超音波画像中の組織境界付近に発生する多重反射アーチファクトや、例えば、骨などの組織で超音波が略全て反射されることで当該組織の後方に発生するシャドウなどがある。しかし、多重反射アーチファクトやシャドウなど超音波画像内に特有の輝度変化は、他のモダリティの画像に存在しない。このため、超音波画像と、超音波診断装置以外の医用画像診断装置により撮影された医用画像とが真に位置合わせされた状態で、例えば、相互情報量を算出しても、算出された相互情報量が低くなってしまい、最適な位置合わせが行なわれない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の画像処理装置は、擬似超音波画像生成部と、指標算出部と、位置合わせ部とを備える。擬似超音波画像生成部は、超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像内に描出された各組織の物理的特性と、当該3次元医用画像にて設定された超音波の仮想的送信位置、超音波の仮想的送信方向及び超音波の仮想的音源特性を含む音源情報とに基づいて、当該3次元医用画像を擬似的に超音波画像に変換した擬似超音波画像を生成する。指標算出部は、前記擬似超音波画像生成部により生成された前記擬似超音波画像と前記超音波画像との類似性を表す指標を算出する。位置合わせ部は、前記擬似超音波画像生成部による擬似超音波画像生成処理及び前記指標算出部による指標算出処理を、前記音源情報を変更することで繰り返して実行させ、前記超音波画像との指標が最適となった擬似超音波画像の前記3次元医用画像における位置に基づいて、前記超音波画像と前記3次元医用画像との位置合わせを行なう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る画像処理部の構成を説明するための図である。
【図3】図3は、画像処理部の位置合わせ対象となるデータの一例を説明するための図である。
【図4】図4は、分割部を説明するための図である。
【図5】図5は、擬似超音波画像生成部を説明するための図である。
【図6】図6は、位置合わせ部の処理を説明するための図(1)である。
【図7】図7は、位置合わせ部の処理を説明するための図(2)である。
【図8】図8は、3次元超音波画像に対する位置合わせ部の処理の一例を説明するための図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る画像処理部の構成を説明するための図である。
【図11】図11は、補正部を説明するための図(1)である。
【図12】図12は、補正部を説明するための図(2)である。
【図13】図13は、補正部を説明するための図(3)である。
【図14】図14は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の補正処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、画像処理装置の機能を有する超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。また、装置本体10は、ネットワーク100を介して外部装置4と接続される。
【0011】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0012】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
ここで、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波により被検体Pを2次元で走査する超音波プローブである場合であっても良いし、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能な超音波プローブである場合であっても良い。具体的には、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、被検体Pを2次元で走査する複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカルスキャンプローブであっても良い。あるいは、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の圧電振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2次元超音波プローブであっても良い。2次元超音波プローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査可能である。
【0014】
入力装置3は、後述するインターフェース部19を介して装置本体10と接続される。入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0015】
具体的には、第1の実施形態に係る入力装置3は、後述する画像処理部17の画像処理対象となる2つの画像の指定を操作者から受け付ける。より具体的には、入力装置3は、後述する画像処理部17が実行する位置合わせ処理の対象となる超音波画像及び超音波画像とは異なる種類の3次元医用画像の指定を操作者から受け付ける。
【0016】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像などを表示したりする。
【0017】
例えば、第1の実施形態に係るモニタ2は、後述する画像処理部17の処理を実行させるために操作者が参照するGUIや、後述する画像処理部17の処理結果を表示する。
【0018】
外部装置4は、後述するインターフェース部19を介して装置本体10と接続される装置である。例えば、外部装置4は、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)のデータベースや、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベースなどである。あるいは、外部装置4は、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などの各種医用画像診断装置である。
【0019】
すなわち、第1の実施形態に係る装置本体10は、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に則った画像フォーマットに統一された各種医用画像を、後述するインターフェース部19を介して外部装置4から取得することができる。具体的には、第1の実施形態に係る装置本体10は、インターフェース部19を介して、自装置が生成した超音波画像の位置合わせ対象となる医用画像であり、超音波画像とは異なる種類の医用画像を、インターフェース部19を介して外部装置4から取得することができる。より具体的には、装置本体10は、被検体Pの3次元X線CT画像や3次元MRI画像など、被検体Pの超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像を、インターフェース部19を介して外部装置4から取得することができる。
【0020】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。具体的には、第1の実施形態に係る装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、画像処理部17と、制御部18と、インターフェース部19とを有する。
【0021】
送受信部11は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0022】
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換してデジタルデータとし、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号(デジタルデータ)の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0023】
具体的には、A/D変換器は、超音波画像の撮影対象である被検体Pの体内組織の平均音速として予め設定された「C0」に基づいて、超音波走査面の集束点ごとに算出される受信遅延時間の分布を加算器に与える。そして、加算器は、A/D変換器から与えられた受信遅延時間の分布に基づいて、時間とともに集束点が連続的に深さ方向に移動するように遅延時間制御を行なうことで、集束された領域からの反射波信号の加算処理を行なう。かかる加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、平均音速は、操作者により撮影ごとに設定される場合であっても良いし、超音波診断装置の管理者により初期設定されている場合であっても良い。
【0024】
なお、送受信部11は、後述する制御部18の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。また、送受信部11は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。このように、送受信部11は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。
【0025】
また、送受信部11は、操作者からの指示に基づいて2次元の超音波画像が撮影される場合、超音波プローブ1から被検体Pに対して2次元の超音波ビームを送信させ、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信部11は、操作者からの指示に基づいて3次元の超音波画像が撮影される場合、超音波プローブ1から被検体Pに対して3次元の超音波ビームを送信させ、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0026】
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。すなわち、Bモード処理部12は、送受信部11から2次元の反射波データを受信した場合、2次元のBモードデータを生成し、送受信部11から3次元の反射波データを受信した場合、3次元のBモードデータを生成する。
【0027】
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。すなわち、ドプラ処理部13は、送受信部11から2次元の反射波データを受信した場合、2次元のドプラデータを生成し、送受信部11から3次元の反射波データを受信した場合、3次元のドプラデータを生成する。
【0028】
画像生成部14は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像を生成する。具体的には、画像処理部17は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)することで、Bモードデータやドプラデータから表示用画像としての超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した2次元のBモードデータから、2次元のBモード画像を生成し、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータから、3次元のBモード画像を生成する。
【0029】
また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのドプラ画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した2次元のドプラデータから、2次元のドプラ画像を生成し、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータから、3次元のドプラ画像を生成する。
【0030】
また、画像生成部14は、3次元のBモード画像や3次元のドプラ画像をモニタ2にて表示するための各種画像を生成することができる。具体的には、画像生成部14は、3次元のBモード画像や3次元のドプラ画像からMPR(Multi Planar Reconstructions)画像やレンダリング画像を生成することができる。また、画像生成部14は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマークなどを合成した合成画像を生成することもできる。
【0031】
画像メモリ15は、画像生成部14が生成した超音波画像を記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。また、画像メモリ15は、操作者からの指示により、必要に応じて、送受信部11が超音波プローブ1から受信した反射波信号を記憶することも可能である。
【0032】
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)、診断プロトコルや各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像の保管などにも使用される。
【0033】
さらに、内部記憶部16は、外部装置4から転送された各種医用画像の保管にも使用される。具体的には、内部記憶部16は、超音波画像の位置合わせ対象として操作者が指定することで、外部装置4から転送された3次元医用画像を記憶する。例えば、内部記憶部16は、3次元のX線CT画像や3次元のMRI画像など、超音波診断装置以外の医用画像診断装置により生成された3次元医用画像を記憶する。また、内部記憶部16が記憶するデータは、後述するインターフェース部19を経由して、外部の周辺装置(外部装置4)へ転送することができる。
【0034】
なお、第1の実施形態は、操作者が指定した3次元医用画像がFD(Flexible Disk Drive)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記憶媒体を介して、内部記憶部16に格納される場合であっても適用可能である。また、第1の実施形態は、操作者が指定した3次元医用画像を記憶する記憶装置が、内部記憶部16以外に設置される場合であっても適用可能である。
【0035】
画像処理部17は、画像メモリ15が記憶する超音波画像と内部記憶部16が記憶する超音波画像以外の医用画像(3次元医用画像)との位置合わせ処理を行なう。なお、画像処理部17が行なう位置合わせ処理については、後に詳述する。
【0036】
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14及び画像処理部17の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ15が記憶する超音波画像や、内部記憶部16が記憶する各種画像、又は、画像処理部17による位置合わせ処理を行なうためのGUI、画像処理部17の処理結果などをモニタ2にて表示するように制御する。また、制御部18は、操作者が入力装置3を介して指定した3次元医用画像が外部装置4からネットワーク100及びインターフェース部19を介して内部記憶部16に転送されるように、制御する。
【0037】
インターフェース部19は、入力装置3、ネットワーク100及び外部装置4に対するインターフェースである。入力装置3が受け付けた操作者からの各種設定情報及び各種指示は、インターフェース部19により、制御部18に転送される。また、入力装置3が操作者から受け付けた画像データの転送要求は、インターフェース部19により、ネットワーク100を介して外部装置4に通知される。また、外部装置4が転送した画像データは、インターフェース部19により、内部記憶部16に格納される。
【0038】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波画像を生成する。そして、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波画像と超音波診断装置とは異なる種類の医用画像診断装置により撮影された医用画像(3次元医用画像)との位置合わせを行なう。
【0039】
ここで、従来、マルチモダリティの画像間での位置合わせには、コントラストが非常に異なる医用画像間でも位置合わせの精度が保てることから、輝度差や相互相関係数が用いられていた。例えば、従来では、3次元X線CT画像の位置や角度を換えながら超音波画像と相互情報量を順次算出し、相互情報量が最適となった位置及び角度に基づいて、位置合わせを行なっていた。しかし、超音波画像には、多重反射アーチファクトや、シャドウなど、X線CT画像やMRI画像には見られない特有の性質を有する。このため、超音波画像と、超音波診断装置以外の医用画像診断装置により撮影された医用画像とが真に位置合わせされた状態で、例えば、相互情報量を算出しても、算出された相互情報量が最適とならない場合があった。
【0040】
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波画像と、超音波診断装置とは異なる種類の医用画像診断装置により撮影された医用画像との位置合わせを精度良く行なうため、以下に詳細に説明する画像処理部17の処理を行なう。図2は、第1の実施形態に係る画像処理部の構成を説明するための図である。第1の実施形態に係る画像処理部17は、図2に示すように、分割部17a、擬似超音波画像生成部17b、指標算出部17c及び位置合わせ部17dを有する。
【0041】
まず、操作者から入力装置3を介して位置合わせ対象となる超音波画像が指定され、さらに、3次元医用画像が指定されることで、制御部18は、位置合わせ要求を画像処理部17に転送する。図3は、画像処理部の位置合わせ対象となるデータの一例を説明するための図である。
【0042】
画像処理部17の位置合わせ対象となるデータは、図3に示すように、例えば、画像メモリ15が記憶する2次元超音波画像と内部記憶部16が記憶する3次元X線CT画像である。ここで、操作者は、2つの画像を指定して位置合わせ要求を行なう場合、さらに、複数の音源情報も指定する。なお、音源情報については、後に詳述する。
【0043】
なお、以下では、3次元医用画像と位置合わせを行なう超音波画像が2次元超音波画像である場合について説明するが、本実施形態は、3次元医用画像と位置合わせを行なう超音波画像が3次元の超音波画像である場合でも適用可能である。また、以下では、超音波画像と位置合わせを行なう3次元医用画像が3次元X線CT画像である場合について説明するが、本実施形態は、超音波画像と位置合わせを行なう3次元医用画像が3次元MRI画像などである場合でも適用可能である。
【0044】
位置合わせ要求を受け付けると、図2に示す分割部17aは、超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像を構成する各画素の輝度値に基づいて、個々の領域が同一の物理的特性を有する複数の領域に当該3次元医用画像を分割する。換言すると、分割部17aは、超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像内に描出された各組織を、同一の物理的特性を有する領域として分割する。
【0045】
図3に示す一例のように、超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像が3次元X線CT画像である場合、分割部17aは、3次元X線CT画像を構成する各画素の輝度値に相当するCT値(単位:HU)に基づいて、当該3次元X線CT画像を複数の領域に分割する。ここで、X線CT画像は、物質ごとに異なるX線の減衰率の特性をCT値で表した医用画像である。具体的には、X線CT画像は、空気の減衰率(CT値)を「−1000HU」とし、水の減衰率(CT値)を「0HU」として、その他の成分の減衰率(CT値)を、空気の減衰率と水の減衰率とを用いて規格化することで、組織形態を描出する医用画像である。
【0046】
例えば、脂肪のCT値は、「−50HU〜−100HU」となり、筋肉は、「+10HU〜+40HU」となる。また、例えば、肝臓のCT値は、「+40HU〜+60HU」となり、腎臓のCT値は、略「+30HU」となり、骨のCT値は、略「+400HU以上」となる。このように、X線CT画像を構成する各画素の輝度値(CT値)は、各成分の減衰率と対応関係がある。そこで、分割部17aは、上述したX線CT画像におけるCT値と組織(成分)との対応関係を用いて、3次元X線CT画像を構成する各画素が所属する組織を判別する。これにより、分割部17aは、3次元X線CT画像を、各領域が同一の物理的特性を有する複数の領域に分割する。また、分割部17aは、分割した各領域の組織名を付与する。例えば、操作者は、CT値と組織とを対応付けたテーブルを予め登録しておき、分割部17aは、かかるテーブルを参照することで分割処理を行なう。
【0047】
また、上述した分割処理を行なうことで、分割部17aは、3次元医用画像内に描出された各組織の位置及び形状を特定することができる。図4は、分割部を説明するための図である。
【0048】
すなわち、分割部17aは、図4に示すように、3次元X線CT画像内の各画素のCT値から各画素が所属する組織を判別することで、当該3次元X線CT画像を、骨や脂肪、肝臓など、同一の物理的特性を有する各領域に分割する。これにより、分割部17aは、3次元X線CT画像において、例えば、骨に対応する画素により構成される3次元領域の位置情報及び形状や、脂肪に対応する画素により構成される3次元領域の位置情報及び形状などを抽出する。
【0049】
なお、分割部17aは、3次元X線CT画像の画像サイズや座標系が、位置合わせ対象となる超音波画像の画像サイズや座標系を一致するように変換したうえで、分割処理を行なっても良い。また、上記では、分割部17aにより超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像が自動的に複数の領域に分割される場合について説明した。しかし、第1の実施形態は、超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像が操作者により複数の領域に分割される場合であっても良い。すなわち、第1の実施形態は、操作者が3次元X線CT画像や3次元MRI画像などの3次元医用画像の輝度値を参照して、各画素が所属する組織を指定することで、当該3次元医用画像の分割処理を行なう場合であっても良い。例えば、操作者は、画像処理部17が有する描画機能を用いて、3次元X線CT画像のレンダリング画像やMPR画像上に、骨、脂肪、肝臓などの各領域をトレースする。そして、操作者は、例えば、入力装置3を用いて、トレースした領域に組織名を付与することで、分割処理を行なう。
【0050】
図2に戻って、擬似超音波画像生成部17bは、超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像内に描出された各組織の物理的特性と、当該3次元医用画像にて設定された超音波の仮想的送信位置、超音波の仮想的送信方向及び超音波の仮想的音源特性を含む音源情報とに基づいて、当該3次元医用画像を擬似的に超音波画像に変換した擬似超音波画像を生成する。すなわち、擬似超音波画像生成部17bは、分割部17aにより分割された複数の領域それぞれの物理的特性と音源情報とに基づいて、擬似超音波画像を生成する。
【0051】
ここで、上述した複数の領域それぞれの物理的特性とは、3次元医用画像における各組織の位置及び形状や、各組織の音響特性である。擬似超音波画像生成部17bは、各組織の位置及び形状を、分割部17aの処理結果から取得することができる。また、各組織の音響特性とは、具体的には、媒質(組織)の音速、反射、透過、屈折、散乱及び減衰など、超音波に対する組織固有の特性である。例えば、操作者は、予め組織と当該組織の音響特性とを対応付けたテーブルを登録しておき、擬似超音波画像生成部17bは、かかるテーブルを参照することで、各組織の音響特性を取得することができる。
【0052】
また、上述した音源情報は、仮想的に超音波を送受信する仮想超音波プローブに関する情報である。すなわち、上述した音源情報における超音波の仮想的送信位置及び超音波の仮想的送信方向は、3次元医用画像における仮想超音波プローブの当接位置(x0, y0, z0)及び当接角度(φ,ψ)からなる情報である。また、上述した音源情報における超音波の仮想的音源特性とは、仮想超音波プローブの種類、仮想超音波プローブから送信される超音波の出力周波数(f)、出力パワー、超音波の走査形状(リニアスキャン、セクタスキャン、オフセットセクタスキャンなど)、開口素子数など、音源である仮想超音波プローブの特性に関する情報である。
【0053】
ここで、音源情報は、複数設定される。すなわち、仮想超音波プローブの当接位置及び当接角度は、仮想超音波プローブを移動しながら複数の擬似超音波画像を生成するために、複数設定される。また、超音波の仮想的音源特性は、位置合わせが行なわれる超音波画像の撮影時における超音波の送信情報を取得可能であるならば、一組の情報として設定される。一方、位置合わせが行なわれる超音波画像の撮影時における超音波の送信情報を取得可能でない場合、超音波の仮想的音源特性は、例えば、超音波診断装置に接続可能な超音波プローブの種類や性能により、複数設定される。図5は、擬似超音波画像生成部を説明するための図である。
【0054】
擬似超音波画像生成部17bは、図5の(A)に示すように、各組織の物理的特性と仮想超音波プローブの音源情報(x0, y0, z0, φ,ψ, f,・・・)とを、既知の超音波原理と合わせて用いることで、3次元X線CT画像を擬似的に超音波画像に変換した擬似超音波画像(2次元の擬似超音波画像)を生成する。すなわち、擬似超音波画像には、組織の境界上に生じる反射効果や、組織によって異なる減衰効果などが反映される。
【0055】
換言すれば、擬似超音波画像生成部17bは、多重反射アーチファクトや、シャドウなどの超音波画像特有の性質を有する擬似超音波画像を3次元医用画像から生成する。例えば、図5の(B)の左図の丸で示す領域は、X線CT画像における骨の領域であり、図5の(B)の右図の丸で示す領域は、擬似超音波画像において、図5の(B)の左図の丸で示す領域に対応する骨の領域である。ここで、擬似超音波画像生成部17bは、骨の音響特性を用いて擬似超音波画像を生成していることから、図5の(B)の左図に示す擬似超音波画像には、図5の(B)の左図の丸で示す骨に起因するシャドウが描出される。
【0056】
なお、擬似超音波画像生成部17bは、例えば、各組織の音響特性のうち、骨に関しては、超音波が略全反射されることから、透過の情報を用いずに処理を行なっても良い。すなわち、擬似超音波画像生成部17bは、操作者が擬似超音波画像を生成するうえで重要であると指定したパラメータのみを用いて、処理を行なう場合であっても良い。また、第1の実施形態では、操作者により複数の音源情報が設定される場合について説明したが、第1の実施形態は、例えば、後述する位置合わせ部17dにより複数の音源情報が設定される場合であっても良い。
【0057】
図2に戻って、指標算出部17cは、擬似超音波画像生成部17bにより生成された擬似超音波画像と超音波画像との類似性を表す指標を算出する。すなわち、指標算出部17cが算出する指標は、擬似超音波画像と超音波画像との位置合わせを行なうために用いられる値である。ここで、指標算出部17cは、輝度差、相互相関係数、画像均一比、相互情報量など、一般的な位置合わせ処理に用いられる指標を算出可能である。しかし、擬似超音波画像と超音波画像とは、同一のモダリティにより生成された医用画像と見なされるため、指標算出部17cは、輝度差や相互相関係数など、従来、同一種類の医用画像間での位置合わせに用いられる指標を算出する。例えば、指標算出部17cは、相互相関係数を算出する。
【0058】
位置合わせ部17dは、擬似超音波画像生成部17bによる擬似超音波画像生成処理及び指標算出部17cによる指標算出処理を、音源情報を変更することで繰り返して実行させ、超音波画像との指標が最適となった擬似超音波画像の3次元医用画像における位置に基づいて、超音波画像と3次元医用画像との位置合わせを行なう。図6及び図7は、位置合わせ部の処理を説明するための図である。
【0059】
すなわち、位置合わせ部17dは、複数設定された音源情報ごとに擬似超音波画像を生成するように、擬似超音波画像生成部17bを制御する。そして、位置合わせ部17dは、擬似超音波画像生成部17bが擬似超音波画像を生成するごとに、当該擬似超音波画像と超音波画像との指標を算出するように、指標算出部17cを制御する。そして、位置合わせ部17dは、図6に示すように、指標が最適となった擬似超音波画像を特定する。そして、位置合わせ部17dは、図7に示すように、特定した擬似超音波画像の3次元X線CT画像における断面の2次元X線CT画像(MPR画像)を、超音波画像と略一致する画像であると決定する。
【0060】
なお、図7に示す2次元X線CT画像(MPR画像)は、3次元X線CT画像から位置合わせ部17dにより生成される場合であっても、画像生成部14により生成される場合であっても良い。制御部18は、例えば、超音波画像と2次元X線CT画像とをモニタ2に表示させる。あるいは、制御部18は、例えば、超音波画像と、最適な指標が算出された擬似超音波画像と、2次元X線CT画像とをモニタ2に表示させる。
【0061】
なお、上記では、設定された複数の音源情報すべてに対して、擬似超音波画像生成処理及び指標算出処理を逐次的に実行して位置合わせ処理が行なわれる場合について説明した。しかし、第1の実施形態は、公知の最適化走査手法(例えば、最速降下法)により、位置合わせ処理が行なわれる場合であっても良い。例えば、処理速度を優先する場合は、最適化走査手法を用いて、位置合わせ処理を行なっても良い。
【0062】
また、上述したように、第1の実施形態は、3次元超音波画像と3次元医用画像との位置合わせを行なう場合であっても適用可能である。すなわち、仮想超音波プローブの音源情報として、例えば、2次元超音波プローブやメカニカルスキャンプローブの音源情報を複数設定することで、擬似超音波画像生成部17bは、3次元X線CT画像から3次元擬似超音波画像を複数生成する。そして、指標算出部17cは、3次元超音波画像と各3次元擬似超音波画像との指標を算出し、位置合わせ部17dは、最適な指標を与えた3次元擬似超音波画像の3次元X線CT画像における位置関係を特定する。図8は、3次元超音波画像に対する位置合わせ部の処理の一例を説明するための図である。
【0063】
そして、位置合わせ部17dは、最適な指標を与えた3次元擬似超音波画像の3次元X線CT画像における位置関係に基づいて、図8に示すように、3次元超音波画像に設定されている直交座標系により定まる断面と一致する2次元X線CT画像を特定可能な直交座標系を、3次元X線CT画像に設定する。これにより、制御部18は、操作者が指定した3次元超音波画像の断面位置と略一致する2次元X線CT画像を表示することができる。
【0064】
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図9は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0065】
図9に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波画像及び3次元医用画像(3次元X線CT画像)の位置合わせ要求を、複数の音源情報とともに受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、複数の音源情報とともに位置合わせ要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、画像処理部17は、待機状態となる。
【0066】
一方、複数の音源情報とともに位置合わせ要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、分割部17aは、3次元医用画像を構成する各画素の輝度値に基づいて、個々の領域が同一の物理的特性を有する複数の領域に当該3次元医用画像を分割する(ステップS102)。
【0067】
そして、擬似超音波画像生成部17bは、分割部17aにより分割された複数の領域それぞれの物理的特性と音源情報とに基づいて、擬似超音波画像を生成する(ステップS103)。すなわち、擬似超音波画像生成部17bは、複数の音源情報から選択した一つの音源情報を用いて、擬似超音波画像を生成する。
【0068】
その後、指標算出部17cは、ステップS103で生成された擬似超音波画像と超音波画像との指標を算出する(ステップS104)。例えば、指標算出部17cは、相互相関係数を算出する。
【0069】
そして、位置合わせ部17dは、未処理の音源情報があるか否かを判定する(ステップS105)。ここで、未処理の音源情報がある場合(ステップS105肯定)、位置合わせ部17dの制御により、擬似超音波画像生成部17bは、ステップS103において、未処理の音源情報から選択した一つの音源情報を用いて、擬似超音波画像を生成する。
【0070】
一方、未処理の音源情報がない場合(ステップS105否定)、位置合わせ部17dは、最適な指標が算出された擬似超音波画像の3次元医用画像における位置情報に基づいて、位置合わせを行ない(ステップS106)、処理を終了する。
【0071】
上述してきたように、第1の実施形態では、擬似超音波画像生成部17bは、超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像内に描出された各組織の物理的特性と、当該3次元医用画像にて設定された超音波の仮想的送信位置、超音波の仮想的送信方向及び超音波の仮想的音源特性を含む音源情報とに基づいて、当該3次元医用画像を擬似的に超音波画像に変換した擬似超音波画像を生成する。そして、指標算出部17cは、擬似超音波画像生成部17bにより生成された擬似超音波画像と超音波画像との類似性を表す指標を算出する。そして、位置合わせ部17dは、擬似超音波画像生成部17bによる擬似超音波画像生成処理及び指標算出部17cによる指標算出処理を、音源情報を変更することで繰り返して実行させ、超音波画像との指標が最適となった擬似超音波画像の3次元医用画像における位置に基づいて、超音波画像と3次元医用画像との位置合わせを行なう。
【0072】
すなわち、第1の実施形態では、3次元医用画像を超音波画像特有の性質を有する擬似超音波画像に変換することで、超音波画像と超音波画像とは異なる種類の医用画像間の位置合わせを、超音波画像間での位置合わせとして実行することができる。従って、第1の実施形態では、超音波画像と、超音波診断装置とは異なる種類の医用画像診断装置により撮影された医用画像との位置合わせを精度良く行なうことが可能となる。
【0073】
また、第1の実施形態では、擬似超音波画像生成部17bが用いる物理的特性は、3次元医用画像における各組織の位置及び形状と、各組織の音響特性とを含み、擬似超音波画像生成部17bが用いる仮想的音源特性は、仮想的に送信される超音波の出力周波数、出力パワー及び走査形状とを含む。
【0074】
すなわち、第1の実施形態では、超音波画像特有の性質を詳細に反映した擬似超音波画像を生成することができる。従って、第1の実施形態では、超音波画像と、超音波診断装置以外の医用画像診断装置により撮影された医用画像との位置合わせの精度をさらに向上させることが可能となる。
【0075】
また、第1の実施形態では、分割部17aは、3次元医用画像を構成する各画素の輝度値に基づいて、個々の領域が同一の物理的特性を有する複数の領域に当該3次元医用画像を分割し、擬似超音波画像生成部17bは、分割部17aにより分割された複数の領域それぞれの物理的特性と音源情報とに基づいて、擬似超音波画像を生成する。
【0076】
すなわち、第1の実施形態では、自動的に3次元医用画像内に描出される各組織を特定し、各組織の3次元医用画像における位置及び形状を特定することができる。従って、第1の実施形態では、超音波画像と、超音波診断装置以外の医用画像診断装置により撮影された医用画像との位置合わせ処理を迅速に行なうことが可能となる。
【0077】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、上述した位置合わせ処理の結果を用いて、位置合わせ対象であった超音波画像の補正を行なう場合について、図10などを用いて説明する。図10は、第2の実施形態に係る画像処理部の構成を説明するための図である。
【0078】
第2の実施形態に係る超音波診断装置は、図1を用いて説明した第1の実施形態に係る超音波診断装置と同様の構成を有する。しかし、第2の実施形態に係る画像処理部17は、図2を用いて説明した第1の実施形態に係る画像処理部17と比較して、図10に示すように、補正部17eをさらに有する点が異なる。以下、これを中心に説明する。
【0079】
図11に示す補正部17eは、位置合わせ部17dによる位置合わせ処理に用いられた擬似超音波画像に対する超音波画像の位置ずれ情報に基づいて、当該超音波画像内に描出される各組織の局所的な音速を算出し、当該算出した各組織の局所的な音速を用いて、当該超音波画像を補正する。
【0080】
すなわち、第1の実施形態において位置合わせ処理に用いられた擬似超音波画像「A」は、超音波送受信の伝播歪(部分的音速差による伝播遅延誤差)の影響を全く受けていない。このため、擬似超音波画像「A」内に描出されている構造体(組織)や構造体の辺縁部の位置座標は、正確である。一方、超音波診断装置にて生成された超音波画像「B」は、上述したように、予め設定された平均音速「C0」を用いて生成されているため、超音波送受信の伝播歪の影響を受けている。すなわち、超音波画像「B」内に描出されている構造体(組織)や構造体の辺縁部の位置座標は、正確でない場合がある。
【0081】
そこで、補正部17eは、擬似超音波画像「A」と超音波画像「B」との相関をとることで、超音波画像「B」内の各組織における局所音速の「C0」からの偏移を計測する。以下、局所音速の計測方法について、図11〜13及び数式を用いて説明する。
【0082】
まず、補正部17eは、擬似超音波画像「A」の輝度分布「A(x,y)」と、超音波画像「B」の輝度分布「B(x,y)」との距離的な相関から、「A」に対して「B」がどの程度ずれているかを示す位置ずれ情報を算出する。具体的には、補正部17eは、図11に示すように、擬似超音波画像「A」に対しての超音波画像「B」の移動ベクトルを算出する。なお、擬似超音波画像「A」及び超音波画像「B」が3次元である場合、「A」の輝度分布は、「A(x,y,z)」と表され、超音波画像「B」の輝度分布は、「B(x,y,z)」と表される。
【0083】
例えば、「A(x1,y1)」を、2次元擬似超音波画像の座標上の任意の点「位置座標(x1,y1)」での輝度とし、「B(x1,y1)」を、2次元超音波画像の座標上の任意の点「位置座標(x1,y1)」での輝度とする。ここで、(x1,y1)での「A」に対する「B」の移動ベクトルは、相互相関係数Dx1y1(u,v)に相当する。ここで、Dx1y1(u,v)は、以下に示す式(1)により算出することができる。なお、(u,v)は、画像上の座標(x,y)を、セクタスキャンを行なう仮想超音波プローブや超音波プローブ1の位置を原点とする座標系にて表したものである。
【0084】
【数1】

【0085】
すなわち、補正部17eは、式(1)を用いて、基準である「A(x1,y1)」に対する「B(x1,y1)」の移動ベクトルDx1y1(u,v)を、全画像領域で算出する。これにより、補正部17eは、図11に示すように、超音波画像「B」内の個々の点での移動ベクトルを、超音波画像「B」内にマッピングした移動ベクトルマップを取得する。
【0086】
そして、補正部17eは、超音波画像「B」内の移動ベクトルから超音波ビーム方向の移動成分(以下、ビーム方向成分と記載する)を計算する。例えば、2次元走査を行なった場合、ビーム方向成分は、「d(r,N)」と表せる。ここで、「r」は、座標系(u,v)における原点「0」からの距離であり、「N」は、N番目のスキャンラインを示す。すなわち、「d(r,N)」は、N番目のスキャンラインにおける距離「r」に位置する点でのビーム方向成分である。なお、3次元走査を行なった場合、ビーム方向成分は、「d(r,N,M)」と表せる。すなわち、「d(r,N,M)」は、M番目の走査面でのN番目のスキャンラインにおける距離「r」に位置する点でのビーム方向成分である。
【0087】
ビーム方向成分「d(r,N)」を算出する際、補正部17eは、図12に示すように、超音波の走査形状が原点「0」を始点とするセクタスキャンであることから、N番目のスキャンラインの角度「θN」と距離「r」を用いて、超音波画像「B」の直交座標系から極座標系への座標変換を行なう。そして、補正部17eは、取得した移動ベクトルマップにおいて、N番目のスキャンライン上の各点のビーム方向成分を、以下の式(2)を用いて算出する。
【0088】
【数2】

【0089】
補正部17eは、式(2)を用いることで、N番目のスキャンライン上の各点のビーム方向成分を取得する。すなわち、補正部17eは、式(2)を用いることで、N番目のスキャンライン上の各点のビーム方向成分として取得する(図12に示す拡大図中の実線矢印を参照)。
【0090】
そして、補正部17eは、図13に示すように、N番目のスキャンライン上のビーム方向成分の分布「d(r,N)」を微分処理することで、N番目のスキャンライン上の局所音速の分布「C(r,N)」を算出する。すなわち、補正部17eは、図13に示すように、「d(r,N)」を微分処理することで、「C(r,N)」の平均音速「C0」からの偏移を計測する。
【0091】
ここで、局所音速の変化「ΔC(r,N)」により、ビーム方向成分の時間的変化が生じるため、局所音速の変化とビーム方向成分の時間的変化とは、以下の式(3)に示すように比例関係が成立する。
【0092】
【数3】

【0093】
また、ビーム方向成分と、局所音速の変化の平均音速に対する変化率とは、比例すると考えられるため、以下の式(4)に示す比例関係が成立する。
【0094】
【数4】

【0095】
従って、式(3)及び式(4)から、以下の式(5)が成立する。
【0096】
【数5】

【0097】
ここで、式(5)は、定数「A」を用いることで、以下の微分方程式(6)として表される。
【0098】
【数6】

【0099】
微分方程式(6)の解は、定数「B」を用いることで、以下の式(7)となる。なお、定数「A」及び定数「B」は、境界条件を用いて求めることができる。
【0100】
【数7】

【0101】
ここで、式(7)に示す「t」は、時間を示し、「ΔC(r,N)」が「C0」に対して十分に小さいとすると、「t」は「r/C0」と見なせるため、式(7)は、以下の式(8)となる。
【0102】
【数8】

【0103】
ここで、式(8)の両辺を「r」で微分すると、定数「E」を用いて以下の式(9)が得られる。
【0104】
【数9】

【0105】
従って、式(9)を定数「F」を用いて変形すると、ビーム方向成分の分布から局所音速の分布を算出するための以下の式(10)が得られる。
【0106】
【数10】

【0107】
補正部17eは、式(10)を用いて、N番目のスキャンライン上のビーム方向成分の分布「d(r,N)」から、N番目のスキャンライン上の各点の局所音速をマッピングした局所音速マップを取得する。これにより、補正部17eは、全てのスキャンライン上の各点の局所音速をマッピングした局所音速マップを取得する。なお、3次元走査が行なわれている場合、補正部17eは、「d(r,N,M)」から「C(r,N,M)」を算出することで、局所音速マップを取得する。
【0108】
そして、補正部17eは、取得した局所音速マップから、平均音速「C0」からの局所的偏移を算出する。そして、補正部17eは、算出した局所的偏移を用いて、音速による歪を補正するための受信遅延時間を算出する。そして、補正部17eは、例えば、画像メモリ15に記憶されている反射波信号を不等間隔サンプリングし、算出した受信遅延時間を用いた加算処理を行なって反射波データを再生成する。そして、補正部17eは、再生成した反射波データを用いて、超音波画像「B」の伝播遅延誤差を補正した超音波画像(補正画像)を生成する。
【0109】
このようにして生成された補正画像は、例えば、画像メモリ15に格納され、補正画像は、制御部18の制御によりモニタ2に表示される。
【0110】
次に、図14を用いて、第2の実施形態に係る超音波診断装置の補正処理について説明する。図14は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の補正処理を説明するためのフローチャートである。
【0111】
図14に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置の補正部17eは、位置合わせ部17dによる位置合わせ処理が終了したか否かを判定する(ステップS201)。ここで、位置合わせ処理が終了していない場合(ステップS201否定)、補正部17eは、位置合わせ処理が終了するまで待機する。
【0112】
一方、位置合わせ処理が終了した場合(ステップS201肯定)、補正部17eは、位置合わせに用いられた擬似超音波画像に対する超音波画像の移動ベクトルを算出する(ステップS202)。
【0113】
そして、補正部17eは、算出した移動ベクトルから、ビーム方向成分を算出し(ステップS203)、ビーム方向成分に対して微分処理を行なうことで、超音波画像内の各組織の局所的な音速を算出し、超音波画像内の局所音速マップを取得する(ステップS204)。
【0114】
その後、補正部17eは、取得した局所音速マップから、超音波画像を補正し(ステップS205)、処理を終了する。すなわち、補正部17eは、局所音速マップから超音波画像内に描出された各組織における平均音速からの局所音速の偏移を算出する。そして、補正部17eは、各組織における平均音速からの局所音速の偏移から、音速による歪を補正するための受信遅延時間を算出し、算出した受信遅延時間を用いて、反射波信号を再度加算することで反射波データを再生成する。そして、補正部17eは、再生成した反射波データを用いて、超音波画像を補正する。
【0115】
上述してきたように、第2の実施形態では、補正部17eは、位置合わせ処理に用いられた擬似超音波画像に対する超音波画像の位置ずれ情報に基づいて、当該超音波画像内に描出される各組織の局所的な音速を算出し、当該算出した各組織の局所的な音速を用いて、当該超音波画像を補正する。
【0116】
従って、第2の実施形態では、位置合わせが行なわれた超音波画像内の伝播遅延誤差を補正することが可能となる。
【0117】
なお、補正部17eは、取得した局所音速マップから、局所弾性率マップを取得してもよい。すなわち、音速「C」は、弾性率(K)を密度(ρ)で除した値の平方根となる。従って、各組織の局所密度を略一定とすると、局所音速から、局所弾性率を算出することができ、補正部17eは、局所音速マップから、局所弾性率マップを取得することができる。ここで、腫瘤性病変を含む生体組織の弾性率を計測して画像化する技術である超音波エラストグラフィー法が知られている。補正部17eにより取得される局所弾性率マップは、超音波エラストグラフィー法に適用することで、正確な超音波エラストグラフィーを生成することが可能となる。
【0118】
なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、超音波診断装置において位置合わせ処理が行なわれる場合について説明した。しかし、超音波診断装置とは独立に設置された画像処理装置により、上述した位置合わせ処理が行なわれる場合であってもよい。具体的には、図2に示す画像処理部17の機能を有する画像処理装置が、超音波診断装置及び超音波診断装置とは異なる種類の医用画像診断装置などから受信した2つの画像データを受信して上述した処理を行なう場合であってもよい。
【0119】
また、本実施例で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0120】
以上、説明したとおり、第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、超音波画像と、超音波診断装置とは異なる種類の医用画像診断装置により撮影された医用画像との位置合わせを精度良く行なうことが可能となる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
1 超音波プローブ
2 モニタ
3 入力装置
4 外部装置
10 装置本体
11 送受信部
12 Bモード処理部
13 ドプラ処理部
14 画像生成部
15 画像メモリ
16 内部記憶部
17 画像処理部
17a 分割部
17b 擬似超音波画像生成部
17c 指標算出部
17d 位置合わせ部
18 制御部
19 インターフェース部
100 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像内に描出された各組織の物理的特性と、当該3次元医用画像にて設定された超音波の仮想的送信位置、超音波の仮想的送信方向及び超音波の仮想的音源特性を含む音源情報とに基づいて、当該3次元医用画像を擬似的に超音波画像に変換した擬似超音波画像を生成する擬似超音波画像生成部と、
前記擬似超音波画像生成部により生成された前記擬似超音波画像と前記超音波画像との類似性を表す指標を算出する指標算出部と、
前記擬似超音波画像生成部による擬似超音波画像生成処理及び前記指標算出部による指標算出処理を、前記音源情報を変更することで繰り返して実行させ、前記超音波画像との指標が最適となった擬似超音波画像の前記3次元医用画像における位置に基づいて、前記超音波画像と前記3次元医用画像との位置合わせを行なう位置合わせ部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記擬似超音波画像生成部が用いる前記物理的特性は、前記3次元医用画像における各組織の位置及び形状と、各組織の音響特性とを含み、前記擬似超音波画像生成部が用いる前記仮想的音源特性は、仮想的に送信される超音波の出力周波数、出力パワー及び走査形状とを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記3次元医用画像を構成する各画素の輝度値に基づいて、個々の領域が同一の物理的特性を有する複数の領域に当該3次元医用画像を分割する分割部をさらに備え、
前記擬似超音波画像生成部は、前記分割部により分割された前記複数の領域それぞれの物理的特性と前記音源情報とに基づいて、前記擬似超音波画像を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記位置合わせ部による位置合わせ処理に用いられた擬似超音波画像に対する前記超音波画像の位置ずれ情報に基づいて、当該超音波画像内に描出される各組織の局所的な音速を算出し、当該算出した各組織の局所的な音速を用いて、当該超音波画像を補正する補正部を、さらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
超音波画像の位置合わせ対象となる3次元医用画像内に描出された各組織の物理的特性と、当該3次元医用画像にて設定された超音波の仮想的送信位置、超音波の仮想的送信方向及び超音波の仮想的音源特性を含む音源情報とに基づいて、当該3次元医用画像を擬似的に超音波画像に変換した擬似超音波画像を生成する擬似超音波画像生成手順と、
前記擬似超音波画像生成手順により生成された前記擬似超音波画像と前記超音波画像との類似性を表す指標を算出する指標算出手順と、
前記擬似超音波画像生成手順による擬似超音波画像生成処理及び前記指標算出手順による指標算出処理を、前記音源情報を変更することで繰り返して実行させ、前記超音波画像との指標が最適となった擬似超音波画像の前記3次元医用画像における位置に基づいて、前記超音波画像と前記3次元医用画像との位置合わせを行なう位置合わせ手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−75747(P2012−75747A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225060(P2010−225060)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】