説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】夜間走行する車両の車灯と路面反射とを判別して、精度良く車灯の存在を判定することができる画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】画像処理部24は、ビデオカメラ1で撮像して得られた撮像画像を2値化し、2値化画像において、ラベルリング処理により隣接する領域を連結して車灯候補領域を抽出する。画像処理部24は、抽出した車灯候補領域の円形度を算出し、算出した円形度が閾値以上であるか否かを判定し、円形度が閾値以上である場合、その車灯候補領域を車灯領域として特定する。画像処理部24は、円形度が閾値より小さい場合、その車灯候補領域を路面反射であるとして撮像画像から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を含む領域を撮像して得られた撮像画像に基づいて、車灯の存在を判定するための処理を行う画像処理装置に関し、特に車灯を夜間の路面反射から区別することができる画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円滑な交通又は交通事故抑止のために、道路上の車両に関する詳細な交通情報を提供するシステムが求められており、ビデオカメラなどの撮像装置で道路を含む所定の領域を撮像し、得られた撮像画像と、車両が通行していない場合の撮像画像とを比較して車両の存在を検出するシステムがある。しかし、夜間においては、車両の車灯(ヘッドライト又はテールライト)からの光が路面で反射するため、路面で反射した反射像を車両として誤って検出する場合があった。
【0003】
そこで、夜間等に路上を走行する車両の撮像画像から、その特徴点として車灯を抽出して車両を検出する場合、入力画像パターンの輝度値と路面基準輝度値との差分値の分布パターンを判別することにより、車灯による路面反射像を除去する画像処理式交通流計測装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、道路を走行する車両を撮像した画像から路面反射があるか否かを判定し、路面反射があると判断された場合に、画像をエッジ処理した処理画像の各画素について横方向の輝度を加算する。加算値は、車両とその反射像とに対応する位置において大きくなる傾向があり、逆に車両とその反射像との境界に対応する位置で小さくなる傾向があることから、この加算値に基づいて、車両の位置を正確に検出することができる車両検出方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平3−286398号公報
【特許文献2】特開2003−296878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の画像処理式交通流計測装置にあっては、所定の方向に計測ライン毎に走査し、一対の輝度偏移部分の計測ライン方向の長さが一定長より大きい場合、走行車両の車灯部分として検出した上で、検出した車灯の前方の明るい部分の有無を判定して、該明るい部分が所定の条件を満たすときは、路面反射像として除去する。このため、走行車両の車灯部分を正確に検出できない場合、路面反射像も検出することができず、必ずしも精度良く路面反射像を除去することができない虞がある。
【0006】
また、特許文献2の車両検出方法にあっては、雨天時に路面反射がある場合、撮像画像をエッジ処理して車両及びその反射像の輪郭を明確にした上で、車両及びその反射像の各画素について横方向に輝度を加算して、加算値の2つのピークの間にある最小値に基づいて、車両の一を検出するものであり、夜間に走行する車両のように、エッジ処理による車両の検出が困難な場合には、精度良く検出できない虞がある。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、撮像画像の各画素の少なくとも輝度又は色相に基づいて、抽出した車灯候補領域の形状を示す指標値を算出する算出手段、及び算出された指標値に基づいて、車灯の存在を判定する判定手段を備えることにより、夜間走行する車両の車灯と路面反射とを判別して、精度良く車灯の存在を判定することができる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記指標値は、車灯候補領域の形状の円形に対する類似度であることにより、路面の状況、走行車両の状況などに応じて路面反射の状況が変化する場合でも、路面反射を除去して車灯の存在を確実に判定することができる画像処理装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、前記判定手段は、遠距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては第1閾値に基づいて、車灯の存在を判定し、近距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては前記第1閾値より大きい第2閾値に基づいて、車灯を判定するように構成することにより、車両までの距離に拘わらず、精度良く車灯の存在を判定することができる画像処理装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、車灯の存在が判定された場合、前記車灯に対応する車灯領域の撮像画像上の座標に基づいて、車両を検出する検出手段を備えることにより、夜間であっても、路面反射と区別して車両を精度良く検出することができる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る画像処理装置は、道路を含む領域を撮像して得られた撮像画像に基づいて、車灯の存在を判定するための処理を行う画像処理装置において、撮像画像の各画素の少なくとも輝度又は色相に基づいて、車灯候補領域を抽出する抽出手段と、抽出された車灯候補領域の形状を示す指標値を算出する算出手段と、算出された指標値に基づいて、車灯の存在を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る画像処理装置は、第1発明において、前記指標値は、車灯候補領域の形状の円形に対する類似度であることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る画像処理装置は、第1発明又は第2発明において、前記判定手段は、遠距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては第1閾値に基づいて、車灯の存在を判定し、近距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては前記第1閾値より大きい第2閾値に基づいて、車灯を判定するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る画像処理装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、前記判定手段で車灯の存在が判定された場合、前記車灯に対応する車灯領域の撮像画像上の座標に基づいて、車両を検出する検出手段を備えることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る画像処理方法は、道路を含む領域を撮像して得られた撮像画像に基づいて、車灯の存在を判定するための処理を行う画像処理方法において、撮像画像の各画素の少なくとも輝度又は色相に基づいて、車灯候補領域を抽出し、抽出された車灯候補領域の形状を示す指標値を算出し、算出された指標値に基づいて、車灯の存在を判定することを特徴とする。
【0016】
第1発明及び第5発明にあっては、抽出手段は、道路を含む領域を撮像して得られた撮像画像の各画素の少なくとも輝度又は色相に基づいて、車灯候補領域を抽出する。例えば、夜間に道路を走行する車両を撮像した場合、車両の車灯部分及び車灯などによる路面反射の部分の輝度が比較的高くなることを利用し、撮像画像を所定の輝度閾値に基づいて、2値化し、2値化画像において、連結領域を特定して車灯候補領域を抽出する。算出手段は、抽出された車灯候補領域の形状を示す指標値を算出する。判定手段は、算出された指標値に基づいて、車灯の存在を判定する。
【0017】
第2発明にあっては、前記指標値は、車灯候補領域の形状の円形に対する類似度である。例えば、類似度として円形度を用いた場合、車灯候補領域が円形に類似するときは、該車灯候補領域は車灯であると判定できる。また、車灯候補領域が円形に類似しないときは、車灯候補領域は路面反射であるとして除去することができる。これにより、路面の状況、走行車両の状況(例えば、車両の台数、隣車線を走行する車両)などに応じて路面反射の状況(例えば、撮像画像上での形状)が変化する場合でも、路面反射を除去する。
【0018】
第3発明にあっては、前記判定手段は、遠距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては第1閾値に基づいて、車灯の存在を判定し、近距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては前記第1閾値より大きい第2閾値に基づいて、車灯を判定する。車両が近距離にある場合、車灯は円形に近似し、車両が遠距離にある場合、車灯はやや楕円状になる。距離に応じて、車灯の存在を判定するための閾値を変更することにより、撮像画像上での車灯候補領域の形状が変化しても、より精度良く車灯を判定する。
【0019】
第4発明にあっては、検出手段は、車灯の存在が判定された場合、前記車灯に対応する車灯領域の撮像画像上の座標に基づいて、車両を検出する。例えば、複数の車灯の存在が判定された場合、撮像画像上の縦座標が近似する一対の車灯領域の横座標の距離が所定の範囲にある場合、前記一対の車灯領域を一の車両として検出する。
【発明の効果】
【0020】
第1発明及び第5発明にあっては、撮像画像の各画素の少なくとも輝度又は色相に基づいて、抽出した車灯候補領域の形状を示す指標値を算出する算出手段、及び算出された指標値に基づいて、車灯の存在を判定する判定手段を備えることにより、夜間走行する車両の車灯と路面反射とを判別して、精度良く車灯の存在を判定することができる。これにより、車灯による路面反射を除去することができ、夜間の交通流計測に適用することが可能となる。
【0021】
第2発明にあっては、前記指標値が、車灯候補領域の形状の円形に対する類似度であることにより、路面の状況、走行車両の状況などに応じて路面反射の状況が変化する場合でも、路面反射を除去して車灯の存在を確実に判定することができる。
【0022】
第3発明にあっては、前記判定手段は、遠距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては第1閾値に基づいて、車灯の存在を判定し、近距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては前記第1閾値より大きい第2閾値に基づいて、車灯を判定するように構成することにより、車両までの距離に拘わらず、精度良く車灯の存在を判定することができる。
【0023】
第4発明にあっては、車灯の存在が判定された場合、前記車灯に対応する車灯領域の撮像画像上の座標に基づいて、車両を検出する検出手段を備えることにより、夜間であっても、路面反射と区別して車両を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る画像処理装置を備えた交通流計測の概要を示す模式図である。図において、1はビデオカメラである。ビデオカメラ1は、例えば、交差点付近の路上10m程度の位置に、光軸を道路方向に沿って配置してあり、交差点から上流側の道路の数十mの判定領域の交通流を撮像する。
【0025】
ビデオカメラ1には、画像処理装置2を接続してあり、画像処理装置2は、ビデオカメラ1で撮像して得られた撮像画像を処理し、車両の車灯(ヘッドライトなど)の存在の判定を行う。画像処理装置2には、通信回線5を介して信号制御装置3が接続され、信号制御装置3には、信号機4を接続してある。
【0026】
画像処理装置2は、判定領域内に車灯の存在を判定した場合、判定信号を信号制御装置3へ出力する。信号制御装置3は、画像処理装置2から車灯の判定信号を受付けた場合、信号機4の右折信号を青にするための右折感応、又は信号機4が赤点滅を行っているときに青信号に変えるリコール感応などの制御のための制御信号を信号機4へ出力する。なお、図においては、片側3車線の例を示しているが、ビデオカメラ1、画像処理装置2等が設置される道路は、これに限定されるものではない。
【0027】
図2は画像処理装置2の構成を示すブロック図である。ビデオカメラ1は撮像して得られた撮像画像を映像信号(アナログ信号)として画像入力部21へ出力する。画像入力部21は、取得した映像信号をA/D変換部22へ出力し、A/D変換部22は、入力された映像信号をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号を画像データとして画像メモリ23へ記憶する。この場合、画像データは、ビデオカメラ1のフレームレート(撮像時点の間隔、例えば、1秒間に30フレーム)と同期して、1フレーム単位(例えば、640×480画素)で画像メモリ23に記憶される。
【0028】
画像処理部24は、ASICなどにより構成され、画像メモリ23から1フレーム単位の画像データを読み出し、読み出した画像データを所定の輝度閾値に基づいて、2値化した2値化画像(例えば、輝度値を8ビットで表現する場合、輝度値「255」と輝度値「0」とに2値化する)を生成する。夜間、道路を走行する車両を撮像した場合、車両の車灯(ヘッドライト)が最も輝度値が高く、ついで車灯による路面反射部分の輝度が高く、この両者の区別は困難である。一方、車灯を除く車両部分又は車灯の光が当たっていない路面、周囲などは輝度値が低い。このため輝度閾値としては、車灯及び路面反射と、その他の部分とを区別することができるように設定することができる。なお、輝度に限定されず、色相などを利用することもできる。
【0029】
画像処理部24は、2値化画像において、いわゆるラベリング処理を行い、輝度値「255」の領域で隣接する領域同士を連結し、連結された領域を車灯候補領域として抽出する。
【0030】
画像処理部24は、抽出した車灯候補領域に対して、車灯候補領域がどれだけ円形に近似しているかを示す円形度を算出する。1つの撮像画像において、複数の車灯候補領域が抽出された場合、夫々の車灯候補領域について円形度を算出する。なお、車灯候補領域の形状がどれだけ円形に近似(類似)しているかを示す指標値(形状を解析する特徴量)としての円形度以外に、丸さの度合い、針状度などの指標値を用いることも可能である。
【0031】
画像処理部24は、算出した円形度が所定の閾値以上である場合、車灯候補領域を車灯領域として特定し、車灯が判定領域内に存在すると判定し、判定信号を出力する。また、画像処理部24は、算出した円形度が所定の閾値より小さい場合、車灯候補領域は路面反射領域として特定し、路面反射領域と判定された領域の輝度値を「0」にすることにより、路面反射領域を除去する。これにより、車灯と路面反射とを判別して、車灯の存在を精度良く判定することができる。
【0032】
画像処理部24は、車灯の存在が判定された場合、撮像画像上での車灯領域の座標を特定する。撮像画像上の横、縦方向を夫々X、Y軸方向とした場合、Y座標が近似する車灯領域の中で、X座標の距離(間隔)が所定の範囲内にある一対の車灯領域を一の車両として検出する。これにより、車灯の存在に基づいて、車両の検出をすることができる。また、車両として検出された一対の車灯領域以外の車灯領域は、例えば、二輪車として検出することができる。なお、車両を検出する際の前記所定の範囲は、車種(大型車、普通車など)に応じて適宜設定することができる。
【0033】
インタフェース部25は、画像処理装置2で判定された車灯の存在の判定信号を、通信回線5を介して信号制御装置3へ送信するためのインタフェース機能を備えている。また、インタフェース部25は、車両の検出結果などを出力するためのインタフェース機能を備えている。
【0034】
図3及び図4は円形度の算出方法を示す概念図である。円形度は、ある領域がどれだけ円形に近いかを示す指標値である。ある領域の面積をS、領域の周囲長をLとすると、円形度Eは、E=4πS/L2で表される。この場合、0<E≦1である。図3(a)に示すように、撮像画像内の領域Aの面積Sは、領域Aの画素数で表される。また、領域Aの周囲長Lは、例えば、領域Aの外周となる画素の中心を結んだ線の距離で表される。
【0035】
次に領域Aの面積S及び周囲長Lの算出方法を示す。簡単のため、図3(b)に示すように、領域Aの一部領域Bを拡大した拡大画像(画素数が7×7=49画素から構成される画素ブロック)に基づいて説明する。拡大画像の内、模様のある領域が領域Aの一部領域A1であり、白抜きの領域が領域A以外の領域である。
【0036】
図4(a)に示すように、領域A1の面積S1は、領域A1の画素数である「31」となる。また、図4(b)に示すように、領域A1の周囲長L1は、領域A1の外周となる画素の中心を結んだ線の距離である。デジタル画像であるので、隣接する画素間の上下左右方向の距離は「1.0」、隣接する画素の斜め方向の距離は「1.5」とすると、周囲長L1は「8」となる。
【0037】
上述の面積及び周囲長の算出方法を領域Aに適用することにより、例えば、領域Aの面積Sが「2962」、周囲長Lが「208」であるとすると、領域Aの円形度Eは、「0.86」となる。
【0038】
撮像画像上での車灯候補領域の面積は、車灯候補領域の画素数で表される。車灯候補領域の周囲長は、例えば、車灯候補領域の外周となる画素の中心を結んだ線の距離として算出することができる。
【0039】
なお、車灯を判定するための指標値は、円形度に限定されるものではなく、(絶対最大長の2乗/面積)×(π/4)で表される丸さの度合い、(パターン幅/絶対最大長)で表される針状度などを用いることもできる。ここで、絶対最大長は、領域の輪郭線上の任意の2点間の距離の最大値であり、パターン幅は、絶対最大長の方向にパターン領域をはさむ2直線間の距離である。
【0040】
図5は領域の形状と円形度との関係を示す説明図である。図に示すように、真円の場合、円形度は、1.00であり、円形に近い楕円の場合、円形度は、0.85、長方形の場合、円形度は0.71などである。これにより、例えば、円形度の閾値を0.8程度にすることにより、車灯と路面反射とを精度良く判別することができることがわかる。また、走行車両の数、路面の状況、道路の周囲状況などにより、路面反射の状態が変化し、撮像画像上の路面反射像の形状が変化した場合でも、円形度(円形に対する類似度)を用いることにより、路面反射を確実に車灯と区別して認識することができる。
【0041】
車両を撮像する場合、近距離にある車両の車灯の形状は円形に近く、遠距離にある車両の車灯の形状は楕円状になる。そこで、円形度に基づいて車灯であるか否かを判定するための閾値を、撮像画像の遠距離に対応する領域においては小さい閾値を用い、撮像画像の近距離に対応する領域においては大きい閾値を用いることにより、車両までの距離に拘わらず、より精度良く車灯を判定することができる。この場合、例えば、撮像画像上の縦方向、すなわちY座標の値に基づいて、大きい閾値を用いる領域と小さい閾値を用いる領域を分けることができ、また、段階的に3つ以上の値の異なる閾値を用いてもよい。さらに、予め所定の初期閾値を設定しておき、車灯候補領域のY座標値に基づいて、初期閾値に係数を積算して閾値を算出することもできる。
【0042】
次に、本発明に係る画像処理装置の動作について説明する。図6は車灯の存在の判定処理手順を示すフローチャートである。画像処理部24は、撮像画像を取得し(S11)、取得した撮像画像を2値化する(S12)。画像処理部24は、2値化画像において、ラベルリング処理により隣接する領域を連結して、一定以上の面積を有する領域を車灯候補領域として抽出する(S13)。これにより、車灯候補領域を抽出する場合、車灯候補領域の面積が小さいものは、ノイズとして除去する。
【0043】
画像処理部24は、抽出した車灯候補領域の円形度を算出し(S14)、算出した円形度が閾値以上であるか否かを判定する(S15)。円形度が閾値以上である場合(S15でYES)、画像処理部24は、その車灯候補領域を車灯領域として特定し(S16)、車灯の存在判定信号を出力し(S17)、すべての車灯候補領域について円形度を算出したか否かを判定する(S18)。
【0044】
円形度が閾値より小さい場合(S15でNO)、画像処理部24は、その車灯候補領域を路面反射であるとして撮像画像から除去し(S19)、ステップS18以降の処理を続ける。すべての車灯候補領域について円形度を算出していない場合(S18でNO)、画像処理部24は、ステップS14以降の処理を続ける。
【0045】
すべての車灯候補領域について円形度を算出した場合(S18でYES)、画像処理部24は、車灯領域の撮像画像上での座標を算出し(S20)、一対の車灯領域の間隔(例えば、撮像画像上のX座標の距離)が所定範囲内であるか否かを判定する(S21)。車灯領域の間隔が所定範囲内である場合(S21でYES)、画像処理部24は、車両の存在を検出し(S22)、すべての車灯領域について処理を行ったか否かを判定する(S23)。
【0046】
車灯領域の間隔が所定範囲内でない場合(S21でNO)、画像処理部24は、ステップS23以降の処理を続ける。すべての車灯領域について処理を行っていない場合(S23でNO)、画像処理部24は、ステップS21以降の処理を続ける。すべての車灯領域について処理を行った場合(S23でYES)、画像処理部24は、処理終了要求の有無を判定し(S24)、処理終了要求がない場合(S24でNO)、ステップS11以降の処理を続け、処理終了要求がある場合(S24でYES)、処理を終了する。
【0047】
図7は撮像画像の例を示す模式図である。図に示すように、例えば、夜間走行する車両を撮像した場合、車灯(ヘッドライト)の部分、ヘッドライトの光が路面で反射して生ずる路面反射の部分、車両の輪郭などが映し出される。
【0048】
図8は撮像画像を2値化した2値化画像の例を示す模式図である。所定の輝度閾値を用いて図7に示す撮像画像を2値化することにより、車灯、路面反射などの輝度値が高い部分を車灯候補領域B、C、Dとして抽出することができる。図において、模様のある領域が高輝度(例えば、輝度値「255」)の領域であり、それ以外の領域が低輝度(例えば、輝度値「0」)の領域である。
【0049】
図9は車灯の存在を判定した判定画像の例を示す模式図である。図8の2値化画像における車灯候補領域B、C、Dの円形度を算出し、算出した円形度を所定の閾値と比較することにより、車灯候補領域Dを路面反射による領域として除去(輝度値を「0」にする)し、車灯領域のみを抽出したものである。
【0050】
以上説明したように、本発明にあっては、夜間走行する車両の車灯と路面反射とを判別して、精度良く車灯の存在を判定することができる。これにより、車灯による路面反射を除去することができ、夜間の交通流計測に適用することが可能となる。また、路面の状況、走行車両の状況などに応じて路面反射の状況が変化する場合でも、路面反射を除去して車灯の存在を確実に判定することができる。また、車両までの距離に拘わらず、精度良く車灯の存在を判定することができる。
【0051】
上述の実施の形態においては、道路上の判定領域内に車灯が存在する場合、判定信号を出力して信号機を制御する構成であったが、これに限定されるものではなく、本発明は、他の例にも適用することが可能である。例えば、所定の判定領域内の車灯の存在を所定時間継続して判定し、判定された車灯数に関連する統計的処理(例えば、時間平均など)を行うことにより、交通流を判断する情報として用いることもできる。
【0052】
上述の実施の形態においては、信号機の制御の例として、右折感応、リコール感応などを挙げて説明したが、信号機の制御は、これに限定されるものではなく、交通量に応じて、信号機の青色、黄色、赤色の点灯時間、点灯間隔の制御など、種々の制御に利用することができる。
【0053】
本発明は、夜間のみならず、昼間であっても雨天時などの状況化においても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る画像処理装置を備えた交通流計測の概要を示す模式図である。
【図2】画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】円形度の算出方法を示す概念図である。
【図4】円形度の算出方法を示す概念図である。
【図5】領域の形状と円形度との関係を示す説明図である。
【図6】車灯の存在の判定処理手順を示すフローチャートである。
【図7】撮像画像の例を示す模式図である。
【図8】撮像画像を2値化した2値化画像の例を示す模式図である。
【図9】車灯の存在を判定した判定画像の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ビデオカメラ
2 画像処理装置
3 信号制御装置
4 信号機
5 通信回線
21 画像入力部
22 A/D変換部
23 画像メモリ
24 画像処理部
25 インタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を含む領域を撮像して得られた撮像画像に基づいて、車灯の存在を判定するための処理を行う画像処理装置において、
撮像画像の各画素の少なくとも輝度又は色相に基づいて、車灯候補領域を抽出する抽出手段と、
抽出された車灯候補領域の形状を示す指標値を算出する算出手段と、
算出された指標値に基づいて、車灯の存在を判定する判定手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記指標値は、車灯候補領域の形状の円形に対する類似度であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
遠距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては第1閾値に基づいて、車灯の存在を判定し、近距離にある撮像領域に対応する撮像画像上の領域においては前記第1閾値より大きい第2閾値に基づいて、車灯を判定するように構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段で車灯の存在が判定された場合、前記車灯に対応する車灯領域の撮像画像上の座標に基づいて、車両を検出する検出手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
道路を含む領域を撮像して得られた撮像画像に基づいて、車灯の存在を判定するための処理を行う画像処理方法において、
撮像画像の各画素の少なくとも輝度又は色相に基づいて、車灯候補領域を抽出し、
抽出された車灯候補領域の形状を示す指標値を算出し、
算出された指標値に基づいて、車灯の存在を判定することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−193702(P2007−193702A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13118(P2006−13118)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】