説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】細線化と輪郭強調を同時にかつバランスよく行う。
【解決手段】画像処理部10では、エッジ抽出部111において、画像データに基づいて、当該画像データに含まれる中間調のオブジェクトの最外郭に位置する第1エッジを抽出するとともに、第1エッジの位置よりさらにオブジェクトの内側に位置する第2エッジを抽出する。一方、スクリーン処理部112では前記画像データをスクリーン処理する。輪郭調整部113では前記スクリーン処理の結果に基づいて、前記抽出された第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン処理により中間調を再現する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンタは、オフセット印刷機に比べてドットゲインが大きいため、同じフォント文字を印刷しても文字が太く印刷されてしまうことがある。そのため、予め画像処理によって文字の線幅を細くする処理(以下、細線化処理という)が行われることがある(例えば、特許文献1参照)。細線化処理は、図9(a)に示すようないわゆるソリッド文字(文字の領域内の画素値がほぼ最大値付近となっている文字をいう)等の太りやすい文字の画像のエッジを捉え、エッジを構成する画素(輪郭)の画素値を一様に引き下げることによって、図9(b)に示すように見た目に細くなるように処理するものである。
【0003】
上述のように、細線化処理は画素値がほぼ最大値付近の値を持つソリッド文字を対象としている。ハーフトーン文字(文字の領域内の画素値が中間調となっている文字をいう)の場合は、文字の太りよりもスクリーン処理によって生じるジャギーが問題となる。例えば、図9(d)は図9(c)に示すハーフトーン文字をスクリーン処理した結果であるが、輪郭部分がギザギザとなってジャギーが生じているのが分かる。これに対し、ジャギーを軽減する目的で図9(e)に示すように輪郭強調処理を施す場合がある。
【特許文献1】特開2005−341249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、輪郭強調処理は文字を太らせる傾向がある。図9(d)に示すハーフトーン文字に比べて図9(e)に示すハーフトーン文字は、輪郭がはっきりした分、文字の線幅が若干太ったように見える。加えて、上述のように細線化を行ったソリッド文字(図9(b)参照)と、輪郭強調処理を施したハーフトーン文字(図9(e)参照)とを比較すると、ハーフトーン文字はソリッド文字より太く見えてしまい、アンバランスな出力となってしまう場合がある。
【0005】
本発明の課題は、細線化と輪郭強調を同時にかつバランスよく行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、画像処理装置において、
画像データに基づいて、当該画像データに含まれる中間調のオブジェクトの最外郭に位置する第1エッジを抽出するとともに、第1エッジの位置よりさらにオブジェクトの内側に位置する第2エッジを抽出するエッジ抽出部と、
前記画像データをスクリーン処理するスクリーン処理部と、
前記スクリーン処理の結果に基づいて、前記抽出された第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を調整する輪郭調整部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、
前記第1エッジ又は第2エッジの画素の出力値を調整する調整係数を入力するための操作部を備え、
前記輪郭調整部は、前記操作部を介して入力された調整係数を用いて、前記第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を演算することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像処理装置において、
前記輪郭調整部は、前記第1エッジ又は第2エッジの画素において、前記スクリーン処理によりドットが出力される場合、当該スクリーン処理の処理結果に基づいてそのドットが出力される画素の出力値を調整することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像処理装置において、
前記第1エッジ又は第2エッジの画素において出力されるドットの出力の程度を調整する調整係数を入力するための操作部を備え、
前記輪郭調整部は、前記操作部を介して入力された調整係数を用いて前記第1エッジ又は第2エッジにおいてドットが出力される画素の出力値を演算することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記オブジェクトは、中間調の文字又は線画のオブジェクトであり、
前記エッジ抽出部は、前記画像データについて入力される画像の属性情報に基づいて、前記画像データに含まれる文字又は線画のオブジェクトを判別し、当該オブジェクトから第1エッジ及び第2エッジを抽出することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、画像処理方法において、
画像データに基づいて、当該画像データに含まれる中間調のオブジェクトの最外郭に位置する第1エッジを抽出するとともに、第1エッジの位置よりさらにオブジェクトの内側に位置する第2エッジを抽出するエッジ抽出工程と、
前記画像データをスクリーン処理するスクリーン処理工程と、
前記スクリーン処理の結果に基づいて、前記抽出された第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を調整する輪郭調整工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の画像処理方法において、
前記輪郭調整工程では、前記第1エッジ又は第2エッジの画素の出力値を調整する調整係数が操作部を介して入力されると、当該調整係数を用いて前記第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を演算することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の画像処理方法において、
前記輪郭調整工程では、前記第1エッジ又は第2エッジの画素において、前記スクリーン処理によりドットが出力される場合、当該スクリーン処理の処理結果に基づいてそのドットが出力される画素の出力値を調整することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の画像処理方法において、
前記輪郭調整工程では、前記第1エッジ又は第2エッジの画素において出力されるドットの出力の程度を調整する調整係数が操作部を介して入力されると、当該調整係数を用いて前記第1エッジ又は第2エッジにおいてドットが出力される画素の出力値を演算することを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜9の何れか一項に記載の画像処理方法において、
前記オブジェクトは、中間調の文字又は線画のオブジェクトであり、
前記エッジ抽出工程では、前記画像データについて入力される画像の属性情報に基づいて、前記画像データに含まれる文字又は線画のオブジェクトを判別し、当該オブジェクトから第1エッジ及び第2エッジを抽出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、5、6、10に記載の発明によれば、中間調の文字、線画のオブジェクトについてはその第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を調整することが可能となる。すなわち、外側に位置する第1エッジの出力値と内側に位置する第2エッジの出力値をともに調整することにより、第1エッジと第2エッジの領域で輪郭強調の度合い、細線化の度合いを調整することができる。これにより、オブジェクトの画像について輪郭強調と細線化を同時にかつバランスよく実現することができる。
【0017】
請求項2、7に記載の発明によれば、調整係数によりオブジェクトの見た目の輪郭線の位置を第1エッジ−第2エッジ間で調整することができる。また、調整係数は操作部を介してユーザが自由に設定することが可能となる。従って、ユーザが目的とする画質に合わせて輪郭強調、細線化のバランス調整が可能となり、自由度が向上する。
【0018】
請求項3、8に記載の発明によれば、第1エッジ、第2エッジにおいて出力されるドットの出力の程度を調整することができる。すなわち、ドットの出力の程度を下げることによりさらなる細線化を図ることができ、実現したい細線化の程度を調整することができる。
【0019】
請求項4、9に記載の発明によれば、ドットの出力の程度を調整係数によって調整することができ、当該調整係数は操作部を介してユーザが自由に調整することができる。従って、ユーザが目的とする画質に合わせて、輪郭強調、細線化のバランス調整が可能となり、自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本実施形態では、本発明をMFP(Multi Function Peripheral)に適用した例を説明する。
【0021】
まず、構成を説明する。
図1は、MFP100を示す図である。
MFP100は、外部PC(パーソナルコンピュータ)200と接続されており、当該外部PC200から送信されたPDL(Page Description Language)形式のデータから画像データを生成して画像処理した後、プリント出力するものである。
図1に示すように、MFP100は、画像処理部10、制御部11、コントローラ12、操作部13、表示部14、記憶部15、画像メモリ16、出力装置17を備えて構成されている。
【0022】
MFP100は、プリント出力を以下の手順で行う。
まず、外部PC200内部においてアプリケーションはプリントすべきドキュメントのデータを外部PC200内部のプリンタドライバソフトに送る。プリンタドライバソフトはドキュメントデータをPDL形式に変換し、これを外部PC200からMFP100のコントローラ12に送信する。コントローラ12は、PDL形式に変換されたドキュメントデータをラスタライズして画素毎の画像データCを生成する。そして、これらを画像処理部10に出力する。画像処理部10では入力された画像データCに画像処理を施して出力画像データLAを生成する。この出力画像データLAを出力装置17がプリント出力する。
【0023】
以下、各部について説明する。
制御部11は記憶部15に記憶された各種制御プログラムとの協働によりMFP100の各部を集中制御する。
コントローラ12は、ラスタライズ処理により画素毎の画像データCと属性情報TAGを生成する。コントローラ12は、PDLデータが入力されると、これに含まれるPDLコマンドを解析し、描画すべき画像単位(これをオブジェクトという)毎に分類してディスプレイリストを作成する。ディスプレイリストは描画すべきオブジェクトの位置座標、領域データ若しくは色データのアドレス情報等が記述された中間データである。
【0024】
コントローラ12は、作成したディスプレイリストに基づき、プリンタで使用可能な色材C(シアン)、M(マジェンタ)、Y(イエロー)、K(黒)毎の画像データCを生成する。画像データCはディスプレイリストに基づいて描画するオブジェクトについて画素を割り当て、この割り当てた画素毎に画素値を設定したものである。また、コントローラ12は生成した画像データCについて、ディスプレイリストに基づき個々の画素についてその画像属性を判別し、その判別結果として属性情報TAGを生成する。属性情報TAGは画素単位で生成し、画素が文字であることを示すTEXT、線画であることを示すGRAPHICS、写真画であることを示すIMAGEに分類される。
【0025】
操作部13は、オペレータの操作指示を入力するためのものであり、各種キーや表示部14と一体に構成されるタッチパネル等を備えて構成される。操作部13は、操作に応じた操作信号を生成して制御部11に出力する。
表示部14は、制御部11の制御に従ってディスプレイ上に操作画面等を表示する。
記憶部15は、各種制御プログラムの他、処理に必要なパラメータや設定データ等を記憶している。
画像メモリ16は、画像データを記憶するためのメモリである。
【0026】
出力装置17は、入力される画像データに基づいてプリント出力を行う。出力装置17は、電子写真方式によるプリント出力を行い、例えばプリント用紙を収容する給紙部、感光ドラムを有する露光部、トナーを付着させる現像部、トナーを定着させる定着部等からなる。プリント出力時にはプリントすべき画像データに基づいて露光部が感光ドラム上にレーザ光等を照射して静電潜像を形成し、現像部がトナーを付着させる。これにより感光ドラム上に形成されたトナー像を給紙部から給紙されたプリント用紙に転写させ、この転写されたトナー像を定着部において定着させる。
【0027】
次に、図2を参照して画像処理部10について説明する。
図2に示すように、画像処理部10はエッジ抽出部111、スクリーン処理部112、輪郭調整部113を備えて構成されている。画像処理部10にはコントローラ12において生成された各色の画像データCが入力されるが、画像処理部10では各色の画像データCについてそれぞれ後述する処理を施す。
なお、以下の処理においては、画像データC、SC、LAを構成する各画素の画素値をそれぞれC、SC、LAと表す。
【0028】
エッジ抽出部111は、入力された画像データCに基づいて画像データCから中間調の文字又は線画のオブジェクトのエッジを抽出する。エッジは外エッジと内エッジを抽出する。外エッジはオブジェクトの最外郭に位置する画素をいう。内エッジは外エッジに隣接して外エッジよりさらにオブジェクトの内側に位置する画素をいう。外エッジは第1エッジに相当し、内エッジは第2エッジに相当する。
【0029】
図3に、外エッジと内エッジの例を示す。
図3(a)は元の画像データCに含まれる中間調の線画のオブジェクトg1を示す図であり、図3(b)は図3(a)のオブジェクトg1における外エッジ及び内エッジを示す図である。図3(b)に示すように、オブジェクトg1の最外郭を構成する画素が外エッジ、そのすぐ内側の画素が内エッジとなる。
【0030】
エッジ抽出部111は、まず画像データCに含まれる中間調の文字又は線画のオブジェクトを判定する。外エッジ及び内エッジの判定は画像データCとともにコントローラ12から入力される属性情報TAGを参照して行う。つまり、輪郭部分の調整を行うのは中間調の文字又は線画のオブジェクトであるので、TAG=Text又はImageの場合のみ、外エッジ及び内エッジの抽出を行えばよい。
【0031】
次に、エッジ抽出部111は、中間調の文字又は線画と判定されたオブジェクトの外エッジ、内エッジを抽出する。抽出には、図4に示すような抽出オペレータp1、p2を使用する。エッジ抽出部111は、画像データCを構成する全ての画素について外エッジ又は内エッジであるか否かを判定するため、上記抽出オペレータp1、p2を順次画像に当てはめていく。このとき判定対象となる画素を注目画素という。注目画素の位置が抽出オペレータp1、p2の中心画素の位置となるように抽出オペレータp1、p2を当てはめる。そのため、エッジ抽出部111は、少なくとも5ライン分のラインバッファを備え、画像データCの5ライン分の画素値を保持するものとする。
【0032】
抽出オペレータp1は、外エッジを抽出するためのテンプレートパターンであり、抽出オペレータp2は内エッジを抽出するためのテンプレートパターンである。何れも十字形をしており、中心に位置する画素を注目画素の位置として位置づけている。
【0033】
抽出オペレータp1は中心画素(図4において斜線で示す画素)がオブジェクトの内側に位置し、中心画素に隣接する上下左右の画素(図4において白色で示す画素)のうち少なくとも1つがオブジェクトの外側に位置する場合、中心画素つまり注目画素を外エッジとして抽出するものである。これに対し、抽出オペレータp2は中心画素及び中心画素に隣接する上下左右1画素分の画素(図4において斜線で示す画素)が全てオブジェクトの内側に位置し、中心画素の上下左右において中心画素から2画素離れた画素(図4において白色で示す画素)のうち少なくとも1つがオブジェクトの外側に位置する場合、中心画素つまり注目画素を内エッジとして抽出する。
【0034】
外エッジ及び内エッジの判定方法について説明する。
画像に当てはめた抽出オペレータp1、p2に対応する画素の画素値を、図5に示すようにそれぞれI1〜I7とする。注目画素の画素値はCで示す。つまり、エッジ抽出部111は、ラインバッファに保持された5ライン分の画素値を参照し、抽出オペレータp1、p2に対応する画素の画素値I1〜I7、Cを得る。なお、抽出オペレータp1、p2に対応する画素がない場合、例えば画像データの領域外にあたる場合等には、当該領域外にあたる画素の画素値を0として処理に用いることとする。
【0035】
次いで、エッジ抽出部111は、画素値I1〜I7、Cから下記式1a〜1gに従って反転方向エッジRx(x=0〜7)を求める。
R0=I1-I0(R0<0のとき、P0=0とする)…(1a)
R1=C-I1(R1<0のとき、P1=0とする)…(1b)
R2=I3-I2(R2<0のとき、P2=0とする)…(1c)
R3=C-I3(R3<0のとき、P3=0とする)…(1d)
R4=C-I4(R4<0のとき、P4=0とする)…(1e)
R5=I4-I5(R5<0のとき、P5=0とする)…(1f)
R6=C-I6(R6<0のとき、P6=0とする)…(1g)
R7=I6-I7(R7<0のとき、P7=0とする)
【0036】
そして、エッジ抽出部111は、C>THであり、かつR1、R3、R4、R6の何れかが、R1>TH、R3>TH、R4>TH、R6>THであるとき、注目画素は外エッジであると判定する。THは外エッジ又は内エッジを判定するために予め準備されている閾値である。
一方、R1=R3=R4=R6及びC>THであり、かつR0、R2、R5、R7の何れかが、R0>TH、R2>TH、R5>TH、R7>THであるとき、エッジ抽出部111は注目画素が内エッジであると判定する。
【0037】
エッジ抽出部111は、注目画素について外エッジの判定結果を示すフラグ情報OUTED、内エッジの判定結果を示すフラグ情報INEDを生成する。具体的には、外エッジ又は内エッジであると判定された場合はOUTED=1又はINED=1とし、外エッジ又は内エッジではないと判定された場合にはOUTED=0又はINED=0とする。生成されたフラグ情報OUTED、INEDは輪郭調整部113へ出力される。
【0038】
スクリーン処理部112は、画像データCをスクリーン処理し、その処理データSCを生成する。スクリーン処理としてはディザ処理、誤差拡散処理等が挙げられる。ここではディザ処理について説明する。
スクリーン処理部112は、複数の閾値がマトリクス状に配置されたマトリクスを備え、このマトリクスを画像に当てはめる。当てはめた画像の各画素の画素値と、各画素の位置に対応するマトリクスの閾値と比較し、その比較結果に基づいて画素値の2値化又は多値化を行う。2値化の場合は1つの閾値により0又は1の2値の画素値に変換するが、多値化の場合は2つの閾値を用いて多値の画素値に変換する。すなわち、2つの閾値により変換関数を作成し、この変換関数に画素値を入力して、変換後の多値の画素値を得る。
【0039】
輪郭調整部113は、OUTED、INEDを参照し、スクリーン処理の処理結果に基づいて、オブジェクトの外エッジ及び内エッジの画素の出力値を調整し、調整後の出力画像データLAを生成する。出力値は画像データC、スクリーン処理の処理データSCを用いて演算される。
【0040】
輪郭調整部113は、注目画素の画素値Cを用いて係数pv、pwを算出する。係数pv、pwはドットの出力の程度を調整するための係数であり、下記式2、3により画素値Cの1次関数により求める。
pv=LAAV×C+LABV…(2)
pw=LAAW×C+LABW…(3)
ただし、pv<0のときpv= 0、pv>Maxのときpv= Maxとする。同様に又はpw<0のときpw=0、pw>Maxのときpw=Maxとする。Maxは取り得る画素値の最高値である。
また、LAAV、LAAW、LABV、LABWは予め設定されている係数である。
【0041】
例えば、pvの1次関数式は図6に示すようなものとなる。
図6に示すように、pvは入力される画素値Cに応じた値となる。LAAV、LAAWは1次関数の傾きを示し、0〜2の値をとり得る。また、LABV、LABWは切片であり、-Max/2〜Max/2の値をとり得る。
【0042】
pv、pwを求めると、輪郭調整部113はpv、pwを用いて下記式4〜7により、外エッジ用の演算係数pvout、pwout、内エッジ用の演算係数pvin、pwinを求める。
pvout=pv×β…(4)
pwout=pw×α…(5)
pvin=pv×γ…(6)
pwin=pw×(1-α)…(7)
【0043】
上記式で、αは外エッジと内エッジのうち、一方を強調し、他方を抑制するよう調整するための調整係数であり、0〜1の値をとり得る。この調整係数αを可変させることにより、オブジェクトの外エッジと内エッジ間で、オブジェクトの見た目の輪郭線の位置を調整することができる。βは外エッジにおけるドットの出力の程度を調整する調整係数であり、γは内エッジにおけるドットの出力の程度を調整する調整係数である。β、γは0〜1の値域をとり得る。
【0044】
次に、係数pv、pw、pvout、pwout、pvin、pwinを用いて輪郭調整部113により行われる処理の内容を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
輪郭調整部113は、画像データCに対し画素毎に下記処理を行う。この処理が行われる画素が注目画素である。
まず、図7に示すように輪郭調整部113はOUTED、INEDを参照し、注目画素について外エッジ又は内エッジに該当するかを判断する(ステップS1)。つまり、OUTED=1であれば外エッジであると判断し、INED=1であれば内エッジであると判断する。また、OUTED=0かつINED=0であれば注目画素は外エッジでも内エッジでもないと判断する。
【0045】
注目画素が外エッジでも内エッジでもないと判断した場合(ステップS1;N)、注目画素の出力値LAとしてスクリーン処理後の画素値SCを出力する(ステップS2)。すなわち、輪郭調整部113では中間調の文字又は線画の外エッジ又は内エッジのみを処理の対象とし、中間調の文字又は線画の外エッジ又は内エッジ以外の画像部分については、特に画素値の調整は行わずにスクリーン処理された画素値SCをそのまま出力する。
【0046】
一方、外エッジ又は内エッジである場合(ステップS1;Y)、注目画素のスクリーン処理後の画素値SCと閾値DOTONを比較することにより、スクリーン処理によって注目画素においてドットを出力することになったか否かを判断する(ステップS3)。閾値DOTONは、ドット出力するか否かの境界値として予め設定されている閾値である。輪郭調整部113は、SC≧DOTONであれば(ステップS3;Y)、注目画素においてドットが出力されると判断し、ステップS7の処理へ移行する。一方、SC≧DOTONではない場合(ステップS3;N)、注目画素においてドットは出力されないと判断し、ステップS4の処理に移行する。
【0047】
先に、ステップS4の処理から説明する。
ステップS4では、注目画素の画素値Cと閾値HDENとを比較することにより、注目画素の画素値Cは高レベル値か否かを判断する(ステップS4)。閾値HDENは、高レベル値か否かの境界値として予め設定されている閾値である。輪郭調整部113は、C>HDENであれば(ステップS4;Y)、注目画素の画素値Cは高レベル値にあると判断する。次いで、OUTED、INEDを参照して注目画素が外エッジ又は内エッジの何れであるかを判断し、外エッジであれば注目画素の出力値LAとしてLA=pwout、内エッジであればLA=pwinを出力する(ステップS5)。
【0048】
一方、C>HDENではない場合(ステップS4;N)、同様にOUTED、INEDを参照して注目画素について外エッジ又は内エッジであるかを判断し、外エッジであればLA=SCout、内エッジであればLA=SCinを算出してこれを出力する(ステップS6)。
SCout、SCinは下記式8、9により求める。
SCout=SC×β…(8)
SCin=SC×γ…(9)
【0049】
この調整係数α、β、γは、操作部13を介してユーザが自由に設定することが可能である。輪郭調整部113は、操作部13を介して入力されたα、β、γの値を用いて上記係数pvout、pwout、pvin、pwinを求める。輪郭調整部113は、操作部13を介して入力されたβ、γの値を用いて上記SCout、SCinを演算する。
【0050】
次に、ステップS3においてドット出力されると判断された場合について、ステップS7の処理から説明する。
ステップS7では、スクリーン処理後の画素値SCと予め算出しておいたpvとを比較することにより、スクリーン処理による画素値SCは低レベルであるか否かを判断する(ステップS7)。SC<pvであれば(ステップS7;Y)、画素値SCは低レベルであると判断し、これを引き上げるように出力値LAの調整を行う。まず、輪郭調整部113は、OUTED、INEDを参照し、注目画素が外エッジか内エッジかを判断する。そして、外エッジであればLA=pvoutを出力し、内エッジであればLA=pvinを出力する(ステップS8)。
【0051】
一方、SC<pvでない場合(ステップS7;N)、画素値SCは低レベルではないと判断し、ステップS6の処理へ移行して注目画素が外エッジであればLA=SCout、内エッジであればLA=SCinを出力する。
【0052】
このようにして中間調の文字又は線画の外エッジ又は内エッジの画素値LAを調整することにより、外エッジ及び内エッジにおいて強調と抑制のバランスを調整することが可能となる。
図8に調整結果を示す。
図8(a)はα=β=γ=1として出力値LAを調整した結果であり、図8(b)はα=0、β=γ=1とした場合の調整結果である。また、図8(c)は0<α<1、β=γ=1の場合、図8(d)は0<α<1、0<β<1、γ=1の場合の調整結果である。
【0053】
α=1とした場合、外エッジについては調整係数α=1の乗算により、pwoutとしてpwがそのまま出力されることとなるが、内エッジについては係数(1-α)=0の乗算により、pwinは0となる。その結果、外エッジの出力値LAは強調され、内エッジの出力値LAは抑制されることとなる。α=0の場合、その関係は逆となり、外エッジの出力値LAは抑制され、内エッジの出力値LAは強調されることとなる。すなわち、αを調整することにより、図8(a)、(b)からも分かるように、見た目の輪郭線の位置をオブジェクトの外エッジと内エッジの間で変動させることが可能である。0≦α≦1の範囲でαを調整すれば、外エッジにはα倍の強度の輪郭線が現れ、内エッジには(1-α)倍の強度の輪郭線が現れる。これら2つの輪郭線により視覚的にはあたかも外エッジよりもα画素分内側(つまり、内エッジから(1-α)画素分外側)にオブジェクトの輪郭線が移動したかのように見える。
【0054】
さらに、外エッジ又は内エッジにおいて出力されるドットの出力の程度をβ、γにより調整することにより、オブジェクトの細線化の程度を調整することが可能となる。β、γが何れも1の場合、特に調整はされず、外エッジ又は内エッジ上でドットが出力される画素の出力値LAはスクリーン処理後の画素値SCそのままとなる。一方、β、γを1より引き下げると、その下げ幅に応じて画素値SC、pvoutの値は小さくなる。例えば、β=1のとき図8(c)に示すように外エッジ上にある画素値SC=Maxのドットが、β<1とすると画素値SCの値が小さくなるため、図8(d)に示すようにドットの出力が小さくなる。その結果、オブジェクトの輪郭線が抑制され、細線化されたように見える。
【0055】
β、γの調整例としては、前述のようなγ=1のままでβだけを下げる方法の他、β=0としてγを下げることによってさらに細線化を強めることもできる。
【0056】
さらに、例えばαとβを連動させてβ=0.5+α、γ=1とすることにより、見た目の輪郭線の移動とドット出力の調整によるオブジェクトの細線化を連動させることもできる。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、中間調の文字、線画のオブジェクトについては、外エッジ及び内エッジを抽出し、外エッジ及び内エッジについてのスクリーン処理結果に基づいて、その出力値LAを調整する。外エッジ及び内エッジにおいてスクリーン処理の結果、ドットを出力しないと判断された画素については、元の画素値Cが高レベルであれば当該画素値Cを用いて出力値LAが減少するように演算し、元の画素値Cが高レベルでなければスクリーン処理値SCを用いて出力値LAを演算する。一方、スクリーン処理の結果、ドットを出力すると判断された画素については、スクリーン処理後の画素値SCを参照し、画素値SCが低レベルでなければ画素値SCを用いて出力値LAを演算し、低レベルであれば元の画素値Cを用いて出力値LAが増大するように演算する。
【0058】
このように、第1エッジと第2エッジについて出力値LAを調整することにより、オブジェクトの輪郭強調と細線化を同時にかつバランスよく行うことができる。
例えば、第1エッジを強調する(輪郭強調する)と、スクリーン処理のドットによって生じるジャギーを解消することができるが、オブジェクト全体が太って見えることとなる。これに対し、第1エッジの強調の度合いを下げ、第2エッジの強調の度合いを大きくすることにより、見た目の輪郭線の位置をオブジェクトの内側に移動させることができる。つまり、細線化が実現される。
【0059】
つまり、第1エッジだけでなく第2エッジにおいても出力値LAを調整することにより、見た目の輪郭線の位置をオブジェクトの外側−内側間で調整することが可能となる。
また、1つのエッジだけでは輪郭を強調するか抑制するか何れかによる効果しか得られないため、輪郭の強調又は抑制によって解消できないノイズが生じる場合がある。しかし、2つのエッジを用いることにより強調と抑制の何れも行うことが可能となる。
【0060】
また、第1エッジ、第2エッジの何れを強調し、何れを抑制するかは調整係数αによって調整することができ、当該調整係数αは操作部13を介してユーザが自由に設定することが可能である。従って、ユーザが目的とする画質に合わせて輪郭強調、細線化のバランス調整が可能となり、自由度が向上する。
【0061】
さらに、第1エッジ及び第2エッジにおいてスクリーン処理によりドットが出力される画素については、そのドットの出力の程度を調整することができる。例えば、オブジェクトの中間調の濃度が高く、太って見えるのを防ぐため、細線化をしたい場合には第1エッジにおいてはドットの出力の程度を下げればよい。さらに細線化を行いたい場合には第2エッジにおいてドットの出力の程度を下げればよく、実現したい細線化の程度によって自由に調整が可能となる。
【0062】
上記ドットの出力の程度は調整係数β、γによって調整することができ、当該調整係数β、γは操作部13を介してユーザが自由に設定することが可能である。従って、ユーザが目的とする画質に合わせて輪郭強調、細線化のバランス調整が可能となり、自由度が向上する。
【0063】
なお、上記実施形態は本発明を適用した好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、上記実施形態ではMFPに本発明を適用した例を説明したが、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置において画像処理を行うソフトウェア処理として本発明を実施することとしてもよい。
【0064】
また、第1エッジとしてオブジェクトの最外郭に位置する画素を外エッジ、第2エッジとしてその外エッジのすぐ内側に隣接する画素を内エッジとして、外エッジ及び内エッジの画素値を調整することとしたが、第1エッジ及び第2エッジのそれぞれを2画素分ずつ抽出する等、複数画素の幅としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態におけるMFPの構成を示す図である。
【図2】図1の画像処理部の構成を示す図である。
【図3】中間調のオブジェクトの外エッジ及び内エッジを示す図である。
【図4】外エッジ又は内エッジを抽出するための抽出オペレータを示す図である。
【図5】抽出オペレータを当てはめた画像領域を示す図である。
【図6】係数pvを求めるために用いる1次関数を示す図である。
【図7】図1の輪郭調整部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】輪郭調整部における出力値の調整結果を示す図である。
【図9】(a)はソリッド文字のオブジェクトを示す図である。(b)(a)のオブジェクトの輪郭に対し、細線化処理を行った結果を示す図である。(c)ハーフトーン文字のオブジェクトを示す図である。(d)(c)のオブジェクトに対し、スクリーン処理を施した処理結果を示す図である。(e)(c)のオブジェクトに対し、スクリーン処理とともに輪郭強調処理を施した処理結果を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
100 MFP
10 画像処理部
111 エッジ抽出部
112 スクリーン処理部
113 輪郭調整部
11 制御部
12 コントローラ
13 操作部
14 表示部
15 記憶部
16 画像メモリ
17 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて、当該画像データに含まれる中間調のオブジェクトの最外郭に位置する第1エッジを抽出するとともに、第1エッジの位置よりさらにオブジェクトの内側に位置する第2エッジを抽出するエッジ抽出部と、
前記画像データをスクリーン処理するスクリーン処理部と、
前記スクリーン処理の結果に基づいて、前記抽出された第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を調整する輪郭調整部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1エッジ又は第2エッジの画素の出力値を調整する調整係数を入力するための操作部を備え、
前記輪郭調整部は、前記操作部を介して入力された調整係数を用いて、前記第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を演算することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記輪郭調整部は、前記第1エッジ又は第2エッジの画素において、前記スクリーン処理によりドットが出力される場合、当該スクリーン処理の処理結果に基づいてそのドットが出力される画素の出力値を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1エッジ又は第2エッジの画素において出力されるドットの出力の程度を調整する調整係数を入力するための操作部を備え、
前記輪郭調整部は、前記操作部を介して入力された調整係数を用いて前記第1エッジ又は第2エッジにおいてドットが出力される画素の出力値を演算することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記オブジェクトは、中間調の文字又は線画のオブジェクトであり、
前記エッジ抽出部は、前記画像データについて入力される画像の属性情報に基づいて、前記画像データに含まれる文字又は線画のオブジェクトを判別し、当該オブジェクトから第1エッジ及び第2エッジを抽出することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像データに基づいて、当該画像データに含まれる中間調のオブジェクトの最外郭に位置する第1エッジを抽出するとともに、第1エッジの位置よりさらにオブジェクトの内側に位置する第2エッジを抽出するエッジ抽出工程と、
前記画像データをスクリーン処理するスクリーン処理工程と、
前記スクリーン処理の結果に基づいて、前記抽出された第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を調整する輪郭調整工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
前記輪郭調整工程では、前記第1エッジ又は第2エッジの画素の出力値を調整する調整係数が操作部を介して入力されると、当該調整係数を用いて前記第1エッジ及び第2エッジの画素の出力値を演算することを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記輪郭調整工程では、前記第1エッジ又は第2エッジの画素において、前記スクリーン処理によりドットが出力される場合、当該スクリーン処理の処理結果に基づいてそのドットが出力される画素の出力値を調整することを特徴とする請求項6又は7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記輪郭調整工程では、前記第1エッジ又は第2エッジの画素において出力されるドットの出力の程度を調整する調整係数が操作部を介して入力されると、当該調整係数を用いて前記第1エッジ又は第2エッジにおいてドットが出力される画素の出力値を演算することを特徴とする請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記オブジェクトは、中間調の文字又は線画のオブジェクトであり、
前記エッジ抽出工程では、前記画像データについて入力される画像の属性情報に基づいて、前記画像データに含まれる文字又は線画のオブジェクトを判別し、当該オブジェクトから第1エッジ及び第2エッジを抽出することを特徴とする請求項6〜9の何れか一項に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−199080(P2008−199080A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29137(P2007−29137)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】