説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】複数の画像解析処理を同時に実行する場合に、解析処理がスキップされたことをクライアント側で区別できるようにする。
【解決手段】配信側で間に合った解析処理には解析した結果を、間に合わなかった解析処理には最後に解析した結果を、何フレーム前の情報であるかを示す情報と一緒に保存し、現在の解析結果としてクライアントに配信する。クライアント側では、間に合った解析結果と、間に合わなかった解析結果とを区別して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置及び画像処理方法に関し、特に、複数の画像解析処理を同時に実行する際に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットなどIP(Internet Protocol)ネットワークを利用した画像配信システムが増加してきており、スキー場や動物園の状況を配信するインターネットサイトや、店舗・ビル監視などにも採用されている。例えば、店舗監視やビル監視においては、撮像した画像を解析して特定の事象を検知し、事象が発生した際の画像を蓄積したり、管理者が閲覧・確認したりするということが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1ではカメラからの入力画像に複数の画区を設け、画区毎に画像レベルの変化を検出し、閾値を超えた場合に画区内の画像データを蓄積する方法が開示されている。また、特許文献2では入力画像の状況を判定し、複数の画像解析処理を切り替えて解析結果を出力する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−238180号公報
【特許文献2】特開2007−264706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前提として、撮像した画像を常に解析しながら、画像データと解析結果を配信するためには、画像解析処理を一定時間内に完了させる必要がある。しかしながら、前述の特許文献1に開示された従来技術では、入力画像が複雑で画像処理時間が想定以上にかかった場合でも全画区の画像処理を実行するので、画像処理が時間と共に遅れてしまう。また、前述の特許文献2に開示された従来技術では、複数の画像解析処理を実行することは想定されていない。
【0006】
複数の画像解析処理を同時に実行する場合、全ての解析処理を一定時間内で完了できず解析処理をスキップすることがある。しかしながら、画像データと解析結果を配信するだけでは、受信したクライアント側では解析処理がスキップされたのかが分からない、という問題があった。
本発明は前述の問題点に鑑み、複数の画像解析処理を同時に実行する場合に、解析処理がスキップされたことをクライアント側で区別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、監視対象を撮像して撮像画像を生成する撮像処理手段と、前記撮像処理手段により生成された撮像画像に対して特定の事象が発生したかを解析する画像解析手段と、前記撮像画像と前記画像解析手段での解析結果を記憶媒体に一時保存する一時記憶手段と、前記撮像画像と前記解析結果を相手端末まで配信する配信処理手段とを備え、前記画像解析手段は、前記解析結果に、現在の撮像画像に対する画像解析処理を実施した場合は現在の解析結果を含め、解析処理を実施しなかった場合には過去の解析結果をどれくらい過去の情報なのかを示す過去情報と共に含め、前記配信処理手段は、前記撮像画像と現在または過去の前記解析結果とを一緒に配信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の画像解析処理を同時に実行する場合に、解析処理がスキップされたことをクライアント側で区別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像配信システムの概略構成を説明する図である。
【図2】カメラサーバの構成例を示すブロック図である。
【図3】クライアントの詳細な構成例を示すブロック図である。
【図4】カメラサーバのソフトウェア機能構成を説明するブロック図である。
【図5】クライアントのソフトウェア機能構成を説明するブロック図である。
【図6】第1の実施形態における配信データの例を示す図である。
【図7】カメラサーバの画像解析処理を説明するフローチャートである。
【図8】クライアントの画像認識処理を説明するフローチャートである。
【図9】クライアントで受信したライブ画像と解析結果を示す図である。
【図10】第2の実施形態における配信データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかわる画像配信システムの概略構成を示す図である。この例では、複数のカメラサーバ100、110ならびにクライアント120がネットワーク130を介して相互に接続される。
【0011】
カメラサーバ100及び110は撮影画角可変、もしくは撮影画角が固定されているカメラを備え、監視対象を撮像して撮像画像を生成する撮像処理を行い、画像データをネットワーク130を介して相手端末に配信する。カメラサーバ100及び110は独立で動作しており、クライアント120はカメラサーバ100及び110に個別にアクセスし、ライブ画像を取得する。それぞれの詳細については後述する。
【0012】
なお、図1においては、説明の簡略化のためにカメラサーバの台数は2台としているが、3台以上であっても構わない。またクライアント120以外にもカメラサーバ100及び110にアクセスして画像の受信や蓄積を行う他のクライアントがあっても構わない。
【0013】
ネットワーク130は、Ethernet(登録商標) 等の通信規格を満足する複数のルータ、スイッチ、ケーブル等から構成される。本実施形態においては各サーバ・クライアント間の通信が支障なく行えるものであればその通信規格、規模、構成を問わない。故にインターネットからLAN(Local Area Network)にまで適用可能である。
【0014】
図9は、クライアント120で受信したライブ画像と解析結果を表示している例を示す図である。図9(a)は、ディスプレイ上に画像フレーム全体900、受け付け901、絵画902が存在しており、これに対して動き検知領域910、置き去り検知領域920、持ち去り検知領域930を設定している例である。以下、動き検知領域910を検知領域A、置き去り検知領域920を検知領域B、持ち去り検知領域930を検知領域Cと定義する。
【0015】
図9(b)は、実際に画像解析をしている時の例を示す図であり、設置物や画像解析対象は図9(a)と同じであるが、さらに動き検知領域910内での複数の物体911が認識されている。また、置き去り検知領域920内には物体921が認識されており、持ち去り検知領域930内には物体931が認識されている。
【0016】
本実施形態では、実線は現在の画像フレームの解析結果であることを示し、点線が過去の画像フレームの解析結果であることを示している。詳細は、別途他の図と一緒に説明する。
【0017】
このように、クライアント120のディスプレイ上で間に合っている解析処理と、間に合っていない解析処理とを容易に分別できる。これにより、例えば想定シーンで全ての解析処理が間に合う様にカメラサーバ100、110の処理負荷を制限するような設定を行うこともできる。
【0018】
図2は、カメラサーバ100及び110の構成例を示すブロック図である。
CPU200、1次記憶装置210、2次記憶装置220、画像キャプチャI/F230、ネットワークI/F260が内部バス201を介して相互に接続されている。ここで、1次記憶装置210はRAMに代表される書き込み可能な高速の記憶装置で、OSや各種プログラム及び各種データがロードされる。また、OSや各種プログラムの作業領域としても使用される。
【0019】
2次記憶装置220はFDDやHDD、フラッシュメモリ、CD−ROMドライブ等に代表される不揮発性を持った記憶装置で、OSや各種プログラム及び各種データの永続的な記憶領域として使用される他に、短期的な各種データの記憶領域としても使用される。
カメラサーバ100及び110の1次記憶装置210及び2次記憶装置220に置かれる各種プログラム等の詳細については後述する。
【0020】
画像キャプチャI/F230にはカメラ270が接続され、カメラ270が撮影した画像データを所定のフォーマットに変換・圧縮して1次記憶装置210に転送する。
ネットワークI/F260は、前述のネットワーク130と接続するためのI/Fであり、Ethernet等の通信媒体を介してクライアント120等との通信を行うためのものである。
【0021】
図3は、クライアント120の詳細な構成を示すブロック図である。CPU300、1次記憶装置310、2次記憶装置320、ユーザ入出力I/F330、ネットワークI/F350が内部バス360を介して相互に接続されている。ここで、1次記憶装置310はRAMに代表される書き込み可能な高速の記憶装置で、OSや各種プログラム及び各種データがロードされ、またOSや各種プログラムの作業領域としても使用される。
【0022】
2次記憶装置320はFDDやHDD、フラッシュメモリ、CD−ROMドライブ等に代表される不揮発性を持った記憶装置で、OSや各種プログラム及び各種データの永続的な記憶領域として使用される他に、短期的な各種データの記憶領域としても使用される。クライアント120の1次記憶装置310及び2次記憶装置320に置かれる各種プログラム等の詳細については後述する。
【0023】
ユーザ入出力I/F330にはキーボード、マウス、ディスプレイ等で代表されるユーザ入出力機器(I/O機器)370が接続され、ユーザとの入出力を司る。ネットワークI/F350は前述のネットワーク130と接続するためのI/Fであり、Ethernet等の通信媒体を介してカメラサーバ100等との通信を行うためのものである。
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の画像処理装置の第1の実施形態について説明する。
図4は、カメラサーバ100、110のソフトウェア機能構成を説明するブロック図である。
動作状態になると、1次記憶装置210上には、OS400、撮像処理プログラム410、画像解析プログラム411、配信処理プログラム412、及び一時記憶部413がロードされる。
【0025】
OS400はカメラサーバ全体を制御する基本プログラムである。
撮像処理プログラム410は、カメラ270で生成された画像フレームを画像キャプチャI/F230を経由して取得し符号化して、一時記憶部413に一時保存する。撮像処理プログラム410は、一定間隔で次々と画像フレームを生成していく。
【0026】
画像解析プログラム411は、一時記憶部413に保存している画像フレームを解析する。そして、画像上のどこにどんな形の物体がどれぐらいの時間存在しているのか、といった内容と共に、予め設定された1つまたは複数の閾値を超えたことにより特定の事象が発生したことを検出する。この解析処理を行う際、特定の事象の検出有無に関わらず、画像フレーム毎の解析結果を一時記憶部413に出力する。本実施形態では解析結果は画像フレームの画像ヘッダ領域の一部に保存する。
【0027】
また、特定の事象を検出する解析処理は1つとは限らず、本実施形態では3種類の解析処理を実施する。このため、1つの画像フレームに対する最終解析結果は3つの事象に対する個々の解析結果を含む。画像解析プログラム411は、3つの個々の解析処理を順次実行する。しかし、画像フレームのデータサイズは撮影シーンなどによって大きく変動するため、必ずしも次の画像フレームが生成されるまでに3つの画像解析処理が完了するとは限らない。
【0028】
仮に、必ず全ての解析処理が完了してから次の画像フレームの解析処理を開始すると、配信処理が少しずつ遅れるだけでなく、一時記憶部413の空容量がなくなっていき、画像フレームの生成処理が中断してしまう。また、次の画像フレームが出来ている場合は解析処理に時間がかかり過ぎていることを意味するため、解析処理をスキップする必要がある。本実施形態では、個々の解析結果は少なくとも何フレーム前の解析結果かを示す差分フレーム番号とその解析結果から構成される。
【0029】
個々の解析処理において、解析処理を実施した場合には差分フレーム番号にはゼロを、解析結果には現在の画像フレームの解析結果を保存する。また、解析処理を実施できなかった場合には、最後の解析結果が何フレーム前かを調べ、現在のフレーム番号との差を差分フレーム番号に保存し、その時の解析結果を現在の解析結果として保存する。
【0030】
本実施形態では、どれぐらい過去の解析結果なのかを示す過去情報に差分フレーム番号を使用したが、配信、または生成時のフレーム番号そのもの、差分の時間間隔、実時間そのものなど、他の情報でも構わない。例えば、連続して増えていく画像フレーム番号、画像フレーム番号の相対的な差分を示す差分フレーム番号、時刻情報、または差分の時刻情報を使用してもよい。
【0031】
配信処理プログラム412は、各種クライアントからのリクエストに応じ、一時記憶部413に保存されている最終解析結果を含んだ画像フレームを、ネットワークI/F260制御しネットワーク130を介して各種クライアントへ送り届ける。各プログラム同士の連携は、必要に応じてOS400が提供する機能を用いることとする。
【0032】
図5は、クライアント120のソフトウェア機能構成を説明するブロック図である。
1次記憶装置310上には、OS500、入出力制御プログラム510、画像認識プログラム511、受信処理プログラム512、及び一時記憶部513がロードされる。
OS500はカメラサーバ全体を制御する基本プログラムである。
【0033】
入出力制御プログラム510は、ユーザがキーボードやマウスなどI/O機器370を操作されたことにより、カメラサーバ100または110から画像フレームと解析結果を取得したいという要望を受け付け、受信処理プログラム512に通知する。本実施形態では、ユーザがキーボードやマウスなどを直接操作すると説明したが、ネットワーク経由の操作や、自動実行プログラムでも実現可能である。
【0034】
受信処理プログラム512は、ネットワークI/F350を制御し、ネットワーク130を介してカメラサーバ100または110から画像解析結果を含んだ画像フレームを受信し、一時記憶部513に保存する。
【0035】
画像認識プログラム511は、一時記憶部513に保存してある画像フレーム中の個々の解析結果から、特定の事象が発生しているのかどうか、画像上のどこにどんな形の物体がどれぐらいの時間存在しているのか、といった内容を認識する。また、個々の解析結果は差分フレーム番号を含むので、画像上に存在する物体情報が何フレーム前の情報かも認識する。
【0036】
次に、画像認識プログラム511は、解析した画像フレームを入出力制御プログラム510経由でディスプレイ(表示装置)に出力するように依頼する。そして、認識した物体と個々の解析結果の差分フレーム番号から、差分フレーム番号がゼロ、つまり現在表示している画像フレームの解析結果ならば現在認識している物体を実線で囲むように入出力制御プログラム510に表示依頼する。差分フレーム番号がゼロ以外、つまり現在表示している画像フレームより過去の情報ならば点線で囲むように入出力制御プログラム510に表示依頼する。また、差分フレーム番号の大きさにより、複数種類の点線を使い分けて入出力制御プログラム510経由で物体を囲むように表示することも可能である。
【0037】
入出力制御プログラム510は、一時記憶部513に保存されている画像フレームを取得し、ユーザ入出力I/F330を制御して、ディスプレイなどのI/O機器370に画像を表示する。本実施形態では、実線または点線で認識した物体を囲んだが、他にも、囲んだ物体に色をつける、色の透明度を変更する、アラームを出力する、など他の手段によりユーザにわかりやすく通知してもよい。なお、各プログラム同士の連携は、必要に応じてOS500が提供する機能を用いることとする。
【0038】
図6は、本実施形態における配信データの例を示す図である。
図6(a)は、個々の解析処理が全て間に合っている場合であり、領域A、B、Cの解析結果の差分フレーム番号がゼロになっており、全解析結果が画像ヘッダの一部に含まれていることを示している。
【0039】
図6(b)は、領域Aの解析処理は間に合っているが、領域Bの解析結果は1つ古い画像フレームの解析結果を示しており、領域Cの解析結果は2つ古い画像フレームの解析結果であることを示している。また、図6(c)は、領域Aの解析結果が1つ古い画像フレームの解析結果を示しており、領域Bの解析結果は2つ古い画像フレームの解析結果を示しており、領域Cの解析結果は3つ古い画像フレームの解析結果であることを示している。
【0040】
図7は、カメラサーバ100、110の画像解析処理の手順を説明するフローチャートであり、ここではまず図6(a)の解析処理が間に合っている時の説明を行う。
画像解析プログラム411は、装置が電源投入された時に起動する。本実施形態では、装置起動している間は撮像処理プログラム410による画像生成と、画像解析プログラム411による画像解析処理を実施するが、画像配信など必要な期間だけ画像解析プログラム411を起動することも可能である。
【0041】
画像解析プログラム411は起動されると、一時記憶部413に保存してある最新の画像フレームを取得する(S701)。最新の画像フレームが生成されていない場合は生成されるまで待機する。画像フレームを取得すると、S702に進み、現在の解析番号をゼロに初期化する。次に、S703に進み、3つの解析処理ループを開始する。
【0042】
次に、S704において、一時記憶部413に次の画像フレームが既に生成されているか否かを判断する。この判断の結果、生成されている場合は、解析処理に時間がかかり過ぎていることを意味するのでS712に進み、ループ処理を抜ける。一方、S704の判断の結果、次の画像フレームがまだ出来ていない場合はS705に進み、現在の解析番号をチェックする。今回の解析処理においては解析番号がゼロであるので、S706に進んで解析処理Aを実施する。
【0043】
この時は、現在解析している画像フレームの解析結果が得られたので差分フレーム番号はゼロで、解析結果と共に画像ヘッダに保存する(S709)。そして、解析番号をインクリメントする(S710)。次のS711はループ終端であるので、S703のループ始端に戻り、前述した解析処理を実行する。
【0044】
今回の解析処理においては、解析番号はS710において1になったので、ループ始端(S703)も真となり、次画像フレームが生成されているか再度確認する(S704)。次に、S705において解析番号を確認する。現在の解析番号1であるので、S707に進んで解析処理Bを実施する。そして、解析番号ゼロの時と同様に、差分フレーム番号をゼロにし、解析結果と共に画像ヘッダに保存する(S709)。次に、解析番号をインクリメントする(S710)。次は、ループ終端(S711)に到達するのでループ始端(S703)に戻る。
【0045】
今回の処理において、解析番号はS710の処理で2になったので、ループ始端(S703)は真となり、次画像フレームが生成されているか再度確認する(S704)。次に、S705において解析番号を確認する。現在の解析番号2であるので、S708に進んで解析処理Cを実施する。そして、解析番号ゼロの時と同様に、差分フレーム番号をゼロにし、解析結果と共に画像ヘッダに保存する(S709)。そして、解析番号をインクリメントし(S710)、ループ終端(S711)に到達するのでループ始端(S703)に戻る。今度は解析番号が3になっているので、ループ始端(S703)は偽となり、ループを抜け、S712において全ての解析処理を実行したのかを確認する。
【0046】
図6(a)では、全ての解析処理は完了しているので何もせず、次に画像フレームの取得処理に戻る(S701)。
図6(b)または図6(c)のように、全ての解析処理が完了していない場合は、S712においてNoと判断され、過去の解析結果を未処理分の解析結果として保存する(S713)。
【0047】
具体的には、図6(b)では解析番号1(領域B)と解析番号2(領域C)の解析処理が間に合っていないので、それぞれの領域に対して、解析処理最後に実施した解析結果を検索する。そして、該当画像フレームが現在解析中の画像フレームとのフレーム番号の差分を差分フレーム番号として保存し、同時に該当画像フレーム中の解析結果を現在の画像フレームの解析結果として保存する。
【0048】
このように、最後の解析結果の検索、該当画像フレームとの差分フレーム番号を算出し、解析結果のコピーを解析処理が間に合わなかった領域毎に実施する。S712において、解析番号がゼロであれば、解析番号0、1、2全ての解析結果を過去の解析結果からそれぞれ検索し、各解析結果の最新情報を現在の画像フレームの解析結果領域に保存する(S713)。
【0049】
図6(c)が解析番号ゼロの時の例であり、解析番号0(領域A)は1フレーム前の解析結果を、解析番号1(領域B)は2フレーム前の解析結果を、解析番号2(領域C)は3つ前の解析結果を保存していることを示している。また、解析番号が1であれば解析番号1、2の最新の解析結果をそれぞれ検索し、解析番号が2であれば解析番号2の最新の解析結果を検索し、現在の画像フレームの解析結果領域に保存する(S713)。図6(b)は解析番号1の時の例である。
【0050】
本実施形態では、画像フレーム毎に解析番号の初期値をゼロとしている。しかし、画像解析処理に時間がかかるような場合、初期値を必ずゼロにすると解析番号が大きい程解析処理をスキップされる可能性が高くなる。解析処理を連続でスキップしない方法としては、画像フレーム毎に解析番号の初期値をゼロにするのではなく、解析番号を画像フレームとは関係なく、0〜2の順番に繰り返すことが考えられる。また、解析番号毎に優先度を指定して、優先度毎に解析処理を進めることも有効である。
【0051】
図8は、クライアント120における画像認識処理の手順を説明するフローチャートである。ここでは、図6(b)の画像フレームを画像認識する際の処理の流れを説明する。なお、この画像認識プログラム511は、受信処理プログラム512が起動した時に一緒に起動される。
【0052】
画像認識プログラム511は起動されると、受信処理プログラム512が一時記憶部513に保存した画像フレームを取得できるまで待機する(S800)。
画像フレームを取得すると、画像フレーム自体を入出力制御プログラム510を経由してディスプレイ等のI/O機器370に表示し(S801)、画像フレームの画像ヘッダに格納されている画像解析結果を取得する(S802)。次に、現在の解析番号をゼロに初期化する(S803)。
【0053】
次に、S804に進んで3つの認識処理ループを開始する。
まず、現在の解析番号0から領域Aの解析結果とその差分フレーム番号が最初の画像認識対象となり、S806にて差分フレーム番号をチェックする。図6(b)から領域Aの差分フレーム番号はゼロなので解析結果に含まれる物体情報を実線で表示するように入出力制御プログラム510に依頼する(S808)。そして、解析番号をインクリメント(S811)し、ループ終端に到達する(S812)。
【0054】
次に、ループ始端(S804)に戻り、現在の解析番号1から領域Bの解析結果とその差分フレーム番号が画像認識対象となる。S806にて領域Bの差分フレーム番号をチェックすると、差分フレーム番号は1なので、領域Bの解析結果に含まれる物体情報を点線1で表示するように入出力制御プログラム510に依頼する(S809)。そして、解析番号をインクリメント(S811)し、ループ終端に到達する(S812)。
【0055】
次に、ループ始端(S804)に戻り、現在の解析番号2から領域Cの解析結果とその差分フレーム番号が画像認識対象となる。S806にて領域Cの差分フレーム番号をチェックすると、差分フレーム番号は2なので、領域Cの解析結果に含まれる物体情報を点線2で表示するように入出力制御プログラム510に依頼する(S810)。そして、解析番号をインクリメント(S811)し、ループ終端に到達する(S812)。
【0056】
仮に、S806にて対象となる領域の差分フレーム番号が3以上だった場合は、対象領域の解析処理が間に合っていないので、そのことを認知しやすいように警告表示する(S805)。具体的には、対象領域の全体を特定の色を薄く表示したり、対象領域の枠組みを特定の色で縁取りしたりする。または、画面表示ではなく音などのアラーム音を出力する等の処理を行うことも有効である。さらに、解析結果に含まれている過去情報を参照して、現在の解析結果と過去の解析結果を異なる方法で表示することも有効である。
【0057】
次に、ループ始端(S804)に戻るが、今度は現在の解析番号が3になっているので、ループ始端(S804)は偽となりループ処理を抜け、次の画像フレームの取得処理に戻る(S800)。なお、本実施形態では差分フレームが少しでも古いと表示方法を変更するが、表示方法の変更を数フレーム単位に変更してもよい。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による、画像処理システムについて説明する。
図10は、本実施形態における配信データ例であり、第1の実施形態との差異が最もよくわかる図である。本実施形態では、解析結果が画像フレーム内に含まれておらず、画像フレームとは別に解析結果だけを配信していることを示している。
【0059】
図10(a)は、個々の解析処理が全て間に合っている場合であり、領域A、B、Cの解析結果の差分フレーム番号がゼロになっており、全解析結果が画像ヘッダの一部に含まれていないことを示している。これは、ディスプレイ出力例においては図9(a)の状態に相当する。
【0060】
図10(b)は、領域Aの解析処理は間に合っているが、領域Bの解析結果は1つ古い画像フレームの解析結果を示しており、領域Cの解析結果は2つ古い画像フレームの解析結果であることを示している。これは、ディスプレイ出力例においては図9(b)の状態に相当する。
【0061】
以下、本実施形態のソフトウェア機能ブロックと処理手順について説明する。
本実施形態におけるカメラサーバのソフトウェア機能ブロックは、第1の実施形態の図4と同じである。また、カメラサーバの画像解析処理のフローチャートは、第1の実施形態の図7と同じである。説明上の差異は、図6が図10に置き換わることと、解析結果の保存先が画像ヘッダの中ではなく一時記憶部413上の別の領域であること、の2点である。すなわち、画像フレームと最終解析結果を別々に、ネットワークI/F260を制御し、ネットワーク130を介して各種クライアントへ送り届ける。配信先として画像フレームのみ必要なクライアント、画像解析結果のみ必要なクライアント、画像フレームと画像解析結果の両方が必要なクライアントが存在するため、画像フレームと最終解析結果を別々に配信する。
【0062】
クライアントの画像認識処理のフローチャートは、第1の実施形態の図8と同じである。そして、説明上の差異は、図6が図10に置き換わることと、解析結果の取得元が画像ヘッダの中ではなく一時記憶部413上の別の領域であること、の2点である。すなわち、受信処理プログラム512は、ネットワークI/F350を制御し、ネットワーク130を介してカメラサーバ100または110から画像フレームと画像解析結果を受信し、それぞれを一時記憶部513に保存する。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0063】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)を、ネットワーク又は各種のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給する。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0064】
400 OS、410 撮像処理プログラム、411 画像解析処理プログラム、412 配信処理プログラム、413 一時記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象を撮像して撮像画像を生成する撮像処理手段と、
前記撮像処理手段により生成された撮像画像に対して特定の事象が発生したかを解析する画像解析手段と、
前記撮像画像と前記画像解析手段での解析結果を記憶媒体に一時保存する一時記憶手段と、
前記撮像画像と前記解析結果を相手端末まで配信する配信処理手段とを備え、
前記画像解析手段は、前記解析結果に、現在の撮像画像に対する画像解析処理を実施した場合は現在の解析結果を含め、解析処理を実施しなかった場合には過去の解析結果をどれぐらい過去の情報なのかを示す過去情報と共に含め、
前記配信処理手段は、前記撮像画像と現在または過去の前記解析結果とを一緒に配信することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記配信処理手段は、現在または過去の解析結果と撮像画像を別に配信することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
画像と画像の解析結果とを相手端末から受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記画像と前記解析結果を記憶媒体に一時保存する一時記憶手段と、
前記解析結果から画像上で特定の事象が発生したことを認識する画像認識手段と、
前記画像と前記解析結果を表示装置に表示する入出力制御手段とを備え、
前記画像認識手段は、前記解析結果に含まれている過去情報を参照して、現在の解析結果と過去の解析結果を異なる方法で前記表示装置に表示するよう前記入出力制御手段に依頼することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記解析結果に含まれている過去情報を参照して、解析結果が古い場合は音や画面表示によりユーザに通知することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記過去情報として、連続して増えていく画像フレーム番号、画像フレーム番号の相対的な差分を示す差分フレーム番号、時刻情報、または差分の時刻情報を使用することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
監視対象を撮像して撮像画像を生成する撮像処理工程と、
前記撮像処理工程において生成された撮像画像に対して特定の事象が発生したかを解析する画像解析工程と、
前記撮像画像と前記画像解析工程での解析結果を記憶媒体に一時保存する一時記憶工程と、
前記撮像画像と前記解析結果を相手端末まで配信する配信処理工程とを備え、
前記画像解析工程は、前記解析結果に、現在の撮像画像に対する画像解析処理を実施した場合は現在の解析結果を含め、解析処理を実施しなかった場合には過去の解析結果をどれくらい過去の情報なのかを示す過去情報と共に含め、
前記配信処理工程は、前記撮像画像と現在または過去の前記解析結果とを一緒に配信することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
監視対象を撮像して撮像画像を生成する撮像処理工程と、
前記撮像処理工程において生成された撮像画像に対して特定の事象が発生したかを解析する画像解析工程と、
前記撮像画像と前記画像解析工程での解析結果を記憶媒体に一時保存する一時記憶工程と、
前記撮像画像と前記解析結果を相手端末まで配信する配信処理工程とをコンピュータに実行させ、
前記画像解析工程は、前記解析結果に、現在の撮像画像に対する画像解析処理を実施した場合は現在の解析結果を含め、解析処理を実施しなかった場合には過去の解析結果をどれくらい過去の情報なのかを示す過去情報と共に含め、
前記配信処理工程は、前記撮像画像と現在または過去の前記解析結果とを一緒に配信するようにコンピュータを制御することを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−239221(P2011−239221A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109419(P2010−109419)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】