説明

画像処理装置

【課題】 本発明の目的は、透過型ディスプレイを利用して対話形の画像通信を行う画像通信装置などにおいて、透過型ディスプレイによって生じる利用者の画像への不要な写り込みを除去すること、また、対話の際に利用者と対話相手との視線を合わせることの可能な画像処理装置を提供することである。
【解決手段】 本発明の画像処理装置(11〜15、19〜21)は、情報を表示する透過型の表示部(11)と、撮像部(13)と、制御部(20)とを備える。撮像部は、表示部を挟んで被写体と対面させて配置され、表示部を透過した被写体光による像を撮像する。そして制御部は、被写体光が表示部を透過するときに、被写体光による像に対して重畳される表示部の表示情報を、撮像部が撮像した画像から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
対話形の画像通信を行う画像通信装置などに搭載される画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像通信により遠隔の相手と対話することができる装置、例えば、テレビ電話などが普及している。この従来の装置では、画像通信による対話の際に利用者と対話の相手との視線を合わせることが難しく、対話が不自然になっていた。
【0003】
具体的には、自分(装置の利用者)が相手を見ているかのような画像を相手の装置のディスプレイに表示させるには、自分の装置のカメラを見る必要がある。しかしそうすると、自分のディスプレイに表示される相手の画像からは目を逸らさなくてはならなかった。また、自分のディスプレイに表示される相手の画像を見ていると、自分のカメラからは自ずと目を逸らしてしまうので、相手のディスプレイには、視線を逸らした不自然な自分の画像が表示されていた。なお、このような不自然さは、自分のディスプレイに表示される相手の画像にも同様に現れていた。
【0004】
ところで、画像などの情報を表示するディスプレイとして、近年、透過型のディスプレイが提案されている。具体例としては、自動車のフロントガラスに情報を表示させるオンスクリーンディスプレイや、空気中の水蒸気に映像を投射する形式のディスプレイ、また、特許文献1のように、表示の対象物に向けてディスプレイをかざすことで、その対象物を透過表示すると共に対象物の属性などの情報を当該ディスプレイの画面に一緒に表示するといったものがある。このような透過型のディスプレイは、そのどちらの側からもディスプレイの反対側を透過して見渡すことができるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−190640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような透過型ディスプレイの特徴を利用すれば、画像通信によって対話を行う際に、自分(利用者)と対話の相手との視線が合わないという不自然さを解消することができる。
【0007】
具体的には、例えば、透過型ディスプレイを用いて利用者に対話相手の画像を表示すると共に、表示された画像の対話相手と利用者との視線が合うように、利用者の反対側に透過型ディスプレイを挟んでカメラを配置する。そして、そのカメラにより利用者を透過型ディスプレイ越しに撮像して、その撮像による利用者の画像を対話相手に送信するようにすれば、画像通信による対話において、利用者と対話相手との視線を合わせることができるようになる。
【0008】
ところが、そうした場合、利用者と対話相手との視線を合わせることはできるものの、利用者の画像はカメラにより透過型ディスプレイ越しに撮像されるため、撮像された画像には、撮像するときに透過型ディスプレイに表示されていた対話相手の画像などの情報が、利用者の像に重畳して一緒に写り込んでしまう。
【0009】
この利用者の画像に写り込んだ透過型ディスプレイの表示情報は、対話相手にとって不要なものであり、このような画像を対話相手に送信すると、対話が不自然になってしまう。
【0010】
したがって、画像通信による対話を不自然なものとしないためには、透過型ディスプレイにより生じる不要な写り込みを利用者の画像から除去する必要がある。即ち、この点が、従来技術の課題となる。
【0011】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためのものである。本発明の目的は、透過型ディスプレイを利用して対話形の画像通信を行う画像通信装置などにおいて、透過型ディスプレイによって生じる利用者の画像への不要な写り込みを除去することの可能な画像処理装置を提供することである。また、本発明のもう1つの目的は、透過型ディスプレイを利用して対話形の画像通信を行う画像通信装置などにおいて、対話の際に利用者と対話相手との視線を合わせることの可能な画像処理装置を提供することである。
【0012】
これによって、本発明では、画像通信での対話の不自然さを解消する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明の画像処理装置は、情報を表示する透過型の表示部と、撮像部と、制御部とを備える。撮像部は、表示部を挟んで被写体と対面させて配置され、表示部を透過した被写体光による像を撮像する。そして制御部は、被写体光が表示部を透過するときに、被写体光による像に対して重畳される表示部の表示情報を、撮像部が撮像した画像から除去する。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、制御部は、撮像部が被写体光による像を撮像したときに表示部に表示されていた表示情報を取得すると共に、取得した表示情報のうち撮像部の撮像画角の範囲に対応する部分の情報に基づき算出した調整値により、撮像部が撮像した画像の信号レベルを画素毎に調整することで前記の除去を行う。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、表示部は、当該表示部に配置された画素の光透過率を変化させることで情報表示を行う透過型のディスプレイであり、制御部は、取得した表示情報のうち撮像部の撮像画角の範囲に対応する部分の情報を基に光透過率分布の情報を作成すると共に、その光透過率分布の情報に基づき算出したゲインを撮像部が撮像した画像の信号レベルに対して画素毎に乗算することで前記の除去を行う。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、制御部は、ゲインの算出において、光透過率分布の情報により示される画素の光透過率が高い場合にはゲインを低く算出し、光透過率が低い場合にはゲインを高く算出する。
【0017】
第5の発明は、第1ないし第4の発明の何れか一の発明において、制御部は、表示部に情報表示を行わない場合は、前記の除去を行わない。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、透過型の表示部を挟んで被写体と対面させて配置された撮像部が、表示部を透過した被写体光による像を撮像する。従って、本発明を利用すれば、画像通信による対話の際に、利用者と対話相手との視線を合わせることができる。
【0019】
また、本発明では、被写体光が表示部を透過するときにその被写体光による像に対して重畳される表示部の表示情報を、上記のように配置された撮像部が撮像した画像から除去する。従って、本発明を利用すれば、透過型の表示部によって生じる利用者(被写体)の画像への不要な写り込みを除去することができる。
【0020】
これにより、本発明では、画像通信での対話の不自然さを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】画像処理装置の利用方法の例を示す図である。
【図3】画像処理装置の画像通信の動作を示す流れ図である。
【図4】光透過率分布の情報の具体例を示す図である。
【図5】画像処理装置の利用方法の例(情報表示を行わない場合)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、本発明の画像処理装置を適用した画像通信装置の実施形態であるが、以下では、本実施形態を画像処理装置と称すこととする。
【0023】
図1は本実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、画像処理装置は、透過型ディスプレイ11と、表示制御回路12と、対面カメラユニット13と、バッファメモリ14と、画像処理回路15と、送信回路16と、外部インターフェース(I/F)17と、受信回路18と、バッファメモリ19と、制御回路20とを有している。なお、バッファメモリ14、画像処理回路15、送信回路16、外部I/F17、受信回路18、バッファメモリ19および制御回路20は、それぞれシステムバス21を介して接続されている。また、表示制御回路12および対面カメラユニット13は、それぞれ制御回路20と接続されている。
【0025】
透過型ディスプレイ11は、例えば、透過型の液晶表示素子で構成されたディスプレイである。この透過型ディスプレイ11は、透明板上に配置された画素の光透過率を下げてディスプレイ外部からの入射光の透過光量を減衰させることで、画像や文字(カラー画像(文字)、モノクロ画像(文字)の何れでも可)などの任意の情報を表示する。なお、透過型ディスプレイ11では、情報を表示する際に、画素の光透過率が完全に0%になることはない。また、透過型ディスプレイ11は、情報を表示しない箇所では画素の光透過率を上げることでディスプレイ外部からの入射光を透過させる。したがって、透過型ディスプレイ11は、外部からの入射光、例えば被写体光による像に対してディスプレイの表示情報を重畳させる役目を果たす。
【0026】
表示制御回路12は、制御回路20の指令に応じて、バッファメモリ19に格納された画像データや文字データなどを透過型ディスプレイ11へ表示する。なお、この表示は、表示制御回路12が透過型ディスプレイ11の画素の光透過率を前述のとおり制御することによって行われる。
【0027】
対面カメラユニット13は、制御回路20の指令に応じて、不図示の撮像レンズを通して入射する透過型ディスプレイ11の透過光による像を連続して撮像するとともに、撮像により生成した画像を所定のフレームレートでバッファメモリ14へ順次出力する。この出力によりバッファメモリ14へ格納される画像は、CDS(相関二重サンプリング)、ゲイン調整、A/D変換、また、ホワイトバランス調整、色分離(補間)、ガンマ補正などの処理が施されたデジタルデータ(画像データ)である。また、対面カメラユニット13は、自動焦点調整(AF)機能、自動露出調整(AE)機能を有しており、撮像時には、これらの機能によりカメラの焦点および露出を自動的に調整する。
【0028】
画像処理回路15は、制御回路20の指令に基づき、バッファメモリ14の画像データに写り込んだ透過型ディスプレイ11の表示情報を画像データから除去する。
【0029】
上述したとおり、例えば被写体光などの外部からの光が透過型ディスプレイ11を透過すると、その被写体光による像に対してディスプレイの表示情報が重畳される。このため、対面カメラユニット13で透過型ディスプレイ11の透過光による像を撮像すると、撮像された画像データには透過型ディスプレイ11の表示情報が写り込むこととなる。なお、被写体光による像の表示情報が重畳された部分は、輝度が低下して、あたかも影が発生したかのようになってしまう。したがって、画像処理回路15は、その写り込んだ表示情報を画像データから除去する。この画像処理回路15が行う除去処理については後述する。
【0030】
送信回路16は、制御回路20の指令に応じて、画像処理回路15による除去処理後のバッファメモリ14の画像データを、外部I/F17を介して、通信の相手先となる外部の装置や機器へ送信する。また、送信回路16は、制御回路20の指令に応じて、通信の開始を要求するメッセージなどを、外部I/F17を介して、通信の相手先となる外部の装置や機器へ送信する。
【0031】
受信回路18は、制御回路20の指令に応じて、通信の相手先となる外部の装置や機器から送られた画像データを外部I/F17を介して受信するとともに、受信した画像データをバッファメモリ19へ格納する。
【0032】
外部I/F17は、画像処理装置と通信の相手先となる外部の装置や機器とを、例えば、インターネットや電話網などの通信網を介して接続するための無線LANや携帯電話回線などの無線通信回線用、又は有線LANや固定電話回線などの有線通信回線用のインターフェースである。
【0033】
制御回路20は、画像処理装置の各部を統括的に制御する。また、制御回路20は、利用者の指示に応じて、画像処理装置の画像通信に係る処理を実行する。なお、その処理の具体的な内容は後述する。
【0034】
ここで、本実施形態の画像処理装置の利用方法の一例を説明する。なお、以下では、例えば図2に示すように、画像処理装置(11〜21)が、外付けの透過型ディスプレイ11と画像処理装置本体(12〜21)とによって構成されるものとする。
【0035】
図2に示すように、画像処理装置本体には、対面カメラユニット13の撮像レンズが、その筐体の前面に露出させて取り付けられている。対面カメラユニット13は、この撮像レンズを通して入射する装置外部からの光による像を撮像する。
【0036】
画像処理装置本体は、外付けの透過型ディスプレイ11を挟んで、対面カメラユニット13の撮像レンズが利用者側に向くように、即ち、利用者(対面カメラユニット13の被写体)と対面させて配置される。なお、ここでは、透過型ディスプレイ11と画像処理装置本体の位置は固定されているものとする。
【0037】
また、この配置においては、対面カメラユニット13により利用者の頭部を中心とした画角の画像が撮像されるように画像処理装置本体が配置される。これは、画像通信により対話を行う際には、利用者の頭部を中心とした画像が通信相手に表示されるのが一般的であり、また通常の場合、利用者の頭部と透過型ディスプレイ11との相対的な位置関係もほぼ一定となるからである。なお、ここでは、対面カメラユニット13の撮像画角は一定であるものとする。
【0038】
画像処理装置(11〜21)がこのように配置された状態で、利用者は、外付けの透過型ディスプレイ11に表示される、例えば、通信相手の画像に向かって話をする。なお、透過型ディスプレイ11には、画像処理装置が通信の相手側の装置/機器から受信した画像や文字などの情報がリアルタイムに表示される。図2では、透過型ディスプレイ11に、通信相手の画像が、“ABC”との文字が重ねられて表示されている。
【0039】
利用者が透過型ディスプレイ11に表示される通信相手の画像に向かって話しているとき、画像処理装置本体(12〜21)の対面カメラユニット13は、利用者(被写体)の頭部を中心とした画角の画像を透過型ディスプレイ11越しに連続して撮像する。
【0040】
なお、この場合、対面カメラユニット13は、透過型ディスプレイ11の表示情報のうち撮像画角内に表示された情報、図2では「2a」の点線で囲んだ部分に表示された「通信相手の頭部の画像および“ABC”との文字」が重畳された被写体像(被写体光による像)を撮像することとなる。これは、既述のとおり、透過型ディスプレイ11が、画素の光透過率を下げてディスプレイ外部からの入射光、この場合には利用者(被写体)からの被写体光の透過光量を減衰させることで、画像や文字などの任意の情報を表示するためである。また、対面カメラユニット13により撮像された画像における透過型ディスプレイ11の表示情報が重畳された部分には、利用者がディスプレイ上で見た表示情報が鏡面反転されて写っている。これは、対面カメラユニット13が、利用者を透過型ディスプレイ11越しに撮像するためである。
【0041】
利用者は、対面カメラユニット13によって撮像された画像が通信相手に対して順次送信されることで、通信相手と対話することができる。
【0042】
しかし、撮像された画像には、上記のとおり透過型ディスプレイ11の表示情報が写り込んでいる。これは、対話の相手にとっては不要なものである。
【0043】
そこで、本実施形態の画像処理装置では、画像に写り込んだ透過型ディスプレイ11の表示情報を画像から除去する。そして、その除去処理後の画像を通信の相手側の装置/機器に対して送信する。これにより、不要な写り込みのない良好な内容の画像を対話の相手側の装置/機器に表示させる。
【0044】
以下、図3の流れ図を参照しつつ、本実施形態の画像処理装置の画像通信の動作を説明する。図3に示す処理は、例えば、利用者が画像処理装置に設けられた対話開始ボタン(不図示)を押下して、画像通信による対話の開始を制御回路20に指示した場合に呼び出されるものである。
【0045】
なお、透過型ディスプレイ11の画素の光透過率は、例えば、利用者により画像処理装置の電源が「ON」にされた際に、全画素とも100%(透明)となるように制御回路20によって制御されている。
【0046】
ステップ101:制御回路20は、利用者により対話の開始が指示されると、送信回路16を駆動して、画像通信の開始を要求するメッセージを外部I/F17を介して対話の相手側の装置/機器に送信する。なお、相手側の装置/機器においてこの要求が承諾されると、対話相手の画像データが相手側の装置/機器から順次送られてくる。そして、その画像データは、外部I/F17を介して受信回路18により受信されてバッファメモリ19へ格納される。
【0047】
制御回路20は、このようにバッファメモリ19に順次格納される画像を、表示制御回路12を駆動して、透過型ディスプレイ11に表示する。
【0048】
ステップ102:制御回路20は、対面カメラユニット13を駆動して、利用者(被写体)の頭部を中心とした画角の画像を透過型ディスプレイ11越しに撮像する。なお、撮像された画像データ(利用者画像データ)は、バッファメモリ14に格納される。
【0049】
ステップ103:制御回路20は、対話相手の画像データ(相手画像データ)をバッファメモリ19から取得する。ここで取得される相手画像データは、ステップ102で利用者(被写体)を撮像するときに透過型ディスプレイ11に表示されていたものである。
【0050】
つまり、制御回路20は、利用者画像データに写り込んだ透過型ディスプレイ11の表示情報を含んだ相手画像データを取得する。
【0051】
ステップ104:制御回路20は、取得した相手画像データ、即ち、利用者画像データの撮像時に透過型ディスプレイ11に表示されていた画像のうち対面カメラユニット13の撮像画角の範囲に対応する部分の画像を抽出する。なお、この抽出は、対面カメラユニット13から透過型ディスプレイ11までの距離と対面カメラユニット13の撮像画角との情報に基づいて行うことができる。
【0052】
また、制御回路20は、抽出した画像を、利用者画像データの画像サイズに合わせて拡大(或いは縮小)すると共に、その拡大(或いは縮小)した画像に鏡面反転処理を施して反転画像を作成する。
【0053】
そして、制御回路20は、作成した反転画像の各画素の信号レベルを透過型ディスプレイ11における画素の光透過率の値に変換して「光透過率分布」の情報を作成する。
【0054】
ここで、光透過率分布の情報の具体的な例を図4に示す。
【0055】
図4の(1)は、利用者画像データの撮像時に透過型ディスプレイ11に表示されていた情報が、図2で示した内容、つまり、通信相手の画像および“ABC”との文字であった場合に作成される反転画像の例を示している。これは、透過型ディスプレイ11の表示情報のうち対面カメラユニット13の撮像画角内に表示された情報、つまり、図2において「2a」と示した点線で囲んだ部分に表示された「通信相手の頭部の画像および“ABC”との文字」が鏡面反転された画像である。
【0056】
図4の(2)は、図4の(1)に示す反転画像の X−X’の位置に存在する画素について、各画素の信号レベルを、透過型ディスプレイ11における画素の光透過率の値に変換した場合に作成される光透過率分布の情報の例を示している。なお、実際には、光透過率分布は二次元の分布を持つが、図4の(2)では、便宜上、図4の(1)の X−X’の線における画素について、光透過率分布を一次元のグラフで示している。
【0057】
図4の(2)をみると、図4の(1)の反転画像において通信相手の頭部が表示されている部分の画素の光透過率は「20%」に下げられていることがわかる。一方、情報が何も表示されていない部分の画素の光透過率は「100%(透明)」に上げられていることがわかる。
【0058】
これは、既述のとおり、透過型ディスプレイ11での情報表示が、画素の光透過率を下げることによって行われるからである。但し、透過型ディスプレイ11では、情報を表示する際に、画素の光透過率が完全に0%になることはない。このため、透過型ディスプレイ11では、情報が表示がされた部分(光透過率が下げられた部分)においても、被写体光が非透過となることはなく、その部分を通して被写体を見ることができる。
【0059】
ステップ105:制御回路20は、画像処理回路15を駆動して、光透過率分布の情報に基づき、バッファメモリ14の利用者画像データに写り込んだ透過型ディスプレイ11の表示情報を除去する。
【0060】
具体的には、画像処理回路15が、光透過率分布の情報を基に、利用者画像データの各画素毎に、それぞれ、画素の信号レベルを調整するための調整値(ゲイン)を求める。例えば、光透過率分布の情報から、画素の光透過率が100%の場合にはゲインを1倍に、また画素の光透過率が20%の場合にはゲインを5倍にとのように求める。即ち、光透過率の逆数に比例するようにゲインを求めるようにする。
【0061】
そして、制御回路20は、利用者画像データの各画素毎に、画素の信号レベルと求めた画素毎のゲインとを乗算する。なお、透過型ディスプレイ11がカラー表示に対応したものであれば、求めたゲインを画素のR、G、Bの各信号毎に乗算するようにする。このゲインの乗算により、利用者画像データは、写り込んだ透過型ディスプレイ11の表示情報が除去されて、利用者(被写体)が写った本来あるべき画像となる。
【0062】
ステップ106:制御回路20は、送信回路16を駆動して、画像処理回路15による除去処理後の利用者画像データを外部I/F17を介して対話の相手側の装置/機器に送信する。
【0063】
ステップ107:制御回路20は、利用者により対話の終了が指示されたか否かを判定する。なお、対話の終了の指示は、例えば、利用者が画像処理装置に設けられた対話終了ボタン(不図示)を押下することなどによって行える。
【0064】
制御回路20は、終了が指示された場合にはステップ108へ移行し(Yes側)、一方、終了が指示されていない場合にはステップ102へ移行して上記の処理を繰り返す(No側)。
【0065】
ステップ108:制御回路20は、送信回路16を駆動して、画像通信の終了を要求するメッセージを外部I/F17を介して対話の相手側の装置/機器に送信する。
【0066】
そして、制御回路20は、本フローの処理を終了する。
【0067】
(本実施形態の補足事項)
なお、本実施形態の画像処理装置では、透過型ディスプレイに、画素の光透過率を変化させて情報表示を行うタイプのものを用いた。しかし、画像処理装置では、画素の発光の輝度を変化させて情報表示を行うタイプの透過型ディスプレイを用いることもできる。
【0068】
但し、そうした場合は、ステップ104で、反転画像の各画素の信号レベルに基づき「輝度分布」の情報を作成する。次に、ステップ105で、輝度分布の情報を基に、調整値(輝度補正値)を求める。例えば、輝度分布の情報から、反転画像の各画素の輝度が、予め測定しておいた透過型ディスプレイにおける画素の非発光時の輝度と同じ明るさの値となるように調整値(輝度補正値)を求める。そして、利用者画像データの各画素毎に、それぞれ対応した輝度補正値を画素の輝度値から減算する。この減算により、利用者画像データに写り込んだ透過型ディスプレイの表示情報が除去される。なお、透過型ディスプレイがカラー表示に対応したものであれば、求めた輝度補正値を画素のR、G、Bの各信号毎に減算するようにする。
【0069】
また、上記では、利用者および対話相手の音声については説明をしていないが、実際に画像通信により対話を行う際には、音声データが画像データと共に対話者の装置/機器間でやりとりされる。
【0070】
具体的には、対話相手の画像データに同期した音声データを相手側の装置/機器から受信すると、画像処理装置は、その画像データを透過型ディスプレイ11に表示させると共に、音声データをA/D変換してアナログの音声信号とする。そして、画像処理装置は、その音声信号を不図示のスピーカーなどの音声出力装置を介して対話相手の音声を再生する。また、画像処理装置は、不図示のマイクなどの音声入力装置を介して入力された利用者の音声をA/D変換してデジタルの音声データとする。そして、画像処理装置は、その音声データを、画像処理回路によって不要な写り込み、即ち、透過型ディスプレイ11の表示情報が除去された利用者の画像データに同期させて、対話相手側の装置/機器へ送信する。
【0071】
このようにして、画像処理装置は、音声データを、画像データと共に対話相手側の装置/機器とやりとりする。
【0072】
また、上述した本実施形態の画像処理装置が行う画像通信の例の説明では、透過型ディスプレイ11に、対話相手の画像などの情報が表示されるとした。
【0073】
しかし、画像処理装置からは対話相手に向けて画像データおよび音声データを送信するが、対話の相手側の装置/機器からは音声データのみが送られてくるような非対称の通信モードの場合は、例えば図5に示すように、透過型ディスプレイ11には何も表示されない。つまり、透過型ディスプレイ11の画素の光透過率は100%(透明)のままである。この場合、画像処理装置の対面カメラユニット13により透過型ディスプレイ11越しに撮像される利用者(被写体)の画像には不要な写り込みが生じないので、画像処理装置は、その除去処理を行う必要がない。このため、画像処理装置では、上記のような非対称の通信モードの場合、即ち、透過型ディスプレイ11の情報表示を行わない場合には、除去処理を省略して行わないようにする。これにより除去処理を行う分の処理負荷が軽減される。
【0074】
また、本実施形態の画像処理装置では、図2に示したように、透過型ディスプレイ11の直近に画像処理装置本体(12〜21)を配置した。しかし、画像処理装置本体は、透過型ディスプレイ11の直近にある必要はなく、透過型ディスプレイ11から離れたところに配置するようにしても構わない。その場合にも、画像処理装置は、利用者の画像に写り込んだ透過型ディスプレイ11の表示情報を、確実に除去することができる。
【0075】
また、本実施形態の画像処理装置では、対面カメラユニット13が、利用者(被写体)の頭部の動きに追従してその撮像を行うようにしてもよい。
【0076】
その場合、追従による対面カメラユニット13の上、下、左、右の各方向の移動量(画素単位)を不図示のメモリなどに記録しておく必要がある。また、その記録の際には、撮像した利用者の画像データと、その撮像時に透過型ディスプレイ11に表示されていた対話相手の画像データと、移動量との3者の対応を示す情報についても記録しておく。なお、この不図示のメモリなどに記録した移動量及び3者の対応を示す情報は、ステップ104で、対面カメラユニット13の撮像画角の範囲に対応する部分の画像を抽出する際に使用される。
【0077】
(本実施形態の作用効果)
以上、本実施形態の画像処理装置では、利用者が透過型ディスプレイ11に表示される対話相手の画像を見ているときに、対面カメラユニット13により利用者(被写体)の頭部を中心とした画角の画像が透過型ディスプレイ11越しに撮像される。なお、対面カメラユニット13は、その撮像レンズへ入射する被写体光の光軸上に透過型ディスプレイ11の表示情報、即ち、対話相手の画像が表示されるように配置されている。
【0078】
したがって、本実施形態の画像処理装置では、画像通信による対話の際に利用者と対話相手との視線を合わせることができるので、画像通信での対話の不自然さを解消することができる。
【0079】
また、本実施形態の画像処理装置では、対面カメラユニット13により、利用者の頭部を中心とした画角の画像が透過型ディスプレイ11越しに撮像される。
【0080】
また、対面カメラユニット13が利用者を撮像するときに透過型ディスプレイ11に表示されていた対話相手の画像データが取得され、その取得された画像データのうち、対面カメラユニット13の撮像画角の範囲に対応する部分の画像が抽出される。
【0081】
また、抽出された画像を基に反転画像が作成され、その反転画像の各画素の信号レベルを透過型ディスプレイ11における画素の光透過率の値に変換して光透過率分布の情報が作成される。
【0082】
そして、撮像された利用者の画像データに写り込んだ透過型ディスプレイ11の表示情報が、その光透過率分布の情報に基づいて除去され、その除去処理後の利用者の画像データが対話の相手側の装置/機器へ送信される。このように、良好な内容の画像が対話相手に送信される。
【0083】
したがって、本実施形態の画像処理装置では、透過型ディスプレイによって生じる利用者の画像への不要な写り込みを除去することができるので、画像通信での対話の不自然さを解消することができる。
【0084】
(その他)
なお、本発明は、カーナビゲーション機器/装置、パーソナルコンピュータ(PC)、テレビ、携帯電話機などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
11…透過型ディスプレイ,12…表示制御回路,13…対面カメラユニット,14…バッファメモリ,15…画像処理回路,16…送信回路,17…外部インターフェース(I/F),18…受信回路,19…バッファメモリ,20…制御回路,21…システムバス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示する透過型の表示部と、
前記表示部を挟んで被写体と対面させて配置され、前記表示部を透過した被写体光による像を撮像する撮像部と、
前記被写体光が前記表示部を透過するときに、前記被写体光による像に対して重畳される前記表示部の表示情報を、前記撮像部が撮像した画像から除去する制御部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記制御部は、前記撮像部が前記被写体光による像を撮像したときに前記表示部に表示されていた表示情報を取得すると共に、取得した表示情報のうち前記撮像部の撮像画角の範囲に対応する部分の情報に基づき算出した調整値により、前記撮像部が撮像した画像の信号レベルを画素毎に調整することで前記除去を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記表示部は、該表示部に配置された画素の光透過率を変化させることで情報表示を行う透過型のディスプレイであり、
前記制御部は、前記取得した表示情報のうち前記撮像部の撮像画角の範囲に対応する部分の情報を基に光透過率分布の情報を作成すると共に、該光透過率分布の情報に基づき算出したゲインを前記撮像部が撮像した画像の信号レベルに対して画素毎に乗算することで前記除去を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記制御部は、前記ゲインの算出において、前記光透過率分布の情報により示される画素の光透過率が高い場合にはゲインを低く算出し、光透過率が低い場合にはゲインを高く算出する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記制御部は、前記表示部に情報表示を行わない場合は、前記除去を行わない
ことを特徴とする画像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−232828(P2010−232828A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76414(P2009−76414)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】