説明

画像処理装置

【課題】実行待ちの省電力ジョブの後から他の省電力ジョブが投入された場合に、少なくとも一方のジョブに時間指定があれば、その時間を守りつつ、自己発電による蓄電電力を使用して双方のジョブをより早く実行完了できるようにスケジューリングする。
【解決手段】複合機10は、ジョブ実行部と、ソーラーパネルなどの発電部24と、蓄電部25と、蓄電部25の蓄電電力を使用して実行する省電力ジョブ(Ecoジョブ)である、実行待ちの第1のジョブと、その第1のジョブの投入後に投入された第2のジョブを、発電部24の発電で蓄電部25の蓄電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、第1のジョブと第2のジョブのうちの一方に設定された時間までに実行可能か否かを判断し、実行可能と判断した場合は、時間が設定された一方のジョブよりも他方のジョブの実行順序を先にする制御部(CPU11)とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置に係り、詳細には自己発電による電力を使用してジョブを実行する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラーパネルなどで自己発電した電力を蓄えておき、その蓄電電力を使用してコピーやプリント、ファクシミリ送信などのジョブを実行する画像処理装置では、ジョブを実行するのに必要な電力量に対して蓄電量が不足していると、ジョブを直ぐには実行できないことになる。
【0003】
たとえば、特許文献1の技術では、プリントジョブの全枚数を充電量(蓄電量)で印刷できない場合には、印刷動作を行わないか、印刷可能な枚数のみを印刷するか、再充電されるまで待って自動的に全枚数を印刷するかを操作者が選択できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−240481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自己発電機能を備えた画像処理装置で省エネルギー効果を高めるには、ユーザは画像処理装置に投入した省電力ジョブ(自己発電の電力で実行するジョブ)が蓄電電力不足で即時実行できない場合に、処理を待てるのであれば該ジョブの待機を許可し、画像処理装置は不足分の電力を自己発電で蓄えてから該ジョブを実行することが望ましい。
【0006】
しかし、待機状態にした省電力ジョブのための蓄電中に、そのジョブよりも早期の処理開始時間が設定された新たな省電力ジョブが投入された場合には、これらの省電力ジョブをどのように処理すればよいかといった問題が生じる。たとえば、後から投入された省電力ジョブは外部電源による通常電力を使用して実行するようにしてもよいが、それでは自己発電の電力を有効に利用しておらず、省エネルギー効果が薄れることになる。また、いずれの省電力ジョブも自己発電の電力で実行しようとした場合には、ユーザがその実行順序をどのような基準で判断すればよいかといった問題や、判断結果(ジョブのスケジューリング)を入力する操作が面倒となる問題がある。
【0007】
また、省電力ジョブは蓄電待ちの他にも、外部電源を使用して実行する通常ジョブと同様に、前のジョブの実行完了待ちやユーザの設定した各種の時間待ちによっても待機状態となり得る。各種の時間としては、省電力ジョブを予約ジョブとして投入する場合はその処理開始の指定時間(予約時間)が挙げられる。また、省電力ジョブの投入時点や指定時間時点から処理を待ってもよい許容時間を設定できる画像処理装置であれば、その許容時間も含まれる。
【0008】
このように、蓄電待ち、前のジョブの実行完了待ち、ユーザ設定による各種の時間待ちなどによる実行待ちの省電力ジョブの後から他の省電力ジョブが投入された場合に、少なくとも一方のジョブに時間指定があれば、その時間を守りつつ、自己発電による蓄電電力を使用して双方のジョブをより早く実行完了できるようにスケジューリングする技術が望まれる。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、実行待ちの省電力ジョブの後から他の省電力ジョブが投入された場合に、少なくとも一方のジョブに時間指定があれば、その時間を守りつつ、自己発電による蓄電電力を使用して双方のジョブをより早く実行完了できるようにスケジューリングする画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0011】
[1]画像データに係るジョブを実行するジョブ実行部と、
発電部と、
前記発電部が発電した電力を蓄える蓄電部と、
前記蓄電部の蓄電電力を使用して実行する省電力ジョブである、実行待ちの第1のジョブと、その第1のジョブの投入後に投入された第2のジョブを、前記発電部の発電で前記蓄電部の蓄電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、前記第1のジョブと前記第2のジョブのうちの一方に設定された時間までに実行可能か否かを判断し、実行可能と判断した場合は、前記時間が設定された一方のジョブよりも他方のジョブの実行順序を先にする制御部と、
を備えた画像処理装置。
【0012】
上記発明では、発電部が発電した電力(自己発電の電力)を蓄電部に蓄え、その蓄電電力を使用して画像データに係るジョブ(省電力ジョブ)をジョブ実行部が実行する画像処理装置において、制御部は、実行待ちの第1のジョブ(第1の省電力ジョブ)と、その第1のジョブの投入後に投入された第2のジョブ(第2の省電力ジョブ)の実行順序を制御する。詳細には、自己発電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、第1のジョブと第2のジョブのうちの一方に設定された時間までに双方のジョブが実行可能か否かを判断し、実行可能と判断した場合は、時間が設定されている一方のジョブよりも他方のジョブの実行順序を先にする制御を行う。
【0013】
第1のジョブにおける実行待ちは、ジョブの実行に必要な電力の蓄電待ちと、前のジョブの実行完了待ちとを含む。第1のジョブに時間が設定されている場合は、その時間待ちも含まれる。
【0014】
第1のジョブと第2のジョブのうちの一方に設定された時間は、ジョブ実行の指定時間(予約ジョブの実行開始時間)を含む。また、ジョブの投入時点や指定時間時点からそのジョブの実行を待ってもよい許容時間を設定できる画像処理装置であれば、その許容時間も含まれる。
【0015】
発電部の発電と蓄電部への蓄電は、省電力ジョブの実行中も行うことができる。設定された時間までに実行可能(第1のジョブと第2のジョブを、発電部の発電で蓄電部の蓄電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、第1のジョブと第2のジョブのうちの一方に設定された時間までに実行可能)とは、省電力ジョブの実行中も行われる自己発電と蓄電を含んだ実行可能を意味する。すなわち、省電力ジョブの実行開始時点で該ジョブの実行に必要な電力が蓄電されてから該ジョブを実行開始する場合と、省電力ジョブの実行開始時点では該ジョブの実行に必要な電力は蓄電されていないが該ジョブの実行完了時点にはその必要な電力は蓄電されるのでそれを見越して前倒しで該ジョブを実行開始する場合とを含み、これらの場合に、設定された時間までに実行可能であることを意味する。
【0016】
第1のジョブに時間が設定されており、その時間までに第1のジョブと第2のジョブを実行可能と判断した場合は、先に投入されて実行待ちとなっている第1のジョブよりも、後から投入された第2のジョブの実行順序を先にする(実行順序を入れ替える)。この場合は、第2のジョブは蓄電電力を使用して第1のジョブよりも早く実行され、第1のジョブは蓄電電力を使用して設定時間までに実行(実行開始または実行完了)される。
【0017】
第2のジョブに時間が設定されており、その時間までに第1のジョブと第2のジョブを実行可能と判断した場合は、後から投入された第2のジョブよりも、先に投入されて実行待ちとなっている第1のジョブの実行順序を先にする(実行順序を入れ替えない)。この場合は、第1のジョブは蓄電電力を使用して第2のジョブよりも早く実行され、第2のジョブは蓄電電力を使用して設定時間までに実行(実行開始または実行完了)される。
【0018】
なお、実行不可と判断した場合は、実行順序を入れ替えずに、後から投入されたジョブも蓄電電力で実行する、あるいは、後から投入されたジョブは外部電源を使用して実行するようにすればよい。
【0019】
[2]前記制御部は、前記第1のジョブと前記第2のジョブの実行に必要な電力が、前記一方のジョブに設定された時間までに前記発電部の発電で前記蓄電部に蓄えられる推定の蓄電電力以下である条件と、前記一方のジョブよりも前に前記他方のジョブを蓄電電力で実行できるように前記蓄電部に電力を蓄えてから実行開始した場合の実行完了時間が、前記一方のジョブに設定された時間に基づく該ジョブの実行開始時間よりも前である条件とを満足した場合に、前記実行可能と判断する
ことを特徴とする[1]に記載の画像処理装置。
【0020】
上記発明では、自己発電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、第1のジョブと第2のジョブのうちの一方に設定された時間までにこれらのジョブが実行可能であるとの判断は、電力と時間の2つの条件を満足した場合に行う。電力については、第1のジョブと第2のジョブの実行に必要な電力(消費電力)が、一方のジョブに設定された時間までに自己発電で蓄えられる推定の蓄電電力以下である条件である。時間については、時間が設定された一方のジョブよりも前に他方のジョブを蓄電電力で実行開始(蓄電電力実行できるように(自己発電を進めて)蓄電部に電力を蓄えてから実行開始)した場合の実行完了時間が、一方のジョブに設定された時間に基づく該ジョブの実行開始時間よりも前である条件である。この電力と時間の2つの条件に基づくことで、第1のジョブと第2のジョブを自己発電の電力を使用して一方のジョブに設定された時間まで実行可能であるとの判断を的確に行うことができる。
【0021】
[3]前記制御部は、前記第1のジョブと前記第2のジョブを、前記発電部による発電で前記蓄電部の蓄電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、前記第1のジョブと前記第2のジョブのうちの一方に設定された時間までに実行不可と判断し、前記時間が設定された一方のジョブはその時間までに実行可能と判断した場合は、前記時間が設定された一方のジョブよりも他方のジョブの実行順序を後にする
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の画像処理装置。
【0022】
上記発明では、第1のジョブに時間が設定されており、その時間までに第1のジョブと第2のジョブは実行不可であるが第1のジョブは実行可能と判断した場合は、先に投入されて実行待ちとなっている第1のジョブよりも、後から投入された第2のジョブの実行順序を後にする(実行順序を入れ替えない)。この場合は、第1のジョブは蓄電電力を使用して設定時間までに実行(実行開始または実行完了)され、その後に第2のジョブが蓄電電力を使用して実行される。
【0023】
第2のジョブに時間が設定されており、その時間までに第1のジョブと第2のジョブは実行不可であるが第2のジョブは実行可能と判断した場合は、後から投入された第2のジョブよりも、先に投入されて実行待ちとなっている第1のジョブの実行順序を後にする(実行順序を入れ替える)。この場合は、第2のジョブは蓄電電力を使用して設定時間までに実行(実行開始または実行完了)され、その後に第1のジョブが蓄電電力を使用して実行される。
【0024】
すなわち、時間設定ありのジョブと時間設定なしのジョブのどちらが先に投入されたかにかかわらず、時間設定ありのジョブと時間設定なしのジョブがある場合は、時間設定ありのジョブをその設定時間までに実行するという条件の下で、時間設定なしのジョブを時間設定ありのジョブより先に実行できる場合は先に実行し、できない場合は後で実行する。
【0025】
[4]前記第1のジョブは、前記時間が設定された前記一方のジョブであり、
前記制御部は、前記第2のジョブが前記第1のジョブに設定された時間よりも前の時間が設定されたジョブである場合に、このジョブを前記他方のジョブとして、前記判断を行う
ことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0026】
上記発明では、第1のジョブに設定された時間よりも第2のジョブに設定された時間が前である場合に、自己発電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、第1のジョブに設定された時間までに第1のジョブと第2のジョブが実行可能か否かを判断する。実行可能と判断した場合は、第1のジョブ(一方のジョブ)よりも第2のジョブ(他方のジョブ)の実行順序を先にする(実行順序を入れ替える)。この場合は、第2のジョブは蓄電電力を使用して第1のジョブよりも早く実行され、第1のジョブは蓄電電力を使用して設定時間までに実行(実行開始または実行完了)される。
【0027】
[5]前記時間は、ジョブの実行を待ってもよい許容時間である
ことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0028】
上記発明では、省電力ジョブ投入時の蓄電電力不足や前のジョブの実行完了待ちで省電力ジョブが即時実行不可であっても、設定された許容時間までに蓄電電力不足が解消される、あるいは、前のジョブが実行完了して実行可能であると判断されれば、その省電力ジョブは待機後に蓄電電力を使用して実行されるようになる。
【0029】
この許容時間は、ジョブの投入時点からの許容時間(即時実行に対する許容時間)と、指定時間時点からの許容時間(予約ジョブに対する許容時間)とを含む。
【0030】
これにより、許容時間以内に蓄電が完了次第ジョブを実行開始したり、許容時間の終わりまで蓄電してからジョブを実行開始したりする制御が可能となり、蓄電電力を有効に利用してジョブを実行することができる。
【0031】
[6]外部電源を使用して実行する通常ジョブと、前記省電力ジョブとの優先度の設定を受け付ける設定部を有し、
前記制御部は、前記通常ジョブよりも前記省電力ジョブの優先度が高く設定されている場合に、前記蓄電電力を使用して実行可能となった省電力ジョブが発生した場合は、実行待ちの通常ジョブよりも前記実行可能な省電力ジョブの実行順序を先にし、前記省電力ジョブよりも前記通常ジョブの優先度が高く設定されている場合に、前記蓄電電力を使用して実行可能となった省電力ジョブが発生した場合は、実行待ちの通常ジョブよりも前記実行可能な省電力ジョブの実行順序を後にする
ことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0032】
上記発明では、外部電源を使用して実行する通常ジョブと省電力ジョブの優先度を設定できることにより、利便性が向上する。なお、この優先度の設定には、装置単位、ユーザ単位、ジョブ種別単位、ジョブ単位などによる優先度の設定が含まれる。
【0033】
[7]外部電源を使用して実行する通常ジョブと、実行可能な省電力ジョブとを登録して実行順序を管理する第1のジョブ管理部と、
待機中の省電力ジョブを登録して実行順序を管理する第2のジョブ管理部と、
を有し、
前記制御部は、前記第2のジョブ管理部に登録されている待機中の省電力ジョブが実行可能となった場合は、その省電力ジョブを前記第1のジョブ管理部に移動する
ことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0034】
上記発明では、通常ジョブおよび実行可能な省電力ジョブを登録して実行順序を管理するジョブ管理部と、待機中の省電力ジョブを登録して実行順序を管理するジョブ管理部とを個別に設けることにより、それらのジョブを単一のジョブ管理部で管理する場合に比べて管理が容易になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の画像処理装置によれば、実行待ちの省電力ジョブの後から他の省電力ジョブが投入された場合に、少なくとも一方のジョブに時間指定があれば、その時間を守りつつ、自己発電による蓄電電力を使用して双方のジョブをより早く実行完了できるようにスケジューリングすることができる。このようなスケジューリングを自動で行うことにより利便性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシステムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置としての複合機の概略構成を示すブロック図である。
【図3】複合機が備える発電部(ソーラーパネル)の設置構成を示す図である。
【図4】複合機の表示部に表示されたコピー設定画面の一例を示す図である。
【図5】複合機の表示部に表示された遅延許容時間設定画面の一例を示す図である。
【図6】遅延許容時間の設定例を一覧表にして示す図である。
【図7】複合機における印刷系のジョブキューを説明する図である。
【図8】Ecoジョブのスケジューリングを説明する図である。
【図9】Ecoジョブのスケジューリングの具体例を一覧表にして示す図である。
【図10】複合機によるEcoジョブ投入時の処理(メインフロー)を示す流れ図である。
【図11】図10のS104による使用電力判定処理のサブルーチンを示す流れ図である。
【図12】図10のS108によるスケジューリング処理のサブルーチンを示す流れ図である。
【図13】複合機によるEcoジョブ監視処理を示す流れ図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るコピー設定画面の一例を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係るジョブ優先度設定画面の一例を示す図である。
【図16】Ecoジョブ/通常ジョブの優先度設定に応じたEcoジョブキューから通常ジョブキューへのEcoジョブの移動の差異を説明する図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る複合機によるEcoジョブ監視処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0038】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシステムの構成を示している。本システムは、オフィスなどに設けられたLAN(Local Area Network)などのネットワーク2に、画像処理装置としての複合機10と、端末装置30とが接続されて構成される。
【0039】
端末装置30は、複合機10にスキャンジョブやプリントジョブなどのジョブを送信してその実行を依頼する機能を備えている。端末装置30は、OSプログラムや複合機10のドライバプログラム、文書や画像を作成・編集するアプリケーションプログラムなどがインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)などで構成される。スキャンジョブやプリントジョブの送信および実行依頼など複合機10に対する各種の依頼は、複合機10用のドライバプログラムによって行われる。
【0040】
図2は、複合機10の概略構成を示している。複合機10は、原稿の画像を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり端末装置30やサーバ装置へ送信したりするスキャン機能、端末装置30から受信した印刷データに基づく画像や当該複合機10に保存されている画像データに基づく画像を記録紙に印刷して出力するプリンタ機能、ファクシミリ機能などを備えている。
【0041】
また複合機10は、自己の発電部(ソーラーパネル)で発電した電力を蓄電部に蓄え、その蓄電電力を使用してジョブを実行する機能と、蓄電電力で実行するジョブの実行順序を制御する機能(ジョブのスケジューリング機能)とを備えている。ここでは、蓄電電力(自己発電の電力)で実行するジョブを「Ecoジョブ」(省電力ジョブ)と呼び、外部電源による通常電力を使用して実行するジョブを「通常ジョブ」と呼ぶ。
【0042】
通常ジョブには、印刷系のジョブとして、コピージョブやプリントジョブなどがある。また、コピーやプリントなどの割り込みジョブもある。Ecoジョブにも、印刷系のジョブとして、コピージョブやプリントジョブなどがある。ただし、割り込みジョブはない。
【0043】
複合機10は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)11に、バス12を介してROM(Read Only Memory)13と、RAM(Random Access Memory)14と、不揮発メモリ15と、ハードディスク装置16と、表示部17と、操作部18と、ファクシミリ通信部19と、ネットワーク通信部20と、スキャナ部21と、画像処理部22と、プリンタ部23と、発電部24と、蓄電部25と、電源部26とを接続して構成される。
【0044】
CPU11は、ROM13に格納されているプログラムに従って複合機10の動作を制御する。ROM13には、CPU11によって実行される各種プログラムや各種の固定データが記憶されている。RAM14は、CPU11がプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するワークメモリとして使用されるほか、画像データを一時的に保存するための画像メモリなどにも使用される。
【0045】
不揮発メモリ15は、電源がオフにされても記憶が保持される書き換え可能なメモリである。不揮発メモリ15には、装置固有の情報や各種の設定情報、テーブルなどが記憶される。ハードディスク装置16は、各種の保存データを格納するほか、入力された各種の画像データなども保存する。
【0046】
表示部17は、液晶ディスプレイなどで構成され、操作画面、設定画面、確認画面などの各種の画面を表示する。操作部18は、スタートボタン、ストップボタン、テンキーなどの各種のボタン類と、液晶ディスプレイの表面に設けられて押下された座標位置を検出するタッチパネルなどで構成され、ユーザが複合機10に対して行う各種の操作を受け付ける。
【0047】
ファクシミリ通信部19は、ファクシミリ機能を備えた外部装置と公衆回線を通じて画像データを送受信する。ネットワーク通信部20は、ネットワーク2を通じて端末装置30やサーバ装置などと通信を行う。
【0048】
スキャナ部21は、原稿の画像を光学的に読み取って画像データを取得する。スキャナ部21は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学系と、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0049】
画像処理部22は、画像データに対して、画像補正、回転、拡大/縮小、圧縮/伸張など各種の画像処理を施す。
【0050】
プリンタ部23は、画像データに基づく画像を電子写真プロセスによって記録紙上に形成して出力する。プリンタ部23は、たとえば、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、入力される画像データに応じて点灯制御されるLD(Laser Diode)と、LDから射出されたレーザ光を感光体ドラム上で走査させる走査ユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有する、いわゆるレーザープリンタとして構成されている。レーザ光に代えてLED(Light Emitting Diode)で感光体ドラムを照射するLEDプリンタのほか他の方式のプリンタであってもかまわない。
【0051】
発電部24は、太陽光(自然光)や室内の照明光を受光し、その受光光から電力を発電する機能を備えたソーラーパネルで構成される。蓄電部25は、発電部24によって発電された電力を蓄え、その電力(蓄電電力)を複合機10の各部に供給する。電源部26は、商用電源(外部電源)を適宜の電圧に変換し、その電力(通常電力)を複合機10の各部に供給する。複合機10は、この電源部26や蓄電部25の電力によって動作しジョブを実行する。
【0052】
図3は、複合機10が備える発電部24(ソーラーパネル)の設置構成を平面図で示している。複合機10は、装置本体の上面部分に空きスペースが設けられている。発電部24は、上方からの光をより多く受けて受光効率(発電効率)が高められるよう、装置本体の上面部分における空きスペースに取り付けられている。
【0053】
図4は、複合機10の表示部17に表示されるEcoジョブのコピー設定画面50の一例を示している。本画面には、部数、カラー/モノクロ、倍率、原稿(サイズ)、片面/両面などのコピーに関する設定項目と、Ecoジョブに関する遅延許容時間の設定項目とが設けられている。
【0054】
遅延許容時間は、ユーザがEcoジョブの実行を待ってもよい最大待ち時間(実行開始の遅延を許容できる期限)である。投入したEcoジョブが蓄電電力不足で即時実行できない場合は、この遅延許容時間までに蓄電電力が充足されて実行可能になるのであれば該ジョブは待機状態にされ、遅延許容時間までの間の蓄電が完了した時点で該ジョブが実行開始される。また、実行可能にならないのであれば該ジョブは通常電力で実行される。
【0055】
遅延許容時間の設定は、ジョブ単位で行う。コピー設定画面50で「遅延許容時間」を選択すると、複合機10の表示部17には図5に例示する遅延許容時間設定画面60が表示される。この設定画面を通じて遅延許容時間の設定を行う。
【0056】
図6は、遅延許容時間の設定例を一覧表にして示している。
【0057】
遅延許容時間は、現在(ジョブ投入時点)からの経過時間として、「日」、「時間」、「分」の単位で設定される。ここでは、日、時間、分の単位別に、複数の選択肢が予め設けられており、更に任意の値を入力できるようになっている。本例では、「日」における選択肢は、「1日」、「2日」、「3日」の3種類が設けられている。「時間」における選択肢は、「1時間」、「2時間」、「3時間」、「6時間」、「12時間」、「18時間」の6種類が設けられている。「分」における選択肢は、「10分」〜「50分」まで10分刻みに5種類が設けられている。
【0058】
遅延許容時間は、日、時間、分の単位における上記の選択肢または任意の入力値を、単独でまたは単位別に組み合わせて設定することができる。たとえば、選択肢同士の組み合わせでは、「1日」と「12時間」を組み合わせて「1.5日」の遅延許容時間を設定することができる。選択肢と入力値の組み合わせでは、選択した「1時間」と入力した「15分」を組み合わせて「1時間15分」の遅延許容時間を設定することができる。また、Ecoジョブを即時実行したい場合には、入力値としてゼロ(0)を入力することにより、遅延許容時間をゼロに設定することも可能である。
【0059】
また、遅延許容時間は、設定では上記のように相対時間(ジョブ投入時点からの経過時間)で入力を受け付けるが、その相対時間を絶対時間(時刻)に換算して記憶・管理する。たとえば、設定で2時間と入力されたEcoジョブが13:00に投入された場合は、その投入時刻の13:00に2時間を加算した15:00を該ジョブの遅延許容時間として記憶・管理する。
【0060】
次に、複合機10の動作について説明する。
【0061】
まず、複合機10によるジョブの管理とスケジューリングの概要を説明する。図7は、複合機10における印刷系のジョブキューの概要を示している。
【0062】
複合機10は、印刷系のジョブキューとして、通常ジョブキュー80とEcoジョブキュー90を備えている。通常ジョブキュー80は、投入された印刷系のジョブを登録して実行順序を管理するための一般的なキュー管理テーブルである。この通常ジョブキュー80では、印刷系の通常ジョブ(割り込みジョブを含む)と実行可能なEcoジョブを登録して実行順序を管理する。Ecoジョブキュー90は、投入されたEcoジョブを登録して実行可能になるまで管理すると共に、Ecoジョブのスケジューリングを行うためのEcoジョブ専用のキュー管理テーブルである。
【0063】
複合機10は、印刷系の通常ジョブが投入された場合には、その印刷系の通常ジョブを通常ジョブキュー80に登録して管理する。通常ジョブキュー80に待機中の通常ジョブが存在しない場合には先頭に登録し、待機中の通常ジョブが存在する場合には末尾に登録する。通常ジョブキュー80に登録した通常ジョブは、先頭から順番に通常電力を使用して実行し、実行完了した通常ジョブは通常ジョブキュー80から削除する。投入された印刷系の通常ジョブは、この通常ジョブキュー80に順次登録することで、投入順に実行するよう実行順序を管理する。
【0064】
印刷系のEcoジョブが投入された場合には、その印刷系のEcoジョブをEcoジョブキュー90に登録して実行可能になるまで管理する。Ecoジョブキュー90に待機中のEcoジョブが存在しない場合には先頭に登録し、待機中のEcoジョブが存在する場合には末尾に登録する。
【0065】
Ecoジョブキュー90の先頭のEcoジョブを実行可能な電力が蓄えられると、もしくは、既に蓄えられていると、この先頭のEcoジョブは通常ジョブキュー80に移動して管理する。通常ジョブキュー80に待機中の他のジョブ(通常ジョブ/Ecoジョブ)が存在しない場合には先頭に登録し、待機中の他のジョブが存在する場合には末尾に登録する。この蓄電完了による実行可能なEcoジョブは、通常ジョブキュー80の先頭に到達したら蓄電電力を使用して実行し、実行完了したら通常ジョブキュー80から削除する。
【0066】
また、設定された遅延許容時間までに蓄えられる電力では不足してその時間までに実行できないなどと判断したEcoジョブは、その判断時点で通常ジョブキュー80に移動して管理する(通常電力で実行すると判断)。この場合も、通常ジョブキュー80に待機中の他のジョブ(通常ジョブ/Ecoジョブ)が存在しない場合には先頭に登録し、待機中の他のジョブが存在する場合には末尾に登録する。この通常電力で実行可能なEcoジョブは、通常ジョブキュー80の先頭に到達したら通常電力を使用して実行し、実行完了したら通常ジョブキュー80から削除する。
【0067】
このように、複合機10は一般的なキュー管理テーブル(通常ジョブキュー80)とは別にEcoジョブ専用のキュー管理テーブル(Ecoジョブキュー90)を作成し、印刷系のEcoジョブは印刷系の通常ジョブと切り分けてキュー管理を行う。
【0068】
図8は、Ecoジョブのスケジューリングの概要を示している。複合機10は、Ecoジョブキュー90で蓄電待ちのEcoジョブを管理しているときに、新たなEcoジョブが投入された場合、蓄電待ちのEcoジョブに設定されている遅延許容時間よりも、新規のEcoジョブに設定されている遅延許容時間の方が早い場合には、蓄電待ちのEcoジョブを後回しにして先に新規のEcoジョブを蓄電電力で実行しても、その後回しにするEcoジョブの実行に影響がないかを判断する。詳細には、蓄電電力を使用して各Ecoジョブを各々の遅延許容時間までに実行可能か否かと、後回しにするEcoジョブの遅延許容時間(最大限待機させた場合の実行開始時間)までに、先行させるEcoジョブが実行完了可能か否かを判断する。
【0069】
いずれも可能と判断した場合は、それらのEcoジョブの実行順序を入れ替えるスケジューリングを行う。また、いずれかが不可と判断した場合は、それらのEcoジョブの実行順序を入れ替えず、新規のEcoジョブは通常電力を使用して実行する。
【0070】
図8に示すように、たとえば、Ecoジョブキュー90で蓄電待ちのEcoジョブ1を管理しているときに、新たなEcoジョブ2が投入された場合、Ecoジョブ1に設定されている遅延許容時間15:00よりも、Ecoジョブ2に設定されている遅延許容時間14:00の方が早い場合には、蓄電電力を使用してEcoジョブ2を先に実行しても、後回しにするEcoジョブ1の実行に影響がないかを判断する。この場合は、蓄電電力を使用して、Ecoジョブ2を14:00までにおよびEcoジョブ1を15:00までに、それぞれ実行可能か否かと、Ecoジョブ1を最大限待機させた場合の実行開始時間である15:00までにEcoジョブ2が実行完了可能か否かを判断する。いずれも可能と判断した場合は、Ecoジョブ1とEcoジョブ2の実行順序を入れ替えるスケジューリングを行う。
【0071】
図9に、Ecoジョブのスケジューリングの具体例を一覧表にして示す。本図では、先に投入された蓄電待ちのEcoジョブ1と後から投入されたEcoジョブ2のスケジューリングについて、4つのケースを例示している。なお、複合機10の蓄電量(蓄電電力)と発電量(発電電力)、およびEcoジョブの消費電力については、所定のワット数を1として換算した値で示している。
【0072】
いずれのケースも、Ecoジョブ1は、遅延許容時間(最大待ち時間)が15:00で、該ジョブの実行に必要な消費電力が100である。複合機10は、14:00時点での蓄電部25の蓄電量が50であり、この時点では蓄電量不足(蓄電量50<消費電力100)でEcoジョブ1が実行不可である。ただし、発電部24による14:00から15:00までの発電量が120と推定され、15:00時点での総蓄電量が170になると推定されるため、遅延許容時間の15:00までには蓄電量充足(蓄電量170>消費電力100)となってEcoジョブ1が実行可能となる。このEcoジョブ1は、14:00時点では蓄電待ちで待機中であり、遅延許容時間の15:00までの間の蓄電が完了した時点で、蓄電電力を使用して実行される予定である。
【0073】
Ecoジョブ2は、14:00に投入されるものとする。本例では、このEcoジョブ2の遅延許容時間(最大待ち時間)と、該ジョブの実行に必要な消費電力と、該ジョブの処理時間の条件が異なる4つのケースについて、Ecoジョブ1とEcoジョブ2のスケジューリングを示している。いずれのケースも、Ecoジョブ2にはEcoジョブ1よりも前の遅延許容時間(14:00または14:30<15:00)が設定されており、複合機10はEcoジョブ1とEcoジョブ2の実行順序が入れ替え可能か否かを上述した電力と時間に基づいて判断する。
【0074】
ケース1では、Ecoジョブ2は、遅延許容時間が14:00(即時実行指定)、消費電力が30、処理時間が1分である。この場合は、15:00時点での総蓄電量170からEcoジョブ1の消費電力100を差し引いた余力電力70で消費電力30のEcoジョブ2が実行可能である。さらに、Ecoジョブ2の遅延許容時間14:00時点での蓄電量50でもEcoジョブ2が実行可能である。また、Ecoジョブ2を遅延許容時間14:00に実行開始した場合にEcoジョブ1の遅延許容時間15:00までにEcoジョブ2が実行完了可能である(処理時間1分により14:01に処理完了)。
【0075】
この判断により、Ecoジョブ1とEcoジョブ2の実行順序を入れ替える。Ecoジョブ2は、14:00の投入時点でそのときの蓄電電力により即時実行される。Ecoジョブ1は待機状態が継続され、遅延許容時間の15:00までに蓄電が完了次第、実行される予定となる。
【0076】
ケース2では、Ecoジョブ2は、遅延許容時間が14:30、消費電力が60、処理時間が1分である。この場合は、15:00時点での総蓄電量170からEcoジョブ1の消費電力100を差し引いた余力電力70で消費電力60のEcoジョブ2が実行可能である。さらに、Ecoジョブ2の遅延許容時間14:30までに蓄えられる蓄電量110(50+120×(30分/60分))でもEcoジョブ2が実行可能である。また、1分当りの発電量2で14:10にEcoジョブ2の蓄電が完了し、その蓄電完了時点でEcoジョブ2を実行開始した場合にEcoジョブ1の遅延許容時間15:00までにEcoジョブ2が実行完了可能である(処理時間1分により14:11に処理完了)。
【0077】
この判断により、Ecoジョブ1とEcoジョブ2の実行順序を入れ替える。Ecoジョブ2は、投入時点では待機状態となり、遅延許容時間の14:30までに蓄電が完了次第(推定14:10)、実行される予定となる。Ecoジョブ1は待機状態が継続され、遅延許容時間の15:00までに蓄電が完了次第、実行される予定となる。
【0078】
ケース3では、Ecoジョブ2は、遅延許容時間が14:00(即時実行指定)、消費電力が150、処理時間が5分である。この場合は、15:00時点での総蓄電量170からEcoジョブ1の消費電力100を差し引いた余力電力70で消費電力150のEcoジョブ2が実行不可である。
【0079】
このEcoジョブ2に対する余力電力不足との判断により、Ecoジョブ1とEcoジョブ2の実行順序は入れ替えない。Ecoジョブ1は待機状態が継続され、遅延許容時間の15:00までに蓄電が完了次第、実行される予定となる。Ecoジョブ2は通常電力により即時実行される。
【0080】
ケース4では、Ecoジョブ2は、遅延許容時間が14:30、消費電力が60、処理時間が60分である。この場合は、15:00時点での総蓄電量170からEcoジョブ1の消費電力100を差し引いた余力電力70で消費電力60のEcoジョブ2が実行可能である。さらに、Ecoジョブ2の遅延許容時間14:00までに蓄えられる蓄電量110(50+120×(30分/60分))でもEcoジョブ2が実行可能である。ただし、1分当りの発電量2で14:10にEcoジョブ2の蓄電が完了し、その蓄電完了時点でEcoジョブ2を実行開始した場合にEcoジョブ1の遅延許容時間15:00までにEcoジョブ2が実行完了不可である(処理時間60分により15:10に処理完了)。
【0081】
このEcoジョブ1に対するEcoジョブ2の処理時間超過との判断により、Ecoジョブ1とEcoジョブ2の実行順序は入れ替えない。Ecoジョブ1は待機状態が継続され、遅延許容時間の15:00までに蓄電が完了次第、実行される予定となる。Ecoジョブ2は通常電力により即時実行される。
【0082】
続いて、複合機10による詳細な動作を説明する。図10は、複合機10によるEcoジョブ投入時の処理(メインフロー)を示す流れ図である。ここでは、複合機10に投入するEcoジョブとしてコピージョブを例に説明する。また、投入されたEcoジョブを蓄電待ちで待機させる場合の最大同時待機数は2としており、蓄電が完了して実行可能となったEcoジョブはすぐに実行できるものとして説明する。
【0083】
ユーザは、コピージョブをEcoジョブとして複合機10に投入する場合には、操作部18を通じてその指定を行い、図4に例示したコピー設定画面50を通じてコピーに関する各種の設定項目の設定を行う。また、図5に例示した遅延許容時間設定画面60を通じて、投入するEcoジョブ指定のコピージョブに対する遅延許容時間(相対時間)の設定を行う。複合機10のスキャナ部21に原稿をセットし、操作部18のスタートボタンを押下して、そのEcoジョブ指定のコピージョブの実行指示を行う。
【0084】
複合機10のCPU11は、Ecoジョブ指定のコピージョブ(以下では単に「Ecoジョブ」と呼ぶ)の実行指示を受け付けると(ステップS101)、通常電力によりスキャナ部21を動作させて原稿を読み取り、スキャナ部21が原稿から読み取って取得した画像データをRAM14に一時保存する。原稿の読み取りを終えると、Ecoジョブを生成し、Ecoジョブキュー90に登録する。Ecoジョブキュー90に待機ジョブ(蓄電待ちによる待機中のEcoジョブ)がある場合は末尾に登録する(ステップS102)。
【0085】
このEcoジョブキュー90への新規ジョブ(新たに投入されたEcoジョブ)の登録は、生成したEcoジョブにジョブID(管理番号)を割り当て、そのジョブIDをEcoジョブキュー90に登録することで行う。また、コピーの各種設定項目の設定情報と、遅延許容時間の設定情報(相対時間を絶対時間に換算した時間情報)とを、生成したEcoジョブ(ジョブID)に対応付けてRAM14(または不揮発メモリ15)に保存する。
【0086】
Ecoジョブキュー90に待機ジョブがない場合には(ステップS103;No)、新規ジョブに対する使用電力判定処理を行う(ステップS104)。図11に、使用電力判定処理のサブルーチンを示す。
【0087】
CPU11は、新規ジョブの実行に必要となる複合機10の消費電力を算出する(ステップS201)。
【0088】
たとえば、印刷出力に係る消費電力は、印刷1枚当たりの消費電力を予め内部データ(テーブル値)として記憶しておき、この内部データを使用して算出するようにしてもよい。
【0089】
(印刷出力に係る消費電力の算出例)
消費電力=印刷出力枚数×1枚の印刷出力に要する消費電力(テーブル値)
【0090】
また、印刷出力に係る消費電力では、出力枚数の他に、カラー/モノクロ、片面/両面などの印刷条件を考慮するようにしてもよい。これらの印刷条件についても、その印刷条件を加味した印刷出力1枚当たりの消費電力量を予め内部データ(テーブル値)として記憶しておくことにより、印刷条件を考慮した消費電力量の算出が可能である。
【0091】
(カラー/モノクロの印刷出力に係る消費電力の算出例)
・カラー印刷出力の場合
消費電力=印刷出力枚数×1枚のカラー印刷出力に要する消費電力(テーブル値)
・モノクロ印刷出力の場合
消費電力=印刷出力枚数×1枚のモノクロ印刷出力に要する消費電力(テーブル値)
【0092】
続いてCPU11は、蓄電部25の現在の蓄電電力(蓄電量)を算出する(ステップS202)。蓄電電力の算出は、たとえば蓄電部25の出力電圧値から換算するなど、周知の方法によって行う。
【0093】
CPU11は、ステップS201で算出した消費電力と、ステップS202で算出した蓄電電力を比較する(ステップS203)。消費電力が蓄電電力以下(消費電力に対して蓄電電力が充足)の場合には(ステップS203;Yes)、「蓄電電力使用」と判定し(ステップS209)、図10のメインフローに戻る。
【0094】
消費電力が蓄電電力を超過(消費電力に対して蓄電電力が不足)する場合には(ステップS203;No)、CPU11は、新規ジョブの実行に必要な消費電力に対して蓄電部25の蓄電電力が不足している、その不足分の電力を算出する(ステップS204)。この不足電力は、消費電力から蓄電電力を減算することで求める(不足電力=消費電力−蓄電電力)。
【0095】
続いてCPU11は、発電部24による今後の単位時間当たりの発電電力(蓄電部25における今後の単位時間当たりの蓄電電力)を算出する(ステップS205)。
【0096】
たとえば、発電部24による単位時間当たり(たとえば、1分、10分、30分など)の発電電力を逐次取得して記憶・更新するようにし、直近の発電電力に基づいて今後の単位時間当たりの発電電力を算出する。具体的には、1分毎に発電電力を取得して記憶・更新し、今後の1分間当たりの発電電力を算出する場合には、現在記憶されている直近の1分間の発電電力を、今後の1分間当たりの発電電力として算出するようにしてもよい。また、10分毎に発電電力を取得して記憶・更新し、今後の1分間当たりの発電電力を算出する場合には、現在記憶されている直近の10分間の発電電力の1/10の値(直近の10分間における1分間当たりの平均値)を、今後の1分間当たりの発電電力として算出するようにしてもよい。
【0097】
また、複合機10がオフィスなどで使用される場合には、昼休みや夜間などにオフィスの照明が消灯され、発電部24の受光条件(発電効率)が変化する。そこで、複合機10の設置場所における照明の消灯時間が事前に分かっている場合には、その受光条件の変化を考慮して、上記の発電電力を算出するようにしてもよい。たとえば、複合機10は、設置場所の照明の消灯時間を設定できるように構成し、その消灯時の発電電力のデータを実測により求めて予め不揮発メモリ15に記憶しておくことにより、消灯時間帯については、記憶されているデータを使用して発電電力を算出するようにしてもよい。
【0098】
CPU11は、ステップS204で算出した不足電力を、ステップS205で算出した今後の単位時間(1分間)当たりの発電電力で除算することにより、新規ジョブの実行に必要な電力(=消費電力)が蓄えられるまでの蓄電時間を算出する(ステップS206)。
【0099】
CPU11は、算出した蓄電時間と、新規ジョブの遅延許容時間を比較する(ステップS207)。ここでは、相対時間による蓄電時間を現在の時刻に加算して換算した絶対時間による蓄電時間と、保存されている絶対時間の遅延許容時間を比較する。
【0100】
蓄電時間が遅延許容時間以下の場合には(ステップS207;Yes)、「蓄電電力使用」と判定し(ステップS209)、図10のメインフローに戻る。蓄電時間が遅延許容時間を超過する場合には(ステップS207;No)、「通常電力使用」と判定し(ステップS208)、図10のメインフローに戻る。
【0101】
図10では、CPU11は、使用電力判定処理の判定結果が「通常電力使用」の場合には(ステップS105;通常電力使用)、Ecoジョブキュー90に登録した新規ジョブを通常ジョブキュー80に移動して登録し、この新規ジョブは通常電力で実行するように指定して(ステップS106)、本処理を終了する。判定結果が「蓄電電力使用」の場合には(ステップS105;蓄電電力使用)、本処理を終了する。
【0102】
また、Ecoジョブキュー90に待機ジョブがある場合には(ステップS103;Yes)、CPU11は、その待機ジョブの遅延許容時間と、新規ジョブの遅延許容時間を比較する(ステップS107)。遅延許容時間が同じか新規ジョブの方が遅い場合には(ステップS107;No)、新規ジョブに対して図11の使用電力判定処理を行う(ステップS104)。
【0103】
CPU11は、新規ジョブの実行に必要となる複合機10の消費電力を算出する(ステップS201)。また、待機ジョブがある場合は、待機ジョブに使用する蓄電電力を考慮した、新規ジョブに対しての現在の蓄電電力を算出する(ステップS202)。この場合の蓄電電力は、蓄電部25の現在の蓄電電力から待機ジョブの消費電力(=待機ジョブに使用する蓄電電力)を減算して求める。現時点では蓄電部25の蓄電電力が待機ジョブの消費電力を下回っているので、ここで算出される蓄電電力は負の値になる。
【0104】
CPU11は、新規ジョブの消費電力と上記の算出した蓄電電力を比較する(ステップS203)。算出した蓄電電力が負の値であるため、新規ジョブの消費電力はその蓄電電力を超過することになる(ステップS203;No)。CPU11は、新規ジョブの消費電力からその負の値の蓄電電力を減算して、すなわち、結果的には正の値の蓄電電力を加算して、待機ジョブに使用する蓄電電力を考慮した、新規ジョブに対する現在の不足電力を算出する(ステップS204)。
【0105】
続いてCPU11は、発電部24による今後の単位時間当たりの発電電力を算出し(ステップS205)、上記の不足電力をその単位時間当たりの発電電力で除算することにより、新規ジョブの実行に必要な電力(=消費電力)が蓄えられるまでの蓄電時間を算出する(ステップS206)。
【0106】
CPU11は、算出した蓄電時間と、新規ジョブの遅延許容時間を比較する(ステップS207)。前述したように、相対時間で算出された蓄電時間は絶対時間に換算して、絶対時間の遅延許容時間と比較する。
【0107】
蓄電時間が遅延許容時間以下の場合には(ステップS207;Yes)、「蓄電電力使用」と判定し(ステップS209)、図10のメインフローに戻る。蓄電時間が遅延許容時間を超過する場合には(ステップS207;No)、「通常電力使用」と判定し(ステップS208)、図10のメインフローに戻る。
【0108】
図10では、CPU11は、使用電力判定処理の判定結果が「通常電力使用」の場合には(ステップS105;通常電力使用)、Ecoジョブキュー90の末尾(待機ジョブの後)に登録した新規ジョブを通常ジョブキュー80に移動して登録し、この新規ジョブは通常電力で実行するように指定して(ステップS106)、本処理を終了する。判定結果が「蓄電電力使用」の場合には(ステップS105;蓄電電力使用)、本処理を終了する。
【0109】
また、待機ジョブと新規ジョブの遅延許容時間の比較で、新規ジョブの方が遅延許容時間が早い場合には(ステップS107;Yes)、これらのジョブに対するスケジューリング処理を行う(ステップS108)。
【0110】
図12に、Ecoジョブのスケジューリング処理のサブルーチンを示す。
【0111】
CPU11は、以下の各算出を行う。
・蓄電部25の現在の蓄電電力:A(ステップS301)
・現時点から待機ジョブの遅延許容時間までの時間:B1(ステップS302)
・発電部24による今後の単位時間当たりの発電電力:C(ステップS303)
・待機ジョブの遅延許容時間までに蓄電部25に蓄えられる蓄電電力:D1=A+B1×C(ステップS304)
・待機ジョブの実行に必要となる複合機10の消費電力:E1(ステップS305)
・待機ジョブの消費電力を除いた余力電力:F=D1−E1(ステップS306)
・新規ジョブの実行に必要となる複合機10の消費電力:E2(ステップS307)
【0112】
なお、待機ジョブの消費電力と新規ジョブの消費電力は、図11の使用電力判定処理におけるステップS201で算出した消費電力を保存しておいて代用するようにしてもよい。その場合は、ステップS305とステップS307による消費電力の算出は省略する。
【0113】
CPU11は、新規ジョブの消費電力と余力電力を比較し、新規ジョブを実行する余力電力があるか否か(余力電力で新規ジョブを実行可能か否か)を判断する(ステップS308)。新規ジョブの消費電力が余力電力を上回る場合は(F<E2)、余力電力不足により結果として蓄電電力不足で新規ジョブを実行不可と判断し(ステップS308;No)、図10のメインフローに戻る。新規ジョブの消費電力が余力電力以下の場合は(F≧E2)、新規ジョブを実行するための余力電力は充足と判断する(ステップS308;Yes)。
【0114】
CPU11は、以下の各算出を行う。
・現時点から新規ジョブの遅延許容時間までの時間:B2(ステップS309)
・新規ジョブの遅延許容時間までに蓄電部25に蓄えられる蓄電電力:D2=A+B2×C(ステップS310)
【0115】
CPU11は、新規ジョブの遅延許容時間までに蓄電部25に蓄えられる蓄電電力と、新規ジョブの消費電力を比較する(ステップS311)。新規ジョブの消費電力が上記の蓄電電力を上回る場合は(D2<E2)、遅延許容時間内では蓄電電力が不足して新規ジョブを実行不可と判断し(ステップS311;No)、図10のメインフローに戻る。新規ジョブの消費電力が上記の蓄電電力以下の場合は(D2≧E2)、遅延許容時間内に新規ジョブを実行するための蓄電電力は充足と判断する(ステップS311;Yes)。
【0116】
CPU11は、新規ジョブの処理時間(G)を算出する(ステップS312)。この処理時間は、新規ジョブ(コピージョブ)における印刷出力の所要時間である。たとえば、新規ジョブの印刷枚数を複合機10の印刷速度で除算することにより算出する。
【0117】
続いてCPU11は、待機ジョブの遅延許容時間までに新規ジョブが実行完了可能か否かを判断する(ステップS313)。この判断は、下記の(1)式を満足するか否かによって判断し、満足する場合は可能と判断し、満足しない場合は不可と判断する。
【0118】
B1≧(E2−A)/C+G・・・(1)
B1:現時点から待機ジョブの遅延許容時間までの時間
E2:新規ジョブの消費電力
A:現在の蓄電電力
C:単位時間当たりの発電電力
G:新規ジョブの処理時間
【0119】
なお、新規ジョブを遅延許容時間まで待機(最大限待機)させてから実行開始する場合には、下記の(2)式を満足するか否かによって判断する。
【0120】
B1≧B2+G・・・(2)
B1:現時点から待機ジョブの遅延許容時間までの時間
B2:現時点から新規ジョブの遅延許容時間までの時間
(B1>B2)
G:新規ジョブの処理時間
【0121】
待機ジョブの遅延許容時間までに新規ジョブを実行完了不可と判断した場合には(B1<(E2−A)/C+G)、処理時間超過で新規ジョブを蓄電電力では実行不可と判断し(ステップS313;No)、図10のメインフローに戻る。待機ジョブの遅延許容時間までに新規ジョブを実行完了可能と判断した場合には(B1≧(E2−A)/C+G)、待機ジョブの前に新規ジョブを蓄電電力で実行可能と判断し(ステップS313;Yes)、CPU11は、Ecoジョブキュー90内の待機ジョブと新規ジョブを入れ替えて、すなわち、待機ジョブと新規ジョブの実行順序を入れ替えて(ステップS314)、図10のメインフローに戻る。
【0122】
図10では、CPU11は、Ecoジョブのスケジューリング処理で待機ジョブと新規ジョブの実行順序を入れ替えなかった場合には(ステップS109;No)、Ecoジョブキュー90の末尾(待機ジョブの後)に登録した新規ジョブを通常ジョブキュー80に移動して登録し、この新規ジョブは通常電力で実行するように指定して(ステップS106)、本処理を終了する。待機ジョブと新規ジョブの実行順序を入れ替えた場合には(ステップS109;Yes)、本処理を終了する。
【0123】
図13は、複合機10によるEcoジョブキュー監視処理を示す流れ図である。本処理は、図10のEcoジョブ投入時の処理と並行して行われる(マルチタスク)。
【0124】
CPU11は、Ecoジョブキュー90に待機ジョブがあるか否かを監視する(ステップS401;No)。待機ジョブがある場合には(ステップS401;Yes)、Ecoジョブキュー90内の先頭の待機ジョブを実行するのに必要な電力が蓄電部25に蓄えられたか否かを監視する(ステップS402;No)。その電力が蓄電部25に蓄えられた場合には(ステップS402;Yes)、Ecoジョブキュー90内の先頭の待機ジョブを通常ジョブキュー80に移動して登録し、このジョブ(Ecoジョブ)は蓄電電力で実行するように指定して(ステップS403)、ステップS401に戻る。
【0125】
このように、本実施形態に係る複合機10は、実行待ちのEcoジョブの後から新たなEcoジョブが投入された場合に、遅延許容時間を守りつつ、自己発電による蓄電電力を有効に利用して双方のジョブをより早く実行完了できるようにスケジューリングすることができる。このようなスケジューリングを自動で行うことにより利便性が高められる。
【0126】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、蓄電電力で実行可能なEcoジョブと待機中の通常ジョブとの実行順序の優先度を設定できる複合機10について説明する。
【0127】
図14は、第2の実施形態に係る複合機10の表示部17に表示されるEcoジョブのコピー設定画面55の一例を示している。本画面には、第1の実施形態で説明したコピー設定画面50に対して、Eco/通常ジョブ優先の設定項目が追加して設けられている。
【0128】
Eco/通常ジョブ優先は、実行可能なEcoジョブと待機中の通常ジョブとの実行順序の優先度である。待機中の通常ジョブがあるときに実行可能なEcoジョブが発生した場合、Ecoジョブ優先であれば、待機中の通常ジョブよりもそのEcoジョブの実行順序を先にし、通常ジョブ優先であれば、待機中の通常ジョブよりもそのEcoジョブの実行順序を後にする。
【0129】
Eco/通常ジョブ優先の設定も遅延許容時間と同じく、ジョブ単位で行う。コピー設定画面55で「Eco/通常ジョブ優先」を選択すると、複合機10の表示部17には図15に例示するジョブ優先度設定画面70が表示される。この設定画面を通じてEco/通常ジョブ優先の設定を行う。
【0130】
ジョブ優先度設定画面70には、実行可能なEcoジョブと待機中の通常ジョブの実行順序について、Ecoジョブ優先の選択・設定を受け付けるEcoジョブ優先ボタン71と、通常ジョブ優先の選択・設定を受け付ける通常ジョブ優先ボタン72とが表示される。本画面上のいずれかのボタンを押下操作することで、Ecoジョブ優先または通常ジョブ優先の選択・設定を行うことができる。
【0131】
このジョブ優先度の設定情報(Ecoジョブ優先または通常ジョブ優先を示す情報)は、コピーの各種設定項目の設定情報および遅延許容時間の設定情報と共に、ジョブ投入によって生成されたEcoジョブ(ジョブID)に対応付けられてRAM14(または不揮発メモリ15)に保存される。
【0132】
図16は、Ecoジョブ/通常ジョブの優先度設定に応じたEcoジョブキュー90から通常ジョブキュー80へのEcoジョブの移動の差異を示している。第1の実施形態で説明したように、複合機10は、Ecoジョブキュー90に登録されている待機中の先頭のEcoジョブが実行可能となった場合、すなわち、そのEcoジョブを実行可能な電力が蓄えられた場合には、そのEcoジョブを通常ジョブキュー80に移動する。
【0133】
移動対象のEcoジョブにEcoジョブ優先が設定されている場合は、そのEcoジョブを通常ジョブキュー80内の待機中の通常ジョブの前に移動させて登録する。通常ジョブキュー80内に複数の通常ジョブが存在する場合は、その複数の通常ジョブの先頭に移動させて登録する。
【0134】
移動対象のEcoジョブに通常ジョブ優先が設定されている場合は、そのEcoジョブを通常ジョブキュー80内の待機中の通常ジョブの後に移動させて登録する。通常ジョブキュー80内に複数の通常ジョブが存在する場合は、その複数の通常ジョブの末尾に移動させて登録する。また、通常ジョブキュー80内に待機中のEcoジョブが存在する場合や、通常ジョブとEcoジョブが混在する場合も、それらのジョブの末尾に移動させて登録する。
【0135】
本実施形態に係る複合機10の動作では、Ecoジョブ投入時の処理(図10〜図13)は第1の実施形態と同じであり、異なるのはEcoジョブキュー監視処理である。本実施形態に係る複合機10の動作については、そのEcoジョブキュー監視処理についてのみ説明する。
【0136】
図17は、本実施形態に係るEcoジョブキュー監視処理を示す流れ図である。
【0137】
CPU11は、Ecoジョブキュー90に待機ジョブがあるか否かを監視する(ステップS501;No)。待機ジョブがある場合には(ステップS501;Yes)、Ecoジョブキュー90内の先頭の待機ジョブを実行するのに必要な電力が蓄電部25に蓄えられたか否かを監視する(ステップS502;No)。その電力が蓄電部25に蓄えられた場合(ステップS502;Yes)、通常ジョブキュー80に待機中の通常ジョブが存在しない場合には(ステップS503;No)、Ecoジョブキュー90内の先頭の待機ジョブを通常ジョブキュー80に移動して登録し、このジョブ(Ecoジョブ)は蓄電電力で実行するように指定して(ステップS504)、ステップS501に戻る。
【0138】
通常ジョブキュー80に待機中の通常ジョブが存在する場合には(ステップS503;Yes)、CPU11は、Ecoジョブキュー90内の先頭の待機ジョブ(Ecoジョブ)に対応付けられているジョブ優先度の設定情報を確認する(ステップS505)。ジョブ優先度の設定情報がEcoジョブ優先の場合には(ステップS505;Ecoジョブ優先)、Ecoジョブキュー90内の先頭の待機ジョブを通常ジョブキュー80における待機中の通常ジョブの前に移動して登録し、このEcoジョブは蓄電電力で実行するように指定して(ステップS506)、ステップS501に戻る。ジョブ優先度の設定情報が通常ジョブ優先の場合には(ステップS505;通常ジョブ優先)、Ecoジョブキュー90内の先頭の待機ジョブを通常ジョブキュー80における待機中の通常ジョブの後に移動して登録し、このEcoジョブは蓄電電力で実行するように指定して(ステップS507)、ステップS501に戻る。
【0139】
このように、Ecoジョブと通常ジョブとの実行順序の優先度を設定できることにより、利便性が向上する。
【0140】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0141】
複合機10が自己発電による蓄電電力を使用して実行するEcoジョブ(省電力ジョブ)は、実施形態で説明したコピージョブに限らない。ファクシミリ送信ジョブや端末装置30から依頼を受けるプリントジョブなどもEcoジョブに指定して複合機10に投入することができる。プリントジョブの場合は、端末装置30にインストールされた複合機10用のドライバプログラムが、図5に例示した遅延許容時間設定画面60や図15に例示したジョブ優先度設定画面70を表示し、ユーザからそれらの設定を受け付けるように構成すればよい。
【0142】
Ecoジョブに設定する時間は、実施形態で説明したジョブの投入時点からの遅延許容時間(ジョブ実行の開始時間)に限らない。Ecoジョブを予約ジョブとして投入する場合の指定時間(予約時間)や、その指定時間と指定時間時点からの遅延許容時間とを含むものとしてもよい。また、実施形態では遅延許容時間以内に蓄電が完了次第Ecoジョブを実行開始するようにしているが、遅延許容時間の終わりまで待機させてからEcoジョブを実行開始するようにしてもよい。
【0143】
Ecoジョブの実行待ち状態(待機状態)は、実施形態で説明した蓄電待ちに限らない。蓄電完了後における前のジョブ(通常ジョブ/実行可能なEcoジョブ)の実行完了待ちや設定時間待ちなどでもよい。たとえば、このような前のジョブの実行完了待ちや設定時間待ちによる待機中に、この待機中のEcoジョブに設定された時間よりも早期の時間が設定された新たなEcoジョブが投入された場合には、これらのEcoジョブに対して設定時間と蓄電電力に基づくスケジューリングを行うようにしてもよい。
【0144】
また、実行待ちのEcoジョブ(第1のジョブ)と、そのEcoジョブの投入後に投入された新たなEcoジョブ(第2のジョブ)のスケジューリングにおいて、時間は双方に設定されている必要はなく、一方に設定されていてもよい。また、一方のEcoジョブに時間が設定されている場合には、第1のジョブ(実行待ちのEcoジョブ)と第2のジョブ(新たなEcoジョブ)を、発電部24による発電で蓄電部25の蓄電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、第1のジョブと第2のジョブのうちの一方に設定された時間までに実行不可と判断し、かつ、時間が設定された一方のジョブのみならばその時間までに実行可能と判断した場合は、時間が設定された一方のジョブよりも他方のジョブの実行順序を後にするようにしてもよい。
【0145】
時間やジョブ優先度(Eco/通常ジョブ優先)の設定は、実施形態で説明したジョブ単位で行うほかに、装置単位やユーザ単位で行うようにしてもよい。また、コピー/プリント/ファクシミリ送信などのジョブ種別単位で行うようにしてもよい。これらの装置単位、ユーザ単位、ジョブ種別単位では、時間やジョブ優先度は予め設定される。
【0146】
図11の使用電力判定処理では、ステップS202による複合機10の現在の蓄電電力の算出で、通常ジョブキュー80に実行待ちや実行中のEcoジョブが存在する場合はそのジョブに消費される分の蓄電電力を勘案して現在の蓄電電力を算出するようにしてもよい。たとえば、実行待ちのEcoジョブが存在する場合は、そのジョブの消費電力を現在の蓄電電力から減算すればよい。実行中のEcoジョブが存在する場合は、そのジョブの残りの処理分の消費電力を現在の蓄電電力から減算すればよい。
【0147】
図13や図17のEcoジョブキュー監視処理では、Ecoジョブキュー90内の実行可能なEcoジョブ(先頭ジョブ)を通常ジョブキュー80に移動する際に、通常ジョブキュー80に実行待ちや実行中のジョブ(通常ジョブ/Ecoジョブ)が存在する場合はそのジョブの処理時間を勘案し、移動対象のEcoジョブを設定時間内に実行可能となるよう、あるいは、設定時間を超えるとしてもその超過時間が可能な限り少なくなるように、通常ジョブキュー80内の他のジョブに対する登録位置(実行順序)を決めるようにしてもよい。特に、Ecoジョブと通常ジョブの優先度を設定可能な構成では、移動対象のEcoジョブに設定されているジョブ優先度が通常ジョブ優先の場合には、そのEcoジョブを実行待ちの通常ジョブの後に登録した場合に該ジョブの設定時間までに該ジョブが実行可能か否かを判断し、実行不可と判断した場合には、通常ジョブの前にセットするようにしてもよい。
【0148】
また、本発明に係る画像処理装置は、実施形態で説明した複合機に限らず、コピー機、プリンタ機、ファクシミリ機などの他の画像処理装置も対象にすることができる。
【符号の説明】
【0149】
2…ネットワーク
10…複合機
11…CPU
12…バス
13…ROM
14…RAM
15…不揮発メモリ
16…ハードディスク装置
17…表示部
18…操作部
19…ファクシミリ通信部
20…ネットワーク通信部
21…スキャナ部
22…画像処理部
23…プリンタ部
24…発電部
25…蓄電部
26…電源部
30…端末装置
50…コピー設定画面
55…コピー設定画面
60…遅延許容時間設定画面
70…ジョブ優先度設定画面
71…Ecoジョブ優先ボタン
72…通常ジョブ優先ボタン
80…通常ジョブキュー
90…Ecoジョブキュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに係るジョブを実行するジョブ実行部と、
発電部と、
前記発電部が発電した電力を蓄える蓄電部と、
前記蓄電部の蓄電電力を使用して実行する省電力ジョブである、実行待ちの第1のジョブと、その第1のジョブの投入後に投入された第2のジョブを、前記発電部の発電で前記蓄電部の蓄電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、前記第1のジョブと前記第2のジョブのうちの一方に設定された時間までに実行可能か否かを判断し、実行可能と判断した場合は、前記時間が設定された一方のジョブよりも他方のジョブの実行順序を先にする制御部と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1のジョブと前記第2のジョブの実行に必要な電力が、前記一方のジョブに設定された時間までに前記発電部の発電で前記蓄電部に蓄えられる推定の蓄電電力以下である条件と、前記一方のジョブよりも前に前記他方のジョブを蓄電電力で実行できるように前記蓄電部に電力を蓄えてから実行開始した場合の実行完了時間が、前記一方のジョブに設定された時間に基づく該ジョブの実行開始時間よりも前である条件とを満足した場合に、前記実行可能と判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1のジョブと前記第2のジョブを、前記発電部による発電で前記蓄電部の蓄電を進めて蓄えた蓄電電力を使用して、前記第1のジョブと前記第2のジョブのうちの一方に設定された時間までに実行不可と判断し、前記時間が設定された一方のジョブはその時間までに実行可能と判断した場合は、前記時間が設定された一方のジョブよりも他方のジョブの実行順序を後にする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1のジョブは、前記時間が設定された前記一方のジョブであり、
前記制御部は、前記第2のジョブが前記第1のジョブに設定された時間よりも前の時間が設定されたジョブである場合に、このジョブを前記他方のジョブとして、前記判断を行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記時間は、ジョブの実行を待ってもよい許容時間である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
外部電源を使用して実行する通常ジョブと、前記省電力ジョブとの優先度の設定を受け付ける設定部を有し、
前記制御部は、前記通常ジョブよりも前記省電力ジョブの優先度が高く設定されている場合に、前記蓄電電力を使用して実行可能となった省電力ジョブが発生した場合は、実行待ちの通常ジョブよりも前記実行可能な省電力ジョブの実行順序を先にし、前記省電力ジョブよりも前記通常ジョブの優先度が高く設定されている場合に、前記蓄電電力を使用して実行可能となった省電力ジョブが発生した場合は、実行待ちの通常ジョブよりも前記実行可能な省電力ジョブの実行順序を後にする
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
外部電源を使用して実行する通常ジョブと、実行可能な省電力ジョブとを登録して実行順序を管理する第1のジョブ管理部と、
待機中の省電力ジョブを登録して実行順序を管理する第2のジョブ管理部と、
を有し、
前記制御部は、前記第2のジョブ管理部に登録されている待機中の省電力ジョブが実行可能となった場合は、その省電力ジョブを前記第1のジョブ管理部に移動する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−155217(P2012−155217A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15661(P2011−15661)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】