説明

画像加熱装置

【課題】加熱回転体の表面性を回復させると共に、記録材分離手段と加熱回転体とのギャップを保証することができる画像加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱回転体の表面を摺擦する摺擦部材と、記録材分離手段に対し所定位置に配置され、回転軸方向において摺擦部材の摺擦領域の外側の複数位置で当接して、記録材分離手段と加熱回転体とのギャップを決定するスペーサ手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合機、複写機、プリンタ、ファックス等、電子写真方式・静電記録方式等の作像プロセスを採用した画像形成装置に使用される画像加熱装置に関する。画像加熱装置としては、記録材上に形成した未定着トナー画像を固着画像として加熱定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術に基づく画像形成装置内の画像加熱装置としての定着装置においては、転写部材でトナーを積載して運ばれてきたシートを加熱・加圧することで画像を定着する。一般的な定着装置は、加熱部材とそれに圧接する形で配置される加圧部材からなる。定着部材によるニップ間を通過させることで、トナー像を紙に定着させる。シートに付着されたトナーは、加熱部材より与えられる熱により溶融する。
【0003】
この時、溶融したトナーは粘着性を持ち、シートを加熱部材表面に付着させようとする。そのため、定着装置の技術課題のひとつとして、定着部材によるニップ間でトナー像が定着されて排出されたシートが、ニップ通過後に加熱部材に巻きつくことがある。
【0004】
この課題を解決するため、加熱部材軸方向シート搬送領域全域に近接配置した分離板が実用化されている。この様な分離板を使用する構成においては、加熱部材に接触することなくシートの剥離補助を行う必要があり、分離板先端位置と加熱部材間の距離の精度を高めることが必要である。この分離板の先端位置の精度を向上させるため、加熱部材表面に当接し、分離板先端位置と加熱部材間の距離を保証するスペーサ手段を通紙領域外で前側、奥側に独立に設けることで、分離板の加熱部材に対する位置決めをするものが知られている(特許文献1)。
【0005】
一方、定着処理を重ねるごとに加熱部材の表面性が部分的に劣化し、加熱部材の劣化した表面性がそのまま画像表面に写し取られて、画像面の均一な光沢状態が得られなくなるという技術課題がある。この課題を解決するために、加熱部材の表層に対して粗し部材を当接させることで、加熱部材表層の表面粗さを均一に維持する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−037567号公報
【特許文献2】特開2005−266785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景から、近年複写機に求められる高生産性と高画質を満足するには、分離板の先端位置の精度を向上させるために、分離板先端位置と加熱部材間の距離を保証するスペーサ手段を前側、奥側独立に設ける技術が必要となる。更に、加熱回転体の表面性を回復させるために、加熱回転体の表層に対して摺擦部材を摺擦させる技術が必要となる。
【0008】
しかしながら、加熱部材がスペーサ手段との摺擦で削れることが抑制された前提の場合においても、摺擦部材が削れることで生じる粉塵がスペーサ手段に付着してギャップ設定が不安定となるという新たな課題が発生する。
【0009】
本発明は、上記2つの技術を両立させ、摺擦部材が削れることで生じる粉塵がスペーサ手段に付着してギャップ設定が不安定となることを抑制できる画像加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の代表的な構成は、加熱回転体と、前記加熱回転体と画像を担持した記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧回転体と、前記記録材を前記加熱回転体から分離する記録材分離手段と、を有する画像加熱装置であって、前記加熱回転体の表面を摺擦する摺擦部材と、前記記録材分離手段に対し所定位置に配置され、前記加熱回転体の回転軸方向において前記摺擦部材の摺擦領域の外側の複数位置で当接して、前記記録材分離手段と前記加熱回転体とのギャップを決定するスペーサ手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の代表的な構成は、加熱回転体と、前記加熱回転体と画像を担持した記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧回転体と、前記加圧回転体を前記加熱回転体に対して接離させる第1の加圧手段と、前記記録材を前記加熱回転体から分離する記録材分離手段と、を有する画像加熱装置であって、前記加熱回転体を摺擦する摺擦部材と、前記摺擦部材を前記加熱回転体に対して接離させる第2の加圧手段と、前記記録材分離手段に対し所定位置に配置され、前記加熱回転体の回転軸方向において前記摺擦部材の摺擦領域の外側の複数位置で当接して、前記記録材分離手段と前記加熱回転体とのギャップを決定するスペーサ手段と、前記スペーサ手段を前記加熱回転体に当接するように付勢する付勢手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱回転体の表面性を回復させると共に、摺擦部材が削れることで生じる粉塵がスペーサ手段に付着してギャップ設定が不安定となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像加熱装置としての定着装置における長手方向配置関係を示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像加熱装置としての定着装置を搭載した画像形成装置を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る定着装置を示す正面図である。
【図5】本実施形態に係る定着装置における分離板周囲の詳細図である。
【図6】本実施形態に係る定着装置におけるスペーサ部材周囲を説明する上面図、及び部分詳細図である。
【図7】(a)は本実施形態に係る定着装置における粗し機構を説明する部分斜視図、(b)はその部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
まず図2を用いて、画像形成装置の全体構成について説明する。図2に示す画像形成装置は、電子写真方式を採用した画像形成装置(いわゆるプリンタ)である。画像形成装置100は、大きく分けて、記録材としてのシートにトナー画像を形成する画像形成手段と、シートに形成されたトナー画像を加熱・加圧して定着する画像加熱装置としての定着装置が設けられている。
【0015】
画像形成手段は次に説明する機器を備えている。像担持体としての感光体ドラム102の周りに帯電手段としての帯電器103が設けられており、感光体ドラム102の表面は帯電器103によって一様に帯電処理される。そして、露光手段としての露光装置104から画像に応じた光105を照射されることにより感光ドラム102上に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像手段としての現像器106によって現像されてトナー画像が形成される。
【0016】
一方、シートSは装置下部の給送カセット109に収納されており、給送ローラ110によって給送される。シートは搬送手段としてのレジストローラ対111によって感光体ドラム102上のトナー画像と同期して搬送される。感光ドラム上のトナー画像は転写手段としての転写ローラ107によってシート上に静電転写され、定着装置114へと搬送される。その後、感光体ドラム102上に残留したトナーはクリーニング手段としてのクリーニング装置108によって除去される。
【0017】
そして、画像形成手段によってシートS上に形成されたトナー画像は、画像加熱装置としての定着装置114において加熱、加圧されることによってシート上に定着される。その後、トナー画像が定着されたシートSは排出ローラ対112によって装置上部の排出トレイ113へと搬送排出される。
【0018】
(画像加熱装置)
次に、図3乃至図7を用いて、画像加熱装置としての定着装置114を説明する。加熱回転体としての加熱ベルト130は、複数のベルト懸架部材として2個の支持ロールすなわち駆動ロール131とベルトテンションを付与する機能を有するテンションロール132に循環回転可能に、且つ、所定の張力(例えば200N)で掛け渡されている。
【0019】
また、加熱回転体とニップ部を形成する加圧回転体としての加圧ベルト120は、2個の支持ロールすなわち加圧ロール121とベルトテンションを付与する機能を有するテンションロール122に循環回転可能に設けられる。且つ、加圧ベルト120は、所定の張力(例えば200N)で掛け渡されている。
【0020】
加圧ベルト120、加熱ベルト130は夫々無端ベルトを構成する。そして、加圧ベルト120は、加熱ベルト130と加圧接触して、画像を担持した記録材をニップ部で挟持搬送する。そして、画像加熱が行われない場合には、加圧ベルト120を加熱ベルト130に対して接離させることができるように、加圧回転体が所定位置を中心に回動可能となっている。このような加圧回転体の接離を行う手段は第1の加圧手段を構成する。
【0021】
ここで、本実施形態において、加圧ベルト120としては耐熱性を具備したものであれば適宜選定して差し支えない。例えば厚さ50μm、幅380mm、周長200mmのニッケル金属層に例えば厚さ300μmのシリコンゴムをコーティングし、表層にPFAチューブを被覆したものが用いられる。なお、PFAとは、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を意味する。
【0022】
加熱ベルト130としては、誘導加熱コイル135により発熱させられると共に耐熱性を具備したものであれば適宜選定して差し支えない。例えば、厚さ75μm、幅380mm、周長200mmのニッケル金属層もしくはステンレス層などの磁性金属層を用いる。そして、これに例えば厚さ300μmのシリコンゴムをコーティングし、表層にPFAチューブを被覆したものを用いる。ここで加熱ベルト130の長手幅(加熱ベルトの回転軸方向の幅)をx1とする(図1)。
【0023】
加熱ベルト130は、回転によって一方に寄るため、ここでは図示しない加熱ベルト130の長手方向の移動を制御する寄り制御手段により、アライメントを変更することで加熱ベルト130の搬送方向を変え、端部が別の部材と摺擦して破損するのを防止している。加熱ベルト130の最大移動量を例えば3mmとし、加熱ベルト130の長手幅x1に含むものとする。尚、加圧ベルト120についても同様である。
【0024】
加圧ベルト120と加熱ベルト130のニップ域の入口側(加圧ロール121の上流側)に対応する加圧ベルト120の内側には、例えばシリコンゴムで形成された加圧パッド125が所定圧(例えば400N)で加圧ベルト120に押し当てられている。そして、加圧パッド125は、加圧ロール121と共にニップを形成する。加圧ロール121は、例えば中実ステンレスによって、外径がφ20mmに形成された加圧ベルト120を懸架するロールで、加圧ベルト120と加熱ベルト130のニップ域の出口側に配設されている。
【0025】
テンションロール122は、例えばステンレスによって外径がφ20mm、内径φ18mm程度に形成された中空ロールであり、ベルト張架ロールとして働く。テンションロール122両端部は、図4に示す軸受126によって支持され、テンションバネ127によって20kgfのテンションをベルトに掛けている。
【0026】
加熱ベルト130と加圧ベルト120とのニップ域の入口側(駆動ロール31の上流側)に対応する加熱ベルト130の内側には、例えばステンレス鋼(SUS材)で形成されたパッドステー137が設けられる。パッドステー137は、所定圧(例えば400N)で加圧パッド125に押し当てられており、駆動ロール131とともにニップを形成している。
【0027】
駆動ロール131は、例えば中実ステンレスによって外径がφ18に形成された芯金表層に耐熱シリコンゴム弾性層を一体成型により形成したロールである。駆動ロール131は、加熱ベルト130と加圧ベルト120とのニップ域の出口側に配設され、加圧ロール121の圧接により、弾性層が所定量弾性的に歪ませられるものである。
【0028】
また、テンションロール132は、例えばステンレスによって外径がφ20mm、内径φ18mm程度に形成された中空ロールであり、ベルト張架ロールとして働く。テンションロール132両端部は、図4に示す軸受133によって支持され、テンションバネ134によって20kgfのテンションをベルトに掛けている。
【0029】
さらに、テンションロール132内部にはヒートパイプ136が備わっており、加熱ベルト130の回転軸方向の温度を均一化(長手温度均一性)する温度均一部材の機能を果たしている。ヒートパイプ136としては、耐熱性を具備したものであれば適宜選定して差し支えなく、例えば外径φ16mm、幅350mm程度に形成されたものが用いられる。ここでヒートパイプ136の長手幅をx2とする。
【0030】
駆動ロール131に関し、不図示のモータによって、ギア128(図4)に外部から駆動が入力され、加熱ベルト130は駆動ロール131の回転によって搬送される。記録材としてのシートを安定的に搬送するために、加熱ベルト130と駆動ロール131間では確実に駆動を伝達している。加熱ベルト130は誘導加熱コイル135によって加熱され、ここでは図示しない温度検出手段・制御手段によって、180℃に温度調整される。
【0031】
(分離板)
次に図5、図6を用いて、本実施形態に係る定着装置におけるシートを分離するための補助手段である分離板およびスペーサ手段の構成について説明する。図5は、図3のaの拡大図である。分離板141は、シート搬送方向上流側一端を加熱ベルト130に近接配置させつつ、もう一端は、下流の定着排紙ロール対142へシートを案内するガイド部材としている。分離板141と加熱ベルト130のギャップA(図5)は0.5mmとしている。分離板141は、分離板ホルダ143によって支持されている。
【0032】
分離板ホルダ143は、加熱ベルト130の回転軸方向(長手方向)端部で分離板回転中心軸144に回転可能に支持され、ばね145によって分離板先端が加熱ベルト130に近付く方向に加圧されている。
【0033】
分離板ホルダ143の回転軸方向(長手方向)の両端には、軸146と、これに回転可能に支持されるスペーサ手段としての前側のコロ147a、奥側のコロ147bが夫々独立に配置(即ち、コロ147a、147bは分離板141に対し所定位置に配置)される。
スペーサ手段としてのコロ147a、147bは、分離板141と加熱ベルト130との
ギャップを決定する機能を備える。
【0034】
コロ147a、147bはベアリングで形成されており、表層にPFAチューブを被覆した加熱ベルト130に摺擦が抑制される状態で当接する。そして、コロ147a、147bは、ばね145のばね力(例えば0.5N)によって、加熱ベルト130に接触加圧される。ここで、コロ147aを前側コロ、コロ147bを奥側コロとし、前側コロ147aと奥側コロ147bとの長手位置距離(加熱ベルト130の回転軸方向の複数位置に設けられるコロの間隔)をx3とする(図1)。
【0035】
以上の構成によって、一体となっている分離板141、分離板ホルダ143、軸146、前側コロ147a、奥側コロ147bは、分離板回転中心軸144を中心に回転可能である。また、分離板141の加熱ベルト130側先端は、加熱ベルト130の厚さや、駆動ロール131も含めた熱膨張による加熱ベルト130表面の位置変化に追従することで、高精度な位置決めを可能としている。
【0036】
(粗しローラ)
次に図7(a)、(b)を用いて、本定着装置の加熱ベルト130の表面粗さを均一に維持する摺擦部材としての粗しローラ(Refresh Roller)について説明する。粗しローラ400は、加熱ベルト130を摺擦することにより加熱ベルト130の表面性を加熱ベルトの回転軸方向(長手方向)に渡る所定の摺擦領域内で回復させるものである。なお、以下の部材に付されるRFは、RefreshのRとFの頭文字をとったものである。
【0037】
粗しローラ400は、側板上の固定軸に回転可能に支持されたRF支持アーム402により軸受を介して回転可能に支持される。粗しローラ400は、駆動ロール131の端部に固定されたRF駆動ギア401と、粗しローラ端部に固定されたRFギア403に駆動されて加熱ベルト130と逆方向に回転する。
【0038】
また、加熱ベルト130がRF加圧バネ404を介して粗しローラ400に押圧されると、粗しローラ400はRF加圧バネ404に付勢されて加熱ベルト130に圧接される。これにより、表面に研磨層を備えた粗しローラ400は、加熱ベルト130に対してウィズ方向(表面が同一方向へ移動する方向)に周速差を持って回転して、加熱ベルト130の表面を一様に荒らす機能(表面を均す機能)を有している。粗しローラ400は例えば外径がφ12mm、幅330mm程度のステンレス製芯金表面に接着層を介して砥粒を密に接着してある。ここで粗しローラ400の長手幅をx4とする(図1)。
【0039】
砥粒は、用途(画像の目標光沢度)に合わせて#1000〜#4000番手に変更される。砥粒の平均粒径は、#1000番手の場合は約16μm、#4000番手の場合は約3μmである。砥粒は、アルミナ系(通称「アランダム」または「モランダム」とも称される)である。アルミナ系は、工業的に最も幅広く用いられる砥粒で、定着ベルト105の表面に比べて各段に硬度が高く、粒子が鋭角形状のため研磨性に優れている。
【0040】
粗しローラ400を支持するRF支持アーム402には、他端がRF離間軸406に保持されたRF離間ばね405が保持されており、RF離間ばね405によりRFカム軸408に固定されるRFカムに押圧される。RF加圧軸408には、RF着脱ギア409が固定されており、ここでは図示しない制御手段によって、RF加圧モータ410の回転により、RFモータギア411を介してRFカム軸408を回転させる。
【0041】
それにより、RF支持アーム402がRFカム軸408に固定されるRFカムのプロファイルに従って動作することで、粗しローラ400を粗しニップが形成される加圧位置と離間位置に移動させる。例えば粗しローラ400を10Nで加圧すると、220gsm程度の坪量の用紙でRz2.0程度に荒らされた表面をRz0.3〜0.7程度に回復できる。後に詳述するが、上述した部材により、粗しローラ400を加熱ベルト130に対して接離させる第2の加圧手段が構成される。
【0042】
(回転軸方向である長手方向の配置関係)
図1を用いて、加熱ベルト130、ヒートパイプ136、前側コロ147a、奥側コロ147b、粗しローラ400の長手位置関係(加熱ベルト130の回転軸方向の位置関係)について説明する。加熱ベルト130の長手幅をx1、ヒートパイプ136の長手幅をx2、前側コロ147aから奥側コロ147b間の長手位置距離をx3、粗しローラ400の長手幅をx4、最大通紙領域をx5、画像保証領域をx6とする。ここで、各々の長手位置関係は、以下を満たすものとする。
【0043】
x6<x4<x3<x5<x2<x1
を満たすものとする。この理由を以下に示す。
【0044】
まず、粗しローラ400の長手幅を画像保証領域より長手外側に配置(x6<x4)したことについて説明する。粗しローラ400は加熱ベルト105の表層に対して当接させることで、加熱ベルト105表層の表面粗さを均一に維持している。これは、定着処理を重ねるごとに加熱ベルト105の表面性状が部分的に劣化し、加熱ベルト105の劣化した表面性状がそのまま画像表面に写し取られて、画像面の均一な光沢状態が得られなくなる為である。
【0045】
そこで、粗しローラ400の長手幅を画像保証領域より長く配置(x6<x4)することで、画像保証領域における加熱ベルト105表層の表面粗さは均一に維持される為、画像面を均一な光沢状態にできる。
【0046】
次に、前側コロ147a、奥側コロ147bを、粗しローラ400の摺擦領域の長手外側に配置(x4<x3)したことについて説明する。粗しローラ400は加熱ベルト105に圧接・回転させると、粗しローラ400の削れ粉や定着ベルト105にオフセットしたトナーなどが粗しローラ400の長手幅(x4)内に生じる。削れ粉やオフセットトナーが前側コロ147a、奥側コロ147bに付着すると、分離板141の加熱ベルト130側先端が加熱ベルト130表面に対して遠ざかってしまう為、分離板先端位置と加熱部材間の距離が正確に保証できない。
【0047】
そこで、前側コロ147a、奥側コロ147bを粗しローラ400より長手外側に配置(x4<x3)することで、削れ粉やオフセットトナーは前側コロ147a、奥側コロ147bへの付着しない為、分離板141を高精度に位置決めできる。
【0048】
続いて、前側コロ147a、奥側コロ147bをヒートパイプ136より長手内側に配置(x3<x2)したことについて説明する。加熱ベルト130のヒートパイプ136長手外側領域(x2〜x1)は、ヒートパイプ136の長手内側に比べ、加熱ベルト130の温度が均一に保てず昇温する為、熱膨張による加熱ベルト130表面の位置変化が大きい。この箇所に、前側コロ147a、奥側コロ147bを突き当てると、分離板141の加熱ベルト130側先端が加熱ベルト130表面に対して遠ざかってしまう。
【0049】
そこで、前側コロ147a、奥側コロ147bをヒートパイプ136より長手内側に配置(x3<x2)することで、前側コロ147a、奥側コロ147bを加熱ベルト130の熱膨張による位置変化が小さい箇所に突き当てられる。この為、分離板141を高精度に位置決めできる。
【0050】
尚、最大通紙領域x5との長手位置関係(x3<x5<x2)であるが、本実施形態においては、前側コロ147a、奥側コロ147bを分離板ホルダ143内に設けている為、x3は最大通紙領域x5より短くなっている(x3<x5)。ただし分離板140内に最大通紙領域x5は収まっているので、分離性を阻害するものでない。
【0051】
また、ヒートパイプ136は、通紙領域内の加熱ベルト130の長手温度を均一に保つ為に、少なくとも最大通紙領域x5より長く(x5<x2)配置することから、x3<x5<x2の長手位置関係とする。
【0052】
最後に、ヒートパイプ136を加熱ベルト130より長手内側に配置(x2<x1)したことについて説明する。加熱ベルト130の長手幅x1とヒートパイプ136の長手幅x2との長手位置関係は、本実施例に関しては特に限定する必要はなく、各々どちらが長くても適用できる。ただし、ヒートパイプ136は加熱ベルト130の長手温度均一性を保つ手段の為、x2はx1以下(x2<x1)であればヒートパイプ136の機能を満たすことができることから、x2<x1の長手位置関係とする。
【0053】
本実施形態によれば、加熱ベルト130の表面性を回復させると共に、摺擦部材としての粗しローラ400が削れることで生じる粉塵がスペーサ手段に付着してギャップ設定が不安定となることを抑制できる。また、加熱ベルト130の回転軸方向において、スペーサ手段が通紙領域の外側となる場合には、定着ベルト105にオフセットしたトナー等がスペーサ手段に付着してギャップ設定が不安定となることも抑制できる。上述した定着装置を電子写真複写機等の画像形成装置に用いれば、シートを安定的に加熱部材から分離させることができる。
【0054】
(変形例1)
上述した実施形態では、ベルト定着装置に適用した場合について説明したが。加熱部材や加圧部材はベルトを用いるものに限らず、ローラを用いるものでもよく、あるいは一方がベルトを用い、他方がローラを用いるものでも良い。即ち、加熱部材のみがベルト、もしくは加圧部材だけがベルトを用いる構成でも適用することができる。
【0055】
(変形例2)
上述した実施形態では、スペーサ手段であるコロ147a、147bを分離板141を保持する分離板ホルダ143に設けたが、記録材分離手段としての分離板141自体に保持させても良い。また、コロ147a、147bは両端側に対称的に配置する他、非対称に配置しても良い。
【符号の説明】
【0056】
121・・加圧ロール、125・・加圧パッド、130・・加熱ベルト、131・・駆動ロール、135・・誘導加熱コイル、137・・パッドステー、141・・分離板、146・・軸、147a・・前側コロ、147b・・奥側コロ、400・・粗しローラ、A・・分離板先端位置と加熱部材間の距離、S・・シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱回転体と、
前記加熱回転体と画像を担持した記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧回転体と、
前記記録材を前記加熱回転体から分離する記録材分離手段と、
を有する画像加熱装置であって、
前記加熱回転体の表面を摺擦する摺擦部材と、
前記記録材分離手段に対し所定位置に配置され、前記加熱回転体の回転軸方向において前記摺擦部材の摺擦領域の外側の複数位置で当接して、前記記録材分離手段と前記加熱回転体とのギャップを決定するスペーサ手段と、
を有することを特徴とする画像加熱装置。
【請求項2】
加熱回転体と、
前記加熱回転体と画像を担持した記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧回転体と、
前記加圧回転体を前記加熱回転体に対して接離させる第1の加圧手段と、
前記記録材を前記加熱回転体から分離する記録材分離手段と、
を有する画像加熱装置であって、
前記加熱回転体を摺擦する摺擦部材と、
前記摺擦部材を前記加熱回転体に対して接離させる第2の加圧手段と、
前記記録材分離手段に対し所定位置に配置され、前記加熱回転体の回転軸方向において前記摺擦部材の摺擦領域の外側の複数位置で当接して、前記記録材分離手段と前記加熱回転体とのギャップを決定するスペーサ手段と、
前記スペーサ手段を前記加熱回転体に当接するように付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする画像加熱装置。
【請求項3】
前記スペーサ手段は、ベアリングであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像加熱装置。
【請求項4】
前記加熱回転体の表層は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体で形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項5】
前記加熱回転体は、無端ベルトと、前記無端ベルトを懸架する複数のベルト懸架部材を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項6】
前記加熱回転体において、前記無端ベルトを懸架する複数のベルト懸架手段のうち、少なくとも1つのベルト懸架手段の内部に前記回転軸方向の温度を均一化する温度均一部材を有し、
前記スペーサ手段は、前記回転軸方向において前記摺擦部材の領域の外側かつ前記温度均一部材の領域の内側の両端に配設されることを特徴とする請求項5に記載の画像加熱装置。
【請求項7】
前記回転軸方向において、前記温度均一部材の領域が、最大通紙領域の外側となることを特徴とする請求項6に記載の画像加熱装置。
【請求項8】
前記回転軸方向において、前記温度均一部材の領域が、前記無端ベルトの領域の内側となることを特徴とする請求項6に記載の画像加熱装置。
【請求項9】
前記回転軸方向において、前記摺擦部材の領域が、画像保証領域の外側となることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項10】
前記回転軸方向において、前記スペーサ手段の領域が、最大通紙領域の内側となることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92715(P2013−92715A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235823(P2011−235823)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】