説明

画像形成ユニット

【課題】剥離部材の表面にトナーが溜まるのを抑えることで、剥離部材による剥離時に用紙が汚れるのを抑えることを目的とする。
【解決手段】画像形成ユニット(プロセスカートリッジ6)は、現像剤像を担持しながら回転するとともに、転写位置CPにおいて転写手段(転写ローラCR)との協働により現像剤像を記録シート(用紙P)に転写する像担持体(感光ドラム81)と、転写位置CPに対して像担持体の回転方向下流側において像担持体に接触して配置され、像担持体から記録シートを剥離させる剥離部材(剥離フィルム100)と、を備える。剥離部材は、シート状に形成され、像担持体に対向する第1の面101と、第1の面101とは反対側に位置する第2の面102と、を有しており、第2の面102が、荒らし加工により荒らされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体から記録シートを剥離させる剥離部材を備えた画像形成ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナー像を担持する感光ドラム(像担持体)と、感光ドラムに貼り付いた用紙を剥がすための剥離部材とを備えた画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。この技術では、剥離部材を感光ドラムに接触させることで、感光ドラムに貼り付いた用紙を剥離部材で確実に剥離させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭53−139847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、剥離部材を感光ドラムに接触させた場合には、感光ドラムから用紙に転写しきれずに感光ドラム上に残ったトナーが、剥離部材で剥がされて当該剥離部材の表面に溜まってしまい、次回の剥離時に剥離部材上のトナーで用紙を汚してしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、剥離部材の表面にトナー(現像剤)が溜まるのを抑えることで、剥離部材による剥離時に用紙(記録シート)が汚れるのを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、現像剤像を担持しながら回転するとともに、転写位置において転写手段との協働により前記現像剤像を記録シートに転写する像担持体と、前記転写位置に対して前記像担持体の回転方向下流側において前記像担持体に接触して配置され、前記像担持体から前記記録シートを剥離させる剥離部材と、を備える画像形成ユニットであって、前記剥離部材は、シート状に形成され、前記像担持体に対向する第1の面と、前記第1の面とは反対側に位置する第2の面と、を有しており、前記第2の面が、荒らし加工により荒らされていることを特徴とする。
【0007】
ここで、本願発明者らは、剥離部材の第2の面を荒らし加工で荒らした形状とすることで、剥離部材に現像剤が付着し難くなることを実験により発見している。そのため、本発明によれば、剥離部材の第2の面を荒らし加工で荒らすので、剥離部材上に現像剤が溜まり難くなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剥離部材の第2の面に現像剤が溜まるのを抑えることができるので、剥離部材による剥離時に記録シートが汚れるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザプリンタを示す図である。
【図2】剥離フィルムを示す斜視図(a)と、ドラムカートリッジを剥離フィルム側から見た図(b)と、剥離フィルムと感光ドラムを示す断面図(c)である。
【図3】剥離フィルムの第2の面の任意の複数の点における各電界の向きを示す図であり、荒らし加工前の状態を示す図(a)と、荒らし加工後の状態を示す図(b)である。
【図4】実施例1,2における試験片の形状等を示す図である。
【図5】実施例1の実験結果を示す表である。
【図6】実施例1の実験結果を示すグラフである。
【図7】実施例2の実験結果を示す表である。
【図8】実施例2の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<レーザプリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、レーザプリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分を詳細に説明することとする。
【0011】
以下の説明において、方向は、レーザプリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側(手前側)」、紙面に向かって右側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0012】
図1に示すように、レーザプリンタ1は、記録シートの一例としての用紙Pを装置本体2内に給紙するためのフィーダ部3と、用紙Pに画像を形成するための画像形成部4とを備えている。
【0013】
フィーダ部3は、装置本体2の下部に着脱可能に装着される給紙トレイ31と、給紙トレイ31内の用紙Pを画像形成部4に向けて給紙する給紙機構32を主に備えている。
【0014】
画像形成部4は、スキャナユニット5、画像形成ユニットの一例としてのプロセスカートリッジ6、転写手段の一例としての転写ローラCRおよび定着装置7を備えている。
【0015】
スキャナユニット5は、装置本体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。このスキャナユニット5では、レーザビームを、後述する像担持体の一例としての感光ドラム81の表面上に高速走査にて照射する。
【0016】
プロセスカートリッジ6は、装置本体2に着脱可能であり、感光ドラム81や帯電器82を有するドラムカートリッジ8と、現像ローラ91や現像剤の一例としてのトナーを有する現像カートリッジ9とを備えている。そして、プロセスカートリッジ6(詳しくは、ドラムカートリッジ8)の後端側下部には、後で詳述する剥離部材の一例としての剥離フィルム100が設けられている。
【0017】
なお、図1では、便宜上、剥離フィルム100が目立つように剥離フィルム100を誇張して図示している。
【0018】
プロセスカートリッジ6では、回転する感光ドラム81の表面が、帯電器82により一様に帯電された後、スキャナユニット5からのレーザビームの高速走査により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、感光ドラム81の表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0019】
次いで、回転駆動される現像ローラ91によって現像カートリッジ9内のトナーが感光ドラム81の静電潜像に供給されて、感光ドラム81の表面上にトナー像が形成される。その後、感光ドラム81と転写ローラCRの間を用紙Pが通る際に、感光ドラム81と転写ローラCRとの協働により、転写位置CP(図2(c)参照)において感光ドラム81の表面に担持されているトナー像が用紙P上に転写される。
【0020】
定着装置7は、加熱ローラ71と、加熱ローラ71と対向して配置され加熱ローラ71を押圧する加圧ローラ72とを備えている。そして、このように構成される定着装置7では、用紙P上に転写されたトナーを、用紙Pが加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過する間に熱定着している。
【0021】
なお、定着装置7で熱定着された用紙Pは、定着装置7の下流側に配設される排紙ローラRに搬送され、この排紙ローラRから排紙トレイ21上に排出される。
【0022】
<剥離フィルムの詳細構造>
次に、剥離フィルム100について詳細に説明する。
図2(a)〜(c)に示すように、剥離フィルム100は、PP(ポリプロピレン)やPET(ポリエチレンテレフタラート)などの樹脂製のシート材で形成されており、感光ドラム81の左右中央(回転軸方向における中央)を基準にして1つずつ略左右対称に設けられている。そして、剥離フィルム100は、転写位置CPよりも感光ドラム81の回転方向下流側で感光ドラム81に接触して配置され、感光ドラム81に貼り付いた用紙Pを感光ドラム81から剥離させている。
【0023】
剥離フィルム100は、感光ドラム81と接触する先端が先細となる山型に形成されており、主に、感光ドラム81に対向する第1の面101と、第1の面101とは反対側に位置する第2の面102と、を有している。そして、この第2の面102は、サンドペーパやヤスリなどによる荒らし加工により荒らされている。
【0024】
すなわち、通常、樹脂製の剥離フィルム100は、一対のローラで生地を押し潰すカレンダー加工によって形成されるため、第1の面101と第2の面102は各ローラの面が転写された、ある程度滑らかな面で形成される。本発明では、このような滑らかな面で形成された面のうち、少なくとも用紙Pが接触する方の第2の面102を荒らし加工で荒らすことによって、第2の面102を荒れた形状にして、剥離フィルム100の第2の面102にトナーが付着することを抑えている。
【0025】
なお、第2の面102を荒れた形状にすることで当該第2の面102にトナーが付着し難くなることは、実験により確認されており、その理由は以下のように考えられる。
【0026】
図3(a)に示すように、第2の面102が滑らかで平坦な形状である場合には、第2の面102の任意の複数の点における各電界(静電気)の向きは、面直方向に揃って向くと考えられる。これに対し、図3(b)に示すように、第2の面102が荒れた形状となる場合には、第2の面102の任意の複数の点における各電界の向きは、バラバラになると考えられる。したがって、第2の面102が荒れた形状となる方が、帯電したトナーを引き寄せる力が弱くなって、トナーが付着し難くなるものと考えられる。
【0027】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
剥離フィルム100の第2の面102にトナーが溜まるのを抑えることができるので、剥離フィルム100による剥離時に用紙Pが汚れるのを抑えることができる。
【実施例1】
【0028】
以下に、前記した実施形態についての実施例1を説明する。具体的には、剥離フィルムの第2面の表面粗さと、剥離フィルムの第2面に付着するトナーの量との関係を調べた実験結果を示す。
【0029】
本実施例における実験の各種条件は、以下の通りである。
(1)剥離フィルムの材料:PP
(2)剥離フィルムの形状:図4に示すような底辺6mm・高さ9mmの三角形状部分と当該三角形状部分の底辺に一体に形成される矩形の固定部を有する形状
(3)表面粗さRa:図5に示すように数種類のサンドペーパによって剥離フィルムの第2の面を擦ることで、表面粗さRaが異なる複数の試験片TP(剥離フィルム)を用意する。ここで、表面粗さRaは、東京精密SURFCOM5000DXにて測定した。また、図5の表における「REF」は、サンドペーパで擦らない状態の試験片TPを示す。
【0030】
〔実験方法〕
(1)剥離フィルムの三角形状部分の先端を感光ドラムに接触させた状態で、固定部を両面テープBTでドラムユニットの筐体に固定する。
(2)1%間欠耐久を2000回行う。ここで、「1%間欠耐久」とは、印刷面積率1%での1page/job(1回のジョブにおいて1ページの印刷を行うこと)の間欠耐久印刷試験を行うことをいう。なお、「ジョブ」とは、印刷動作の始動から停止までの一連の動作のことをいう。
【0031】
(3)2000回の1%間欠耐久を終了した後、剥離フィルムに付着したトナーが落ちないように筐体から剥離フィルムを剥がし、この剥離フィルムを白紙に固定し、その上から透明セロハンテープを貼り付けてトナーを固定する。
【0032】
(4)イメージスキャナで剥離フィルム上のトナーを画像として読み込む。
イメージスキャナ:ブラザー工業株式会社製のMFC−8460Nのイメージスキャナ
解像度等:True Grey 600 × 600 dpi
【0033】
(5)読み込んだ画像の画素の輝度をAdobe Photoshop(登録商標)でヒストグラム化し、256段階グレースケールのレベル25以下の領域を「トナーが付着した領域」として、ピクセル数(以下、「トナー付着Pixel数」ともいう)を抽出する。
【0034】
[実験結果]
図5や図6に示すように、剥離フィルムの材料がPPである場合において、トナー付着Pixel数を少なくするには(剥離フィルム上にトナーを付着し難くするには)、表面粗さを、0.2μm<Ra<0.9μmとするのが望ましく、より好ましくは0.43μm≦Ra≦0.81μmとするのがよいことが確認された。
【0035】
ここで、表面粗さRaが0.9μm以上のときにトナーの付着量(トナー付着Pixel数)が多くなるのは、表面粗さRaが0.9μm以上になると、擦ることにより形成される凹部の底面の面積が増え、この底面が図3(a)のような平坦な面になることが原因であると考えられる。すなわち、凹部の底面が平坦になることで、底面の任意の複数の点における各電界の向きが面直方向に揃って、第2の面にトナーが付着しやすくなると考えられる。
【実施例2】
【0036】
次に、実施例2を説明する。この実施例2では、実施例1における剥離フィルムの材料を変更しただけで、残りの条件は実施例1と同様とした。具体的には、実施例2では、剥離フィルムの材料を、PETとした。
【0037】
[実験結果]
図7や図8に示すように、剥離フィルムの材料がPETである場合において、トナー付着Pixel数を少なくするには(剥離フィルム上にトナーを付着し難くするには)、表面粗さを、Ra>0.1μmとするのが望ましく、より好ましくはRa≧0.48μmとするのがよいことが確認された。すなわち、剥離フィルムの材料がPETである場合には、サンドペーパで擦る前の状態の剥離フィルム(REF)を、サンドペーパで荒らしさえすれば、どのような粗さにしようがトナーの付着量を減らせることが確認された。
【0038】
以上、実施例1,2によれば、サンドペーパで擦る前の状態の剥離フィルム(REF)を、材料に適した表面粗さRaになるようにサンドペーパで擦ることで、トナーの付着量を減らせることが確認された。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0040】
前記実施形態では、剥離フィルム100の先端を角張った形状(V字状)としたが、本発明はこれに限定されず、先端の形状は、例えば円弧状であってもよいし、感光ドラムの軸方向に延びる直線状であってもよい。
【0041】
前記実施形態では、画像形成ユニットとしてプロセスカートリッジ6を例示したが、本発明はこれに限定されず、画像形成ユニットは、レーザプリンタ1や複写機などの画像形成装置であってもよい。なお、画像形成ユニットを画像形成装置とした場合には、剥離部材の先端が感光ドラムに接触するように、画像形成装置の本体筐体に剥離部材を固定してもよい。
【0042】
前記実施形態では、転写手段として転写ローラCRを例示したが、本発明はこれに限定されず、転写手段は、導電性ブラシや導電性板バネなど、転写バイアスが印加されるものであればよい。
【0043】
前記実施形態では、像担持体として感光ドラム81を例示したが、本発明はこれに限定されず、像担持体は、例えばベルト状の感光体であってもよい。
【0044】
前記実施形態では、剥離部材の一例として撓み変形しやすい剥離フィルム100を例示したが、本発明はこれに限定されず、剥離部材は、撓み変形し難い部材であってもよい。
【0045】
前記実施形態では、記録シートの一例として厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを例示したが、本発明はこれに限定されず、記録シートは、例えばOHPシートであってもよい。
【0046】
前記実施形態では、荒らし加工としてサンドペーパやヤスリなどを用いた方法を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばショットブラスト加工などであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
6 プロセスカートリッジ
81 感光ドラム
100 剥離フィルム
101 第1の面
102 第2の面
CP 転写位置
CR 転写ローラ
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像を担持しながら回転するとともに、転写位置において転写手段との協働により前記現像剤像を記録シートに転写する像担持体と、
前記転写位置に対して前記像担持体の回転方向下流側において前記像担持体に接触して配置され、前記像担持体から前記記録シートを剥離させる剥離部材と、を備える画像形成ユニットであって、
前記剥離部材は、シート状に形成され、前記像担持体に対向する第1の面と、前記第1の面とは反対側に位置する第2の面と、を有しており、
前記第2の面が、荒らし加工により荒らされていることを特徴とする画像形成ユニット。
【請求項2】
前記剥離部材は、ポリプロピレンで形成されており、前記第2の面の表面粗さが、0.2μm<Ra<0.9μmであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成ユニット。
【請求項3】
前記剥離部材は、ポリエチレンテレフタラートで形成されており、前記第2の面の表面粗さがRa>0.1μmであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−53194(P2012−53194A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194593(P2010−194593)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】