説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】 複数の画像形成ユニットを有するタンデム方式のクリーナレスの画像形成装置にて、撹乱部材に捕集した残留トナーを原因とする像担持体のフィルミングの発生を防止して像担持体の長寿命化を図る。
【解決手段】 複数の画像形成ユニットを有するタンデム方式の画像形成装置にて任意の画像形成ユニットが画像形成操作中に、画像形成操作に寄与しない画像形成ユニットの撹乱部材のバイアスを現像時の第1のバイアスから第2のバイアスに変更して、撹乱部材にたまっているトナーを早いタイミングで吐き出して現像器で回収する。第1のバイアスから第2のバイアスへの変更を所定の速度として、撹乱部材にたまっているトナーを徐々に吐き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に係り、特転写終了後の感光体ドラム上の残留トナーをクリーニングする画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等のカラーの画像形成装置においては、複数の感光体ドラムをタンデムに配列してなる画像形成装置がある。この様なタンデム方式の画像形成装置として、カラー用の感光体ドラムを有する複数のカラー画像形成ユニットとは別にモノクロ用の感光体ドラムを有するブラック画像形成ユニットを備えた画像形成装置がある。
【0003】
他方画像形成装置にあっては、近年転写終了後に感光体に残留するトナーをブレード等で掻き取らないクリーナレス方式を用いるものがある。クリーナレス方式は、装置の小型化を図れ、トナーのリサイクル使用によりトナーの節約を図ると共に、感光体ドラムの長寿命化を得るという利点を有する。この様なクリーナレス方式の画像形成装置では、一般に現像兼クリーニングを行う現像器を用いて、残留トナーを現像器内に回収している。
【0004】
但しクリーナレス方式の画像形成装置では、転写終了後に感光体ドラムに残留する転写残りトナーである残留トナーの量が多いと、転写残りトナーが次の露光々を遮ってしまい、露光不良による画像メモリを生じ、画像不良の原因になる恐れがある。このため従来、残留トナーが静電潜像に影響を及ぼすのを防止する様に、トナー撹乱部材にバイアスを印加して、トナー撹乱部材にて残留トナーを一旦捕集する装置がある。このような装置では、トナー撹乱部材にトナーが溜まると、感光体を帯電して、溜まっているトナーを、トナー撹乱部材から感光体側に吸着させ、その後現像器にて回収している。(例えば特許文献1参照。)
【特許文献1】特開昭60−168184号公報(第2、3頁、図2、3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記(特許文献1)のようにトナー撹乱部材に捕集した残留トナーをある程度溜まったときに、感光体ドラムに吸着させて、その後現像器に回収した場合は、画像形成プロセスを繰り返えす間に、長く捕集したままのトナーが感光体表面に付着しそれが固まって感光体表面に皮膜を形成するという、いわゆるフィルミング現象を生じてしまう。
【0006】
特に上記(特許文献1)をタンデム方式の画像形成装置に適用した場合、モノクロ用トナーに比べてトナーの外添剤が多く、また融点が低く設計されるカラー用トナーを使用するカラー画像形成ユニットでは、感光体のフィルミング現象を発生し易くなる。この様なフィルミング現象により、画像筋や白点状の画像抜けを生じ、感光体の長寿命化が損なわれる。
【0007】
そこで本発明は上記課題を解決するものであり、クリーナレス方式を採用するタンデム方式の画像形成装置において、撹乱部材に捕集した残留トナーを長く溜めることなく、適宜現像器にて効率良く回収して、像担持体のフィルミング現象を防止して、像担持体の長寿命化を得る画像形成方法および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するための手段として、夫々に像担持体及び前記像担持体に対向する撹乱部材を有する複数の画像形成ユニットを有してなる画像形成装置にて、少なくとも1つの画像形成ユニットを用いて画像形成操作を実施して記録媒体にトナー像を形成する画像形成方法において、前記画像形成操作中の前記画像形成ユニットの前記撹乱部材に第1のバイアスを印加する工程と、前記画像形成操作に寄与しない少なくとも1つの前記画像形成ユニットでは、前記撹乱部材に印加するバイアスを前記第1のバイアスとは異なる第2のバイアスに変更する工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンデム方式の画像形成装置において、撹乱部材に一旦捕集した残留トナーを適宜早いタイミングで像担持体に吐き出して、現像器にて効率的に回収することにより、像担持体上にフィルミング現象を生じるのを防止出来、像担持体の長寿命化を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例1について図1乃至図6を用いて説明する。図1は、例えば、プリンタ、多機能周辺機器(MFP)、ファックス、プロッターその他画像出力する任意の装置等の、本発明の実施例の画像形成装置の画像形成部10を示す概略構成図である。図1に示すように、画像形成部10は、矢印r方向に回転される転写ベルト10aを有する。転写ベルト10aに沿って、イエロ(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)の各カラートナー像を形成する複数のカラー画像形成ユニット20Y、20M、20C及び、ブラックトナー像を形成するブラック画像形成ユニット20Kが、タンデムに配列される。転写ベルト10aは、記録媒体であるシート紙Pを矢印s方向に搬送する。
【0011】
ブラック画像形成ユニット20K及びシアン、マジェンタ、イエロの各カラー画像形成ユニット20C、20M、20Yは、夫々像担持体であるブラック、シアン、マジェンタ、イエロの感光体ドラム32、34、36、38を備えている。転写ベルト10aを介して、各感光体ドラム32、34、36、38と対向する位置には、それぞれ転写ローラ40が配置されている。転写ローラ40に印加する電圧は+300〜2kV程度である。
【0012】
各感光体ドラム32、34、36、38は矢印t方向に回転される。各感光体ドラム32、34、36、38周囲には、矢印t方向の回転方向に沿って、各感光体ドラム32、34、36、38を一様に帯電する帯電器72、74、76、78、現像兼クリーニングを行う現像器、撹乱部材であるトナー撹乱部材52、54、56、58が夫々配置されている。
【0013】
各感光体ドラム32、34、36、38は導電性基体の上に有機系もしくはアモルファスシリコン系等の感光層を有して成っている。各感光体ドラム32、34、36、38は、帯電器72、74、76、78、にて帯電後、図示しないレーザ露光装置等により露光され静電潜像を形成される。各感光体ドラム32、34、36、38表面の静電潜像は、例えば露光部である画像部が−60Vにバイアスされ、非画像部 (即ちレーザ露光装置に露光されない非露光部)が、−400Vにバイアスされている。露光後感光体ドラム32、34、36、38は現像器62、64、66、68位置に達する。
【0014】
帯電器72、74、76、78は、感光体ドラム32、34、36、38と非接触のコロナ帯電器からなる。各帯電器72、74、76、78は、感光体ドラム32、34、36、38の表面を夫々特定のバイアス、例えば−400Vに帯電する。帯電器72、74、76、78が非接触のコロナ帯電器であることから、感光体ドラム32、34、36、38表面のトナー薄層の付着により汚染される事がない。従って帯電器72、74、76、78は、効果的な帯電性能を保持できる。
【0015】
現像器62、64、66、68はマイナス極性のトナーを収納し、現像ローラは、予定のバイアスたとえば−250Vに設定される。現像器62、64、66、68は、露光部にトナーを供給する反転現像プロセスにおいて、新たな露光によって形成された静電潜像の露光部である−60Vの画像部にトナーを供給して現像を行う一方、先行するトナー像の転写残りであって、新たな露光によって形成された静電潜像の非露光部である−400Vの非画像部に付着する残留トナーを現像器内に回収してクリーニングを行う。
【0016】
トナー撹乱部材52、54、56、58は、転写後感光体ドラム32、34、36、38に付着する残留トナーを一旦捕集した後、クリーニングのために吐き出す。トナー撹乱部材52、54、56、58は、例えば図1に示す様に固定タイプのブラシ9で、毛の長さは2〜20mm、繊維は1〜10デニール、幅は1〜10mm程度、抵抗値は10e4から10e10Ω程度である。トナー撹乱部材52、54、56、58のタイプは、固定タイプのブラシ9に限定されず、例えば図2のようなローラタイプ11でも良い。ローラタイプ11としては例えば導電性のスポンジローラ等が挙げられる。またトナー撹乱部材52、54、56、58は、図3のようなブラシローラタイプ12でも良い。
【0017】
トナー撹乱部材52、54、56、58には、残留トナーを捕集するため例えば第1のバイアスである+600Vのバイアスが印加される。但しトナー撹乱部材52、54、56、58に捕集された残留トナーは、感光体ドラム32、34、36、38とトナー撹乱部材52、54、56、58間の機械的圧力のために、感光体ドラム32、34、36、38上にフィルミング現象を発生する恐れがある。このフィルミング現象を防止するため画像形成操作に寄与していない画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yにおいては、トナー撹乱部材52、54、56、58のバイアスを反転してトナー撹乱部材52、54、56、58に捕集した残留トナーを吐き出す。この時画像形成操作は行なわないものの、帯電器72、74、76、78及び現像器62、64、66、68は作動している。従って、感光体ドラム32、34、36、38上に吐き出された残留トナーは、帯電器72、74、76、78によりマイナス極性に帯電され、現像器62、64、66、68に回収される。
【0018】
残留トナーを吐き出すため、トナー撹乱部材52、54、56、58に印加するバイアスを、例えば+600Vから第2のバイアスである−600Vまで変更する。バイアスは例えば制御部(図示せず)により+600Vから−600Vに変更制御される。制御部は、ハードウェア、ソフトウェア或いはそれらのいくつかの組み合わせで構成されている。たとえば制御部は、CPUまたはマイクロプロセッサおよび、ROMまたはNVRAMのようなメモリを具備している。メモリは、バイアスを変更制御するため、CPUまたはマイクロプロセッサにより実行される命令を記憶している。
【0019】
バイアスの変更制御は、瞬時あるいは、たとえば1000V/s以下というような特定の変更速度でなされる。バイアスを+600Vから−600Vに瞬時に切替えると、ブラシ9から一度に大量の残留トナーが吐き出されてしまう。このため現像器62、64、66、68で残留トナーを回収しきれず、画像汚れを発生する場合がある。これを防止するためには、特定の変更速度をもたせてバイアスを切り替える。特定の変更速度でバイアスを切り替えると、感光体ドラム32、34、36、38上には、残留トナーにより、一様のトナー薄層が形成される。次いで現像器62、64、66、68が感光体ドラム32、34、36、38上のトナー薄層を確実に回収することとなる。感光体ドラム32、34、36、38上のトナー薄厚は、感光体ドラム32、34、36、38の周速及び、トナー撹乱部材52、54、56、58のバイアスの変更速度により調整可能である。
【0020】
次に図4に示すフローチャートを参照して作用について述べる。画像形成操作の開始(ステップ302)により所定の画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yにて画像形成操作を行う。画像形成操作は、たとえばコピージョブ、プリントジョブ、ファックスジョブまたはプリントアウトできるその他の操作である。画像形成操作は、たとえば画像形成装置のコントロールパネル(図示せず)を介して、或いはプリントリクエストまたは受信したファックスのようなネットワークまたは他の通信ライン等を介して画像形成装置が受信した画像情報に応じて開始される。
【0021】
画像形成操作は、フルカラー画像、モノクロ画像または複数の画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yのいずれか一つまたは幾つかを組み合わせて実施される各種画像を形成する操作である。フルカラー画像の場合は、全ての画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yが使用される。モノクロ画像の場合はブラック画像形成ユニット20Kのみが使用される。更に単色カラー画像(モノクロ画像以外)、その他2色刷り等の場合は所望の画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yが幾つか使用される。
【0022】
ステップ302に続いて、制御部は、トナー撹乱部材52、54、56、58に印加するバイアスを第1のバイアスである+600Vに設定する(ステップ304)。第1のバイアスを印加されたトナー撹乱部材52、54、56、58は残留トナーを引き付け捕集する。トナー撹乱部材52、54、56、58は、画像形成操作の開始に応じて第1のバイアスに設定されるが、そうでない場合は節電のため、例えば0Vに初期設定されても良い。
【0023】
次に制御部は、画像形成操作のタイプを決定する(ステップ306)。画像形成操作のタイプとは、フルカラー画像タイプ、モノクロ画像タイプあるいは単色カラー画像タイプ等をいう。これにより画像形成操作に寄与しない画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yを判別する(ステップ308)。例えばフルカラー画像タイプの場合、全ての画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yが画像形成操作に寄与するが、モノクロ画像タイプであれば、カラー画像形成ユニット20C、20M、20Yは、全て画像形成操作に寄与しない。また単色カラー画像タイプであれば、ブラック画像形成ユニット20Kおよびカラー画像形成ユニット20C、20M、20Yの内のあるものは画像形成操作に寄与しない。
【0024】
画像形成操作に寄与しない画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yにおいて、制御部は、トナー撹乱部材52、54、56、58に印加するバイアスを、第2のバイアスである−600Vに変更する(ステップ310)。第2のバイアスに変更されることにより、トナー撹乱部材52、54、56、58は捕集した残留トナーを、感光体ドラム32、34、36、38表面に吐き出す。第1のバイアスから第2のバイアスへの変更は徐々に行われることが好ましい。本実施例では、たとえばその変更は、1000V/sec以下で行う。トナー撹乱部材52、54、56、58に印加するバイアス値を徐々に変更することは、感光体ドラム32、34、36、38表面上に残留トナーを一様に拡散するのに役立つ。回転される感光体ドラム32、34、36、38表面上に一様に拡散された残留トナーは、夫々の現像器62、64、66、68によって確実に除去される。
【0025】
モノクロ画像であれば、カラー画像形成ユニット20C、20M、20Yは、全て画像形成操作に寄与しないが、ステップ310は、全てのカラー画像形成ユニット20C、20M、20Yに適用しなくても、カラー画像形成ユニット20C、20M、20Yの内の残留トナーの回収を必要とするもののみ行えば良い。更に、単色カラー画像あるいは2色刷り等のカラー画像を形成する場合には、画像形成操作に寄与している場合であっても、画像形成操作を行っている間の空いているタイミングにステップ310を行っても良い。
【0026】
またトナー撹乱部材52、54、56、58にてステップ310を実行した画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yに有っては、現像器62、64、66、68の現像ローラの回転速度を変更する(ステップ312)。画像形成操作時に比べて現像ローラの回転速度が高速となるように変更する。例えば現像時に感光体ドラム32、34、36、38と同方向に速度比1.5倍でWith回転している現像ローラの周速を、クリーニング時には、感光体ドラム32、34、36、38との速度比が2倍になるよう変更する。これにより現像器62、64、66、68による残留トナーの回収性能を向上できる。従って現像器62、64、66、68で回収しきれない未回収のトナーによる感光体ドラム32、34、36、38の汚損を防止出来、画像汚れのない良好な画像を得られる。
【0027】
即ちステップ302の画像形成操作の開始により画像形成操作に寄与する何れかの感光体ドラム32、34、36、38は矢印t方向に回転される。転写ベルト11は矢印r方向に回転される。各感光体ドラム32、34、36、38は帯電器72、74、76、78により夫々−400Vに一様に帯電される。次いで感光体ドラム32、34、36、38は、露光装置により、各色の画像情報に対応する露光々を照射され静電潜像を形成される。
【0028】
次いで現像器62、64、66、68にあっては、現像時の速度で回転する現像ローラにより、感光体ドラム32、34、36、38上の静電潜像の露光部である画像部を現像してトナー像を形成すると同時に、非露光部である非画像部に付着するトナーを現像器62、64、66、68内に回収して、現像同時クリーニングを行う。但し、このとき先行する画像形成操作による、感光体ドラム32、34、36、38上の残留トナーの大部分はトナー撹乱部材52、54、56、58に捕集されていて、感光体ドラム32、34、36、38の非画像部の付着トナーは少ない。
【0029】
感光体ドラム32、34、36、38に形成されたトナー像は、転写ローラ40により転写バイアスを印加されて、転写ベルト10a上の矢印s方向に搬送されるシート紙Pに転写される。所望のトナー像を形成されたシート紙Pは、定着装置を経て画像を完成される。
【0030】
一方転写終了後感光体ドラム32、34、36、38は、トナー撹乱部材52、54、56、58に達する。この時トナー撹乱部材52、54、56、58は+600Vのバイアスを印加されていて、感光体ドラム32、34、36、38上の残留トナーをブラシ9にて捕集する。次いで感光体ドラム32、34、36、38は、次の画像形成操作を成される。
【0031】
一方画像形成操作に寄与しない何れかの画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yに有っても、ステップ302の画像形成操作の開始により感光体ドラム32、34、36、38は矢印t方向に回転される。但し、露光装置による露光は行われない。画像形成操作に寄与しない画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yでは、ステップ310により1000V/sの変更速度でトナー撹乱部材52、54、56、58のバイアスが変更され、感光体ドラム32、34、36、38表面上に残留トナーを徐々に且つ一様に吐き出す。また現像器62、64、66、68では、ステップ312により、現像ローラが高速に回転され、感光体ドラム32、34、36、38表面上に吐き出された残留トナーを確実に回収する。
【0032】
次いでステップ314で、全ての画像形成操作を終了したかをチェックする。残留トナーのクリーニングを行ったトナー撹乱部材52、54、56、58にあっては、全ての画像形成操作が終了するまで、トナー撹乱部材52、54、56、58に印加するバイアスを、−600Vに保持する。画像形成操作が全て終了したら、ステップ316に進み、クリーニングのために第2のバイアスに設定されているトナー撹乱部材52、54、56、58のバイアスを第1のバイアスに復帰する。この時、例えば節電のためにトナー撹乱部材52、54、56、58のバイアスを初期設定である0Vとしても良い。この後、画像形成時にはステップ302〜ステップ316を繰り返す。
【0033】
次に本実施例のサンプル例によるフィルミング防止効果及び比較例のライフ試験を行ったところ図5及び図6に示す結果を得られた。○○は、フィルミングによる画像欠陥なし、モノクロ画像の汚れなし、○×は、フィルミングによる画像欠陥なし、モノクロ画像の汚れが発生、×○は、フィルミングによる画像欠陥発生、モノクロ画像の汚れなし、××は、フィルミングによる画像欠陥、モノクロ画像の汚れともに発生を夫々示す。
【0034】
先ず画像形成条件として、A4サイズのシート紙Pにマゼンタ(M)とシアン(C)画像を夫々20%程度の印字率にて20枚形成する。次いでモノクロ画像を20%の印字率で5枚形成する。この画像形成操作を繰り返して連続画像形成する。画像形成後、マジェンタ画像形成ユニット20Mの感光体ドラム36と、シアン画像形成ユニット20Cの感光体ドラム34のフィルミング現象を原因とする画像劣化を目視評価した。
【0035】
比較例である(試験No.1)では、モノクロ画像形成時においても、シアン・マゼンタのカラー画像形成ユニット20C、20Mのトナー撹乱部材54、56のバイアスを、画像形成操作時の第1のバイアスである+600Vに保持した。この結果、モノクロ画像形成時にトナー撹乱部材54、56にて、残留トナーを吐き出さなかったことから、およそ10,000枚の画像形成後に、フィルミング現象により画像筋や画像抜けが発生した。
【0036】
サンプル例である(試験No.2)では、モノクロ画像形成時にトナー撹乱部材54、56のバイアスを、第1のバイアスである+600Vから第2のバイアスである−600Vに瞬時に変更した。この結果、マゼンタ(M)とシアン(C)いずれにおいても20,000枚まで、フィルミング現象が発生しなかった。
【0037】
比較例である(試験No.3)では、モノクロ画像形成時にトナー撹乱部材54、56のバイアスを反転させずに、第1のバイアスである+600Vから0Vへ、10Hz程度の間隔で、連続してON−OFF制御した。この結果、マゼンタ(M)とシアン(C)いずれにおいても20,000枚まで、フィルミング現象が発生しなかった。
【0038】
次に画像形成条件として、シアン(C)画像を20枚では無く40枚連続画像形成後、モノクロ画像を5枚連続画像形成し、(試験No.1)〜(試験No.3)と同様に画像劣化を目視評価した。
【0039】
比較例である(試験No.4)では、モノクロ画像形成時にトナー撹乱部材54、56のバイアスを、第1のバイアスである+600Vから第2のバイアスである−600Vに瞬時に変更した。この結果、ブラシ9から一度に大量の残留トナーが吐き出されてしまい、現像器64で感光体ドラム34上の残留トナーを回収しきれずに、モノクロ画像形成時の1〜2枚目にシアン(C)色の汚れが発生した。
【0040】
サンプル例である(試験No.5)では、モノクロ画像形成時にのみ現像器64の現像ローラの周速を通常の感光体ドラム34に対する速度比1.5倍から2倍に切り替える。この結果、モノクロ画像の汚れはほとんど見られなくなった。また15,000枚まで、フィルミング現象が発生しなかった。
【0041】
また感光体ドラム34への大量のトナーの放出を防止するため、(試験No.6)〜(試験No.12)では、トナー撹乱部材54の第1のバイアスである+600Vから、第2のバイアスである−600Vへ切り替える変更速度を変化させた。比較例である(試験No.6)は、+600Vから−600Vへ、0.6秒かけて切り替えた。比較例である(試験No.7)は、0.8秒、比較例である(試験No.8)は、1.0秒、サンプル例である(試験No.9)は、1.2秒、サンプル例である(試験No.10)は、1.4秒かけて切り替えた。この結果(試験No.6)〜(試験No.8)の切り変え時間1.0秒までは若干の汚れが発生したが、(試験No.9)の1.2秒及び(試験No.10)の1.4秒では、汚れがほぼ発生しなかった。また(試験No.9)及び(試験No.10)では15,000枚まで、フィルミング現象が発生しなかった。
【0042】
また比較例である(試験No.11)及び、サンプル例である(試験No.12)では第1のバイアスを+300Vとして、モノクロ画像形成時にトナー撹乱部材54、56のバイアスを、第1のバイアスである+300Vから第2のバイアスである−600Vに切り替えた。この結果切り替え時間が0.7秒の(試験No.11)では汚れが発生したが、0.9秒の(試験No.12)では画像汚れが発生しなかった。
【0043】
(試験No.1)〜(試験No.12)の結果から、トナー撹乱部材のバイアスを第1のバイアスから第2のバイアスへ切り替える変更速度を1000V/sec以下とすれば、良好なクリーニングを得られることが判明した。
【0044】
次に画像形成条件として、A4サイズのシート紙Pにマゼンタ(M)とシアン(C)画像を夫々20%の印字率にて20枚連続画像形成した後、シアン(C)のみ20%の印字率で5枚画像形成する。この画像形成操作を繰り返した際のブラック画像形成ユニット20Kの感光体ドラム32とマジェンタ画像形成ユニット20Mの感光体ドラム36のフィルミング現象を原因とする画像劣化を目視評価した。
【0045】
比較例である(試験No.13)では、シアン画像形成時においても、マジェンタのカラー画像形成ユニット20Mのトナー撹乱部材56のバイアスを、変更せずに画像形成操作時の第1のバイアスである+600Vに保持した。この結果、マジェンタの感光体ドラム36ではおよそ10,000枚の画像形成後に、フィルミングが発生し、画像筋や画像抜けが発生した。
【0046】
サンプル例である(試験No.14)では、ブラックの画像形成ユニット20の感光体ドラム32について(試験No.13)と同様の評価を行なった。この結果、ブラックの感光体ドラム32では、10,000枚の画像形成では画質劣化は発生せず、12,500枚近辺で、フィルミング現象により画像筋や画像抜けが発生した。
【0047】
(試験No.13)及び(試験No.14)から、ブラックトナーに比べてカラートナーの方がフィルミング現象を生じやすいことが判明した。
【0048】
サンプル例である(試験No.15)では、シアン画像形成時に、マジェンタ画像形成ユニット20Mのトナー撹乱部材56のバイアスを、第1のバイアスである+600Vから第2のバイアスである−600Vに1000V/secの変更速度で切り替えた。この結果、マジェンタの感光体ドラム36では20,000枚まで、フィルミング現象が発生しなかった。
【0049】
サンプル例である(試験No.16)では、シアン画像形成時に、ブラック画像形成ユニット20Kのトナー撹乱部材52のバイアスを、第1のバイアスである+600Vから第2のバイアスである−600Vに1000V/secの変更速度で切り替えた。この結果、ブラックの感光体ドラム32では22,500枚まで、フィルミング現象が発生しなかった。マジェンタの感光体ドラム36に比べてブラックの感光体ドラム32はフィルミングを発生しにくかった。
【0050】
上記(試験No.1)〜(試験No.16)から、画像形成操作を行なう間の早いタイミングで、画像形成操作に寄与しない画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yにて、トナー撹乱部材52、54、56、58に印加するバイアスを、第1のバイアスから第2のバイアスに切り替えて、トナー撹乱部材52、54、56、58に捕集した残留トナーを現像器62、64、66、68に回収することにより、感光体ドラム32、34、36、38表面のフィルミングの発生を遅らせることができることが判明した。
【0051】
本実施例によれば、複数の画像形成ユニット20K、20C、20M、20Yを有するタンデム方式の画像形成装置において、画像形成操作に寄与しないトナー撹乱部材52、54、56、58のバイアスをトナー捕集時の第1のバイアスからトナーを吐き出す第2のバイアスに切り替えて、トナー捕集後、早いタイミングでトナーを吐き出す。次いで感光体ドラム32、34、36、38表面に吐き出されたトナーを現像兼クリーニングを行なう現像器で回収している。これにより、トナー撹乱部材52、54、56、58位置にて、感光体ドラム32、34、36、38表面にトナーが長く接するのを防止でき、ひいては感光体ドラム32、34、36、38表面のフィルミング現象の発生を防止出来、その長寿命化を得られる。
【0052】
更に本実施例では、第1のバイアスから第2のバイアスへの切り替えを所定の変更速度により徐々におこなう。これによりトナー撹乱部材52、54、56、58から一度に大量のトナーを吐き出すことなく、感光体ドラム32、34、36、38上に一様のトナー薄層を形成可能となる。従って現像器62、64、66、68にて感光体ドラム32、34、36、38上のトナーを効率的に確実に回収でき、感光体ドラム32、34、36、38の汚れによる画像汚れを防止出来る。
【0053】
尚本発明は上記実施例に限られるものではなく、この発明の範囲内で種々変形可能であり、例えば画像形成装置は直接転写方式でなく、中間転写部を設けて、トナー像の転写を行なうものであってよい。又タンデム方式の画像形成装置の画像形成ユニットの数や現像剤の色あるいはその配列順等限定されない。又、トナー撹乱部材に印加する第1のバイアス値は、残留トナーを捕集可能であれば良いし、又第2のバイアス値はトナー撹乱部材に捕集したトナーを像担持体に吐き出されば良い。又第1のバイアス値から第2のバイアス値に変更する場合の変更速度も任意である。
【0054】
又画像形成操作に寄与していない現像器でのクリーニング時に、トナーとの電位差を高めるように現像バイアスを制御して、現像ローラによるトナー回収能力を更に高めるようにしても良い。更に帯電器の構造も限定されないが、トナーによる汚損を防止するためには、非接触タイプの帯電器がより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例の画像形成部を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施例のローラタイプのトナー撹乱部材を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施例のブラシローラタイプのトナー撹乱部材を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施例の画像形成操作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例にてカラー画像とモノクロ画像とを連続画像形成したときのフィルミング発生及び画像汚れ結果を示す表である。
【図6】本発明の実施例にて2色カラー画像と単色カラー画像とを連続画像形成したときのフィルミング発生及び画像汚れ結果を示す表である。
【符号の説明】
【0056】
10…画像形成部
10a…転写ベルト
20K…ブラック画像形成ユニット
20C、20M、20Y…カラー画像形成ユニット
32、34、36、38…感光体ドラム
32、34、36、38…ブラック用感光体ドラム
52、54、56、58…トナー撹乱部材
62、64、66、68…現像器
72、74、76、78…帯電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々に像担持体及び前記像担持体に対向する撹乱部材を有する複数の画像形成ユニットを有してなる画像形成装置にて、少なくとも1つの画像形成ユニットを用いて画像形成操作を実施して記録媒体にトナー像を形成する画像形成方法において、
前記画像形成操作中の前記画像形成ユニットの前記撹乱部材に第1のバイアスを印加する工程と、
前記画像形成操作に寄与しない少なくとも1つの前記画像形成ユニットでは、前記撹乱部材に印加するバイアスを前記第1のバイアスとは異なる第2のバイアスに変更する工程とを具備することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記撹乱部材は、前記第1のバイアスを印加されているときに、対向する前記像担持体表面のトナーを捕集し、前記第2のバイアスを印加されているときに、前記トナーを対向する前記像担持体表面に吐き出すことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記各画像形成ユニットは、前記像担持体に対向し現像兼クリーニングを行う現像器を有してなり、前記像担持体表面のトナー薄層は、前記現像器に回収されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記撹乱部材に印加するバイアスを前記第2のバイアスに変更する工程は、所定の変更速度で実施することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記所定の変更速度は、前記撹乱部材からの前記トナーの吐き出しの流れを一様にすることを特徴とする請求項4記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記所定の変更速度は1000V/sec以下であることを特徴とする請求項4記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記現像器の現像ローラの回転速度を、現像時よりクリーニング時のほうが速くなるように変更させる工程を更に具備することを特徴とする請求項3記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記各画像形成ユニットは、前記像担持体と非接触であり、前記像担持体を一様に帯電する帯電器を有していることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記複数の画像形成ユニットは、ブラックのトナー像を形成するブラック画像形成ユニット及び少なくとも1つのカラートナー像を形成するカラー画像形成ユニットであり、
前記ブラック画像形成ユニットが前記画像形成操作に寄与するモノクロ画像形成を実施する間に、前記カラー画像形成ユニットにて前記撹乱部材に印加するバイアスを前記第2のバイアスに変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記画像形成操作の完了を検出する工程と、
前記画像形成操作の完了後、前記撹乱部材に印加するバイアスを、前記第2のバイアスから前記第1のバイアスに戻す工程とを更に具備する事を特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記複数の画像形成ユニットは、異なるカラートナー像を形成する複数のカラー画像形成ユニットであり、
カラー画像形成のために前記複数のカラー画像形成ユニットのいずれかが前記画像形成操作中に、前記画像形成操作に寄与していない前記カラー画像形成ユニットの前記撹乱部材に印加するバイアスを、前記第2のバイアスに変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項12】
夫々に像担持体、前記像担持体を一様に帯電する帯電器、前記像担持体に対し現像兼クリーニングをおこなう現像器、及び転写終了後の前記像担持体上の残留トナーを撹乱する撹乱部材を有する複数の画像形成ユニットと、
画像形成操作中の前記画像形成ユニットでは前記撹乱部材を第1のバイアスに印加制御し、前記画像形成操作に寄与しない少なくとも1つの前記画像形成ユニットでは前記撹乱部材に印加するバイアスを前記第1のバイアスとは異なる第2のバイアスに変更制御する制御部とを具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
前記撹乱部材は、前記第1のバイアスを印加制御されているとき前記像担持体の表面のトナーを捕集し、前記第2のバイアスを印加制御されているとき前記像担持体の表面に前記トナーを吐き出すことを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記撹乱部材に印加するバイアスを前記第2のバイアスに変更したとき、前記像担持体表面にトナー薄層が形成され、前記像担持体表面のトナー薄層は、前記現像器により回収されることを特徴とする請求項12または請求項13記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記撹乱部材に印加するバイアスを、所定の変更速度で前記第2のバイアスに変更することを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記所定の変更速度は、前記撹乱部材からの前記トナーの吐き出しの流れを一様にすることを特徴とする請求項15記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記所定の変更速度は、1000V/sec以下であることを特徴とする請求項15記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記現像器の現像ローラの回転速度は、現像時よりクリーニング時のほうが速いことを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記複数の画像形成ユニットは、ブラックのトナー像を形成するブラック画像形成ユニット及び少なくとも1つのカラートナー像を形成するカラー画像形成ユニットであり、
前記ブラック画像形成ユニットが前記画像形成操作に寄与するモノクロ画像形成を実施する間に、前記制御部は、前記カラー画像形成ユニットにて前記撹乱部材に印加するバイアスを前記第2のバイアスに変更することを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−276830(P2006−276830A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334117(P2005−334117)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】