説明

画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体

【課題】本発明は、転写ローラに供給する転写電流または転写電圧によって感光体上の現像剤像を被記録部材に転写する画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体に関する。
【解決手段】プリンタ装置1は、感光体20に接触する転写ローラ23を介して転写高圧電源部から転写電流を感光体20に出力して、感光体20上のトナー画像を用紙Pに転写させる際に、コントローラが、転写ローラ23から転写電流が感光体20に供給される前の転写ローラ23と感光体20との間に流れる流れ込み電流を検出し、該流れ込み電流に基づいて転写高圧電源部へ出力している転写制御信号を補正して、転写高圧電源部から転写電流を適切に出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体に関し、詳細には、感光体に安価に安定した転写電圧または転写電流を供給する画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ装置及びプリンタ等に画像形成装置においては、近時、電子写真方式を用いて画像形成を行っている。このような電子写真方式で画像形成を行う画像形成装置は、一様に帯電させた感光体上に画像データにより変調したレーザ光を照射して静電潜像を形成して、感光体上に形成した静電潜像を現像ユニットでトナー(現像剤)を用いて現像し、給紙部から感光体と転写ローラ(転写部材)との間に搬送されてくる用紙に、転写電源から転写ローラを介して高圧の転写バイアス(電圧、電流)を印加して感光体上のトナー画像を転写することで、トナー画像を用紙に形成している。電子写真方式の画像形成装置は、このようにしてトナー画像を転写した用紙を定着部で、加熱・加圧しつつ搬送して、トナー画像を用紙に定着させている。
【0003】
このような電子写真方式の画像形成装置においては、感光体の帯電、静電潜像の現像、トナー画像の用紙への転写、定着及び用紙の搬送等において、それぞれ異なる電圧や電流を必要とし、高圧電源部からそれぞれ必要な電圧や電流の供給を行っている。
【0004】
そして、転写ローラは、一般的に、半導電性のゴム材等で形成されており、その抵抗値が環境によって大きく変化する。すなわち、転写ローラは、低湿環境においては、その抵抗値が大きくなり、高湿環境においては、その抵抗値が小さくなる。また、転写ローラと感光体との間の抵抗値は、用紙の種類等により異なる。そこで、従来、転写高圧電源部は、定電流制御によって転写ローラを介して転写バイアス電流を印加する定電流方式の場合、用紙毎に転写電流の設定値を可変させて転写し、また、定電圧制御によって転写ローラを介して転写バイアス電圧を印加する定電圧方式の場合、用紙毎に転写電圧の設定値を可変させて転写している。
【0005】
すなわち、画像形成装置は、転写高圧電源部が、高圧トランス、高圧トランスの1次側に接続されてパルス状の制御信号によってオン/オフするトランジスタ、高圧トランスの2次側出力及び予め設定されている出力目標に応じた出力帰還値と制御信号を比較して高圧トランスの1次側を通してトランジスタをオン/オフさせる駆動パルスをトランジスタに出力する帰還回路と、を備え、トランジスタに供給する制御信号のオン時間をPWM(Pulse Wide modulation:パルス幅変調)制御することで、高圧トランスの1次側に流れる駆動電流を制御して、高圧トランスの2次側に発生する2次出力を転写電流または転写電流(以下、適宜、転写出力(電流、電圧)と表示する。)として出力するとともに、該転写出力(電流、電圧)を出力目標に応じて帰還させた出力帰還値を制御信号とを比較して、転写出力(電流、電圧)を目標値に収束させている。このような自励発振式の転写高圧電源部が、部品点数が少なく、低コスト化が可能なことから広く用いられている。
【0006】
そして、電子写真方式の画像形成装置においては、感光体の電位によっては、転写高圧電圧または転写高圧電流の出力状態とはなっていない転写高圧電源部から感光体に流れ込む流れ込み電流が発生する場合があり、この流れ込み電流が発生すると、転写高圧電源部の自励発振回路が起動不良を起こす場合がある。転写高圧電源部の自励発振回路の起動不良が発生すると、転写電流、転写電圧が不足して、画像が薄くなる等の画像劣化が発生するおそれがある。
【0007】
そこで、従来、自励発振回路を備えた定電流方式の転写高圧電源部が、感光体上のトナーを転写紙に転写するための転写電流または転写電圧を、転写クリーニング電源部からの転写クリーニング電圧と同時に供給して、自励発振回路の起動不良を防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
この転写クリーニング電源部は、感光体の回転開始及び帯電バイアス(電圧、電流)出力に合わせて、感光体の残留トナーが付着しないように、転写ローラに対して、印刷時とは逆バイアスの転写クリーニング電圧を印加し、この転写クリーニング電圧によって裏汚れ等の発生を抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術にあっては、感光体上のトナーを転写紙に転写するための転写電流または転写電圧を、転写クリーニング電源部からの転写クリーニング電圧と同時に、自励発振回路を含む転写高圧電源部から感光体に供給することで流れ込み電流の影響を抑制して自励発振回路の起動不良の防止を図っているため、自励発振回路を含む転写高圧電源部が、定電圧方式であると、転写高圧電源部の回路部品として高耐圧部品を用いる必要があり、コストが高くなるとともに、転写クリーニング電源部を備えていないときには、自励発振回路の起動不良を防止することができず、汎用性に欠けるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、流れ込み電流の転写電源手段に与える影響を安価かつ適切に防止して、適切な転写電圧または転写電流を供給する画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、静電潜像が現像剤によって現像された現像剤像を保持する感光体に、該感光体に接触する転写ローラを介して、入力される制御信号に応じて所定タイミングに生成される所定目標値の転写電圧または転写電流を転写電源手段の出力端子から出力して、感光体上の現像剤像を被記録媒体に転写させる際に、前記転写ローラから前記転写電圧または前記転写電流が前記感光体に供給される前の該転写ローラと該感光体との間に流れる流れ込み電流を検出し、該流れ込み電流に基づいて前記転写電源手段への前記制御信号を補正することを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記転写電源手段が、前記制御信号に基づいて自励発振して前記転写電圧または前記転写電流を生成することを特徴としてもよい。
【0013】
さらに、本発明は、帰還手段によって、前記転写電源手段の出力端子の出力電圧または出力電流を帰還信号として前記転写電源手段の前記制御信号の入力側に帰還させ、前記転写電源手段が、前記制御信号と前記帰還信号に基づいて前記転写電圧または前記転写電流を制御し、前記電流検出手段が、前記帰還信号に基づいて前記流れ込み電流を検出することを特徴としてもよい。
【0014】
また、本発明は、前記転写電源手段が、前記転写電圧または前記転写電流の出力タイミングの前の所定タイミングに該転写電圧または該転写電流とは逆特性の所定出力値のクリーニング電圧を前記出力端子から出力するクリーニング電源手段を備えていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、転写電源手段が転写電圧または転写電流を転写ローラを通して感光体に供給する前に、転写ローラと感光体との間に流れる流れ込み電流が転写電源手段に与える影響を安価かつ適切に防止することができ、転写電圧または転写電流を適切に供給させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例を適用したプリンタ装置の要部ブロック構成図。
【図2】作像部の要部概略構成図。
【図3】転写高圧電源部の回路構成図。
【図4】転写出力電流と転写出力帰還信号の関係を示す図。
【図5】画像形成開始時のタイミング図。
【図6】流れ込み電流の説明図。
【図7】画像形成時の転写出力電位の遷移を示す図。
【図8】感光体表面電位が−942Vのときの転写電流と転写電位の実測値及び転写ローラによる電圧降下と転写ローラインピーダンスの一例を示す図。
【図9】感光体表面電位が−942Vのときの転写電流と転写電圧の関係を示す図。
【図10】転写出力電源部のみの転写高圧電源部の回路構成図。
【図11】図10の転写高圧電源部の画像形成時おける転写出力電位の遷移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な実施例であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではなく、また、本実施の形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。
【実施例1】
【0018】
図1〜図11は、本発明の画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体の一実施例を示す図であり、図1は、本発明の画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体の一実施例を適用した画像形成装置としてのプリンタ装置1のブロック構成図である。
【0019】
図1において、プリンタ装置1は、コントローラ2、ROM(Read Only Memory)3、RAM(Random Access Memory)4、通信I/F5、操作部6、作像部7、定着部8及び光書き込み部9等を備えており、各部は、システムバス10で接続されている。
【0020】
ROM3は、プリンタ装置1の基本プログラムや後述する画像形成制御処理プログラム及び必要なデータ等を格納しており、RAM4は、バッテリバックアップされていて、プリンタ装置1の初期設定値やその他の情報をプリンタ装置1の電源がオフされた場合や停電の場合にも保持する。
【0021】
コントローラ(制御手段)2は、CPU(Central Processing Unit )等を備えていて、ROM3内のプログラムに基づいて、RAM4をワークメモリとして利用して、プリンタ装置1の各部を制御し、プリンタ装置1としての基本プログラムを実行するとともに、画像形成制御処理プログラムに基づいて本発明の画像形成制御方法を実行する。
【0022】
すなわち、プリンタ装置1は、ROM、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )、EPROM、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory )、CD−RW(Compact Disc Rewritable )、DVD(Digital Video Disk)、SD(Secure Digital)カード、MO(Magneto-Optical Disc)等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されている本発明の画像形成制御方法を実行する画像形成制御プログラムを読み込んでROM3等に導入することで、後述する転写電源を安価にかつ適切に制御する画像形成制御方法を実行する画像形成装置として構築されている。この画像形成制御プログラムは、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)等のレガシープログラミング言語やオブジェクト指向ブログラミング言語等で記述されたコンピュータ実行可能なプログラムであり、上記記録媒体に格納して頒布することができる。
【0023】
また、ROM3には、後述するように、転写出力帰還信号Sfが、転写電流と1対1に比例した出力関係である情報を保持している。
【0024】
通信I/F5は、例えば、LAN(Local Area Network)等のネットワークに接続されており、ネットワークには、プリンタ装置1に対してホスト装置となるコンピュータ等が接続されている。通信I/F5は、コントローラ2の制御下で、ネットワークを介してホスト装置との間でデータの送受信を行う。
【0025】
操作部6は、プリンタ装置1に各種動作をさせるのに必要な各種操作を行う操作キー及びディスプレイ等を備え、コントローラ2の制御下で、ユーザに通知する各種情報をディスプレイに表示するとともに、操作キーで入力された各種命令やパラメータを取得してコントローラ2に出力する。
【0026】
作像部7は、図2に示すように、感光体20の周囲に、帯電ローラ21、現像ローラ22、転写ローラ23及び図示しない除電部、クリーニング部等が配設されている。感光体20は、図2に矢印で示す反時計方向に回転駆動され、その軸がプリンタ装置1のフレームに接触して、電気的にフレームグランド接地された状態となっている。
【0027】
帯電ローラ21には、帯電高圧電源部24が接続されており、帯電高圧電源部24は、コントローラ2の制御下で、高圧の帯電電圧を帯電ローラ21に供給する。帯電ローラ21及び帯電高圧電源部24は、全体として帯電手段として機能している。
【0028】
現像ローラ22には、現像高圧電源部25が接続されており、現像高圧電源部25は、コントローラ2の制御下で、高圧の現像電圧を現像ローラ22に供給する。現像ローラ22及び現像高圧電源部25は、全体として現像手段として機能している。
【0029】
転写ローラ23には、転写高圧電源部26が接続されており、転写高圧電源部26は、コントローラ2の制御下で、高圧の転写電流または転写電圧を転写ローラ23に供給する。なお、本実施例の転写高圧電源部26は、後述するように定電流電源が用いられており、高圧の転写電流を転写ローラ23に供給する。
【0030】
感光体20は、その回転に伴って、図示しない除電部により除電された後、帯電ローラ21と接触した状態で回転して、帯電高圧電源部24からの帯電電圧が帯電ローラ21を通して供給されることによって一様に帯電され、その後、図示しない光書き込み部9から画像データに基づいて変調されたレーザ光LBが照射されて、その表面に静電潜像が形成される。現像ローラ22は、感光体20とともに回転して、現像高圧電源部25からの現像電圧が現像ローラ22を通して供給されることによって、トナーを静電潜像の形成された感光体20の表面に供給し、感光体20の表面にトナー画像を形成する。プリンタ装置1は、トナー画像の形成された感光体20をさらに転写ローラ23方向に回転させるとともに、給紙部から転写ローラ23と感光体20との当接部である転写ニップ部に用紙(被記録媒体)Pを搬送し、転写高圧電源部26から転写ローラ23に転写電流を供給することで、転写ニップ部で感光体20上のトナー画像を用紙Pに転写する。
【0031】
プリンタ装置1は、トナー画像の転写された用紙Pを図示しない定着部8に搬送し、定着部8で加熱・加圧してトナー画像を用紙Pに定着させることで画像形成する。そして、プリンタ装置1は、転写ニップ部手前にレジストローラと搬送センサが設けられており、転写ニップ部に搬送される用紙Pを搬送センサで検出して、搬送センサの検出結果に基づいて、レジストローラの駆動制御を行って用紙Pの搬送制御を行うことで、用紙Pと感光体20上のトナー画像との位置調整を行う。
【0032】
定着部8は、例えば、駆動モータにより用紙Pの搬送方向に回転駆動される定着ローラと定着ローラに当接して転写ローラとともに回転する加圧ローラ及び転写ローラを所定の定着温度に加熱する定着ヒータ等を備え、転写ローラと加圧ローラとのニップ部を通過する用紙Pに対して加熱及び加圧してトナー画像を用紙Pに定着させる。
【0033】
光書き込み部(光書き込み手段)9は、データに基づいて変調したレーザ光LBを出射するLED(Light Emitting Diode)等の光源、画素密度に応じた回転角速度で回転駆動され該光源から出射されたレーザ光LBを主走査方向に偏向・反射させるポリゴンミラー、ポリゴンミラーで反射されたレーザ光LBを感光体20上に照射するミラー群等を備えている。
【0034】
そして、上記転写高圧電源部(転写電源手段)26は、図3に示すように、転写出力電源部30とクリーニングバイアス電源部(クリーニング電源手段)40を備えており、転写出力電源部30には、転写制御信号(制御信号)Spが、クリーニングバイアス電源部40には、クリーニング制御信号Scが、それぞれコントローラ2から入力される。
【0035】
転写出力電源部30は、平滑回路31、抵抗R1、駆動回路32、トランジスタTr1、トランスT1、平滑回路33等を備えており、定電流制御の電源部である。したがって、転写高圧電源部26は、自励発振して定電流制御した転写電流を生成して、転写出力端子Wpから出力する。
【0036】
平滑回路31は、抵抗R2とコンデンサC1を備え、平滑回路31には、コントローラ2から転写制御信号Spが入力される。転写制御信号Spは、コントローラ2によってそのオン時間(オンデューティ)がPWM制御されるパルス信号であり、オンデューティを制御することで、転写高圧電源部26の転写出力電源部30から転写ローラ23に供給する転写電流を可変制御する信号である。
【0037】
平滑回路31は、転写制御信号Spを平滑化して安定化した転写制御直流電圧(DC電圧)として、駆動回路32に出力する。
【0038】
駆動回路32は、増幅器Ap1、抵抗R3、帰還抵抗R4等を備えており、増幅器Ap1に、平滑回路31からの転写制御直流電圧がそのマイナス入力端子に入力されるとともに、転写出力帰還電流を抵抗R1でプルアップされた転写出力帰還電圧がプラス入力端子に入力される。駆動回路32は、増幅器Ap1の出力を、抵抗R3を通してトランスT1の1次側に出力するとともに、帰還抵抗R4を介して平滑回路31からの転写制御直流電圧の入力されるマイナス入力端子に帰還させている。駆動回路32は、転写制御信号Spを平滑化した転写制御直流電圧と転写出力帰還電圧に応じた出力をトランスT1の1次側に出力する。
【0039】
トランスT1は、1次側の1次巻線Tm1とベース駆動巻線Tmb及び2次側の2次巻線Tm2を有し、1次巻線Tm1は、定電圧Vccが印加されているとともに、トランジスタTr1のコレクタに接続されている。トランスT1は、1次巻線Tm1がトランジスタTr1によってオン/オフ(スイッチング)されることにより、2次巻線Tm2にエネルギーが伝達され、2次側に高圧出力が生成される。
【0040】
トランスT1の2次側の2次巻線Tm2に平滑回路33が接続されており、平滑回路33は、ダイオードD1、D2、コンデンサC2、C3及び抵抗R5、R6を備えている。
【0041】
トランジスタTr1は、エミッタ接地されており、ベースにトランスT1のベース駆動巻線Tmbが接続されている。ベース駆動巻線Tmbは、駆動回路32の抵抗R3を介して増幅器Ap1の出力に接続されており、トランジスタTr1は、駆動回路32の駆動出力によってオン/オフする。
【0042】
トランスT1は、トランジスタTr1によって、オンされたときに、1次巻線Tm1に電圧が加わり、同時にベース駆動巻線Tmbにも電圧が発生する。トランジスタTr1がオンすることによってトランスT1のベース駆動巻線Tmbに発生した電圧は、トランジスタTr1をさらにオン(導通)させる方向に動作させて正帰還の電圧となり、トランジスタTr1は急速にオンしてトランスT1の1次巻線Tm1に更に電圧が加わる。この場合、トランスT1の2次巻線Tm2の電圧は平滑回路33のダイオードD1、D2に対して逆に加わるので、トランスT1の2次巻線Tm2には電流が流れず、トランスTの1次巻線Tm1を流れる電流は、励磁電流だけとなる。
【0043】
トランスT1のベース駆動巻線TmbからトランジスタTr1のベースに流れるベース電流がトランジスタTr1の飽和を保つことができなくなると、トランジスタTr1は、飽和から外れてコレクタ−エミッタ電圧Vceが増加して、コレクタ−エミッタ電圧Vceが増加することにより、トランスT1の1次巻線Tm1の電圧が下がり、ベース駆動巻線Tmbの電圧も下がって、さらに、コレクタ−エミッタ電圧Vceが増加する。この一連の変化が正帰還されて、トランジスタTr1は急速にオンからオフになる。トランジスタTr1がオフした瞬間も、この磁界は同一に保たれ、1次巻線Tm1に流れていた電流と同一のエレルギーを保つように、2次巻線Tm2にも巻き始めから巻き終わり方向に電流が流れて、ダイオードD1が導通します。トランスT1に蓄積されていたエネルギーが全て2次側(出力側)へ移されると、ダイオードD1の電流はオフになる。
【0044】
この瞬間、トランスT1のそれぞれの巻線Tm1、Tmb、Tm2の電圧はゼロになるが、再び、駆動回路32の出力によってトランジスタTr1が導通し、上記動作を繰り返して、発振を継続する。すなわち、転写出力電源部30は、自励発振式の定電流電源となっており、転写出力端子Wpから転写ローラ23を介して感光体20に転写電流を出力する。
【0045】
一方、クリーニングバイアス電源部40は、平滑回路41、クリーニングバイアス駆動回路部42、トランスT11、平滑回路43等を備えており、平滑回路41にコントローラ2によってPWM制御されたクリーニング制御信号Scが入力される。
【0046】
コントローラ2は、感光体20の回転開始及び帯電電圧の出力に合わせて、転写ローラ23に対して、感光体20の残留トナーが付着しないように印刷時とは逆バイアスの転写クリーニングバイアス電圧を印加させるように、クリーニング制御信号Scを転写高圧電源部26のクリーニングバイアス電源部40に出力して、裏汚れ等の不具合を抑制する。
【0047】
すなわち、平滑回路41は、抵抗R11とコンデンサC11を備え、クリーニング制御信号Scを平滑化して安定化したクリーニング制御直流電圧(DC電圧)として、クリーニングバイアス駆動回路部42に出力する。
【0048】
クリーニングバイアス駆動回路42は、平滑回路41から入力されるクリーニング制御直流電圧に応じてトランスT11の1次側にクリーニング駆動電流を流して2次側に転写クリーニングバイアス電圧を発生させる。
【0049】
トランスT11の2次側には、平滑回路43が接続されており、平滑回路43は、ダイオードD11、D12、コンデンサC12、C13及び抵抗R12、R13を備えている。平滑回路43は、転写出力電源部30の平滑回路33に接続されており、クリーニングバイアス駆動回路42によってトランスT11の2次側に発生された高圧電圧を転写出力端子Wpから転写クリーニングバイアス電圧として出力させる。平滑回路33には、その抵抗R12と抵抗R13の間に、転写出力電源部30の駆動回路32の増幅器Ap1に接続されている帰還回路(帰還手段)50が接続されており、帰還回路50によって、転写電流に対応した転写出力帰還電流を帰還させて、プルアップ抵抗R1によって転写出力帰還電圧として増幅器Ap1に入力する。また、この帰還回路50は、図示しないA/D(アナログ/デジタル)変換回路に接続されており、該A/D変換回路で転写出力帰還電流をデジタル変換して転写出力帰還信号(帰還信号)Sfとしてコントローラ2に出力する。
【0050】
コントローラ2は、転写出力帰還信号Sfに基づいて、転写ローラ−感光体間で流れた電流を検出し、転写出力電源部30への転写制御信号SpのPWM制御を行って、転写出力電源部30の出力する転写電流を制御する。
【0051】
そして、上記転写電流と、帰還回路50によって帰還される転写出力期間信号Sfとは、図4に示すように、直線関係にあり、この転写電流と転写出力帰還信号Sfとの対応データが、ROM3に予め格納されている。コントローラ2は、帰還回路50を介して入力される転写出力帰還信号Sfに基づいて転写出力電流または転写出力電圧を判定し、該判定結果に基づいて転写制御信号SpのPWM制御を行う。上記帰還回路50及びコントローラ2は、全体として、電流検出手段として機能している。
【0052】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例のプリンタ装置1は、転写高圧電源部26から転写ローラ23を経由して感光体20に流れ込む流れ込み電流Itzを検出して、転写高圧電源部26の転写電流の出力タイミングに、該流れ込み電流Itzに基づいて、転写高圧電源部26へ入力する転写制御信号Spを補正して、転写高圧電源部26の自励発振を適切に行わせる。
【0053】
すなわち、プリンタ装置1は、図5に示すように、通信I/F5を介してホスト装置から画像データとともにプリント開始信号が入力されると、感光体モータが感光体20の回転を開始させると同時に、帯電高圧電源部24から帯電ローラ21に帯電電圧を出力する。
【0054】
そして、プリンタ装置1は、帯電高圧電源部24によって帯電ローラ21を介して帯電した感光体20の帯電部分が現像ローラ4の位置する現像部位に到達するタイミングに合わせて、現像高圧電源部25から現像ローラ22を介して現像電圧を出力させ、また、感光体20の帯電部分が転写ローラ23の位置する転写部位に到達するタイミングに合わせて、転写高圧電源部26から転写ローラ23を介して転写電流を出力させる。このようにすることで、感光体20に不要なトナーが付着したり、帯電メモリーを持つことを防止することができる。
【0055】
また、プリンタ装置1は、画像信号の出力タイミングを、転写ローラ23がクリーニングバイアス印加状態で少なくとも1回転したときに、画像信号により光書き込み部9によって画像露光された感光体20の部分が転写部位に到達するタイミングに、画像信号の出力を行う。そして、プリンタ装置1は、感光体20の画像露光された部分が転写部位に到達するタイミングに合わせて、用紙Pの先端が転写部位に到達するように用紙Pの搬送を行い、転写高圧電源部26から転写ローラ23を介して上記転写電流を出力させて、感光体20上のトナー画像を用紙Pに転写させる。
【0056】
また、プリンタ装置1は、感光体20の回転開始及び帯電電圧の出力に合わせて、クリーニングバイアス電源部40から転写ローラ23に対して、感光体20の残留トナーが付着しないように、印刷時と逆バイアスの転写クリーニングバイアス電圧を印加し、裏汚れ等の不具合を抑制する。なお、図5において、期間Cは、転写高圧電源部26から極性のことなるバイアスが同時に動作することを防止するための切り換え期間である。
【0057】
そして、転写高圧電源部26の転写出力電源部30は、上述のように、駆動回路32が、転写制御信号Spを平滑化した転写制御直流電圧と転写出力帰還電圧に応じた出力をトランスT1のベース駆動巻線Tmbを介してトランジスタTr1のベースに出力して、トランジスタTr1をオフからオンに切り換える。トランスT1は、トランジスタTr1によって、オンされたときに、1次巻線Tm1に電圧が加わり、同時にベース駆動巻線Tmbにも電圧が発生する。トランジスタTr1がオンすることによってトランスT1のベース駆動巻線Tmbに発生した電圧は、トランジスタTr1をさらにオン(導通)させる方向に動作させて正帰還の電圧となり、トランジスタTr1は急速にオンしてトランスT1の1次巻線Tm1に更に電圧が加わる。この場合、トランスT1の2次巻線Tm2の電圧は平滑回路33のダイオードD1、D2に対して逆に加わるので、トランスT1の2次巻線Tm2には電流が流れず、トランスTの1次巻線Tm1を流れる電流は、トランスT1の励磁電流だけとなる。
【0058】
トランスT1のベース駆動巻線TmbからトランジスタTr1のベースに流れるベース電流がトランジスタTr1の飽和を保つことができなくなると、トランジスタTr1は、飽和から外れてコレクタ−エミッタ電圧Vceが増加して、コレクタ−エミッタ電圧Vceが増加することにより、トランスT1の1次巻線Tm1の電圧が下がり、ベース駆動巻線Tmbの電圧も下がって、さらに、コレクタ−エミッタ電圧Vceが増加する。この一連の変化が正帰還されて、トランジスタTr1は急速にオンからオフになる。トランジスタTr1がオフした瞬間も、この磁界は同一に保たれ、1次巻線Tm1に流れていた電流と同一のエレルギーを保つように、2次巻線Tm2にも巻き始めから巻き終わり方向に電流が流れて、ダイオードD1が導通します。トランスT1に蓄積されていたエネルギーが全て2次側(出力側)へ移されると、ダイオードD1の電流はオフになる。
【0059】
この瞬間、トランスT1のそれぞれの巻線Tm1、Tmb、Tm2の電圧はゼロになるが、再び、駆動回路32の出力によってトランジスタTr1が導通し、上記動作を繰り返して、発振を継続する。
【0060】
一方、プリンタ装置1は、停電高圧電源部24に接続された帯電ローラ21によって、回転する感光体20の表面電位を約−900V程度に帯電させるが、このときに、図5に示したタイミングチャートの期間Cでは、転写高圧電源部26から転写バイアス(電圧、電流)が動作していないため、図6に矢印で示す経路で、GNDから転写高圧電源部26の2次側回路、転写ローラ23を経由して、感光体20へ流れ込む電流(流れ込み電流Itz)が発生する。この流れ込み電流Itzによる転写出力電源部30の駆動回路32への帰還電圧と転写バイアス電圧との差が大きくない場合、駆動回路32は、自励発振を開始させるために十分なトランジスタTr1の起動電圧を供給できないことがあり、転写高圧電源部26から転写出力(転写バイアス)が出力されず、用紙Pに転写されるトナー画像が薄くなったり、用紙Pにトナー画像が転写されずに用紙Pに画像が形成されないという不具合が発生するおそれがある。
【0061】
そこで、本実施例のプリンタ装置1は、帰還回路50によって、転写電流に対応した転写出力帰還電流を帰還させるとともに、図示しないA/D変換回路で転写出力帰還電流をデジタル変換して転写出力帰還信号Sfとしてコントローラ2に出力し、コントローラ2が、ROM3に予め格納されている転写電流と転写出力帰還信号Sfとの対応データから転写電流を取得して、流れ込み電流Itzに基づいて転写高圧電源部26へ入力する転写制御信号Spを補正して、転写高圧電源部26の自励発振を適切に行わせる。
【0062】
すなわち、画像形成時における転写高圧電源部26の転写出力端子Wpの電位(転写出力電圧)は、図7のように示すことができ、上述のように、プリント開始信号によって、画像形成を開始するために、感光体20の回転を開始して、帯電高圧電源部24による帯電電圧及び現像高圧電源部5による現像電圧を順次感光体20に印加する。プリンタ装置1は、帯電した感光体20の表面が転写部位に到達すると同時に、図7に示すように、転写高圧電源部26のクリーニングバイアス電源部40から転写クリーニングバイアス電圧を転写出力端末から転写ローラ23を介して感光体20に印加する。このときの転写出力端子Wp部分の電圧及び電流は、感光体20の表面電位と転写ローラインピーダンスRt及びクリーニングバイアス電圧により決定される。
【0063】
次に、プリンタ装置1は、クリーニング期間が経過すると、クリーニングバイアス電源部40からのクリーニングバイアス電圧を停止し、バイアス切り換え期間を設ける。このバイアス切り換え期間は、転写高圧電源部26からバイアス電圧が加わっていないため、感光体20の表面電位が約−900Vに帯電されていたときには、パッシェンの法則により、約−300V程度の電圧が転写部位の転写ローラ23側の表面に現れ、転写ローラインピーダンスRtにより、電圧降下した電圧が、転写高圧電源部26の転写出力端子Wpに現れる。次に、プリンタ装置1は、画像領域が転写部位に到達するタイミングで、転写高圧電源部26の転写出力電源部30に転写制御信号Spを供給して、転写電流を転写出力端子Wpから転写ローラ23に供給する。
【0064】
そして、コントローラ2には、このように転写高圧電源部26の転写出力端子Wpの遷移状態が、転写出力帰還信号Sfとして入力される。
【0065】
例えば、感光体20の表面電位が、−942Vの場合、転写バイアス電流(転写電流)を変化させたときの転写出力端子Wpの電圧(転写電圧)は、図9のように示され、また、この場合の転写電流、転写電圧、転写ローラ23による電圧降下及び転写ローラインピーダンスRtは、図9のように示される。したがって、転写電流が流れ始める転写端子電圧は、約−585Vとなり、感光体20の表面電位を変化させたとしても、パッシェンの法則から、転写ローラ−感光体表面電位間の電圧が、約−600V程度になると電流が流れ始める。このように、転写電圧と感光体20の表面電位及び転写電流が分かると、転写ローラインピーダンスRtを算出することができる。
【0066】
すなわち、本実施例のプリンタ装置1は、転写出力電源部30が定電流回路で、クリーニングバイアス電源部40が定電圧回路であるので、クリーニングバイアス印加時における転写クリーニングバイアス出力電圧Vtmが分かる。そして、転写出力帰還信号Sfにより、転写電流Itmも算出することができる。さらに、感光体20の表面電位Vopcは、帯電高圧電源部24の供給する帯電バイアス設定電圧が定電圧であるので、パッシェンの法則により、帯電バイアス設定電圧Vcの絶対値から600Vを減算した値として算出することができる(Vopc=Vc−600V)。帯電ローラ21は、接触帯電方式の場合、帯電ローラ21のインピーダンスRtは、約0.4MΩ〜約1.8MΩ程度であり、感光体20のインピーダンスと比較して、非常に小さく、帯電高圧電源部24の出力端子と帯電ローラ21の表面電位はほぼ同じと考えることができる。
【0067】
したがって、転写ローラインピーダンスRtは、以下に示す式1から算出することができる。なお、Vopc、Vtm、Vc、Vtpは絶対値である。
【0068】
(Vopc−Vtm)/Itm=Rt・・・式1
ここで、図5に示した切り換え期間Cに流れ込む流れ込み電流Itzは、直接検出することができるが、切り換え時間は短く放電時間も必要となるので、正しい値が検出できない可能性があるので、以下に示す式2により算出を行なう。
【0069】
(Vopc−600)/Rt=Itz・・・式2
したがって、転写時の設定電流Itpと流れ込み電流Itzから、自励発振起動時設定電流Itkは、次式3から算出することができる。
【0070】
Itk=Itz+Itp・・・式3
コントローラ2は、帯電高圧電源部24の転写出力電源部30の起動時に、この自励発振起動時設定電流Itkが流れるように転写制御信号SpのPWM制御(転写制御信号Spの補正)を行う。このように帯電高圧電源部24の転写出力電源部30の起動時に、流れ込み電流Itzに基づいて転写制御信号SpのPWM制御を行うと、転写出力帰還信号Sfによる転写出力帰還電圧と転写制御信号Spを平滑化して安定化した転写制御直流電圧(DC電圧)との電圧差が大きくなる。その結果、駆動回路32の出力が大きくなって、転写高圧電源部26の第1回目の自励発振を大きくすることができ、自励発振が停止することなく転写電流の出力動作を開始させることができる。
【0071】
このように、本実施例のプリンタ装置1は、静電潜像がトナーによって現像されたトナー画像を保持する感光体20に、該感光体20に接触する転写ローラ23を介して、転写制御信号Spに応じて所定タイミングに生成される所定目標値の転写電流を転写高圧電源部26の転写出力端子Wpから出力して、感光体20上のトナー画像を用紙Pに転写させる際に、コントローラ2が、転写ローラ23から転写電流が感光体20に供給される前の転写ローラ23と感光体20との間に流れる流れ込み電流Itzを検出し、該流れ込み電流Itzに基づいて転写高圧電源部26へ出力している転写制御信号Spを補正している。
【0072】
したがって、転写電流を転写ローラ23から感光体20に供給する前に転写ローラ23と感光体20との間に流れる流れ込み電流Itzが転写高圧電源部26に与える影響を適切に防止して、転写高圧電源部26を確実に動作させることができ、転写電流を安価かつ適切に供給させて、安価に転写性能を向上させることができる。
【0073】
また、本実施例のプリンタ装置1は、転写高圧電源部26が、転写制御信号Spに基づいて自励発振して転写電流を生成している。
【0074】
したがって、流れ込み電流Itzに影響されることなく、確実に自励発振させることができ、転写性能を向上させることができる。
【0075】
さらに、本実施例のプリンタ装置1は、転写高圧電源部26の転写出力端子Wpの出力電圧または出力電流を帰還信号として転写高圧電源部26、特に、転写出力電源部30の転写制御信号Spの入力側に帰還させる帰還回路50を備え、転写出力電源部30は、転写制御信号Spと転写出力帰還電流に基づいて転写電流を制御し、コントローラ2は、転写出力帰還電流をデジタル変換した転写出力帰還信号Sfに基づいて流れ込み電流Itzを検出している。
【0076】
したがって、既存の構成を利用し付加構成を少なくしつつ、より一層安価かつ適切に流れ込み電流Itzを検出して、流れ込み電流Itzの影響を適切に防止することができ、転写電流を適切に制御して、安価にかつ適切に転写性能を向上させることができる。
【0077】
また、本実施例のプリンタ装置1は、転写高圧電源部26が、転写電流の出力タイミング前の所定タイミングに該転写電流とは逆特性の所定出力値のクリーニングバイアス電圧を転写出力端子Wpから出力するクリーニングバイアス駆動回路42を備えている。
【0078】
したがって、裏汚れ等の発生を適切に防止しつつ、転写高圧電源部26から適切な転写電流を供給することができ、形成画像の画像品質をより一層向上させることができる。
【0079】
さらに、本実施例のプリンタ装置1は、コントローラ2が、クリーニングバイアス駆動回路42がクリーニングバイアス電圧を転写出力端子Wpから出力しているときの該転写出力端子Wpに流れる電流に基づいて流れ込み電流Itzを検出している。
【0080】
したがって、裏汚れ等の発生を適切に防止しつつ、転写高圧電源部26から適切な転写電流を供給することができ、形成画像の画像品質をより一層向上させることができる。
【0081】
また、本実施例のプリンタ装置1は、感光体20を一様に帯電させる帯電ローラ21と、帯電ローラ21によって一様に帯電された感光体20に画像データに基づいて変調した書き込み光を照射して静電潜像を形成する光書き込み部9と、静電潜像の形成された感光体20にトナーを供給してトナー画像を形成する現像ローラ4と、を備えており、コントローラ2が、感光体20の帯電ローラ21によって帯電された帯電領域が転写ローラ23と対向する状態のときの流れ込み電流Itzを検出している。
【0082】
したがって、流れ込み電流Itzを正確に検出して、転写高圧電源部26から適切な転写電流を供給することができ、形成画像の画像品質をより一層向上させることができる。
【0083】
なお、上記説明においては、転写高圧電源部26が、クリーニングバイアス電源部40を備えている場合について説明したが、転写高圧電源部がクリーニングバイアス電源部を備えていない場合にも同様に適用することができる。
【0084】
例えば、図10に示すように、転写高圧電源部60が、転写出力電源部30と抵抗R61を備え、クリーニングバイアス電源部を備えていなくてもよい。なお、図10において、上記図3の転写高圧電源部26と同様の構成部分には、同一の符号を付している。
【0085】
この転写高圧電源部60は、平滑回路33からの転写電流を抵抗R61を介して転写出力帰還電圧として駆動回路32に帰還させるとともに、転写出力帰還信号SfとしてA/D変換した後にコントローラ2に入力する。
【0086】
クリーニングバイアス電源部を備えていない転写高圧電源部60は、画像形成時の転写出力端子Wpの電位が、図11に示すように遷移する。すなわち、プリンタ装置1は、プリント開始信号によって、上述のように、画像形成開始するために、感光体20の回転を開始して、帯電高圧電源部24による帯電電圧及び現像高圧電源部5による現像電圧を順次感光体20に印加する。プリンタ装置1は、帯電した感光体20の表面が転写部位に到達すると同時に、図11に示すように、クリーニングバイアス電源部を備えていないため、クリーニングバイアス電圧を出力することなく、転写高圧電源部60からの転写バイアスの出力を停止した状態となる。このとき、転写高圧電源部60からバイアス電圧が加わっていないため、感光体20の表面電位が約−900Vに帯電されていたときには、パッシェンの法則により、約−300V程度の電圧が転写部位の転写ローラ23側の表面に現れ、転写ローラインピーダンスRtにより、電圧降下した電圧が、転写高圧電源部60の転写出力端子Wpに現れる。次に、プリンタ装置1は、画像領域が転写部位に到達するタイミングで、転写高圧電源部60の転写出力電源部30に転写制御信号Spを供給して、転写電流を転写出力端子Wpから転写ローラ23に供給する。
【0087】
そして、コントローラ2には、このように転写高圧電源部60の転写出力端子Wpの遷移状態が、転写出力帰還信号Sfとして入力される。
【0088】
いま、転写高圧電源部60の転写出力電源部30は、定電流回路であり、転写出力帰還信号Sfにより、感光体20の帯電した領域が転写部位に到達すると、安定して検出できる時間に、転写ローラ23から感光体20に流れ込む流れ込み電流Itzを検出する。感光体電位を、Vopc、帯電した感光体20が転写部位に到達したときの転写電圧を、Vtzとすると、転写ローラインピーダンスRtは、以下の式4で求めることができる。
【0089】
(Vopc−Vtz−600)/Itz=Rt・・・式4
また、転写電圧Vtzは、次式5より算出することができる。
【0090】
(R5+R6)×Itz+Vf×2=Vtz・・・式5
なお、Vfは、ダイオードD1、D2の順方向電圧である。
【0091】
コントローラ2は、以降、上記同様に、この流れ込み電流Itzを考慮した転写制御信号SpのPWM制御を行って、転写電圧を制御する。
【0092】
したがって、転写高圧電源部60がクリーニングバイアス電源部を備えていない場合にも、流れ込み電流Itzに影響されることなく、確実に自励発振させることができ、転写性能を向上させることができる。
【0093】
そして、プリンタ装置1は、上述のように、用紙Pの種類等により抵抗値等が異なるので、定電流制御の場合には、用紙P毎に転写電流の設定値を可変制御し、定電圧制御の場合には、用紙P毎に転写電圧の設定値を可変制御する。
【0094】
なお、上記説明では、転写高圧電源部26の転写出力電源部30が自励発振式の定電流制御で転写出力である転写電流を出力する場合について説明したが、転写出力を生成して出力する転写出力電源部としては、定電流制御によるものに限らず、自励発振式の定電圧制御で転写出力として転写電圧を出力する電源部であってもよい。
【0095】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、転写ローラに供給する転写電流または転写電圧によって感光体上の現像剤像を被記録部材に転写する画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体に利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 プリンタ装置
2 コントローラ
3 ROM
4 RAM
5 通信I/F
6 操作部
7 作像部
8 定着部
9 光書き込み部
10 システムバス
20 感光体
21 帯電ローラ
22 現像ローラ
23 転写ローラ
24 帯電高圧電源部
25 現像高圧電源部
26 転写高圧電源部
30 転写出力電源部
31 平滑回路
R1 抵抗
32 駆動回路
33 平滑回路
Tr1 トランジスタ
T1 トランス
R2、R3、R5、R6 抵抗
C1、C2、C3 コンデンサ
Ap1 増幅器
R4 帰還抵抗
D1、D2 ダイオード
Tm1 1次巻線
Tmb ベース駆動巻線
Tm2 2次巻線
40 クリーニングバイアス電源部
41 平滑回路
42 クリーニングバイアス駆動回路部
43 平滑回路
50 帰還回路
T11 トランス
R11 抵抗
C11 コンデンサ
D11、D12 ダイオード
C12、C13 コンデンサ
R12、R13 抵抗
P 用紙
Sp 転写制御信号
Sc クリーニング制御信号
Sf 転写出力帰還信号
60 転写高圧電源部
R61 抵抗
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【特許文献1】特許4045413号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が現像剤によって現像された現像剤像を保持する感光体と、
入力される制御信号に応じて所定タイミングに所定目標値の転写電圧または転写電流を生成して出力端子から出力する転写電源手段と、
前記感光体に接触し前記転写電源手段の生成する転写電圧または転写電流を該感光体に供給して該感光体上の前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写ローラと、
前記転写ローラから前記転写電圧または前記転写電流が前記感光体に供給される前の該転写ローラと該感光体との間に流れる流れ込み電流を検出する電流検出手段と、
前記転写電源手段への前記制御信号を制御するとともに、該制御信号を前記流れ込み電流に基づいて補正する制御手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写電源手段は、前記制御信号に基づいて自励発振して前記転写電圧または前記転写電流を生成することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置は、前記転写電源手段の出力端子の出力電圧または出力電流を帰還信号として前記転写電源手段の前記制御信号の入力側に帰還させる帰還手段を備え、
前記転写電源手段は、前記制御信号と前記帰還信号に基づいて前記転写電圧または前記転写電流を制御し、
前記電流検出手段は、前記帰還信号に基づいて前記流れ込み電流を検出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写電源手段は、前記転写電圧または前記転写電流の出力タイミングの前の所定タイミングに該転写電圧または該転写電流とは逆特性の所定出力値のクリーニング電圧を前記出力端子から出力するクリーニング電源手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電流検出手段は、前記クリーニング電源手段が前記クリーニング電圧を前記出力端子から出力しているときの該出力端子に流れる電流に基づいて前記流れ込み電流を検出することを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置は、
前記感光体を一様に帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段によって一様に帯電された前記感光体に画像データに基づいて変調した書き込み光を照射して静電潜像を形成する光書き込み手段と、
静電潜像の形成された前記感光体に現像剤を供給して現像剤像を形成する現像手段と、
を備え、
前記電流検出手段は、前記感光体の前記帯電手段によって帯電された帯電領域が前記転写ローラと対向する状態のときの前記流れ込み電流を検出することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
静電潜像が現像剤によって現像された現像剤像を保持する感光体と、入力される制御信号に応じて所定タイミングに所定目標値の転写電圧または転写電流を生成して出力端子から出力する転写電源手段と、前記感光体に接触し前記転写電源手段の生成する転写電圧または転写電流を該感光体に供給して該感光体上の前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写ローラと、を備えている画像形成装置における画像形成制御方法であって、
前記転写ローラから前記転写電圧または前記転写電流が前記感光体に供給される前の該転写ローラと該感光体との間に流れる流れ込み電流を検出する電流検出処理ステップと、
前記転写電源手段への前記制御信号を制御するとともに、該制御信号を前記電流検出処理ステップで検出する流れ込み電流に基づいて補正する制御処理ステップと、
を有していることを特徴とする画像形成制御方法。
【請求項8】
静電潜像が現像剤によって現像された現像剤像を保持する感光体と、入力される制御信号に応じて所定タイミングに所定目標値の転写電圧または転写電流を生成して出力端子から出力する転写電源手段と、前記感光体に接触し前記転写電源手段の生成する転写電圧または転写電流を該感光体に供給して該感光体上の前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写ローラと、を備えている画像形成装置に搭載可能な画像形成制御プログラムであって、
前記画像形成装置の搭載するコンピュータに、
前記転写ローラから前記転写電圧または前記転写電流が前記感光体に供給される前の該転写ローラと該感光体との間に流れる流れ込み電流を検出する電流検出処理と、
前記転写電源手段への前記制御信号を制御するとともに、該制御信号を前記電流検出処理ステップで検出する流れ込み電流に基づいて補正する制御処理と、
を実行させることを特徴とする画像形成制御プログラム。
【請求項9】
請求項8記載の画像形成制御プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータが読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−204212(P2010−204212A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47277(P2009−47277)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】