説明

画像形成装置および画像処理方法

【課題】画像形成装置の経時劣化による濃度特性の変動に対し濃度補正処理を実施する際、補正制御方法が複数存在する場合でも最適な補正制御方法を指定できるようにする。
【解決手段】本発明における画像形成装置は、画像データに含まれる領域の属性を判定する判定手段と、前記判定手段により判定された領域の属性の色およびサイズを検知し、該検知した結果を用いて前記画像データを出力する際の補正制御方法を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された補正制御方法が第1の濃度補正制御の場合、レーザー強度を制御して、前記画像データを出力する際のレーザー強度を制御し、LUTを補正して前記画像データを出力する際の濃度補正を実行し、記決定手段により決定された補正制御方法が第2の濃度補正制御の場合、LUTを補正して、前記画像データを出力する際の濃度補正を実行する濃度補正を実行する補正手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像処理方法に関し、より具体的には画像形成において生産性を低下させずに安定した出力画像を得る画像形成装置および画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンタといった電子写真方式の画像形成装置には出力画像の階調を忠実に再現する階調再現性が求められている。このため、図7に示す特性503に示すような入力する画像信号と出力濃度との間で最適な画像が出力できる為の理想濃度特性を設定しておいて制御を行っている。しかし、複写機の設置環境・使用状況・経時劣化などにより濃度特性が、例えば図7の特性502に示すように変化する場合があり、その場合忠実な階調を再現した出力ができない。
【0003】
上記問題を解決するため、濃度変動分を補正するため、画像信号に対してγ補正を行い、LUT(ルックアップテーブル)を補正することにより、例えば図7のような補正濃度特性501を作成(501)し、これを適用する。これにより濃度特性を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、忠実な階調を再現するための他の方法として、感光体上に画像パターンを形成し、画像パターンを読み取り、読み取った情報に基づいて最適な濃度特性を得るためにアナログでレーザー強度を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
LUT補正による濃度補正制御は分解能が高く、細かい階調の補正が可能という長所がある。しかし、LUT補正による濃度補正制御は、最大値となる濃度値を下げる処理を行うと、文字の輪郭部分が画像データの濃度が下がり中間調色になる場合がある。この場合、ディザ等の中間調処理を実行した後に画像を出力すると、ギザギザしたように見えるジャギーが発生する恐れがある。出力した印刷物等の画像に発生したジャギーは、濃度安定性の欠如と同様にユーザにとっては好ましくない。
【0006】
一方、レーザー強度制御による濃度補正制御を行う場合、デジタルデータが保存されるのでLUT補正による濃度補正制御と異なりジャギーが発生する恐れが無い。しかし、一般にレーザー強度制御による濃度補正制御は、LUT補正による濃度補正制御と比較すると分解能が低く、細かな階調の調整が困難な場合がある。したがって、両社ともそれぞれ長所短所があり、いずれかのみを用いるだけでは適切な画像補正は困難である。このため、LUT補正による濃度補正制御およびレーザー強度制御による補正を用いて、濃度制御の双方を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−163967号公報
【特許文献2】特開2003−043761号公報
【特許文献3】特開2010−102317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし上記背景技術では、濃度変動に対する補正方法がLUT補正による濃度補正制御とレーザー強度制御による濃度補正制御のように複数使用できる場合でも、出力画像毎にどの濃度補正制御を実行したら最適な補正となるかを自動で設定できない。例えば、印刷ジョブ開始前にユーザが制御方法の設定を行い、印刷ジョブを開始後、ジョブ実行中は制御方法を変更する事が出来ないという課題があった。例えば、図9に示すようにジョブごとにいずれの補正制御を使用するか指定しなければならなかった。
【0009】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、濃度特性変動に対する補正処理にて、出力画像への弊害を抑え、ユーザが補正に対する負荷を軽減する技術を提供する事を目的とする。例えば、図10に示すように1ジョブの中で装置が自動で制御方法を選択して補正することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、画像データに含まれる領域の属性を判定する判定手段と、判定手段により判定された領域の属性の色およびサイズを検知し、検知した結果を用いて画像データを出力する際の補正制御方法を決定する決定手段と、決定手段により決定された補正制御方法が第1の濃度補正制御の場合、レーザー強度を制御して、画像データを出力する際のレーザー強度を制御し、LUTを補正して画像データを出力する際の濃度補正を実行し、決定手段により決定された補正制御方法が第2の濃度補正制御の場合、LUTを補正して、画像データを出力する際の濃度補正を実行する濃度補正を実行する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の手法を用いる事により、濃度特性の変動に対する補正処理にて画像の特徴に応じて適切にLUT補正による濃度補正制御、またはレーザー強度制御による濃度補正制御等の補正方法を自動で切り換えられる。よって、出力画像に対して最適な方法で、濃度変動の影響を抑える事が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係るデジタル複合機の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施例1に係るプリント時における画像形成装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例におけるコピージョブ時の濃度制御先指定を示した図である。
【図4】印刷中におけるトナー帯電量の変動を示したグラフである。
【図5】印刷中におけるトナー帯電量の変動を示したグラフである。
【図6】印刷中におけるトナー帯電量の変動を示したグラフである。
【図7】画像形成装置における濃度特性を示したグラフである。
【図8】画像形成装置における濃度特性を示したグラフである。
【図9】従来技術における1ジョブ内での濃度制御の制御方法について説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態における1ジョブ内での濃度制御の制御方法について説明する図である。
【図11】本発明の実施例におけるPDLジョブ時の濃度制御先指定を示した図である。
【図12】本発明の実施例におけるPDLジョブ時の濃度制御に関する設定の一例を示す図である。
【図13】コントラスト電位とレーザー強度の関係を示したグラフである。
【図14】実施例2に係るコピー時における画像形成装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図15】実施例3に係る、スムージング処理のフローを用いて濃度補正制御方法を決定する処理を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施例におけるエンジン部の概略を示した図である。
【図17】本発明の実施例におけるエッジ検出処理について示した図である。
【図18】本発明の実施例のエッジ検出処理における網点判定について示した図である。
【図19】本発明の実施例のエッジ検出処理におけるエッジ判定について示した図である。
【図20】本発明の実施例にて、スクリーン処理後にスムージング処理未実施時に発生したジャギーを示す図である。
【図21】本発明の実施例にて、スムージング処理後のジャギー改善例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。最初に本実施例に係る画像形成装置の構成について図1を用いて説明する。画像形成装置100は大きくコントローラ101、プリンタエンジン部102、ユーザが操作するUI部116および原稿を読み取る為の原稿読取装置117を備えている。また、画像データや設定したデータ等を保存可能な記憶装置118、一時的にデータを保存するメモリ119が搭載されている。記憶装置118は、ハードディスクやバックアップ用の電池が搭載されているSRAM等の電源断時でも記憶の保持が可能な媒体であれば、どの記憶装置を用いても構わない。
【0014】
ネットワークI/F120は、印刷データ等の受信や、画像データや制御データなどの送信を行う。累積判定値管理部129は、濃度補正制御方法を決定する時に用いる累積判定値(詳細は後述)を管理するモジュールである。また、PC等の外部装置121は、ネットワーク125を介して画像形成装置100と接続されている。外部装置121内のプリンタドライバ124は、画像形成装置100へ印刷データを送信する機能を備えている。コントローラ101は、CPU103と一連の画像処理を行う画像処理部104を搭載している。尚、本実施例では、コントローラ101は、コピージョブおよびプリントジョブの双方のジョブを実行できるが、各々用いるモジュールには異なるものもある。
【0015】
最初にプリントジョブ時のみに用いられるモジュールについて説明する。プリントジョブ時は、記憶用の画像データから画像処理部104が処理できるラスターが像を生成するため、本実施例ではインタプリタ105とレンダラ106とを用いるが、これに限られない。CPU103のインタプリタ105は、受信した印刷データのページ記述言語(PDL:Page Description Language)による記述を解釈し、レンダラ106が解釈できる言語に変換し、中間言語データを生成する。レンダラ106は、生成した中間言語データからラスター画像を生成する。画像処理部104は、生成したラスター画像もしくは原稿読取装置117で読み込んだ画像に対して画像処理を行う。
【0016】
次に、コピージョブ時のみに用いられるモジュールについて説明する。通常、プリントジョブ実行時は、予め生成された画像データに文字領域を識別する属性情報など種々の情報も含まれているため、基本的にそれらの情報を用いて本実施例の処理を実行できるが、コピージョブ実行時は別途情報を算出しなければならない。具体的には、コピージョブの実行時は、画像処理部104内のエッジ検出部107、色変換処理部108、色情報判定部127、スクリーン処理部112およびスムージング処理部126を用いる。
【0017】
ここで、エッジ検出部107は、画像における文字領域を把握する為に、文字の輪郭部分を抽出する機能を備えている。色変換処理部108は、原稿読取装置117で原稿読み取った際に生成されるR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)の画像信号値を、Y(イエロー)M(マゼンタ)C(シアン)K(ブラック)の色情報に変換する機能を備えている。また、色情報判定部127は、画像処理部104に送信された画像データのRGBの画像信号値から出力時に有彩色もしくは無彩色になるかの判定を画素単位で行う。さらに、スクリーン処理部112は、誤差拡散や高線数・低線数スクリーン等のディザ種のディザ処理を行う機能を備える。スムージング処理部126は、スクリーン処理部112でディザ処理後にエッジ検出部107で検出したエッジ部に対して、輪郭部分を中間色で塗りつぶして補正、滑らかに見せる処理を行う機能を備えている。
【0018】
最後にプリントジョブおよびコピージョブ実行時の両方で用いられるモジュールについて説明する。補正制御方法決定部128は、コピージョブ実行時ではエッジ検出部107と色情報判定部127との結果を元に、プリントジョブ実行時はインタプリタ105で抽出したオブジェクト情報を元に、ページ単位で濃度補正制御方法を決定する処理を行う。トナー消費量算出部109は、画像データから画像を印刷する上で必要なトナーの消費量を推測する機能、およびトナー補給量も確定する機能を備えている。このトナー消費量算出処理はページ単位で行う。
【0019】
LUT制御部110は、出力される印刷物の階調を維持する為に、入力する画像信号レベルと出力濃度とを対応させたLUTを管理しており、後述するプリンタエンジン部102における濃度特性の変動に応じてLUTを補正させる機能を備えている。なお、LUTは、CMYKそれぞれ一次元LUTとして保持し、LUT補正はデジタルの画像信号に対して処理を行う事を前提とする。
【0020】
次にプリンタエンジン部102について説明する。プリンタエンジン部102は、大きく現像器部111からレーザー強度制御部115までの画像形成に係る部分と、画像形成に係る部分に用紙を供給する為に用紙を格納している給紙部122、印刷した用紙を排紙する排紙部123に分けられる。プリンタエンジン部102のハード構成について図16を用いて説明する。
【0021】
プリンタエンジン部102は、ドラム型とされる電子写真感光体1100(以後、感光体と記載)を有し、感光体1100の図中矢印1120方向の回転に伴い、帯電手段たる一次帯電装置1106が、感光体1100の表面を一様に帯電させる。次いで一様に帯電した感光体1100の表面を、レーザースキャナー等の露光手段1105が画像情報に従って走査露光し、感光体1100に静電潜像を形成する。この静電潜像に応じて現像手段たる現像器部111が感光体1100に現像剤を供給し、感光体1100に現像剤による画像(トナー像)が形成される。トナー像は、形成後、ローラ1101および1102により回動する転写ベルト1103の表面に、転写帯電器1104で逆の電気に帯電させることによって転写される。転写されたトナー像は、定着機(不図示)によって定着され、排紙部123から排紙される。
【0022】
次に現像器部111について説明する。現像器部111は、トナーとキャリアとを蓄える容器1109およびそれらを撹拌するスクリュー1108を備える。スクリュー1108を駆動する事でトナーとキャリアを撹拌し、トナーを摩擦帯電させる。また、現像器部111は現像スリーブ1110を備えており、帯電したトナー及びキャリアをその表面に付着させながら回転し、感光ドラム上の静電潜像にトナーを提供する機能を備える。尚、本実施例では、プリンタエンジン部102は、C,M,Y,Kの色毎に現像器を持つようにするが、これに限られず本技術分野で知られた構成とすることができる。
【0023】
トナー帯電量推測部113は、前回のプリントで使用したトナー帯電量、トナー消費量算出部109にて算出されたトナー消費量(図4)およびトナー補給量(図5)を求める。更に、現像器部111内の容器に蓄えられている総トナー量、前回計測してから現時点までの時間間隔から現時点でのトナー帯電量(図6)を推測する機能を備えている。今回は現像器部111内のトナー帯電量の変動を連立微分方程式で近似して、出力時におけるトナー帯電量を推測するが、トナー帯電量に推測方法は別の方法を用いても良い。
【0024】
濃度変動量算出部114は、トナー帯電量推測部113にて推測したトナー帯電量、画像形成装置100内の温度・湿度、キャリアの状態、トナー濃度から濃度変動量を算出する。ここで温度・湿度の検出については、温度は赤外線温度検出、湿度は電子式・静電容量式での湿度検出等、検出が可能であればどの方法を用いても良い。トナー濃度の検出は、光学反射光量検知方式やインダクタンス検知方式のセンサ等を利用する事で可能であり、本実施例では、トナー濃度の検出ができれば手段は問わない。キャリアの状態検知は、プリント枚数のカウント値といった過去の出力状況から推測する事が可能である。カウント値は出力する度に記憶装置118に保存するようにしておけば良い。上記から濃度変動量算出部114は、トナー帯電量の変動に伴う濃度特性の変動量(図8の504)を算出する。
【0025】
レーザー強度制御部115は、トナー帯電量の変動に伴う現時点での濃度特性(504)ではなく、最適な濃度特性(503)で出力する為にレーザー強度を制御する機能を備えている。図13に示すように画像形成装置100は、最適な濃度を形成する為のコントラスト電位とレーザー強度の最適な値(801)とを予め設定している。ただし、図13における最適なレーザー強度値は、トナー帯電量の変動、感光体の劣化、帯電および露光ムラ、或いは感光体1100の表面電位を検知する感光体表面電位検出部1107の読取誤差等から常に変動する場合がある。よって最適な出力を可能にする為にその都度レーザー強度を制御する。
【0026】
図2を用いて、プリント時における本発明の処理フローを説明する。プリンタドライバ124は、ユーザが印刷するデータの印刷設定を受け付けて設定を行う(S221)。印刷設定を終えた後、ユーザによって印刷開始指示をうけた画像形成装置100は、印刷ジョブをネットワークI/F120を介して受信する(S222)。この際、画像形成装置100が受信した画像信号はR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)の色空間、もしくはY(イエロー)M(マゼンタ)C(シアン)K(ブラック)の色空間のどちらでも良い。受信した画像信号に対してインタプリタ105は、補正制御領域である画像中の文字・グラフィック・イメージ等の属性を確認する為にオブジェクト抽出処理、すなわち制御対象となる領域判定を行う(S223)。オブジェクト抽出処理が終了すると、インタプリタ105はオブジェクト抽出後に抽出したオブジェクトが、文字オブジェクトか細線であるかの確認(S224)、および無彩色で構成されているかの確認を行う(S225)。
【0027】
ここで、文字・細線であるか、および無彩色であるかを確認する理由について説明する。一般に、写真等のイメージ属性の画像で黒を表現するときは、K(ブラック)トナーだけでなくY(イエロー)M(マゼンタ)C(シアン)トナーも用いて出力する。イメージ画像でKトナー以外のトナーを用いるのは、他色のトナーを併せて用いる事で黒の表現の幅を広げる事が可能になるからである。一方、文字・細線属性の画像については、黒の表現の幅が広がる長所より、画像形成装置の物理特性によるレジずれによる色ズレの発生の可能性が高くなるという問題がある為、Kトナーのみを用いて黒を表現する。また、文字や線がギザギザしたように見えるジャギーは、単色で出力している部分で発生する可能性が高い為、本実施例では先ず、画像中の文字・細線部の部分が無彩色で構成されているか否かの確認を行う。抽出したオブジェクトが無彩色の文字または細線の場合は、図12に示す評価点(詳細は後述)に基づいて判定のための判定値を取得し、この値を累積する。
【0028】
図12はジャギー発生の確率に基づいて算出し、属性ごとにジャギーが発生する可能性を数値で示した評価点を表した表である。すなわち、ジャギーは黒単色で出力する文字の場合でも文字のサイズによって発生する確率は変動するので、それぞれの場合にジャギー発生に影響を及ぼす可能性に基づいて評価点を定める。例えば、文字が小さいほどジャギーの発生する可能性が高いので、高い評価点を付与する。
【0029】
細線も同様にその幅によってジャギー発生の確率が異なるので、線幅によって評価点を変えるようにする。具体的には、図12の表中、評価点が高い程ジャギー発生の可能性が高いので、オブジェクトが黒文字単色の8ptの文字では評価点を5とし、細線オブジェクトの幅が標準の場合では評価点を1とする。以上の評価点を画像の各部分について取得して、各評価点を累積した判定値は累積判定値管理部129に保存する。
【0030】
各属性に対応する評価点は、本実施例では固定にしているが可変にしても良い。累積した判定値を保存した後、インタプリタ105は、そのページにおけるオブジェクト抽出が全て完了しているかを確認し(S227)、完了していなければ引き続きS223からのフロー処理を行う。また、S224で文字または細線ではないと判定、もしくはS225で無彩色でないと判定した場合でも引き続きインタプリタ105は、S223からのフロー処理を行う。
【0031】
処理中のページにおける全てのオブジェクトを抽出し、抽出したオブジェクトに対する判定値の取得が完了した後、補正制御方法決定部128は累積判定値管理部129から累積判定値を読み出し、累積判定値が閾値を超えているかの確認を行う(S228)。
【0032】
図3に示すように、累積判定値が閾値th1未満である場合、補正制御方法決定部128は、LUT補正による濃度補正制御の実施を決定すべく、S236へ進む。
一方、累積判定値が閾値th1以上th2以下である場合、補正制御方法決定部128は、レーザー強度制御とLUT補正による濃度補正制御の実施を決定すべく、S229へ進む。ちなみに、この閾値th1、th2は予め決められた値であり、ユーザーが設定を変更することも可能である。
【0033】
S229へ進み、濃度補正制御方法にレーザー強度制御が含まれる場合、コントローラ101は、レーザー強度制御部115にレーザー強度を制御して濃度補正をする旨を通知する(S230)。レーザー強度を制御して濃度補正制御する旨の通知を受けたレーザー強度制御部115は、予め濃度変動量算出部114が算出した推測濃度変動量を元にレーザー強度の出力値を設定する(S231)。
【0034】
その後、濃度変動量算出部114は、レーザー強度を制御して濃度補正を実行した後に再度濃度変動量を算出し、コントローラ101に通知する。その後、色変換処理部108は、RGB画像信号値をYMCK画像信号値に色変換する処理を行う(S232)。色変換処理後、LUT制御部110は、コントローラ101が受信した濃度変動量を元にLUT補正を行なうことにより濃度補正処理を行う(S233)。
【0035】
S236へ進み、LUT補正のみで濃度補正を行う場合、色変換処理部108は、RGB画像信号値をYMCK画像信号値に色変換処理を行う(S237)。そして、LUT制御部110は、コントローラ101が受信した濃度変動量を元に濃度補正処理を行う(S238)。その後、画像処理部104は、記憶装置118に画像データをスプールし(S234)、算出した累積判定値を0にリセットする(S235)。
【0036】
以上のS221〜S235のフローはページ毎に実施される。本実施例では無彩色に限定したが、一定値以上の輝度値を持つデータに適用しても良い。
【0037】
以上、本実施例により、プリント時におけるトナー帯電量の変動に伴う濃度変動問題に対して、複数ある濃度補正制御方法のうちから、最適な濃度補正制御方法を自動で選択し、最適な濃度補正を実施する事が可能になる。また、ユーザは濃度変動問題により生じる工数を削減する事が可能になる。
【0038】
[実施例2]
実施例1では、プリントジョブ実行時における濃度補正制御方法の自動設定について説明した。本実施例ではコピージョブ実行時における濃度補正制御方法の自動設定について説明する。コピージョブでは、元々ラスター化された画像が扱われる為、プリントジョブ実行時と異なりオブジェクト抽出した結果から濃度補正制御方法の自動設定ができない。よってラスター化された画像に対しても本発明の手法が適用できる事を説明する。
【0039】
図14を用いて、コピー時における本実施例の処理フローを説明する。原稿読取装置117にユーザによって原稿が載置されるとともに、UI部116は印刷部数・サイズ・給紙段指定等の印刷時における各種設定を、本技術分野で知られたインタフェースで受け付ける。次にUI部116は、ユーザが印刷開始を指示すると、印刷開始の指示がされたと認識し、その旨を原稿読取装置117に通知し(S201)、原稿読取装置117は原稿を読み取り、毎ページ・画素毎にRGB値を有する画像信号を生成する(S202)。本実施例で用いられる原稿読取装置117は、原稿読取時にR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)のラインセンサを備えており、ラインセンサ毎にRGBの色成分信号を生成する機能を備えているがこれに限られない。
【0040】
原稿読取装置117は、生成したRGB画像信号を、コントローラ101内にある画像処理部104に送信する(S203)。画像処理部が受信したRGB信号に対して、エッジ検出部107はエッジ検出処理を行う(S204)。エッジ検出処理は、原稿画像に含まれる画像の特徴に応じて最適な画像処理を施す為に、原稿画像の特徴を抽出して像域属性を示すフラグデータを生成するものである。例えば、原稿中には通常、連続階調のフルカラーの写真領域や、黒一色の文字領域、あるいは新聞印刷のような網点印刷領域等、様々な画像領域が混在している。これら異なる種類の領域を一律に同一の画像処理手順で処理して出力すると、その出力画像は一般に好ましい画質が得られない場合が多い。そこでエッジ検出処理では、画像処理部が受信したRGB信号を用いて、原稿画像中に含まれる各種領域ごとに画像データの属性を検出し、それを識別する為のフラグデータを生成する。
【0041】
エッジ検出処理について、図17〜図19を用いて説明する。エッジ検出部107は、入力RGB信号1201を用いて平均濃度演算を行い(平均濃度演算1202)、入力信号1201について注目画素を中心とするM×N領域(M、Nは自然数)の平均値AVEを算出する。この平均濃度計算とともにエッジ検出部107は、入力信号1201を用いてエッジ強調処理を行う(エッジ強調処理1203)。ここでは注目画素周辺領域のデータを参照し、M×N領域(M、Nは自然数)にて注目画素のエッジ強調処理を行い、強度の異なる2種類のエッジ強調信号EDG1およびEDG2を算出する。エッジ検出部107は、平均濃度演算1202での平均濃度演算と、エッジ強調処理1203の結果とを用いて網点判定(網点判定1204)行い、またエッジ強調処理1203で生成した強調信号EDG2を用いてエッジ判定(エッジ判定1205)を行う。
【0042】
網点判定1204について、図18を用いて説明する。網点判定1204では、平均濃度演算1202から算出されたAVEと、エッジ強調処理1203から算出されたEDG1を用いて二値化処理を行う(二値化処理1301)。二値化処理1301では、ある係数を乗算した後、両者を比較して、二値化信号を生成する。たとえば、
A×EDG1 < AVE ならば、 二値化信号=1 (Aは実数)
A×EDG1 ≧ AVE ならば、 二値化信号=0 (Aは実数)
である。
【0043】
各画素について得られる二値化信号は、1×1孤立量算出1302、2×2孤立量算出1303、3×3孤立量算出1304、4×4孤立量算出1305の各演算モジュールに入力される。ここでは、二値化処理の結果を用い、注目画素がどの程度孤立しているかを判断する。たとえば、1×1孤立量算出1302で行われる孤立量の算出は、注目画素を中心位置とする3×3領域の二値化信号を参照する。参照した値が縦、横、斜め、各方向に対して、0、1、0と変化していた場合に各方向に対する孤立量を1とし、これらの合計を注目画素に対する孤立量とする。孤立度が高い場合には、孤立量は4となる。孤立していない場合は0である。これは、網点ドットが1画素で構成される場合、すなわち、低濃度網点画素、または線数の高い網点に対して孤立量が比較的大きくなるという特徴を有する。同様に、2×2孤立量算出1303、3×3孤立量算出1304、4×4孤立量算出1305の各演算モジュールについても、所定のパターンと比較して孤立量を算出する。
【0044】
算出された孤立量は、1×1孤立量加算1306、2×2孤立量加算137、3×3孤立量加算1308、4×4孤立量加算1309の各演算モジュールにおいて、所定領域で加算される。たとえば1×1孤立量加算1306では、9×9の領域にて孤立量を加算する。1×1孤立量加算1306、2×2孤立量加算1307、3×3孤立量加算1308、4×4孤立量加算1309にて算出された加算値は、網点判定1310に入力される。ここでは、それぞれの入力に対して閾値処理を行い、それらの結果を多数決や論理演算などの処理を行うことで、網点信号1311を生成する。網点ならば、AMI=1を出力する。
【0045】
次にエッジ判定(S1205)について、図19を用いて説明する。平均濃度計算(S1202)で算出された平均値AVE、およびエッジ強調処理(S1203)で算出されたEDG2の結果が、濃度差判定1401に入力される。このとき、補正処理1403から出力されるEDG2と周辺領域の濃度(すなわち、AVE)との差の大きさの判定を行い所定の濃度差よりも大きい場合は1を、小さい場合は0を出力する。
AVE−A×EDG2 > B ならば、 濃度差信号=1
A×EDG2−AVE > C ならば、 濃度差信号=1
それ以外のとき、濃度差信号=0 (Aは実数、B、Cは実数または整数)
【0046】
濃度差判定1401から出力される濃度差信号は、孤立判定1402に入力され、孤立点の除去がなされる。たとえば、濃度差信号を7×7で参照し、最外周の位置の画素の濃度差信号=1が存在しない場合には、内側の5×5領域の濃度差信号を強制的に0とすることで、孤立点を除去するものである。
【0047】
孤立判定1402から出力される孤立判定信号は、補正処理1403に入力され、不連続部分の補正がなされる。例えば、3×3領域で注目画素(3×3の中央)をはさむ画素(前後、左右、斜め)の孤立判定信号が1の場合、注目画素が0ならば、注目画素の値を1に補正する。これにより、線画の欠けている部分の連続度が増し、また線画も滑らかな、エッジ信号1404が生成される。エッジならば、EDGE=1を出力する。
【0048】
網点判定1204およびエッジ判定1205から出力される網点信号1311およびエッジ信号1404の結果は、文字判定1206に入力される。ここでは画素単位に処理され、網点ではなく(AMI=0)、エッジである(EDGE=1)画素を文字と考え、文字信号1207を生成する。エッジ検出部107がエッジ部を検出した後、色情報判定部127は、入力のRGB信号を確認し、有彩色か無彩色かを画素毎に判定する(S205)。
【0049】
補正制御方法決定部128は、確認した画素がエッジ部かつ無彩色であるか否かを確認する(S206)。エッジ部かつ無彩色の画素でないと判定された場合はS204に戻る。確認した画素がエッジ部かつ無彩色の画素である場合、補正制御方法決定部128は、判定値値を増分・累積し、判定値管理部129に保存する(S207)。判定値を保存後、ページの全ての画素に対する判定値算出が完了しているか否かを確認し(S208)、完了していなければS204に戻る。
【0050】
全ての画素に対する判定値算出が完了している場合、補正制御方法決定部128は累積判定値管理部129に保存されている累積判定値を読み出し、累積判定値が閾値を超えているかを確認する(S209)。
【0051】
図7に示すように、累積判定値が閾値th1未満である場合、補正制御方法決定部128は、LUT補正による濃度補正制御の実施を決定すべく、S210へ進む。
一方、累積判定値が閾値th1以上th2以下である場合、補正制御方法決定部128は、レーザー強度制御とLUT補正による濃度補正制御の実施を決定すべく、S211へ進む。ちなみに、この閾値th1、th2は予め決められた値であり、ユーザが設定を変更することも可能である。レーザー強度を制御して濃度補正を行う場合、コントローラ101はレーザー強度制御部115にレーザー強度を制御して濃度補正する旨を通知する(S212)。
【0052】
補正制御する旨の通知を受けたレーザー強度制御部115は、予め濃度変動量算出部114が算出した推測濃度変動量を元にレーザー強度の出力値を設定する(S213)。その後、濃度変動量算出部114はレーザー強度の補正後に再度濃度変動量を算出し、コントローラ101に通知する。その後、色変換処理部108は、RGB画像信号値をYMCK画像信号値に色変換する処理を行う(S214)。色変換処理後、LUT制御部110は、コントローラ101が受信した濃度変動量を元にLUT補正による濃度補正処理を行う(S215)。その後、累積判定値を0にリセットする(S216)。
【0053】
以上のフローはページ単位で実施される。本実施例ではコピージョブを例に用いて説明したが、ラスター画像をダイレクトでプリントする等、オブジェクトを抽出できないようなジョブであっても適用することが可能である。
【0054】
以上、本実施例によりコピー時においてもトナー帯電量の変動に伴う濃度変動問題に対して最適な濃度補正制御方法を自動で選択し、濃度補正を実施する事が可能になり、ユーザは濃度変動問題により生じる工数の負荷を削減する事が可能になる。更に本実施例により、コピージョブのようなオブジェクト情報を有しないデータを扱う場合でも本発明を適用する事ができる。
【0055】
[実施例3]
実施例1および2では画像信号の特性に基づき、最適な濃度補正を行なう場合の制御方法を自動で決定し、決定された制御方法にて濃度補正を行う方法について説明した。本実施例ではスムージング処理を考慮して、濃度補正制御方法の自動判定の精度を向上させる例について説明する。
図15を用いて本実施例のフローを説明する。
【0056】
図15に示すフローは、実施例1で用いた図2のフローをベースとしており、以下異なる点のみを説明する。S223のオブジェクト抽出後、インタプリタ105は、プリントジョブにおいてスムージング処理が行われるか否か、すなわちスムージング判定を行う(S1001)。スムージング処理は、中間調処理により顕在化したスクリーン構造によって現れるジャギーを平滑化し、解消する処理である。例えば、図20のジャギー1501が発生した部分に対して、図21に示すように図20と同じ入力画像に対してスクリーン処理後スムージング処理が行われると1601のようにジャギーが解消される。
【0057】
スムージング処理が行われる場合、インタプリタ105は、S228で用いる閾値を変更する(S1002)。閾値を変更するのは以下の理由のためである。
【0058】
すなわち、スムージング処理が行われる場合、ジャギー発生を低減できる。閾値を上げてLUT補正による濃度補正制御する頻度をより多くすることで、LUT補正による濃度補正制御を実行してもジャギー発生を抑える事が可能になるからである。スムージング処理が行われない場合は閾値の変更は行わない。
【0059】
本実施例ではスムージング処理を用いて、濃度補正制御方法指定の精度向上を計ったが、別の画像処理方法を用いても良い。本実施例により、エッジ検出結果に加え他の画像処理の結果を、濃度補正制御方法の決定の判定基準とする事で、濃度補正制御方法決定の精度を向上させることができる。
【0060】
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。また、本発明は、複数のプロセッサが連携して処理を行うことによっても実現できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに含まれる領域の属性を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された領域の属性の色およびサイズを検知し、該検知した結果を用いて前記画像データを出力する際の補正制御方法を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された補正制御方法が第1の濃度補正制御の場合、レーザー強度を制御して、前記画像データを出力する際のレーザー強度を制御し、LUTを補正して前記画像データを出力する際の濃度補正を実行し、
前記決定手段により決定された補正制御方法が第2の濃度補正制御の場合、LUTを補正して、前記画像データを出力する際の濃度補正を実行する濃度補正を実行する補正手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記画像データの画像形成を行うためのプリントジョブからオブジェクト情報を抽出して領域を判定する事を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記判定手段は、ラスター画像からエッジ部を検出して領域を判定する事を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成に関するジョブにスムージング処理が含まれているか否かを判定するスムージング判定手段をさらに備え、
前記スムージング判定手段によりスムージング処理が含まれると判定されたときは、前記第1の濃度補正制御でレーザー強度を制御する際に前記スムージング処理が含まれないときよりも大きな閾値を用いる事を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記判定手段では、判定の対象である領域が文字オブジェクトであるか細線オブジェクトであるかエッジを有するか判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像データを出力する際のトナー帯電量を推測し、該推測より取得する濃度特性の変動量を用いて前記レーザー強度を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像データに含まれる領域の属性を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより判定された領域の属性の色およびサイズを検知し、該検知した結果を用いて前記画像データを出力する際の補正制御方法を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された補正制御方法が第1の濃度補正制御の場合、レーザー強度を制御して、前記画像データを出力する際のレーザー強度を制御し、LUTを補正して前記画像データを出力する際の濃度補正を実行し、前記決定ステップにより決定された補正制御方法が第2の濃度補正制御の場合、LUTを補正して、前記画像データを出力する際の濃度補正を実行する濃度補正を実行する補正ステップと
を備えたことを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
画像形成装置に、
画像データに含まれる領域の属性を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより判定された領域の属性の色およびサイズを検知し、該検知した結果を用いて前記画像データを出力する際の補正制御方法を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された補正制御方法が第1の濃度補正制御の場合、レーザー強度を制御して、前記画像データを出力する際のレーザー強度を制御し、LUTを補正して前記画像データを出力する際の濃度補正を実行し、前記決定ステップにより決定された補正制御方法が第2の濃度補正制御の場合、LUTを補正して、前記画像データを出力する際の濃度補正を実行する濃度補正を実行する補正ステップと
を備えた画像形成方法を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−25186(P2013−25186A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161084(P2011−161084)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】