説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】シリアル転送によりビデオデータを転送してトナー像を形成する画像形成装置および画像形成方法において、適切な転送タイミングで特殊符号を転送し、特殊符号のシリアル転送による影響を容易にコントロールするとともに、特殊符号のシリアル転送による影響を抑制して良好な品質でトナー像を形成する。
【解決手段】特殊符号SCをシリアル転送する周期がデータリクエスト周期Taと同一値に設定されているため、各リクエスト信号に応じて出力されるビデオデータのいずれにおいても、特殊符号SCはライン長手方向において固定された位置となる。したがって、特殊符号のシリアル転送による影響を容易にコントロールすることができる。また、非画像領域に対応するタイミング(時刻Tsc)で特殊符号SCをシリアル転送しているため、特殊符号対応ドットは常に非画像領域に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の発光素子を有するラインヘッドにより感光体の表面を露光して静電潜像を形成し、該静電潜像を現像してトナー像を形成する装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から射出される光ビームにより感光体の表面を走査露光することで、感光体表面に静電潜像を形成する画像形成技術が知られている。しかしながら、近年では、小型でありながら十分な光量を得られるLED(発光ダイオード)や有機EL(エレクトロルミネセンス)素子などの発光素子が開発されてきている。そこで、これらの発光素子を露光光源として用いることで走査光学系を排し、装置の小型化およびプロセスの高速化を図る技術が研究されている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、列状に並べた多数の有機EL素子を有するラインヘッドを感光体に対向配置し、一列をなす各EL素子を一斉に点灯させることによって1ドットライン分の潜像を形成する。
【0003】
【特許文献1】特開2005−212291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなラインヘッドを用いた画像形成技術では、所望の画像に対応する潜像を感光体表面に形成すべく、信号処理回路により画像信号からビデオデータを生成した後、該ビデオデータに基づいてヘッド制御回路がラインヘッドの点灯制御を行う。より具体的には、信号処理回路は画像信号に対してハーフトーン処理や階調補正等の信号処理を施してトナー色に対応するビデオデータを生成する。そして、信号処理回路は、ヘッド制御回路からのデータリクエスト信号を受けると、上記のようにして生成したビデオデータをヘッド制御回路に送信する。かかるビデオデータを受信したヘッド制御回路は、該ビデオデータに基づいてラインヘッドの点灯制御を実行するとともに、次のビデオデータを要求すべくデータリクエスト信号を信号処理回路に出力する。
【0005】
ところで、ビデオデータ等の転送方式として例えばパラレル方式を採用した場合には、配線数が増大し、インターフェースコストを押し上げる主要因のひとつとなってしまう。また、パラレルにデータ転送を行う場合、信号線同士でのデータのずれや不揃いが発生し、また信号線同士が電圧の影響を与え合うクロストーク現象が生じることがある。そのため、高速データ転送が困難であった。そこで、近年、画像形成装置におけるビデオデータの転送方式として、PCI Express(登録商標)やSerial ATA等の高速シリアルバスを用いたシリアル転送が提案されている。
【0006】
これらのシリアル転送を採用した装置では初期化やタイミング再調整などを目的として特殊符号を転送することが要求される。例えば、この種のシリアル転送で用いられる特殊符号としては、いわゆるKキャラクタまたはKコードと称される符号がある。したがって、画像形成装置においても、上記のようにデータリクエスト信号をトリガーとしてビデオデータをシリアル転送するとともに、ビデオデータとは別個に特殊符号を転送しなければならない。そのため、特殊符号の転送タイミングが画像品質に影響を与えることがある。しかしながら、従来においては、特殊符号の転送タイミングについて全く考慮されておらず、特殊符号のシリアル転送による影響をコントロールすることができなかった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、シリアル転送によりビデオデータを転送してトナー像を形成する画像形成装置および画像形成方法において、適切な転送タイミングで特殊符号を転送し、特殊符号のシリアル転送による影響を容易にコントロールすることを第1目的とする。
【0008】
また、この発明は、上記第1目的に加え、特殊符号のシリアル転送による影響を抑制して良好な品質でトナー像を形成することを第2目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる画像形成装置は、感光体と、複数の発光素子が列状に配列されたラインヘッドにより感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、画像形成指令に含まれる画像信号に対して信号処理を施してビデオデータを生成するメインコントローラと、ラインヘッドの点灯を制御するヘッドコントローラとを備え、ビデオデータを含む信号をメインコントローラからヘッドコントローラにシリアル転送する一方、受信した信号からビデオデータを取り出して該ビデオデータに基づき画像信号に対応する静電潜像を感光体に形成し、該静電潜像を現像手段により現像してトナー像を形成する画像形成装置において、上記第1目的を達成するため、ヘッドコントローラは1ライン分のビデオデータを送信させるためのデータリクエスト信号をメインコントローラに出力する一方、メインコントローラはデータリクエスト信号をトリガーとして1ライン分のビデオデータを出力するとともに、データリクエスト信号の周期に対する整数倍もしくは(1/整数)倍の周期で特殊符号をシリアル転送することを特徴としている。
【0010】
また、この発明にかかる画像形成方法は、感光体と、複数の発光素子が列状に配列されたラインヘッドにより感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、画像形成指令に含まれる画像信号に対して信号処理を施してビデオデータを生成するメインコントローラと、ラインヘッドの点灯を制御するヘッドコントローラとを備えた画像形成装置を用いて画像信号に応じた潜像を感光体に形成し、該静電潜像を現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、上記第1目的を達成するため、1ライン分のビデオデータを送信させるためのデータリクエスト信号をメインコントローラに出力する工程と、データリクエスト信号をトリガーとして1ライン分のビデオデータを出力し、該ビデオデータを含む信号をメインコントローラからヘッドコントローラにシリアル転送する工程と、受信した信号からビデオデータを取り出して該ビデオデータに基づき画像信号に対応する静電潜像を感光体に形成する工程と、静電潜像を現像する工程と、データリクエスト信号の周期に対する整数倍もしくは(1/整数)倍の周期で特殊符号をシリアル転送する工程とを備えたことを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明(画像形成装置および方法)では、1ライン分のビデオデータを送信させるためのデータリクエスト信号が所定の周期(以下「データリクエスト周期」という)でメインコントローラに与えられる。すると、メインコントローラはデータリクエスト信号をトリガーとして1ライン分のビデオデータを出力し、該ビデオデータを含む信号をヘッドコントローラにシリアル転送する。また、この発明では、ビデオデータとは別個に特殊符号がシリアル転送される。しかも、特殊符号を転送するタイミングがビデオデータの転送タイミング、つまりトナー像を構成するドットを形成するためのデータを転送しているタイミングと一致すると、該ドットを示すデータが特殊符号に置換されてしまう。このように本発明では特殊符号がビデオデータに優先してシリアル転送される。したがって、1ライン分のビデオデータのうち特殊符号は本来のデータではなく、特殊符号に対応するドット(以下「特殊符号対応ドット」という)が形成される。
【0012】
そこで、本発明では、特殊符号をシリアル転送する周期がデータリクエスト周期に対する整数倍もしくは(1/整数)倍の周期に設定されている。したがって、各データリクエスト信号に応じて出力されるビデオデータのいずれにおいても、特殊符号は固定された位置となる。したがって、特殊符号のシリアル転送による影響を容易にコントロールすることができる。
【0013】
また、このようにビデオデータに対する特殊符号の位置が固定化されるため、以下のような対策を講じることによって特殊符号のシリアル転送による影響を抑制して良好な品質でトナー像を形成することができる。例えば感光体表面には画像信号に対応する静電潜像を形成すべき有効画像領域が設けられ、この有効画像領域に所望のトナー像が形成される。一方、感光体表面のうち有効画像領域以外の表面領域は非画像領域となっている。そこで、非画像領域に対応するタイミングで特殊符号をシリアル転送するように構成してもよく、これによって特殊符号対応ドットは常に非画像領域に形成されることとなり、トナー像に対する特殊符号の影響を完全に排除することができる。また、このように非画像領域に対応するタイミングで特殊符号をシリアル転送する場合には、特殊符号をシリアル転送する周期をデータリクエスト周期に対する整数倍に設定するのが望ましい。特に、データリクエスト信号の周期と同一周期で特殊符号をシリアル転送するように構成する、つまり上記整数値を1に設定すると、各データリクエスト信号に対して特殊符号を1回シリアル転送させることができる。
【0014】
また、受信した信号に含まれる特殊符号に基づき所定の処理を行うとともに、該特殊符号に近接するビデオデータの中間調データを求め、該特殊符号を該中間調データに置換するように構成してもよい。このように特殊符号による所定の処理が行った時点ではビデオデータの一部が特殊符号に置換されており、そのままラインヘッドの点灯を制御すると、特殊符号対応ドットが形成されてしまう。しかしながら、上記のように特殊符号が中間調データに置換されると、特殊符号対応ドットと該特殊符号対応ドットに近接するドットが近似したトナー濃度レベルとなる。したがって、特殊符号対応ドットの位置でトナー濃度が連続的なものとなり、トナー像の画質低下を効果的に防止することができる。例えば、特殊符号の前後に隣接するビデオデータの平均値を上記中間調データとしてもよく、これにより連続性が確実に確保される。
【0015】
また、上記したように本発明によれば、ビデオデータに対する特殊符号の位置が予め特定されることとなるため、信号処理として実行されるスクリーン処理を工夫して特殊符号対応ドットによる影響を抑制することができる。すなわち、特殊符号に近接するビデオデータと特殊符号から離れたビデオデータとでスクリーン処理を相違させ、これによって特殊符号対応ドットの形成位置においてトナー濃度が急激に変化するのを抑制し、良好な品質でトナー像を形成することができる。
【0016】
また、データリクエスト信号の周期を求め、該データリクエスト信号の周期に基づき特殊符号の出力周期を調整するように構成してもよい。これにより、特殊符号の出力周期を高精度に設定することができ、より確実に画像品質を良好に保つことができる。また、画像の解像度が変更されたり、画像を転写する記録材の種類が変更されるなどの画像形成条件が変更されると、データリクエスト信号の周期変更が必要となる場合がある。そこで、データリクエスト信号の周期が変更されると、該変更後のデータリクエスト周期に対応した周期で特殊符号を出力するように構成するのが望ましい。
【0017】
また、カラー画像を形成するために、感光体、露光手段および現像手段を有する画像形成ステーションを複数設けた画像形成装置では、中間転写体の移動方向に互いに異なる転写位置で各画像形成ステーションがそれぞれ互いに異なる色のトナー像を中間転写体上に転写することで中間転写体上で各トナー像を重ね合わせてカラー画像を形成する。このようなカラー画像形成装置において、各トナー色についてデータリクエスト信号が出力され、ビデオデータが出力される。したがって、全トナー色について特殊符号を出力してもよい。また、各トナー色のビデオデータを1対のシリアル信号でヘッドコントローラに転送する場合には、複数のトナー色のうち特定色のビデオデータに対応して特殊符号を出力してもよい。すなわち、このように構成された装置では、特定色のビデオデータに対応して特殊符号を出力すると、該特殊符号は全トナー色のビデオデータのシリアル信号に含まれることとなる。そのため、特殊符号対応ドットの影響を抑えることができる。なお、特定色としてはイエロー、つまり電子写真分野で使用するトナー色のうち最も人間の目に認識し難い色成分を用いるのが望ましい。というのも、特殊符号対応ドットが最も目立ちにくくなるためである。
【0018】
さらに、上記のようなカラー画像形成装置においては、信号処理としてスクリーン処理を施すことが多く、各トナー色間でのスクリーン処理を調整してもよい。すなわち、各トナー色におけるスクリーン処理を互いに相違させて特殊符号対応ドットの影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置における画像形成ステーションの配置を示す図である。さらに、図3は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCがエンジンコントローラECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0020】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0021】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0022】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21(感光体)が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド(露光手段)29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト(中間転写体)81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0023】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0024】
ラインヘッド29は、感光体ドラム21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0025】
図4はラインヘッドの構造を示す図である。なお、以下の説明においては、図1の紙面奥から手前側に向かう方向をX方向とする。すなわち、X方向は、感光体ドラム21の回転軸に平行な方向であり、かつ感光体21ドラム表面の移動方向および転写ベルト81の移動方向D81に直交する方向である。ラインヘッド29では、露光光源となる複数のLED(発光ダイオード)素子がX方向に配列されてなるLEDアレイ293が、長尺のハウジング中に保持されている。ベース基板294上のLEDアレイ293は、同じベース基板294上に形成されたドライバIC295により駆動される。ヘッドコントローラHCからビデオ信号が与えられると、該ビデオ信号に基づきドライバIC295が作動してLEDアレイ293に設けられたLED素子が点灯する。屈折率分布型ロッドレンズアレイ296は結像光学系を構成し、LED素子の前面に配置される屈折率分布型ロッドレンズ297を俵積みしている。ハウジングは、ベース基板294の周囲を覆い、感光体ドラム21に面した側は開放する。このようにして、屈折率分布型ロッドレンズ297から感光体ドラム21に光線を射出する。これによって、ビデオ信号に対応して感光体ドラム21に静電潜像が形成される。
【0026】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0027】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0028】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0029】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され駆動ローラ82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0030】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0031】
いわゆるタンデム方式の画像形成装置では、感光体ドラム21から転写ベルト81にトナー像が一次転写される一次転写位置は、各画像形成ステーションごとに異なった位置となる。この実施形態においては、イエロー用画像形成ステーション2Y、マゼンタ用画像形成ステーション2M、シアン用画像形成ステーション2Cおよびブラック用画像形成ステーション2Kが転写ベルト81の移動方向に沿ってこの順番に配置されている。したがって、イエロー一次転写位置TR1yとマゼンタ一次転写位置TR1mとは距離Lym、マゼンタ一次転写位置TR1mとシアン一次転写位置TR1cとは距離Lmc、シアン一次転写位置TR1cとブラック一次転写位置TR1kとは距離Lckだけ離隔している。
【0032】
一方、モノクロモード実行時は、4個の一次転写ローラのうち、一次転写ローラ85Y、85Mおよび85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cから離間させるとともにブラック色に対応した一次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーション2Kに当接させることで、モノクロ用の画像形成ステーション2Kのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、一次転写ローラ85Kと画像形成ステーション2Kとの間にのみ一次転写位置TR1kが形成される。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Kに一次転写バイアスを印加することで、画像形成ステーション2Kに設けられた感光体ドラム21の表面上に形成されたブラックトナー像を、一次転写位置TR1kにおいて転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0033】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラ85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラ85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0034】
また、下流ガイドローラ86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサ89が設けられている。パッチセンサ89は例えば反射型フォトセンサからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
【0035】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラ82と二次転写ローラ121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0036】
二次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0037】
前記した駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラ121のバックアップローラとしての機能も兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラ121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0038】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
【0039】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0040】
また、この実施形態では、メインコントローラMC、ヘッドコントローラHCおよび各ラインヘッド29がそれぞれ別ブロックとして構成され、以下に説明するように、それらが互いにシリアル通信線を介して接続されている。ヘッドコントローラHCをメインコントローラMCまたはラインヘッド29と一体に構成することも考えられるが、これらを別体に構成することで、次のような利点が生まれる。
【0041】
まず、ラインヘッド29からヘッドコントローラHCの機能を独立させることにより、ラインヘッド29を大幅に小型化することが可能となり、エンジン部EGおよび装置全体の小型化を図ることができる。また、ラインヘッドの構造に依存する処理機能をメインコントローラMCから切り離し専用ブロック化することにより、メインコントローラMC側ではヘッドの構成を考慮することなく、より汎用性の高い信号処理のみを行うことができるようになる。また、メインコントローラMCとヘッドコントローラHCとの間の通信を規格化しておけば、異なる構成のヘッドを使用する場合にも、メインコントローラについては何ら変更することなく、使用するヘッドに対応するヘッドコントローラのみを用意すればよいこととなる。これにより、共通のメインコントローラMCを異なる構成のヘッドを有する装置に共通して使用することが可能となり、1つのコントローラを用いた多機種展開が容易になる。
【0042】
上記のように構成された装置各部の連携動作について、再び図3を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラMCは、UART(汎用非同期送受信)通信線を介してエンジンコントローラECにエンジン部EGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータを生成する。
【0043】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラECは、エンジン部EG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号VsyncをUART通信線を介して出力する。また、UART通信線を介したエンジンコントローラECとヘッドコントローラHCとの通信においては、この他にラインヘッド29を制御するための種々の制御パラメータのやり取りが行われるが、その詳細については後述する。
【0044】
ヘッドコントローラHCには、各ラインヘッドを制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラMCにもメイン側通信モジュール200が設けられている。ヘッド側通信モジュール300からメイン側通信モジュール200に向けては、1ページ分の画像の先頭を示す垂直リクエスト信号VREQと、該画像を構成するラインのうち1ライン分のビデオデータを要求する水平リクエスト信号HREQとが送信される。一方、メイン側通信モジュール200からヘッド側通信モジュール300に向けては、これらのリクエスト信号に応じてビデオデータVDが送信される。より詳しくは、画像の先頭を示す垂直リクエスト信号VREQを受信した後、水平リクエスト信号HREQを受信する度に、画像の先頭部分から1ライン分ずつビデオデータを順次出力する。
【0045】
図5はメインコントローラとヘッドコントローラとの間の通信を示す図である。1ページの画像は、多数のドットをX方向(ラインヘッド29の発光素子の配列方向)に沿って一列に並べたラインをこれと直交する方向、すなわち転写ベルト81の移動方向D81に少しずつ位置を異ならせながら形成したものである。ヘッドコントローラHCから出力されるリクエスト信号VREQはページ先頭を示すものである。メインコントローラMCではリクエスト信号VREQの受信後に受信したリクエスト信号HREQが有効とされ、このリクエスト信号HREQ(データリクエスト信号)を受信する度に1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラHCに送信する。
【0046】
この実施形態では、1ラインを構成するドット数は最大6828である。また、解像度は600dpi(dots per inch)であり、ドットピッチもこれに等しい。したがって、1ラインの最大長さはおよそ11.4インチ(289mm)である。この長さは、日本工業規格A3版用紙の短辺寸法に対応している。各ドットの画像データは8ビットで多階調表現されており、1ライン分のビデオデータVDは、予め定められた特定の値(ここでは55h)のヘッドデータと、それに続く8ビット×6828ドットの画像データ列とからなっている。ヘッドデータはデータ列の先頭を示すためのものである。
【0047】
こうして1ライン分のビデオデータを出力した後、続いてリクエスト信号HREQが与えられると、メインコントローラMCは次の1ライン分のデータを出力する。これを繰り返すことにより、1ページ分の画像に対応するビデオデータVDがメインコントローラMCからヘッドコントローラHCに受け渡される。形成すべき次のページの画像がある場合には、先のページのデータ通信の終了後、ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCに対し再び垂直リクエスト信号VREQが送信される。
【0048】
この実施形態では、上記した各信号、すなわちヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへ送られるリクエスト信号VREQ、HREQおよびメインコントローラMCからヘッドコントローラHCへ送られるビデオデータVDが、YMCK各色に対応して4組存在する。以下では、必要に応じて各信号にハイフンおよび色を表す符号を付すことで色の区別をする。例えば、イエロー用の垂直同期信号、水平同期信号およびビデオデータはそれぞれVREQ−Y、HREQ−YおよびVD−Yと表す。
【0049】
図6は各色ごとの通信タイミングを示す図である。より具体的には、同図は2ページ分のカラー画像を連続して形成する場合におけるメインコントローラとヘッドコントローラとの間の信号のやり取りを示している。図2に示すように、各画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kが転写ベルト81上にトナー像を転写する一次転写位置TR1y、TR1m、TR1c、TR1kは互いに異なっている。したがって、各画像形成ステーションでそれぞれ形成されるトナー像を転写ベルト81上の同一位置で互いに重ね合わせるためには、一次転写位置の違いを吸収すべくビデオデータを一時的に保存するバッファメモリをヘッドコントローラHCに設けるか、または一次転写位置間の距離に応じてビデオデータの送信タイミングをトナー色ごとに異ならせる必要がある。前者の場合には各トナー色ごとに大容量のメモリが必要となり装置コストが大幅に上昇してしまう。
【0050】
この実施形態では、大容量のバッファメモリを必要としない後者の方法を採っている。すなわち、画像形成ステーションの配置に応じてビデオデータの送信タイミングに時間差を設けることにより、転写ベルト81上におけるトナー像の形成位置が各トナー色間で一致するようにしている。より具体的には、ヘッドコントローラHCから出力するリクエスト信号VREQ、HREQを送信するタイミングを、トナー色ごとに異ならせている。例えば、イエロー用垂直リクエスト信号VREQ−Yとマゼンタ用垂直リクエスト信号VREQ−Mとの間の時間差Tymは、転写ベルト81の移動速度をVtbとしたとき、
Tym=Lym/Vtb
となるように、リクエスト信号の出力タイミングが調整される。これにより、イエロー用ビデオ信号VD−Yとマゼンタ用ビデオ信号VD−Mとの間にも同様の時間差が生まれ、結果的に両トナー色のトナー像の形成位置が転写ベルト81上において同じになる。同様に、マゼンタ用ビデオ信号VD−Mとシアン用ビデオ信号VD−Cとの間、シアン用ビデオ信号VD−Cとブラック用ビデオ信号VD−Kとの間にも、それぞれ一次転写位置間の距離に応じた時間差Tmc、Tckが設けられる。
【0051】
このとき、一次転写位置間の距離に応じた時間差を設定しているのはヘッドコントローラHCから出力されるリクエスト信号であり、メインコントローラMCは単に与えられたリクエスト信号によって要求されたタイミングでビデオ信号を出力するのみである。こうすることで、メインコントローラMC側で一次転写位置間の距離を管理しておく必要がなくなり、メインコントローラMCはエンジン部EGの構成に依存しない処理のみを行うことができる。
【0052】
ところで、このような通信方式では、リクエスト信号VREQ、HREQおよびビデオデータVDの少なくとも3本の信号線が1色ごとに必要である。そして、色数が多くなるとそれにつれて信号線の本数も多くなってしまう。また、図6から明らかなように、2色以上の信号が同時に送受信されるタイミングが存在するため、共通バスラインを介したバス通信方式を採用することも難しい。
【0053】
そこで、この実施形態では、次に説明するように、リクエスト信号を符号化している。これによって、各トナー色の垂直および水平リクエスト信号VREQおよびHREQを時分割で多重化し、1組のシリアル信号線で4色分のリクエスト信号を送信できるようにしている。また、ビデオデータVDについても4色分を時分割で1つの信号に多重化することにより、1組のシリアル信号線で送信可能としている。したがって、この実施形態では、メインコントローラMCからヘッドコントローラHCに送信するための信号線と、ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCに送信するための信号線とからなる1組の信号線によって、色数に関係なく必要なデータ通信を行うことが可能となっている。
【0054】
このようにデータを多重化した場合、より高速でのデータ伝送が必要となる。この実施形態では、データ送信用のクロックを送信モジュール側で発生させるとともに、該クロック成分をデータに重畳して送信することによって、クロック送信線を省き信号線数をさらに削減しながら、より高速で安定したデータ通信を可能にしている。
【0055】
以下、本実施形態におけるデータ通信方式について詳しく説明する。この実施形態では、ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへ送られる4色分のリクエスト信号、そしてメインコントローラMCからヘッドコントローラHCへ送られる4色分のビデオデータのいずれもが、多重化されてシリアル信号として送受信される。
【0056】
図7は、ヘッドコントローラの構成を示す図である。ヘッドコントローラHCは、ヘッド側通信モジュール300とヘッド制御モジュール400とを備えている。ヘッド制御モジュール400は、画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kのそれぞれに設けられたラインヘッド29を個別に制御するYヘッド制御ブロック410Y、Mヘッド制御ブロック410M、Cヘッド制御ブロック410CおよびKヘッド制御ブロック410Kを備えている。ビデオデータVD−Y,VD−M,VD−C,VD−Kは、それぞれ対応する色のヘッド制御ブロックに入力される。また、各ヘッド制御ブロックからは、それぞれ独立したタイミングで垂直リクエスト信号VREQおよび水平リクエスト信号HREQがヘッド側通信モジュール300に入力されている。
【0057】
ヘッド側通信モジュール300は、メインコントローラMCから多重化されて送信されてくるビデオデータを受信し各色ごとのビデオデータに復元する受信ブロック320と、リクエスト信号を多重化してメインコントローラMCに送信する送信ブロック310とを備えている。まず、送信ブロック310について説明するとし、受信ブロック320の説明はメインコントローラMCの説明の後に行う。
【0058】
図8は、シリアライザから出力されるデータの内容を示す図である。図8が示すように、本実施形態では、8ビットを単位とする4セクションから成る32ビットデータが、シリアライザ311から出力される。また、各セクションの各ビットには、それぞれY、M、C、K色の垂直リクエスト信号VREQ、水平リクエスト信号HREQのいずれかが割り当てられている。シリアライザ311に送られるリクエスト信号は、1色につき垂直リクエスト信号VREQ、水平リクエスト信号HREQの2種類、4色分で計8種類である。これら8種類の信号を、1セクションを構成する8ビットのそれぞれに割り当てる。ここでは、上位ビットから順に、リクエスト信号VREQ−Y、HREQ−Y、VREQ−M、HREQ−M、VREQ−C、HREQ−C、VREQ−KおよびHREQ−Kを割り当てるものとする。
【0059】
図9はリクエスト信号の例を示すタイミングチャートである。また、図10は図9のパターンを符号化した結果を示す図である。これらの図を参照しながら、シリアライザ311の動作ついて説明する。なお、図9および図10に示すパターンは説明の便宜のために作成した仮想的なものであって、装置の動作において現実に生じうるパターンとは必ずしも一致しない。また、リクエスト信号を符号化するに際しては、Hレベルを値0で、Lレベルを値1で表すものとする。
【0060】
シリアライザ311は、リクエスト信号を、1ワード分の転送周期の1/4、すなわち1セクション当たりの転送周期に相当するサンプリング周期でサンプリングして符号化する。時刻t=0を始点としたとき、第1サンプリング周期においては8種類のリクエスト信号が全てHレベルであるため、この状態は「00000000d」すなわち「00h」で表すことができる。ここで、符号d、hはそれぞれ2進表記、16進表記であることを表す。この値が第1ワードの第1セクション(ビット31〜24)の値となる。第2サンプリング周期も同様に、「00h」と表すことができ、これが第2セクション(ビット23〜16)の値となる。
【0061】
第3サンプリング周期ではイエロー色に対応する垂直リクエスト信号VREQ−YのみがLレベルとなっているので、この状態を「10000000d」すなわち「80h」で表すことができる。したがって、第3セクション(ビット15〜8)の値は「80h」となる。第4サンプリング周期では再び全ての信号がLレベルであるので、「00h」により表すことができる。以上より、第1ないし第4サンプリング周期のサンプリング結果を1ワード(32ビット長)で「00008000h」と表すことができる。このようにして、この期間の各リクエスト信号を多重化し符号化することができる。こうして符号化されたリクエスト信号が、シリアライザ311から出力される。
【0062】
シリアライザ311から出力されたデータは、8B10Bエンコーダ312に入力される。上述の通り、シリアライザ311から出力されるデータは、4セクションを1ワードとしており、各セクションは8ビットから成る。そして、8B10Bエンコーダ312では、各セクションに対して8B10B変換を実行する。つまり、1セクション中の8ビットデータは、8B10Bエンコーダにより、10ビットデータに変換される。これにより、8B10B変換後の1ワードの長さは、40ビット(=10ビット×4セクション)となる。この8B10B変換は、主にデータのDCバランスを良好にすることを目的とするものであり、具体的には、例えば、米国特許第4486739号明細書に記載の技術を用いることができる。
【0063】
こうして40ビット化されたデータは、バッファ313を経てシリアライザ314に入力され、シリアルデータとして出力される。このとき、シリアライザ314は、PLL333より供給される送信クロックをデータに重畳して、つまり送信クロックを送信データによって変調して、該変調信号を差動シリアル信号としてTX+、TX−端子から出力する。PLL333から供給されるクロックは、後述するリカバリクロックRCCLKと同期した同周期のクロックである。つまり、送信ブロック310のシリアライザ311、エンコーダ312及びバッファ313には、リカバリクロックRCCLKを適当な分周比で分周したクロックが供給されるとともに、シリアライザ314には、分周されたリカバリクロックRCCLKをPLL333で逓倍して分周前の周期に戻したクロック(すなわち、リカバリクロックRCCLKと同周期のクロック)が供給されている。
【0064】
図11はメインコントローラの構成を示す図である。メインコントローラMCは、外部装置から与えられる画像形成指令に含まれる画像データ(画像信号)に必要な信号処理を行う画像処理部100と、メイン側通信モジュール200とを備えている。画像処理部100には、RGB画像データを各トナー色に対応したCMYK画像データに展開する色変換処理ブロック101と、画像データを一時的に保存するための画像メモリ102とが設けられている。さらに、画像処理部100には、画像データに対しスクリーン処理、ガンマ補正などの処理を行ってビデオデータVDを生成する画像処理ブロック103Y、103M、103C、103Kがそれぞれのトナー色ごとに設けられている。各画像処理ブロック103Y等は、垂直リクエスト信号VREQ−Y等の入力をきっかけとして1ページ分の画像について信号処理を開始し、生成した1ラインごとのビデオデータを順次メイン側通信モジュール200に出力する。
【0065】
次に、メイン側通信モジュール200の構成について説明する。メイン側通信モジュール200は、画像処理部100から出力される4色のビデオデータVD−Y、VD−M、VD−C、VD−Kを多重化しヘッドコントローラHCにシリアル送信する送信ブロック210と、多重化されてヘッドコントローラHCから送られてくる各色の垂直および水平リクエスト信号VREQ、HREQを受信しそれぞれ元の信号に復元して出力する受信ブロック220とを備えている。
【0066】
まず、受信ブロック220の構成および動作について説明する。前記したように、ヘッド側通信モジュール300から送られてくる信号は、クロックが埋め込まれた差動信号である。この差動信号はRX+端子、RX−端子間に入力され、受信された40ビットシリアルデータが受信バッファ221に入力される。なお、信号に埋め込まれたクロックは受信クロック復調部233によって復調され、復調されたクロックに基づきデータが受信される。
【0067】
受信された40ビットシリアルデータは、デシリアライザ222を経て10B8Bデコーダ223に入力される。そして、かかる10B8Bデコーダ223によって32ビットデータに直される。そして、この32ビットデータは、ディストリビュータ225に与えられる。
【0068】
ディストリビュータ225では、32ビットデータの各ビット情報を切り出し、時系列に沿って出力することによって、8種類のリクエスト信号を復元する。つまり、図8〜10を用いて説明したリクエスト信号の多重化の逆を行う。このうち、垂直リクエスト信号VREQ−Y、VREQ−M、VREQ−CおよびVREQ−Kは、画像処理の開始時期を知らせるべく画像処理ブロック103Y、103M、103Cおよび103Kにそれぞれ与えられる。また、水平リクエスト信号HREQ−Y、HREQ−M、HREQ−CおよびHREQ−Kは、各画像処理ブロックから出力されるビデオデータVDを所定のタイミングで多重化させるべく、データラッチのタイミング信号としてFIFOバッファ211に与えられている。
【0069】
送信ブロック210には、各色のビデオデータVDを多重化するタイミングを揃えるためのFIFOバッファ211が設けられている。FIFOバッファ211は、復元された各色の垂直リクエスト信号VREQ−Y、VREQ−M、VREQ−C、VREQ−Kに応じて各色の画像処理ブロックから出力される各8ビットのビデオデータVD−Y、VD−M、VD−C、VD−Kをそれぞれ水平リクエスト信号HREQ−Y、HREQ−M、HREQ−C、HREQ−Kでラッチしながら32ビットデータとして出力する。
【0070】
図12は、FIFOバッファから出力されるビデオデータの内容を示す図である。32ビットデータは8ビットを単位とする4つのセクションから成っており、1つのセクションに1つのトナー色が割り当てられている。各セクションは、形成すべきドットが上寄せか下寄せか等の位置を表す情報(2ビット)、適用されるスクリーンの種類を示す情報(1ビット)および形成すべきドットの階調値を表す情報(5ビット)から構成されている。なお、各セクションのうち、ヘッドコントローラHCからリクエスト信号が出力されていないトナー色に対応するセクションに対しては、ヌルデータまたは所定のダミーデータを挿入しておくものとする。
【0071】
FIFOバッファ211から出力された32ビットデータは、シリアライザ212を経て8B10Bエンコーダ213に入力され、40ビットのデータに変換される。なお、8B10Bエンコーダ213の動作は、先述の8B10Bエンコーダ312の動作と同様である。そして、40ビットデータは、特殊符号置換回路214に入力される。次に、特殊符号置換回路214の動作について説明する。
【0072】
図13は特殊符号への置換動作を示す図である。上述したように、特殊符号置換回路214には、1ワードの長さが40ビットのデータが入力される。また、1ワードは、4つのセクションから構成され、各セクションは10ビットから成る。そして、各セクションには、対応する色(Y,M,C,K)に関するデータが存在する。なお、色を表す大文字アルファベットY,M,C,Kの直後のサフィックスtは、対応するデータが10ビットであることを表す。ここで、同図のSTEP1は、特殊符号置換回路214に入力されるデータの(n−1)番目及びn番目のワードを示している。そして、特殊符号置換回路214は、入力されるデータに対して、同図のSTEP2に示す動作を実行する。
【0073】
STEP2では、(n−1)番目のワードの有する4つのセクションのうち、イエローYのセクションにある10ビットデータYt(n-1)を、同じく10ビットの大きさを有する特殊符号SCに置換する。かかる特殊符号SCは、いわゆるKキャラクタまたはKコードと称される符号であるが、以下にその内容について説明する。
【0074】
上述のとおり本実施形態では、8B10B変換を実行して、8ビットデータを10ビットデータに変換する。そして、特殊符号SCは、8B10B変換において8ビットデータに対応する256個の10ビットデータ以外の10ビットデータとして定義される。すなわち、特殊符号SCは、8B10B変換の変換規則に従って8ビットデータを変換した際に発生し得ない10ビットデータである。かかる特殊符号SCは、10ビットデータの同期を確立するために用いられる。つまり、データは10ビットを1セクションとする構造を有するものの、実際には、各セクションは互いに途切れずに連続している。また、これら各セクションは、符号化された0または1の信号を有するのみである。したがって、なんらかの目印が無ければ、どこからどこまでの10ビットが1セクションに対応するかが判別できない。そこで、特殊符号SCを適当にデータに挿入するとともに、かかる特殊符号SCを検知して1セクションを判別することとしている。なお、特殊符号SCを挿入する頻度、つまり特殊符号SCをシリアル転送する周期については、後述するように画質を考慮して設定するのが望ましい。
【0075】
こうして特殊符号SCが挿入されたデータは、バッファ215を経てシリアライザ216に入力される。また、シリアライザ216には、クロック発生部231で発生するクロックをPLL232により逓倍して生成される送信クロックTMCLKが、入力される。シリアライザ216は、入力されたデータにPLL232から供給される送信クロックTMCLKを重畳して、つまり送信クロックTMCLKを送信するデータによって変調して、該変調信号を差動シリアル信号としてTX+、TX−端子から出力する。このように、この実施形態では4色分のビデオデータは1つのシリアル信号に多重化されており、また該シリアル信号は送信クロックTMCLKを重畳した差動信号として出力される。すなわち、この実施形態では、4色分のビデオデータが1対の差動信号線によって送信される。
【0076】
図14は、信号線上のビデオデータを模式的に示す図である。この実施形態において、送信クロックTMCLKの周波数は37.5MHzであり、したがって、1ワードデータの送信周期は、約26.7nsecである。データ長は40ビットであるから、データ転送レートは1.5Gbps(bits per second)となっている。なお、送信クロックTMCLKはデータに重畳されており、図示したクロック信号が別途伝送されているわけではない。
【0077】
次に、再び図7を用いて、ヘッドコントローラの受信ブロックの動作について説明する。前記したように、メイン側通信モジュール200から送られてくる信号は、送信クロックTMCLKが重畳された差動信号である。この差動信号はRX+端子、RX−端子間に入力され、受信された40ビットシリアルデータが受信バッファ321に入力される。なお、信号に重畳された送信クロックTMCLKは受信クロック復調部331によって復調され、復調されたクロックに基づきデータが受信される。
【0078】
受信された40ビットシリアルデータは、デシリアライザ322を経て、10B8Bデコーダに入力されて32ビットデータに直される。そして、かかる32ビットデータは、ディストリビュータ325に入力される。
【0079】
このディストリビュータ325は、データを1セクションごとに分割することで各色8ビットずつのビデオデータを復元しヘッド制御モジュール400に出力する。すなわち、ヘッド側通信モジュール300では、多重化されてメインコントローラMCから送られてくる4色ビデオデータを逆多重化処理し、各色ごとのビデオデータに展開する。
【0080】
上述したように、メインコントローラMCとヘッドコントローラHCとの間では、ビデオデータを含むシリアルデータが送受信される。ここで、かかるシリアルデータの送受信に用いられる信号伝送方式について説明する。
【0081】
図15はメインコントローラとヘッドコントローラとの接続を示す図である。メインコントローラMCには、メイン側通信モジュール200と電気的に接続された7ピンのプラグ201(以下「ホストプラグ」という)が設けられている。また、ヘッドコントローラHCにも、ヘッド側通信モジュール300と電気的に接続された7ピンのプラグ301(以下「デバイスプラグ」という)が設けられている。そして、両プラグ間は、両端にそれぞれホストプラグ201、デバイスプラグ301と嵌合する7ピンのコネクタ701a、701bを備えた通信ケーブル700によって接続されている。
【0082】
信号伝送方式には高速伝送が可能なLVDS(Low Voltage Differential Signaling;低電圧差動伝送)インターフェースが採用されており、メインコントローラMCからヘッドコントローラHCへの送信およびその逆方向の送信にはそれぞれ2本を1組とする差動信号線が使用される。2対の信号線対のうち1対は、メイン側通信モジュール200に設けられた送信用のTX+端子およびTX−端子とヘッド側通信モジュール300に設けられた受信用のRX+端子およびRX−端子とをコネクタを介してそれぞれ電気的に接続する。また、もう1対は、メイン側通信モジュール200に設けられた受信用のRX+端子およびRX−端子とヘッド側通信モジュール300に設けられた送信用のTX+端子およびTX−端子とをそれぞれ電気的に接続する。すなわち、メイン側通信モジュール200とヘッド側通信モジュール300とはポイント・ツー・ポイント接続されている。各信号線対はそれぞれシールドされており、シールド導体およびGND線も、信号線対を挟んでそれぞれコネクタ701a、701bに接続されている。これらのシールド導体およびGND線は両通信モジュール内で接地されている。このように、この実施形態では、メインコントローラMCからヘッドコントローラHCへのデータ送信およびヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへのデータ送信が、1組の通信ケーブルによって双方向に行われる。また、TX+端子からRX+端子への配線と、TX−端子からRX−端子への配線とは、通信ケーブル700および基板上の配線パターンを含めて同じ長さとされており、高速でも安定した通信が行えるようになっている。
【0083】
次にヘッド制御ブロックの構成について説明する。ここではイエロー用のYヘッド制御ブロック410Yについて説明するが、他の各ブロック410M、410C、410Kもその構造は同じである。Yヘッド制御ブロック410Yは、ヘッド側通信モジュール300から送信されるビデオデータVDを1ライン単位で画像データメモリ411に記憶する。その後、適当なタイミングでビデオデータVDは画像データメモリ411から読み出される。そして、該ビデオデータVDに基づいて、Yヘッド制御ブロック410Yはラインヘッド29のドライバICを駆動制御し、LEDアレイ293を適当なタイミングで点灯させる。
【0084】
また、Yヘッド制御ブロック410Yは、エンジンコントローラECから与えられる同期信号Vsyncに基づいて適切なタイミングでリクエスト信号VREQ−Y、HREQ−Yを発生させる。なお、エンジンコントローラECからの同期信号Vsyncは、各色のヘッド制御ブロックに対し同時に与えられるが、上記待機時間はトナー色ごとに個別に設定されている。この待機時間を一次転写位置の違いに応じてそれぞれ設定することによって、図6に示した各色ごとのデータ転送タイミングの違いを創出することができる。
【0085】
次に、特殊符号SCを出力するタイミングについて図16および図17を参照しつつ詳述する。図16はリクエスト信号と特殊符号の出力とのタイミングを示すチャートである。また、図17は転写ベルト上での画像領域を示す模式図である。この実施形態では、上記したように全トナー色のうちイエローYのセクションにある10ビットデータYt(n-1)を、同じく10ビットの大きさを有する特殊符号SCに置換している。そして、それ以外のトナー色については特殊符号SCへの置換動作を行っていない。また、この実施形態では、イエローYについてのリクエスト信号HREQ−Yが本発明の「データリクエスト信号」に相当している。そして、特殊符号SCの出力周期は、図16に示すように、リクエスト信号HREQ−Yの周期、つまりデータリクエスト周期Taと同一に設定されている、つまり周期Taの1倍に設定されている。しかも、この実施形態では、非画像領域に対応するタイミングで特殊符号SCが出力されてシリアル転送される。
【0086】
より詳しく説明すると、同図に示すように、メインコントローラMCは時刻T1でリクエスト信号HREQ−Yを受信すると、該リクエスト信号HREQ−Yをトリガーとして1ライン分のイエロー用ビデオデータVD−Yを出力する。それらのビデオデータVD−Yのうち時刻T2から時刻T3(=T2+Tb)までの間に出力されるデータが感光体ドラム21の有効画像領域に相当するデータである。したがって、時刻T1から時刻T2の間、および時刻T3から時刻T4(=T1+Ta)の間が感光体ドラム21の非画像領域に対応する。そこで、この実施形態では、時刻T1〜T2間の時刻Tscで特殊符号SCが出力される。しかも、特殊符号SCはデータリクエスト周期Taと同一の周期で出力される。すなわち、このようなタイミングで特殊符号置換回路214はイエローYのセクションにある10ビットデータYt(n-1)を同じく10ビットの特殊符号SCに置換する。そして、こうして特殊符号SCが挿入されたデータは、バッファ215を経てシリアライザ216に入力される。
【0087】
その他のトナー色については特殊符号SCの置換動作は行われず、リクエスト信号HREQを受信すると、該リクエスト信号をトリガーとして1ライン分のビデオデータVDを出力する。そして、これらのビデオデータVDはそのままバッファ215を経てシリアライザ216に入力される。
【0088】
これら4色分のビデオデータは上記したように1つのシリアル信号に多重化されており、また該シリアル信号は送信クロックTMCLKを重畳した差動信号として出力される。すなわち、この実施形態では、4色分のビデオデータが1対の差動信号線によって送信される。
【0089】
一方、ヘッドコントローラHCに受信されたシリアルデータは、上記のようにして、各色ごとのビデオデータVDに展開される。そして、ビデオデータVD−Y、VD−M、VD−C、VD−Kはそれぞれヘッド制御ブロック410Y、410M、410C、410Kに送信されて1ライン単位で画像データメモリ411に記憶される。その後、適当なタイミングでメモリ411内のビデオデータVDに基づきLEDアレイ293が点灯制御される。これによって各色ごとにビデオデータに対応する潜像が形成される。さらに、潜像が現像されて各色のトナー像が形成され、本発明の「中間転写体」に相当する転写ベルト81上に転写される。これによってカラー画像が形成される。
【0090】
ここで、イエローYについて検討すると、イエローYのセクションに特殊符号SCの置換動作が行われるため、特殊符号SCに対応するイエロードット、つまり特殊符号対応ドットが感光体ドラム21や転写ベルト81の非画像領域に形成される。以下、図16に示すタイミングで特殊符号SCの出力、つまり置換動作が行われる場合を例示して説明する。
【0091】
同図に示す(p−1)番目ラインに対応するデータリクエスト周期Taでは、リクエスト信号HREQ−Yが出力される(時刻T1)と、(p−1)番目ラインに対応するビデオデータVD−Yの出力が開始される。そして、非画像領域に対応する時間(=T2−T1)が経過するまでの間に特殊符号SCが出力される。このため、(p−1)番目ラインのビデオデータVD−Yのうち感光体ドラム21や転写ベルト81の非画像領域に対応するデータが特殊符号SCに置換される。そのため、図17(b)の最上段に示すように非画像領域に特殊符号対応ドットDscが形成される。
【0092】
また、この実施形態では、特殊符号SCの出力周期はデータリクエスト周期Taと同一に設定されているため、特殊符号対応ドットDscの形成態様は全ラインについて共通する。したがって、図17に示すように、各ラインとも非画像領域で、しかもライン長手方向(同図の左右方向)Xにおいて同一位置に形成される。
【0093】
以上のように、この実施形態によれば、特殊符号SCをシリアル転送する周期がデータリクエスト周期Taと同一値に設定されているため、各リクエスト信号HREQ−Yに応じて出力されるビデオデータのいずれにおいても、特殊符号SCはライン長手方向Xにおいて固定された位置となる。したがって、特殊符号SCのシリアル転送による影響を容易にコントロールすることができる。また、この実施形態では、非画像領域に対応するタイミング(図16の時刻Tsc)で特殊符号SCをシリアル転送するように構成しているので、特殊符号対応ドットDscは常に感光体ドラム21の非画像領域に形成されることとなり、トナー像に対する特殊符号SCの影響を完全に排除することができる。その結果、良好な品質でトナー像を形成することができる。
【0094】
また、リクエスト信号HREQ−Yの周期Taと同一周期で特殊符号SCをシリアル転送しているため、各リクエスト信号HREQ−Yに対して特殊符号SCを1回シリアル転送させることができる。このため、いずれのラインについても常に1回、10ビットデータの同期を確立させることができ、トナー像を良好に形成することができる。
【0095】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、非画像領域に対応するタイミング(図16の時刻Tsc)で特殊符号SCをシリアル転送しているが、有効画像領域に対応するタイミング、例えば図18に示すように時刻T2と時刻T3との間で特殊符号SCをシリアル転送してもよい。ただし、この実施形態では、1ラインのビデオデータVD−Yのうち有効画像領域に対応するデータの一部、例えば8ビットデータYe(n-1)が10B8Bデコードにより特殊符号SCを逆変換して得られる符号INSCに置換される(図19参照)。この符号INSCに基づきトナー像に特殊符号対応ドットDscが形成される。この影響を抑制してトナー像の品質を高めるために、例えば図20に示すようにヘッド側通信モジュール300にデータ置換回路324を追加してもよい。なお、その他の構成は先の実施形態と同様である。
【0096】
図19は本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態の動作を示す図であり、図20は同装置の構成を示す図である。この実施形態では、受信された40ビットシリアルデータは、デシリアライザ322を経て、10B8Bデコーダに入力されて32ビットデータに直される。そして、かかる32ビットデータは、データ置換回路324に入力される。
【0097】
このデータ置換回路324には、1ワードの長さが32ビットのデータが入力される。また、1ワードは、4つのセクションから構成され、各セクションは8ビットから成る。そして、各セクションには、対応する色(Y,M,C,K)に関するデータが存在する。なお、色を表す大文字アルファベットY,M,C,Kの直後のサフィックスeは、対応するデータが8ビットであることを表す。また、同図のSTEP1が示すように、10B8Bデコードにより特殊符号SCは符号INSCに逆変換されて(n−1)番目のワードの有する4つのセクションのうちイエローYのセクションに存在している。そこで、このデータ置換回路324は、同図のSTEP2に示すように、符号INSCに対して前後に位置するイエローデータYe(n)およびYe(n-2)の中間調データYe(cd)を求め、符号INSCを該中間調データYe(cd)に置換する。より具体的には、この実施形態では、イエローデータYe(n)およびYe(n-2)の平均値を中間調データYe(cd)としている。
【0098】
以上のように、この実施形態によれば、データ置換回路324により特殊符号SCを中間調データYe(cd)に置換しているので、特殊符号対応ドットDscと該特殊符号対応ドットDscに近接するドットが近似したトナー濃度レベルとなる。したがって、特殊符号対応ドットDscの位置でトナー濃度が連続的なものとなり、トナー像の画質低下を効果的に防止することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、4色のうちイエローYを本発明の「特定色」としており、イエローYについてのみ特殊符号SCの置換動作を行うように構成している。このため、イエローのトナー像には特殊符号対応ドットDscが含まれるものの、他色のトナー像は本来の画像信号に対応したドットにより構成される。したがって、それらのトナー像を重ね合わせてカラー画像を形成しているため、特殊符号SCによる影響をさらに抑えることができる。しかも、イエローYは他のトナー色に比べて人間の目に認識し難い色成分であるため、特殊符号対応ドットDscが最も目立ちにくくなっている。これも特殊符号SCによる影響を抑制する上で効果的である。
【0100】
ところで、上記実施形態では、ヘッドコントローラHC側でデータ処理を施して特殊符号対応ドットDscによる影響を抑制しているが、メインコントローラMC側でのデータ処理により上記影響を抑制するようにしてもよい。すなわち、上記したようにビデオデータVDに対する特殊符号SCの位置が予め特定されることとなるため、信号処理として実行されるスクリーン処理を工夫して特殊符号対応ドットによる影響を抑制することができる。例えば特殊符号SCに近接するビデオデータVDと特殊符号SCから離れたビデオデータVDとでスクリーン処理を相違させ、これによって特殊符号対応ドットDscの形成位置においてトナー濃度が急激に変化するのを抑制し、良好な品質でトナー像を形成することができる。
【0101】
また、複数色(本実施形態では4色)のトナー像を重ね合わせてカラー画像を形成する装置においては、各トナー色間でのスクリーン処理を調整してもよい。すなわち、各トナー色におけるスクリーン処理を互いに相違させて特殊符号対応ドットDscの影響を抑制することができる。
【0102】
また、上記実施形態では、特殊符号SCの出力周期をデータリクエスト周期Taの1倍に設定しているが、2倍、3倍など整数倍に設定してもよい。逆に、図21に示すように特殊符号SCの出力周期をデータリクエスト周期Taの(1/2)倍に設定したり、(1/3)倍など(1/整数)倍に設定してもよい。このように設定した場合においても、先の実施形態と同様に、各リクエスト信号HREQ−Yに応じて出力されるビデオデータのいずれにおいても、特殊符号SCはライン長手方向Xにおいて固定された位置となる。したがって、特殊符号SCのシリアル転送による影響を容易にコントロールすることができる。
【0103】
また、リクエスト信号HREQ−Yの周期Taを求め、該データリクエスト周期Taに基づき特殊符号SCの出力周期Tkを調整するように構成してもよい。これにより、特殊符号SCの出力周期Tkを高精度に設定することができ、より確実に画像品質を良好に保つことができる。また、画像の解像度が変更されたり、画像を転写するシート(記録材)の種類が変更されるなどの画像形成条件が変更されると、リクエスト信号HREQの周期変更が必要となる場合がある。このようなケースに対応するためには、図22に示すような制御を行うのが望ましい。
【0104】
図22は本発明にかかる画像形成装置の別の実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、メインコントローラMCが同図のステップS1〜S3を実行して特殊符号SCの出力周期を調整する。すなわち、ステップS1で画像形成条件の変更が検出されると、プロセス速度(mm/s)と解像度(dpi)からデータリクエスト周期Taが演算により求められる(ステップS2)。そして、該データリクエスト周期Taに対して上記周期条件が満足されるように特殊符号SCの出力周期を調整する(ステップS3)。このように、本実施形態では、常にデータリクエスト周期Taに対応した周期で特殊符号SCを出力することができる。このように、この実施形態ではメインコントローラMCが本発明の「周期導出手段」および「調整手段」として機能する。
【0105】
また、上記実施形態では、全トナー色のうち、イエローYのセクションにある10ビットデータYt(n-1)を、同じく10ビットの大きさを有する特殊符号SCに置換している。しかしながら、全トナー色のセクションのうち、特殊符号SCへの置換を行うセクションは、イエローYのセクションに限られず、他のトナー色、例えばシアンCのセクションであっても良い。また、特殊符号SCへの置換を行うセクションの数も1つに限られるものではなく、2つ、3つまたは4つ全てに対して置換を行なっても良い。
【0106】
また、上記実施形態のメインコントローラMCに設けた画像処理部100では、画像処理前の画像データを画像メモリに保存しておき、ヘッドコントローラHCから要求があったときに、各画像処理ブロックがこれを読み出して必要な処理を加えた上でビデオデータとして出力する。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えば、外部装置から画像データを受信したときに画像処理を行って該処理後の画像データを画像メモリに保存するようにしておき、ヘッドコントローラHCから要求があったときにこれを順次読み出して送出するようにしてもよい。
【0107】
さらに、上記実施形態では、YMCK4色のトナーを使用したカラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、色の種類や色数の異なる画像形成装置に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置における画像形成ステーションの配置を示す図。
【図3】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図4】ラインヘッドの構造を示す図。
【図5】メインコントローラとヘッドコントローラとの間の通信を示す図。
【図6】各色ごとの通信タイミングを示す図。
【図7】ヘッドコントローラの構成を示す図。
【図8】シリアライザから出力されるデータの内容を示す図。
【図9】リクエスト信号の例を示すタイミングチャート。
【図10】図9のパターンを符号化した結果を示す図。
【図11】メインコントローラの構成を示す図。
【図12】FIFOバッファから出力されるビデオデータの内容を示す図。
【図13】特殊符号への置換動作を示す図。
【図14】信号線上のビデオデータを模式的に示す図。
【図15】メインコントローラとヘッドコントローラとの接続を示す図。
【図16】リクエスト信号と特殊符号の出力とのタイミングを示すチャート。
【図17】転写ベルト上での画像領域を示す模式図。
【図18】リクエスト信号と特殊符号の出力とのタイミングを示すチャート。
【図19】本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態の動作を示す図。
【図20】図19に示す動作を実行する装置の構成を示す図。
【図21】リクエスト信号と特殊符号の出力とのタイミングを示すチャート。
【図22】本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0109】
2Y,2M,2C,2K…画像形成ステーション、 200…メイン側通信モジュール、 21…感光体ドラム(感光体)、 29…ラインヘッド、 81…転写ベルト(中間転写体) 293…LEDアレイ、 324…データ置換回路、 HC…ヘッドコントローラ、 HREQ…水平リクエスト信号、 MC…メインコントローラ(周期導出手段、調整手段)、 SC…特殊符号、 Ta…データリクエスト周期、 VD…ビデオデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、複数の発光素子が列状に配列されたラインヘッドにより前記感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、画像形成指令に含まれる画像信号に対して信号処理を施してビデオデータを生成するメインコントローラと、前記ラインヘッドの点灯を制御するヘッドコントローラとを備え、前記ビデオデータを含む信号を前記メインコントローラから前記ヘッドコントローラにシリアル転送する一方、受信した信号からビデオデータを取り出して該ビデオデータに基づき前記画像信号に対応する静電潜像を前記感光体に形成し、該静電潜像を前記現像手段により現像してトナー像を形成する画像形成装置において、
前記ヘッドコントローラは1ライン分のビデオデータを送信させるためのデータリクエスト信号を前記メインコントローラに出力する一方、
前記メインコントローラは前記データリクエスト信号をトリガーとして1ライン分のビデオデータを出力するとともに、前記データリクエスト信号の周期に対する整数倍もしくは(1/整数)倍の周期で特殊符号をシリアル転送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像信号に対応する静電潜像を前記感光体の有効画像領域に形成する請求項1記載の画像形成装置であって、
前記メインコントローラは前記感光体表面のうち前記有効画像領域以外の非画像領域に対応するタイミングで特殊符号をシリアル転送する画像形成装置。
【請求項3】
前記メインコントローラは前記データリクエスト信号の周期と同一周期で特殊符号をシリアル転送する請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ヘッドコントローラは、受信した信号に含まれる特殊符号に基づき所定の処理を行うとともに、該特殊符号に近接するビデオデータの中間調データを求め、該特殊符号を該中間調データに置換する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ヘッドコントローラは、前記特殊符号の前後に隣接するビデオデータの平均値を前記中間調データとする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記メインコントローラは前記信号処理としてスクリーン処理を施し、しかも、該スクリーン処理は、前記特殊符号に近接するビデオデータと前記特殊符号から離れたビデオデータとで処理を相違させている請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記データリクエスト信号の周期を求める周期導出手段と、
前記周期導出手段により求められた前記データリクエスト信号の周期に基づき前記特殊符号の出力周期を調整する調整手段と
をさらに備えた請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記調整手段は、前記データリクエスト信号の周期が変更されると、該変更後のデータリクエスト周期に対応した周期で前記特殊符号を出力する請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記感光体、前記露光手段および前記現像手段を有する画像形成ステーションを複数備え、中間転写体の移動方向に互いに異なる転写位置で前記各画像形成ステーションがそれぞれ互いに異なる色のトナー像を前記中間転写体上に転写することで前記中間転写体上で各トナー像を重ね合わせてカラー画像を形成する請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記メインコントローラは各トナー色のビデオデータを1対のシリアル信号で前記ヘッドコントローラに転送する一方、前記複数のトナー色のうち特定色のビデオデータに対応して前記特殊符号を出力する画像形成装置。
【請求項10】
前記特定色がイエローである請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記感光体、前記露光手段および前記現像手段を有する画像形成ステーションを複数備え、中間転写体の移動方向に互いに異なる転写位置で前記各画像形成ステーションがそれぞれ互いに異なる色のトナー像を前記中間転写体上に転写することで前記中間転写体上で各トナー像を重ね合わせてカラー画像を形成する請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記メインコントローラは前記信号処理としてスクリーン処理を施し、しかも、各トナー色におけるスクリーン処理が互いに相違する画像形成装置。
【請求項12】
感光体と、複数の発光素子が列状に配列されたラインヘッドにより前記感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、画像形成指令に含まれる画像信号に対して信号処理を施してビデオデータを生成するメインコントローラと、前記ラインヘッドの点灯を制御するヘッドコントローラとを備えた画像形成装置を用いて前記画像信号に応じた潜像を前記感光体に形成し、該静電潜像を現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、
1ライン分のビデオデータを送信させるためのデータリクエスト信号を前記メインコントローラに出力する工程と、
前記データリクエスト信号をトリガーとして1ライン分のビデオデータを出力し、該ビデオデータを含む信号を前記メインコントローラから前記ヘッドコントローラにシリアル転送する工程と、
受信した信号からビデオデータを取り出して該ビデオデータに基づき前記画像信号に対応する静電潜像を前記感光体に形成する工程と、
前記静電潜像を現像する工程と、
前記データリクエスト信号の周期に対する整数倍もしくは(1/整数)倍の周期で特殊符号をシリアル転送する工程と
を備えたことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−137235(P2008−137235A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324877(P2006−324877)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】