説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】単純、且つ安価で、良好な品質の画像を形成できる画像形成装置および画像形成方法を提供する。
【解決手段】光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーをトナー保持部材のトナー保持面に供給してトナー層を形成するトナー層形成手段と、トナー層に光を照射して画像情報および発色情報を付与する発色情報付与手段と、画像情報および発色情報が付与されたトナー層を発色させる発色手段と、を有する画像形成装置である。また、光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーをトナー保持部材のトナー保持面に供給してトナー層を形成するトナー層形成工程と、トナー層に光を照射して画像情報および発色情報を付与する発色情報付与工程と、画像情報および発色情報が付与されたトナー層を発色させる発色工程と、を含む画像形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる波長の光を露光することにより異なる色に発色するトナーを用いた画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を得る記録装置においては、電子写真法を用いるものや、複数のカラーインキを重ね合わせて形成する様々な印刷装置が知られている。いずれの方法においても複数の異なるカラーインキやトナーを用いるが、これらを画像形成面に対しそれぞれ単独で順次画像形成を行ない、個々のカラーインクなどで形成された画像を重ねあわせることが必要である。
【0003】
この重ね合わせ技術は、こうした印刷装置においては重要な技術の一つであり、装置として精巧な画像重ね合わせ手段を必要とする。こういった精巧な重ね合わせ手段は、装置の大型化やコストを要する。こうした中で、大量の画像を生産する印刷装置においては、その生産性から形成画像が大量であるため得られる画像一枚あたりのコストはさほど高いものにはならない。しかし、少量の部数しか印刷しない小型の印刷装置などではそういったコストは無視しえないものとなっている。
【0004】
また、こういった印刷装置においては色ごとの印刷に、各色それぞれ一つの印刷手段を要するので、装置の大型化はさらに避けがたく、それ自体コスト上昇の要因となっていて、特に小部数の印刷を目的とする小型印刷装置においてはかかるコストの問題は大きい。
【0005】
こういった問題に対し、電子写真装置に異なる色信号に応じて異なる色調に発色するトナーを適用して画像形成を行うことでカラー画像を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この方法においては転写媒体に転写された後のトナー画像に正確に色情報を与えねばならず、特許文献1に開示されているように紙の如き被転写部材(記録媒体)を用いる場合、その表面の粗度や波打ちの程度が画像形成をする都度に異なり、紙面上の画像位置を正確に測定、若しくは設定することは極めて難しく、色ずれや未発色部分、所望の発色とは異なる発色領域の混在など画像の品質は大きく損なわれてしまう可能性が大きい。また当該画像形成装置では、画像形成を行うための画像信号を与える手段と、色情報を与える手段の複数の情報供与手段が必要であり、さらにこれら複数の情報供与手段の同期をとるための手段も必要となるため、構造が複雑となり、装置の大型化、コスト上昇の大きな要因となる。
【特許文献1】特開平8−106172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、単純かつ安価な構成で、良好な品質の画像を形成できる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のかかる目的は、下記本発明の画像形成装置および画像形成方法により達成される。
【0009】
本発明の画像形成装置は、光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーをトナー保持部材のトナー保持面に供給してトナー層を形成するトナー層形成手段と、前記トナー層に光を照射して画像情報および発色情報を付与する発色情報付与手段と、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を発色させる発色手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置は、一般的な電子写真法等と異なり複雑な周辺装置が不要なため、単純かつ安価な構成とすることができる。また、上記トナーを使用し、発色情報付与手段および発色手段による処理を施す簡単な構成で、良好な品質の画像を形成することができる。
【0011】
本発明の画像形成装置は、下記第1〜第5の態様のうち、少なくともいずれかの態様を備えることが好ましい。
(1)第1の態様は、前記トナー保持部材が記録媒体である態様である。
(2)第2の態様は、前記トナー保持部材がドラム状基体であり、さらに、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を記録媒体上に転写する転写手段を有する態様である。
(3)第3の態様は、帯電手段および除電手段を有する態様である。
(4)第4の態様は、前記発色手段が、少なくとも熱により発色させる加熱機構を有する態様である。
(5)第5の態様は、前記トナーが、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、該第1成分及び第2成分のいずれかを含む光硬化性組成物と、を有し、光による発色情報の付与により前記光硬化性組成物が硬化または未硬化の状態を維持して、前記発色する反応が制御されるトナーである態様である。
【0012】
また、本発明の画像形成方法は、光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーをトナー保持部材のトナー保持面に供給してトナー層を形成するトナー層形成工程と、前記トナー層に光を照射して画像情報および発色情報を付与する発色情報付与工程と、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を発色させる発色工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の画像形成方法は、下記第1〜第5の態様のうち、少なくともいずれかの態様を含むことが好ましい。
(1)第1の態様は、前記トナー保持部材が記録媒体である態様である。
(2)第2の態様は、前記トナー保持部材がドラム状基体であり、さらに、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を記録媒体上に転写する転写工程を含む態様である。
(3)第3の態様は、前記トナー層形成工程に先立ち、前記トナー保持面を帯電する帯電工程と、帯電されたトナー保持面のうち、画像を形成する領域以外の領域を除電する除電工程とを有する態様である。
(4)第4の態様は、前記発色工程が、少なくとも熱により発色させる加熱処理を含む態様である。
(5)第5の態様は、前記トナーが、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、該第1成分及び第2成分のいずれかを含む光硬化性組成物と、を有し、光による発色情報の付与により前記光硬化性組成物が硬化または未硬化の状態を維持して、前記発色する反応が制御されるトナーである態様である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置および画像形成方法によれば、単純かつ安価な構成で、良好な品質の画像を形成できる画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明には、下記トナーを用いる。すなわち、トナーの1粒1粒が異なる波長の光で露光されると、該波長に応じた色に発色する、あるいは発色しない(非発色)状態を維持する機能を有しているトナー(以下、「本発明に係るトナー」ということがある)である。つまり、トナーがその内部に光による発色情報の付与により発色可能な発色性物質(さらにはこれを含む発色部)を有しており、前記光による発色情報の付与により、トナーが発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーである。
【0016】
前記「発色情報を付与する」とは、トナー層を構成する個々のトナー粒子単位で発色/非発色状態や発色した際の色調を制御するために、トナー層の所望の領域に対して選択的に1種類以上の特定波長の光を付与する、あるいは、何らの光を付与しないことを意味する。なお、上記トナーの詳細については、後述する。
【0017】
本発明の画像形成装置は、本発明に係るトナーをトナー保持部材のトナー保持面に供給してトナー層を形成するトナー層形成手段と、前記トナー層に光を照射して画像情報および発色情報を付与する発色情報付与手段と、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を発色させる発色手段と、を有する。具体的には、下記第1〜第3の画像形成装置を挙げることができる。
【0018】
[1]第1の画像形成装置:
第1の画像形成装置は、図1に示すように、矢印A方向に記録媒体19が搬送され、本発明に係るトナーを記録媒体19の画像形成面に供給(図1の場合は塗布)してトナー層Tを形成するトナー層形成手段10と、前記トナー層に光を照射して画像情報および発色情報を付与する発色情報付与手段12と、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を発色させる発色手段14と、を有する。また、任意の構成として、定着手段16としての定着装置および消色手段18としての消色装置を有する。
【0019】
かかる構成とすれば、一般的な電子写真法と異なり感光体やその周辺装置が必要なくなるため、単純かつ安価な構成とすることができる。また、上記トナーを使用し、発色情報付与手段および発色手段による処理を施すことで、良好な品質の画像を形成することができる。また、記録媒体としては普通紙を使用することができるため、この場合は高価な感熱紙を予め用意する必要がない。記録媒体のその他の例としては、OHP、布が挙げられる。なお、機器構成を工夫すれば、上記のような可撓性の記録媒体だけでなく、剛体にも作像することができる。
【0020】
本発明の画像形成装置は、記録媒体の表面にその都度、本発明に係るトナーを塗布して使用するので、記録媒体として普通紙など所望の材料を選ぶことができる。そのため、例えば、特開平4−211252公報などに開示された方法のごとく感光性材料を予め塗布された画像形成部材を使用する必要もなくコストの低減が図れる。以下、本発明の画像形成方法を、図1を用いて具体的に説明する。
【0021】
<トナー層形成工程>
まず、記録媒体19の画像を形成しようとする面には、トナー層形成手段10である塗布装置により、本発明に係るトナーが均一に塗布される。この塗布装置は、公知の様々の塗布手段を用いることができる。例えば、電子写真装置のごとく静電的に均一帯電された帯電面を発色粒子で全面ベタ像を得た後に転写部材へ転写する方法、発色粒子を、微小間隙を通して記録媒体上に乾式均一塗布する方法、発色粒子が溶解若しくは膨潤するなどしてその本来の機能を妨げることが無いような分散媒中に分散させてこれを記録媒体上に塗布、あるいは噴霧塗布する方法など、である。
【0022】
塗布装置は、本発明に係るトナーを記録媒体表面に所望の解像度等画像品質が得られる程度に均一に、少なくとも一層以上の発色粒子を塗布する必要が有り、この目的に合致する塗布装置ならばその全てが使用可能である。
【0023】
また、形成されたトナー層において、後述する発色情報付与のための光が、当該照射された部分全体に行き渡らなければならないため、トナー層厚は一定以下に抑えることが好ましい。具体的には、べた画像においてトナー層は3層以下であることが好ましく、2層以下であることがより好ましい。なお、上記トナー層厚は、表面に形成されたトナー層の厚さを測定し、これをトナーの個数平均粒径で除した値である。
【0024】
<発色情報付与工程>
次に、こうして得た発色粒子の均一塗布面に対して、発色情報付与手段12である露光装置により画像情報とともにその発色情報が与えられる。このとき、本発明に係るトナーが特定色に発色するための波長の光を所定の解像度と強度で照射するものであれば何でもよい。例えば、LEDイメージバー、レーザROS等である。発色に供される波長は、本発明に係るトナーの材料設計により決まる。なお、本発明に係るトナーおよび波長については、後述する。
【0025】
なお、トナー層に照射される光の照射スポット径は、形成される画像の解像度が100〜2400dpiの範囲となるよう、10〜300μmの範囲となるように調整されることが好ましく、20〜200μmの範囲とすることがより好ましい。
【0026】
発色あるいは非発色状態維持のために供される光の波長は、使用されるトナーの材料設計により決まるが、例えば、特定波長の光照射により発色するトナー(光発色型トナー)を用いる場合、イエロー(Y色)に発色させるときは405nmの光(λ光とする)を、マゼンタ(M色)に発色させるときは535nmの光(λ光とする)を、シアン(C色)に発色させるときは657nmの光(λ光とする)を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。
【0027】
また、二次色に発色させる時には、前記光の組み合わせになり、レッド(R色)に発色させる時はλ光及びλ光を、グリーン(G色)に発色させる時はλ光及びλ光を、ブルー(B色)に発色させる時はλ光及びλ光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。さらに、三次色であるブラック(K色)に発色させるときは上記λ光、λ光及びλ光をその発色させる所望の位置に重ねて照射する。
【0028】
一方、特定波長の光照射により非発色状態を維持するトナー(光非発色型トナー)の場合には、例えば、イエロー(Y色)を発色させないようにするときは405nmの光(λ光)を、マゼンタ(M色)に発色させないようにするときは535nmの光(λ光)を、シアン(C色)に発色させないようにするときは657nmの光(λ光)を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。したがって、Y色に発色させる時はλ光及びλ光を、M色に発色させる時はλ光及びλ光を、C色に発色させる時はλ光及びλ光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射することとなる。
【0029】
また、二次色に発色させる時には、前記光の組み合わせになり、レッド(R色)に発色させる時はλ光を、グリーン(G色)に発色させる時はλ光を、ブルー(B色)に発色させる時はλ光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。さらに、三次色であるブラック(K色)に発色させるときはその発色させる所望の位置には露光しないようにする。
【0030】
発色情報付与装置からの光は、必要に応じてパルス巾変調、強度変調、左記2つを組み合わせたものなど、公知の画像変調方法が使用可能である。また、光の露光量はそれぞれで、0.05〜0.8mJ/cmの範囲とすることが好ましく、0.1〜0.6mJ/cmの範囲とすることがより好ましい。特にこの露光量に関しては、必要露光量は現像されたトナーの量と相関があり、例えば、トナー現像量(べた)が約5.5g/mに対し0.2〜0.4mJ/mの範囲の露光を行うことが好ましい。
【0031】
<発色工程>
発色手段による発色の方法については後述する発色粒子のメカニズムに応じて様々の方法が考えられる。例えば、光硬化型の樹脂を用いて発色をさせ、または制限する方法では、発光装置を、加圧してカプセル化した発色粒子を破壊することで発色をさせ、または制限する方法では加圧装置を、溶剤雰囲気中で発色粒子を物理的、または化学的に変質させて発色をさせ、または制限する方法では溶剤雰囲気キャビネットの如き装置を、などである。
【0032】
しかしながら、こうした化学的な有機反応は一般的に泳動、拡散による反応速度が遅いためいずれの方法をとるにしても充分な拡散エネルギーを与える必要があり、こういった点で加熱して反応を促す方法が最も優れているといえる。
【0033】
発色手段14としての発色装置は、少なくとも熱により発色させる加熱機構を有することが好ましい。加熱手段としては、従来の画像形成装置に使用され得るものを使用できるため、より単純かつ安価な構成とすることができる。
【0034】
発色装置の内部(図1の場合、記録媒体19の画像形成面側のロール)には、加熱ヒーター(熱源)が内包されることが好ましい。
【0035】
発色装置が図1に示すように2つのロールからなる場合、記録媒体19の画像形成面とは反対側のロール(加圧部材)には、公知の加圧定着用のロールまたは特許第3298354号記載の如きベルト装置が使用できる。
【0036】
<定着工程>
定着手段16としての定着装置は必ずしも必須ではない。例えば、分散媒が揮発性液体である場合、分散媒の揮発に伴って発色粒子は画像形成部材面に定着されることが期待できる。定着装置は必ずしも発色手段14による発色工程後でなくても良い。加熱による定着方法でなければトナー層形成手段10による塗布工程後でも良く、また熱による発色手段14と兼ねても良い。
【0037】
<消色工程>
消色手段18としての消色装置は、使用する発色粒子の設計に依存し、例えば、特開平4−211252公報などに開示された方法ではその増感剤によって固有の色調を持つため、光エネルギーを与えることで分解させ無色化させると得られたカラー画像の品質を向上させることができる。従って、消色装置は、発色粒子の設計に依存するため必ずしも必要ではない。使用する場合、公知のランプ、例えば、蛍光灯、LED、EL等が使用でき、その波長及び照度は前述のように本発明に係るトナーの設計に依存する。
【0038】
以下に、上記発色情報付与のための露光がどのようなタイミングで、どのような位置制御により行われるかを簡単に説明する。
【0039】
図2は、本発明の画像形成装置における印字制御部の具体的な回路ブロック図を示す。同図において、論理和回路40、発振回路42、マゼンタ発色制御回路44M、シアン発色制御回路44C、イエロー発色制御回路44Y、ブラック発色制御回路44Kによりプリンタコントローラが構成されている。一方、光書込ヘッド62及び発色情報付与露光ヘッド64により露光部が構成されている。
【0040】
図示しないインターフェース(I/F)によって、入力されたRGB信号がCMYK値に変換された画像データは、更にインターフェース(I/F)からマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)の画素データとして論理和回路40に出力される。ここで、論理和回路40はCMYKの論理和を計算し、光書込ヘッド62に出力する。
【0041】
すなわち、CMYKの全ての画素データを含む論理和のデータを光書込ヘッド62に出力し、トナー層に光書込みを行う。
【0042】
また、CMYKの画素データは対応するマゼンタ発色制御回路44M〜ブラック発色制御回路44Kにも供給され、発振回路42から出力される発振信号fm、fc、fy、fkに同期して発色情報付与露光ヘッド64に出力される。すなわち、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれに対応する発色データが発色情報付与露光ヘッド64に供給され、トナー層に対応して発色または非発色状態を維持するための特定波長の光が照射される。このようにして、照射される光を受けたトナー内で、後述する光硬化反応等が起こり、画像情報を含む発色情報が付与される。
【0043】
例えば、マゼンタ発色制御回路44Mから出力された発色信号fmはトナー内の発色部に前記λ光を照射し、該トナーをマゼンタ(M)色の発色が可能な状態とする。また、シアン発色制御回路44Cから出力された発色信号fcはトナー内の発色部に前記λ光を照射し、該トナーをシアン(C)色の発色が可能な状態とする。さらに、イエロー(Y)及びブラック(K)についても同様であり、イエロー発色制御回路44Y、ブラック発色制御回路44Kから出力される発色信号fy、fkは、トナー内の発色部に前記λ光またはλ光、λ光及びλ光を照射し、イエロー(Y)またはブラック(K)の発色が可能な状態とする。
【0044】
以上、本発明における発色情報付与工程(手段)について、フルカラー画像形成を行う場合の機構について説明したが、本発明における発色情報付与工程は、イエロー、マゼンタ及びシアンのうちのいずれかを発色させるモノカラー画像形成のための発色情報付与工程であってもよい。この場合は、発色情報付与露光ヘッド54からは、前記イエロー、マゼンタ及びシアンのうちの所望の発色に対応する特定波長の光のみを照射する。その他の好ましい条件等については、フルカラー画像形成時における条件等と同様である。
【0045】
[2]第2の画像形成装置:
第2の画像形成装置は、第1の画像形成装置におけるトナー保持部材がドラム状基体であり、さらに、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を記録媒体上に転写する転写手段を有する。
【0046】
第2の画像形成装置は、図3に示すように、トナー保持部材であるドラム状基体20の周囲に右回りで、トナー層形成手段21、発色情報付与手段22、転写手段23、不要なトナーや不純物を除去するクリーナ24が設けられている。また、転写手段23によりトナー層Tが転写された記録媒体に対し、該トナー層を発色させる発色手段25と、任意の消色装置26が設けられている。なお、図3中、図1と同一名称の部材は、図1の場合と同様な機能を有する(図4のおいても同様)。
【0047】
画像を形成するには、まず、ドラム状基体20を図3上、右回りに回転させる。本発明に係るトナーがドラム状基体20に転移しうる適度なバイアスを印加しつつ、このドラム状基体20に対し、トナー層形成手段(トナー層形成工程)を通過する際、トナー層形成手段に接触または非接触状態で本発明に係るトナーを均一(充分な発色が出来る程度で少なくとも1層)に塗布する。
【0048】
塗布面に波長の異なる細光(必ずしもレーザでなくても良くLEDやその他の発光装置が使用可能、本態様ではレーザ光を使用)でそれぞれの露光部分において均一塗布された感光性トナーの特定色への発色の情報をそれぞれ与える。
【0049】
レーザ照射を受けたトナー中の特定色発色要素(一つのトナー中には三原色に発色可能なそれぞれの発色要素が含まれる)が、その後の発色装置によって発色反応が行えなくなり、その特定色が発色できなくなる。
【0050】
その後、この本発明に係るトナーとは逆極性にバイアスを与えつつ転写手段23により紙などの記録媒体へ写し取る。発色工程は、第1の画像形成装置の場合と同様である。
【0051】
発色工程に熱源を用いると、マイクロカプセルトナーのシェルを構成する材料が熱可塑性樹脂である場合には、発色装置として用いた加熱源をそのまま定着装置として兼ねることができる。但し、シェルが易溶融性であって定着装置として加熱と共に加圧をすることでマイクロカプセル中の発色剤と顕色剤を隔てる隔壁まで溶融破壊してしまう場合には、別の定着装置を用いるなど、本構成で述べたことと同じである。実施の方法に応じて公知の定着装置が利用できるのも同様である。また、消色工程も同様で、使用する場合、公知のランプ、例えば、蛍光灯、LED、EL等が使用でき、その波長及び照度は同様に使用される増感色素の設計に依存する。
【0052】
第1の画像形成装置は、記録媒体が剛体の場合は良いが、紙や布などの場合、表面粗度、波うち、歪みなどの影響で露光装置により三色の発色をさせる場合の照射位置精度が劣ることがある。ドラム状基体のように表面が精度良く作成されていれば、レーザ照射位置が精度良く行われ、画像精度や各色の色ずれが抑えられより高画質の画像を得ることができる。また、一列に各工程を並べた装置に比べて、図3で示すように、ドラム状基体の周囲に各工程を担う装置を配置するので装置の小型化も期待できる。
【0053】
[3]第3の画像形成装置:
第3の画像形成装置は、第2の画像形成装置でさらに、帯電手段および除電手段を有する構成である。すなわち、図4に示すように、トナー保持部材であるドラム状基体30の周囲に右周りで、帯電手段31、除電手段32、トナー層形成手段33としての現像装置、発色情報付与手段34、転写手段35、クリーナ36が設けられている。また、転写手段35によりトナー層Tが転写された記録媒体に対し、該トナー層Tを発色させる発色手段37と、任意の消色装置38が設けられている。
【0054】
第3の画像形成装置では、ドラム状基体30を電子写真法で用いられるような感光体で構成して、帯電手段31である帯電装置により帯電し、明らかに画像を作成しない領域に除電手段32による除電露光(反転現像にあっては画像域への画像露光)を与えることで、その部分に本発明に係るトナーを塗布しないで済む。このことにより本発明に係るトナーの消費の抑制になる。画像を形成する領域は露光装置で照射する位置が予めわかっているので、それら3つのレーザ光照射位置の和として容易に知ることができる。このことから逆に画像の存在しない領域は簡単に特定できる。
【0055】
露光装置による発色情報露光位置に合せてその画像位置を除く部分への除電露光(反転現像にあっては露光装置による発色露光位置と同じ位置への画像露光)を行うことも容易に考え得るが、除電露光装置(反転現像にあっては画像露光装置)と発色情報を付与するための露光装置との配置精度、露光照射位置精度など、調整が難しくコストアップ要因となるばかりか生産性にも影響を及ぼすことが考えられる。従って、この態様では画像全体をいくつかの領域(例えば、全体を300程度の方形域に分割し、画像の有無を判断してその領域に除電露光(反転現像にあたっては画像露光)を与えるようにすることで感光性トナーの消費を抑えるとともに前記のような二つの露光装置(発色情報を与えるための露光装置と画像の有無により照射する除電露光装置、または画像露光装置)の精度をそれほど要さずに装置を構成できる。なおこの分割域を増やせば感光性トナーの消費をより抑制できるし、分割域を減らせば上記露光装置の互いの位置精度、照射位置精度などをより簡単に配置できる。
【0056】
<使用するトナー>
次に、本発明に使用されるトナーについて説明する。
本発明に使用するトナーは、前述のように、光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持することができるように制御されるトナーであり、「光による発色情報の付与」「発色または非発色の状態を維持する」についても前記の通りである。
【0057】
上記のような機能を有するトナーとしては、種々のタイプがあるが、例えば前記特許文献2に開示されているトナーは、外部刺激を受けて物質透過性が変化するカプセル壁を有する複数のマイクロカプセルをトナー樹脂中に分散混合して成る粒子であり、この粒子中に互いに混合されて発色反応を起こす2種類の反応性物質のうちの一方(各色染料前駆体)が、マイクロカプセル内に、他方(顕色剤)がマイクロカプセル外のトナー樹脂中に含まれるものである。
【0058】
このトナーでは、カプセル壁として特定波長の光を照射した際に物質透過性が増大する光異性化物質を用い、このシス−トランス遷移を利用して光の照射や超音波を印加した際に、カプセル内外に存在する2種類の反応性物質が反応して発色する。
【0059】
従って、このようなトナーでは前記マイクロカプセルをトナー中に多く存在させることができず、またこれらが偏在してしまうこともあるため、本発明に用いた場合にマイクロカプセルが十分に受光できない場合がある。
【0060】
このため、本発明では、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、該第1成分及び第2成分のいずれかを含む光硬化性組成物と、を有し、光による発色情報の付与により前記光硬化性組成物が硬化または未硬化の状態を維持して、前記発色のための反応が制御されるトナー(以下、「Fトナー」という場合がある)を用いることが好ましい。上記トナーの発色メカニズムと簡単な構成について、以下に説明する。
【0061】
前記Fトナーは、後述するように、バインダー樹脂中に発色部と呼ばれる光による発色情報が付与された際に、特定のひとつの色に発色可能な(または非発色状態を維持することが可能な)連続した領域を1つ以上有する。
【0062】
図5は、Fトナー中の前記発色部の一例を示す模式図であり、(A)は1つの発色部の断面図であり、(B)はさらにその発色部を拡大したものである。
【0063】
図5(A)に示すように、発色部60中には、各色の発色剤を含有する発色性マイクロカプセル50とそれを取り巻く組成物58とから構成され、図5(B)に示すように、組成物58は、マイクロカプセル50に含有される発色剤(第1成分)52と近接または接触することで発色させる重合性官能基を有した顕色剤モノマー(第2成分)54と光重合開始剤56とを含んでいる。
【0064】
トナー粒子を構成する発色部60において、発色性マイクロカプセル50に封入する発色剤52としては、発色色相の鮮やかさに優れたトリアリール系ロイコ化合物などが好適である。このロイコ化合物(電子供与性)を発色させる顕色剤モノマー54としては電子受容性化合物が好ましい。特にフェノール系化合物が一般的であり、感熱、感圧紙などに利用されている顕色剤から適宜選択できる。このような電子供与性の発色剤52と電子受容性の顕色剤モノマー54とが酸塩基反応することで発色剤が発色することになる。
【0065】
光重合開始剤56としては、可視光により感光し顕色剤モノマー54を重合させるためのトリガーとなる重合性ラジカルを発生する分光増感色素が用いられる。例えば、R色、G色、B色の如き三原色露光に対して、顕色性モノマー54が十分な重合反応を進行させることができるように光重合開始剤56の反応促進剤が用いられる。例えば、露光光を吸収する分光増感色素(カチオン)とホウ素化合物(アニオン)からなるイオンコンプレックスを用いることにより、露光により分光増感色素が光励起されホウ素化合物に電子移動することで重合性ラジカルが生成し重合を開始する。これらの材料を組み合わせることにより、感光性の発色部60として、0.1〜0.2mJ/cm程度の発色記録感度を得ることができる。
【0066】
上記構成の発色部60に対する発色情報のための光照射の有無により、発色部60によっては重合された顕色剤化合物と重合されなかった顕色剤モノマー54とを有するものが存在することになる。その後の加熱などの発色装置によって、重合されなかった顕色剤モノマー54を有する発色部60では、この顕色剤モノマー54が熱などによって泳動し、発色剤マイクロカプセル50の隔壁の空孔を泳動通過して発色剤マイクロカプセル中に拡散する。マイクロカプセル50中に拡散された顕色剤モノマー54と発色剤52とは、前述のように発色剤52が塩基性であり、顕色剤モノマー54が酸性であることにより発色剤52を酸塩基反応によって発色させることになる。
【0067】
一方、重合反応を生じた顕色剤化合物は、この後の加熱などによる発色工程では重合による嵩高さによりマイクロカプセル50の隔壁の空孔を拡散通過できず、発色性マイクロカプセル中の発色剤52と反応ができないため発色することができない。したがって、発色性マイクロカプセル50は無色のままで残ることとなる。すなわち、特定波長光を照射された発色部60は発色されに存在することになる。
【0068】
発色後、適当な段階で再度全面を白色光源で露光することにより、残留している重合未了の顕色性モノマー54を全て重合させて安定した画像定着がなされるとともに、残留分光増感色素を分解することで地色の消色が行われる。なお、可視光域に対応する光重合開始剤56の分光増感色素はその色調が最後まで地色として残留してしまうが、この分光増感色素の消色には色/ホウ素化合物の光消色現象を利用することができる。すなわち、光励起された分光増感色素からホウ素化合物に電子移動することで重合性ラジカルが生成するが、このラジカルはモノマーの重合を引き起こす一方で、励起された色素ラジカルと反応して色素の色分解を起し、結果的に色素を消色させることができる。
【0069】
前記Fトナーでは、このような異なる発色を行なう発色部60(例えば、Y色、M色、C色に発色する)を、それぞれの顕色剤モノマー54が目的とする発色剤52以外の発色剤と干渉し合わない状態(互いに隔離された状態)にして一つのマイクロカプセルとして構成し用いることができる。そしてこのFトナーでは、電子供与性発色剤を含むマイクロカプセル以外の空間を電子受容性顕色剤及び光硬化性組成物が埋め、かつこれにより構成される発色部が受光するため、一粒のトナー粒子における受光効率のよさは、前記特許文献2に開示されたトナーに比べ圧倒的に高い。したがって、他のトナーと比較して、背面露光の効果を十分に活用できるものである。
【0070】
さらに、前記のように発色情報付与メカニズムが可逆反応ではないことより、加熱による発色までに時間的制約がないというメリットを有する結果、低速域までのプリントも可能、すなわち、広いスピードレンジに対応可能となり、加えて、加熱による発色が行なわれる定着器等の配置場所についても自由度が高いというメリットも有している。
【0071】
Fトナーの構成について、さらに詳述する。
Fトナーは、発色可能な物質(発色性物質)として、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分と第2成分とを含む。このように、2種類の反応性成分の反応を利用して発色させることにより、発色の制御が容易になる。なお、前記第1成分、第2成分は、発色する前の状態において予め着色していてもよいが、実質的に無色の物質であることが特に好ましい。
【0072】
前記発色制御を容易とするために、発色性物質として互いに反応した際に発色する2種類の反応性成分を用いるが、これらの反応性成分が、光による発色情報が付与されない状態でも物質拡散が容易な同一のマトリックス内に存在すると、トナーの保管時や製造時において、自発的な発色が進行してしまう場合がある。このため、前記反応性成分は、その種類毎に、発色情報が付与されない限り互いの領域への物質拡散が困難な異なるマトリックス内に含まれていること(互いに隔離されていること)が必要である。
【0073】
このように光による発色情報が付与されない状態での物質拡散を阻害して、トナーの保管時や製造時における自発的な発色を防止するためには、2種類の反応性成分の第1成分が第1のマトリックスに含まれ、第2成分が第1のマトリックス外(第2のマトリックス)に含まれ、第1のマトリックスと第2のマトリックスとの間には、両マトリックス間の物質の拡散が阻害されると共に、熱等の外部刺激が付与された際には、刺激の種類、強度や、組み合わせに応じて両マトリックス間の物質の拡散を可能とするような機能を持つ隔壁が設けられることが好ましい。
【0074】
なお、このような隔壁を利用して2種類の反応性成分をトナー中に配置するには、マイクロカプセルを利用することが好適である。この場合、Fトナーには、2種類の反応性成分のうち、例えば第1成分がマイクロカプセル内に含まれ、第2成分がマイクロカプセル外に含まれることが好ましい。この場合、マイクロカプセル内部が前記第1のマトリックス、マイクロカプセル外が前記第2のマトリックスに相当する。
【0075】
このマイクロカプセルは、芯部と、該芯部を被覆する外殻とを有するものであり、熱等の外部刺激が付与されない限りマイクロカプセル内外の物質の拡散を阻害すると共に、外部刺激が付与された際には、刺激の種類、強度や、組み合わせに応じてマイクロカプセル内外の物質の拡散を可能とする機能を有するものであれば特に限定されない。なお芯部には、前記反応性成分の一方が少なくとも含まれる。
【0076】
また、マイクロカプセルは、光の照射や圧力などの刺激の付与によってマイクロカプセル内外の物質拡散を可能とするものでもよいが、加熱処理によりマイクロカプセル内外の物質拡散を可能とする(外殻の物質透過性が増大する)熱応答性マイクロカプセルであることが特に好ましい。
【0077】
なお、刺激が付与された際のマイクロカプセル内外の物質拡散は、画像形成時の発色濃度の低下を抑制したり、高温環境下に放置された画像のカラーバランスの変化を抑制する観点からは、不可逆的なものであることが好ましい。それゆえ、マイクロカプセルを構成する外殻は、加熱処理や光照射等の刺激の付与による軟化、分解、溶解(周囲の部材への相溶)、変形等により、物質透過性が不可逆的に増大する機能を有することが好ましい。
【0078】
次に、前記Fトナーがマイクロカプセルを含む場合の好ましい構成について説明する。
このようなトナーとしては、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、マイクロカプセルと、第2成分を分散させた光硬化性組成物とを含むものであることが好ましく、このようなトナーとしては、以下の3つの態様が挙げられる。
【0079】
すなわち、前記Fトナーは、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含み、第1成分がマイクロカプセルに含まれ、第2成分が光硬化性組成物中に含まれる態様(第1の態様)、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、光硬化性組成物を含むマイクロカプセルとを含み、第1成分がマイクロカプセル外に含まれ、第2成分が光硬化性組成物内に含まれる態様(第2の態様)、あるいは、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、第1成分を含む一のマイクロカプセルと、第2成分を分散させた光硬化性組成物を含む他のマイクロカプセルとを含む態様(第3の態様)のいずれかであることが好ましい。
【0080】
これら3つの態様の中では、特に第1の態様が、光による発色情報付与前の安定性、発色の制御等の観点から好ましい。なお、以下のトナーの説明においては、基本的に第1の態様のトナーを前提としてより詳細に説明するが、以下に説明する第1の態様のトナーの構成、材料、製法等は、第2の態様や第3の態様のトナーにおいても、勿論、利用/転用可能である。
【0081】
なお、上述した熱応答性マイクロカプセルと光硬化性組成物とを組み合わせて用いたFトナーは、以下の2つのタイプのいずれかであることが特に好ましい。
(1)光硬化性組成物が未硬化の状態で加熱処理しても、未硬化の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が抑制され、発色情報付与光の照射によって光硬化性組成物が硬化した後に加熱処理すると、硬化後の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が促進されるタイプのトナー(以下、「光発色型トナー」と称す場合がある)。
(2)光硬化性組成物が未硬化の状態(第2成分が重合していない状態)で加熱処理すると、未硬化の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が促進され、発色情報付与光の照射によって光硬化性組成物が硬化した後(第2成分が重合した後)に加熱処理すると、硬化後の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が抑制されるタイプのトナー(以下、「光非発色型トナー」と称す場合がある)。
【0082】
前記光発色型トナーと光非発色型トナーとの主たる違いは、光硬化性組成物を構成する材料にあり、光発色型トナーでは、光硬化性組成物中に(光重合性を有さない)第2成分と光重合性化合物とが少なくとも含まれるのに対して、光非発色型トナーは、光硬化性組成物中に、分子中に光重合性基を有する第2成分が少なくとも含まれる。
【0083】
なお、光発色型トナーおよび光非発色型トナーに用いられる光硬化性組成物中には、光重合開始剤が含まれていることが特に好ましく、必要に応じてその他種々の材料が含まれていてもよい。
【0084】
上記光発色型トナーに用いられる光重合性化合物および第2成分としては、光硬化組成物が未硬化の状態で両者の間に相互作用が働き、光硬化性組成物中での第2成分の物質拡散が抑制され、発色情報付与光の照射による光硬化性組成物の硬化(光重合性化合物の重合)後の状態で両者の間の相互作用が減少して、光硬化性組成物中での第2成分の拡散が容易となる材料が用いられる。
【0085】
従って、光発色型トナーにおいては、加熱処理(発色工程)前に予め光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光を照射しておくことによって、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が容易な状態となる。このため、加熱処理された際に、マイクロカプセルの外殻の溶解等によって、マイクロカプセル内の第1成分と光硬化性組成物中の第2成分との反応(発色反応)が起こる。
【0086】
逆に、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光を照射せずに、そのまま加熱処理しても第2成分は光重合性化合物にトラップされ、マイクロカプセル中の第1成分と接触することができず、第1成分と第2成分との反応(発色反応)が起こらない。
【0087】
以上説明したように、光発色型トナーでは、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光の照射の有無と、加熱処理とを組み合わせて付与することによって、第1成分と第2成分との反応(発色反応)を制御できるため、トナーの発色を制御できる。
【0088】
また、光非発色型トナーにおいては、第2成分自体が光重合性を有するため、発色情報付与光を照射したとしても、この光の波長が光硬化性組成物を硬化させる波長でなければ、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が容易な状態を保てるため、この状態で加熱処理するとマイクロカプセルの外殻の溶解等によって、マイクロカプセル内の第1成分と光硬化性組成物中の第2成分との反応(発色反応)が起こる。
【0089】
逆に、加熱処理前に光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光が照射されると、光硬化性組成物中に含まれる第2成分同士が重合してしまうため、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が困難となる。それゆえ、加熱処理しても第2成分は、マイクロカプセル中の第1成分と接触することができず、第1成分と第2成分との反応(発色反応)が起こらない。
【0090】
以上説明したように、光非発色型トナーでは、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光の照射の有無と、加熱処理とを組み合わせて付与することによって、第1成分と第2成分との反応(発色反応)を制御できるため、トナーの発色を制御できる。
【0091】
次に、前記Fトナーの好適な構造について、トナーが、前記光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む場合についてより詳細に説明する。この場合、トナーは光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を1つのみ有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。ここで、上記「発色部」とは、前述のように外部刺激が付与された際に、特定のひとつの色に発色可能な連続した領域を意味する。
【0092】
なお、トナーに2以上の発色部が含まれる場合、同じ色に発色可能な1種類の発色部のみがトナー中に含まれていてもよいが、互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部がトナー中に含まれることが特に好ましい。その理由は、ひとつのトナー粒子の発色可能な色が、前者の場合は1種類のみに限定されるが、後者の場合は2種類以上とすることができるからである。
【0093】
例えば、互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部としては、イエロー色に発色可能なイエロー発色部と、マゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色部と、シアン色に発色可能なシアン発色部とを含むような組み合わせが挙げられる。
【0094】
この場合、例えば、外部刺激の付与によりいずれか1種類の発色部のみが発色した場合には、トナーは、イエロー、マゼンタ、あるいは、シアンのいずれかの色に発色することができ、いずれか2種類の発色部が発色した場合には、これら2種類の発色部の発色した色を組み合わせた色に発色することができ、ひとつのトナー粒子で、多様な色を表現することが可能となる。
【0095】
なお、トナー中に互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部が含まれる場合の発色する色の制御は、各々の種類の発色部に含まれる第1成分および第2成分の種類や組み合わせを異なるものとすることの他に、各々の種類の発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に用いる光の波長を異なるものとすることにより実現できる。
【0096】
すなわち、この場合、発色部の種類毎に発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に必要な光の波長が異なるため、制御刺激として、発色部の種類に応じた波長の異なる複数種の発色情報付与光を用いればよい。なお、発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に必要な光の波長を異なるものとするには、発色部の種類毎に異なる波長の光に感応する光重合開始剤を光硬化性組成物中に含有させることが好適である。
【0097】
例えば、イエロー、マゼンタ、および、シアンに発色可能な3種類の発色部がトナー中に含まれる場合、各々の種類の発色部に含まれる光硬化性組成物として、光の波長が405nm、532nmおよび657nmのいずれかに応答して硬化する材料を用いれば、これら3つの異なる波長の発色情報付与光(特定波長を有する光)を使い分けることによって、トナーを所望の色に発色させることができる。なお、発色情報付与光の波長としては、可視域の波長から選択することもできるが、紫外域の波長から選択してもよい。
【0098】
本発明に用いるトナーは、従来の顔料等の着色剤を用いたトナーに用いられるのと同様な結着樹脂を主成分とする母材を含むものであってもよい。この場合、母材中に、前記2以上の発色部の各々が粒子状のカプセルとして分散していることが好ましい(以下、カプセル状のひとつの発色部を「感光・感熱カプセル」と称する場合がある)。また、母材中には、従来の顔料等の着色剤を用いたトナーと同様に離型剤や、種々の添加剤が含まれていてもよい。
【0099】
感光・感熱カプセルは、マイクロカプセルや光硬化性組成物を含む芯部と、該芯部を被覆する外殻とを有し、この外殻は、後述するトナーの製造過程や、トナーの保管時において、感光・感熱カプセル内のマイクロカプセルや光硬化性組成物を感光・感熱カプセル外に漏れないように安定して保持できるものであれば特に限定されない。
【0100】
しかしながら、本発明においては、後述するトナーの製造過程において、第2成分が外殻を透過して感光・感熱カプセル外のマトリックスへ流出したり、他の色に発色可能な感光・感熱カプセル中の第2成分が外殻を透過して流入したりするのを防ぐために、非水溶性樹脂からなる結着樹脂や離型材等の非水溶性材料を主成分として含むものであることが好ましい。
【0101】
次に、前記Fトナーに用いられるトナー構成材料や、各トナー構成材料を調整する際に用いる材料・方法等について以下により詳細に説明する。
【0102】
この場合、トナーには、第1成分、第2成分、第1成分を含むマイクロカプセル、第2成分を含む光硬化性組成物が少なくとも用いられ、光硬化性組成物中には光重合開始剤が含まれることが特に好ましく、種々の助剤等が含まれていてもよい。また、マイクロカプセル内(芯部)には第1成分が固体状態で存在していてもよいが、溶媒と共に存在していてもよい。
【0103】
なお、前記光非発色型トナーにおいては、第1成分として電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物等が用いられ、第2成分として光重合性基を有する電子受容性化合物又は光重合性基を有するカプラー化合物等が用いられる。また、前記光発色型トナーにおいては、第1成分としては、電子供与性無色染料が用いられ、第2成分としては電子受容性化合物(「電子受容性顕色剤」あるいは「顕色剤」と称す場合がある)が用いられ、光重合性化合物としてはエチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物が用いられる。
【0104】
以上に列挙した材料に加えて、更に、従来の着色剤を用いたトナーを構成する材料と同様の各種材料;結着樹脂、離型剤、内添剤、外添剤等を必要に応じて適宜利用することができる。以下、各材料等についてより詳細に説明する。
【0105】
−第1成分および第2成分−
第1成分および第2成分の組合せとしては、下記(ア)〜(ツ)の組合せを好適に挙げることができる(下記例において、それぞれ前者が第1成分、後者が第2成分を表す。)。
【0106】
(ア)電子供与性無色染料と電子受容性化合物との組合せ。
(イ)ジアゾニウム塩化合物とカップリング成分(以下、適宜「カプラー化合物」と称する。)との組合せ。
(ウ)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機酸金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ。
(エ)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪酸鉄塩と、タンニン酸、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ。
(オ)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀塩のような有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属硫化物との組合せ、又は前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ。
【0107】
(カ)銀、鉛、水銀、ナトリウム等の硫酸塩等の重金属硫酸塩と、ナトリウムテトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ。
(キ)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ク)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機酸金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ケ)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪酸第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ。
(コ)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ。
【0108】
(サ)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪族重金属塩とジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ。
(シ)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せのようなオキサジン染料を形成するもの。
(ス)ホルマザン化合物と還元剤および/又は金属塩との組合せ。
(セ)保護された色素(又はロイコ色素)プレカーサーと脱保護剤との組合せ。
(ソ)酸化型発色剤と酸化剤との組合せ。
【0109】
(タ)フタロニトリル類とジイミノイソインドリン類との組合せ。(フタロシアニンが生成する組合せ。)
(チ)イソシアナート類とジイミノイソインドリン類との組合せ(着色顔料が生成する組合せ)。
(ツ)顔料プレカーサーと酸または塩基との組合せ(顔料が形成する組合せ)。
【0110】
上記に列挙した第1成分としては、実質的に無色の電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物が好ましい。前記電子供与性無色染料としては、従来より公知のものを使用することができ、前記第2成分と反応して発色するものであれば全て使用することができる。
【0111】
具体的には、フタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、ピリジン系、ピラジン系化合物、フルオレン系化合物等の各種化合物を挙げることができる。
【0112】
前記第2成分としては、前記光非発色型トナーの場合は同一分子内に光重合性基および第1成分と反応して発色する部位とを有する実質的に無色化合物であり、光重合性基を有する電子受容性化合物又は光重合性基を有するカプラー化合物等の第1成分と反応して発色し、かつ光に反応して重合し、硬化するという両機能を有するものであれば全て使用することができる。
【0113】
前記光重合性基を有する電子受容性化合物、即ち、同一分子中に電子受容性基と光重合性基とを有する化合物としては、光重合性基を有し、かつ第1成分の一つである電子供与性無色染料と反応して発色し、かつ光重合して硬化しうるものであれば全て使用することができる。
【0114】
また、光発色型トナーの場合の第2成分である電子受容性顕色剤としては、フェノール誘導体、含硫フェノール誘導体、有機のカルボン酸誘導体(例えば、サリチル酸、ステアリン酸、レゾルシン酸等)、及びそれらの金属塩等、スルホン酸誘導体、尿素もしくはチオ尿素誘導体等、酸性白土、ベントナイト、ノボラック樹脂、金属処理ノボラック樹脂、金属錯体等が挙げられる。
【0115】
さらに、光発色型トナーには、光重合性化合物としてエチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物が用いられ、これはアクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類などの分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物である。
【0116】
次に、前記光重合開始剤について説明する。前記光重合開始剤は、発色情報付与光を照射することによりラジカルを発生して光硬化性組成物内で重合反応を起こし、かつその反応を促進させることができる。この重合反応により光硬化性組成物が硬化する。
【0117】
前記光重合開始剤は、公知のものの中から適宜選択することができ、中でも、300〜1000nmに最大吸収波長を有する分光増感化合物と、該分光増感化合物と相互作用する化合物と、を含有するものであることが好ましい。
但し、前記分光増感化合物と相互作用する化合物が、その構造内に300〜1000nmに最大吸収波長を有する色素部とボレート部との両構造を併せ持つ化合物であれば、前記分光増感色素を用いなくてもよい。
【0118】
前記分光増感化合物と相互作用する化合物としては、前記第2成分中の光重合性基と光重合反応を開始しうる公知の化合物の中から、1種又は2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。
【0119】
この化合物を前記の分光増感化合物と共存させることにより、その分光吸収波長領域の照射光に敏感に感応し、高効率にラジカルを発生させうることから、高感度化が図れ、かつ紫外〜赤外領域にある任意の光源を用いてラジカルの発生を制御することができる。
【0120】
前記「分光増感化合物と相互作用する化合物」としては、有機系ボレート塩化合物、ベンゾインエーテル類、トリハロゲン置換メチル基を有するS−トリアジン誘導体、有機過酸化物又はアジニウム塩化合物が好ましく、有機系ボレート塩化合物がより好ましい。この「分光増感化合物と相互作用する化合物」を前記分光増感化合物と併用して用いることにより、露光した露光部分に局所的に、かつ効果的にラジカルを発生させることができ、高感度化を達成することができる。
【0121】
また、光硬化性組成物には重合反応を促進する目的で、さらに助剤として、酸素除去剤(oxygen scavenger)又は活性水素ドナーの連鎖移動剤等の還元剤や連鎖移動的に重合を促進するその他の化合物を添加することもできる。
【0122】
前記酸素除去剤としては、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト、第1銀塩又は酸素により容易に酸化されるその他の化合物が挙げられる。具体的には、N−フエニルグリシン、トリメチルパルビツール酸、N,N−ジメチル−2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリン酸が挙げられる。さらに、チオール類、チオケトン類、トリハロメチル化合物、ロフィンダイマー化合物、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類、有機過酸化物、アジド類等も重合促進剤として有用である。
【0123】
Fトナーでは、電子供与性無色染料やジアゾニウム塩化合物のような第1成分をマイクロカプセルに内包して使用する。
【0124】
マイクロカプセル化する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、米国特許第2800457号、同28000458号に記載の親水性壁形成材料のコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号、英国特許第990443号、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報、同42−771号公報等に記載の界面重合法、米国特許第3418250号、同3660304号に記載のポリマー析出による方法、米国特許第3796669号に記載のイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号に記載のイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同4087376号、同4089802号に記載の尿素−ホルムアルデヒド系、尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025455号に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシブロビルセルロース等の壁形成材料を用いる方法、特公昭36−9168号、特開昭51−9079号に記載のモノマーの重合によるin situ法、英国特許第952807号、同965074号に記載の電解分散冷却法、米国特許第3111407号、英国特許第930422号に記載のスプレードライング法、特公平7−73069号公報、特開平4−101885号公報、特開平9−263057号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0125】
使用しうるマイクロカプセル壁の材料は、油滴内部及び/又は油滴外部に添加される。前記マイクロカプセル壁の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアがより好ましい。前記高分子物質は、2種以上併用して用いることもできる。
【0126】
マイクロカプセルの体積平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲内となるように調整することが好ましく、0.3〜1.0μmの範囲内となるように調整することが更に好ましい。
【0127】
前記感光・感熱カプセルにはバインダーが含まれていてもよく、これは、1つの発色部を有するトナーにおいても同様である。
【0128】
バインダーとしては、前記光硬化性組成物の乳化分散に用いるバインダーと同様のもの、第1の反応性物質をカプセル化する際に用いる水溶性高分子のほか、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリメチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートやそれらの共重合体等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エチルセルロース、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の溶剤可溶性高分子、或いは、これらの高分子ラテックスを用いることもできる。中でも、ゼラチン及びポリビニルアルコールが好ましい。また、バインダーとして後述する結着樹脂を用いてもよい。
【0129】
また、Fトナーには、従来のトナーに用いられている結着樹脂を用いることができる。結着樹脂は、例えば、母材中に感光・感熱カプセルが分散した構造を有するトナーでは、母材を構成する主成分や感光・感熱カプセルの外殻を構成する材料として利用することができるがこれに限定されるものではない。
【0130】
結着樹脂としては特に限定されず、公知の結晶性や非晶性の樹脂材料を用いることができる。特に低温定着性を付与するには、シャープメルト性がある結晶性ポリエステル樹脂が有用である。また、無定形高分子(非晶質樹脂)としては、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂など公知の樹脂材料を用いることができるが、非結晶性ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0131】
その他、Fトナーは、上記に列挙した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、離型剤、無機微粒子、有機微粒子、帯電制御剤等の従来のトナーに用いられている公知の各種添加剤等が挙げられる
【0132】
次に、Fトナーの製造方法について簡単に説明する。
Fトナーは、凝集合一法等の公知の湿式製法を利用して作製されることが好ましい。特に、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含み、前記第1成分が前記マイクロカプセルに含まれ、前記第2成分が前記光硬化性組成物中に含まれる構造を有するトナーの作製に湿式製法は好適である。
【0133】
なお、上記構造を有するトナーに用いられるマイクロカプセルは熱応答性マイクロカプセルであることが特に好ましいが、光等、その他の刺激に応答するマイクロカプセルであってもよい。
【0134】
トナーの製造には、公知の湿式製法が利用できるが、湿式製法の中でも最高プロセス温度を低く抑えることができると共に、様々な構造を有するトナーの作製が容易であることから凝集合一法を利用することが特に好ましい。
【0135】
また、従来の顔料や結着樹脂を主成分とするトナーと比べると、上記構造を有するトナーは、低分子成分を主成分として含む光硬化性組成物が多く含まれるため、トナーの造粒過程で得られる粒子の強度は不十分となりやすいが、凝集合一法では、高いせん断力を必要としないため、この点でも凝集合一法を利用することは好適である。
【0136】
一般的に、凝集合一法は、トナーを構成する各種材料の分散液を調製した後、2種類以上の分散液を混合した原料分散液中で凝集粒子を形成する凝集工程と、原料分散液に形成された凝集粒子を融合する融合工程とを含むものであり、必要に応じて凝集工程と融合工程との間に、凝集粒子の表面に被覆層を形成する成分を付着させて被覆層を形成する付着工程(被覆層形成工程)とが実施されるものである。
【0137】
Fトナーの製造においても、原料として使用する各種分散液の種類や組み合わせは異なるものの、凝集工程、融合工程の他に、必要に応じて付着工程を適宜組み合わせることによりトナーを作製することができる。
【0138】
例えば、樹脂中に感光・感熱カプセル分散構造を有するトナーの場合には、まず、(a1)第1成分を含むマイクロカプセルを分散させたマイクロカプセル分散液と、第2成分を含む光硬化性組成物を分散させた光硬化性組成物分散液とを含む原料分散液中にて第1の凝集粒子を形成する第1の凝集工程と、(b1)前記第1の凝集粒子が形成された原料分散液に、樹脂粒子を分散させた第1の樹脂粒子分散液を添加して、前記凝集粒子表面に前記樹脂粒子を付着させる付着工程と、(c1)前記樹脂粒子をその表面に付着させた凝集粒子を含む原料分散液を加熱して融合させ、第1の融合粒子(感光・感熱カプセル)を得る第1の融合工程とを経ることにより、互いに異なる色に発色可能な1種類以上の感光・感熱カプセル分散液を調製する。
【0139】
続いて、(d1)前記1種類以上の感光・感熱カプセル分散液と、樹脂粒子を分散させた第2の樹脂粒子分散液とを混合した混合溶液中にて、第2の凝集粒子を形成する第2の凝集工程と、(e1)前記第2の凝集粒子を含む混合溶液を加熱して、第2の融合粒子を得る第2の融合工程とを経ることにより、感光・感熱カプセル分散構造を有するトナーを得ることができる。
【0140】
なお、第2の凝集工程で用いる感光・感熱カプセル分散液の種類は2種類以上が好ましい。また、(a1)〜(c1)工程を経て得られた感光・感熱カプセルをそのままトナー(すなわち1つの発色部のみを含むトナー)として利用してもよい。
【0141】
また、1つの発色部のみを含むトナーを作製する場合、上述した付着工程の代わりに、前記第1の凝集粒子が形成された原料分散液に、離型剤を分散させた離型剤分散液を添加して、凝集粒子表面に離型剤を付着させる第1の付着工程と、第1の付着工程を経た後の原料分散液に、樹脂粒子を分散させた第1の樹脂粒子分散液を添加して、この離型剤を表面に付着させた凝集粒子表面に樹脂粒子を付着させる第2の付着工程とを実施してもよい。
【0142】
本発明に用いることが可能なFトナーの体積平均粒径は、特に限定されず、トナーの構造や、トナー中に含まれる発色部の種類・数に応じて適宜調整することができる。
しかしながら、トナー中に含まれる互いに異なる色に発色可能な発色部の種類が2〜4種類前後(例えば、トナーがイエロー、シアン、マゼンタの各々に発色可能な3種類の発色部を含むような場合)であれば、各々のトナー構造に応じた体積平均粒径は以下の範囲内であることが好ましい。
【0143】
すなわち、例えばトナーの構造が樹脂中に感光・感熱カプセル(発色部)分散構造の場合には、トナーの体積平均粒径は5〜40μmの範囲内が好ましく、10〜20μmの範囲内がより好ましい。また、このような粒径を有する感光・感熱カプセル分散構造型のトナー中に含まれる感光・感熱カプセルの体積平均粒径は1〜5μmの範囲内であることが好ましく、1〜3μmの範囲内であることが好ましい。
【0144】
トナーの体積平均粒径が5μm未満では、トナー中に含まれる発色成分量が少なくなるため色再現性が悪化したり、画像濃度が低下してしまう場合がある。また、体積平均粒径が40μmを超えると、画像表面の凹凸が大きくなり、画像表面の光沢ムラが発生してしまう場合がある。また、画質が低下する場合がある。
【0145】
なお、その内部に複数の感光・感熱カプセルを分散させた感光・感熱カプセル分散構造型のトナーは、従来の着色剤を用いた小径トナー(体積平均粒径5〜10μm程度)と比べると粒径が大きくなる傾向にあるものの、画像の解像度は、トナーの粒径ではなく感光・感熱カプセルの粒径により決定されるため、より高精細な画像を得ることができる。加えて、粉体流動性にも優れるため、外添剤の量が少なくても十分な流動性が確保できると共に、現像性やクリーニング性も向上させることができる。
【0146】
一方、1つの発色部のみを有するトナーの場合には、上述した場合と比べると小径化がより容易であり、その体積平均粒径は3〜8μmの範囲内が好ましく、4〜7μmの範囲内が好ましい。体積平均粒径が3μm未満の場合には粒径が小さすぎるために粉体流動性が十分に得られなくなったり、十分な耐久性が得られない場合がある。また、体積平均粒径が8μmを超えると、高精細な画像が得られなくなる場合がある。
【0147】
本発明には、以上説明したFトナーをはじめ、光照射により(あるいは光が照射されないことにより)発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーであれば、用いる構成材料、トナーの構造、発色機構等によらず用いることができる。
【0148】
本発明に用いることができるトナーは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.95以上であることが好ましい。
【0149】
更に好ましくは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.25以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.97以上であることが更に好ましい。
【0150】
体積分布指標GSDvが1.30を超えた場合には、画像の解像性が低下する場合があり、また、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpの比(GSDv/GSDp)が0.95未満の場合、トナーの帯電性低下やトナーの飛散、カブリ等が発生し画像欠陥を招く場合がある。
【0151】
なお、本発明において、トナーの体積平均粒径や、上記した体積平均粒度分布指標GSDv、及び数平均粒度分布指標GSDpの値は、次のようにして測定し算出した。
【0152】
まず、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)等の測定器を用いて測定されたトナーの粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のトナー粒子の体積および数について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16v、および、数平均粒子径D16pと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50v、および、数平均粒子径D50pと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、および、数平均粒子径D84pと定義する。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、(D84v/D16v)1/2として定義され、数平均粒度指標(GSDp)は、(D84p/D16p)1/2として定義されるこれらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)および数平均粒度指標(GSDp)を算出できる。
【0153】
また、前記マイクロカプセルや感光・感熱カプセルの体積平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0154】
また、本発明のトナーは、下式(1)で表される形状係数SF1が、110〜130の範囲内であることが好ましい。
【0155】
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
〔但し、上記式(1)において、MLはトナーの最大長(μm)を表し、Aはトナーの投影面積(μm)を表す。〕
【0156】
形状係数SF1が110未満の場合には、画像形成の際に転写工程で、像担持体表面にトナーが残留しやすくなるため、この残留トナーの除去が必要となるが、残留トナーをブレード等によりクリーニングする際のクリーニング性を損ないやすく、結果として画像欠陥を生じる場合がある。
【0157】
一方、形状係数SF1が130を超える場合には、トナーを現像剤として使用する場合に、現像器内でのキャリアとの衝突によりトナーが破壊される場合がある。この際、結果として微粉が増加したり、これによってトナー表面に露出した離型剤成分により像担持体表面等が汚染され帯電特性を損なうことがあるばかりでなく、微粉に起因するかぶりの発生等の問題を起こすことがある。
【0158】
形状係数SF1はルーゼックス画像解析装置(株式会社ニレコ製、FT)を用いて以下のように測定した。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定し、個々のトナーについて、(ML/A)×(π/4)×100を算出し、これを平均した値を形状係数SF1として求めた。
【実施例】
【0159】
(トナー)
以下のようにして、結着樹脂中に発光部(感光・感熱カプセル)が分散した前記光非発色型のFトナーを得た。
【0160】
−マイクロカプセル分散液(1)の調製−
酢酸エチル16.9質量部に、イエローに発色可能な電子供与性無色染料(1)8.9部を溶解し、さらに、カプセル壁材(商品名:タケネートD−110N,武田薬品工業(株)製)20質量部とカプセル壁材(商品名:ミリオネートMR200,日本ポリウレタン工業(株)製)2質量部とを添加した。
得られた溶液を、8質量%フタル化ゼラチン42質量部と、水14質量部と、10質量%ドデシルベンゼンルスルホン酸ナトリウム溶液1.4質量部との混合液中に添加した後、温度20℃で乳化分散し、乳化液を得た。次いで、得られた乳化液に2.9%テトラエチレンペンタミン水溶液72質量部とを加え、攪拌しながら60℃に加温し、2時間経過後、電子供与性無色染料(1)を芯部に含む、平均粒径0.5μmのマイクロカプセル分散液(1)を得た。
なお、このマイクロカプセル分散液(1)に含まれるマイクロカプセルの外殻を構成する材料(上記とほぼ同様の条件でタケネートD−110NおよびミリオネートMR200を反応させて得られた材料)のガラス転移温度は100℃であった。
【0161】
−マイクロカプセル分散液(2)の調製−
電子供与性無色染料(1)を電子供与性無色染料(2)に変更した以外は、マイクロカプセル分散液(1)を調製する場合と同様にしてマイクロカプセル分散液(2)を得た。この分散液中のマイクロカプセルの平均粒径は0.5μmであった。
【0162】
−マイクロカプセル分散液(3)の調製−
電子供与性無色染料(1)を電子供与性無色染料(3)に変更した以外は、マイクロカプセル分散液(1)を調製する場合と同様にしてマイクロカプセル分散液(3)を得た。この分散液中のマイクロカプセルの平均粒径は0.5μmであった。
なお、マイクロカプセル分散液の調製に用いた電子供与性無色染料(1)〜(3)の化学構造式を以下に示す。
【0163】
【化1】

【0164】
−光硬化性組成物分散液(1)の調製−
重合性基を有する電子受容性化合物(1)および(2)の混合物100.0質量部(混合比率50:50)と熱重合禁止剤(ALI)0.1質量部とを酢酸イソプロピル(水への溶解度約4.3%)125.0質量部中で42℃にて溶解し混合溶液Iとした。
この混合溶液I中に、ヘキサアリールビイミダゾール(1)〔2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’テトラフェニルー1,2’−ビイミダゾール〕18.0質量部と、ノニオン性有機色素0.5質量部と、有機ホウ素化合物6.0質量部とを添加し42℃にて溶解し、混合溶液IIとした。
上記混合溶液IIを、8質量%ゼラチン水溶液300.1質量部と、10質量%界面活性剤(1)水溶液17.4質量部との混合溶液中に添加し、ホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000回転で5分間乳化し、その後、40℃で3時間脱溶媒処理を行った後、固形分が30質量%の光硬化性組成物分散液(1)を得た。
なお、光硬化性組成物分散液(1)の調製に用いた重合性基を有する電子受容性化合物(1)、重合性基を有する電子受容性化合物(2)、熱重合禁止剤(ALI)、ヘキサアリールビイミダゾール(1)、界面活性剤(1)、ノニオン性有機色素、および、有機ホウ素化合物の構造式を以下に示す。
【0165】
【化2】

【0166】
【化3】

【0167】
−光硬化性組成物分散液(2)の調製−
下記有機ボレート化合物(I)0.6質量部と、下記に示した分光増感色素系ボレート化合物(I)0.1質量部と、高感度化を目的とした下記助剤(1)0.1質量部と、酢酸イソプロピル(水への溶解度約4.3%)3質量部と、の混合溶液中に、重合性基を有する下記電子受容性化合物(3)5質量部を添加した。
【0168】
【化4】

【0169】
得られた溶液を、13質量%ゼラチン水溶液13質量部と、下記2質量%界面活性剤(2)水溶液0.8質量部と、下記2質量%界面活性剤(3)水溶液0.8質量部と、の混合溶液中に添加し、ホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000回転で5分間乳化し、光硬化性組成物分散液(2)を得た。
なお、光硬化性組成物分散液(2)の調製に用いた重合性基を有する電子受容性化合物(3)、助剤(1)、界面活性剤(2)及び界面活性剤(3)の構造式を以下に示す。
【0170】
【化5】

【0171】
【化6】

【0172】
−光硬化性組成物分散液(3)の調製−
分光増感色素系ボレート化合物(I)に代えて、前記に示した分光増感色素系ボレート化合物(II)0.1質量部を用いた以外は、光硬化性組成物分散液(2)を調製する場合と同様にして光硬化性組成物分散液(3)を得た。
【0173】
−樹脂粒子分散液の調製−
・スチレン:460質量部
・nブチルアクリレート:140質量部
・アクリル酸:12質量部
・ドデカンチオール:9質量部
以上の成分を混合溶解して溶液を調製した。続いて、アニオン性界面活性剤(ローディア社製、ダウファックス)12質量部をイオン交換水250質量部に溶解したものに、前記溶液を加えてフラスコ中で分散し乳化した乳化液(単量体乳化液A)を調製した。
また、アニオン性界面活性剤(ローディア社製、ダウファックス)1部を555質量部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと攪拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウオーターバスで加熱し、保持した。
【0174】
次に、過硫酸アンモニウム9部をイオン交換水43質量部に溶解した溶液を、重合用フラスコ中に定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、単量体乳化液Aをやはり定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを75℃に、3時間保持して重合を終了した。
これにより粒子のメジアン径が210nm、ガラス転移点が51.5℃、重量平均分子量が31000、固形分量が42質量%の樹脂粒子分散液を得た。
【0175】
−感光・感熱カプセル分散液(1)の調製−
・マイクロカプセル分散液(1):150質量部
・光硬化性組成物分散液(1):300質量部
・ポリ塩化アルミニウム:0.20質量部
・イオン交換水:300質量部
以上の成分を混合した原料溶液に硝酸を加えてpHを3.5に調整し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した後、フラスコに移し加熱用オイルバスでスリーワンモーターで攪拌しながら40℃まで加熱し、40℃で60分間保持した後、さらに樹脂粒子分散液を300質量部追加して60℃にて2時間緩やかに攪拌した。これにより感光・感熱カプセル分散液(1)を得た。
なお、この分散液中に分散する感光・感熱カプセルの体積平均粒径は3.53μmであった。また、この分散液の調製時に、分散液の自発的な発色は確認されなかった。
【0176】
−感光・感熱カプセル分散液(2)の調製−
・マイクロカプセル分散液(2):150質量部
・光硬化性組成物分散液(2):300質量部
・ポリ塩化アルミニウム:0.20質量部
・イオン交換水:300質量部
原料溶液として以上の成分を用いた以外は、感光・感熱カプセル分散液(1)を調製する場合と同様にして感光・感熱カプセル分散液(2)を得た。
なお、この分散液中に分散する感光・感熱カプセルの体積平均粒径は3.52μmであった。また、この分散液の調製時に、分散液の自発的な発色は確認されなかった。
【0177】
−感光・感熱カプセル分散液(3)の調製−
・マイクロカプセル分散液(3):150質量部
・光硬化性組成物分散液(3):300質量部
・ポリ塩化アルミニウム:0.20質量部
・イオン交換水:300質量部
原料溶液として以上の成分を用いた以外は、感光・感熱カプセル分散液(1)を調製する場合と同様にして感光・感熱カプセル分散液(3)を得た。
なお、この分散液中に分散する感光・感熱カプセルの体積平均粒径は3.47μmであった。また、この分散液の調製時に、分散液の自発的な発色は確認されなかった。
【0178】
−トナーの作製−
・感光・感熱カプセル分散液(1):750質量部
・感光・感熱カプセル分散液(2):750質量部
・感光・感熱カプセル分散液(3):750質量部
以上の成分を混合した溶液をフラスコに移し、フラスコ内を攪拌しながら加熱用オイルバス42℃まで加熱し、42℃で60分間保持した後、さらに樹脂粒子分散液を100質量部追加して緩やかに攪拌した。
【0179】
その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液でフラスコ内のpHを5.0に調整した後、攪拌を継続しながら55℃まで加熱した。55℃までの昇温の間、通常の場合、フラスコ内のpHは、5.0以下まで低下するが、ここでは水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下し、pHが4.5以下とならない様に保持した。この状態で55℃で3時間保持した。
【0180】
反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、5リットルビーカー中で40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分間、300rpmで攪拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、凍結真空乾燥を12時間行い、スチレン系樹脂中に感光・感熱カプセルが分散したトナー粒子を得た。このトナー粒子の粒径をコールターカウンターで測定したところ、体積平均粒径D50vは15.2μmであった。
【0181】
続いて、上記トナー粒子50質量部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)1.0質量部を添加し、サンプルミルで混合して外添トナーを得た。
【0182】
上記外添トナーおよび図1に示す画像形成装置を使用して、カラー画像の形成試験を行った。なお、塗布手段10である塗布装置はブレードを使用し、この擦り付けにより、トナー層を形成した。
【0183】
発色情報付与手段12である露光装置は、発光波長405nm、532nm、657nmの三つのガスレーザを用い、その画像情報源より画像情報及び発色情報に基づき発色粒子塗布面の所定位置に照射して発色粒子に発色情報を与えた。
【0184】
発色装置14である発色装置による発色は、ハロゲンランプを熱源として表面温度を約105℃に加熱してなる二本の圧接されたヒートローラの圧接ニップ間に上記画像情報を与えた後の記録媒体を通過させることで行った。
【0185】
定着装置16は前述したように必ずしも必要ではないが、105℃の加熱温度では充分な定着が見込まれない場合があるため、さらに、上記発色装置と同様のヒートローラ装置により表面温度を約180度に設定して行った。
【0186】
消色装置18は、トナーの発色をこれ以上進めないようにするもので、発色粒子に含まれる増感色素材の固有の色調により必ずしも必要ではないが、本実施例に使用した発色粒子ではあったほうが好ましく、本実施例では蛍光灯を用いて最終的に照射することで行なった。
【0187】
本実施例では、定着装置の配置を露光装置位置から時間距離で10秒から10分間離した場所とし、プロセススピード10mm/secから500mm/secのスピードレンジにおいて、良好なカラー画像を得ることが出来た。また、本実施例の画像形成装置においては、画像情報源とその情報付与手段(光源)が不要であるとともに両者の同期をとる手段も不必要となり装置のコストの低減、小型化が可能となった。
【0188】
(実施例2)
塗布装置を電子写真法の如き静電塗布により記録媒体上に転写する構成とし、露光装置をLEDイメージバーに変更した以外は、実施例1と同様にしてカラー画像の形成を行った。その結果、実施例1と同様の良好なカラー画像が得られた。
【0189】
(実施例3)
塗布装置を乳化剤とともに水に発色粒子を分散させ画像形成部材上に噴霧塗布する構成とし、発色装置をヒートチャンバ方式の加熱源を用いて約110℃の雰囲気中を通過させる構成とした以外は、実施例1と同様にしてカラー画像の形成を行った。その結果、実施例1と同様の良好なカラー画像が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の第1の画像形成装置を例示する概略構成図である。
【図2】印字制御部の回路ブロック図である。
【図3】本発明の第2の画像形成装置を例示する概略構成図である。
【図4】本発明の第3の画像形成装置を例示する概略構成図である。
【図5】トナーの発色機構を説明するための模式図であり、(A)は発色部、(B)はその拡大状態を示す。
【符号の説明】
【0191】
10・・・トナー層形成手段
12・・・発色情報付与手段
14・・・発色手段
16・・・定着手段
18・・・消色手段
19・・・記録媒体
A・・・搬送方向




【特許請求の範囲】
【請求項1】
光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーをトナー保持部材のトナー保持面に供給してトナー層を形成するトナー層形成手段と、
前記トナー層に光を照射して画像情報および発色情報を付与する発色情報付与手段と、
前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を発色させる発色手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー保持部材が記録媒体であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー保持部材がドラム状基体であり、さらに、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を記録媒体上に転写する転写手段を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
帯電手段および除電手段を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記発色手段が、少なくとも熱により発色させる加熱機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トナーが、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、該第1成分及び第2成分のいずれかを含む光硬化性組成物と、を有し、光による発色情報の付与により前記光硬化性組成物が硬化または未硬化の状態を維持して、前記発色する反応が制御されるトナーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーをトナー保持部材のトナー保持面に供給してトナー層を形成するトナー層形成工程と、
前記トナー層に光を照射して画像情報および発色情報を付与する発色情報付与工程と、
前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を発色させる発色工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
前記トナー保持部材が記録媒体であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記トナー保持部材がドラム状基体であり、さらに、前記画像情報および発色情報が付与されたトナー層を記録媒体上に転写する転写工程を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記トナー層形成工程に先立ち、前記トナー保持面を帯電する帯電工程と、帯電されたトナー保持面のうち、画像を形成する領域以外の領域を除電する除電工程とを有することを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記発色工程が、少なくとも熱により発色させる加熱処理を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記トナーが、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、該第1成分及び第2成分のいずれかを含む光硬化性組成物と、を有し、光による発色情報の付与により前記光硬化性組成物が硬化または未硬化の状態を維持して、前記発色する反応が制御されるトナーであることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−46308(P2008−46308A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221135(P2006−221135)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】