説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】転写ローラーと像担持体ベルトとの間の転写ニップに転写材を通過させる画像形成装置および画像形成方法において、転写材を転写ローラー周面に倣わせて像担持体ベルトへの貼り付きを防止する。
【解決手段】像を担持する像担持体ベルト31と、回転軸4211で回転するとともに、回転軸4211の中心を含み鉛直方向に垂直な仮想水平面よりも鉛直方向の下方で像担持体ベルト31と転写ニップNPを形成する転写ローラー4と、転写ニップNPで像が転写された転写材Sの像が転写された転写面と像担持体ベルト31との間に向かう第1の気流、および、鉛直方向の下方から転写面Sに向かう第2の気流を発生する気流発生部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転写ローラーと像担持体ベルトとの間の転写ニップに転写材を通過させる画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
像担持体上に形成した像を転写材上に転写する画像形成装置としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の装置は、トナー粒子とキャリア液とを含む液体現像剤により静電潜像を顕像化する、いわゆる液体現像方式の画像形成装置である。この装置では、押圧ローラー(転写ローラーに相当)の周面の一部に設けたグリッパ(把持部)によって転写材を把持し、該転写材を押圧ローラーに巻き付けるようにしてドラム状の中間転写体(像担持体)とのニップに通過させることにより、転写材上に像を転写している。このような構成によれば、転写材を機械的に把持した状態でニップ通過させるので、ニップにおいて強い転写圧を加えても像担持体への転写材の貼り付きのおそれがない。
【0003】
一方、特許文献2に記載された液体現像方式の画像形成装置では、像を担持する中間転写ベルトと転写ベルトとにより形成される転写ニップにおいて転写材に像を転写する。このとき、転写ニップから送出される転写材に気流を吹き付けることによって、中間転写ベルトから転写材を剥離させている。
【0004】
すなわち、特許文献1に記載の技術では転写ローラーの把持部によって転写材を把持することにより、また特許文献2に記載の技術では転写材に気流を吹き付けることにより、中間転写体から転写材を剥離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−508280号公報(例えば、図2A)
【特許文献2】特開2009−205131号公報(例えば、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
転写ニップを通過した転写材は転写ローラーの周面形状に倣っていることが望ましい。というのは、転写材が転写ローラーの周面から離れた状態ではその姿勢の制御が困難であり、転写材が周辺の部材に接触して転写された像を乱したり、また、回転する転写ローラーに転写材が密着することで得られる転写材の搬送力が不足し、搬送不良によってジャムを発生させることがあるからである。
【0007】
特に、本願発明者らの知見によれば、転写ニップ通過後の転写材が転写ローラーの周面から離れてしまうと、たとえ転写材の搬送方向先端部が中間転写体から剥離されていたとしても転写材の中間部分が中間転写体に貼り付いてしまう場合があるという問題が確認されている。しかしながら、上記特許文献では、転写ニップ通過後の転写材の姿勢に関しては詳しく記載されておらず、このような問題への対応が十分であるとは言えなかった。
【0008】
この発明にかかるいくつかの態様は、転写ローラーと像担持体ベルトとの間の転写ニップに転写材を通過させる画像形成装置および画像形成方法において、上記課題を解決して、転写材を転写ローラー周面に倣わせて像担持体ベルトへの貼り付きを防止することのできる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる画像形成装置の一の態様は、上記課題を解決するため、像を担持する像担持体ベルトと、回転軸で回転するとともに、前記回転軸の中心を含み鉛直方向に垂直な仮想水平面よりも鉛直方向の下方で前記像担持体ベルトと転写ニップを形成する転写ローラーと、前記転写ニップで前記像が転写された転写材の前記像が転写された転写面と前記像担持体ベルトとの間に向かう第1の気流、および、鉛直方向の下方から前記転写面に向かう第2の気流を発生する気流発生部とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、この発明にかかる画像形成方法の一の態様は、上記課題を解決するため、鉛直方向に垂直で転写ローラーの回転中心を含む仮想水平面よりも鉛直方向の下方で像担持体ベルトと前記転写ローラーとで形成された転写ニップで、前記像担持体ベルトに担持された像を転写材に転写し、前記像が転写された前記転写材の前記像が転写された転写面と前記像担持体ベルトとの間に第1の気流を発生させながら、前記転写材を搬送して前記像担持体ベルトから剥離し、前記像担持体ベルトから剥離された前記転写材の前記転写面に鉛直方向の下方から第2の気流を吹き付けることを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明では、転写材の転写面と像担持体ベルトとの間に吹き付けられる第1の気流によって像担持体ベルトから転写材が剥離されるとともに、剥離された転写材は第2の気流によって転写ローラーの周面に押し付けられる。このため、転写ニップを通過した後の転写材は転写ローラーの周面に倣った状態で搬送されるので、転写ニップ通過後の転写材の姿勢を制御するとともに転写ローラーの回転による十分な搬送力を与えて、周辺の部材への接触や搬送不良を防止することができる。特に、像が転写された転写材の中間部分が像担持体ベルトに貼り付く現象(以下、この現象を「途中巻き付き」と称する)を防止するのに効果的である。
【0012】
ここで、転写ローラーは、周面に凹部を有し、該凹部に転写材を把持する把持部を配設してもよい。このような構成によれば、転写材を把持部で把持することにより、像担持体ベルトから確実に剥離することができる。一方、転写材のうち把持部で把持されない部分については、上記のように気流を吹き付けることによって、像担持体ベルトへの貼り付きを防止することができる。
【0013】
この場合において、把持部は、例えば転写材を把持して転写材を転写ニップに搬送し、転写ニップで像が転写された転写材を、仮想水平面よりも鉛直方向の下方で解放するものであってもよい。このような構成では、転写ニップを通過した転写材を転写ローラーの下面に倣わせる必要があるが、このような構成において上記した気流の吹き付けを行うことで、転写材が重力によって転写ローラーの周面から離れて垂れ下がるのを防止することができる。
【0014】
また、例えば、像が転写された転写材の転写面を鉛直方向の下方に向けて転写材を搬送する搬送部を備えてもよい。このように転写面を下向きにして搬送する構成において上記した気流の吹き付けを行うことで、転写ニップから搬送部を経て搬送される転写材の姿勢が安定し、転写材が転写ローラーの周面から離れて周辺の部材に接触したり搬送力の不足に起因する搬送不良を防止することが可能となる。
【0015】
特に、第2の気流を吹き付けられた転写材を鉛直方向の上方に吸引しながら搬送する構成においては、重力方向と反対向きの吸引力によって転写材が支持されるので、転写材の垂れ下がりが大きな問題となりうる。このような構成に本発明を適用することで、転写材の垂れ下がりを防止して確実に搬送することが可能となる。
【0016】
また、例えば、転写材の情報が入力される転写材情報入力部と、転写材情報入力部で入力された転写材の情報に基づいて、第1の気流および第2の気流の少なくとも一方の流量を制御する制御部とを備えるようにしてもよい。途中巻き付きの起こりやすさは、転写材の種類、特にその厚さや坪量によって変化し、例えば腰の弱い薄紙では十分な保持がなされないと姿勢の維持が難しく、途中巻き付きを起こしやすい。一方、腰の強い厚紙では自身の形状保持性が高いので途中巻き付きはより起こりにくい。このように、転写材の種類によって途中巻き付きの起こりやすさが異なるので、転写材を像担持体ベルトから剥離するための第1の気流、および、転写材を転写ローラーに押し付けて搬送力を高める第2の気流の少なくとも一方の流量を転写材の情報に基づいて設定することにより、途中巻き付きの発生をより確実に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】二次転写ローラーの全体構成を示す斜視図。
【図4】把持部の開閉機構を示す図。
【図5】二次転写ローラーの回転位相と把持部の開閉状態との関係を示す第1の図。
【図6】二次転写ローラーの回転位相と把持部の開閉状態との関係を示す第2の図。
【図7】途中巻き付き現象を説明する図。
【図8】二次転写ローラーおよび送風ユニットを上方から見た図。
【図9】送風ユニットの筐体部の形状を示す図。
【図10】送風ユニットの動作シーケンスの例を示す図。
【図11】風量設定値の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するコントローラー10に与えられると、このコントローラー10が装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート状の転写材Sに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0019】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される、感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されており、図1中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。
【0020】
各感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成する露光ユニット23と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像ユニット24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、該トナー像を転写ユニット3の中間転写ベルト31に一次転写する一次転写ユニットと、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットと、クリーナーブレードとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0021】
帯電器22は感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、この帯電器22には、従来周知慣用のコロナ帯電器を用いることができる。コロナ帯電器にスコロトロン帯電器を用いた場合には、スコロトロン帯電器のチャージワイヤには正のワイヤ電流が流されるとともに、グリッドには直流(DC)のグリッド帯電バイアスが印加される。帯電器22によるコロナ放電で感光体ドラム21が帯電されることで、感光体ドラム21の表面の電位が略均一の電位に設定される。
【0022】
露光ユニット23は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームにより感光体ドラム21表面を露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。この露光ユニット23としては、半導体レーザからの光ビームをポリゴンミラーにより走査させるもの、あるいは発光素子を主走査方向に配列したラインヘッド等により構成することができる。
【0023】
こうして形成された静電潜像に対して現像ユニット24に設けられた現像ローラー241からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。なお、この画像形成装置1の現像ユニット24では、キャリア液内にトナーを概略重量比20%程度に分散させた液体現像剤を用いてトナー現像が行われる。この実施形態で用いられる液体現像剤は、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)をキャリア液とした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性を有する不揮発性液体現像剤である。すなわち、本実施形態における液体現像剤は、熱可塑性樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形粒子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(HAAKE RheoStress RS600を用いて25℃の時のせん断速度1000(1/S)のときの粘弾性が30〜300mPa・s程度)の液体現像剤である。
【0024】
感光体ドラム21の回転方向D21において現像位置の下流側に、第1スクイーズ部25が配置されるとともに、さらに第1スクイーズ部25の下流側に第2スクイーズ部26が配置されている。これらのスクイーズ部25、26にはスクイーズローラーがそれぞれ設けられている。そして、各スクイーズローラーが感光体ドラム21の表面と当接してトナー像の余剰キャリア液やカブリトナーを除去する。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26により余剰キャリア液やカブリトナーを除去しているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0025】
スクイーズ部25、26を通過してきたトナー像は一次転写ユニットにより中間転写ベルト31に一次転写される。この中間転写ベルト31は互いに離間して配設された一対のベルト搬送ローラー32、33に張架されており、ベルト駆動モーターM3によるローラー駆動により所定方向D31に周回回転させられる。より詳しくは、これらのベルト搬送ローラー32、33のうち図1中の右側ローラー32が駆動ローラーとなっており、当該駆動ローラー32に対してベルト駆動モーターM3が機械的に接続されている。また、本実施形態では、ベルト駆動モーターM3を駆動させるためにドライバー11が設けられており、コントローラー10から与えられる指令パルスに応じた駆動信号をベルト駆動モーターM3に出力して位置制御する。これにより、駆動ローラー(ベルト搬送ローラー)32は指令パルスに対応する周速度で図1中の矢印方向D32に回転し、中間転写ベルト31の表面は一定の速度で方向D31に周回移動する。
【0026】
一次転写ユニットはバックアップローラー271を有しており、バックアップローラー271が一次転写位置TR1で中間転写ベルト31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されて感光体ドラム21上のトナー像を中間転写ベルト31に転写する。そして、各色の転写ユニットでトナー像の転写が実行されることで、感光体ドラム21上の各色のトナー像が中間転写ベルト31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。
【0027】
こうして中間転写ベルト31に転写されたトナー像は二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、二次転写ローラー4が転写ユニット3の駆動ローラー32に巻き掛けられた中間転写ベルト31を挟んで対向して配設されている。図2に示すように、二次転写ローラー4は二次転写ローラー駆動モーターM4によって回転駆動されて、図1の矢印方向D4に回転する。二次転写ローラー駆動モーターM4は、コントローラー10からの指令パルスに応じてドライバー12から出力される駆動信号により駆動制御されている。そして、二次転写位置TR2で、中間転写ベルト31上に形成された単色、あるいは複数色のトナー像がゲートローラー51(一対のローラー51a,51b)から搬送経路PTに沿って搬送される転写材Sに二次転写される。ゲートローラー51と二次転写位置TR2との間には、転写材Sを二次転写ローラー4や中間転写ベルト31に接触させることなく二次転写位置TR2に送り込むためのシートガイド52が配設されている。
【0028】
二次転写ローラー4の回転シャフト421には、二次転写ローラー4の回転位相を検出するためのフォトセンサーカム91が配設されている。フォトセンサーカム91は、周面の一部にスリット状の切り欠き部911を有する円盤状に形成され、二次転写ローラー4の回転とともに回転する。一方、装置筐体側には例えばフォトインタラプターからなるフォトセンサー92が設けられている。二次転写ローラー4の回転に伴ってフォトセンサーカム91の切り欠き部911がフォトセンサー92による検出位置を通過する度に、フォトセンサー92は、二次転写ローラー4の回転に同期した同期信号を出力する。これにより二次転写ローラー4の回転位相が検出され、コントローラー10は、この同期信号に基づいて装置各部の動作タイミングを制御する。
【0029】
トナー像が二次転写された転写材Sは二次転写ローラー4から搬送経路PTに沿って搬送機構6に送り込まれる。この搬送機構6では、第1吸引部61、転写材搬送部62、第2吸引部63が搬送経路PTに沿って順次配列されており、これらが協力して転写材Sを定着ユニット7に搬送する。このとき転写材Sは、その主面のうち中間転写ベルト31からトナー像を転写された像転写面を鉛直下方に向けた姿勢で該像転写面と反対側の上面を吸着されながら搬送(背面搬送)される。図1において、第1吸引部61、転写材搬送部62、第2吸引部63に付した白抜き矢印は、これらの各部が作動して転写材Sを吸引する際に形成される気流の方向を示している。これは以下の各図においても同じである。
【0030】
搬送経路PTに沿った転写材Sの搬送方向において、二次転写ローラー4の後方に隣接配置された第1吸引部61の吸引面611の近傍には、当該位置に転写材Sが存在するか否かを検出するためのシート検出センサー612が配設されている。シート検出センサー612の出力信号はコントローラー10に入力される。
【0031】
また、トナー像が二次転写された転写材Sを第1吸引部61へ確実に送り込むとともに、画像の汚損を防止するために、本実施形態では、二次転写位置TR2と第1吸引部61の間、つまり転写材Sが送出される転写ニップNPの出口側位置に、二次転写ローラー4と対向するように送風ユニット8が配置されている。この送風ユニット8では、気流を発生する送風ファン81の動作に伴い発生する気流を、筺体部82に設けた開口部83,84から白抜き矢印に示す方向に吐出する。開口部83は転写ニップNPに臨んで開口しており、この開口部83から転写ニップNP方向に気流を吹き付けることで、二次転写ローラー4の把持部44による把持から解放された転写材Sの先端部と中間転写ベルト31との間に気流が吹き付けられて転写材Sが中間転写ベルト31から剥離される。
【0032】
また、開口部84は転写ニップNPを通過した二次転写ローラー4の周面に臨んで開口しており、この開口部84から転写材Sの像転写面に吹き付ける気流によって、剥離後の転写材Sが二次転写ローラー4の周面に押し付けられ、二次転写ローラー4の回転によって搬送される。こうして、転写材Sの先端部は第1吸引部61の方へ送り込まれる。また、転写材Sへの気流の吹き付けによって、転写材Sの後端部が二次転写位置TR2から排出された時に同後端部が中間転写ベルト31等に触れて画像が汚損されることを防ぐことができる。
【0033】
さらに、搬送経路PTの下流側、つまり搬送機構6に対して二次転写ローラー4の反対側(図1の左手側)には、定着ユニット7が配設されており、転写材Sに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて、転写材Sへのトナー像の定着が行われる。
【0034】
トナー像が二次転写された中間転写ベルト31に対して、クリーナーブレード391を当接している。より具体的には、中間転写ベルト31の搬送方向D31における二次転写位置TR2の下流側で中間転写ベルト31を巻き掛けたローラー33に対して、中間転写ベルト31を介してクリーナーブレード391が当接している。クリーナーブレード391は二次転写後に中間転写ベルト31の表面に残留するトナーやキャリア液等の残留付着物を除去する。
【0035】
また、この装置1は、装置各部に供給するバイアス電圧を発生するバイアス発生部や、上記した二次転写ローラー4およびベルト駆動ローラー32以外に、図2に示すように、ゲートローラー51を回転させるためのモーターM5、該モーターM5を駆動するドライバー13、その他の装置各部を駆動するための各種の駆動機構などを備えており、これらの動作はいずれもコントローラー10により制御されている。
【0036】
さらに、この実施形態の装置筐体には、使用される転写材の種類や品質グレードなどの転写材情報をユーザーが設定入力するための転写材情報入力部100が設けられている。転写材情報入力部100は例えば押しボタン、タッチパネルまたはキーボード等からなり、ユーザーによる操作入力を受け付ける。転写材情報としては、紙やフィルムなどの転写材の種類、その坪量、サイズ、表面仕上げ状態(コーティングの有無など)等を用いることができる。
【0037】
この実施形態では、液体現像剤を用いてトナー像を形成する湿式現像方式でトナー像を形成している。そこで、中間転写ベルト31への転写材Sの貼り付きを防止しながら転写材Sに十分な転写圧を加えることができるように、把持部を有する二次転写ローラー4が用いられている。以下、図1、図3ないし図5を参照しながら二次転写ローラー4の構造を詳しく説明する。
【0038】
図3は二次転写ローラーの全体構成を示す斜視図である。また、図4は把持部の開閉機構を示す図である。図1および図3に示すように、二次転写ローラー4は、円筒の外周面の一部を切り欠いてなる凹部41が設けられたローラー基材42を有している。ローラー基材42には、図1紙面に直交する方向に伸びる回転シャフト421が設けられている。回転シャフト421は、装置筐体(図示省略)に軸支された支持アーム40に対し軸心4211を中心として回転自在に設けられている。支持アーム40は、装置筐体に対して支軸401を中心として揺動自在となっており、図示を省略する付勢手段によって図1の反時計方向に付勢されている。このため、二次転写ローラー4は矢印α方向に付勢されて、ベルト駆動ローラー32に巻き掛けられた中間転写ベルト31に押し付けられている。これにより二次転写ローラー4は所定の荷重(たとえば60kgf)で中間転写ベルト31に押圧される。
【0039】
また、回転軸421の両端部には、側板422、422がそれぞれ取り付けられている。より詳しくは、これらの側板422、422はいずれも円盤形状の金属プレートに対して切欠部422aを設けた形状を有している。そして、図3に示すように切欠部422a、422aが互いに対向しながら弾性シートの幅よりも少し長い距離だけ離間して回転軸421に取り付けられている。こうして、全体的にはドラム形状を有するものの、その外周面の一部に回転軸421と平行または略平行に延びる凹部41を有する、ローラー基材42が形成されている。
【0040】
二次転写ローラー4の両端部では、各側板422の外側面に支持部材46が取り付けられており、ローラー基材42と一体的に回転可能となっている。また、支持部材46には凹部41に対応して平面領域461が形成されている。そして、平面領域461に転写ローラー側当接部材47がそれぞれ取り付けられている。当接部材47では、基台部位471が支持部材46に取り付けられるとともに、基台部位471から当接部位472が平面領域461の法線方向に延設されており、当接部位472の先端部は凹部41の開口側端部まで延びている。つまり、回転軸421の方向から当接部材47を見ると、当接部材47が凹部41を塞ぐように、また当接部位472の周端部が二次転写ローラー4の周面(弾性層43)と部分的にオーバーラップするように、当接部材47が設けられている。
【0041】
また、中間転写ベルト31を巻き掛けた駆動ローラー32の両端部には、駆動ローラー32と同軸でかつ駆動ローラー32と独立して回転自在のベアリング322(図1参照)が設けられている。二次転写ローラー4の当接部材47が駆動ローラー32側に向いているときには、当接部材47の外周面とベアリング322の外周面とが互いに当接する。
【0042】
また、ローラー基材42の外周面、つまり金属プレート表面のうち凹部41の内部に相当する領域を除く表面領域にゴムや樹脂などの弾性材料により形成された弾性シートが巻き付けられており、この弾性シートにより弾性層43が形成されている。この実施形態では、弾性シート(弾性層43)の磨耗や傷などの経時劣化に対応するため、弾性シートは二次転写ローラー4に接着されておらず、交換が可能な構成を採用している。より具体的には、弾性シートの一方側端部431が図示を省略する押さえ板によって凹部41の側面に固着される一方、弾性シートの他方端部432にはプレート491が装着されており、該プレート491が凹部41の底部に固定されたシート張架部49に係合されることで、弾性シートが二次転写ローラー4の周面に弛みなく張架される。
【0043】
なお、この実施形態では、ローラー基材42の回転方向D4に沿った凹部41の開口部長さ(開口幅)W41は約105mmである。二次転写ローラー4の外周面のうち凹部41を除く領域に形成された弾性層43が中間転写ベルト31に対向する位置にあるとき、弾性層43が中間転写ベルト31に押し付けられて転写ニップNPが形成される。ローラー基材42の回転方向D4に沿った転写ニップNPの長さ(転写ニップ幅)Wnpは11mm程度であり、
(凹部41の開口幅W41)>(転写ニップNPでの転写ニップ幅Wnp)
の関係を有している。したがって、二次転写ローラー4の凹部41が中間転写ベルト31と対向した状態では、一時的に転写ニップが消失することになる。
【0044】
また、ローラー基材42の回転方向D4に沿った弾性層43の長さは約495mmに設定されており、これは、この装置1において使用可能な転写材Sのうち最も大きなサイズのものを巻き付けることができるようにしたものである。すなわち、弾性層43の長さは、使用可能な転写材Sのうちローラー基材42の回転方向D4に沿った長さが最大であるものの長さよりも長くなるように定められている。
【0045】
また、凹部41の内部には、転写材Sを把持するための把持部44が配設されている。この把持部44は、凹部41の内底部からローラー基材42の外周面に立設されたグリッパ支持部材441と、グリッパ支持部材441の先端部に対して接離自在に支持されたグリッパ部材442とを有している。次に説明する開閉機構45の作動により、グリッパ部材442の先端部が二次転写ローラー4の径方向に往復移動して、グリッパ支持部材441の先端部から離間して転写材Sの把持準備や把持解放を行う一方、グリッパ部材442の先端部がグリッパ支持部材441の先端部に移動することで転写材Sを把持する。
【0046】
図3および図4に示すように、グリッパ部材442は支軸451を中心に回動自在に構成されたクランクアーム452の支軸451に取り付けられている。クランクアーム452の先端にはカムフォロア453が設けられている。また、付勢部材の図示を省略しているが、グリッパ部材442はその先端部がグリッパ支持部材441に当接する方向(図4において、支軸451を中心とする反時計方向)に付勢されている。つまり、外力が作用しない状態では、把持部44は閉状態に維持されている。これらの支軸451、クランクアーム452およびカムフォロア453などが一体的に開閉機構45を構成している。
【0047】
一方、装置筐体(図示省略)の内側面には、二次転写ローラー4および駆動ローラー32の軸方向端部近傍位置にカム部材50が固定されている。カム部材50の外周面500は、二次転写ローラー4の回転中心4211を中心とする半径R50の円弧50aに概ね沿っているが、部分的にこれより外周方向に突出した突出部501、502を設けた形状を有している。このような外周形状を有するカム部材50の外周面と、開閉機構45に設けられたカムフォロア453の外周面とが、二次転写ローラー4の回転に伴って断続的に当接する。カムフォロア453がカム部材50の外周面形状に追随して動くことでクランクアーム452が回動し、グリッパ部材442の先端部がグリッパ支持部材441に対して開閉する。すなわち、この実施形態では、把持部44は二次転写ローラー4の回転位相に応じて自動的に開閉する。
【0048】
図5および図6は二次転写ローラーの回転位相と把持部の開閉状態との関係を示す図である。図5および図6は、二次転写ローラー4の回転による把持部44の開閉状態の変化と、これに伴う転写材Sの把持・開放の様子とを模式的に示したものである。なお、図および図6においては、把持機構を明示するために、当接部材47およびシート張架部49など、把持部の動作と関係のない部位の図示を省略している。図4に示すように、二次転写ローラー4の凹部41が二次転写位置TR2から大きく離れた位置にあるときには、カムフォロア453はカム部材50とは離間しており、把持部44は図示しない付勢部材の作用により閉状態に維持されている。
【0049】
二次転写ローラー4の方向D4への回転が進むと、図5(a)に示すように、凹部41が二次転写位置TR2に接近してゆき、カムフォロア453がカム部材50の外周面500に当接し始める。さらに回転が進むと、図5(b)に示すように、カム部材50の外周面500の第1の突出部501にカムフォロア453が乗り上げることでクランクアーム452が支軸451を中心に回動し、グリッパ部材442の先端部がグリッパ支持部材441から離間し始める。実際の画像形成動作では、二次転写ローラー4の回転に応じてゲートローラー51が駆動開始し、転写材Sが二次転写位置TR2に向けて搬送される。符号Shは、転写材搬送方向における転写材Sの先端部を示している。
【0050】
図5(c)に示すように、さらに回転が進み、凹部41が二次転写位置TR2に対向した状態ではニップは一時的に解消される。把持部44はさらに大きく開き、ゲートローラー51により搬送されてくる転写材Sの先端部Shを受け入れる。すなわち、開かれたグリッパ部材442とグリッパ支持部材441との間に転写材先端部Shが差し込まれる。このとき、転写材先端部Shをグリッパ部材442に突き当てるようにすることで、二次転写ローラー4の回転位相と転写材先端部Shとの位置関係を精度よく、かつ再現性よく定めることができる。また、転写材Sのスキューを補正することができる。
【0051】
この状態を過ぎるとカム部材50の外周面500は次第に後退するような形状となっており、このため、さらに二次転写ローラー4の回転が進むと、把持部44の開きは小さくなる。そして、最終的には図5(d)に示すように完全に閉じて、転写材Sの把持が完了する。こうして先端部Shを把持された転写材Sは二次転写位置TR2に送り込まれる。
【0052】
続いて、図6(a)に示すように、凹部41が二次転写位置TR2を過ぎ、二次転写ローラー4の弾性層43が転写材Sを介して中間転写ベルト31と当接するようになる。つまり、二次転写ローラー4の弾性層43と中間転写ベルト31との間のニップNPに転写材Sが挟み込まれた状態となる。少なくとも転写材先端部ShがニップNPを通過し終えるまでは、把持部44による転写材先端部Shの把持が継続される。このため、転写材Sが中間転写ベルト31に貼り付くのが防止される。
【0053】
また、この時、つまり二次転写ローラー4の弾性層43が転写材Sを介して中間転写ベルト31と当接して転写ニップNPが形成され始める時に、フォトセンサーカム91の切り欠き部911がフォトセンサー92による検出位置を通過するように、フォトセンサーカム91とフォトセンサー92との位置関係が設定されているものとする。
【0054】
さらに回転が進むと、図6(b)に示すように、カムフォロア453がカム部材50外周の第2の突出部502に差しかかる。カムフォロア453が突出部502に乗り上げることで把持部44は再び開いてゆく。こうして図6(c)に示すように転写材先端部Shが解放された後、図6(d)に示すように、カムフォロア453とカム部材50との当接が終了し、把持部44は閉じられる。
【0055】
このように、この実施形態では、二次転写ローラー4の回転に伴って、二次転写ローラー4側のカムフォロア453と装置筐体側のカム部材50との当接状態が変化し、これによって把持部44の開閉が行われて、転写材Sに対する把持・解放が実行される。
【0056】
以上のように、この実施形態では、転写材Sの搬送方向先端部Shが二次転写ローラーに設けられた把持部44によって把持された状態で、転写材Sが転写ニップNPに案内される。その一方、転写ニップNPを通過すると把持部44による把持は解除され、転写材Sはフリー状態となる。このとき、転写材Sが二次転写ローラー4の周面から離れてしまうと、以下に説明する「途中巻き付き」現象が生じるおそれがある。
【0057】
図7は途中巻き付き現象を説明する図である。この実施形態では、転写ニップNPが二次転写ローラー4の回転軸4211を通る水平面よりも鉛直下方に位置している。把持部44によって転写材Sが把持されている状態では、転写材Sは把持部44と転写ニップNPとによって押さえ付けられて二次転写ローラー4の周面に密着しながら二次転写ローラー4の回転により搬送機構6に向かって搬送される。ここで、図7(a)に示すように、転写ニップNPよりも鉛直方向上方、かつ二次転写ローラー4の回転中心4211よりも下方つまり二次転写ローラー4の回転中心4211を含み鉛直方向に対して垂直な仮想水平面よりも延長方向の下方で把持部44から解放されると、自由端となった転写材Sの先端部Shは下向きに落下しようとする。そのため転写材Sは二次転写ローラー4の周面から離れる方向に変位する。この結果、二次転写ローラー4との密着によって得られていた転写材Sの搬送力が低下してしまう。
【0058】
転写ニップNPからは引き続き転写材Sが送り出される一方、送り出された転写材Sに対する搬送力が弱ければ、転写材Sが転写ニップNPの後方に滞留して弛んでしまうことになる。さらに、転写ニップNPを通過した転写材Sと中間転写ベルト31との間に残留する液体現像剤の液体成分の表面張力によって転写材Sと中間転写ベルト31とは貼り付きやすくなっており、結果として、図7(b)に示すように、転写ニップNPを通過した転写材Sの中間部分Smが中間転写ベルト31に貼り付いてしまう。本明細書ではこの現象を「途中巻き付き」と称している。
【0059】
この途中巻き付きは、特許文献2に記載されたようなエアー吹き付けによる剥離、あるいは剥離爪による機械的な剥離などによって転写材の先端部における剥離が適切に行われていたとしても起こりうる現象である。また、例えばオフセット印刷機のように複数のローラーにそれぞれ設けられた把持爪の間で転写材を受け渡してゆく構造の装置とは違って、転写材が一時的に把持または吸着によって保持されない時間帯がある構成において特に問題となる現象であって、これまで知られていなかったものである。
【0060】
この問題に対し、この実施形態では、気流の吹き付けを転写ニップNPに向けて行うだけでなく、転写ニップNP通過後の二次転写ローラー4の周面に向けても行うことによって転写材Sを二次転写ローラー4の周面に押し付けつつ搬送する、という解決手段を採っている。
【0061】
図8は二次転写ローラーおよび送風ユニットを上方から見た図である。また図9は送風ユニットの筐体部の形状を示す図であり、より詳しくは、図9(a)は筐体部82の斜視図、図9(b)は筐体部82の側面断面図である。送風ユニット8は、気流発生源となる例えば送風ファン81,81と、該送風ファン81に接続され他方端に開口部83を有する筐体部82,82とを有している。送風ファン81により発生された気流は筐体部82の内部を通り、二次転写ローラー4が中間転写ベルト31に対向当接してなる転写ニップNPに臨んで開口する開口部83から吹き出して転写ニップNPに吹き付ける(符号F1)。この実施形態では、送風ファン81および筐体部82を二次転写ローラー4の回転軸4211方向に2組並べることで、該軸方向における気流の均一化を図っている。
【0062】
一方、筐体部82の上部(図8において紙面手前側)にも開口部84が穿設されており、開口部84には整流板841が配設されている。この開口部84および整流板841は、例えば筐体部82の上辺を構成する板材にコの字形状の切り込みを入れて外側に向けて折り曲げることによって簡単に形成することができる。送風ファン81が発生する気流の一部は開口部84から吹き出し、開口部83から吹き出す気流とは整流板841によって分離されて、転写ニップNPを通過した二次転写ローラー4の周面に向かって吹き付ける(符号F2)。
【0063】
二次転写ローラー4の周面には転写材Sが巻き掛けられているので、開口部84から吹き出した気流は二次転写ローラー周面に巻き掛けられた転写材Sの像転写面に向かって吹き付けられることになる。この気流が、転写材Sを二次転写ローラー4の周面に押し付けて、転写材Sの姿勢を維持するとともに、二次転写ローラー4との密着による搬送力を転写材Sに与えることになる。これにより、この実施形態では、上記した転写材の「途中巻き付き」現象の発生が防止される。
【0064】
図8に示すように、二次転写ローラー4の軸方向における送風ユニット8の開口部83の開口幅W2は、二次転写ローラー4の凹部41に該軸方向に複数配設されたグリッパ部材442のうち軸方向における最外側に位置する2つのグリッパ部材442a、442b間の幅W1よりも小さい。グリッパ部材442a、442b間の幅W1は転写材Sの幅に対応して設定されており、より具体的には転写材Sの幅と同程度である。例えば、日本工業規格A3サイズ(幅297mm)の転写材に対して、グリッパ部材442a、442b間の幅W1を300mm、送風ユニット8の開口部83の開口幅W2を320mm程度とすることができる。また、開口部83の開口高さ、図8紙面に直交する方向の開口部83の寸法については、例えば15mm程度とすることができる。
【0065】
したがって、開口部83から吹き出されて二次転写ローラー4の周面に衝突した気流は二次転写ローラー4の軸方向外側に向かって広がるようにスムーズに流れることとなる。このため、気流の乱れによって転写材Sがばたつくことが避けられる。ここで、送風ファン81としては、例えば日本電産サーボ社製スーパー静音ブロアを用いることができる。
【0066】
図10は送風ユニットの動作シーケンスの例を示す図である。図10(a)に示す第1のシーケンス例では、転写ニップNPを通過する転写材Sの先端部Shが把持部44により把持されている間、つまり把持部44により転写材Sが解放されるよりも前に、送風ユニット8からの気流の吹き付けを開始する。このようにすることで、転写ニップNPを通過してきた転写材Sは気流によって二次転写ローラー4周面に押し付けられた状態で把持を解除される。このため、転写材Sが二次転写ローラー4から離れて垂れ下がることが防止される。
【0067】
具体的には、図10(a)のタイミングチャートに示される動作となる。二次転写ローラー4の凹部41が二次転写位置TR2を通り過ぎ、周面の弾性層43が転写材Sを介して中間転写ベルト31に当接して転写ニップNPが形成開始する時、フォトセンサー92から同期信号が出力される(時刻T11)。同期信号が出力される時刻は転写ニップの形成開始時刻に限定されないが、把持部44によって転写材Sが確実に把持されている時刻であることが望ましい。
【0068】
同期信号が検出されると、コントローラー10は送風ユニット8の送風ファン81を駆動するための駆動信号を出力する。これにより、送風ユニット8が作動し、送風ユニット8から二次転写ローラー4に向けて気流の吹き付けが開始される。その風量はファン駆動開始とともに次第に増加し、ある時刻T12で略一定値となる。
【0069】
二次転写ローラー4の回転が進むと、開閉機構45およびカム部材50の作用により把持部44のグリッパ部材442が回動しグリッパ支持部材441から離れることで把持が解除され、転写材Sは解放される(時刻T13)。グリッパ部材442は二次転写ローラー4の回転に伴って徐々に開くため、転写材Sが解放される時刻を一義的に特定することは困難であるが、例えば、グリッパ部材442とグリッパ支持部材441との間隔が次第に大きくなり転写材Sの厚みに達した時を、「転写材Sが解放された時刻」と定義することが可能である。
【0070】
転写材Sが解放された後も気流の吹き付けを継続すれば、引き続き転写材Sの姿勢を維持することが可能である。一方、転写材Sの先端部Shが搬送機構6に到達すれば、その後は搬送機構6によって搬送されることとなるので、転写材Sが垂れ下がるようなことはない。したがって、転写材Sが二次転写ローラー4から搬送機構6に受け渡された後は、気流の吹き付けを弱めるあるいは停止させても構わない。そこで、第1吸引部61に設けられたシート検出センサー612によって転写材Sの到達が検出されると(時刻T14)、コントローラー10は送風ファン81への駆動信号をオフにする。これにより、吹き付けられる風量は次第に減少して最終的に停止する。なお、二次転写ローラー4の周面に沿った転写材Sの姿勢をより確実に維持するために、風量を弱めた状態で吹き付けを継続してもよい。
【0071】
以上のようにすることで、このシーケンスでは、転写ニップNPを通過して把持部44による把持を解除された転写材Sは、把持解除前から送風ユニット8が吹き付ける気流によって二次転写ローラー4の周面に押し付けられる。このため、転写材Sが二次転写ローラー4の周面から離れたり垂れ下がったりして送風ユニット8等に接触することなく、二次転写ローラー4の周面に沿った姿勢を維持したまま後段の搬送機構6に送り込まれることとなる。
【0072】
なお、解放された転写材Sは直ちに垂れ下がるというわけではなく、いわゆる転写材の腰、つまり転写材が自身の形状を保持する能力によってしばらくはその姿勢は保持される。この意味において、転写材の垂れ下がりを防止するとの観点からは、把持解除後のある期間気流の吹き付けが行われればよい。したがって、把持の解除が行われた後で吹き付けが開始されてもよい。例えば坪量の比較的大きな紙のように、腰の強い転写材を用いる場合には特にそうである。
【0073】
この点に鑑み、図10(b)に示す第2のシーケンス例では、把持部44により転写材Sが解放されてから吹き付けが開始されるようにしている。なお、この例は、把持部44による転写材Sの解放が行われた後にフォトセンサー92から同期信号が出力されることを前提としており、この点において、図1に示すフォトセンサー92の位置、もしくは二次転写ローラー4に対するフォトセンサーカム91の取り付け角度等の変更が必要である。また、同期信号としては把持部44の把持が解除されたことを確認することができるものであれば足り、例えばグリッパ部材442の開閉を検知するマイクロスイッチ等から信号を得てもよい。
【0074】
図10(b)に示すシーケンスでは、時刻T21において把持部44による転写材Sの把持が解除され、その後にフォトセンサー92から同期信号が出力される(時刻T22)。この同期信号が検出されると、コントローラー10は送風ファン81に駆動信号を与える。これにより、送風ユニット8からの気流の吹き付けが開始される。その後は上記した第1の例と同様であり、シート検出センサー612によって転写材Sが第1吸引部61に到達したことが検知されると(時刻T23)、送風ファン81への駆動信号を停止して吹き付けを終了させる。
【0075】
このように、把持部44による転写材Sの解放が行われてから気流の吹き付けを開始するようにした場合でも、解放された転写材Sの姿勢を制御して、二次転写ローラー4の周面に沿って搬送することが可能である。したがって、上記例と同様に、転写材Sが二次転写ローラー4の周面から離れたり垂れ下がったりして送風ユニット8等に接触することなく、二次転写ローラー4の周面に沿った姿勢を維持したままその回転によって転写材Sに搬送力を与え後段の搬送機構6に送り込むことが可能となる。
【0076】
より好ましくは、吹き付けを開始する時刻T22については、送風ユニット8からの気流が最も強く吹き付けられる位置を転写材Sの先端部Shが通過する時刻(この時点で把持が解除されているか否かはどちらでもよい)よりも遅くするのがよい。このようにすると、転写材Sと二次転写ローラー4との間に気流が吹き込まれて両者が離間してしまうのを防止することができる。
【0077】
なお、転写材Sの形状保持能力や中間転写ベルト31への貼り付きやすさは、転写材自体の性質によって大きく異なる。例えば転写材が紙である場合、紙の厚さや腰の強さ、表面の状態(コーティングの有無)等の影響が大きい。そこで、この実施形態では、転写材の性質を指標する情報として坪量(単位面積当たりの質量)および表面コートの有無をユーザーからの入力によって受け付け、それに応じて送風ユニット8が吹き付ける気流の流量(風量)を調整するようにしている。これにより、転写ニップNPおよび二次転写ローラー4の周面にそれぞれ向かう気流の風量を変化させることができる。
【0078】
図11は風量設定値の一例を示す図である。一般的な性質として、表面をコーティングされた紙は液体をあまり吸収しないため、中間転写ベルト31との間に残留する液体成分の表面張力に起因する中間転写ベルト31への貼り付きが、より液体を吸収しやすい非コート紙よりも起きやすい。また、表面状態が同じであれば、坪量の大きい紙は概して厚みがあるので坪量の形状保持能力が坪量の小さい紙よりも高い。
【0079】
以上のことから、この実施形態では、送風ファン81への印加電圧を制御することで送風ユニット8が送出する風量を2段階に可変とし、図11に示すように、使用される転写材Sの表面コートの有無と坪量との組み合わせによって、いずれかの風量を選択する。具体的には、画像形成動作の実行前に、転写材の表面コートの有無と坪量とについて転写材情報入力部100への入力をユーザーに促し、入力結果から得られた情報を転写材情報として、図11のテーブルに基づいて送風ユニット8の風量を設定する。そして、画像形成動作の実行時には、設定された風量で、図10に示すシーケンスに基づく動作を実行する。
【0080】
具体的には、表面コートのある紙については、坪量が100g/m3を超えるときには風量を弱く、それ以下であれば風量を強く設定する。また、表面コートのない紙については、坪量が60g/m3を超えるときには風量を弱く、それ以下であれば風量を強く設定する。コート紙における坪量の閾値を非コート紙における閾値よりも大きくしているのは、前記したようにコート紙では非コート紙よりも中間転写ベルト31への貼り付きが起きやすいため、坪量が大きく腰の強いものでない限り風量を強めに設定しておくという趣旨である。
【0081】
以上のように、この実施形態では、転写材Sが送り出される転写ニップNPの出口側に設けた送風ユニット8から2方向の気流、より具体的には、転写ニップNPへ向かって吹き付ける気流と、転写ニップNPを通過した二次転写ローラー4の周面に向かって吹き付ける気流とを発生させている。転写ニップNPに向かって吹き付ける気流は、転写ニップNPを通過した転写材Sを中間転写ベルト31から剥離する作用をする。一方、二次転写ローラー4の周面に向かって吹き付ける気流は、転写ニップNPを通過した転写材Sを二次転写ローラー4の周面に押し付けて倣わせることで、二次転写ローラー4の回転による搬送力を転写材Sに確実に付与し、転写材Sを搬送機構6に到達させるという作用を有する。
【0082】
このような構成によれば、転写ニップNPを通過した転写材Sを中間転写ベルト31から確実に剥離し、二次転写ローラー4の周面に密着させて搬送することができるので、転写材Sが中間転写ベルト31に貼り付いたり、送風ユニット8やその他の周辺部材に接触して像を汚損するなどの問題が未然に防止される。特に、転写材Sの中間部分が中間転写ベルト31に貼り付く「途中巻き付き」現象に対して、この実施形態は優れた防止効果を奏するものである。
【0083】
特にこの実施形態の搬送機構6では、二次転写ローラー4と、転写材Sを積極的に後方へ向けて搬送する転写材搬送部62との間に、転写材Sを吸引保持するものの搬送能力を有さない第1吸引部61を配設している。第1吸引部61は転写材Sの移動に対しては若干の制動作用を有するが、この実施形態では、二次転写ローラー4から与えられる搬送力によって転写材Sが確実に進行するので、第1吸引部61によって搬送不良が引き起こされるおそれは解消されている。
【0084】
また、この実施形態では、転写材Sの性質を表す情報、具体的には表面コートの有無および坪量に応じて送風ユニット8の風量を設定するようにしている。こうすることで、転写材Sの種類によって異なる中間転写ベルト31への貼り付きやすさや垂れ下がりやすさに応じて風量を調節することができ、搬送経路PTに沿った転写材Sの搬送をより確実に行うことが可能となる。
【0085】
以上説明したように、この実施形態では、二次転写ローラー4および中間転写ベルト31がそれぞれ本発明の「転写ローラー」および「像担持体ベルト」として機能している。また、コントローラー10が本発明の「制御部」として機能する一方、把持部44が本発明の「把持部」として機能している。また、この実施形態では、搬送機構6が本発明の「搬送部」として機能している。また、上記実施形態における送風ユニット8が本発明の「気流発生部」として機能している。
【0086】
また、上記実施形態においては、転写材情報入力部100が本発明の「転写材情報入力部」として機能する一方、コントローラー10が本発明の「制御部」として機能している。また、図9に示した気流F1およびF2がそれぞれ本発明の「第1の気流」および「第2の気流」に相当している。
【0087】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、異なる方向に開口する2種類の開口部83、84を有する筐体部82によって2つの方向への気流を発生させているが、それぞれ独自の気流発生源によって2方向への気流を実現するようにしてもよい。この場合において、2つの気流の流量を独立して調節したり、一方のみを調節するようにしてもよい。また気流を吹き付けるタイミングを異ならせるようにしてもよい。
【0088】
また、例えば、上記実施形態では、二次転写ローラー4の回転位相に応じて機械的に作動する開閉機構45およびカム部材50によって転写材の把持およびその解除を行っているが、これに限定されず、例えばモーターやソレノイド等を用いて電気的に転写材の把持およびその解除を制御する構成であってもよい。
【0089】
また、例えば、上記実施形態では、送風ファン81と筐体部82とを組み合わせて送風ユニット8を構成しているが、気流の発生源としてはファン方式のものに限定されず、例えばコンプレッサー等を用いてもよい。また、気流発生源は必ずしも装置本体に組み込まれることを要するものではない。
【0090】
また、例えば、上記実施形態における送風ユニット8の動作シーケンスは、その代表例を例示したものにすぎず、上記に限定されるものではない。特に、この実施形態の技術思想では、転写ニップNPと、転写ニップNPから送出される転写材Sの像転写面とに気流を吹き付けることが重要であり、気流の吹き付けを停止するタイミングを限定するものではない。したがって、シート検出センサー612の出力に基づく気流吹き付けの停止は必須の構成ではない。
【0091】
さらに、上記実施形態は、二次転写ローラー4の凹部41に把持部44を設け、把持部44によって転写材Sを把持した状態で転写ニップNPに案内する構成を有しているが、凹部や把持部を持たない画像形成装置であっても、像担持体ベルトと転写ローラーとの間の転写ニップに転写材を通送するものであれば本発明を適用することができる。特に液体キャリア中にトナーを分散させた現像剤を用いる、いわゆる液体現像方式の画像形成装置全般に対して、本発明を好適に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
2C,2K,2M,2Y…画像形成ステーション、 4…二次転写ローラー(転写ローラー)、 6…搬送機構(搬送部)、 8…送風ユニット(気流発生部)、 10…コントローラー(制御部)、 21…感光体ドラム、 24…現像ユニット、 31…中間転写ベルト(像担持体ベルト)、 44…把持部、 81…送風ファン、 82…筐体部、 100…転写材情報入力部、 F1…第1の気流、 F2…第2の気流、 NP…転写ニップ、 S…転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を担持する像担持体ベルトと、
回転軸で回転するとともに、前記回転軸の中心を含み鉛直方向に垂直な仮想水平面よりも鉛直方向の下方で前記像担持体ベルトと転写ニップを形成する転写ローラーと、
前記転写ニップで前記像が転写された転写材の前記像が転写された転写面と前記像担持体ベルトとの間に向かう第1の気流、および、鉛直方向の下方から前記転写面に向かう第2の気流を発生する気流発生部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写ローラーは、周面に凹部を有し、前記凹部に前記転写材を把持する把持部を配設する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記把持部は、前記転写材を把持して前記転写材を前記転写ニップに搬送し、前記転写ニップで前記像が転写された前記転写材を、前記仮想水平面よりも鉛直方向の下方で解放する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像が転写された前記転写材の前記転写面を鉛直方向の下方に向けて前記転写材を搬送する搬送部を備える請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写材の情報が入力される転写材情報入力部と、
前記転写材情報入力部で入力された前記転写材の情報に基づいて、前記第1の気流および前記第2の気流の少なくとも一方の流量を制御する制御部と、
を備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
鉛直方向に垂直で転写ローラーの回転中心を含む仮想水平面よりも鉛直方向の下方で像担持体ベルトと前記転写ローラーとで形成された転写ニップで、前記像担持体ベルトに担持された像を転写材に転写し、
前記像が転写された前記転写材の前記像が転写された転写面と前記像担持体ベルトとの間に第1の気流を発生させながら、前記転写材を搬送して前記像担持体ベルトから剥離し、
前記像担持体ベルトから剥離された前記転写材の前記転写面に鉛直方向の下方から第2の気流を吹き付ける
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
前記第2の気流を吹き付けられた前記転写材を鉛直方向の上方に吸引しながら搬送する請求項6に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−164521(P2011−164521A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30070(P2010−30070)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】