説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】像担持体の駆動モーターの駆動と凹部を有する転写ローラーの駆動モーターの駆
動とを、より簡単に同期制御する。
【解決手段】トナー粒子とキャリアー液とを含む液体現像剤で現像された像を担持する中
間転写ベルト8と、中間転写ベルト8を駆動させる中間転写ベルト駆動モーターと、周面
に凹部14を有するとともに、中間転写ベルト8に圧接されて中間転写ベルト8に担持さ
れたトナー像を転写材20に転写する二次転写ローラー12と、二次転写ローラー12を
駆動させる二次転写ローラー駆動モーター24と、中間転写ベルト8の位置を検出する中
間転写ベルト位置検出器29と、二次転写ローラー12の回転位置を検出するエンコーダ
ー27とを有する画像形成装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー粒子とキャリアー液とを含む液体現像剤で形成された像を転写紙等の
転写材に転写することで画像を形成する電子写真方式の画像形成装置および画像形成方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置においては、転写ローラーに設けられた凹部に転写
材把持部材を配設するとともに、この転写材把持部材により転写紙等の転写材の先端部を
把持しながら像担持体のトナー像を転写紙等の転写材に転写する画像形成装置が提案され
ている(例えば、特許文献1参照)。この画像形成装置によれば、転写材は転写終了後に
像担持体からより確実に剥離することが可能となる。
【0003】
また、トナー粒子とキャリアー液とを含む液体現像剤を用いるとともに、転写ローラー
を像担持体に圧接させるとともに、転写ローラーに転写バイアスを印加して像担持体のト
ナー像を転写材に転写する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2000−508280号公報。
【特許文献2】特開2003−323063号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1および2に記載の画像形成装置においては、いずれも、像担持体
の層を転写材の凹凸に追従させて転写させるために、転写ローラーを像担持体に高荷重で
圧接させる必要がある。しかし、転写ローラーの凹部により画像形成動作時に像担持体の
位置と転写ローラーの位置とに位置ずれが生じるとともに、像担持体への転写ローラーの
高荷重での圧接により転写ローラーが像担持体に加える負荷が大きくなるという問題があ
る。
【0006】
一方、画像形成装置を小型コンパクトにするためには、像担持体と転写ローラーとを1
つの駆動モーターで駆動することが考えられる。しかし、前述のように凹部を有する転写
ローラーを像担持体へ高荷重で圧接させる場合には前述の問題があるため、1つの駆動モ
ーターで像担持体と転写ローラーとを駆動することは難しい。
【0007】
そこで、像担持体と転写ローラーとをそれぞれ個別の駆動モーターで駆動させることが
考えられる。しかし、画像形成動作時に像担持体の位置と転写ローラーの位置とに位置ず
れが生じないようにするためには、各駆動モーターを互いに同期させて駆動させなければ
ならず、各駆動モーターの駆動制御が困難になる。特に、画像形成装置による画像形成動
作開始直前では、像担持体および転写ローラーがともに停止状態にあるため、前述の位置
ずれが生じ易く、各駆動モーターの駆動制御が一層困難になる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、像担持体の駆動
モーターの駆動と凹部を有する転写ローラーの駆動モーターの駆動とを、より簡単に同期
制御することができる画像形成装置および画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法では、ト
ナー粒子とキャリアー液とを含む液体現像剤で現像された像を担持する像担持体が像担持
体駆動源により駆動される。また、周面に凹部を有するとともに、像担持体に圧接されて
像担持体に担持された像を転写材に転写する転写ローラーが転写ローラー駆動源により駆
動される。更に、像担持体の位置が像担持体位置検出部で検出されるとともに、転写ロー
ラーの回転位置が転写ローラー位置検出部により検出される。したがって、検出された像
担持体の位置および転写ローラーの回転位置に基づいて、像担持体駆動源と転写ローラー
駆動源とをより簡単に同期制御することが可能となる。
【0010】
また、制御部により像担持体駆動源および転写ローラー駆動源を駆動制御するとともに
、検出された像担持体の位置と検出された転写ローラーの回転位置とに基づいて転写ロー
ラー駆動源を制御する。これにより、転写ローラーの回転位置が像担持体位置に対して基
準値を超えるずれ量でずれたときは、このずれにより生じる転写材の所定位置からのトナ
ー像の転写位置ずれが減小するように転写ローラーの回転速度を調整(補正)することが
可能となる。このように、凹部を有する転写ローラー位置を像担持体位置に対応する位置
に補正できることにより、転写材に対するトナー像の転写位置ずれの発生を抑制すること
ができる。その結果、像担持体に担持されたトナー像を転写材の所定位置に高精度に転写
することが可能となる。
【0011】
特に、凹部に配設された転写材把持部材で転写材を把持することにより、転写材を転写
ローラーに対してより高精度に位置決めすることが可能となる。したがって、像担持体の
像を転写材の所定位置に一層高精度に転写することができる。
【0012】
また、画像形成動作時に像担持体位置に対する転写ローラー位置の位置ずれが減少する
ことにより、像担持体駆動源および転写ローラー駆動源の同期制御が一層簡単になる。し
たがって、像担持体駆動源および転写ローラー駆動源の駆動制御をより一層簡単にするこ
とができる。
【0013】
特に、前述の位置ずれが生じ易い画像形成装置による画像形成動作開始直前で、前述の
ように転写ローラーの駆動速度を補正制御することにより、像担持体駆動源および転写ロ
ーラー駆動源の立ち上がりのばらつきを抑制することが可能となる。したがって、前述の
位置ずれを効果的に減少することができる。その結果、像担持体駆動源および転写ローラ
ー駆動源の駆動制御が一層簡単になる。その場合、像担持体としてベルトが用いられるこ
とで生じやすい像担持体駆動モーターの駆動むらを効果的に補正可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第1実施例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図2】(a)は第1実施例の中間転写ベルトと二次転写ローラーの駆動を説明する図、(b)は(a)におけるIIB方向から見た図である。
【図3】(a)は第1実施例の中間転写ベルトに形成された中間転写ベルト位置検出マークを示す斜視図、(b)は中間転写ベルト位置検出マークの部分拡大図である。
【図4】第1実施例の二次転写ローラー駆動モーターおよび中間転写ベルト駆動モーターの制御のブロック図である。
【図5】第1実施例の二次転写ローラーの駆動速度のシーケンス制御の一部を説明する図である。
【図6】第1実施例の二次転写ローラーの駆動速度のシーケンス制御の他部を説明する図である。
【図7】第1実施例の二次転写ローラーの駆動速度の制御のフローの一例を示す図である。
【図8】第1実施例の二次転写ローラーの駆動速度の制御のフローの他の例を示す図である。
【図9】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第2実施例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図10】(a)は第2実施例の中間転写ベルトと二次転写ローラーの駆動を説明する図、(b)は(a)におけるXB方向から見た図である。
【図11】第2実施例の二次転写ローラー駆動モーターおよび中間転写ベルト駆動モーターの制御のブロック図である。
【図12】第2実施例の二次転写ローラーの駆動速度の制御のフローの一例を示す図である。
【図13】第2実施例の二次転写ローラーの駆動速度の制御のフローの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第1実施例の一部を模式的にかつ
部分的に示す図である。
この例の画像形成装置1は、固形分のトナー粒子とキャリアー液とを含む液体現像剤を
用いて画像形成を行う。図1に示すように、画像形成装置1は、水平またはほぼ水平にタ
ンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K
)の像担持体である感光体2Y,2M,2C,2Kを備えている。ここで、各感光体2Y,2
M,2C,2Kにおいて、2Yはイエローの感光体、2Mはマゼンタの感光体、2Cはシア
ンの感光体、2Kはブラックの感光体を表す。また、他の部材についても同じように、部
材の符号にそれぞれ各色のY,M,C,Kを添えて各色の部材を表す。
【0016】
各感光体2Y,2M,2C,2Kの周囲には、それぞれ、帯電部3Y,3M,3C,3Kが設
けられている。また、各帯電部3Y,3M,3C,3Kから、それぞれ、各感光体2Y,2M
,2C,2Kの回転方向αに向かって、順に、像書込部である露光部4Y,4M,4C,4K
、現像部5Y,5M,5C,5K、一次転写部6Y,6M,6C,6K、図示しない除電部、お
よび感光体クリーニング部7Y,7M,7C,7Kが配設されている。
【0017】
また、画像形成装置1は、転写ベルトであるとともに像担持体である無端状の中間転写
ベルト8を備えている。この中間転写ベルト8は、各感光体2Y,2M,2C,2Kの上方
に配置されている。そして、中間転写ベルト8は各一次転写部6Y,6M,6C,6Kで各
感光体2Y,2M,2C,2Kに圧接されている。
【0018】
図示しないが、中間転写ベルト8は、例えば樹脂等の可撓性の基材と、この基材の表面
に形成されたゴム層等の弾性層と、この弾性層の表面に形成された表層とを有する3層構
造の比較的柔らかい弾性ベルトに形成されている。もちろん、中間転写ベルト8はこれに
限定されることはない。この中間転写ベルト8は図示しないモーターの駆動力が伝達され
る中間転写ベルト駆動ローラー9および中間転写ベルトテンションローラー10に張架さ
れている。そして、中間転写ベルト8はテンションを付与された状態で、回転(移動)方
向βに回転するようにされている。これにより、各色の液体現像剤で現像されたトナー像
が各一次転写部6Y,6M,6C,6Kで中間転写ベルト8に色重ねされて転写され、中間
転写ベルト8に担持される。
なお、各色Y、M、C、Kに対応する感光体等の部材の配置順は、図1に示す例に限定
されることはなく、任意に設定することができる。
【0019】
中間転写ベルト8の中間転写ベルト駆動ローラー9側には転写装置である二次転写部1
1が設けられている。二次転写部11は、二次転写ローラー12および二次転写ローラー
クリーニング部13を備えている。
【0020】
二次転写ローラー12は、その外周面に二次転写ローラー12の軸方向に延設された凹
部14を有するとともに、凹部14を除く基材12aの円弧部の外周面に巻かれたゴム等
で形成されるシート状の弾性部材12bを有している。その場合、図示しないが弾性部材
12bの両端部は凹部14の側壁に固定されている。この弾性部材12bにより二次転写
ローラー12の円弧部の外周面に弾性層(例えば、ゴム層等)の抵抗層が形成されている

【0021】
また、二次転写ローラー12は、図示しないスプリング等の付勢手段の付勢力により弾
性部材12bが中間転写ベルト8に高荷重で圧接される。これにより、図1に示すように
中間転写ベルト8と二次転写ローラー12の弾性部材12bとの間に二次転写ニップ11
aが形成される。このとき、中間転写ベルト駆動ローラー9は二次転写ローラー12の押
圧に対するバックアップローラーとして機能する。
【0022】
更に、二次転写ローラー12には転写バイアスが印加される。そして、二次転写ローラ
ー12は、中間転写ベルト8の移動方向βの移動時に回転方向γに回転するとともに転写
バイアスが印加されることにより、二次転写ニップ11aで、中間転写ベルト8に転写さ
れたトナー像を転写紙等の転写材に転写する。
【0023】
凹部14内には、転写材把持部材であるグリッパー15、グリッパー15が着座する転
写材把持部材受け部材であるグリッパー支持部16、および転写材剥離部材である突き出
し爪17が配設されている。図示しないが、グリッパー15は二次転写ローラー12の軸
方向に沿って所定数配設されており、各グリッパー15は櫛歯状に構成されている。また
、グリッパー支持部16は各グリッパー15に対応して配設されるとともに、突き出し爪
17はグリッパー15の櫛歯の間および両端に位置する櫛歯の外側に配設されている。
【0024】
画像形成装置1は、転写材を二次転写ニップ11aの方へ給送するゲートローラー18
(転写材送り部に相当)および転写材をガイドする転写材供給ガイド19を有する。中間
転写ベルト8に担持されたトナー像が二次転写される際に、ゲートローラー18は転写材
を二次転写ニップ11aの方へ供給する。
【0025】
そして、凹部14が二次転写ニップ11aに到達する直前に、グリッパー15はグリッ
パー支持部16に向かって回動してゲートローラー18から給送方向δに給送されてくる
転写材20の先端部20aをグリッパー支持部16との間に把持する。また、グリッパー
15は、二次転写ニップ11aを通過した後、グリッパー支持部16から離間する方向に
回動して転写材20の先端部20aの把持を解放する。更に、グリッパー15による転写
材把持の解放に相前後して、各突き出し爪17が突き出し位置に突き出される。これによ
り、転写材20の先端部の背面(転写材のトナー像の転写面と反対側の面)が各突き出し
爪17から突き出される。こうして、転写材20が二次転写ローラー12から剥離される
。その後、各突き出し爪17は凹部14内に戻る。これらのグリッパー15および突き出
し爪17の各作動は、それぞれ二次転写ローラー12が回転することで図示しないグリッ
パー制御カムおよび突き出し爪制御カムによって制御される。
【0026】
図2(a)および(b)に示すように、中間転写ベルト駆動ローラー9は、中間転写ベ
ルト駆動モーター21(本発明の像担持体駆動源に相当)によって回転駆動される。すな
わち、中間転写ベルト駆動モーター21の駆動力が、中間転写ベルト駆動モーター21の
回転軸に一体回転可能に取り付けられたモーターギア22および中間転写ベルト駆動ロー
ラー9の回転軸9aに一体回転可能に取り付けられた中間転写ベルト駆動ローラー駆動ギ
ア23を介して中間転写ベルト駆動ローラー9に伝達される。これにより、中間転写ベル
ト駆動ローラー9が図2(a)において矢印で示す反時計回りに回転する。
【0027】
また、二次転写ローラー12は、二次転写ローラー駆動モーター24(本発明の転写ロ
ーラー駆動源に相当)によって回転駆動される。すなわち、二次転写ローラー駆動モータ
ー24の駆動力が、二次転写ローラー駆動モーター24の回転軸に一体回転可能に取り付
けられたモーターギア25および二次転写ローラー12の回転軸12cに一体回転可能に
取り付けられた二次転写ローラー駆動ギア26を介して二次転写ローラー12に伝達され
る。これにより、二次転写ローラー12が図2(a)において矢印で示す時計回りに回転
する。
【0028】
図1に示すように、二次転写ローラー12の一端側には、二次転写ローラー12の回転
位置を検出する二次転写ローラー位置検出器(転写ローラー位置検出部に相当)であるエ
ンコーダー27およびコードホイール28がこのエンコーダー27に隣接して設けられて
いる。コードホイール28はスリット(切欠)28aを有する円板から構成され、二次転
写ローラー12の回転軸(不図示)に二次転写ローラー12と一体回転するように設けら
れている。これらのエンコーダー27およびコードホイール28は従来公知のものを用い
ることができる。そして、エンコーダー27はコードホイール28のスリット28aの回
転位置を検出して二次転写ローラー12の二次転写ローラー位置信号を出力する。すなわ
ち、二次転写ローラー12の位置が検出される。その場合、凹部14は二次転写ローラー
12に一体に設けられることから、二次転写ローラー12の回転位置と凹部14の回転位
置とは相対的に変化することはなく、両回転位置は一義的に決まる。したがって、エンコ
ーダー27が出力する二次転写ローラー位置信号は凹部14の凹部位置信号であり、これ
らのエンコーダー27およびコードホイール28は凹部14の回転位置を検出する凹部位
置検出器となっている。
【0029】
また、中間転写ベルト8の回転(移動)位置を検出する中間転写ベルト位置検出器29
(像担持体位置検出部に相当)が、中間転写ベルトテンションローラー10の近傍に配設
されている。この中間転写ベルト位置検出器29は、例えば公知の光反射型センサーある
いは光透過型センサー等の図示しない光学センサーと、図3(a)および(b)に示すよ
うに中間転写ベルト8の一側縁に中間転写ベルト8の移動方向βに等ピッチの間隔を置い
て、あるいは中間転写ベルト8の一側縁の所定位置に中間転写ベルト8と一体にこの中間
転写ベルト8の移動方向βと直交またはほぼ直交する方向に突設された所定数の中間転写
ベルト位置検出マーク29aとを有している。なお、中間転写ベルト位置検出マーク29
aは、図3(a)および(b)に示す例以外に、中間転写ベルト8の像担持領域(一次転
写領域)外の領域に、中間転写ベルト8の移動位置を検出可能であれば他の中間転写ベル
ト位置検出マークで構成することもできる。そして、中間転写ベルト8の移動時に光学セ
ンサーがこれらの中間転写ベルト位置検出マーク29aを検出し、中間転写ベルト位置検
出器29は、光学センサーが検出した中間転写ベルト位置検出マークに基づいて中間転写
ベルト8の中間転写ベルト位置信号を出力する。すなわち、中間転写ベルト位置検出器2
9により、中間転写ベルト8の位置が検出される。
【0030】
図4は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第1実施例における中間転写ベルト駆動
モーターおよび二次転写ローラー駆動モーターの制御のブロック図である。
図4に示すように、この第1実施例の中間転写ベルト駆動モーター21および二次転写
ローラー駆動モーター24は、いずれも画像形成装置1の電子制御部(制御部)30で制
御される。その場合、制御部30は、エンコーダー27からの二次転写ローラー位置信号
および中間転写ベルト位置検出器29からの中間転写ベルト位置信号に基づいて、二次転
写ローラー駆動モーター24を駆動制御する。これにより、転写材20が二次転写ローラ
ー12の凹部14以外の転写画像領域に確実に位置するようにされる。したがって、転写
が行われない凹部14の領域に転写材20が位置することにより生じる転写不良が防止さ
れる。
【0031】
次に、本実施形態における中間転写ベルト8の回転位置および二次転写ローラー12の
凹部14の回転位置に基づいて、二次転写ローラー12の回転のシーケンス制御について
説明する。この例の画像形成装置1では、二次転写ローラー12の凹部14の回転位置に
基づいて、二次転写ローラー12の駆動速度(つまり、周速度)を制御している。その場
合、この第1実施例では、二次転写ローラー12の駆動速度の制御は、画像形成装置1が
画像形成動作開始直前に行われる。
【0032】
図5および図6は、この第1実施例の画像形成装置1における二次転写ローラー12の
周速度のシーケンス制御を示す図である。この第1実施例では、図5に示すように画像形
成開始信号により、中間転写ベルト8が回転駆動されるとともに二次転写ローラー12が
回転駆動される。このとき、二次転写ローラー12の周速度は、通常画像形成時(正常時
)に設定される第1設定速度v1(mm)/sec)に設定される。また、第1実施例で
は、基本的に二次転写ローラー12の二次転写ローラー位置信号(ON信号)(つまり、
凹部位置信号(ON信号))が1回置きの中間転写ベルト8の中間転写ベルト位置信号(
ON信号)と同時に出力される。すなわち、二次転写ローラー位置信号(ON信号)が1
回置きの中間転写ベルト位置信号(ON信号)に基づいて出力されるとともに、出力され
た二次転写ローラー位置信号(ON信号)に基づいて二次転写ローラー12の駆動速度が
制御される。
【0033】
そして、二次転写ベルトローラー位置信号が、二点鎖線で示すように中間転写ベルト位
置信号よりずれt1(sec)だけ早い出力タイミングで出力されたとする。したがって
、二次転写ローラー12の周速度が通常の二次転写時の二次転写ローラー12の周速度よ
り速くなっている。制御部30は、1つ置きの中間転写ベルト位置信号(ON信号)の出
力タイミングと凹部位置信号(ON信号)の出力タイミングとを比較し、その比較の結果
、これらの信号の出力タイミングの間にずれt1(sec)が生じていると判断する。更
に、制御部30は、これらの両信号の出力タイミングの状態で、次の1つ置いた中間転写
ベルト位置信号(ON信号)の出力タイミングと凹部位置信号(ON信号)の出力タイミ
ングとを比較し、その比較の結果、同様にずれt1(sec)が生じていると判断したと
する。このとき、制御部30はこのずれt1(sec)が予め設定された基準値を超えて
いるか否かを判断する。制御部30は、ずれt1(sec)が基準値を超えていると判断
すると、二次転写ローラー駆動モーター24の回転速度を制御し、二次転写ローラー12
の回転速度(つまり、周速度)が第1設定速度v1(mm/sec)より低い第2設定速
度v2(mm/sec)に調整(補正)される。これにより、ずれt1(sec)が減少す
るように二次転写ローラー12の周速度が制御される。すなわち、二次転写ローラー12
の回転位置(凹部14の位置)が補正制御される。なお、前述の基準値は、例えば転写材
20に転写されたトナー像がずれt1によって転写材20の所定位置に転写されていない
ことが目視で認められない範囲等によって設定する。
【0034】
二次転写ローラー12の周速度が低い第2設定速度v2(mm/sec)に設定される
ことによりずれt1(sec)が減小される。制御部30は、二次転写ローラー12の周
速度をずれt1(sec)に基づいた所定時間だけ第2設定速度v2(mm/sec)に維
持する。その後、制御部30は二次転写ローラー駆動モーター24を駆動制御し、二次転
写ローラー12の周速度を第1設定速度v1(mm/sec)に戻す。そして、次の凹部
位置信号(ON信号)が次の1つ置いた中間転写ベルト位置信号(ON信号)の出力に一
致またはほぼ一致した出力タイミングで出力されたとする。このときは、二次転写ローラ
ー12の周速度が通常の二次転写時の二次転写ローラー12の周速度になっている。した
がって、制御部30は二次転写ローラー12の周速度が正常であると判断して、画像形成
装置1による画像形成動作を開始する。なお、制御部30は、二次転写ローラー12の周
速度を第2設定速度v2(mm/sec)に維持した後、第1設定速度v1(mm/sec
)に戻した状態で、なおも基準値を超えるずれt1(sec)が生じている時は、再び前
述と同様に二次転写ローラー12の周速度を制御する。
【0035】
また、図6に示すように前述と同様に画像形成開始信号により、中間転写ベルト8が回
転駆動されるとともに二次転写ローラー12が第1設定速度v1(mm)/sec)で回
転駆動される。そして、二次転写ベルトローラー位置信号が前述の図5に示す場合と逆に
、二点鎖線で示すように中間転写ベルト位置信号よりずれt2(sec)だけ遅い出力タ
イミングで出力されたとする。したがって、二次転写ローラー12の周速度が通常の二次
転写時の二次転写ローラー12の周速度より遅くなっている。制御部30は、前述と同様
にずれt2(sec)が基準値を超えていると判断すると、二次転写ローラー駆動モータ
ー24の回転速度を制御し、二次転写ローラー12の周速度が第1設定速度v1(mm/
sec)より高い第3設定速度v3(mm/sec)に補正される。以後、制御部30は
、図5に示す場合と同様にしてずれt2(sec)が減少するように二次転写ローラー駆
動モーター24の回転速度を制御する。そして、制御部30は、二次転写ローラー位置信
号(ON信号)の出力タイミングが1つ置きの中間転写ベルト位置信号の出力タイミング
と一致またはほぼ一致すると判断した時、画像形成装置1による画像形成動作を開始する

【0036】
図7および図8は、この第1実施例の画像形成装置1による画像形成動作を開始する制
御のフローの各例を示す図である。
図7に示す例のフローでは、まずステップS1で画像形成開始指令が発せられて、中間
転写ベルト8および二次転写ローラー12が回転駆動される。続いて、ステップS2で二
次転写ローラー位置が検出されるとともに、ステップS3で中間転写ベルト位置が検出さ
れる。次いで、ステップS4で二次転写ローラー位置が中間転写ベルト位置に対して位置
ずれしているか否かが判断される。二次転写ローラー位置が位置ずれしていないと判断さ
れると、ステップS5で画像形成装置1による通常の画像形成動作が開始される。
【0037】
ステップS4で二次転写ローラー位置が中間転写ベルト位置に対して位置ずれしている
と判断されると、ステップS6でこの位置ずれが基準値を超えているか否かが判断される
。位置ずれが基準値を超えていないと判断されると、ステップS5の処理に移行する。ま
た、位置ずれが基準値を超えていると判断されると、ステップS7で二次転写ローラー1
2の位置が補正される。次いで、ステップS4の処理に移行し、補正された二次転写ロー
ラー12の位置が中間転写ベルト位置に対して位置ずれしているか否かが判断される。以
後、位置ずれがないと判断されるか、あるいは位置ずれが基準値を超えていないと判断さ
れるまで、ステップS4、S6、およびS7が繰り返される。
【0038】
また、図8に示す例のフローでは、前述の図7に示すフローにおけるステップS2の二
次転写ローラー12の位置検出とステップS3の中間転写ベルト8の位置検出との順序を
逆に、ステップS12で中間転写ベルト8の位置検出を行い、ステップ13で二次転写ロ
ーラー12の位置検出を行っている。図8に示すフローにおける他の処理であるステップ
S11、S14ないしS17は、それぞれ、図7に示すフローにおけるステップS1、S
4ないしS7と同じである。
【0039】
この例の画像形成装置1では、画像形成装置1による通常の画像形成動作が開始される
と、中間転写ベルト8に各感光体2Y,2M,2C,2Kから転写されたフルカラーのトナ
ー像が二次転写部11で、ゲートローラー18から給送されてきた転写材20に二次転写
される。このとき、転写材20の先端部20aがグリッパー15で把持された状態で二次
転写が行われる。そして、グリッパー15による転写材把持部が二次転写ニップ11aを
通過すると、グリッパー15による転写材20の把持が解放されるとともに、転写材20
は二次転写ローラー12から剥離するようになるが、このとき突き出し爪17により突き
出されて二次転写ローラー12からより確実に剥離される。図示しないが、二次転写ロー
ラー12から剥離した転写材20は従来の画像形成装置と同様に定着部に搬送されて転写
材のトナー像が定着された後、排転写材トレイに排出される。
【0040】
この第1実施例の画像形成装置1によれば、凹部14を有する二次転写ローラー12の
二次転写ローラー位置信号(ON信号)(つまり、凹部位置信号(ON信号))が中間転
写ベルト8の中間転写ベルト位置信号(ON信号)に基づいて出力されるとともに、出力
された二次転写ローラー位置信号(ON信号)に基づいて二次転写ローラー12の周速度
が制御される。そして、二次転写ローラー位置信号(ON信号)が中間転写ベルト位置信
号(ON信号)に対して基準値を超えるずれ量でずれたときは、このずれにより生じる転
写材20の所定位置からのトナー像の転写位置ずれを減小するように二次転写ローラー1
2の周速度が補正される。これにより、凹部14を有する二次転写ローラー12の位置が
中間転写ベルト8の位置に対応する位置に補正でき、転写材20に対するトナー像の転写
位置ずれの発生を抑制することができる。その結果、中間転写ベルト8に転写されたトナ
ー像を転写材20の所定位置に高精度に転写することが可能となる。特に、凹部14に配
設された転写材把持部材15で転写材20の先端部20aを把持することにより、転写材
20を二次転写ローラー12に対してより高精度に位置決めすることが可能となる。した
がって、中間転写ベルト8のトナー像を転写材20の所定位置に一層高精度に転写するこ
とができる。
【0041】
そして、画像形成動作時に中間転写ベルト8の位置に対する二次転写ローラー12の位
置ずれが減少することにより、中間転写ベルト駆動モーター21および二次転写ローラー
駆動モーター24の同期制御が簡単になる。したがって、中間転写ベルト駆動モーター2
1および二次転写ローラー駆動モーター24の駆動制御をより簡単にすることができる。
特に、前述の位置ずれが生じ易い画像形成装置1による画像形成動作開始直前で、前述の
ように二次転写ローラー12の駆動速度を補正制御することにより、中間転写ベルト駆動
モーター21および二次転写ローラー駆動モーター24の立ち上がりのばらつきを抑制す
ることが可能となる。したがって、前述の位置ずれを効果的に減少することができる。そ
の結果、中間転写ベルト駆動モーター21および二次転写ローラー駆動モーター24の駆
動制御が一層簡単になる。特に、像担持体として中間転写ベルト8が用いられることで、
生じやすい中間転写ベルト駆動モーター21の駆動むらを効果的に補正可能となる。
【0042】
図9は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第2実施例を模式的にかつ部分的に示す
図である。
前述の第1実施例では中間転写ベルト8が用いられているのに対して、図9に示すよう
に、この第2実施例の画像形成装置1では、像担持体である中間転写媒体として中間転写
ドラム31が用いられている。
【0043】
図10(a)および(b)に示すように、中間転写ドラム31は中間転写ドラム駆動モ
ーター32によって回転駆動される。すなわち、中間転写ドラム駆動モーター32の駆動
力が、中間転写ドラム駆動モーター32の回転軸に一体回転可能に取り付けられたモータ
ーギア33および中間転写ドラム31の回転軸31aに一体回転可能に取り付けられた中
間転写ドラム駆動ギア34を介して中間転写ドラム31に伝達される。これにより、中間
転写ドラム31が図10(a)において矢印で示す反時計回りに回転する。
【0044】
また図9に示すように、中間転写ドラム31の回転位置を検出する中間転写ドラム位置
検出器として、二次転写ローラー12の位置検出器であるエンコーダー27およびコード
ホイール28と同様のエンコーダー35およびコードホイール36が配設されている。そ
して、第1実施例の場合と同様に、コードホイール36はスリット(切欠)36aを有し
ており、エンコーダー35がこのスリット36aを検出することで中間転写ドラム31の
位置を検出している。
【0045】
図11に示すように、エンコーダー35および中間転写ドラム駆動モーター32が制御
部30に接続されている。第2実施例の画像形成装置1では、二次転写ローラー位置信号
(二次転写ローラー位置信号)を出力するタイミングが中間転写ドラム位置信号に基づい
て設定されるとともに、出力タイミングが設定された二次転写ローラー位置信号に基づい
て二次転写ローラー12の周速度が制御される。そして、図12および図13に示すよう
にこの第2実施例の画像形成装置1においても、前述の第1実施例と同様の二次転写ロー
ラー12の周速度のシーケンス制御が行われる。すなわち、図12においてずれt3(s
ec)が第1実施例の図5に示すずれt1(sec)に対応するとともに、図13におい
てずれt4(sec)が第1実施例の図6に示すずれt2(sec)に対応する。したがっ
て、第2実施例における二次転写ローラー12の周速度のシーケンス制御は、実施例1に
おける中間転写ベルト8、中間転写ベルト駆動モーター21、ずれt1(sec),t2
sec)等をそれぞれ中間転写ドラム31、中間転写ドラム駆動モーター32、ずれt3
(sec),t4(sec)と置き換えるだけで、前述の第1実施例におけるシーケンス制
御と同じである。
この第2実施例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1実施例と同じ
である。
【0046】
なお、本発明の画像形成装置および画像形成方法は、前述の実施の形態の各例に限定さ
れることはない。例えば、前述の例では、像担持体として中間転写ベルト8あるいは中間
転写ドラム31を用いているが、像担持体として感光体とすることもできる。像担持体に
感光体を用いる場合は、感光体のトナー像が転写材に直接転写されることになる。また、
前述の各例の画像形成装置では4色の画像形成装置としているが、単色の画像形成装置で
もよい。要は、本発明は特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で種々の設計変更
が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…画像形成装置、2Y,2M,2C,2K…感光体、5Y,5M,5C,5K…現像部、6Y
,6M,6C,6K…一次転写部、8…中間転写ベルト、9…ベルト駆動ローラー、11…
二次転写部、11a…二次転写ニップ、12…二次転写ローラー、12b…弾性部材、1
4…凹部、15…転写材把持部材、20…転写材、21…中間転写ベルト駆動モーター、
24…二次転写ローラー駆動モーター、27,35…エンコーダー、28,36…コードホ
イール、29…中間転写ベルト位置検出器、29a…中間転写ベルト位置検出マーク、3
0…電子制御部(制御部)、31…中間転写ドラム、32…中間転写ドラム駆動モーター
、v1…第1設定速度、v2…第2設定速度、v3…第3設定速度、t1,t2,t3,t4…ずれ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子とキャリアー液とを含む液体現像剤で現像された像を担持する像担持体と、
前記像担持体を駆動させる像担持体駆動源と、
周面に凹部を有するとともに、前記像担持体に転写材を圧接して前記像担持体に担持さ
れた前記像を前記転写材に転写する転写ローラーと、
前記転写ローラーを駆動させる転写ローラー駆動源と、
前記像担持体の位置を検出する像担持体位置検出部と、
前記転写ローラーの回転位置を検出する転写ローラー位置検出部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写ローラー駆動源および前記像担持体駆動源を駆動制御するとともに、前記像担持
体位置検出部で検出された前記像担持体の位置と前記転写ローラー位置検出部で検出され
た前記転写ローラーの回転位置とに基づいて、前記転写ローラー駆動源を制御する制御部
を有する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、画像形成信号が出力された時に前記転写ローラー駆動源を制御する請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写ローラー駆動源の制御により、前記転写ローラーの回転速度を調整する請求項1
ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体はベルト部材である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置

【請求項6】
前記転写ローラーの前記凹部に、前記転写材を把持する転写材把持部材を配設する請求項
1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写ローラーの周面にシート状の弾性部材を有し、前記弾性部材は前記転写ローラー
の前記凹部で固定される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー粒子とキャリアー液とを含む液体現像剤で現像された像を担持する像担持体を像担
持体駆動源を用いて駆動し、
前記像担持体の位置を検出し、
周面に凹部を有する転写ローラーを転写ローラー駆動源を用いて駆動し、
前記転写ローラーの回転位置を検出し、
検出された前記像担持体の位置と検出された前記転写ローラーの回転位置とに基づいて
、前記転写ローラー駆動源を制御し、
前記転写ローラーにより、前記像担持体に担持された前記像を転写材に転写することを
特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−8057(P2011−8057A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151910(P2009−151910)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】