説明

画像形成装置及びジョブ制御プログラム

【課題】データ保存量が上限値を超過する場合であっても、目的のデータを円滑に保存できるようにする。
【解決手段】 目的の文書データを一の記憶領域に保存することによって一の文書ボックスbにおけるデータ保存量が上限値を超過する場合に、前記文書ボックスbに保存されている文書データの中から削除予定のデータを選択する削除予定データ選択手段162と、前記削除予定のデータを削除予定ボックスBtに移動するデータ移動手段163と、を備えた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書データなどのデータ保存を円滑に行う画像形成装置及びジョブ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複合機(MFP)においては、スキャンした原稿やホストコンピュータ等から受信した文書データや画像データ等(以下、文書データという)をハードディスクドライブ(HDD)の記憶領域に保存することで、文書データの再出力を可能とした機能(以下、文書ボックスという。)を有するものがある。
文書ボックスは、HDDの容量に限りがあるため、保存できる文書データのサイズや数量に一定の上限値(例えば、200MB、1000ジョブなど)が設けられている。
このため、文書ボックスに文書データを保存する際に、データ保存量がこの上限値を超過する場合には、その旨のエラーメッセージを通知し、文書データの受付けや保存を拒否する処理が一般的に行われる。
【0003】
ところで、このように多くの文書データが既に文書ボックスに保存されている場合など、そのままでは新たに文書データの保存ができない場合、ユーザーは、保存操作を一旦キャンセルし、保存したい文書ボックスのリストにアクセスしたうえで、保存済みの大量の文書データの中から不要な文書データを選択し、これを削除した後でなければ新たな文書データを保存する事はできない。
このため、文書ボックスを利用するユーザーにとって煩わしく、利便性を低下させる原因となっていた。
そこで、保存されるジョブ数が上限値を超える場合には、古いジョブを優先的に削除し、または、使用頻度が少ないジョブを優先的に削除する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
このような技術を文書ボックスに適用した場合、ユーザーが不要な文書データを選び、削除する作業を省略することができるため、利便性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−110354号公報
【特許文献2】特開2006−209708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術のように、時期や使用頻度等にもとづいて不要とされる文書データを客観的に特定できたとしても、なおもユーザーが実際に不要と考えるデータと相違することがある。
このため、ユーザーの主観を取り入れることで、真にユーザーが不要と認める文書データを特定する精度の向上が求められていた。
また、削除する文書データを精度良く特定できたとしても、ユーザーの都合や環境の変化等により、削除した文書データの重要性が事後的に増すこともある。
この場合、結果として、ユーザーに損害を及ぼすことになるため、このようなケースにも柔軟に対応しつつ、文書データの保存を円滑に行うことができる画像形成装置が求められていた。
【0006】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、文書ボックスのデータ保存量が上限値を超過するために新たな文書データの保存ができない場合に、不要な文書データを精度良く判断し、他の保存領域に移動させることによって、その文書データを文書ボックスに保存することを可能とするとともに、不要と判断された文書データの保護を図る画像形成装置及びジョブ制御プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、データを一の記憶領域に保存することによって前記一の記憶領域におけるデータ保存量が上限値を超過する場合に、前記一の記憶領域に保存されているデータの中から削除予定のデータを選択する削除予定データ選択手段と、前記削除予定のデータを他の記憶領域に移動するデータ移動手段とを備えた構成としてある。
【0008】
また、本発明のジョブ制御プログラムは、画像形成装置のコンピュータを、目的のデータを一の記憶領域に保存することによって前記一の記憶領域におけるデータ保存量が上限値を超過する場合に、前記一の記憶領域に保存されているデータの中から削除予定のデータを選択する削除予定データ選択手段、及び、前記削除予定のデータを他の記憶領域に移動するデータ移動手段、として機能させるようにしてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置及びジョブ制御プログラムによれば、データ保存量が上限値を超過する場合であっても、目的のデータを円滑に保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】操作表示部を示す図である。
【図3】削除予定ボックス移動条件選択画面の一例を示した図である。
【図4】文書ボックスに保存された文書データの一覧を表した図である。
【図5】削除予定ボックスに移動された文書データの一覧を表した図である。
【図6】文書ボックスの一覧を表した図である。
【図7】文書データの保存方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(画像形成装置)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置(MFP)の構成を示すブロック図である。
MFP1は、図1(a)に示すように、主制御部としてのCPU(Central Processing Unit)90を備えるほか、ROM(Read Only Memory)91およびRAM(Random Access Memory)92を備える。
ROM91には、CPU90に、コピー、プリンター、ファクシミリ(FAX)、メール、文書ボックスといった各機能のジョブ処理を実行させるためのプログラムが格納され、このプログラムを読み込ませることによって各々の機能を実施することができる。
RAM92は、CPU90がプログラムを実行する際にデータを一時的にスプールするための作業領域(ワークエリア)として用いられる。
また、ROM91やRAM92以外の他の記憶媒体としてHDD(ハードディスクドライブ)93を備える。
HDD93は、文書データを保存するための記憶領域として一又は二以上の文書ボックスb(b1〜bn)を備える。文書ボックスbによれば、ユーザーやグループごとに文書データを保存することができ、文書データの再利用や保存管理を効率よく行うことができる。
なお、各文書ボックスb1〜bnには、保存可能なデータ量としてそれぞれ一定の記憶容量(上限値)が割り当てられている。
例えば、1文書ボックス当たりの文書データの許容保存量を最大200MBと設定し、1文書ボックス当たりの文書データの許容保存数を最大1000ジョブと設定することができる。
また、HDD93は、文書ボックスbに保存されている文書データの中から削除予定として選択された文書データを一時的に保管する削除予定ボックスBtを備える。
【0012】
MFP1は、図1(a)に示すように、原稿読取部10、通信インターフェース11、操作表示部12、ジョブ入力部13、画像処理部14、出力部15、ジョブ制御部16、及び、ユーザーID入力部17を備える。
【0013】
原稿読取部10は、いわゆるスキャナーであり、操作表示部12による操作に応じて、原稿トレイ(不図示)にセットされた原稿を読み取ってその画像データを取得する。原稿読取部10は、取得した画像データを画像処理部14に出力する。
通信インターフェース11は、電話回線やLAN等が接続され、パーソナルコンピュータやFAX装置(不図示)などの外部装置との間で印刷データやFAXデータの送受信を行う。
【0014】
操作表示部12は、MFP1本体(不図示)の上部外周に配置され、MFP1の利用者による各種入力操作や、利用者に対して各種画面の表示を行う。
操作表示部12は、例えば、図2に示すように、利用者から操作指示を受け付ける操作部121と、利用者への情報を表示する表示部122とから構成される。
操作部121は、画像出力に関する各種設定や、画像処理スタートの入力操作を行うことができるようになっており、コピー,スキャナー,プリント,FAX,文書ボックス等に関するジョブの実行を選択する機能選択キーK1、印刷枚数や印刷部数等の数字の入力に使用されるテンキーK2、設定終了後、ジョブの実行を開始させるスタートキーK3、操作部121を介して行った直前の各種設定をキャンセルするクリアキーK4、開始されたジョブを途中で中止させるストップキーK5、各種設定を全てキャンセルし、初期の設定に戻すリセットキーK6等のキーを備える。
【0015】
表示部122は、周知の液晶表示パネルから構成され、MFP1の動作状況、実行結果、あるいは操作部121を介して入力された各種設定値、利用者へのメッセージ等を表示する。
また、表示部122は、選択操作を受け付けるタッチパネル機能を備えており、種々の操作画面に応じて各種操作を受け付けることもできる。
例えば、表示部122には、「削除予定ボックス移動条件選択画面(図3参照)、文書データの一覧を表示する画面(図4参照)、削除予定の文書データの一覧を表示する画面(図5参照)、文書ボックスの一覧を表示する画面(図6参照)を表示することができ、この画面に表示される各種キーをタッチする操作によって、種々の処理を命令することができる。
【0016】
ジョブ入力部13は、原稿読取部10によって読み取った画像データ又は通信インターフェース11を介して受信した印刷データあるいはFAXデータなどのジョブを入力して画像処理部14に出力する。
画像処理部14は、ジョブ入力部13から入力したジョブを解釈して必要な画像処理を行う。例えば、印刷対象のジョブに対しては、色変換処理、濃度補正処理、網点処理等を行う。
画像処理部14は、画像処理が施されたジョブを出力部15に出力する。
出力部15は、上記ジョブ処理を介して得た画像やデータを出力する。
例えば、コピー、プリント、FAX受信の対象画像を印刷するための印刷エンジンが相当する。また、FAX送信を行うためのダイヤル発信機能やメール送信を行う出力手段も相当する。
【0017】
ここで、ジョブ制御部16は、文書ボックスbにおける保存データの上限値を管理する。例えば、ジョブ制御部16は、ある文書ボックスbにおいて、文書データを保存しようとしたときに、その文書データの保存によって文書ボックスbの上限値を超過するような場合には、操作表示部12を介してその旨を通知するとともに、その文書データの保存を禁止する動作を基本制御として行う。
また、ジョブ制御部16は、このような基本制御の他、ある文書ボックスb(一の記憶領域)における文書データを削除予定ボックスBt(他の記憶領域)に移動させて文書ボックスbにおけるデータ保存量を減らす制御を行う。
このため、ジョブ制御部16は、図1(b)に示すように、属性設定手段161、削除予定データ選択手段162、データ移動手段163、削除予定データ表示手段164、削除予定データ一覧表示手段165、データ処分手段166、ユーザー識別手段167、及び、ボックス一覧表示手段168を備える。
【0018】
属性設定手段161は、文書ボックスbに文書データを保存する際、文書データごとに属性を設定する。
例えば、文書データを保存する際に、保存日時、優先度(低(Low)、中(Middle)、高(High)など)、保存サイズ、文書名、ユーザー名等を属性として設定し、文書ボックスbに保存した文書データへのアクセスもしくは再出力の度に使用回数や使用頻度を更新し、これらを属性として設定することができる。
【0019】
削除予定データ選択手段162は、ある文書ボックスbに文書データを保存するに当たり、当該文書データの保存によってこの文書ボックスbにおけるデータ保存量が上限値を超過する場合に、この文書ボックスbに保存されている文書データの中から削除予定のデータを選択する。
削除予定の文書データは、文書データごとに設定されている優先度や保存日時を判断要素として選択される。
【0020】
図3は、削除予定ボックスに移動する文書データを特定する際の条件を設定するために用いる画面(「削除予定ボックス移動条件選択画面」)の一例を示した図である。
図3に示すように、削除予定ボックス移動条件選択画面P1においては、「保存日時の古い順」、「優先度の低い順」、「使用頻度の低い順」の3つのカテゴリーにもとづく条件が選択可能に表示されている。
ここで、例えば、ユーザーが、「保存日時の古い順」キーP11を選択し、OKキーP14を選択すると、保存時刻が最も古い文書データが削除予定の文書データとして優先的に選択される。
同様に、ユーザーが、「優先度の低い順」キーP12を選択して「OK」キーP14を選択すると、優先度が最も低い文書データが削除予定の文書データとして優先的に選択され、「使用頻度の低い順」キーP13を選択して「OK」キーP14を選択すると、出力回数などアクセス回数が最も低い文書データが削除予定の文書データとして選択される。
なお、条件選択を取り止めたいときは、「Cancel」キーP15を選択する。
【0021】
なお、削除予定データ選択手段162は、優先度、保存時刻、使用頻度のうち二以上のカテゴリーにもとづき削除予定データを選択することもできる。
例えば、ユーザーは、図3に示す画面において、「優先度の低い順」キーP12と「使用頻度の低い順」キーP13とを共に選択することができ、この場合において、仮に優先度が同一の文書データが複数あるときには、削除予定データ選択手段162は、そのうち使用頻度が最も低い文書データを削除予定データとして選択する。また、「優先度の低い順」P12と「保存日時の古い順」P11を選択した場合、削除予定データ選択手段162は、優先度が同じ文書データの中から保存日時が最も古い文書データを削除予定データとして選択する。
【0022】
データ移動手段163は、削除予定データ選択手段162によって選択された削除予定の文書データを削除予定ボックスBtに移動する。
これにより、文書ボックスbの保存データに移動した文書データ分の空き領域ができて保存可能領域が増加する。
また、このように削除予定のデータをすぐに削除せずに、削除予定ボックスBtに一旦移動するようにしたのは、削除予定データを完全に消滅することによる弊害を考慮したものである。
例えば、削除予定データの判断の基準となる優先度の設定に誤りが認められたり、環境その他の変化によって事後的にその判断に誤りが認められるケース等がある。
このような場合、すぐに対象の文書データが削除されると、もはや復元することができないため、このような不利益を防ぐためである。
また、データ移動手段163は、削除予定の文書データを削除予定ボックスBtに移動するとともに、その移動により保存可能領域が増加した文書ボックスbに目的の文書データを保存する処理を自動的に行うこともできる。
【0023】
削除予定データ表示手段164は、文書ボックスbに保存された一又は二以上の文書データを一覧表示するとともに、削除予定ボックスBtに移動した削除予定の文書データを識別可能に表示する。
【0024】
図4は、文書ボックスに保存された文書データの一覧を表した図である。
図4に示す表示画面P2は、ボックス名「box0001」の文書ボックスbに保存された文書データの一覧を表示したものである。表示画面P2においては、文書データのファイル名(doc0001〜doc0005)、使用者(yamada)、データサイズ、保存日時、優先度(Low、Middle、High)及び使用頻度(回数)が、それぞれ「Name」表示エリアP21、「OwnerName」表示エリアP22、「Size」表示エリアP23、「date」表示エリアP24、「Priority」表示エリアP25及び「Frequency(times)」表示エリアP26に表示される。
ユーザーは、指定する文書ファイルのチェックボックスP27を選択し、「印刷」キーP28を選択するとその文書データの印刷処理を実行することができる。同様に、「削除」キーP29を選択するとその文書データを削除することができ、「詳細情報」キーP2Aを選択すると、その文書データの詳細情報(例えば、データの種類(識別子)、更新情報など)を表示することができる。なお、上記操作や処理を途中で取り止めたいときは「キャンセル」キーP2Bを選択する。
【0025】
ここで、「ごみ箱」マークP2Cが付された文書データ(doc0005)は、削除予定ボックスBtに移動された文書データであることを示している。削除予定の文書データ自体は削除予定ボックスBtに移動しつつも、そのインデックス情報については元の文書ボックスbにおける情報として残しておくことによってこのような表示を可能とするものである。
このため、ユーザーは、削除対象の文書データを完全削除する前の段階で事前に確認することができる。このようにすると、優先度の設定ミスによって誤って削除予定データとして判別された文書データや事後的に必要となった文書データの削除を未然に防ぐことができる。
【0026】
削除予定データ一覧表示手段165は、削除予定ボックスBtに移動した一又は二以上の削除予定の文書データを一覧表示する。
図5は、削除予定ボックスに移動された文書データの一覧を表した図である。
図5に示すように、ここでは、削除予定ボックスBtに移動された文書データの一覧を表示画面P3を介して表示する。表示画面P3においては、削除予定の文書データのファイル名、使用者、データサイズ、日付、優先度及び使用頻度(回数)が、それぞれ「Name」表示エリアP31、「OwnerName」表示エリアP32、「Size」表示エリアP33、「date」表示エリアP34、「Priority」表示エリアP35及び「Frequency(times)」表示エリアP36に表示される。
【0027】
データ処分手段166は、選択操作に応じ、一覧表示された削除予定の文書データの中から任意のデータを削除し、又は、元の文書ボックスbあるいは別の文書ボックスbに再移動する。
具体的には、図5に示す表示画面P3上において、ユーザーが、任意の文書データのチェックボックスP37を選択し、「元に戻す」キーP38を選択するとその文書データを元の文書ボックスbに再移動させることができる。また、任意の文書データに対する切取り操作を行い、文書ボックス一覧画面(図6参照)において所望の文書ボックスに貼付ける操作を行うことによって別の文書ボックスに再移動させることもできる。
また、ユーザーが、任意の文書データのチェックボックスP37を選択し、「削除」キーP39を選択するとその文書データを完全(復元不能)に削除することができる。
なお、「詳細情報」キーP3Aを選択すると、その文書データの詳細情報を表示することができる。
また、操作の途中で処理を取り止めたいときは「キャンセル」キーP3Bを選択する。
【0028】
ユーザー識別手段167は、MFP1における種々の操作を行うユーザーを識別する。
ユーザー識別は、いわゆるログイン処理の過程で取得したユーザーIDにもとづき処理することができる。
具体的には、図1(a)に示すように、本実施形態のMFP1は、カードリーダー等からなるユーザーID入力部17を備えており、各ユーザーは、文書ボックスbへの保存その他のジョブの実行に先だち、ユーザーID入力部17に自己が保有するIDカードを読み込ませ、IDカードに記録されたユーザーIDの照合があえばジョブの実行を許可し、照合があわなければジョブの実行を拒否することができる機能を有している。
【0029】
本実施形態においては、この機能を利用し、データ処分手段166の実行に際し、管理者等、特定の権限を有するユーザー(特定のユーザー)に対してのみ、削除予定の文書データを削除し、又は、元の文書ボックスbあるいは別の文書ボックスbに再移動することを許容するようにすることができる。
また、特定のユーザー以外の他の一般ユーザーに対しては、そのユーザー自身が過去に文書ボックスbに保存した文書データのみ当該文書データを削除し、又は、元の文書ボックスbあるいは別の文書ボックスbに再移動することを許容するようにすることができる。
このようにすると、ユーザーが第三者によって文書データを削除される危険を防ぐことができ、また、これにより文書データに関する処分の権限や責任範囲が明確化されたセキュリティポリシーを構築することができる。
【0030】
ボックス一覧表示手段168は、文書データを保存する一又は二以上の文書ボックスbを一覧表示するとともに、文書データのデータ保存量が上限値を超過している文書ボックスb、または、上限値の近似値に達している文書ボックスbを識別可能に表示する。
「上限値を超過している」とは、ある文書データをある文書ボックスbに保存することによって、その上限値を超過する場合をいう。例えば、上限値が200MBの文書ボックスbにおいて既に累計150MBの文書データが保存されており、さらに60MBの文書データを保存しようとする場合には、「上限値を超過している」に該当する。
また、「上限値の近似値に達している」とは、ある文書ボックスbにおいて、その上限値は超過していないものの、累計のデータ保存量が上限値から一定値以内の下限値に達している場合をいう。
例えば、上限値が200MB、下限値が180MBとされる文書ボックスbにおいて、文書データのデータ保存量の累計値が190MBである場合は「上限値の近似値に達している」に該当する。
【0031】
図6は、文書ボックスの一覧を表した図である。
図6に示すように、ここでは、複数の文書ボックスbの一覧を表示画面P4を介して表示する。具体的には、各文書ボックスbのボックス名(box0001〜box0005)、使用者、データサイズ、容量(上限値)を、「Name」表示エリアP41、「OwnerName」表示エリアP42、「Size」表示エリアP43、及び、「capacity size」表示エリアP44にそれぞれ表示するようにしている。
ユーザーは、指定する文書ボックスbのチェックボックスP46を選択し、「開く」キーP47を選択するとその文書ボックスbに保存されている文書データの一覧を表示することができる(図4参照)。同様に、「削除」キーP48を選択するとその文書ボックスbを削除することができ、「詳細情報」キーP49を選択すると、その文書ボックスbの詳細情報(例えば、文書データの保存数、更新情報など)を表示することができる。なお、上記操作や処理を途中で取り止めたいときは「キャンセル」キーP4Aを選択する。
【0032】
ここで、ボックス表示マークP45は、文書ボックスbにおける文書データの保存状況を直感的に認識できるように、色分けしている。
例えば、図6における「box0001」,「box0004」のボックス表示マークP45は赤色で表示されており、これにより、「box0001」及び「box0004」における文書データのデータ保存量が既にその容量(上限値)を超過していることを認識することができる。
また、「box0002」のボックス表示マークP45は黄色で表示されており、これにより、「box0002」における文書データのデータ保存量が上限値に間近であることを認識することができる。
このため、ユーザーが文書ボックスbにおけるデータ保存量の超過を監視し易く、ユーザーが自主的にデータ保存量を調整したい場合など、ユーザーを効果的にサポートすることができる。
【0033】
このように、本実施形態のMFP1によれば、削除予定の文書データを特定するための条件を任意に設定することができる。具体的には、保存日時や使用頻度に加え、優先度を設定できるようにしている。
このため、文書データの重要性の判別に際し、ユーザーの主観も取り入れることができ、判別の精度をより高めることができる。
また、文書ボックスbにおける文書データが上限値を超過するような場合には、上記条件にもとづいて選択された文書データ(削除予定の文書データ)を削除予定ボックスBtに自動的に移動することによって目的の文書データを円滑に保存できるようにしている。
さらに、削除予定として判断された文書データをすぐに削除するのではなく、再移動できるようにしているため、ユーザーが不足の損害を被ることもなく、高い信頼性を保つことができる。
また、削除予定の文書データや対応する文書ボックスbを視認し易く画面表示するようにしており、また、このような表示画面を見ながら必要な処理の命令を簡易に操作できるようにしている。
【0034】
(文書データの保存方法)
次に、文書データの保存方法について説明する。
図7は、文書データの保存方法を示すフローチャートである。
図7に示すように、対象の文書ボックスbに文書データを保存する操作を行う(ステップ1)。
なお、文書ボックスbに保存されている文書データのうち、削除予定ボックスBtに移動する文書データを選択するために用いる条件(保存日時の古い順、優先度の低い順、使用頻度の低い順など)は設定されているものとする。
【0035】
ここで、ジョブ制御部16は、上限値を超過するか否かを判断する(ステップ2)。具体的には、目的の文書データを対象の文書ボックスbに保存することによって、上限値を超過するかどうかを判断する。
上限値を超過しない場合、対象の文書ボックスbへの保存が実行される(ステップ3)。
他方、上限値を超過する場合、ジョブ制御部16は、削除予定ボックスBtに移動する文書データを特定するための条件を取得する(ステップ4)。
次いで、条件が一致した文書データを削除予定ボックスBtへ移動する(ステップ5)。具体的には、削除予定データ選択手段162が、ステップ4で取得した条件を満たした削除予定の文書データを選択し、データ移動手段163が、選択された文書データを削除予定ボックスBtへ移動する処理を行う。
なお、削除予定の文書データを削除予定ボックスBtへ移動した後は、ステップ2に戻り、あらためて上限値の超過を判断し、その判断の結果に応じステップ3又はステップ4以降の処理を行う。
【0036】
(ジョブ制御プログラム)
次に、ジョブ制御プログラムについて説明する。
上記実施形態におけるコンピュータ(画像形成装置)の属性設定機能、削除予定データ選択機能、データ移動機能、削除予定データ表示機能、削除予定データ一覧表示機能、データ処分機能、ユーザー識別機能、ボックス一覧表示機能は、記憶手段(例えば、ROMやハードディスクなど)に記憶されたジョブ制御プログラムにより実現される。
ジョブ制御プログラムは、コンピュータの制御手段(CPUなど)に読み込まれることにより、コンピュータの構成各部に指令を送り、前述した文書データの保存方法の実施を行う。
これによって、前記各機能は、ソフトウェアであるジョブ制御プログラムとハードウェア資源であるコンピュータ(画像形成装置)の各構成手段とが協働することにより実現される。
【0037】
なお、上記各機能を実現するためのジョブ制御プログラムは、コンピュータのROMやハードディスクなどに記憶される他、コンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えば、外部記憶装置及び可搬記録媒体に格納することができる。
外部記憶装置とは、CD−ROM(Compact disc−Read Only Memory)等の記録媒体を内蔵し、画像形成装置に外部接続されるメモリ増設装置をいう。一方、可搬記録媒体とは、記録媒体駆動装置(ドライブ装置)に装着でき、かつ、持ち運び可能な記録媒体であって、例えば、フレキシブルディスク、メモリカード、光磁気ディスク等をいう。
【0038】
そして、記録媒体に記録されたプログラムは、コンピュータのRAM等にロードされて、CPUにより実行される。この実行により、上述した実施形態の各機能が実現される。
さらに、コンピュータでジョブ制御プログラムをロードする場合、他のコンピュータで保有されたこれらのプログラムを、通信回線を利用して自己の有するRAMや外部記憶装置にダウンロードすることもできる。このダウンロードされたプログラムも、CPUにより実行されることによって上述した実施形態の各機能を実現することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態の画像形成装置(MFP1)及びジョブ制御プログラムによれば、文書ボックスbのデータ保存量が上限値を超過するために従来目的の文書データを保存することができない場合において、不要な文書データを精度良く判別し、削除予定ボックスBtに復元可能に移動させる処理を自動的に行うようにしている。
このため、ユーザーは、文書ボックスbにおける文書データのデータ保存量が上限値を超過したことを意識することなく、また、自ら不要な文書データを削除することもなく、目的の文書データを円滑に保存することができる。
【0040】
以上、本発明の画像形成装置及びジョブ制御プログラムについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態においては、MFPに搭載されるHDD93における文書ボックスbにデータを保存する際の問題に着目し、この問題を解決するための手段を具体的に示したが、対象装置はMFPに限るものではなく、また、対象の記憶媒体はHDDに限るものではない。
例えば、パーソナルコンピュータのハードディスクドライブにおいて文書ボックスbに相当するフォルダを作成し、フォルダごとにデータ保存量を管理する場合に適用することができる。
また、USBメモリなどの可搬型記憶媒体を対象の記憶媒体とすることもできる。
これにより、本発明を広範な技術分野において応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、文書ボックス(データ保存機能)を備えたMFPなどの画像形成装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 画像形成装置
16 ジョブ制御部
161 属性設定手段
162 削除予定データ選択手段
163 データ移動手段
164 削除予定データ表示手段
165 削除予定データ一覧表示手段
166 データ処分手段
167 ユーザー識別手段
168 ボックス一覧表示手段
17 ユーザーID入力部
90 CPU
91 ROM
92 RAM
93 HDD(ハードディスクドライブ)
b 文書ボックス
Bt 削除予定ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを一の記憶領域に保存することによって前記一の記憶領域におけるデータ保存量が上限値を超過する場合に、前記一の記憶領域に保存されているデータの中から削除予定のデータを選択する削除予定データ選択手段と、
前記削除予定のデータを他の記憶領域に移動するデータ移動手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記一の記憶領域に保存するデータごとに、優先度、保存日時又は使用頻度のいずれか一以上の属性を設定する属性設定手段を備え、
前記削除予定データ選択手段は、
前記一の記憶領域に保存されているデータの中から、前記優先度が最も低いデータ、前記保存日時が最も古いデータ又は前記使用頻度が最も低いデータのいずれか一以上の条件を満たすデータを前記削除予定のデータとして選択する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一の記憶領域に保存された一又は二以上のデータの一覧を表示するとともに、前記移動した削除予定のデータを識別可能に表示する削除予定データ表示手段を備える請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
データを保存する一又は二以上の記憶領域の一覧を表示するとともに、データ保存量が、前記上限値を超過している記憶領域、又は、前記上限値の近似値に達している記憶領域を識別可能に表示するボックス一覧表示手段を備える請求項1〜3のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記他の記憶領域に移動した一又は二以上の削除予定のデータを一覧表示する削除予定データ一覧表示手段と、
操作に応じ、前記一覧表示された削除予定のデータの中から任意のデータを削除し、又は、前記一の記憶領域あるいは別の記憶領域に再移動するデータ処分手段と、を備える請求項1〜4のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項6】
操作を行うユーザーを識別するユーザー識別手段を備え、
前記データ処分手段は、
前記選択操作が特定のユーザーによる操作である場合にのみ、前記一覧表示された削除予定のデータの中から任意のデータを削除し、又は、前記一の記憶領域あるいは別の記憶領域に再移動することを許容する請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記属性設定手段は、
前記属性としてユーザーの識別情報を設定し、
前記データ処分手段は、
前記選択操作が前記特定のユーザー以外の他のユーザーによる操作である場合には、前記一覧表示された削除予定のデータの中から前記他のユーザーによって保存されたデータを削除し、又は、前記一の記憶領域あるいは別の記憶領域に再移動することを許容する請求項5又は6記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置のコンピュータを、
目的のデータを一の記憶領域に保存することによって前記一の記憶領域におけるデータ保存量が上限値を超過する場合に、前記一の記憶領域に保存されているデータの中から削除予定のデータを選択する削除予定データ選択手段、及び
前記削除予定のデータを他の記憶領域に移動するデータ移動手段、として機能させることを特徴とするジョブ制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74575(P2013−74575A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213991(P2011−213991)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】