説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】光硬化型のインクを用いた画像形成装置において、インク硬化時に発生する記録材収縮の影響を抑え、良好な画像を形成する。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置は、記録材に付着した光硬化型のインクを、光を照射することで硬化させる光照射部と、画像形成ヘッドによってインクが吐出される前の位置で記録材を張架する第1のローラーと、画像形成ヘッドによってインクが吐出された後の位置で記録材を張架する第2のローラーと、光照射部にて光が照射された後の位置で記録材を張架する第3のローラーを有するとともに、連続した記録材を搬送する搬送部と、を備え、光照射部は、第2のローラーと第3のローラーによって張架される記録材に光を照射することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のロール紙等の記録材に対し、画像形成部にて画像を形成する画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの出力装置として、複数色のインクを画像形成ヘッドから吐出し、印刷用紙などの記録材上に画像を形成するタイプのカラーインクジェットプリンターが普及している。最近では、複数の画像形成ヘッドを用いてロール紙などの記録材に印刷する比較的大型のカラージェットインクプリンターも実現されている。
【0003】
このようなプリンターについて特許文献1には、UVインクを用いたインクジェットプリンターについて検討が行われている。また、特許文献2にはウェブの搬送速度の変動による着弾位置ずれを解消するためにエンコーダーでウェブの搬送速度を測定し、吐出タイミングの制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−136692号公報
【特許文献2】特開2010−158814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特許文献1に開示されるようなUV(紫外線硬化型)インクを使用するプリンターにおいて、紫外線が照射されたUVインクの効果によって生じる記録材の収縮が、画像形成に及ぼす問題について新たに着目したものである。図1は、プリンターにおいて印刷の対象とされる紙などの記録材Sの上に塗布されたUVインク(光硬化型インク)に対して、紫外線を照射することで定着を行うときの様子を示した模式図である。
【0006】
図1(a)は、定着前の様子であって、記録材S上に硬化前のUVインクが塗布された状態が示されている。プリンターにおける定着処理では、図1(b)に示されるように、記録材S上のUVインクに紫外線を照射することで、UVインクを記録材Sで硬化させ定着させる。UVインクは硬化する際、その体積が小さくなる収縮Aが生じる。記録材Sの収縮は、このUVインクの収縮Aに応じてUVインクが付着する記録材Sに対しても収縮Bが生じることが原因の一つとして考えられる。また、UVインクが紫外線を照射されて硬化する時に発生する反応熱によって、記録材Sに収縮が発生することも原因の一つとして考えられる。
【0007】
特許文献1のように連続して搬送される記録材Sに対して、UVインクを吐出した後、紫外線を照射してUVインクを硬化させる場合、このようなUVインクの収縮や反応熱に伴う記録材Sの収縮が問題となる。すなわち、UVインクの収縮や反応熱によって引き起こされた記録材Sの収縮が、UVインクを吐出している画像形成面にも伝播することで、吐出するUVインクの着弾位置にずれが生じ、形成する画像の品質を劣化させてしまう。
【0008】
単色のUVインクで画像を形成するような、記録材Sに塗布するUVインク量が少ない場合であれば、記録材Sの収縮も少なく画像の劣化に対する問題とならない場合もあるが、現在、複数色のUVインクで画像形成を行うことが多く、また、下地としての白色インク上に複数色のUVインクを塗布することで画像品質を向上させることも行われている。
このように、記録材Sに塗布されるUVインクは、複数色あるいは多層で形成されることで量は多くなっており、前述した記録材Sの収縮に対する問題も無視できなくなってきている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、記録材に光硬化型のインクを吐出することで画像を形成する少なくとも1つの画像形成ヘッドと、記録材に付着した光硬化型のインクを、光を照射することで硬化させる光照射部と、前記画像形成ヘッドによってインクが吐出される前の位置で記録材を張架する第1のローラーと、前記画像形成ヘッドによってインクが吐出された後の位置で記録材を張架する第2のローラーと、前記光照射部にて光が照射された後の位置で記録材を張架する第3のローラーを有するとともに、連続した記録材を搬送する搬送部と、を備え、前記光照射部は、前記第2のローラーと前記第3のローラーによって張架される記録材に光を照射することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明に係る画像形成装置は、前記第2のローラーの回転量を検出する回転量検出部と、前記回転量検出部にて検出された回転量に基づいて、前記画像形成ヘッドにおけるインクの吐出タイミングを制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明に係る画像形成装置において、前記第2のローラーは、従動ローラーであることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明に係る画像形成装置において、前記2のローラーは、摩擦係数が大きくなるように表面処理された金属ローラーであることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明に係る画像形成装置において、前記第1のローラーと前記第2のローラーが張架する記録材と、前記第2のローラーと前記第3のローラーが張架する記録材がなす角度は鋭角であることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明に係る画像形成装置において、前記第1のローラーは、定位置制御もしくは定速制御される駆動ローラーであることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明に係る画像形成装置において、前記第3のローラーは、トルク制御されるテンションローラーであることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明に係る画像形成方法は、連続する記録材上に光硬化型のインクで画像を形成する画像形成方法であって、第1から第3のローラーで記録材を搬送すると共に、前記第1のローラーと前記第2のローラーで張架される記録材上に光硬化型のインクを吐出し、インクが付着した記録材を前記第2のローラーと第3のローラーで張架するとともに、光を照射してインクを硬化させることを特徴とする。
【0017】
以上、本発明の画像形成装置および画像形成方法によれば、光硬化型インクを使用するとともに、記録材を連続して搬送しつつ画像形成ヘッドにて画像形成を行う画像形成装置において、第2のローラーにて記録材を張架することで、インクが吐出される記録材の記録面と光が照射される記録材の定着面とを分離し、光硬化型インクの収縮や反応熱に伴って発生する記録材の収縮が、画像形成ヘッドで形成する画像に対する影響を抑え、形成する画像の品質の向上を図ることが可能となる。
【0018】
さらに、第2のローラーの回転量で画像形成ヘッドにおけるインクの吐出タイミングを制御することで、実際の記録材の搬送位置に応じた、的確な画像形成を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】定着時における光硬化型インクの収縮を説明する図
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す図
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御構成を示す図
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置の記録材搬送部の制御構成を示す図
【図5】本発明の実施形態に係るエッジセンサーの構成を示す図
【図6】本発明の実施形態に係る蛇行補正部の構成、動作を示す図
【図7】本発明の実施形態に係る画像形成部の構成を示す斜視図
【図8】本発明の実施形態に係る画像形成装置の画像形成部の制御構成を示す図
【図9】本発明の実施形態に係る画像形成部の記録面、定着面を説明する図
【図10】本発明の実施形態に係るロータリーエンコーダーの構成を示す図
【図11】本発明の実施形態に係る吸着部の制御構成を示す断面図
【図12】本発明の実施形態に係る吸着部の構成を示す断面図
【図13】本発明の実施形態に係るパンチメタルの構成を示す図
【図14】本発明の実施形態に係るプレートの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。図2は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。本実施形態に係る画像形成装置は、光硬化型のインクを使用する画像形成装置であって、画像形成ヘッド11から記録材S上にインクを吐出した後、光を照射することで記録材Sに定着させる工程を取る形態となっている。なお、本実施形態では使用する光には紫外線を利用している。
【0021】
図2は、画像形成装置を側面から見た図となっており、図に示すように記録材Sが送られる方向をZ方向、記録材Sの幅方向をX方向とする。この画像形成装置は、主な構成として記録材Sに対して像を形成(印刷)する各色画像形成ヘッド11Y、11M、11C、11K、記録材Sを搬送する各種ローラーなどで構成された搬送部を含んで構成されている。なお、記録材Sとしては、紙、ラベル紙、布の他、プラスチックフィルム等が使用可能である。
【0022】
本実施形態の搬送部は、記録材ロールSaに巻き取られた記録材Sを画像形成ヘッド11側に搬送する繰り出し機40、画像形成ヘッド11で形成された画像を巻き取って回収する巻き取り機50、記録材Sの幅方向の搬送ずれを補正するための蛇行補正部20、繰り出し機40から送り出される記録材Sのたるみを防止するためのダンサーローラー31、巻き取り機50側での記録材Sのたるみを防止するためのダンサーローラー35などを有して構成される。
【0023】
繰り出し機40から送り出された記録材Sは、各種ローラーを通過し、画像形成ヘッド11から吐出されたインクが乗せられた後、UV照射器12(光照射部)にて紫外線が照射され記録材S上に定着された後、巻き取り部50に回収される。
【0024】
搬送部による記録材Sの搬送、すなわち、画像形成ヘッド11の下面を通過する記録材Sの搬送には、一定の速度で搬送される連続搬送の形態を採用している。この形態に限らず、搬送と停止を繰り返し、停止時に画像形成ヘッド11Y〜11Kにて記録材上に像を形成する間欠搬送の形態としてもよい。
【0025】
蛇行補正部20は、記録材Sの幅方向(X方向)、具体的には、記録材Sの搬送方向と直交もしくは略直交する方向についての位置ずれを補正する機構であって、前部ローラー21、後部ローラー22の組が回転することで、搬送される記録材Sを幅方向に移動させ
、画像形成ヘッド11Y〜11Kにて記録材Sに印刷される像を適正な位置に修正する。その詳細な構成と制御については後で詳しく説明する。
【0026】
駆動ローラー13、カウンターローラー14、従動ローラー15は、画像形成ヘッド11Y〜11Kにて像が形成される記録面を形成するローラーであって、これらローラーの間で記録材Sを張架することで記録面を形成している。なお、本実施形態では、画像形成ヘッド11の上流側に位置する駆動ローラー13の駆動にて、記録材Sの搬送速度が制御されている。そのため、駆動ローラー13の駆動には、位置制御あるいは定速制御が可能なステッピング・モーターなどが用いられる。
【0027】
さらに、駆動ローラー13と従動ローラー15で形成された記録面の下方には、記録材Sを画像形成ヘッド11とは逆方向に引きつける吸着部16が設けられている。本実施形態では空気吸引タイプの吸着部16を用いることとしているが、この他、静電吸着タイプのものを利用することとしてもよい。また、吸着部16において記録材Sが通過する面は、平板(プラテン)形状以外に、画像形成ヘッド11に向けて弧を描く形状など各種形状を採用することができる。
【0028】
UV照射器12は、記録材Sに吐出された紫外線硬化型のインクに対して紫外線を照射して硬化させるための装置である。UV照射器12の光源としては、例えば、紫外線を発生するUV−LED(Ultra Violet Light Emitting Diode)などによって構成される。
光源としては他にメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等が利用可能である。
【0029】
図3は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御構成を示す図である。制御構成において、中央制御部110は、たとえば、CPU111、ROM112、RAM113からなり、ROM112に記録された処理プログラムをRAM113に展開してCPU111によりこの処理プログラムを実行するようになっている。また、インターフェイス105は、画像形成装置60の中央制御部110とコンピューター70を接続するために設けられたインターフェイスである。
【0030】
この中央制御部110は処理プログラムに従い、画像形成制御部140、記録材搬送系制御部170としての走行制御部150、吸着制御部160を制御する。また、中央制御部110は、ユーザーにより各種設定が入力される入力操作部120、外部環境としての温度や湿度などを検出する各種センサーを備えた環境検出部130、そして、記録材Sの搬送状況を検出する搬送状況検出部180から受け取る各種情報に基づいて、各種制御部の制御を行う。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の記録材搬送部の制御構成を示す図である。走行制御部150は、記録材Sの搬送に関わる各種駆動系を制御する制御部であって、本実施形態では、駆動ローラー13、43a、53a、テンションローラー32a、33a、巻き取り軸51に設けられた駆動手段としてのモーターなどを回転駆動させることで記録材Sの搬送を実行する。各駆動ローラーに対向して位置するカウンターローラー14、32b、33b、43b、53bには、対応する駆動ローラーの駆動力を伝達できるようゴムローラーなどの弾性ローラーが採用されている。
【0032】
また、巻き出し軸部41には、回転抑止手段としてのパウダーブレーキ411が設けられており、記録材Sを搬送方向とは逆に引き戻す力を付与することで、記録材Sに張力を持たせている。
【0033】
ダンサーローラー31は、上下に稼働可能とされており繰り出し機40から繰り出され
た記録材Sに一定の荷重を与える。この駆動ローラー43aは、ダンサーローラー位置検出部311にて検出されるダンサーローラー31の上下位置に基づいて駆動され、第1ローラー43aとテンションローラー32a間の記録材Sの長さ(バッファー量)を所定範囲の長さに保っている。このように本実施形態ではダンサーローラー31により、記録材Sにバッファー量を持たせることで、各種走行系の誤差などで生じる記録材Sのたるみを吸収し、記録材Sの走行特性を良好なものとすることが可能となっている。なお、巻き取り機50側にも同様のダンサーローラー35、ダンサーローラー位置検出部351、駆動ローラー53aが設けられており、繰り出し機50側と同様の搬送制御が実行される。
【0034】
また、本実施形態では、記録材Sの幅方向の搬送ずれを補正するため、蛇行補正部20が設けられている。本実施形態では、画像形成ヘッド11の配設位置、すなわち、記録材Sに対して画像を形成する際の位置ずれが特に問題となる。そのため、駆動ローラー13と従動ローラー15で張架された部分(記録面)に、2つのエッジセンサー17A、17Bを設け、記録材Sの端部位置を検出することとしている。エッジセンサー17A、17Bで検出された記録材Sの端面(エッジ)の位置は、走行制御部150に入力され、蛇行補正部20における補正量の算出に用いられる。
【0035】
図5は、本発明の実施形態に係る第1(第2)エッジセンサー17A(B)の構成を示す図である。これらエッジセンサー17は、搬送される記録材Sの端面の位置Eを検知するためのセンサーであって、本実施形態では光学方式が採用されている。どちらのセンサー17A、17Bもその構成は同様であって、支持部材171、発光部172、受光部173を有して構成されている。発光部172、受光部173は、支持部材171上に対向して配設されている。発光部172と受光部173が向かい合う間を記録材Sの端面の位置Eが通過することとしている。発光部172から発せられる光は、その間を通過する記録材Sにて一部が遮蔽され、受光部173における受光量にて記録材端面の位置Eがどこに位置するかを検知することが可能となる。なお、光を用いて検知する発光部172、受光部173を用いたセンサーに代え、音波(超音波)を用いた発振部、受信部を用いたセンサーを使用することとしてもよい。あるいは、記録材端面の位置Eに軽く触れる接触子を用いた機械式センサーを用いることとしてもよい。
【0036】
本実施形態では、このような仕組みで記録材Sの端面の位置Eの位置を検出する第1エッジセンサー17A、第2エッジセンサー17Bから出力される端面の位置の情報に基づいて蛇行補正部20を制御し、記録材Sの幅方向における位置ずれを抑制することとしている。
【0037】
図6は、本発明の実施形態に係る蛇行補正部20の構成、動作を示した図である。この図は、図2に示す画像形成装置において矢印Hで示す側から眺めたときの模式図となっている。この図では分かり易く説明するため、記録材Sの搬送の様子については実際の見た目と異なったものとなっている。図2で説明したように蛇行補正部20は、前部ローラー21と後部ローラー22を有して構成される。これらローラー21、22は回転可能に支持され、巻き掛けられた記録材Sを図に示す搬送方向に搬送する(図では下方向)。
【0038】
蛇行補正部20は、この他、回動軸212、222、フレーム23、回動軸支持部211、221を備えている。前部ローラー21は、両端に回動軸212を備えておりフレーム23上に回動軸支持部211にて回動可能に固定されている。後部ローラー22も同様に、両端に備えた回動軸222を、回動軸支持部221にてフレーム23上に回動可能に固定されている。各ローラー21、22の他端も同様にフレーム23上に回転可能に固定される。一方、フレーム23には、回転支点231が設けられ、ここを回転中心として回転可能に構成されている。このように同じフレーム23上に配設された前部ローラー21と後部ローラー22は、フレーム23が回転することで同方向に回転することとなる。図
示しない蛇行補正アクチュエーターにてフレーム23を回転制御することで記録材Sの蛇行補正が実行される。
【0039】
図6(b)は、蛇行補正時の様子を示した図であって、フレーム23が時計回りに回転したときの様子が示されている。図6(a)のときの記録材Sの端面を一点鎖線Aで補助的に示しているが、フレーム23の回転に伴って記録材が実線Bのように左方向に移動することが分かる。本実施形態では、前述した第1エッジセンサー17Aと第2エッジセンサー17B、2つのセンサーが出力する端面の位置の情報に基づいてフレーム23を回転させて、記録材Sの搬送位置を適正位置に調整することとしている。
【0040】
次に、本発明において画像形成を行う画像形成部の実施形態について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る画像形成部の構成を示す斜視図であり、図8は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の画像形成部の制御構成を示す図であり、図9は、本発明の実施形態に係る画像形成部の記録面、定着面を説明する図である。
【0041】
図7に示されるように、本発明の実施形態に係る画像形成装置は、紫外線硬化型のインクを吐出する複数の画像形成ヘッド11Y〜11Kを備えて構成されている。これら4つの画像形成ヘッド11Y〜11Kは、それぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色インクを記録材S上に吐出して像を形成する。本実施形態では、記録材Sの全域を印刷可能なように幅方向全域にわたって、各画像形成ヘッド11Y〜11Kが並設されている。各画像形成ヘッド11Y、11M、11C、11Kの順でインクが吐出されることで最終的な画像が形成され、UV照射器12による定着の後、巻き取り機50で回収される。
【0042】
駆動ローラー13とカウンターローラー14で挟持された記録材Sは、駆動ローラー13の回転により搬送される。画像形成ヘッド11の下流には、駆動系を有さずベアリングなどで滑らかに回転可能な従動ローラー15が設けられている。駆動ローラー13と従動ローラー15にて張架された記録材Sの部分(記録面)が、吸着部16により吸着されつつ搬送され、画像形成ヘッド11から吐出される各色インクにて像が形成される。
【0043】
記録材S上に吐出されたインクは、従動ローラー15を経てUV照射器12で定着されることとなるが、従動ローラー15は、画像形成ヘッド11にてインクが吐出される記録面と、UV照射機12にて紫外線が照射される定着面を分離する機能を有している。従動ローラー15で、記録材Sの記録面と定着面を分離することで、紫外線照射時におけるインクの収縮や反応熱の影響やインク反応熱の影響によって生ずる記録材Sの収縮が、記録面に及ぶことを抑制している。
【0044】
図9には、本発明の実施形態に係る画像形成部について、画像形成ヘッド11からインクが吐出される記録面、UV照射器12から紫外線が照射される定着面が示されている。図に示されるように駆動ローラー13(第1のローラー)と従動ローラー15(第2のローラー)で張架される記録材Sの領域が記録面、従動ローラー15(第2のローラー)とテンションローラー33a(第3のローラー)で張架される記録材Sの領域が定着面となる。この図に示されるように本実施形態では、記録面と定着面を従動ローラー15(第2のローラー)で分離したことで、定着時における紫外線インクの収縮や反応熱によって生じる記録材Sの収縮が記録面に影響を及ぼすことを抑制し、記録面における画像形成の品質の向上が図られている。
【0045】
従動ローラー15は、定着前のインクを乗せた状態の記録材Sを搬送するため他のローラーのようにカウンターローラー14が設けられておらず、記録材S上のインクを乱すことなく搬送が行われる。さらに、この従動ローラー15は、記録材Sの搬送量を検出する
ために用いられる搬送状況検出部としても機能することとなり、記録材Sと追従して回転することが好ましい。そのため、従動ローラー15は、金属ローラーであって、その表面に摩擦係数が高くなるような表面加工が施されたものが使用される。
【0046】
このように従動ローラー15は、記録材Sの搬送に追従して回転することが理想であって、十分に記録材Sと接触させる、すなわち、巻き掛け量を大きく取ることが好ましい。一方で、記録材Sの巻き掛け量を大きく取ると、記録材Sに付着した定着前のインクが流れてしまい、形成する画像を乱す可能性がある。そのため、本実施形態では、駆動ローラー13と従動ローラー15が張架する記録面を水平あるいは略水平方向に保つとともに、従動ローラー15とテンションローラー33aが張架する定着面が、記録材の搬送方向についてなす角度αを鋭角に設定することで、従動ローラー15を記録材Sに追従させるとともに、定着前のインクが流れることを抑制している。
【0047】
このように、本実施形態では記録面と定着面が従動ローラー15(第2のローラー)にて分離されているため、定着面での記録材Sの収縮が記録面に及ぼす影響を抑えることが可能となっている。
【0048】
図8は、本発明の実施形態に係る画像形成部の制御構成を示す図である。前述したように本実施形態の従動ローラー15は、記録材Sの搬送量を検知する搬送状況検出部としても機能している。画像形成制御部140では、この従動ローラー15に接続されたロータリーエンコーダー18の出力に基づいて、各画像形成ヘッド11Y〜11Kのインク吐出タイミング(画像形成タイミング)を制御している。本実施形態では、記録材Sの搬送速度は、画像形成ヘッド11の上流に位置する駆動ローラー13にて制御されることとなるが、駆動系にて挟持された記録材Sは滑りが生じる場合があり、駆動ローラー13に伝達した速度がそのまま記録材Sの搬送速度とならない場合がある。そのため、本実施形態では、従動ローラー15にて搬送速度を検知することとしている。
【0049】
では、本実施形態で用いる搬送状況検出部180の構成要素の1つとなるロータリーエンコーダー18(本発明における「回転量検知部」)について説明する。図10はロータリーエンコーダー18を説明するための図である。ロータリーエンコーダー18は、所定の間隔毎に設けられた多数のスリットを有する回転円板181と、検出部182とを有する。回転円板181は、従動ローラー15の回転軸152に固定されており、従動ローラー15の回転に応じて回転する。検出部182は、画像形成装置60のフレームなどに固定されている。
【0050】
ロータリーエンコーダー18は、回転円板181の周囲に設けられたスリットが検出部182を通過する毎に、パルス信号ENCを中央制御部110に出力する。エンコーダー183は、このパルス信号ENCに基づいて、従動ローラー15の回転角、及び、回転速度を把握することで、記録材Sの搬送状況(搬送速度、搬送位置)を把握することができるようになっている。
【0051】
図11は、本発明の実施形態に係る吸着部の制御構成を示す図である。本実施形態では、図9で説明した記録材Sの記録面を吸着する吸着部16が設けられている。この吸着部16は吸着制御部160にて制御される。具体的には、吸着部16で記録材Sに作用させる吸着力を、各種センサーで検出した各種情報や設定された各種情報に基づいて制御する。このような吸着力制御のための情報としては、搬送状況検出部180によって検出される記録材Sの搬送速度、入力操作部120あるいは外部のコンピューター70にて設定される記録材の種類、あるいは、環境検出部130にて検出される外部温度や外部湿度などが考えられる。
【0052】
このように記録材Sの記録面を吸着部16にて吸引しつつ画像形成を行うことで、定着面で発生する記録材Sの収縮の影響が記録面に及ぶことを抑えることが可能となる。さらに、記録面を吸着することで、記録面を吸着部16の表面に密着させることができる。これにより、画像形成ヘッド11Y〜11Kによるインク着弾位置の精度向上を図り、形成する画像の品質向上が図られる。
【0053】
では、このような本発明の実施形態に係る吸着部16の具体的構成について説明する。図12は、本発明の実施形態に係る吸着部16の構成を示す断面図である。本実施形態の吸着部16は、空気吸引タイプのものを使用している。図は、記録材Sが搬送されたときにおいて記録材Sの幅方向の断面図である。吸着部16は、パンチメタル161、プレート162、ケーシング163、隔壁164、シロッコファン165などを含んで構成されている。
【0054】
パンチメタル161は、記録材Sが接触しながら通過する面を有し、その表面には空気吸引のための微細な通気孔161aが設けられている。図13にはこのパンチメタル161の表面の拡大図が記載されている。通気孔161aの径Raは約1mm、ピッチ間隔Paを約3mmとしている。
【0055】
図14にはプレート162の表面の様子が記載されている。プレート162は、パンチメタル161と密着して配設される金属板であって、パンチメタル161と同様、空気吸引のための通気孔162aが設けられている。ただし、この通気孔162aは、パンチメタル161の通気孔161aよりも大きい矩形形状であって、各辺についてその幅Laを約20mm、Lbを約5mmとしており、ピッチ間隔Pbを約20mmとしている。
【0056】
本実施形態では、空気吸引のための空気孔を、パンチメタル161とプレート162の2層で形成している。パンチメタル161の表面は、記録材Sを滑らかに通過させるため空気孔161aの穿設には微細な加工が必要とされる。そのため、空気孔の形成を2層で形成し、記録材Sに接する側を比較的薄いパンチメタル161を利用することで、微細な加工を容易にすると共にコスト削減が図られている。さらに、パンチメタル161とプレート162それぞれの通気孔161a、162aの形成パターンを変更することで、自在な吸引力分布を得ることも可能となる。
【0057】
プレート162の下方には、隔壁164が形成されたケーシング163が位置しており、隔壁164にてケーシング163内に空気流路が形成される。この空気流路は、パンチメタル161とプレート162に形成された通気孔161a、162aと、空気流路の端部に配置された空気吸引のためのシロッコファン165間を接続している。シロッコファン165を動作させることで、パンチメタル161の表面に吸引力を働かせ、記録材Sを吸着することとしている。本実施形態では、このシロッコファン165の駆動量(回転量)を変化させることで、吸引力を変化させることができる。また、隔壁164は、必要とされる吸引力の分布に応じて、その配置位置、配置数が決定される。
【0058】
以上、本発明では、連続した記録材Sを各種ローラーなどで構成された搬送部にて搬送しつつ、画像形成ヘッドによって画像が形成される画像形成装置において、従動ローラー(第2のローラー)にて記録材Sを張架することで、インクが吐出される記録材Sの記録面と光が照射される記録材の定着面とを分離し、光硬化型インクの収縮や反応熱に伴って発生する記録材の収縮が、画像形成ヘッドで形成する画像に対する影響を抑え、形成する画像の品質の向上を図ることが可能となる。
【0059】
なお、本明細書においては、種々の実施の形態について説明したが、それぞれの実施の形態の構成を適宜組み合わせて構成された実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0060】
11Y、11M、11C、11K…画像形成ヘッド、12…UV照射器、13…駆動ローラー、14…カウンターローラー、15…従動ローラー、151…ローラー表面、152…回転軸
16…吸着部、161…パンチメタル、162…プレート、161a、162a…通気孔、163…ケーシング、164…隔壁、165…シロッコファン
17A…第1エッジセンサー、17B…第2エッジセンサー、171…支持部材、172…発光部、173…受光部
18…ロータリーエンコーダー、181…回転円板、182…検出部、183…エンコーダー
20…蛇行補正部、21…前部ローラー、211、221…回動軸支持部、212、222…回動軸、22…後部ローラー、23…フレーム、231…回転支点
31…ダンサーローラー、32a、33a…テンションローラー、32b、33b…カウンターローラー
40…繰り出し機、41…巻き出し軸部、42…ガイドローラー、43a…駆動ローラー、43b…カウンターローラー
50…巻き取り機、51…巻き取り軸部、52…ガイドローラー、53a…駆動ローラー、53b…カウンターローラー
60…画像形成装置、70…コンピューター
105…インターフェイス(I/F)、110…中央制御部、111…CPU、112…ROM、113…RAM、120…入力操作部、130…環境検出部、140…画像形成制御部、150…走行制御部、160…吸着制御部、170…記録材搬送系制御部、180…搬送状況検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に光硬化型のインクを吐出することで画像を形成する少なくとも1つの画像形成ヘッドと、
記録材に付着した光硬化型のインクを、光を照射することで硬化させる光照射部と、
前記画像形成ヘッドによってインクが吐出される前の位置で記録材を張架する第1のローラーと、前記画像形成ヘッドによってインクが吐出された後の位置で記録材を張架する第2のローラーと、前記光照射部にて光が照射された後の位置で記録材を張架する第3のローラーを有するとともに、連続した記録材を搬送する搬送部と、を備え、
前記光照射部は、前記第2のローラーと前記第3のローラーによって張架される記録材に光を照射することを特徴とする
画像形成装置。
【請求項2】
前記第2のローラーの回転量を検出する回転量検出部と、
前記回転量検出部にて検出された回転量に基づいて、前記画像形成ヘッドにおけるインクの吐出タイミングを制御する制御部と、を備えることを特徴とする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2のローラーは、従動ローラーであることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記2のローラーは、摩擦係数が大きくなるように表面処理された金属ローラーであることを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1のローラーと前記第2のローラーが張架する記録材と、前記第2のローラーと前記第3のローラーが張架する記録材がなす角度は鋭角であることを特徴とする
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1のローラーは、定位置制御もしくは定速制御される駆動ローラーであることを特徴とする
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第3のローラーは、トルク制御されるテンションローラーであることを特徴とする
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
連続する記録材上に光硬化型のインクで画像を形成する画像形成方法において、
第1から第3のローラーで記録材を搬送すると共に、
前記第1のローラーと前記第2のローラーで張架される記録材上に光硬化型のインクを吐出し、
インクが付着した記録材を前記第2のローラーと第3のローラーで張架するとともに、光を照射してインクを硬化させることを特徴とする
画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−200876(P2012−200876A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64433(P2011−64433)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】