説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】トナーが劣化した場合でも凹凸のある被転写材の転写性を向上させ、画像のムラや白抜け画像の無い高品質な画像を得る。
【解決手段】本発明は、トナー像を担持する像担持体50と、像担持体に接触して転写ニップを形成する転写部材80と、像担持体と転写部材との間に交番電界を形成する電界形成手段110と、トナーが劣化したか否かを判定するトナー劣化判定手段120を備え、トナー劣化判定手段の判定結果に基づいて、二次転写ニップ中の交番電界の周期回数を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式には多様な方法が知られており、一般的には潜像担持体の表面を帯電させ、帯電させた潜像担持体を露光して静電潜像を形成する。次いで、静電潜像にトナーを現像し、潜像担持体上にトナー像を形成する。さらに、像担持体として機能する中間転写体を介して、または直接的に潜像担持体上のトナー像を紙等の被転写材上に転写し、この転写されたトナー像を定着装置で加熱、圧力もしくはこれらの併用によって定着することにより、被転写材上に画像が形成された記録物が得られる。なお、トナー像転写後の潜像担持体や像担持体上に残ったトナーは、ブレード、ブラシ、ローラ等の既知の方法によりクリーニングされる。
【0003】
画像が形成される被転写材に凹凸がある場合、トナーの転写過程において、凸部は中間転写体または潜像担持体上のトナーと接触するが、凹部では中間転写体または潜像担持体上のトナーと被転写材の凹部間に空隙ができる。トナーに作用する転写電界は、空隙があると低下するため、凹部は凸部に較べて転写電界が低下し、転写画像のムラが生じやすい。被転写材の凹凸が大きくなると、凹部の転写電界が極端に低下するため、凹部にトナーを転写させることが困難となり、凹部にトナーが無い画像(白抜け画像)が発生する。
【0004】
このような転写ムラや白抜け画像を抑制する方法として、被転写材の凹凸に応じてトナー付着量を制御する方法が例えば特許文献1〜2で提案されている。特許文献1では、被転写材の種別情報から表面粗さを特定し、表面粗さが大きいほどトナー付着量が増加するように制御している。特許文献2では、紙の凹凸を検知し、凹凸に応じて適切なトナー付着量を制御している。
特許文献3、4では、転写バイアスとして直流電圧に交番電圧を重畳することで転写率を向上させる方法が提案されている。特許文献3では、転写前に記録用紙の表面を凹凸に応じてトナーの極性と逆極性に帯電させることで凹部にトナーを転写させるように制御している。特許文献4では、交番電圧の振幅が、直流電圧の以下になるように交番電圧を重畳している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2のような、被転写材の凹凸に応じてトナー付着量を制御する方法では凹部の転写性が改善されているわけではないので、画像の濃度ムラがやや改善される程度で、白抜け画像を解消することはできない。また、トナー付着量を増加すると、中間転写体または潜像担持体上に転写されなかった多量のトナーが残ってしまい、環境負荷が大きいという課題がある。
転写バイアスとして直流電圧に交番電圧を重畳することで転写率を向上させる特許文献3,4に記載されている実施例と同様の転写バイアスを印加して凹凸の大きな紙に画像を形成しても、白抜け画像は十分な改善とはないない。
また、トナーが画像形成に消費されずに画像形成装置内に長時間留まっていると、様々なストレスによってトナーの帯電性の変化、トナー表面に付着している外添剤の埋もれや分離による流動性の低下等、トナーの劣化が生じてしまう。通常の直流電圧による転写では、トナーが劣化していない場合でも凹凸のある被転写材の転写性が悪いが、トナーが劣化すると転写性が大幅に低下してしまう。
本発明は上記問題に鑑み為されたことであり、トナーが劣化した場合でも凹凸のある被転写材の転写性を向上させ、画像のムラや白抜け画像の無い高品質な画像を形成する画像形成装置と画像形成方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、像担持体に接触して転写ニップを形成する転写部材と、像担持体と前記転写部材との間に交番電界を形成する電界形成手段と、トナーが劣化したか否かを判定するトナー劣化判定手段とを備え、トナー劣化判定手段の判定結果に基づいて、転写ニップ中の交番電界の周期回数を変更することを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置では、トナー劣化判定手段によりトナーが劣化したと判定した場合の交番電界の周期回数を、トナー劣化判定手段によりトナーが劣化していないと判定した場合の交番電界の周期回数よりも多くする。
本発明に係る画像形成装置において、交番電界の周期回数の変更は、電界形成手段が形成する交番電界の周波数を変更する場合と、プロセス線速を変更することで達成する。
本発明に係る画像形成装置において、トナー劣化判定手段は、トナー像の画像濃度を検出し、その検出結果が所定の閾値以下であるときに、トナーが劣化したと判定する。
本発明に係る画像形成装置は、潜像が形成される潜像担持体と、潜像担持体上にトナー像を形成する画像形成手段と、潜像担持体上のトナー像を像担持体である中間転写体に転写する一次転写手段をさらに備え、トナー劣化判定手段は、一次転写手段による転写率を検出し、その転写率の変化からトナーの劣化を判定する。
本発明に係る画像形成方法は、トナー像を像担持体で担持し、像担持体に転写部材を接触させて転写ニップを形成し、像担持体と転写部材との間に電界形成手段により交番電界を形成し、トナー劣化判定手段によりトナーが劣化したか否かを判定し、トナー劣化判定手段の判定結果に基づいて、転写ニップ中の交番電界の周期回数を変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トナー劣化の判定基準に基づいて転写ニップ中の交流電界の周期回数の設定を変更することによって、トナーが劣化した場合でも劣化していない場合と同様に被転写材の凹部の高転写性が得られ、かつトナーが劣化していない場合に転写チリを抑制することができ、凹凸の大きな被転写材でも平滑な被転写材紙と同様に高画質な画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明するための概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成ユニットの概略構成を示す図である。
【図3】トナー劣化判定手段と、その制御の構成を示すブロック図である。
【図4】電界形成手段により直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加した時の電圧の時間変化を示した図である。
【図5】トナー劣化判定手段によるトナー劣化判定処理の一形態を示すフローチャートである。
【図6】トナー劣化判定手段によるトナー劣化判定処理の別な形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。尚、本実施形態は一つの例を示すものであり、構成やプロセス条件が変わっても本発明の効果が変わらないことを複数の画像形成装置や種々の画像形成環境で確認している。
図1は、カラー画像形成装置(以下、単に「プリンタ」と呼ぶ)の一例を示す概略図である。このプリンタは、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の色成分画像を被転写材となる記録用紙P上で重ね合わせて画像を形成する画像形成装置である。
【0010】
本実施形態では、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色にそれぞれ対応する画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kが図1のように、像担持体であり中間転写体を構成する中間転写ベルト50の移動方向に並列配置されている。各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kに設けられた像担持体であり、潜像担持体を構成する感光体ドラム11,12,13,14は、外径60mmの有機感光体であり、その表面上に形成される各色トナー像は、これらの感光体ドラムに下方から当接する中間転写ベルト50へ順次転写される。中間転写ベルト50へ転写されたトナー像は、給紙部となる用紙カセット101から給紙ローラ100を経て給紙された記録用紙P上に転写される。具体的には、用紙カセット101から給紙された記録用紙Pは、中間転写ベルト50と、この中間転写ベルト50に接触して二次転写ニップ部を形成するする転写部材となる二次転写ローラ80との間に矢印Fの方向から所定のタイミングで搬送される。中間転写ベルト50上に形成されたフルカラートナー像は、二次転写ローラ80と、このローラに対して中間転写ベルト50を介して対向配置された対向部材となる二次転写部対向ローラ73との間に形成された二次転写ニップ部で記録用紙P上に一括転写される。フルカラートナー像が転写された記録用紙Pは、定着装置91へ搬送され、定着装置91において加熱・加圧されて画像定着がなされて、機外へと排出される。
【0011】
各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは全て同じ構成であるため、画像形成ユニット1Yのみを代表して説明する。図2は、本実施形態で用いた画像形成ユニット1Yの概略構成を示す図を示す。画像形成ユニット1Yは、感光体ドラム11と、感光体ドラム11の表面を例えば帯電ローラ21aによって帯電する帯電装置21と、感光体ドラム11上の潜像をトナー像化する画像形成手段としての現像装置31と、中間転写ベルト50上にトナー像を転写するための一次転写手段となる一次転写ローラ61と、感光体ドラム11の表面に残存したトナーをクリーニングする感光体クリーニング装置41とを備えている。現像装置31よりも感光ドラム11の回転手方向下流側には、感光体ドラム11上に現像されたトナー像の画像濃度を計測する画像濃度センサ121が配置されている。画像形成ユニット1M、1C、1Kにも感光体ドラム12〜14上に現像されたトナー像の画像濃度を計測する画像濃度センサ122〜124が配置されている。
【0012】
帯電装置21は、ローラ形状の導電性弾性体から構成される帯電ローラ21aに対して直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する構成となっている。帯電装置21は、帯電ローラ21aと感光体ドラム11との間で直接放電を起こすことで感光体ドラム11を所定の極性、例えば、マイナス極性に帯電させるものである。次いで、感光体ドラム11の帯電面には、図示しない画像書き込み手段から出射された光変調されたレーザ光Lが照射される。これによって、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。即ち、レーザ光が照射され感光体表面部分の電位の絶対値が低下した部分が静電潜像(画像部)となり、レーザ光が照射されず電位の絶対値が高く保たれた部分が地肌部となる。
【0013】
一次転写ローラ61は、導電性のスポンジ層を有する弾性ローラであり、中間転写ベルト50の裏面から感光体ドラム11に対して押し当てられるように配置されている。この一次転写ローラ61には一次転写バイアスとして定電流制御されたバイアスが印加されている。一次転写ローラ61の外形は16mmで、芯金径は10mmであり、スポンジ層の抵抗Rは、接地された外径30mmの金属ローラを10Nで押し当てた状態で、一次転写ローラ61の芯金に電圧Vを1000V印加したときに流れる電流Iからオームの法則(R=V/I)を使って算出した値が約3E7Ω出ある。
【0014】
感光体クリーニング装置41は、クリーニングブレード41aと、クリーニングブラシ41bを備えている。クリーニングブレード41aは、感光体ドラム11の回転方向に対してカウンタ方向から感光体ドラム11の表面と当接している状態で、クリーニングブラシ41bは感光体ドラム11の表面と逆方向に回転しながら接触している状態で、それぞれ感光体ドラム11の表面をクリーニングする。
【0015】
現像装置31は、Yトナーとキャリアを有する2成分現像剤が収容された収容容器31cと、この収容容器31c内に配置され収容容器31cの開口部を介して感光体ドラム11と対向するように配置された現像剤担持体としての現像スリーブ31aと、収容容器31c内に配置され、現像剤を攪拌しながら搬送する攪拌部材としての2つのスクリュー部材31bとを備えている。スクリュー部材31bは、現像スリーブ側となる現像剤の供給側と、図示しない補給トナー装置の供給を受ける側にそれぞれ配置され、収容容器31cに図示しない軸受け部材によって回転自在に支持されている。
【0016】
上記4組の画像形成ユニットの感光体ドラム11,12,13,14は、不図示の感光体ドラムの駆動装置によって図中矢印R1方向に回転駆動される。また、ブラック用の感光体ドラム14と、カラー用の感光体ドラム11,12,13とを独立に回転駆動できるようにしても良い。これにより、例えば、モノクロ画像を形成する時には、ブラック用の感光体ドラム14のみを回転駆動し、またカラー画像を形成する時には4つの感光体ドラム11,12,13,14を同時に回転駆動させることができるようになる。中間転写ベルト50を有する中間転写ユニットは、モノクロ画像を形成する時に、カラー用の感光体ドラム11,12,13から中間転写ベルト50を離間するように部分的に揺動可能に構成されている。
【0017】
中間転写ベルト50は、厚さが40μm〜200μm、好ましくは60μm程度で、体積抵抗率が1E6Ωcm〜1E12Ωcm、好ましくは約1E9Ωcm(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT450印加電圧100V測定値)の、無端状カーボン分散ポリイミド樹脂で構成され、二次転写部対向ローラ73及び支持ローラ71,72といった複数の支持ローラに掛け回されている。中間転写ベルト50は、支持ローラ72が駆動モータ76によって回転駆動されることにより、図中矢印方向に無端移動するように構成されている。二次転写対向ローラ73の外形は約24mmで、芯金径は16mmであり、導電性のNBR系ゴム層(一次転写ローラ61と同じ測定方法で約4E7Ω)である。また、支持ローラ72に対向する位置には、中間転写ベルト50のトナー画像の濃度を検出する画像濃度センサ75が配置されている。中間転写ベルト50上に転写されたトナー像は、支持ローラ72上を通過した時に、画像濃度センサ75で画像濃度が計測される。
【0018】
二次転写部対向ローラ73には、転写バイアス用の電源110が接続されている。この電源110は、直流電源110Aと交流電源110Bとで構成されている。二次転写部対向ローラ73に電圧を印加することで、この二次転写部対向ローラ73と二次転写ローラ80の間に電位差が生じ、トナー像が中間転写ベルト50から記録用紙P側へ向かう電圧が生じるため、トナー像を記録用紙Pに転写させることができる。二次転写ローラ80の外形は約24mmで、芯金径は14mmであり、導電性のNBR系ゴム層(一次転写ローラ61と同じ測定方法で1E6Ω以下)である。
【0019】
ここで、本実施形態における電位差とは、(対向部材の電位)−(転写部材の電位)として規定する。ちなみに、転写バイアス用の電源110を二次転写ローラ80に接続して転写バイアスを印加してトナー像を記録用紙Pへ転写する形態でもよい。また、転写バイアス用の電源110のうち、一方を二次転写部対向ローラ73に、もう一方を二次転写ローラ80に接続するような構成でもよい。例えば、直流電源110Aを二次転写対向ローラ73に、交流電源110Bを二次転写ローラ80に接続しても良いし、その逆でも良い。また、本実施形態において交番電圧の波形は正弦波を用いているが、矩形波等他の波形を用いても問題はない。つまり、電源110は、像担持体と転写部材との間に交番電界を形成する電界形成手段を構成している。
【0020】
図3を用いて本形態にかかる制御の構成について説明する。電源110、画像濃度センサ75、画像濃度センサ121〜124及び駆動モータ76は、トナーが劣化したか否かを判定するトナー劣化判定手段120に信号線を介して接続されている。トナー劣化判定手段120は所謂、コンピュータ回路で構成されていて、画像濃度センサ75や画像濃度センサ121〜124で測定したトナー濃度が入力され、入力されたトナー濃度からトナーの劣化状態を判定するとともに、その判定結果に基づいて二次転写ニップ中の交番電界の周期回数を変更するように機能する。トナー劣化判定手段120には、予め判定用の閾値と交番電界の周期回数を変更する設定値が設定されている。
【0021】
次に、本実施形態を用いて本発明者らが行った研究結果について添付図面を参照しながら説明する。
図4は、電源110により直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加した時の電圧の時間変化を示した図である。Voffは、印加電圧による2次転写ローラ80に対する二次転写対向ローラ73の電位差(対向部材の電位−転写部材の電位)の時間平均値を表し、ここでは転写部材の電位は0Vであるため、電源110から二次転写対向ローラ73に印加される直流成分と同じ値を示す。Vppは印加電圧のピーク間電圧を示している。また、トナーが転写体(像担持体または中間転写体)から記録用紙Pへと転写する方向の電圧のピーク値をVt、記録用紙Pから中間転写ベルト50へ戻る方向の電圧のピーク値をVrとする。
【0022】
本実施形態において使用する現像剤は、粒径平均が6.8μmの、一般的な不定形トナー(ポリエステル系)と、平均粒径55μmの樹脂キャリアを使用している。凹凸のある記録用紙Pに対して直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスによって転写した場合、良好な転写性が得られる条件がある。まず、凹凸のある記録用紙Pの凹部にトナーを十分に転写させるためには、二次転写ローラ80に対する二次転写部対向ローラ73の電位の時間平均(本実施形態では電源110が印加する直流成分の電圧)Voffに対して、下記(式1)を満たすような、十分に大きな交流電圧Vppを重畳させる必要がある。さらに、記録用紙Pの凹部で放電が発生せず、凸部の画像濃度が低下しないようにVoffとVppを調整する必要がある。
【0023】
Vpp > 4×|Voff|・・・(式1)
また、直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスによって転写した場合に、交流電圧による周期的な画像ムラが発生しない条件がある。これは、交流電圧の周波数をf[Hz]、中間転写ベルト50の線速をv[mm/s]、二次転写部の転写ニップ幅をd[mm]とすると、画像が転写ニップ部を通過する時間はニップ幅を線速で割った値d/v[s]で、交番電圧の周期が1/f[s]とすると、ニップ通過時間中に印加される交番電圧の周期回数はd×f/vとなる。周期的な画像ムラが発生しない条件は、この周期回数が4回以上となるように周波数を設定することで、交番電圧の周波数fの条件としては以下の(式2)のようになる。
【0024】
f>(4/d)×v・・・(式2)
本実施形態において、上記の条件を満たす具体的例を以下に示す。
凹凸のある記録用紙Pとして、(株)NBSリコー製のFC和紙タイプ「さざ波」と呼ばれる厚みが約130μm、凹凸差が最大で約70μm程度の用紙に画像を転写する場合、例えば転写バイアスをVoff=−1.0kV、Vpp=5.0kVに設定すると、白抜け画像の無い良好な画像が得られた。また、中間転写ベルト50の線速vの設定値が282mm/sの場合、例えば周波数が400Hzで周期的な画像ムラは発生しなかった。
【0025】
次に、記録用紙Pにおける画像の占める面積の割合である画像面積率が5%以下の低画像面積率の画像を上記の転写条件で連続出力したところ、徐々に凸部の画像濃度が低下し、白抜け画像が発生した。低画像面積率の画像を連続出力していると、現像部でトナーが消費されずに画像形成装置内で様々なストレスを受けるため、トナー表面に添加された外添剤がトナー内部に埋もれたり、トナーから分離してトナーが劣化する。
【0026】
特にトナー表面が添加剤で被覆されている場合、中間転写ベルト50は外添剤と接触するが、外添剤は粒径が非常に小さいので、トナーと中間転写ベルト50の接触面積は小さい。一方、トナー表面の外添剤が埋没または遊離している場合は、中間転写ベルト50はトナー表面と接触するが、トナーの粒径は外添剤に較べて十分大きいので、トナーと中間転写ベルト50の接触面積は大きい。粉体と接触面間の付着力は、接触面積が大きいほど増大するため、劣化したトナーと中間転写ベルト50間の付着力は、劣化していないトナーと中間転写ベルト50間の付着力よりも大きくなる。トナーが劣化して付着力が増大すると、中間転写ベルト50からトナーが分離しにくくなるために、転写性が悪化したと考えられる。そこで、転写バイアスの条件VoffやVppの様々な組み合わせで転写し、その画像評価を実施したが、いずれの条件でも白抜け画像が発生してしまい、転写性は改善されなかった。
【0027】
次に、転写バイアスは前記と同じVoff=−1.0kV、Vpp=5.0kVに設定し、周波数を400Hzから2000Hzまで200Hz刻みで段階的に設定して記録用紙Pの凹部への転写性を評価した。
【0028】
転写性の評価としては、5段階の画像評価を行い、凹部にトナーが転写し十分な画像濃度を得られている場合をランク5とし、凹部が僅かに白く抜けているか、または凹部が白く抜けることは無いが凹部の画像濃度が僅かに落ちている状態で、製品として問題のないレベルをランク4、ランク4に比べ、凹部が白抜けしているか、または全体的に凹部濃度が落ちており、製品として問題がある場合をランク3、ランク3に比べ、さらに凹部の白抜けが多くあるか、または凹部の濃度が低い場合をランク2、凹部が全体的に白く、全体的に溝の状態がはっきりと認識できる場合をランク1とした。周波数の設定値による転写性評価の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1のように、周波数を上げていくと凹部の転写性が向上していき、周波数を800Hz以上にするとランク4以上の問題の製品として問題のないレベルの画像が得られた。以上より、交番電圧の周波数を増やすことにより、トナーが劣化した場合でも凹部の高転写性が得られることがわかった。
【0031】
周波数の増加は二次転写ニップ中における交番電圧の周期回数の増加に対応しており、上記の検討により劣化したトナーを転写するには周期回数を増加する必要があることが明らかとなった。
【0032】
この理由について考える。交番電界によって凹部の高転写性が得られるメカニズムは、交番電界が印加されると、トナーが中間転写ベルト50から被転写材となる記録用Pへ移動する向きの電界によって、中間転写ベルト50上の一部のトナーが記録用Pの凹部へ転写する。トナーが記録用Pから中間転写ベルト50へ移動する向きの電界によって、凹部へ転写したトナーが中間転写ベルト50に戻り、中間転写ベルト上のトナーに対して衝突や接触等の機械的な力や静電気力等の相互作用を及ぼし、この相互作用によって中間転写ベルト上のトナーの付着状態が変化する。次の記録用Pから中間転写ベルト50へ移動する向きの電界によって、中間転写ベルト50から分離しやすくなったトナーが凹部へ転写するが、この凹部に転写したトナーの粒子数は、最初に転写したトナーの粒子数よりも増加する。このため、周期回数が増えるほど往復運動に参加するトナーの粒子数が増加することになり、凹部の転写性が向上する。劣化していないトナーのようにトナー付着力が小さい場合は、容易に中間転写ベルト50のトナーを転写しやすい状態にできるために、往復運動回数が少なくても転写するトナー数が十分増加するが、劣化トナーのようにトナー付着力が大きい場合は、中間転写ベルト50のトナーを転写しやすい状態にするのが容易ではないため、転写するトナー数が十分増加するまでに多くの往復運動が必要になると考えられる。
【0033】
前記のように、転写ニップ中の交番電圧の周期回数は、ニップ幅、線速、交番電圧の周波数によって決まる。このため、周期回数を増加する手段としては、画像形成装置の構成によって決まるニップ幅と交番電圧の周波数以外では、プロセス線速を遅くする方法が挙げられる。実際に、転写バイアスをVoff=−1.0kV、Vpp=5.0kV、周波数を400Hzに設定し、プロセス線速となる中間転写ベルト50の線速を282mm/sから、その半分の141mm/sで転写性を評価した結果、ランク4の製品として問題のないレベルの画像が得られた。このため、トナー劣化判定手段120により、駆動モータ76の回転速度を制御することで、交番電界の周期回数の変更することができる。
【0034】
次に、二次転写ニップ中の交番電圧の周期回数を増加しても、トナーが劣化していない場合の画像に問題が無いかどうかを確認した。
まず、転写バイアスをVoff=−1.0kV、Vpp=5.0kV、周波数を400Hz、線速を282mm/sに設定して、白抜け画像が見られなくなるまでベタ画像を連続出力した。次に、転写バイアスをVoff=−1.0kV、Vpp=5.0kV、線速を282mm/sに設定し、周波数を400Hzから2000Hzまで200Hz刻みで設定して、文字やライン、写真等が混在した画像の転写性を評価した。
【0035】
転写性の評価としては、文字やライン等の周囲にトナーが付着して画像が不鮮明になる転写チリと、凹部の画像濃度について5段階の画像評価を行った。凹部の画像濃度については前記と同様で、転写チリについては、画像が鮮明な場合をランク5とし、やや鮮明度が低下しているが製品として問題のないレベルをランク4、ランク4よりも鮮明度が低く、製品として問題がある場合をランク3、ランク3に比べ、さらに不鮮明な場合をランク2、画像が不鮮明で判別できない場合をランク1とする。周波数の設定値による転写性評価の結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2のように、どの周波数でも凹部の転写性は問題が無いが、転写チリについては周波数の増加と共にレベルが低下していることがわかる。また、周波数が400Hzで、線速を141mm/sにした場合にも、周波数を増加した場合と同様に転写チリの悪化が見られた。さらに、線速を遅くして二次転写ニップ中における交番電圧の周期回数を増やす場合には、画像の生産性が低下するという問題がある。
【0038】
以上のように、二次転写ニップ中における交番電圧の周期回数を増やすと、トナーが劣化した場合でも凹部の転写性低下を抑制できるが、トナーが劣化していない場合の転写チリが悪化する等の副作用があることがわかった。本発明者らは、このような副作用を抑制しながら劣化したトナーでも凹部の高転写性が得られる方法を検討した結果、トナー劣化の判定基準に基づいて二次転写ニップ中の交流電界の周期回数の設定を変更する方法を考案した。
【0039】
それは、トナー劣化の判定基準によってトナーが劣化したと判定された場合には、二次転写ニップ中の交流電圧の周期回数をトナーが劣化した場合の設定値にし、トナー劣化の判定基準によってトナーが劣化していない判定された場合には、ニップ中の交流電圧の周期回数をトナーが劣化していない場合の設定値にする。この方法により、トナーが劣化したと判断された場合のみ交流電圧の周期回数を増やし、トナーが劣化していないときは周期回数を必要最小限に設定しているので、転写チリの悪化等の副作用を抑えることができる。
【0040】
つまり、本実施形態では、トナー劣化判定手段120によりトナーが劣化したと判定した場合の交番電界の周期回数を、トナー劣化判定手段120によりトナーが劣化していないと判定した場合の交番電界の周期回数よりも多くする。また、交番電界の周期回数の変更は、電源110が形成する交番電界の周波数を変更するように、トナー劣化判定手段120で制御することで実施すればよい。
【0041】
トナー劣化の判定は、トナーが劣化すると予測される条件を満たすかどうか、または画像形成装置内に設置された何らかのトナー劣化検出手段を用いる方法が挙げられる。トナーが劣化すると予測される条件としては、トナーが画像形成に消費されずに画像形成装置内で長時間ストレスを受ける条件で、具体的には、実施例で示したように画像占有面積が所定の値よりも低い画像の出力が所定時間以上連続した場合、または所定枚数以上連続した場合が挙げられる。
【0042】
しかし、実際には、低画像面積の連続出力枚数が所定枚数以下だが、高画像面積の出力を挟んで何度も低画像面積が連続出力される場合など、様々な画像出力状況があり、トナー劣化の予測は困難である。このため、画像形成装置内にトナー劣化検出手段120を設け、その検出情報に基づいてトナーの劣化を判定する方が正確である。トナー劣化検出手段120としては、これまでの特許文献で示された様々な例を適用することができる。例えば、以下の文献1〜5では、感光体上に転写率測定用の基準パターンの画像を現像し、一次転写における転写率を各種センサによって測定し、転写率の変化からトナーの劣化を検知している。また、トナーが劣化すると、トナーの現像能力が低下して感光体上の画像濃度が低下するため、現像バイアスを上げて画像濃度を確保するが、現像バイアスの上限まで上げても画像濃度を確保できない場合に、劣化したトナーを強制的に現像して排出する場合がある。
【0043】
(文献1)特開2007‐304316号公報
(文献2)特開2004‐240369号号公報
(文献3)特開平06‐003913号公報
(文献4)特開平08‐227201号公報
(文献5)特開2006‐251409号公報
そこで、本実施形態において、一次転写における転写率によってトナーの劣化を判定する方法を適用した場合について述べる。
転写率によってトナーの劣化が判定され、交流電圧の周波数の設定を変更する制御のフローチャートを図4に示す。この制御はトナー劣化判定手段120によって行われる。
【0044】
図5において、ステップS1では、周知のプロセスコントロール制御の最後に続けて、帯電装置21〜24の電源を制御して帯電出力をオンし、ステップS2では、設定した画像濃度に対応する光量で画像パターンを各感光体上に書き込み、ステップS3において現像する。
【0045】
ステップS4では画像パターンを中間転写ベルト50に転写し、ステップS5では転写画像の画像濃度Aを画像濃度センサ75で計測する。ステップS6では画像濃度Aが所定の画像濃度下限値(閾値)以上であるか否かを判断し、この条件を満たしている場合には転写率が低下しておらずトナーは劣化していないと判断し、ステップS7に進んで交流電圧の周波数をトナーが劣化していない場合の所定値に設定し、この制御を終了する。一方、この条件を満たしていない場合は、転写率が低下しておりトナーが劣化していると判断し、ステップS8に進んで交流電圧の周波数をトナーが劣化している場合の所定値に設定し、この制御を終了する。
【0046】
次に、感光体上の画像濃度からトナーの劣化を判定する場合について述べる。この場合の制御のフローチャートを図5に示す。この制御はトナー劣化判定手段120によって行われる。
【0047】
図6において、ステップS11で、周知のプロセスコントロール制御の最後に続けて、帯電装置21〜24手段の電源を制御して帯電出力をオンし、ステップS12で設定した画像濃度に対応する光量で画像パターンを各感光体上に書き込み、ステップS13において現像バイアスVで現像する。ステップS14で、現像画像の画像濃度Bを画像濃度センサ121〜124で計測する。ステップS15では、画像濃度Bが設定画像濃度(閾値)以下であるか否かを判断する。この条件を満たしていない場合にはトナーは劣化していないと判断し、ステップS19で交流電圧の周波数をトナーが劣化していない場合の所定値に設定し、この制御を終了する。この条件を満たしている場合には、ステップS16に進んで現像バイアスVを、設定した増加バイアスΔVだけ上げる。次に、ステップS17において、このΔVだけ上げた現像バイアスVが現像バイアスの上限値として設定した電圧以上であるか否かを判断する。この条件を満たしていない場合にはステップS12に戻り、再度画像パターンの現像及び画像濃度センサ121〜124による画像濃度の計測を実施する。この条件を満たしている場合には、トナーが劣化していると判断し、ステップS18で交流電圧の周波数をトナーが劣化している場合の所定値に設定し、この制御を終了する。
以上の制御フローは、既存のプロセス制御の後にするとして記載したが、出力状況等を考慮して既存のプロセス制御とは異なるタイミングで実施しても良い。
【符号の説明】
【0048】
50 像担持体(中間転写体)
11,12,13,14 潜像担持体
21,22,23,24 画像形成手段
61,62,63,64 一次転写手段
80 転写部材
110 電界形成手段
120 トナー劣化判定手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開2004−258397号広報
【特許文献2】特開2007−304492号広報
【特許文献3】特開2006−267486号広報
【特許文献4】特開2008−058585号広報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に接触して転写ニップを形成する転写部材と、前記像担持体と前記転写部材との間に交番電界を形成する電界形成手段と、トナーが劣化したか否かを判定するトナー劣化判定手段とを備える画像形成装置において、
前記トナー劣化判定手段の判定結果に基づいて、転写ニップ中の交番電界の周期回数を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記トナー劣化判定手段によりトナーが劣化したと判定した場合の交番電界の周期回数を、前記トナー劣化判定手段によりトナーが劣化していないと判定した場合の交番電界の周期回数よりも多くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記交番電界の周期回数の変更は、前記電界形成手段が形成する交番電界の周波数を変更することである特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記交番電界の周期回数の変更は、プロセス線速を変更することである特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記トナー劣化判定手段は、トナー像の画像濃度を検出し、その検出結果が所定の閾値以下であるときに、トナーが劣化したと判定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の画像形成装置において、
潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像担持体上にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記潜像担持体上のトナー像を前記像担持体である中間転写体に転写する一次転写手段を備え、
前記トナー劣化判定手段は、前記一次転写手段による転写率を検出し、その転写率の変化からトナーの劣化を判定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
トナー像を像担持体で担持し、前記像担持体に転写部材を接触させて転写ニップを形成し、前記像担持体と前記転写部材との間に電界形成手段により交番電界を形成し、トナー劣化判定手段によりトナーが劣化したか否かを判定する画像形成方法において、
前記トナー劣化判定手段の判定結果に基づいて、前記転写ニップ中の交番電界の周期回数を変更することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−53337(P2012−53337A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196763(P2010−196763)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】