説明

画像形成装置及び画像形成装置における液体充填方法

【課題】フィルタを有するタンク内に液体を充填するときにフィルタが濡れることで気泡排出性が低下する。
【解決手段】ヘッドタンク4のインク収容部22は滴吐出方向に沿う方向に配設されたフィルタ部材207によって上流室35と下流室36に分けられ、インク収容部22の下流室36からインクをヘッド2の供給口部14に供給する供給経路203と、ヘッド2の排出口部15から排出されるインクを外部に排出する排出経路25とが設けられ、下流室36と排出経路25は連通経路26にて連通され、ヘッドタンク4が空の状態でインクを充填するときに、インク供給ポンプ52によってインク供給経路51を通じてエアーフィルタ63、三方弁62、61を通じて取込んだエアーを送ることでフィルタ207を乾燥させた状態にした後、インクを充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置及び画像形成装置における液体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
このような、画像形成装置として用いられるインクジェット記録装置におけるインク供給方式として、記録ヘッド側にサブタンク(バッファタンク、ヘッドタンクなども同義とする。)を、装置本体側にメインタンクを配置して、メインタンクからサブタンクにインクを補充供給し、サブタンクから記録ヘッドにインクを供給する方式が知られている。
【0005】
このようなインク供給方式においては、メインタンクからサブタンクへ供給チューブを介してインクを供給し、更にサブタンク内にはインク内の不純物を濾過するフィルタを設けたものがある(特許文献1)。
【0006】
このようにタンク内にフィルタを配設した場合、フィルタがインクで濡れた状態になると、フィルタを構成する粒子や繊維等の隙間にインクのメニスカスが形成されて、気体(気泡)を通過しにくくなる。そのため、タンクが空の状態からインクを充填する場合、タンク内のフィルタがインク又は充填液などの液体で濡れた状態になったときに、気泡がフィルタを通過することが困難となりタンク内に残留することになる。タンク内に気泡が残留した場合、気泡がヘッドに入り込むと、ノズルからの滴吐出が不能になったり、噴射方向が曲がるなどして、画像品質が低下することになる。
【0007】
そこで、例えば、フィルタを上下2個のフィルタに分離して間に仕切り部を設けて、タンク内にインクを充填するとき、下から徐々にインクが満たされていくに仕切り部にてフィルタ上部にインクが濡れ広がらないようにしたものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−126044号公報
【特許文献2】特開2007−276166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献2に開示されているように、フィルタを上下2個に分離する構成にあっては、フィルタが乾燥している初期のインク充填時には効果があるが、使用途中で同じヘッドを異色インクに入れ替える必要がある場合など、流路を洗浄する必要があるとき、その洗浄過程で、一旦、上部フィルタにインクが濡れ広がることになって、タンクから気泡を排出できなくなるという課題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、液体収容タンク内に液体を充填するときにタンク内での気泡の残留を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドに供給する液体を収容する収容部内に前記液体をろ過するフィルタを有する液体収容タンクと、
前記液体収容タンク内に空気を送り込む手段と、を備え、
液体が充填されていない状態の前記液体収容タンク内に前記液体を充填するとき、充填に先立って前記液体収容タンク内に空気を送り込んで前記フィルタを乾燥させる
構成とした。
【0012】
ここで、前記フィルタを乾燥させる前に、前記ヘッド内及び前記液体収容タンク内の流路を洗浄する洗浄液を供給する構成とできる。
【0013】
また、空気を送風するときに前記ヘッドのノズル面をキャップ部材で封止する構成とできる。
【0014】
本発明に係る画像形成装置における液体充填方法は、
液滴を吐出するヘッドに供給する液体を収容する収容部内に前記液体をろ過するフィルタを有する液体収容タンクを備える画像形成装置における液体充填方法において、
液体が充填されていない状態の前記液体収容タンク内に前記液体を充填するとき、充填に先立って前記液体収容タンク内に空気を送り込んで前記フィルタを乾燥させる
構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る画像形成装置及び画像形成装置における液体充填方法によれば、液体が充填されていない状態の液体収容タンク内に液体を充填するとき、充填に先立って空気を送り込んでフィルタを乾燥させる構成としたので、フィルタを乾燥して気泡が通り易い状態にして液体充填を行なうことができ、タンク内での気泡の残留を低減することができ、安定した滴吐出を行なって高画質画像を形成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態を示す液体吐出ヘッドユニットを含むインク供給系の説明図である。
【図2】図1のA−A線に沿う模式的断面説明図である。
【図3】同インク供給系におけるインク充填工程の説明に供するフロー図である。
【図4】本発明の洗浄工程の説明に供するフロー図である。
【図5】本発明の第2実施形態の説明に供するインク供給系の説明図である。
【図6】同実施形態の洗浄工程の説明に供するフロー図である
【図7】本発明に係る画像形成装置の全体構成の一例の説明に供する模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態における画像形成装置について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同実施形態における画像形成装置のインク供給系の説明図、図2は図1のA−A線に沿うサブタンクの断面説明図である。
液体吐出ヘッドユニット(以下、単に「ヘッドユニット」ともいう。)1は、液滴を吐出するヘッド2と、ヘッド2に供給するインクを収容する液体収容タンク(以下、「ヘッドタンク」という。)4とを備えている。
【0018】
ヘッド2は、液滴を吐出する複数のノズル11と、各ノズル11が連通する液室12と、各液室12にインクを供給する共通液室13と、共通液室13にインクを供給される供給口(インク供給ポート)14と、共通液室13からインクを排出する排出口(インク排出ポート)15などを備えている。
【0019】
ヘッドタンク4は、タンクケース21内にヘッド2に供給するインクを収容するインク収容部22と、インク収容部22からインクをヘッド2の供給口14に供給する供給ポート24と、ヘッド2の排出口15から排出されるインクを排出流路39に排出する排出径路25とを備えており、前記インク収容部22は縦方向に配置されたインク中の不純物を濾過するフィルタ207によってフィルタ上流室35とフィルタ下流室36に分けられている。
【0020】
さらに、フィルタ下流室36には、フィルタ下流室底面36cから天面36aへ達する隔壁202が設けられ、フィルタ下流室36から供給流路203へ直接インクが流れ込まないようになっている。これにより、インク供給流路口27から供給されたインクは、フィルタ上流室35に流入し、フィルタ207を通過しフィルタ下流室36を通って、供給流路203へ流れ、供給ポート24からヘッド2へインクを供給する構成となっている。
【0021】
また、インク収容部22のフィルタ下流室36の天面36aを中央部に向かって傾斜する傾斜面とし、天面36aの中央部の最も高い部位36bに気泡溜部38を設け、更に気泡滞留部38からフィルタ下流室36と排出流路39とを連通する連通経路26が設けられている。
【0022】
また、ヘッドタンク4のタンクケース21は、一方が開口した部材であり、開口部には可撓性の弾性変形可能な部材としてのフィルム部材23(図1中網掛けを付して示すもの)を貼り付けて、圧力変動を吸収する構成としている。タンクケース21は、隔壁202により仕切られたインク収容部22と供給流路203にそれぞれの部位でインクの振動による圧力を吸収するダンパ効果を得られるようになっている。
【0023】
一方、装置本体側には、ヘッドタンク4にインクを補充供給する交換可能なメインタンク(インクカートリッジ)5が配置されている。このインクタンク5は、先端部にバルブが付いた継手56を設けており、インク供給経路51及びインク戻り経路53から着脱可能になっており、この継手56から容易にメインタンク5の交換ができるようになっている。
【0024】
そして、メインタンク5からインク供給経路51を通じてインク供給用ポンプ52によりヘッドタンク4に送液される。また、ヘッドタンク4の排出経路25はインク戻り経路53を介してメインタンク5に接続され、インク戻り経路53には開閉弁(バルブ)54が介装されている。
【0025】
また、このメインタンク5は、タンク5内のインクが外気へ長時間露出し、乾燥または凝固することを防止するための大気開放管55が設けられている。この大気開放管55の流路は、細長い管状の形状になっており、管内の湿度はその長さに沿って変化するため、メインタンク5内のインクが外気と直接接することを防止することができ、インクの乾燥または増粘や凝固することを防止するようになっている。
【0026】
このインク供給系においては、ヘッドタンク4に収容されたインクは、供給ポート24を通じてヘッド2の一端部のインク供給ポート14から共通液室13の一端部から供給され、共通液室13に供給されたインクは、滴吐出に使用されない分がヘッド2の他端部のインク排出ポート15を通り、ヘッドタンク4のインク排出経路26からインク戻り経路53を介してメインタンク5に戻る循環経路を構成する。この循環経路のインク戻り経路53とメインタンク5の間を流れるインクの流路は開閉可能な開閉弁54で止めることができる。
【0027】
そして、三方弁61の残りの1つの流路には、三方弁62及びエアーフィルタ63を介して外気に接続し、インク供給ポンプ52を駆動することでエアー(空気)をインク供給系の流路内に送り込めるようにしている。また、三方弁62には洗浄液を収納した洗浄液タンク64を接続し、インク供給ポンプ52を駆動することで洗浄液をインク供給系の流路内に送り込めるようにしている。
【0028】
次に、このような循環経路を含むインク供給系において、ヘッド2にインクを充填する動作について図3に示すフロー図を参照して説明する。
まず、三方弁61をインク供給経路51がメインタンク5側に連通する状態にしてバルブ54を開き、インク供給経路51を通じてメインタンク5からインク供給用ポンプ52によりヘッドタンク4へ送液する。このインクは、ヘッドタンク4のインク供給流路口27からフィルタ上流室35へ流れ込む。このとき、フィルタ上流室35の空気は、フィルタ207を通り、フィルタ下流室36と排出流路39とを連結する連通経路26通して排出されるため、フィルタ上流室35にインクが流入できることになる。なお、この場合、フィルタ207が乾燥していることが必要であり、インク等の液体でフィルタ207が濡れた状態であると、フィルタ207を構成する粒子や繊維等の間隙に液体のメニスカスを形成し、気体(気泡)がフィルタ207を通過しづらくなり、フィルタ上流室35を気泡が無い状態でインクを充填することができなくなる。
【0029】
そして、フィルタ上流室35内がインクで満たされると、インクはフィルタ207を通過してフィルタ下流室36へ流れ込む。フィルタ下流室36では、隔壁202によって底面36cから天面36aへインクが溜まり始め、隔壁202を超えたところで、供給流路203へ流れ始める。更にインクは、フィルタ下流室36の天面36aの最も高い部位(位置部分)36bから気泡溜部38まで充填され、連通経路26内を通り、排出流路39へ流れ、フィルタ下流室36内は気泡が無い状態でインクを充填することができる。次いで、供給流路203へ流れ込んだインクは、供給ポート24を通ってヘッド2へ送られる。
【0030】
なお、フィルタ下流室36内の空気(気泡)を効率的に排出流路39へ排出することができるようにフィルタ下流室の天面36aの最も高い部位(位置部分)36bに気泡溜部38を設け、この部分に気泡が集まりやすくなるため、短時間に効率的に気泡を排出流路39へ排出できるようにしている。
【0031】
次に、ヘッド2へ送液されたインクは、インク供給ポート14を通じて共通液室13へ送液される。共通液室13へ流れ込んだインクの一部は、各ノズル11から排出される。さらに、共通液室13のインクは、インク排出ポート15を通してインク排出経路25から、排出流路39へ排出され、連通経路26から流れ出たインクと合流し、インク戻り経路53へ送液されて、メインタンク5へ戻る。
【0032】
インクがバルブ54を通過し、インク戻り経路53内にインクが送液されるとバルブ54を閉じる。その後、インク供給用ポンプ52の圧力を調整し、ヘッド2のノズル11からインクを外部へ排出し、ノズル11内の気泡を排出する。更に、インク供給ポンプ52を開放し、インクの流れを止め、メインタンク5とヘッド2のノズル11との水頭差によって発生するインクの吐出に必要な負圧を作り出す。
【0033】
その後、ここでは、図示しない弾性体、好ましくはシリコンゴム等のワイパ部材によりノズル表面をワイピングし、ノズル面11aに垂れたインクを払拭し、ノズル11のメニスカスを形成させ、インク充填を完了させる。
【0034】
このようにして、ヘッド2へインクを充填させ、常にメインタンク5からヘッドタンク4を通じてヘッド2にインクを供給してインク吐出可能な状態とすることができる。
【0035】
このようにして、インクを充填したインク供給系を用いた画像形成装置を使用して行く中で、使用用途においては、異色インクや、違う成分のインクを使用することが発生した場合、インク供給系内のインクを入れ換える必要がある。
【0036】
この場合、継手56からメインタンク5を外し、目的とするインクの入ったメインタンク5を取り付け、インク供給用ポンプ52を稼動させノズル11からインクを排出させながら交換させる方法がある。しかし、この方法では、交換用の大量のインクを必要とし、実印刷に使用しないインクを必要とするためコストアップとなる。そこで、インク供給系内のインクをインクよりも安価な液体で入れ換え、その後、目的とするインクに入れ換える方法もあるが、これでは、徐々にインクが入れ替わるため完全にインクが入れ替わるまでには、多くの時間を必要とする。
【0037】
そこで、本発明では、一旦インク供給系内のインクを排出し、インクよりも安価な洗浄液を用いてインク供給系内を洗浄する。その手順について図4に示すフロー図を参照して説明する。
まず、図1に示すインク戻り経路53側の継手56bをインクの入れ替えに伴う廃液を収容する廃液ボトル65の継手56cに繋ぎ換える。その後、インク供給ポンプ52を稼動させると当時にバルブ54を開き、三方弁61をインク供給経路51と洗浄液が入った洗浄液ボトル64間が連通する側へ切り変え、更に三方弁62をインク供給経路51とインク供給系内へ送るエアー内の塵埃を取り除くエアーフィルタ63間が連通する側へ切り変える。すると、エアーフィルタ63を通過したエアーが流路内に送り込まれ、インク供給系内のインクを廃液ボトル65へ圧送する。
【0038】
そして、インク供給系の流路内のインクが廃液ボトル65へ排出された後、三方弁62をインク供給経路51と洗浄液ボトル64間が連通する側へ切り変えると、洗浄液ボトル64内の洗浄液がインク供給系内に送液される。洗浄液が送液された後、再び三方弁62をインク供給経路51とエアーフィルタ63間が連通する側へ切り変え、エアーを送り、洗浄液を廃液ボトル65へ排出させる。
【0039】
さらに、三方弁62をインク供給経路51と洗浄ボトル64間が連通する側へ切り替え、洗浄液をインク供給系内に送液させる。
【0040】
これを繰り返し、インク供給系内を洗浄する。エアーと洗浄液を交互に送り込むことで、インク供給系内の液体は激しく撹拌されるため、液体を流し続けるよりも少ない量、短い時間でインク供給系内を洗浄することができる。
【0041】
このようにして、インク供給系の流路内の洗浄が完了したときには、三方弁62をインク供給経路51とエアーフィルタ63間が連通する側へ切り変え、インク供給系内にフィルタ207が乾燥するまでエアーを送り続ける。ポンプ52でエアーを送ることで、フィルタ207を短時間で乾燥することができる。
【0042】
そして、フィルタ207が乾燥したときには、インク供給ポンプ52を停止し、バルブ54を閉じ、三方弁61をインク供給経路51とメインタンク5間が連通する側へ切り替え、インク供給系内の洗浄が終了する。
【0043】
この後、交換するインクが入ったメインタンク5を取り付け、前述した図3で示すインク充填工程を行うことにより、インク交換作業を行うことができる。
【0044】
ここで、上記インク供給系内の洗浄工程の中で、フィルタ207を乾燥させたが、これにより、フィルタ上流室35を気泡が無い状態でインクを充填することができるようになる。なお、エアーや洗浄液を送る時間や、回数、圧力値は適宜設定するが、最適な回数、時間、圧力値を予め実証して得ておくことで、本インク供給系洗浄シーケンスを自動化することができる。
【0045】
また、フィルタ207を乾燥させるときは、インク供給系内を十分に洗浄する必要がある。洗浄が不十分な場合、エアーを送り、乾燥させる間に残留するインク成分が析出し、インク供給系内、特に流路が狭くなるフィルタ207の孔部やノズル11を詰まらせる原因となる。このため、フィルタ207を乾燥させるときには、インク供給系内が十分に清浄化できた後に行うことが重要である。
【0046】
さらに、フィルタ207を乾燥させるときには、ノズル11面を弾性体のキャップで密閉し、エアーを送ることが好ましい。これにより、万一、インク供給系内が十分に洗浄されていない状態でフィルタ207の乾燥を行っても、ノズル11へはエアーが通過しないため、ノズル11が乾燥することがなくなるので、インク成分の析出によるノズル詰まりを防ぐことができる。
【0047】
一方、印刷などにより使用されたインクを補給するために行うメインタンク5の交換時や何らかの原因でフィルタ上流室35に気泡が混入し、ノズル11からのインク滴吐出に支障が生じた場合、これを解消するための気泡排出動作を行う場合でも、本作業で、インクを排出し、フィルタ207を乾燥させた後、同じインクを再充填することで、エアーが無い状態を作ることができ、ノズル11からのインク滴吐出の不具合に対処することができる。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態について図5を参照して説明する。図5は、インク供給系洗浄専用の洗浄ユニット66を用いた同実施形態におけるインク供給系の説明図である。
洗浄ユニット66は、内部に洗浄液が入った洗浄液ボトル64、廃液を収容する廃液ボトル65、エアーボトル68が収納されている。この洗浄ユニット66の外形は、前記第1実施形態のメインタンク5と同じ形状であり、継手56a、56bよりメインタンク65と同じ要領で取り換えができるようになっている。
【0049】
本実施形態におけるインク入れ替えのためのインク供給系の洗浄工程について図6に示すフロー図を参照して説明する。
まず、継手56a、56bよりメインタンク5を外し、洗浄ユニット66を取り付ける。次に、インク供給ポンプ52を稼動させると同時にバルブ54を開き、三方弁67をインク供給経路51と洗浄液ボトル64間が連通する側へ切り替え、更に三方弁67をインク供給経路51とエアーフィルタ63間が連通する側へ切り替える。これにより、エアーフィルタ63を通過したエアーが流路内に送り込まれ、インク供給系内のインクを廃液ボトル65へ圧送する。流路内のインクが廃液ボトル65へ排出された後、三方弁C67をインク供給経路51と洗浄ボトル64間が連通する側へ切り替えると、洗浄液ボトル64内の洗浄液がインク供給系内に送液される。洗浄液が送液された後、再び三方弁67をインク供給経路51とエアーフィルタ63間が連通する側へ切り替え、エアーを送り、洗浄液を廃液ボトル65へ排出させる。そしてまた、三方弁67をインク供給経路51と洗浄ボトル64間が連通する側へ切り替え、洗浄液をインク供給系内に送液させる。これを繰り返し、インク供給系内を洗浄する。
【0050】
このようにしてインク供給系内の洗浄が完了したときには、三方弁67をインク供給経路51とエアーフィルタ63間が連通する側へ切り替え、インク供給系内にフィルタ207が乾燥するまでエアーを送り続ける。フィルタ207の乾燥が終わった後、インク供給ポンプ52停止し、バルブ54を閉じ、三方弁67をインク供給経路51とメインタンク5間が連通する側へ切り替え、インク供給系内の洗浄工程を終了する。
【0051】
そして、交換するインクが入ったメインタンク5を取り付け、前述した図3に示すインク充填工程を行うことにより、インク交換作業を行うことができる。
【0052】
なお、前記第1実施形態と同様に、フィルタ207を乾燥させるときには、インク供給系内を十分に洗浄する必要があり、更にはノズル11面を弾性体のキャップで密閉し、エアーを送ることが好ましい。
【0053】
このように、インク供給系洗浄専用の洗浄ユニット66を用いることで、メインタンクの交換方法と同じ要領で洗浄ユニットを組むことができ、容易にインク供給系の洗浄を行うことができる。更には、廃液タンク65には、入れ換え前のインク供給系内のインクと洗浄ボトル64に収容された洗浄液だけが排出されるため、その分の容量をもつ廃液ボトルにすることで、廃液ボトルからインクを溢れさせるおそれを避けることができる。
【0054】
次に、上記各実施形態で説明したインク供給系を備える画像形成装置の一例について図7を参照して説明する。
この画像形成装置は、上記液体吐出ヘッドユニット1からなる記録ヘッド101を、キャリッジ103に搭載して、左右の側板100A、100B間に横架した主ガイドロッド104と図示しない副ガイド部材とで摺動自在に支持している。この記録ヘッド101は、タイミングベルト105を介して主走査モータ106によって主走査方向に移動走査される。一方、被記録媒体107は記録ヘッド101のノズル面11aと対向し、記録ヘッド101の移動方向と直交する方向に搬送ローラ109によって搬送され、記録ヘッド101から画像に応じて吐出されるインク滴が付着されて画像が形成される。
【0055】
記録ヘッド101へのインクの供給は、メインタンク5や大気開放管55等が納められたメインタンクユニット102からインク供給ポンプ52を経由してフレキシブルなインク供給径路51によってなされる。また、記録ヘッド101にはノズルから吐出又は排出されなかったインクをインク戻し径路53を通じてメインタンクユニット102に戻される。
【0056】
また、記録領域外に設けられたキャップ部材111は、複数のノズル11を有するノズル面108をキャッピングする弾性体、好ましくはシリコンゴム等からなる。非記録時には、記録ヘッド101がキャップ部材111の上方まで移動し、キャップ部材111が図示していないキャップ移動機構によって移動してノズル面108をキャッピングする。このキャップ部材111内には、インク吸引の際の吸引容易化、キャップ内雰囲気湿潤化等のため、インク吸収シート112が設けられている。
【0057】
このキャップ部材111には、底面に2本のチューブ113、114が連結され、チューブ113は大気開放弁115を介して大気に連通される。チューブ114は吸引ポンプ116に接続され、キャップ部材111でノズル面108をキャッピングし、大気開放弁115を閉じた状態で、吸引ポンプ116を駆動してキャップ部材111内に負圧を発生させることで、記録ヘッド101のノズルからインクを吸引し、大気開放弁115を開放することでキャップ部材111内の空間117に溜まったインクを廃液タンク118に排出する。また、キャップ部材111は、大気開放弁115を閉じた状態でノズル面108に接触させ保持することで、記録ヘッド101のノズルの乾燥を防止する。
【0058】
さらに、図示していないワイパ移動機構によってワイパーブレード(ワイパ部材)119を記録ヘッド101のノズル面108に接触する高さまで移動させ、記録ヘッド101を主走査方向に移動させてワイパーブレード119によりノズル面108に付着したインクや塵埃を払拭し、ノズル面108のメニスカスの生成やクリーニングを行うことができる。
【0059】
なお、上記実施形態では本発明をプリンタ構成の画像形成装置に適用した例で説明したが、これに限るものではなく、前述したように、例えば、プリンタ/ファックス/コピア複合機などの画像形成装置に適用することができ、また、狭義のインク以外の液体や定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 液体吐出ヘッドユニット
2 ヘッド
4 ヘッドタンク
5 メインタンク
11 ノズル
13 共通液室
14 供給ポート
15 排出ポート
21 タンクケース
22 インク収容部
23 ダンパ部材(フィルム部材)
24 供給ポート
25 排出経路
35 フィルタ上流室
36 フィルタ下流室
39 排出流路
40 排気流路
51 インク供給経路
52 インク供給ポンプ
53 インク戻り流路
54 開閉弁(バルブ)、
56 継手
61、62 三方弁、
63 エアーフィルタ、
64 洗浄液ボトル、
66 洗浄ユニット、
67 三方弁
101 記録ヘッド(液体吐出ヘッドユニット)
202 隔壁部
203 供給流路
207 フィルタ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドに供給する液体を収容する収容部内に前記液体をろ過するフィルタを有する液体収容タンクと、
前記液体収容タンク内に空気を送り込む手段と、を備え、
液体が充填されていない状態の前記液体収容タンク内に前記液体を充填するとき、充填に先立って前記液体収容タンク内に空気を送り込んで前記フィルタを乾燥させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記フィルタを乾燥させる前に、前記ヘッド内及び前記液体収容タンク内の流路を洗浄する洗浄液を供給することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
空気を送風するときに前記ヘッドのノズル面をキャップ部材で封止することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
液滴を吐出するヘッドに供給する液体を収容する収容部内に前記液体をろ過するフィルタを有する液体収容タンクを備える画像形成装置における液体充填方法において、
液体が充填されていない状態の前記液体収容タンク内に前記液体を充填するとき、充填に先立って前記液体収容タンク内に空気を送り込んで前記フィルタを乾燥させる
ことを特徴とする画像形成装置における液体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−235470(P2011−235470A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106850(P2010−106850)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】