説明

画像形成装置及び記録液排出方法

【課題】記録液を吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置において、ヘッド吸引後のデキャップの際に記録液がノズル面に残留することを防止する画像形成装置及び記録液排出方法を提供する。
【解決手段】記録液を吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置であって、ヘッドの記録液吐出面に、記録液の吐出口とは別に設けられた廃液口と、廃液口に続いてヘッド内に設けられるとともに、ヘッドの外部へと続く開口部を備えた廃液用流路と、を有し、記録液吐出面に残留した記録液が、廃液口及び廃液用流路を介して、ヘッドの外部へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録液を吐出するヘッドを備えた画像形成装置及び記録液排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成の際、記録媒体(例えば用紙)に対して記録液(例えばインク)を吐出するヘッドを備えた画像形成装置が普及している。上記ヘッドは、液滴吐出ヘッド、液体吐出ヘッド、記録ヘッド、インク吐出ヘッド、インクジェットヘッドなどと呼ばれる。このようなヘッドでは、ノズルに気泡が入ると、吐出性能が劣化する。そこで、吐出性能を回復させるために、ヘッドのノズル面(記録液が吐出される面。記録液吐出面ともいう)にキャップを接触させ(キャッピング)、ポンプで吸引することで、ノズルに入った気泡を排出させる技術(ヘッド吸引)が既に知られている。
【0003】
しかし、上述したヘッド吸引は、ヘッドが鉛直方向下向きに配置された(記録液の吐出方向が鉛直下方向となる)画像形成装置において使用する分には問題が生じないが、ヘッドが鉛直方向上向きに配置された(記録液の吐出方向が鉛直上方向となる)画像形成装置で使用すると、以下の問題が生じる。
【0004】
すなわち、ヘッドが上向きに配置されたインクジェット方式の画像形成装置において上記ヘッド吸引を使用した場合、ヘッドのノズル面にキャップを接触させ、ポンプで吸引するまでは特に問題はない。しかし、ヘッド吸引後のデキャップ(ノズル面に接触させていたキャップを取り外す)動作時に、ヘッドが上向きであることから、キャップ内に残留するインクがノズル面に残ってしまう。ノズル面に残ったインクは、ノズル面で固着するのみならず、ノズル面から垂れて固着する。これにより、ノズルの吐出不良が生じたり、あるいは、固着したインクが紙面を汚したりするといった問題が生じる。
【0005】
なお、本発明に関連する技術例として例えば特許文献1には、キャップのニップ部を清掃する清掃部材を設け、キャップがキャッピング位置に移動する時に上記清掃部材の開口部を通過することにより、キャップのニップ部に残留したインクを除去する構成が開示されている。この構成は、残留したインクを除去するものではあるが、ヘッドが上向きに配置された画像形成装置においてヘッド吸引を行った場合に、ヘッド吸引後のデキャップ動作時にキャップ内に残留するインクがノズル面に残ってしまうという問題を解消できる構成ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、記録液を吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置において、ヘッド吸引後のデキャップの際に記録液がノズル面に残留することを防止する画像形成装置及び記録液排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、記録液を吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置であって、ヘッドの記録液吐出面に、記録液の吐出口とは別に設けられた廃液口と、廃液口に続いてヘッド内に設けられるとともに、ヘッドの外部へと続く開口部を備えた廃液用流路と、を有し、記録液吐出面に残留した記録液が、廃液口及び廃液用流路を介して、ヘッドの外部へ排出されることを特徴とする。
【0008】
本発明の記録液排出方法は、記録液を吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置が行う記録液排出方法であって、記録液吐出面に残留した記録液を、記録液の吐出口とは別にヘッドの記録液吐出面に設けられた廃液口と、廃液口に続いてヘッド内に設けられるとともに、ヘッドの外部へと続く開口部を備えた廃液用流路とを介して、ヘッドの外部へ排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録液を吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置において、ヘッド吸引後のデキャップの際に記録液がノズル面に残留することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の前方側の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の機構部の全体構成を概略的に示す側断面図である。
【図3】図1及び図2に示す画像形成装置の機構部の要部構成を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のサブシステムの要部構成を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のサブシステムの概略構成を模式的に示す側断面図である。
【図6】図4の右側を正面とした図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における維持回復機構の構成例1を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における維持回復機構の構成例2を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における維持回復機構の構成例3を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における維持回復機構の構成例4を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る画像形成装置におけるヘッドの傾斜動作の一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る画像形成装置におけるヘッドのノズル面に曲率を持たせた一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本実施形態は、記録液(記録液滴)を吐出するヘッドを上向きに配置したインクジェット方式画像形成装置において、ヘッドのノズル面に対してキャッピングを行って記録液を吸引する処理(上述したヘッド吸引)に際して、以下の特徴を有する。要するに、本実施形態では、ノズル面(記録液吐出面)に残留するインクが、インクの自重や吸引ポンプにより、ノズル面に形成された廃液口とヘッド内に設けられた廃液用流路を通って排出されることが特徴になっている。この特徴について、図面を用いて詳細に解説する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。図1は、画像形成装置の前方側の外観を示す斜視図である。画像形成装置は、図1に示すように、装置本体1と、装置本体1に装着した用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、画像形成装置は、装置本体1の前面4の一端部側において、前面4から前方側に突き出し、上面5よりも低くなったカートリッジ装填部6を有し、このカートリッジ装填部6の上面には操作キーや表示器などの操作部7を配置している。カートリッジ装填部6には、液体補充手段としての液体保管用タンクであるメインタンク(以下、「インクカートリッジ」という)10が交換可能に装着されている。また、インクカートリッジ10の前方には、開閉可能な前カバー8を有している。
【0014】
図2は、図1に示す画像形成装置の機構部の全体構成を概略的に示す側断面図である。給紙トレイ3の用紙積載部(底板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部について説明する。給紙部は、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43と、その給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44とを備える。この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0015】
この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側で搬送するための搬送部について説明する。搬送部は、用紙42を静電吸着して搬送するための搬送ベルト51と、給紙部からガイド45を介して送られる用紙42を搬送ベルト51との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ52と、略鉛直上方に送られる用紙42を略90°方向転換させて搬送ベルト51上に倣わせるための搬送ガイド53と、押さえ部材54で搬送ベルト51側に付勢された先端加圧コロ55とを備えている。また、搬送部は、搬送ベルト51表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
【0016】
ここで、搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ57とテンションローラ58との間に掛け渡されて、図3のベルト搬送方向に周回するように構成している。帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
【0017】
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材61を配置している。このガイド部材61は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ57とテンションローラ58)の接線よりも記録ヘッド34側に突出している。これにより、搬送ベルト51は、印写領域ではガイド部材61の上面にて押し上げられてガイドされるので、高精度な平面性を維持される。
【0018】
記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部について説明する。排紙部は、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪71と、排紙ローラ72及び排紙コロ73とを備え、排紙ローラ72の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ72と排紙コロ73との間から排紙トレイ3までの高さは、排紙トレイ3にストックできる量を多くするために、ある程度高くしている。
【0019】
また、装置本体1の背面部には両面給紙ユニット81が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット81は、搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させ、再度カウンタローラ52と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面給紙ユニット81の上面には手差し給紙部82を設けている。
【0020】
図3は、図1及び図2に示す画像形成装置の機構部の要部構成を模式的に示す平面図である。図3において、フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持する。そして、図示しない主走査モータによって、キャリッジ33を図3の矢示方向(キャリッジ走査方向:主走査方向)に移動走査する。
【0021】
このキャリッジ33には、記録液滴(以下、「インク」、「インク滴」という)を吐出するためのインク吐出ヘッド(ヘッドともいう)を有する。インク吐出ヘッドは、例として、複数の記録ヘッド34からなり、複数のノズルを主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0022】
ここで、複数の記録ヘッド34は、例えば、イエロー(Y)のインクを吐出する記録ヘッド34y、マゼンタ(M)のインクを吐出する記録ヘッド34m、シアン(C)のインクを吐出する記録ヘッド34c、ブラック(Bk)のインクを吐出する記録ヘッド34bとで構成している。なお、「記録ヘッド34」というときは、色を区別しないものとする。
【0023】
なお、記録ヘッド34のヘッド構成は、上記例に限るものではなく、1又は複数の色のインクを吐出する1又は複数のノズル列を有する記録ヘッドを1又は複数用いて構成することもできる。
【0024】
記録ヘッド34を構成するインク吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0025】
この記録ヘッド34にはドライバICを搭載し、図3に示すように、図示しない制御部との間でハーネス(FPCケーブル)22を介して接続されている。
【0026】
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34にそれぞれ各色の記録液を供給するための各色のサブタンク35y、35m、35c、35k(色を区別しない場合は「サブタンク35」という)を搭載している。
【0027】
このサブタンク35y、35m、35c、35kには、各色の4本のチューブで構成される記録液供給チューブ37を介して、前述した各色のインクカートリッジ10(各色を区別する場合には、「インクカートリッジ10y、10m、10c、10k」という)から記録液を供給するようにしている。なお、各色のチューブも記録液を供給する記録液供給チューブである。
【0028】
ここで、インクカートリッジ10は、図3にも示すように、カートリッジ装填部6に収納され、このカートリッジ装填部6にはインクカートリッジ10内の記録液を送液するための供給ポンプユニット23が設けられている。
【0029】
また、インクカートリッジ装填部6からサブタンク35に至るまでの記録液供給チューブ37は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに本体側ホルダ25にて固定保持されている。さらに、キャリッジ33上でも固定リブ26にて固定されている。
【0030】
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための本発明に係る維持装置を含む信頼性維持回復機構(以下「サブシステム」という)91を配置している。
【0031】
このサブシステム91は、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ92a〜92d(区別しないときは「キャップ92」という)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード93と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しないインクを吐出させる空吐出を行うときに、空吐出されたインクを受ける空吐出受け94と、この空吐出受け94に一体形成され、ワイパーブレード93に付着した記録液を除去するための清掃部材であるワイパークリーナ95と、ワイパーブレード93のクリーニング時にワイパーブレード93をワイパークリーナ95側に押し付けるクリーナ手段を構成するクリーナコロ96などを備えている。なお、サブシステム91の詳細については、後述する。
【0032】
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しないインクを吐出させる空吐出が行われたときに、空吐出されたインクを受ける空吐出受け98を配置し、この空吐出受け98には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口99などを備えている。
【0033】
このように、図1〜図3に示す構成の画像形成装置は、インクジェット記録装置を例としている。このインクジェット記録装置における動作を説明する。
【0034】
このインクジェット記録装置では、図2において、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ52との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド53で案内されて先端加圧コロ55で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0035】
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に静電的に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0036】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0037】
また、印字(記録)待機中において、キャリッジ33は、サブシステム91側に移動されて、キャップ92で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ92で記録ヘッド34をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という)、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0038】
次に、上述したサブシステム91について、図4〜図6を参照して以下に説明する。図4は、サブシステム91の要部構成を模式的に示す平面図である。図5は、サブシステム91の概略構成を模式的に示す側断面図である。図6は、図4の右側を正面とした図である。
【0039】
サブシステムのフレーム(維持装置フレーム)111には、キャップ保持機構である2つのキャップホルダ112A、112Bと、清浄化手段としての弾性体を含むワイピング部材であるワイパーブレード93と、キャリッジロック115とがそれぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。また、ワイパーブレード93とキャップホルダ112Aとの間には空吐出受け94が配置される。また、ワイパーブレード93のクリーニングを行うために、空吐出受け94の清掃部材であるワイパークリーナ95(図5参照)側に、フレーム111の外側からワイパーブレード93を押し付けるための清掃部材であるクリーナコロ96を含むクリーナ手段であるワイパークリーナ118が揺動可能に保持されている。揺動とは、「揺れ動くこと」や「360°以下の角度で正回転又は逆回転すること」を意味する。
【0040】
キャップホルダ112A、112B(区別しないときは「キャップホルダ112」という)には、それぞれ、2つの記録ヘッド34のノズル面をそれぞれキャッピングする2つのキャップ92aと92b、キャップ92cと92dを保持している。
【0041】
ここで、印字領域に最も近い側のキャップホルダ112Aに保持したキャップ92aには可撓性チューブ119を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)120を接続し、その他のキャップ92b、92c、92dはチュービングポンプ120を接続していない。すなわち、キャップ92aのみを吸引(回復)及び保湿用キャップ(以下単に「吸引用キャップ」という)とし、その他のキャップ92b、92c、92dはいずれも単なる保湿用キャップとしている。したがって、記録ヘッド34の回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド34を吸引用キャップ92aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
【0042】
また、これらのキャップホルダ112A、112Bの下方には、フレーム111に回転自在に支持したカム軸121を配置している。このカム軸121には、キャップホルダ112A、112Bを昇降させるためのキャップカム122A、122Bと、ワイパーブレード93を昇降させるためのワイパーカム124、キャリッジロック115をキャリッジロックアーム117を介して昇降させるためのキャリッジロックカム125と、空吐出受け94内で空吐出される液滴がかかる空吐出付着部材である回転体としてのコロ126と、ワイパークリーナ118を揺動させるためのクリーナカム128とをそれぞれ設けている。
【0043】
ここで、キャップ92はキャップカム122A、122Bにより昇降させられる。ワイパーブレード93はワイパーカム124により昇降させられ、下降時にワイパークリーナ118が進出して、このワイパークリーナ118のクリーナコロ96と空吐出受け94のワイパークリーナ95とに挟まれながら下降することで、ワイパーブレード93に付着したインクが空吐出受け94内に掻き落とされる。
【0044】
キャリッジロック115は、図示しない圧縮バネによって上方(ロック方向)に付勢されて、キャリッジロックカム125で駆動されるキャリッジロックアーム117を介して昇降させられる。
【0045】
そして、チュービングポンプ120及びカム軸121を回転駆動するために、モータ131の回転をモータ軸131aに設けたモータギヤ132に、チュービングポンプ120のポンプ軸120aに設けたポンプギヤ133を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ133と一体の中間ギヤ134に中間ギヤ135を介して一方向クラッチ137付きの中間ギヤ136を噛み合わせ、この中間ギヤ136と同軸の中間ギヤ138に中間ギヤ139を介してカム軸121に固定したカムギヤ140を噛み合わせている。なお、クラッチ137付きの中間ギヤ136、138の回転軸である中間軸141はフレーム111にて回転可能に保持している。
【0046】
また、カム軸121にはホームポジションを検出するためのホームポジションセンサ用カム142を設け、このサブシステム91に設けた図示しないホームポジションセンサにてキャップ92が最下端に来たときにホームポジションレバー(不図示)を作動させ、センサが開状態になってモータ131(ポンプ120以外)のホームポジションを検知する。なお、電源オン時には、キャップ92(キャップホルダ112)の位置に関係なく上下(昇降)し、移動開始までは位置検出を行わず、キャップ92のホーム位置(上昇途中)を検知した後に、定められた量を移動して最下端へ移動する。その後、キャリッジが左右に移動して位置検知後キャップ位置に戻り、記録ヘッド34がキャッピングされる。
【0047】
以上説明した画像形成装置は、インク吐出ヘッドが下方向を向いて配置(装着)されている(インク滴の吐出方向が鉛直方向下方向となる)例とした。これに対し、本実施形態の画像形成装置は、インク吐出ヘッドが上方向を向いて配置されている(インク滴の吐出方向が鉛直方向上方向となる)ものとする。ただし、インク吐出ヘッドが鉛直方向上向きに装着されている以外は、本実施形態の画像形成装置は、上記図1〜図6で説明した構成・動作と同様である。
【0048】
次に、本実施形態の画像形成装置の各構成例について、以下に説明する。
【0049】
〔構成例1〕
図7は、本実施形態の画像形成装置における維持回復機構の構成例を示す図である。
【0050】
本実施形態の画像形成装置では、図7に示すように、ヘッド(ノズル)を上向きに配置し、ヘッドタンクに貯留されたインクを略鉛直方向上向きに吐出する構成を採用している。このような構成において、ノズルに気泡が入り吐出不良が生じた場合、図7に示すように、押圧手段による押圧により吸引キャップ(キャップともいう)をヘッドのノズル面(インクの吐出が行われる面)に接触させ、図示しない吸引ポンプ(図中に示すものとは別)で上方向に吸引する必要がある。そして、吸引後、吸引キャップをヘッドから離間させるデキャップが行われる。このとき、吸引キャップ内の残存インクがノズル面に広がり、インク垂れが生じる。垂れたインクは、ヘッドの側面に固着する。また、残存インクがノズル面に固着し、吐出不良が生じる、あるいは、用紙を汚すといった懸念がある。
【0051】
そこで、本構成例1では、図7に示すように、吸引キャップ内の残存インクを処理する手段として、ノズル面に設けられた穴(ノズルとは別の穴。廃液口ともいう)と、その穴に続いてヘッド内に設けられた廃液用流路と、を有する。廃液口には撥水処理が施されてもよい。廃液用流路は、図7に示すように、ヘッドの側面に開口部がある。この開口部はヘッド外部と接続される。図7では、ヘッド側面における廃液用流路の開口部に対し、維持Mdが接続された例としている。維持Mdは、例えば、廃液用チューブ、吸引ポンプ(吸引手段の一例)、廃液タンク等で構成される。
【0052】
このような図7の構成において、動作は次のようになる。すなわち、ユーザは、気泡の吸引終了後、デキャップの前に、維持Md側のジョイント部(廃液用チューブの先端にある)を、ヘッド側面に設けられた廃液用流路の開口部に接続する。そして、ユーザは、吸引ポンプの動作(空気を吸引する動作)を指示する。これにより、吸引キャップ内のインク(ノズル面に存在しているインク)は、吸引される空気とともに、ノズル面に設けられた穴から廃液用流路に吸引され、さらに廃液チューブ、吸引ポンプを通り、図示しない廃液タンクへ排出される。なお、廃液用流路の開口部と維持Mdとの接続は、上記のようにユーザの手動ではなく、例えば、キャリッジの主走査方向の運動によって行われるようにしてもよい。また、ヘッドのクリーニング時に、ヘッドとともに廃液口もクリーニングされるように構成してもよい。
【0053】
〔構成例2〕
図8は、本実施形態の画像形成装置における維持回復機構の構成例を示す図である。
【0054】
上記構成例1で説明した図7の構成ではデキャップ時の廃液性能が十分でない場合がある。そこで、本構成例では、図8に示すように、吸引キャップに吸引手段(例えば吸引ポンプ)を連結して設ける(廃液用チューブ側には吸引ポンプは設けない)。そして、本構成例では、ヘッド吸引終了後に、空気の流れる方向をヘッド吸引時と逆転させて大気開放を行い、吸引キャップ内へ空気を流入させることで、廃液処理を促進する。
【0055】
すなわち、図8の構成においては、ヘッド吸引の際は、吸引手段は、ノズルから吸引した気泡を吸い上げるように動作する。すなわち、吸い上げられた気泡(インク)は、上方へ(吸引手段の方へ)と吸い上げられる。そして、ヘッド吸引が終了すると、吸引手段は、これまでの空気の流れを逆転させる。つまり、吸引手段は、吸引キャップ内へ空気を送り込む(流入させる)ように動作する。このとき、吸引手段は、空気流入手段(空気送り込み手段)として動作することになる。すなわち本構成例では、吸引手段が、空気の流れを逆転させることで、ヘッド吸引と、空気流入とを切り替えている。
【0056】
空気の流入が行われると、吸引キャップ内のインク(ノズル面に存在しているインク)は、吸引キャップ内に送り込まれた空気に押され、ノズル面に設けられた穴から廃液用流路に流れ込む。その後、そのインクは、廃液チューブを通り、図示しない廃液タンクへ排出される。このように吸引キャップ内へ空気を流入させることで、廃液処理を効果的に実現できる。
【0057】
〔構成例3〕
図9は、本実施形態の画像形成装置における維持回復機構の構成例を示す図である。
【0058】
図9に示すように、図7の構成において吸引キャップに大気開放弁を設けても、同様の効果が得られる。大気開放弁は、y方向において、廃液口(ノズル面に設けられた穴)と逆の位置に設けられる。そして、大気開放弁は、上記構成例2と同じく、ヘッド吸引が終了すると、吸引キャップ内(のノズル面)に空気を送り込む動作を行う。ただし、この大気開放弁は、空気を送り込む動作を専門に行う(吸引動作は兼ね備えない)。これにより、吸引キャップ内のインク(ノズル面に存在しているインク)は、吸引キャップ内に流入した空気に押されて廃液口の方に流れ、廃液用流路、廃液チューブを通り、図示しない廃液タンクへ送られる。このように吸引キャップ内へ空気を流入させることで、廃液処理を効果的に実現できる。
【0059】
〔構成例4〕
図10は、本実施形態の画像形成装置における維持回復機構の構成例を示す図である。
【0060】
図8の構成を用いて排液性能が十分に得られない場合、図10に示すように、吸引キャップに連結された吸引手段に加えて、第2の吸引手段(例えば吸引ポンプ)を設けるようにしてもよい。第2の吸引手段は、廃液用チューブに連結されている。廃液用チューブは、その先端にあるジョイント部により、廃液用流路の開口部と接続されている。すなわち、図10に示す構成は、図7と図8の構成は組み合わせた形態である。図10に示す2つの吸引手段の動作については、構成例1(図7)及び構成例2(図8)で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。このように、図10に示す構成により、排液性能をさらに向上させることが可能となる。
【0061】
なお、図10に示す2つの吸引手段を1つの駆動源で駆動させるようにしてもよい。これにより、部品点数及び部品コストを低減させることができる。
【0062】
〔構成例5〕
図11は、本実施形態の画像形成装置におけるヘッドの傾斜動作の一例を示す図である。なお、図11では、ヘッドにおけるノズル、及び、廃液用流路の開口部に接続されている維持Mdの図示を省略している。
【0063】
図11の左図(通常時)に示すように、ノズル面が水平に配置されている場合、インクがノズル面に多く残り、効果的に吸引できない。そこで、維持動作時に、キャリッジを支持する主ガイド部材と、その主ガイド部材と平行して配設されてキャリッジを支持する副ガイド部材とが相対的にz方向に移動することで、図11右図(維持動作時)に示すように、廃液口が鉛直方向下向きになるようにノズル面を傾斜させるようにしてもよい。これにより、インクは、その自重により傾斜したノズル面を移動し、廃液口へ吸引されやすくなる。よって、インクの排出が効果的となる。
【0064】
さらに、図11に示すヘッドにおいて、廃液口及びそれに続く廃液用流路を複数設けるようにしてもよい。これにより、インクの吸引時間の短縮を図ることができる。
【0065】
なお、本構成例は、上述した構成例1〜4のいずれかと組み合わせることが可能である。
【0066】
〔構成例6〕
図12は、本実施形態の画像形成装置におけるヘッドのノズル面に曲率を持たせた一例を示す図である。
【0067】
図12に示すように、ヘッドにおいて、ノズル面に曲率を持たせるようにしてもよい。これにより、ノズル面の端にインクが集まり、廃液口に流れやすくなる。この廃液口は、例えば、ノズル面以外に設けられたもの(図12では図示略)であってもよいし、上述した構成例1〜5のようにノズル面に設けられたもの(図12では図示略)であってもよい。
【0068】
なお、本構成例は、上述した構成例1〜5のいずれかと組み合わせることが可能である。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、ノズル面に残留するインクがその自重や吸引手段により、ノズル面に形成された廃液口とヘッド内の廃液用流路を通って排出されることを特徴としている。これにより、インクを吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置において、ヘッド吸引後のデキャップの際にインクがノズル面に残留することを防止できる。よって、ノズル面に残留したインクが、ヘッド側面に垂れて固着したり、そのままノズル面で固着したりすることを防止できるので、固着したインクにより引き起こされる吐出不良を防止できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 装置本体
2 給紙トレイ
3 排紙トレイ
4 前面
5 上面
6 カートリッジ装填部
7 操作部
8 前カバー
10 インクカートリッジ(メインタンク)
21 フレーム
21A、21B 側板
21C 後板
22 ハーネス
23 供給ポンプユニット
25 本体側ホルダ
26 固定リブ
31 ガイドロッド
33 キャリッジ
34 記録ヘッド
35 サブタンク
37 記録液供給チューブ
41 用紙積載部
42 用紙
43 半月コロ(給紙コロ)
44 分離パッド
45 ガイド
51 搬送ベルト
52 カウンタローラ
53 搬送ガイド
54 押さえ部材
55 先端加圧コロ
56 帯電ローラ
57 搬送ローラ
58 テンションローラ
61 ガイド部材
71 分離爪
72 排紙ローラ
73 排紙コロ
81 両面給紙ユニット
82 手差し給紙部
91 信頼性維持回復機構(サブシステム)
92 キャップ
93 ワイパーブレード
94 空吐出受け
96 クリーナコロ
98 空吐出受け
99 開口
111 サブシステムのフレーム(維持装置フレーム)
111a、111b 掻き落とし部材
112A、112B キャップホルダ
115 キャリッジロック
117 キャリッジロックアーム
120 チュービングポンプ(吸引ポンプ)
121 カム軸
122A、122B キャップカム
124 ワイパーカム
125 キャリッジロックカム
126 コロ(回転体)
126A 側壁
131 モータ
131a モータ軸
132 モータギヤ
133 ポンプギヤ
134、135、136、138、139 中間ギヤ
137 クラッチ
141 中間軸
142 ホームポジションセンサ用カム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2005−119214号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液を吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置であって、
前記ヘッドの記録液吐出面に、前記記録液の吐出口とは別に設けられた廃液口と、
前記廃液口に続いて前記ヘッド内に設けられるとともに、前記ヘッドの外部へと続く開口部を備えた廃液用流路と、を有し、
前記記録液吐出面に残留した記録液が、前記廃液口及び前記廃液用流路を介して、前記ヘッドの外部へ排出されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記廃液用流路の開口部と接続され、空気を吸引する吸引手段を有し、
前記記録液吐出面に残留した記録液は、前記吸引手段により吸引された空気とともに前記廃液口から吸引され、前記廃液用流路を介して前記ヘッドの外部へ排出されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録液吐出面に対して空気を流入させる空気流入手段を有し、
前記記録液吐出面に残留した記録液は、前記空気流入手段により流入された空気に押されて前記廃液口へ流れ込み、前記廃液用流路を介して前記ヘッドの外部へ排出されることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記空気流入手段は、
前記記録液の吐出不良時に前記吐出口の吸引を行うために前記記録液吐出面を覆うように取り付けられるキャップを介して設けられるものであり、
前記吐出口の吸引を行う手段を兼ね備え、
空気の流れる方向を逆転させることで、前記吐出口の吸引と、前記記録液吐出面に対する空気の流入とを切り替えることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記空気流入手段は、
前記記録液の吐出不良時に前記吐出口の吸引を行うために前記記録液吐出面を覆うように取り付けられるキャップを介して設けられるものであり、
前記記録液吐出面に対する空気の流入を専門に行うことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録液吐出面に残留した記録液が自重により前記廃液口へ流れ込むように前記液体吐出面を傾斜させる手段を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記液体吐出面には任意の曲率が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
記録液を吐出するヘッドが上向きに配置された画像形成装置が行う記録液排出方法であって、
前記記録液吐出面に残留した記録液を、前記記録液の吐出口とは別に前記ヘッドの記録液吐出面に設けられた廃液口と、前記廃液口に続いて前記ヘッド内に設けられるとともに、前記ヘッドの外部へと続く開口部を備えた廃液用流路とを介して、前記ヘッドの外部へ排出することを特徴とする記録液排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−250481(P2012−250481A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125653(P2011−125653)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】