説明

画像形成装置用転がり軸受

【課題】ローラ状回転体の組付け性やメンテナンス性が良好でありながら、異音や摩耗の問題点を可及的に防止することができて信頼性の高い画像形成装置用の転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受10は、転動体15を介して相対回転可能な外輪11および内輪12を備える。このうち、内輪12は、転動体15の転送面12a1を有する外径部13と、内部気孔に潤滑流体を含浸させた焼結金属製の内径部14とを備え、かつ、ローラ状回転体の軸部6に対して相対回転可能に軸部6の外周に嵌合保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関し、特に、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置に装備されるローラ状回転体を支持するための転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の各種画像形成装置には、例えば、現像剤(例えば、トナー)を攪拌するトナー攪拌ローラ、トナーを感光ドラムの外周面に付着させることで感光ドラムの外周面に形成された静電潜像を現像する現像ローラ、現像した画像を出力紙に転写するための転写ローラ、転写された画像を出力紙に定着させる定着ローラ等、多数のローラ状回転体が組み込まれ、これらローラ状回転体は、静止側の部材に装着された軸受によって回転自在に支持される。この種の軸受としては、転動体を介して相対回転可能に設けられた内輪および外輪を具備する転がり軸受を用いる場合がある(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平8−190270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の転がり軸受は、例えば、外輪を静止部材(例えば、現像剤が充填された現像槽)に固定すると共に、内輪をローラ状回転体の外周に嵌合し、両輪間に介在させた転動体を介して外輪と内輪とを相対回転可能とすることで、ローラ状回転体を静止部材に対して回転自在に支持する。このとき、軸部と内輪の間の締結強度が不十分であると両者間ですべりが生じて異音が発生したり、ローラ状回転体の軸部あるいは内輪が摩耗したりする等の問題が生じることから、軸部と内輪とは強固に結合一体化されるのが一般的である。しかしながら、軸部と内輪とを強固に結合一体化すると、内輪に対するローラ状回転体の組付け性や、ローラ状回転体の交換性(メンテナンス性)が悪いという問題が生じる。かかる問題は、例えば、転がり軸受に代えて樹脂製や焼結金属製のすべり軸受を用いることで解消し得るが、これらのすべり軸受が許容し得る負荷荷重は転がり軸受に比べて小さく、従って耐摩耗性(耐久寿命)の点で難がある。
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ローラ状回転体の組付け性やメンテナンス性が良好でありながら、異音や摩耗の問題を可及的に防止することができる画像形成装置用の転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明では、画像形成装置に組み込まれるローラ状回転体を支持するための転がり軸受であって、静止部材に固定される外輪と、外輪の内周に組み込まれた複数の転動体と、ローラ状回転体の軸部の外周に嵌合され、転動体を介して外輪に対して相対回転する内輪とを備えるものにおいて、内輪が、転動体の転送面を有する外径部と、内部気孔に潤滑流体を含浸させた多孔質体からなる内径部とを有し、かつ、軸部に対して相対回転可能に軸部の外周に嵌合されることを特徴とする画像形成装置用転がり軸受を提供する。
【0006】
上記構成によれば、内径部の内部気孔に含浸させた潤滑流体の滲み出しにより、内輪と、ローラ状回転体の軸部との間に常時潤沢な潤滑流体を介在させることができる。そのため、内輪が、ローラ状回転体の軸部に対して相対回転可能に嵌合され、内輪とローラ状回転体の軸部との間ですべりが生じ得る本発明の構成においても、内輪(の内径部)と軸部との間で良好な摺動潤滑状態が得られ、異音の発生や軸又は内輪の摩耗を可及的に防止することができる。一方、例えば内輪と軸部との間に両者が一体回転し得る程度の動摩擦力が生じる場合には、この種の転がり軸受の本来的な機能、すなわち内輪と外輪とが相対回転することにより、ローラ状回転体(の軸部)を静止側の部材に対して回転自在に支持することができる。
【0007】
また、本発明に係る転がり軸受は、内輪が、ローラ状回転体の軸部に対して相対回転可能に軸部の外周に嵌合される。これはすなわち、内輪を、組付け性や交換性が悪化しない程度の嵌め合いでもってローラ状回転体の軸部の外周に嵌合可能であることを意味し、従って、内輪に対するローラ状回転体の組付け性や交換性を、従来の転がり軸受に比べて高めることができる。なお、外径部と内径部の固定手段は任意であるが、コスト増を極力抑制する観点から出来るだけ簡易な手段が望ましく、例えば圧入固定が好適である。また、多孔質体からなる内径部は、焼結金属の多孔質体、多孔質樹脂、あるいはセラミックスで形成することができる。
【0008】
上記構成において、内径部に含浸させる潤滑流体をグリースとすれば、潤滑流体の飛散による周辺環境の汚染や油膜切れを可及的に防止することができる。グリースは、潤滑油等に比べ粘度が高く、保持性に優れる(流動性が低い)からである。
【0009】
油膜の形成を容易化して、所期の油膜剛性を確保する観点から、内径部のうち、少なくともローラ状回転体の軸部との接触領域には封孔処理を施しておくのが望ましい。封孔処理の手段に特段の限定はなく、例えば目潰し処理や樹脂被膜(樹脂層)を形成することが考えられる。
【0010】
内径部の内周両端には、内径部の軸方向中央部から離反する方向に内径寸法が漸次拡大する逃げ部を設けることができる。このようにすれば、内輪と軸部の間の揺動変位(調心移動)を許容することが可能となり、回転性能の安定化を図ることができる。また、軸部との接触面積が減少するため、内径部および軸部の摩耗を効果的に抑制あるいは防止することが可能となる。
【0011】
多孔質体からなる内径部は、アルミ青銅を主成分とする原料粉を用いて成形された焼結金属の多孔質体とするのが望ましい。焼結金属は多孔質樹脂に比べて高い耐摩耗性を具備すると共にセラミックスよりも安価であり、特にアルミ青銅は、焼結金属製の軸受の成形に一般的に用いられるその他の金属粉末、例えば銅や鉄に比べ摺動特性に優れるからである。これにより、軸部との間で繰り返し摺動接触が生じた場合でも、内径部の摩耗がより効果的に抑制あるいは防止される。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明ではさらに、画像形成装置に組み込まれるローラ状回転体を支持するための転がり軸受であって、静止部材に保持される外輪と、外輪の内周に組み込まれた複数の転動体と、ローラ状回転体の軸部の外周に嵌合され、転動体を介して外輪に対して相対回転する内輪とを備えるものにおいて、内輪が、軸部と周方向で相互に係合する係合部を有する画像形成装置用転がり軸受を提供する。
【0013】
このように、内輪が、軸部と周方向で相互に係合する係合部を有するものであれば、内輪と軸部の間の結合強度を緩和して良好な組付け性やメンテナンス性を確保しつつも、内輪と軸部とが周方向ですべることによって生じる弊害、すなわち異音や摩耗の問題が生じるのを可及的に防止することができる。なお、係合部の形態は任意であり、内輪の内径面を部分的にストレートな面に形成することによって得ることができる他、他所よりも内径側に突出した凸状部を形成することによって得ることができる。但しこの場合、軸部は、その断面形状が係合部の形状に概ね対応したものとするのが肝要である。
【発明の効果】
【0014】
以上に示すように、本発明に係る転がり軸受は、転がり軸受としての本来的な機能に加え、すべり軸受としての機能をも具備するものである。そのため、本発明によれば、ローラ状回転体の組付け性やメンテナンス性が良好でありながら、異音や摩耗の問題を可及的に防止することができる転がり軸受を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る転がり軸受を組み込んだ画像形成装置、より詳細には画像形成装置を構成する現像装置の要部を概念的に示す断面図である。同図に示す現像装置1は、トナー(現像剤)7が充填された現像槽5内に平行配置されたトナー攪拌ローラ2,3、現像ローラ4、および感光ドラム9を主要な構成として備える。各ローラ2,3,4は、それぞれ軸部6を有し、該軸部6を、現像槽5の内壁5aと外壁5bとの間に配設された転がり軸受10で支持することによって静止側の部材(ここでは現像槽5)に対して回転自在に支持される。各軸部6の端部は、外壁5bの外部に所定量突出しており、突出した端部にはプーリ等からなる回転駆動部7が一体的に設けられている。この回転駆動部7は、図示しない動力伝達ベルトと係合し、回転動力を各軸部6(ローラ2,3,4)に付与する役割を担う。各軸部6にはゴム製のシール部材8が取り付けられており、このシール部材8の一端に設けたシールリップを現像槽5の内壁5aに摺接させることで、現像槽5外へトナー7が漏れ出すのを、また転がり軸受10と軸部6との間にトナー7が侵入するのを防止するようにしている。
【0017】
次に、本発明の要旨である転がり軸受10を図2に基づいて詳述する。同図に示す転がり軸受10は、外輪11および内輪12と、外輪11と内輪12との間に介装された複数の転動体(例えば、ボール)15と、転動体15を円周方向等間隔で保持する図示しない保持器とで主要部が構成される。外輪11は現像槽5に取り付けられて静止側を構成し、内輪12はローラの軸部6の外周に嵌合されて可動側(回転側)を構成する。外輪11の内周面11aおよび内輪12の外周面12aには対をなすかたちで複数の転送面11a1,12a1が形成され、各転動体15は転送面11a1,12a1間で転動自在に保持されるようになっている。
【0018】
内輪12は、外周面12aに転動体15の転送面12a1が形成された外径部13と、外径部13の内周に配設された内径部14とからなり、本実施形態では、外径部13の内周に内径部14を圧入固定することにより、両者が結合一体化されている。外径部13は、例えばステンレス鋼等、高剛性の金属材料で形成される一方、内径部14は焼結金属の多孔質体からなり、その内部気孔には潤滑流体が含浸されている(含油焼結金属)。
【0019】
内輪12(内径部14)の内周面12bは軸線と平行な円筒面とされ、内周面12bのうち、少なくとも軸部6の外周面と接触する領域(本実施形態では内周面全体が接触可能である)には封孔処理が施されている。封孔処理の手法に特段の限定はなく、目潰し処理や樹脂被膜の形成といった公知の各種手法が採用可能であるが、本実施形態では内径部12の成形工程に含まれるサイジング工程において、内径部12の各所を所定形状および所定寸法に成形するのと同時に目潰し処理がなされることにより封孔処理が施される。
【0020】
内輪12は、軸部6に対して相対回転可能に軸部6に嵌合保持される。これを実現すべく、内輪12(内径部14)の内径寸法は、軸部6の外径寸法と同一か、もしくは若干量大径に形成される。
【0021】
ここで、上記構成からなる内輪12の製造方法を、内径部14の製造工程を中心に以下簡単に説明する。
【0022】
内輪12を構成する焼結金属製の内径部14は、主に、圧粉工程と、焼結工程と、サイジング工程と、潤滑流体の含浸工程とを順に経て製造される。詳細に述べると、まず圧粉工程では、原料粉を成形型内に充填し、これを圧縮成形することで完成品に略等しい形状の圧粉成形体を得る。本実施形態では、摺動特性に特に優れるアルミ青銅粉を主成分とし、これに必要に応じてSn等のバインダ、さらには黒鉛や二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を添加した原料粉を用いて圧粉成形体を成形する。もちろん、内径部14の成形に使用可能な金属粉は上記のアルミ青銅粉に限定されるわけではなく、鉄系あるいは銅系の金属粉末等、この種の軸受の製造に使用可能なその他の金属粉末を使用することも可能である。
【0023】
圧粉工程で得られた圧粉成形体は焼結工程に移送され、この焼結工程で、使用した金属粉末(ここではアルミ青銅)の焼結温度まで加熱することにより、密着する金属粉末同士を焼結結合させて焼結体を得る。このようにして得られた焼結体はサイジング工程に移送され、この工程で焼結体に対して適当な圧迫力を付与することにより、焼結体の各部が所定形状および所定寸法に成形され、またこれと同時に焼結体内周面の表面開孔が適当に封孔処理(目潰し処理)される。
【0024】
所定形状に形成された焼結体は潤滑流体の含浸工程に移送され、内部気孔に潤滑流体を含浸させることにより、完成品としての内径部14が得られる。潤滑流体としては、潤滑油あるいはグリースを使用することができ、本実施形態ではグリースを用いている。なお、使用可能なグリースに特段の限定はなく、例えば、リチウム石鹸−ジエステル系、リチウム石鹸−ポリαオレフィン系、リチウム石鹸−ジアルキルジフェニルエーテル系、リチウム石鹸−鉱油系、アルミニウム石鹸−鉱油系、ナトリウム石鹸−鉱油系、リチウム石鹸−ジエステル鉱油系、非石鹸−ジエステル系、非石鹸−鉱油系、非石鹸−ポリオールエステル系、リチウム石鹸−ポリオールエステル系等のグリースが使用可能である。
【0025】
以上の各工程を経て図2に示す内径部14が完成する。そして、この内径部14を機械加工や鍛造加工で別途形成した外径部13の内周に圧入することにより、完成品としての内輪12が得られる。
【0026】
本発明に係る転がり軸受10は以上の構成からなり、また以上のようにして製造される。そして各ローラの軸部6は、以下示す態様で転がり軸受10によって回転自在に支持される。
【0027】
まず、図示しない動力伝達ベルトが回転することによって、回転駆動部7を介して各軸部6(ローラ2,3,4)に回転動力が付与されると、各ローラの軸部6は、転がり軸受10によって回転自在に支持される。
【0028】
このとき、転がり軸受10の内輪12は、内径側領域を構成する内径部14が内部気孔に潤滑流体(グリース)を含浸させた焼結金属の多孔質体とされていることから、その内周に嵌合される軸部6との間に、常時潤沢な潤滑流体を介在させることができる。そのため、内輪12が、軸部6に対して相対回転可能に軸部6に嵌合保持され、内輪12と軸部6との間ですべりが生じることによって軸部6が回転自在に支持される場合であっても、内輪12と軸部6との間で良好な摺動潤滑状態が得られ、異音の発生や軸部6および内輪12(内径部14)の摩耗を可及的に防止することができる。また、内径部14が焼結金属製であることから、特に高い耐摩耗性を具備する
【0029】
特に本実施形態では、内径部14の内部気孔に含浸させる潤滑流体をグリースとしていることから、潤滑流体の飛散による周辺環境の汚染や油膜切れを可及的に防止することができることに加え、内径部14の内周面に封孔処理(目潰し処理)が施されていることから、油膜剛性を一層高めることができる。従って、軸部6を上記態様で安定的に支持することが可能となる。
【0030】
一方、内輪12と軸部6との間に両者が一体回転し得る程度の動摩擦力が生じる場合には、転がり軸受10の本来的な機能、すなわち内輪12と外輪11とが相対回転することにより、各ローラの軸部6は現像槽5に対して回転自在に支持される。以上のように、本発明に係る転がり軸受10は、転がり軸受としての本来的な機能に加え、すべり軸受としての機能をも具備するものであるから、異音や摩耗の問題が可及的に防止されて極めて長寿命であると共に、広範な用途に使用可能である。
【0031】
また、本発明に係る転がり軸受10は、前述のとおり、内輪12が、軸部6に対して相対回転可能に軸部6の外周に嵌合保持されていることから、各ローラの軸部6の挿入性、さらに言えば各種ローラ2の組付け性および交換性(メンテナンス性)を、従来の転がり軸受に比べて高めることができる。
【0032】
なお、内輪12を構成する内径部14の厚みが外径部13の厚みに比して過大となり、転動体15の転送面12a1を有する外径部13に必要とされる機械的特性(強度等)が不十分となると、外径部13(内輪12)に転がり荷重が負荷された場合等に変形が生じ、転がり軸受として機能しなくなる事態を招くおそれがある。かかる事態を防止するには、例えば、内輪12の内径寸法に応じて内径部14の厚みを調整するようにすれば良い。具体的に述べると、例えば内輪12の内径がφ3以下の場合、内径部14の厚みを0.5mm程度とすれば良い。この他、内輪12の内径がφ3よりも大きくφ8以下の場合には内径部14の厚みを1.0mm程度に、内輪12の内径がφ8よりも大きくφ15以下の場合には内径部14の厚みを1.5mm程度に、また内輪12の内径がφ15よりも大きい場合には内径部14の厚みを2.0mm以上とすれば良い。なお、これらの値はあくまでも目安であり、選択する材料等によって適宜変更可能である。
【0033】
図3は、本発明の第2実施形態に係る転がり軸受10を概念的に示す断面図である。同図に示す転がり軸受10は、内輪12(内径部14)の内周両端に、内径部14の軸方向中央部から離反する方向に内径寸法が漸次拡大するテーパ面状あるいは凸円弧面状(図示例はテーパ面状)の逃げ部12c,12cを設けた点において、図2に示す転がり軸受10と構成を異にする。かかる構成とすれば、内輪12と軸部6の間の揺動変位(調心移動)を許容することができ、各ローラ2,3,4の軸部6を一層安定的に支持することが可能となる。また、軸部6との接触面積が減少するため、内径部12あるいは軸部6の摩耗を効果的に抑制あるいは防止することができる。なお、これ以外の構成については、図2に示す第1実施形態と実質的に同一であるので、共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
【0034】
以上では、内輪12の内径部14を焼結金属の多孔質体で形成した転がり軸受10について説明を行ったが、内輪12の内径部14は、その他の多孔質体、例えば多孔質樹脂で形成することも可能である。多孔質樹脂は焼結金属に比べ耐摩耗性の面では若干劣るものの、製造コスト面では有利である。そのため、内径部14を焼結金属で形成しなければならない程の耐摩耗性が要求されない用途であれば、内径部14を多孔質樹脂で形成して、転がり軸受10の低コスト化を図ることも可能である。また、内輪12の内径部14は、セラミックスで形成することも可能である。
【0035】
図4は、本発明の第3実施形態に係る転がり軸受10を概念的に示す断面図(軸直交断面図)である。同図に示す転がり軸受10では、内輪12が、図2および図3に示す内輪12のような外径部および内径部の区別がなく金属材料で形成された一体品とされ、ローラの軸部6と周方向で相互に係合する係合部16を有する点において以上に示す転がり軸受10と構成を異にする。図示例では、内輪12の内周面12bの周方向一部領域に形成したストレートな平坦面でもって係合部16が構成される。また、内輪12は、嵌め合い隙間がゼロ、あるいは正の値でもって軸部6の外周に嵌合される。もちろんこの場合、軸部6のうち、少なくとも内輪12の内周に嵌合される軸方向領域における外周面形状は、係合部16の形態に適合したものとされる。以上のような構成とすれば、内輪12に対する軸部6の挿入性(組付け性やメンテナンス性)を良好なものとしつつ、内輪12と軸部6とが周方向ですべることによって生じる弊害、すなわち異音や摩耗の問題が生じるのを可及的に防止することができる。
【0036】
なお、図4では、内輪12内周面の周方向一部領域に設けたストレートな平坦面でもって係合部16を構成したが、内輪12と軸部6の間の周方向相対移動を規制できるのであれば係合部16の形態は任意である。例えば、係合部16は、内輪12の内周面の周方向一部領域に、他所よりも内径側に突出した凸状部を形成することによって構成することも可能である。
【0037】
以上では、本発明に係る転がり軸受10を、画像形成装置のうち、現像装置1に装備されるローラ状回転体(トナー攪拌ローラ2,3や現像ローラ4)の軸部支持用に用いた場合について説明を行ったが、本発明に係る転がり軸受10は、画像形成装置に装備されるその他のローラ状回転体、例えば、現像した画像を出力紙に転写するための転写ローラや、転写された画像を出力紙に定着させるための定着ローラ等の軸部支持用に用いることが可能であるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る転がり軸受を組み込んだ現像装置の要部を概念的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る転がり軸受を概念的に示す軸平行断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る転がり軸受を概念的に示す軸平行断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る転がり軸受を概念的に示す軸直交断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 現像装置
2,3 トナー攪拌ローラ
4 現像ローラ
5 現像槽
6 軸部
7 トナー(現像剤)
8 シール部材
10 転がり軸受
11 外輪
12 内輪
12a1 転送面
13 外径部
14 内径部
15 転動体
16 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に組み込まれるローラ状回転体を支持するための転がり軸受であって、静止部材に固定される外輪と、該外輪の内周に組み込まれた複数の転動体と、前記ローラ状回転体の軸部の外周に嵌合され、前記転動体を介して前記外輪に対して相対回転する内輪とを備えるものにおいて、
前記内輪が、前記転動体の転送面を有する外径部と、内部気孔に潤滑流体を含浸させた多孔質体からなる内径部とを有し、かつ、前記軸部に対して相対回転可能に前記軸部の外周に嵌合されることを特徴とする画像形成装置用転がり軸受。
【請求項2】
前記潤滑流体が、グリースである請求項1に記載の画像形成装置用転がり軸受。
【請求項3】
前記内径部のうち、少なくとも前記軸部との接触領域に封孔処理が施された請求項1又は2に記載の画像形成装置用転がり軸受。
【請求項4】
前記内径部の内周両端に、前記内径部の軸方向中央部から離反する方向に内径寸法が漸次拡大する逃げ部が設けられた請求項1〜3の何れかに記載の画像形成装置用転がり軸受。
【請求項5】
前記内径部が、アルミ青銅を主成分とする原料粉を用いて成形された焼結金属の多孔質体である請求項1〜4の何れかに記載の画像形成装置用転がり軸受。
【請求項6】
画像形成装置に組み込まれるローラ状回転体を支持するための転がり軸受であって、静止部材に保持される外輪と、該外輪の内周に組み込まれた複数の転動体と、前記ローラ状回転体の軸部の外周に嵌合され、前記転動体を介して前記外輪に対して相対回転する内輪とを備えるものにおいて、
前記内輪が、前記軸部と周方向で相互に係合する係合部を有する画像形成装置用転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−228700(P2009−228700A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71766(P2008−71766)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】