説明

画像形成装置

【課題】ロータリの駆動安定性を確保しつつロータリの位置決めする際の静穏化を実現することができ、かつ部品の高精度化を追求せずにロータリの停止位置精度を向上する。【解決手段】ソレノイド29のオンで、その励磁力で揺動ブラケット25が回動軸23aを中心に時計回りに回動し、第2弾性摩擦部材26cが第1弾性摩擦部材24cから離間する。これにより、ロック手段21は非ロック位置となり、ロータリー13のロック解除状態となる。ソレノイド29のオフで、付勢ばね27ので付勢力で揺動ブラケット25が回動軸23aを中心に反時計回りに回動し、第2弾性摩擦部材26cが第1弾性摩擦部材24cに当接する。これにより、ロック手段21はロック位置となり、ロータリー13のロック状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリに装着された複数の現像器により、フルカラー等の2色以上の多色現像を行うロータリ現像方式の現像装置を備えた、静電複写機やプリンタ等の画像形成装置の技術分野に関しし、特に、潜像担持体に対して複数の現像器の現像剤担持体を選択的に現像位置に設定するようにロータリを所定位置に位置決めしてロックするロック手段を備えている画像形成装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、ロータリに装着された複数の現像器により、フルカラー等の2色以上の多色現像を行う現像装置を備えた画像形成装置が種々開発されている。この画像形成装置は、画像形成動作時にロータリを回転させて各現像器の現像ローラを順次現像位置に設定して感光体の潜像を各色毎に順次現像して画像を形成するようになっている。
【0003】
ロータリを所定位置に順次位置決めしてロックする方法として、ロータリを回転するための駆動モータのホールド力を利用するのが最も単純であるが、ホールド時の駆動モータの消費電力やホールド性等を考慮すると、駆動モータのホールド力に頼らず、何らかの機械的手段でロータリの位置決めをすることが望ましい。そこで、従来は、画像形成装置本体に設けられたレバーの凸部または凹部をロータリの凹部または凸部にそれぞれ係合させることで、ロータリを機械的に位置決めすることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
これらの特許文献1に開示の機械的なロータリの位置決め手段は、レバーに設けられた凸部であるストップローラがロータリーに一体的に回転可能に設けられたカムの凹溝に付勢ばねの付勢力で係合することによりロータリが機械的に位置決めるとともに、カムのカムプロファイルでストップローラをカムの凹溝から脱出させることによりロータリが位置決め解除されるようになっている。また、特許文献2に開示の機械的なロータリの位置決め手段は、レバーに設けられた凹部がロータリーに一体に設けられ凸部に付勢ばねの付勢力で係合することによりロータリが機械的に位置決めるとともに、ソレノイドの励磁力でレバーの凹部をロータリーの凸部から脱出させることによりロータリが位置決め解除されるようになっている。
【特許文献1】[特公平7−117784号公報]
【特許文献2】[特開2004−145272号公報]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1および2に開示の機械的なロータリの位置決め手段では、回転するロータリを位置決めするためにレバーがロータリに係合する際、ロータリとレバーとの衝突音が発生する。特に、近年の画像形成速度の高速化に伴い、ロータリの切替回転速度も高速化しているとともに、レバーのロータリーとの係合位置と係合解除位置との間での切り換え動作も迅速化しているため、ロータリとレバーとの衝撃が大きくなり、衝撃による衝突音が無視できない状況であるという問題がある。
【0006】
このため、緩衝材等のダンパーを用いることで衝撃を緩和し、衝突音を低減することが考えられる。しかし、このようなダンパーを用いた場合、複数の現像器内にトナー残量の不均衡やいくつかの現像器のロータリー内への未装着等によって生じるロータリーの偏荷重、あるいは現像時の現像駆動反力等によってロータリーに発生するモーメント等でロータリーが捻られた状態で、レバーをロータリーとの係合から解除するため移動させようとすると、レバーとロータリーとの係合解除方向の表面摩擦が増加することにより、レバーをロータリーとの係合から解除する力が大きくなってしまい、ロータリの駆動安定性がその影響を受けるという問題が生じる。
【0007】
しかも、ロータリ駆動部におけるモータの駆動力をロータリーに伝達する歯車動力伝達機構のバックラッシュと慣性とによって生じる歯車の弾性変形により、ロータリーの回転停止位置ずれが生じるが、この回転停止位置ずれを許容するためレバーおよびロータリの凹凸部(係合部)にクリアランス(係合がた)を持たせなければならない。しかし、モータの停止後に、ロータリが前述の偏荷重によりこのモータ停止で停止した位置から前述の係合がた分不定に動いた位置に停止する。このため、係合がたを大きく取り過ぎると、ロータリの停止位置がそれだけ大きくずれてしまい、特にロータリ駆動モータに多用されているステッピングモータの場合には、モータが次の起動時に脱調するおそれがある。具体的には、ロータリーの軸上の換算角度として、ロータリー停止位置角度誤差をδ、ロータリ駆動部のバックラッシュをB、ストップ手段の係合がたをs、ロータリ駆動減速比をn、および駆動モータステップ角をθとすると、
δ = B+s < n×θ
を満足しなければならない。しかし、これを満足させるためには、前述のクリアランスを小さくする必要があるが、そのためには、レバーおよびロータリの凹凸部の寸法公差を厳しく設定しなければならないだけでなく、凹凸部の係合不良が生じたり、前述のロータリーの捻れによりレバーの係合解除時の移動力が増大したりする。
【0008】
このように、レバーとロータリーとの係合制御を行うソレノイドの制御とロータリー回転制御を正確に合わせ込んだり、部品の寸法公差を厳しく設定したりするなど、ロータリの停止位置精度を確保するための調整が必要でありかつレバーおよびロータリー等の部品の高精度化を図る必要があるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ロータリの駆動安定性を確保しつつロータリの位置決めする際の静穏化を実現することができ、しかも、部品の高精度化を追求することなくロータリの停止位置精度を向上することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、回転可能に設けられかつ複数の現像器を搭載するロータリーと、このロータリーを回転駆動する駆動源と、前記現像器を選択的に所定位置に設定するために前記ロータリーを位置決めしかつこの位置決め位置にロックするロック手段とを備え、前記ロック手段により前記ロータリーを位置決めすることで前記複数の現像器のうち1つの現像器を選択的に像担持体に対向する現像位置に設定し、この現像位置に設定された現像器により前記像担持体上の潜像を現像するようになっている画像形成装置において、前記ロック手段が、画像形成装置本体に前記ロータリの回転に連動して回転するようにかつ位置が固定されて設けられた第1歯車と、この第1歯車と同心でかつ一体的に回転する第1弾性摩擦部材と、前記画像形成装置本体に前記ロータリの回転に連動しかつ前記第1歯車の回転方向と同じ回転方向に回転するようにかつ揺動可能に設けられた第2歯車と、この第2歯車と同心でかつ一体的に回転するようにかつ前記第1弾性摩擦部材に離接可能に設けられた第2弾性摩擦部材と、この第2弾性摩擦部材を前記第1弾性摩擦部材に対して離接制御する離接制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2の発明は、前記駆動源の駆動力が伝達されるロータリー歯車が前記ロータリーと一体的に回転可能に設けられ、このロータリー歯車に前記第1および第2歯車がともにアイドラ歯車を介して常時回転接続されていることを特徴としている。
更に、請求項3の発明は、前記駆動源の駆動力が歯車動力伝達機構を介して前記ロータリーに伝達されるようになっており、前記第1歯車が、前記歯車動力伝達機構の歯車であることを特徴としている。
更に、請求項4の発明は、前記離接制御手段が、オン時に前記第2弾性摩擦部材を前記第1弾性摩擦部材から離間させるソレノイドと、このソレノイドのオフ時に前記第2弾性摩擦部材を前記第1弾性摩擦部材に当接させる付勢ばねとからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の画像形成装置によれば、ロータリのロック状態およびロック解除状態を、それぞれ第2弾性摩擦部材の第1弾性摩擦部材への圧接および第2弾性摩擦部材の第1弾性摩擦部材からの離間により設定しているので、ロータリの位置決めおよびロックを簡単に行うことができる。
【0013】
その場合、第1および第2弾性摩擦部材の回転方向を同じに設定していることから、第1および第2弾性摩擦部材の圧接部において、第1弾性摩擦部材の接線方向の移動と第2弾性摩擦部材の接線方向の移動とが互いに逆向きとなるため、第1および第2弾性摩擦部材間の摩擦力を、例えば一般的な摩擦ブレーキのように回転しない摩擦材を回転する第1弾性摩擦部材に単純に圧接する場合に比べてはるかに大きくなる。したがって、大きなロック力が得られ、ロータリーのロックを確実なものにすることができる。これにより、ロータリーの停止位置精度を向上することができる。
【0014】
更に、第2弾性摩擦部材を第1弾性摩擦部材に圧接するだけであるので、ロータリの位置決め停止時の衝撃を小さくできるので、衝撃による衝突音を低減することができる。特に、互いに係合する2つの部材が弾性摩擦部材であることから、衝突音をより効果的に低減することができる。
これにより、近年の画像形成速度の高速化に伴い、ロータリの切替回転速度の高速化の要求およびロータリーのロック位置とロック解除位置との間での切り換え動作の迅速化の要求にも、大きな衝撃および大きな衝突音を発生させることなく柔軟に対応することができる。
【0015】
更に、第2弾性摩擦部材を第1弾性摩擦部材に単に当接させかつを第1弾性摩擦部材から単に離間させるだけであるので、各現像器内のトナー残量の不均衡やいくつかの現像器のロータリー内への未装着等によって生じるロータリーの偏荷重、あるいは現像時の現像駆動反力等によってロータリーに発生するモーメント等でロータリーが捻られた状態でロータリーをロック解除する際、第1弾性摩擦部材と第2弾性摩擦部材との間に、第2弾性摩擦部材が第1弾性摩擦部材から離間する方向の表面摩擦が増加することはなく、第2弾性摩擦部材を第1弾性摩擦部材との係合から解除する力を小さくすることができ、ロータリーの駆動安定性を確保することができる。
【0016】
しかも、ロータリの停止位置精度を高精度にできることから、この停止位置精度を確保するための調整を不要にできる。したがって、ロータリの停止位置精度を確保するための調整を不要にできるので、ロック手段およびロータリー等の各部品の精度をそれほど高精度にしなくても済ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明の画像形成装置の実施の形態の一例を概略的に示す図、図2はこの例の画像形成装置に用いられているロータリー式現像装置を模式的に示す図である。
【0018】
図1に示すように、この例の画像形成装置1は、概略的には、露光装置2、ロータリー式現像装置3、露光装置2によって露光されて静電潜像が形成されるとともにこの静電潜像がロータリー式現像装置3からのトナーによって現像されて可視像化されたトナー像が形成される感光体4、無端状の転写ベルトからなる中間転写媒体5、感光体4上のトナー像を中間転写媒体5に一次転写する一次転写装置6、中間転写媒体5上に一次転写されたトナー像を紙等の記録媒体(以下、紙を例に説明する)7に二次転写する二次転写装置8、給紙カセット9に収容された紙7を給紙ローラ10aで二次転写装置8に給送する給紙装置10、紙7に二次転写されたトナー像を定着する定着ユニット11、および定着ユニット11で定着されて所定の画像が形成された紙7を収容する排紙トレイ12からなっている。
【0019】
図2に示すように、ロータリー式現像装置3は、回転可能に設けられたロータリーフレーム13aを有するロータリー13と、このロータリー13に搭載されかつ現像カートリッジで構成された、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒(K)の各現像器14,15,16,17とを備えている。
【0020】
図2において、各現像器14,15,16,17はロータリー13の周方向にこれらの順に時計回りでかつ等間隔で配設されており、それぞれ、現像ローラ14a,15a,16a,17aと、各現像ローラ14a,15a,16a,17aにそれぞれそれらと同軸にかつそれらと一体回転可能に設けられた現像ローラ駆動歯車14b,15b,16b,17bと、図示しない現像器駆動モータの駆動力が入力される入力歯車14c,15c,16c,17cと、各入力歯車14c,15c,16c,17cに入力された現像器駆動モータの駆動力をそれぞれ対応する各現像ローラ駆動歯車14b,15b,16b,17bに減速して伝達する歯車動力伝達機構14d,15d,16d,17dとを備えている。なお、図示しないが、各現像器14,15,16,17は、それぞれ、従来と同様にトナー貯溜部、トナー貯溜部のトナーを現像ローラ14a,15a,16a,17aに供給するトナー供給手段、および感光体4に搬送される現像ローラ14a,15a,16a,17a上のトナーの薄層を規制するトナー規制手段等を備えていることは言うまでもない。
【0021】
また、ロータリー13の軸方向(図1および図2の図面に直交する方向)の一端側においてこのロータリー13の外周に近接して、現像器駆動モータからの駆動力が伝達されかつこの駆動力を入力歯車14c,15c,16c,17cの1つに選択的に噛合して伝達可能な現像駆動出力歯車18が回転可能に設けられている。この現像駆動出力歯車18は図示しない歯車動力伝達機構を介して同じく図示しない現像器駆動駆動モータに接続されており、この現像器駆動駆動モータの駆動力が歯車動力伝達機構で減速されて現像駆動出力歯車に伝達されるようになっている。
【0022】
更に、現像駆動出力歯車18には、ワンウェイクラッチが内蔵されている。そして、後述するロータリー13を駆動する際には、現像駆動出力歯車18と現像駆動入力歯車14c,15c,16c,17cのいずれかが噛み合ったとしても、ワンウェイクラッチがロータリー13の回転方向に対応する回転方向に対しては空転することにより現像駆動入力歯車14c,15c,16c,17cには駆動力が伝達されない。また、現像器14,15,16,17のいずれかを選択的に駆動する(すなわち、現像動作をさせる)際には、ワンウェイクラッチが現像方向に対応する回転方向に対してはロック(接続)することにより、現像駆動入力歯車14c,15c,16c,17cの選択された現像駆動入力歯車に駆動力が伝達されるようになっている。
【0023】
更に、ロータリー13の同じく軸方向の一端側においてロータリー歯車19がこのロータリー13と同軸にかつこれと一体的に回転可能に設けられるとともに、このロータリー歯車19に噛合しかつ後述する図3に示すロータリー駆動モータ30からの駆動力が伝達されるロータリー駆動出力歯車20が回転可能に設けられている。このロータリー駆動出力歯車20は図示しない歯車動力伝達機構を介してロータリー駆動モータ30に接続されている。そして、ロータリー駆動モータ30の駆動力が歯車動力伝達機構で減速されてロータリー駆動出力歯車20に伝達されるようになっている。
なお、前述の現像器駆動駆動モータとロータリー駆動モータとを共通の1つの駆動モータで構成することもできる。
【0024】
このように構成されたロータリー式現像装置3は、ロータリー13が図2に矢印で示すように反時計回りに90度ずつ回転駆動されることで、各現像器14,15,16,17がこれらの順に感光体4に対向する現像位置に設定されて、感光体4上の静電潜像を各色毎に順次トナー像に現像する。
【0025】
ところで、各現像器14,15,16,17がそれぞれ現像位置に設定されて現像動作を行う際には、ロータリー13を現像位置に停止させる、つまりロック位置に位置決めし、かつそのロック位置に保持しなければならない。また、現像位置以外の位置にも、同じくロータリー13を所定のロック位置に位置決めし、かつそのロック位置に保持する必要がある。
【0026】
そこで、この例の画像形成装置1では、図3に示すようにロータリー13の軸方向の一端側に、ロータリー13を所定のロック位置に位置決めしかつそのロック位置に保持するロック手段21が設けられている。このロック手段21は、画像形成装置本体に固定された固定ブラケット22と、この固定ブラケット22に回転軸23aで回転可能に支持されかつロータリー歯車19に常時噛合するアイドル歯車23と、同じく固定ブラケット22に回転軸24aで回転可能にかつ取付位置が固定されて支持されるとともにアイドル歯車23に常時噛合する第1ロック作動歯車(本発明の第1歯車に相当)24bおよびこの第1ロック作動歯車24bと同心でかつ一体的に回転する第1弾性摩擦部材24cとを有する第1ロック作動機構24と、アイドル歯車23の回転軸23aを中心に揺動可能に設けられた揺動ブラケット25と、この揺動ブラケット25に回転軸26aで回転可能に支持されかつアイドル歯車23に常時噛合する第2ロック作動歯車(本発明の第2歯車に相当)26bおよびこの第2ロック作動歯車26bと同心でかつ一体的に回転するとともに第1弾性摩擦部材24cに離接可能に設けられた第2弾性摩擦部材26cとを有する第2ロック作動機構26と、固定ブラケット22および揺動ブラケット25間に縮設されて第2弾性摩擦部材26cが第1弾性摩擦部材24cに当接する方向(つまり、図3において反時計回り)に揺動ブラケット25を付勢する付勢ばね27と、画像形成装置本体に回動可能に設けられた揺動ブラケット25を回動するレバー28と、このレバー28を作動するソレノイド29とからなっている。
【0027】
なお、図3において、30はロータリー13の駆動源である例えばステッピングモータからなるロータリー駆動モータであり、このロータリー駆動モータ30の駆動力が図示しない歯車動力伝達機構を介してロータリー駆動出力歯車20に伝達されて、このロータリー駆動出力歯車20が回転することでロータリー13が回転駆動されるようになる。
そして、この例の画像形成装置1では、第1および第2ロック作動歯車24b,26bがともにアイドラ歯車23を介してロータリー歯車19に常時回転接続されて、ロータリー13に回転に連動してロータリー13と同方向に回転する。
【0028】
このロック手段21においては、図3に示すようにソレノイド29がオン(励磁)されたときは、このソレノイド29はその励磁力でレバー28を反時計回りに回動させる。すると、揺動ブラケット25はこのレバー28の回転力で付勢ばね27の付勢力に抗して回動軸23aを中心に時計回りに回動するので、第2弾性摩擦部材26cが第1弾性摩擦部材24cからこの第1弾性摩擦部材24cの径方向に離間し、ロック手段21は非ロック位置となる。このとき、第2弾性摩擦部材26cおよび第2ロック作動歯車26bがアイドル歯車23の回動軸23aを中心に時計回りに回動するので、第2ロック作動歯車26bとアイドル歯車23との噛合は維持されている。
これにより、第1および第2ロック作動歯車24b,26bはともに自由になるので、アイドル歯車23も回転自由となる。したがって、ロータリー13は回転可能となり、ロータリー13のロック解除状態となる。
【0029】
また、図4に示すようにソレノイド29がオフ(非励磁)されたときは、このソレノイド29はレバー28に励磁力を作用しない。すると、揺動ブラケット25は付勢ばね27の付勢力で回動軸23aを中心に反時計回りに回動するので、第2弾性摩擦部材26cが第1弾性摩擦部材24cにこの第1弾性摩擦部材24cの径方向に当接し、ロック手段21はロック位置となる。このとき、第2弾性摩擦部材26cおよび第2ロック作動歯車26bがアイドル歯車23の回動軸23aを中心に反時計回りに回動するので、第2ロック作動歯車26bとアイドル歯車23との噛合は維持されている。そして、ロータリー13が、例えば反時計回りに回転しようとすると、アイドル歯車23が時計回りに回転しようとするとともに、第1および第2ロック作動歯車24b,26bがともに反時計回りに回転しようとする。しかし、第2弾性摩擦部材26cが第1弾性摩擦部材24cに付勢ばね27の付勢力で圧接しているため、第1および第2弾性摩擦部材24c,26c間の摩擦力で第1および第2ロック作動歯車24b,26bがともに回転不能となっている。このため、第1および第2ロック作動歯車24b,26bがともに回転しないので、アイドル歯車23も回転不能となる。したがって、ロータリー13も回転不能となり、ロータリー13のロック状態となる。
【0030】
このとき、第1および第2弾性摩擦部材24c,26cの圧接部においては、第1弾性摩擦部材24cの接線方向の移動と第2弾性摩擦部材26cの接線方向の移動とが互いに逆向き(カウンター方向)となっていて摺擦方向となっているため、第1および第2弾性摩擦部材24c,26c間の摩擦力は、例えば一般的な摩擦ブレーキのように回転しようとしない摩擦材を第2弾性摩擦部材26cに単純に圧接する場合に比べてはるかに大きくなる。したがって、大きなロック力が得られ、ロータリー13のロックは確実なものとなる。
また、ロータリー13の停止位置誤差は、歯車動力伝達機構の歯車のバックラッシュによる変位角内となるので、前述の特許文献1および2に開示されているようなレバーの凹凸嵌合方式における凹凸部材の高精度化の要求や部品の組立調整を必要とすることなく、ロータリー13の停止位置を高精度に設定することができる。
【0031】
更に、このロック手段21によるロック機能は可逆であるので、第1および第2弾性摩擦部材24c,26cが互いに圧接されたロック手段21のロック位置では、ロータリー13が逆に時計回りに回転しようとしたときも、ロータリー13が回転不能となり、ロータリー13のロック状態となる。したがって、ロック手段21がロック位置にあるときは、例えば4つの現像器内にトナー残量の不均衡やいくつかの現像器のロータリー13内への未装着等によって生じるロータリー13の偏荷重、あるいは現像時の現像駆動反力等によってロータリー13にモーメントが発生し、ロータリー13が正転(反時計回り;つまり、現像動作時の回転方向)または逆転しようとしても、確実にロック状態に保持される。
このようにして、ソレノイド29と付勢ばね27とにより、第1および第2弾性摩擦部材を離接制御する本発明の離接制御手段が構成されている。
【0032】
次に、各現像器14,15,16,17を切り換えてそれぞれ現像位置に設定するために、ロック手段21によりロータリー13を現像位置に対応するロック位置へ位置決めする動作について説明する。
いま、図1および図2に示すようにイエロー(Y)の現像器14が現像位置に設定され、ロータリー13が図4に示すロック状態に設定されているとする。現像器14によるイエロー(Y)の現像が終了すると、まず、ロータリー駆動モータ30を駆動した後、図3に示すようにソレノイド29をオンして第2弾性摩擦部材26cを第1弾性摩擦部材24cから離間させてロータリー13のロックを解除する。
【0033】
すると、ロータリー駆動モータ30の駆動力でロータリー13が反時計回りに回転駆動する。このとき、アイドル歯車23に噛合している第1および第2ロック作動歯車24b,26bがともに回転自由となっているため、アイドル歯車23も自由に回転可能となっており、ロータリー13の回転でこれらのアイドル歯車23、第1および第2ロック作動歯車24b,26bがともに空回転するだけであるので、ロータリー13はアイドル歯車23、第1および第2ロック作動歯車24b,26bに影響されることなくスムーズに回転する。
【0034】
ロータリー駆動モータ30が90度回転してロック位置になると、制御装置がソレノイド29をオフして付勢ばね27の付勢力で第2弾性摩擦部材26cを第1弾性摩擦部材24cに圧接させる。第2弾性摩擦部材26cが第1弾性摩擦部材24cに完全に当接するのに十分な時間が経過した後、制御装置がロータリー駆動モータ30を停止する。これにより、ロータリー13はロック位置に停止しかつそのロック状態が保持される。このロータリー13のロック位置では、次のマゼンタ(M)の現像器15が現像位置に設定される。以下、同様にしてロータリ13のロック状態およびロック解除状態が設定されかつロータリ13の回転駆動が制御されることで、シアン(C)の現像器16およびブラック(K)の現像器17が順次現像位置に設定される。
なお、ロック手段21によるロータリー13のロック位置の設定は、現像機の現像位置に限らず、所望する所定位置にロータリー13をロックする場合にも行うことができる。
【0035】
この例の画像形成装置1によれば、ロータリー式現像装置3のロータリ13のロック状態およびロック解除状態を、それぞれ第2弾性摩擦部材26cの第1弾性摩擦部材24cへの圧接および第2弾性摩擦部材26cの第1弾性摩擦部材24cからの離間により設定しているので、ロータリ13の位置決めおよびロックを簡単に行うことができる。
【0036】
このとき、第1および第2弾性摩擦部材24c,26cの回転方向が同じに設定されていることから、第1および第2弾性摩擦部材24c,26cの圧接部において、第1弾性摩擦部材24cの接線方向の移動と第2弾性摩擦部材26cの接線方向の移動とが互いに逆向き(カウンター方向)となっているため、第1および第2弾性摩擦部材24c,26c間の摩擦力を、例えば一般的な摩擦ブレーキのように回転しない摩擦材を第1弾性摩擦部材24cに単純に圧接する場合に比べてはるかに大きくなる。したがって、大きなロック力が得られ、ロータリー13のロックを確実なものにすることができる。これにより、ロータリー13の停止位置精度を向上することができる。
【0037】
更に、第2弾性摩擦部材26cを第1弾性摩擦部材24cに圧接するだけであるので、ロータリ13の位置決め停止時の衝撃を小さくできるので、衝撃による衝突音を低減することができ、静穏化を実現することができる。特に、互いに係合する2つの部材が弾性摩擦部材であることから、衝突音をより効果的に低減することができる。
これにより、近年の画像形成速度1の高速化に伴い、ロータリ13の切替回転速度の高速化の要求およびロータリー13のロック位置とロック解除位置との間での切り換え動作の迅速化の要求にも、大きな衝撃および大きな衝突音を発生させることなく柔軟に対応することができる。
【0038】
更に、第2弾性摩擦部材26cを第1弾性摩擦部材24cにこの第1弾性摩擦部材24cの径方向に当接させかつを第1弾性摩擦部材24cからこの第1弾性摩擦部材24cの径方向に離間させているので、各現像器14,15,16,17内のトナー残量の不均衡やいくつかの現像器のロータリー13内への未装着等によって生じるロータリー13の偏荷重、あるいは現像時の現像駆動反力等によってロータリー13に発生するモーメント等でロータリーが捻られた状態でロータリー13をロック解除する際、第1弾性摩擦部材24cと第2弾性摩擦部材26cとの間に、第2弾性摩擦部材26cが第1弾性摩擦部材24cから離間する方向の表面摩擦が増加することはなく、第2弾性摩擦部材26cを第1弾性摩擦部材24cとの係合から解除する力を小さくすることができ、ロータリー13の駆動安定性を確保することができる。
【0039】
しかも、ロータリ13の停止位置精度を高精度にできることから、この停止位置精度を確保するための調整を不要にできる。したがって、ロック手段21およびロータリー13等の各部品の精度をそれほど高精度にしなくても済ませることができる。
【0040】
図5は本発明の実施の形態の他の例を示し、ロータリーのロック解除状態を示す図3と同様の図であり、図6はこの例におけるロータリーのロック状態を示す図4と同様の図である。なお、前述の例と同じ構成要素には同じ符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
【0041】
前述の図3および図4に示す例では、ロック手段21にアイドル歯車23と第1ロック作動機構24の第1ロック歯車24bとの専用の部品を用いているが、図5および図6に示すようにこの例の画像形成装置1では、アイドル歯車23に代えて既存のロータリー駆動出力歯車20を用いているとともに、第1ロック歯車24bに代えて、第1ロック作動機構31の第1ロック歯車として、ロータリー駆動モータ30とロータリー駆動出力歯車20との間の歯車動力伝達機構の歯車でありかつロータリー駆動出力歯車20に常時噛合する既存のモータピニオン31bを用いている。この例の場合、固定ブラケット22に、ロータリー駆動出力歯車20が回転軸20aにより回転可能に、またモータピニオン31bが回転軸31aにより、それぞれ回転可能に設けられている。
【0042】
また、第1ロック作動機構31は、モータピニオン31bと同心でかつ一体的に回転する第1弾性摩擦部材31cを備えている。更に、第2ロック作動機構26の第2ロック歯車26bを回転可能に支持する揺動ブラケット25がロータリー駆動出力歯車20の回転軸20aを中心に回動可能に支持されているとともに、第2ロック歯車26bがロータリー駆動出力歯車20に常時噛合している。
この例の第1ロック作動機構31の第1弾性摩擦部材31cと第2ロック作動機構26の第2弾性摩擦部材26cは、前述の例の第1弾性摩擦部材24cと第2弾性摩擦部材26cの作用と同じ作用を行うようになっている。
【0043】
この例の画像形成装置1によれば、前述の例のアイドル歯車23および第1ロック歯車24bのような専用の部品を用いずに、既存のロータリー駆動出力歯車20およびモータピニオン31bを用いているので、部品点数を削減することができるとともに、ロータリー式現像装置3をコンパクトにかつ安価に形成することができる。
この例の画像形成装置1の他の構成、他の動作および他の作用効果は、前述の例と同じである。
【0044】
なお、前述の各例では、第1および第2ロック歯車24b,26bがいずれもロータリ駆動歯車19に直接噛合していないが、これらの第1および第2ロック歯車24b,26bをともにロータリ駆動歯車19に直接噛合させるようにすることもできる。この場合には、揺動ブラケット25をロータリ13の回転軸(不図示)に揺動可能に設ければよい。
【0045】
また、前述の例では、いずれもロータリ駆動歯車19に常時噛合するアイドル歯車23あるいはロータリー駆動出力歯車20と、これらのそれぞれ常時噛合する第1ロック歯車としての第1ロック歯車24bあるいはモータピニオン31bを用いているが、例えば、アイドル歯車としてロータリー駆動出力歯車20に常時噛合するモータピニオン31bを用い、第1ロック歯車としてこのモータピニオン31bに常時噛合するもう1つのモータピニオンを用いるなど、歯車動力伝達機構の歯車のみを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の画像形成装置は、ロータリに装着された複数の現像器により、フルカラー等の2色以上の多色現像を行うロータリ現像方式の現像装置を備えるとともに、潜像担持体に対して複数の現像器の現像剤担持体を選択的に現像位置に設定するようにロータリを所定位置に位置決めしてロックするロック手段を備えている、静電複写機やプリンタ等の画像形成装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の画像形成装置の実施の形態の一例を概略的に示す図である。
【図2】この例の画像形成装置に用いられているロータリー式現像装置を模式的に示す図である。
【図3】この例の画像形成装置におけるロータリーのロック解除状態を示す図である。
【図4】この例の画像形成装置におけるロータリーのロック状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の他の例を示し、ロータリーのロック解除状態を示す図3と同様の図である。
【図6】この例の画像形成装置におけるロータリーのロック状態を示す図4と同様の図である。
【符号の説明】
【0048】
1…画像形成装置、2…露光装置、3…ロータリー式現像装置、4…感光体、5…中間転写媒体、6…一次転写装置、7…記録媒体、8…二次転写装置、10…給紙装置、11…定着ユニット、13…ロータリー、14,15,16,17…イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒(K)の各現像器、19…ロータリー歯車、20…ロータリー駆動出力歯車、21…ロック手段、22…固定ブラケット、23a…回転軸、23…アイドル歯車、24,31…第1ロック作動機構、24b,31b…第1ロック作動歯車、24c,31c…第1弾性摩擦部材、25…揺動ブラケット、26…第2ロック作動機構、26b…第2ロック作動歯車、26c…第2弾性摩擦部材、27…付勢ばね、28…レバー、29…ソレノイド、30…ロータリー駆動モータ、31…第1ロック作動機構、31b…モータピニオン、31c…第1弾性摩擦部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられかつ複数の現像器を搭載するロータリーと、このロータリーを回転駆動する駆動源と、前記現像器を選択的に所定位置に設定するために前記ロータリーを位置決めしかつこの位置決め位置にロックするロック手段とを備え、前記ロック手段により前記ロータリーを位置決めすることで前記複数の現像器のうち1つの現像器を選択的に像担持体に対向する現像位置に設定し、この現像位置に設定された現像器により前記像担持体上の潜像を現像するようになっている画像形成装置において、
前記ロック手段は、画像形成装置本体に前記ロータリの回転に連動して回転するようにかつ取付位置が固定されて設けられた第1歯車と、この第1歯車と同心でかつ一体的に回転する第1弾性摩擦部材と、前記画像形成装置本体に前記ロータリの回転に連動しかつ前記第1歯車の回転方向と同じ回転方向に回転するようにかつ揺動可能に設けられた第2歯車と、この第2歯車と同心でかつ一体的に回転するようにかつ前記第1弾性摩擦部材に離接可能に設けられた第2弾性摩擦部材と、この第2弾性摩擦部材を前記第1弾性摩擦部材に対して離接制御する離接制御手段とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動源の駆動力が伝達されるロータリー歯車が前記ロータリーと一体的に回転可能に設けられ、このロータリー歯車に前記第1および第2歯車がともにアイドラ歯車を介して常時回転接続されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動源の駆動力が歯車動力伝達機構を介して前記ロータリーに伝達されるようになっており、前記第1歯車は、前記歯車動力伝達機構の歯車であることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記離接制御手段は、オン時に前記第2弾性摩擦部材を前記第1弾性摩擦部材から離間させるソレノイドと、このソレノイドのオフ時に前記第2弾性摩擦部材を前記第1弾性摩擦部材に当接させる付勢ばねとからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−126596(P2006−126596A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316155(P2004−316155)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】