説明

画像形成装置

【課題】 中間転写体からの転写時のトナー中抜けに強く、かつ中間転写体のブレードクリーニング性も良く、簡易な機械構成で、中間転写体に塗布する滑剤種の選択範囲を広くとれる画像形成装置の提供である。
【解決手段】 2次転写後の中間転写体5をクリーニングする中間転写体クリーニング手段と、感光体1表面に滑剤8を塗布する感光体用滑剤塗布手段9,10と、中間転写体に滑剤を塗布する中間転写体滑剤塗布手段17とを備える画像形成装置であって、前記感光体滑剤塗布手段で塗布する第1の滑剤と、前記中間転写体滑剤塗布手段で塗布する第2の滑剤とは、異なった滑剤を用い、前記第1の滑剤の塗布後の感光体表面の表面摩擦係数が、前記第2の滑剤塗布後の中間転写体表面の表面摩擦係数よりも小さくしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真技術を用いた画像形成装置に係り、特に、中間転写体を用いて転写工程を行う中間転写方式の画像形成装置の感光体、中間転写体に塗布する滑剤を好適に使用した画像形成装置の発明に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2色以上の多色画像やフルカラー画像を形成できる電子写真方式の画像形成装置(カラー複写機、カラープリンター、カラーファクシミリ等)が実用化されている。このような画像形成装置において、例えば、フルカラー画像の転写材への転写方式としては、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色トナーによる画像を感光体等の像担持体上に色毎に形成し、この各色の現像画像を中間転写体上に順次重ね合わせて一次転写し、中間転写体上にフルカラー画像を形成した後、フルカラーのトナー像を一括して記録紙等の転写材に二次転写する中間転写方式のものが知られている。近年、生産性の観点から、感光体を各色用に4つもち、それらで作成した各色のトナー像を中間転写体に重ねあわせ、記録紙に転写する、タンデム中間転写方式が主流となりつつある。
【0003】
これに関連し、高画質と省エネルギーの優位性から、重合トナーを採用する例も増えつつある。
【0004】
このようなトナーを使用するに際しては、転写時にある程度以上の圧力がトナー層にかかると、そのトナー層とトナー像担持体との表面層が非静電的に付着し、転写バイアスによる静電気力では剥離せず、転写されずに残ることがある。
【0005】
特に、文字やラインの中央部は、周辺部に比べて高い圧力がかかり、中央部のみが転写せずに残る文字中抜けと呼ぶ現象を引き起こす。
【0006】
トナー設計でこの文字中抜けを改善するために、トナーと感光体表面、トナーと転写ベルト表面、またトナー同士の付着力を減らすことが重要である。この文字中抜けに対して、トナーの形状を丸くし、トナー樹脂を硬くし、トナー外添剤を多くし、さらに外添 剤に大粒径の無機微粒子を添加すると改良される方向に持ってゆくことができる。
【0007】
しかしこのようにした場合、クリーニング性、定着性からの要求と反する部分が生じ、すべてを両立させる水準で成り立たせることは困難である。例えば、定着には外添剤を少なくする方が良く、転写には外添剤を多くする方が良い。
【0008】
機械構成により文字中抜けを改善するには、転写圧を落とす、転写線速差をつけるなどの方法がある。転写する方の感光体に滑剤を塗布するなどして表面摩擦係数を落とし、中間転写体には滑剤を塗らないなどの方法もある。
【0009】
このような異常画像を改善する代表的な従来技術としては、中間転写体表面を粘着層とすることで、感光体/中間転写体、中間転写体/転写材間の転写効率を向上させるという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、中間転写体表面に摩擦係数を低減させる物質を含有させ、2次転写の中抜けを防ぐという方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
また、中間転写体に弾性層を設け、かつ表面に潤滑剤を塗布することで、中抜けを防ぎ、中間転写体のクリーニング性を確保するという方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
中間転写体表面にステアリン酸亜鉛等の潤滑性を有する保護膜を形成し、感光体/中間転写体、中間転写体/転写材間の転写効率を向上させるという方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開昭59−50475号公報
【特許文献2】特開平9−34276号公報
【特許文献3】特開2003−29550号公報
【特許文献4】特開平2−213881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述問題に対して、転写圧を落とすと安定した転写ニップが形成されなくなり、バイアス印加が不安定になり、転写ぶれが生じるなどの問題が発生する。通常使用する領域からそれほど圧力は落とせないので、これだけで文字中抜けの問題を解決はできない。
【0014】
転写時に、トナー担持体と転写される方の物体との間に線速差を付けると、トナー像のぶれが生じる。トナー像のぶれの許容範囲を考慮すると、せいぜい線速差1%程度の線速差が限界であり、十分でない。
【0015】
また感光体等の表面摩擦係数が高いとブレードクリーニング性が悪くなり、ブレードクリーニング性と転写性を両立させることが難しい。特に、円形度の高い重合トナーを使ったときに顕著になる。
【0016】
転写の中抜けの防止を図りながら同時にクリーニング性を考え場合に、表面摩擦係数の理想的な状態として、感光体表面が0.20以下、中間転写体表面が0.30以上0.45以下であるが、経時的に安定してこの範囲の値を達成する構成は提案されていない。
【0017】
従来から潤滑性にすぐれている滑剤として、ステアリン酸亜鉛がある。これを塗布すると、その塗布された表面の表面摩擦係数は0.15程度で飽和する。感光体はこの状態で使用できる。しかしながら、中間転写体がこの値では、転写中抜けが発生してしまう。
【0018】
中抜けの防止に効果がある表面摩擦係数にするために、ステアリン酸亜鉛の塗布量を調整して中間転写体の表面摩擦係数を調整することもできる。塗布量の調整の実現は、たとえばステアリン酸亜鉛のバーをブラシに押し付け、その圧力を変化させることによって、ステアリン酸亜鉛のバーをブラシが削るスピード変化させて調整する方法が一般的には可能である。
【0019】
しかし、塗布量を調整して表面摩擦係数を好適な範囲にしようとすると、表面摩擦係数が十分には下がり得ない領域で使用するため、表面摩擦係数が上下しやすい。
【0020】
また、例えば一定量の滑剤を供給しつづけても、作像画像面積率が増えると転写残トナーの量も増え、クリーニングで転写残トナーと一緒に廃棄される滑剤の量も多くなり、表面摩擦係数が上がってしまう結果となる。
【0021】
よって、平均的な転写残トナー量を想定してステアリン酸亜鉛の塗布量を決めることとなる。その場合にも利用画像面積によっては表面摩擦係数が上下し、転写中抜けやクリーニング不良に弱い条件となるという問題も発生する。
【0022】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、中間転写体からの転写時のトナー中抜けに強く、かつ中間転写体のブレードクリーニング性も良く、転写時に圧力がかかることによる、転写中抜けを抑制し、かつ、転写ベルトのクリーニングを容易にすることを目的とする。
【0023】
また、本発明は、簡易な機械構成で、中間転写体に塗布する滑剤種の選択範囲を広くとれることを可能とし、転写中抜けを防止すると共に、中間転写体のブレードクリーニングのクリーニング性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明では、表面摩擦係数を、感光体0.20以下、中間転写体0.30〜0.45に制御する。そのために、感光体に塗る滑剤と、中間転写体に塗る滑剤で異なるものを使う。感光体には、表面摩擦係数が0.20以下に下がりやすいものを使用し、中間転写体には表面摩擦係数が0.30〜0.45程度になるものを使用する。
【0025】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の画像形成装置の発明は、感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、感光体表面の可視像を中間転写体に転写する中間転写手段と、転写後の感光体表面をクリーニングする感光体クリーニング手段と、中間転写体に担持された可視像を記録紙に転写する2次転写手段と、2次転写後の中間転写体をクリーニングする中間転写体クリーニング手段と、感光体表面に滑剤を塗布する感光体用滑剤塗布手段と、中間転写体に滑剤を塗布する中間転写体滑剤塗布手段とを備える画像形成装置であって、前記感光体滑剤塗布手段で塗布する第1の滑剤と、前記中間転写体滑剤塗布手段で塗布する第2の滑剤とは、異なった滑剤を用い、前記第1の滑剤の塗布後の感光体表面の表面摩擦係数を、前記第2の滑剤塗布後の前記中間転写体表面の表面摩擦係数よりも小さくしたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項2に記載の発明は、前記中間転写体用滑剤塗布手段は、中間転写体クリーニング手段の下流であり、かつ、中間転写手段の上流に位置させ、前記第2の滑剤は粉状もしくは粒状であり、前記第2の滑剤を中間転写体に接触させた後にブレードをカウンターで前記中間転写体表面に当接させて前記第2の滑剤の塗布量を規制したことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
【0027】
また、請求項3に記載の発明は、前記第1の滑剤の前記感光体表面塗布後の前記感光体表面の静止摩擦係数は0.25以下であり、前記第2の滑剤の前記中間転写体表面塗布後の前記中間転写体表面の静止摩擦係数は0.30以上0.45以下の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置である。
【0028】
また、請求項4に記載の発明は、前記第2の滑剤は、ポリオレフィン系樹脂粒子であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置である。
【0029】
また、請求項5に記載の発明は、前記第2の滑剤は、少なくとも、炭素数が12以上であり、かつ融点が50℃以上である長鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸の誘導体を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置である。
【0030】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5いずれか1項に記載の画像形成装置において、前記現像手段で用いられるトナーは、体積平均粒径が3〜8μmで、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.00〜1.40の範囲にあることを特徴とする。
【0031】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記現像手段で用いられるトナーは、形状係数SF−1が100〜180の範囲にあり、形状係数SF−2が100〜180の範囲にあることを特徴とする。
【0032】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記現像手段で用いられるトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系媒体中で少なくとも架橋反応又は伸長反応させて得られるトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
【0033】
また、請求項9に記載の発明は、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記トナーは、略球形状であることを特徴とする。
【0034】
また、請求項10に記載の発明は、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記トナーは、長軸r1、短軸r2、厚さr3で規定され(但し、r1≧r2≧r3とする。)、長軸r1と短軸r2との比(r2/r1)が0.5〜1.0の範囲にあり、厚さr3と短軸r2との比(r3/r2)が0.7〜1.0の範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、感光体表面の可視像を中間転写体に転写する中間転写手段と、転写後の感光体表面をクリーニングする感光体クリーニング手段と、中間転写体に担持された可視像を記録紙に転写する2次転写手段と、2次転写後の中間転写体をクリーニングする中間転写体クリーニング手段と、感光体表面に滑剤を塗布する感光体用滑剤塗布手段と、中間転写体に滑剤を塗布する中間転写体滑剤塗布手段とを備える画像形成装置であって、前記感光体滑剤塗布手段で塗布する第1の滑剤と、前記中間転写体滑剤塗布手段で塗布する第2の滑剤とは、異なった滑剤を用い、前記第1の滑剤の塗布後の感光体表面の表面摩擦係数が、前記第2の滑剤塗布後の中間転写体表面の表面摩擦係数よりも小さくした画像形成装置により、感光体−中間転写体間に静止摩擦係数の差が生じているので、中間転写での転写率が高く、中抜けが生じ難い。また感光体と中間転写体の表面摩擦抵抗が低くなるので、転写残トナーのブレードクリーニング性を高くすることが可能となる。
【0036】
また、固形棒に成形するのが難しい材料も使用できるため、材料の選択範囲を広くとることが可能となる。
【0037】
さらに、感光体と中間転写体に、静止摩擦係数の差をつけることで、中間転写体の静止摩擦係数を小さくし、ブレードクリーニングのクリーニング性を良くし、転写中抜けを改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照して、本発明の画像形成装置を、実施形態により、詳細に説明する。
【0039】
図1を参照して、作像部の構成と画像形成動作について説明する。
【0040】
図中、符号3は書込み光学ユニット3であり、書込み光学ユニット3は、画像読取部等からのカラー画像データを光信号に変換して原稿画像に対応した光書込みを行うユニットである。この書込み光学ユニット3は、例えば、レーザ光源からのレーザビームを回転多面鏡を介して偏向走査し、fθレンズ等の等速走査光学系を介して感光体ドラム1に走査光を導き静電潜像を形成する光走査装置がある。また、他に、LEDアレイを用いた光書込み装置や、液晶シャッターアレイを用いた光書込み装置を書込み光学ユニット3として採用することができる。
【0041】
像担持体である感光体ドラム1は、時計方向に回転するが、その周囲には、帯電器2、現像部4、無端ベルト状の中間転写体5、クリーニングブレード6などの電子写真方式による画像形成工程を実行するための機器が配置されている。
【0042】
尚、これらの感光体回りのセットが、ブラック、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色分が中間転写体に接している。しかし、一色分だけについて説明すれば十分であるので、本実施形態の動作例では、一色分だけについて説明する。
【0043】
画像形成プロセスが開始されると、感光体ドラム1が帯電器2により帯電され、1色目の画像データ(例えばBk画像データ)に基づき、書込み光学ユニット3による光書き込みが行われ、1色目のBk画像の潜像が形成される。そして、現像部4で潜像が顕像化され、Bkトナー像が形成される。感光体ドラム1に形成されたBkトナー像は、感光体と等速駆動されている中間転写体5との当接部で中間転写体5の表面に転写される。尚、ここでの転写を一次転写という。転写後の感光体ドラム1は、クリーニング前除電器、感光体ドラムクリーニング装置により残留トナーが除去される。除去されたトナーは、廃トナー搬送スクリュー7によって排出される。
【0044】
本実施形態では、クリーニング後に滑剤の塗布を行っている。固形滑剤8を感光体滑剤塗布ブラシ9で掻き取り、感光体上に移行させ、感光体滑剤塗布ブレード10で滑剤を感光体上に均一化する。
【0045】
そして、次の色の画像形成プロセスが実行され、フルカラー画像形成の場合、上記の潜像形成、現像、一次転写のプロセスが2色目以降のC、M、Yの画像についても順次繰り返して行われ、中間転写ベルト5上にフルカラー画像が形成される。尚、フルカラー画像形成の場合、C、M、Yの3色で行う場合もある。
【0046】
中間転写体5は無端状のベルト部材からなり、駆動ローラ、ベルト転写バイアスローラ5a、紙転写バイアスローラ5b及び従動ローラ群に張架され、図示されない駆動モータにより時計回りと逆に回動されるようになっており、感光体ドラム1と中間転写体5の当接状態において、ベルト転写バイアスローラ5aに所定のバイアス電圧を印加することによってトナー像の一次転写が行われる。トナー像の一次転写を4回繰り返すと、中間転写体上にフルカラー画像が形成される。
【0047】
フルカラー画像は、紙転写バイアスローラと紙転写ローラ11に挟まれて搬送される転写材に、一括転写される。フルカラー画像が転写された転写材は、定着器12によってトナー像が定着され、排紙される。
【0048】
また、紙転写の残留トナーは、中間転写体クリーニングブレード13により掻き落とされ、廃トナー搬送スクリュー14によって排出される。
【0049】
本実施形態では、クリーニング13後に滑剤の塗布を行っている。滑剤ケース15にはたとえば粉体の滑剤が収納されており、この粉体滑剤は、アジテータ16により中間転写体上に巻き上げられ、中間転写体滑剤塗布ブレード17により中間転写体上に均一に塗布される。
【0050】
以上、タンデム中間転写方式の画像形成装置の構成、動作について簡単に説明したが、上記プロセスにおける中間転写行程においては、形成された像は感光体から中間転写体へ転写されるが、十分な画像濃度を得るために、ここでの転写効率は90%以上必要である。また、例え90%以上転写したとしてもトナーがピンポイントで転写されずに感光体上に残る場合があり、この場合には転写中抜けと呼ばれる異常画像が発生する。
【0051】
転写中抜けの程度は、転写部分の圧力、感光体の硬さ、感光体の表面性、中間転写体の硬さ、中間転写体の厚み、中間転写体と感光体への接し方、中間転写体の表面性等の機械的な物性、あるいは機械的構成によって左右される。転写バイアス、中間転写体さらにはベルト転写バイアスローラの体積固有抵抗等の電気特性はほとんど影響することがない。
【0052】
転写中抜けの発生原因は、圧力等の応力により凝集したトナーが、表面付着力で感光体に貼りついた結果、電気的に転写する力よりも大きくなることによって起こると考えられる。
【0053】
中抜けの対策として、感光体への付着力を減らし、中間転写体への付着力を増すことが有効となる。表面付着力は静止摩擦係数で代用できる。よって、感光体への表面付着力を減らすには、感光体の静止摩擦係数を小さくすればよく、中間転写体への表面付着力を増やすには、中間転写体の表面摩擦係数を大きくすればよい。
【0054】
しかし、表面摩擦係数を大きくすると、トナーの表面付着力が大きくなり、ブレードクリーニングが困難となる。特に、球形に近い重合トナーでブレードクリーニング性の問題は顕著になる。クリーニング性を高めるためにブレードの圧を高めると、ブレードの摩耗が激しくなり、経時的にクリーニング性が破綻する。クリーニング性を高めるために、ブレードの当接角を大きくすると、ブレード捲れの問題が発生することになる。本発明では、トナーをブレードクリーニングするには、滑剤を塗布して、表面摩擦係数を下げることが必須となる。
【0055】
ブレードクリーニングが可能になる表面摩擦係数は、感光体で0.30程度であり、ベルト状の中間転写体では0.45程度である。
【0056】
本発明で使用するトナーは600dpi以上の微小ドットを再現するため、トナーの体積平均粒径は3〜8μmが好ましい。このトナーの体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)は1.00〜1.40の範囲にあることが好ましく、トナーの(Dv/Dn)比が1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電分布が略均一になり、地肌かぶりの少ない高品位の画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0057】
このような本発明に好適に使用できるトナーの形状係数SF−1は、100〜180の範囲にあり、形状係数SF−2は、100〜180の範囲にあることが好ましい。図3に示すように、形状係数SF−1は、トナーの丸さの割合(丸さの程度)を示すものであり、図3の(a)に示すように、トナー粒子の最大径MXLNGとそのトナー粒子の最大径を含む面積とを用いて、図3にあるような式により導出され、また、形状係数SF−2は、トナーの形状の凹凸の割合いを示すものであり、粒子の周囲の長さPERIとその周囲の長さPERIを測定した部分の面積とから、図3に示す式を用いて導出される。トナーの形状が球形に近くなると、トナー同士、あるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり、従って流動性は高くなる。また、トナーと感光体との吸着も弱くなって、転写率は高くなる。
【0058】
感光体に塗布する本発明の画像形成装置に使用される滑剤としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、みつろう、モンタンワックス等の天然ワックス、硬化ひまし油、12−ヒドリキシ酸とその誘導体、脂肪酸アミド、N−置換脂肪酸アミド、一価または多価アルコール脂肪酸、脂肪酸エステル等の合成ワックス、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、オレイン酸亜鉛、ヒドロキシステアリン酸リチウム等の金属石鹸、及び以上の物質を含む誘導体や化合物、複合物等が挙げられる。これら滑剤は上記した化合物の中から選択される1種単独で、またはこれらを2種以上併用しても良い。そして、これらの中から中間転写体材料と相溶性の良いものを適宜選択する。尚、長鎖脂肪酸は、炭素数が12以上のもので、融点が50℃以上であるものが好ましい。これ以下のものでは粉体の高温保存性に問題が生じる。
【0059】
以下、実施例により、感光体と中間転写体への滑剤塗布の組み合わせと、表面摩擦係数、転写中抜け品質、クリーニング性を評価した。結果を表1に示す。
【0060】
評価用画像形成装置は、実施の形態で説明した構成のものを用いた。
【0061】
【表1】

【0062】
表面摩擦係数の測定は、オイラーベルト方式で測定した。
【0063】
この方式は、図2に示すように、ベルト20として、中厚の上質紙を紙すきが長手方向になるようにして、像担持体21のドラム円周1/4に張架し、ベルトの一方に例えば0.98N(100g重)の荷重として分銅23を掛け、他方にフォースゲージを設置してフォースゲージ22を引っ張り、ベルトが移動した時点での荷重Fを読取って、摩擦係数μsを、
μs=2/π×ln(F/0.98)
に代入して算出する(但し、μ:静止摩擦係数、F:測定値)。測定は、A4版記録紙で1000枚画像形成後摩擦係数が一定になった定常状態での測定値を採用する。
【0064】
転写中抜けの評価は、次のようにして行う。
【0065】
文字を配置したテスト画像を出力し、転写中抜け画像のランク評価(5段階評価、許容レベルはランク3以上)を行った。この結果を表1に示す。
尚、5段階評価の各ランクとしては、例えば次の通りである。
ランク5・・・・肉眼にて観察しても転写中抜けが発見できない状態。
ランク4・・・・肉眼にて観察して転写中抜けと判断することが難しいくらい転写中抜けを辛うじて発見できる状態。
ランク3・・・・肉眼にて転写中抜けを発見でき、その転写中抜けが画像品質を損ねない状態。
ランク2・・・・肉眼にて転写中抜けを発見でき、その数が数えられる状態。
ランク1・・・・誰が観察しても明らかに転写中抜けをすぐさま発見できる程度の大きさのものが多数ある状態。
【0066】
クリーニング性の評価は次のように行った。
気温10℃、湿度15%の環境下に、評価機を調湿した。この環境下で中間転写ベルトを離間させ、ブラックトナーのA4横のベタ画像を感光体クリーニングブレードに未転写で10枚入力し、10枚目がクリーニングブレードを通過直後に機械動作を停止する。そして、クリーニングブレード通過後の感光体表面を透明粘着テープでテープ転写したものを、白紙に貼りつける。その部分をX−rite938濃度計で濃度を計測する。また、テープをそのまま白紙に貼りつけたものも濃度計測する。その差が0.02以上であればNGとした。
中間転写ベルトに対しても、二次転写ローラ11を離間させてブラックのベタ画像を中間転写体クリーニングブレードに10枚入力し、同様の評価を行った。
【0067】
(実施例1)トナーとして、体積平均粒径4.9μmであり、トナー円形度0.965のトナー母体に、外添剤として、シリカ微粒子“H2000"(疎水性シリカ:ワッカー社HDK H2000:1次粒子径15nm)を1.5部、チタン微粒子”MT−150AI“(疎水性酸化チタン:テイカ社製 粒径20nm)を0.5部添加したものを用いた。
【0068】
感光体滑剤としてステアリン酸亜鉛のバーを使用し、感光体滑剤塗布ブラシとしてPET植毛ブラシ(10デニール、30000本/cm2)を使用し、ステアリン酸亜鉛のバーを感光体滑剤塗布ブラシに5.0Nの圧力で当接させた。
【0069】
中間転写体滑剤としてラウリン酸亜鉛の粉体(日本油脂製ジンクラウレートG:顆粒状粉体、粒子径0.3〜1.0mm程度、ただし、0.3mm以下の粒子も含む)を使用した。
【0070】
画像面積率5%のA4横画像を1000枚通紙した後、静止摩擦係数を測定したところ、感光体の静止摩擦係数は0.21、中間転写体の静止摩擦係数は0.34であった。
【0071】
(実施例2)ステアリン酸亜鉛バーを感光体滑剤塗布ブラシに6.0Nの圧力で当接させた他は、実施例1と同じ条件で実施した。
画像面積率5%のA4横画像を1000枚通紙した後、静止摩擦係数を測定したところ、感光体の静止摩擦係数は0.13、中間転写体の静止摩擦係数は0.32であった。
【0072】
(実施例3)ステアリン酸亜鉛バーを感光体滑剤塗布ブラシに6.0Nの圧力で当接させ、中間転写体滑剤としてHoneywell社製マイクロナイズドポリオレフィンワックスAcumistB9(平均粒子径9μm)を使用した他は実施例1と同じ条件で実施した。
【0073】
画像面積率5%のA4横画像を1000枚通紙した後、静止摩擦係数を測定したところ、感光体の静止摩擦係数は0.15、中間転写体の静止摩擦係数は0.41であった。
【0074】
(実施例4)ステアリン酸亜鉛バーを感光体滑剤塗布ブラシに6.0Nの圧力で当接させ、中間転写体滑剤として日本油脂製アルフローH−50Fを使用した他は、実施例1と同じ条件で実施した。
【0075】
画像面積率5%のA4横画像を1000枚通紙した後、静止摩擦係数を測定したところ、感光体の静止摩擦係数は0.10、中間転写体の静止摩擦係数は0.39であった。
【0076】
(比較例1)中間転写体滑剤として日本油脂製カルシウムステアレートGを使用した他は実施例1と同じ条件で実施した。
【0077】
画像面積率5%のA4横画像を1000枚通紙した後、静止摩擦係数を測定したところ、感光体の静止摩擦係数は0.20、中間転写体の静止摩擦係数は0.11であった。
【0078】
(比較例2)中間転写体滑剤を入れずに、中間転写体滑剤塗布ブレードを取り外した他は実施例1と同じ条件で実施した。
【0079】
画像面積率5%のA4横画像を1000枚通紙した後、静止摩擦係数を測定したところ、感光体の静止摩擦係数は0.24、中間転写体の静止摩擦係数は0.55であった。
【0080】
(比較例3)ステアリン酸亜鉛バーを感光体滑剤塗布ブラシに2.0Nの圧力で当接させた他は、実施例1と同じ条件で実施した。
【0081】
画像面積率5%のA4横画像を1000枚通紙した後、静止摩擦係数を測定したところ、感光体の静止摩擦係数は0.34、中間転写体の静止摩擦係数は0.31であった。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の滑剤塗布手段有する画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の像担持体の摩擦係数測定機の概略構成図である。
【図3】本発明に使用されるトナーの形状係数SF−1(図3の(a))、SF−2(図3の(b))の説明のための模式図である。
【図4】本発明に使用されるトナーの形状を示す模式図である。
【符号の説明】
【0083】
1 感光体ドラム
2 帯電器
3 光学ユニット
4 現像部
5 中間転写体
5a ベルト転写バイアスローラ
5b 紙転写バイアスローラ
6 クリーニングブレード
7 廃トナー搬送スクリュー
8 固形滑剤
9 感光体滑剤塗布ブラシ
10 感光体滑剤塗布ブレード
11 紙転写ローラ
12 定着器
13 中間転写体クリーニングブレード
14 廃トナー搬送スクリュー
15 滑剤ケース
16 アジテータ
17 中間転写体滑剤塗布ブレード
20 ベルト(紙)
21 像担持体
22 フォースゲージ(たとえばデジタルプッシュプルゲージ)
23 分銅(100g重の分銅)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、感光体表面の可視像を中間転写体に転写する中間転写手段と、転写後の感光体表面をクリーニングする感光体クリーニング手段と、中間転写体に担持された可視像を記録紙に転写する2次転写手段と、2次転写後の中間転写体をクリーニングする中間転写体クリーニング手段と、感光体表面に滑剤を塗布する感光体用滑剤塗布手段と、中間転写体に滑剤を塗布する中間転写体滑剤塗布手段とを備える画像形成装置であって、
前記感光体滑剤塗布手段で塗布する第1の滑剤と、前記中間転写体滑剤塗布手段で塗布する第2の滑剤とは、異なった滑剤を用い、前記第1の滑剤の塗布後の感光体表面の表面摩擦係数を、前記第2の滑剤塗布後の前記中間転写体表面の表面摩擦係数よりも小さくしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写体用滑剤塗布手段は、中間転写体クリーニング手段の下流であり、かつ、中間転写手段の上流に位置させ、前記第2の滑剤は粉状もしくは粒状であり、前記第2の滑剤を中間転写体に接触させた後にブレードをカウンターで前記中間転写体表面に当接させて前記第2の滑剤の塗布量を規制したことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の滑剤の前記感光体表面塗布後の前記感光体表面の静止摩擦係数は0.25以下であり、前記第2の滑剤の前記中間転写体表面塗布後の前記中間転写体表面の静止摩擦係数は0.30以上0.45以下の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の滑剤は、ポリオレフィン系樹脂粒子であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2の滑剤は、少なくとも、炭素数が12以上であり、かつ融点が50℃以上である長鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸の誘導体を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項に記載の画像形成装置において、前記現像手段で用いられるトナーは、体積平均粒径が3〜8μmで、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.00〜1.40の範囲にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記現像手段で用いられるトナーは、形状係数SF−1が100〜180の範囲にあり、形状係数SF−2が100〜180の範囲にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記現像手段で用いられるトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系媒体中で少なくとも架橋反応又は伸長反応させて得られるトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記トナーは、略球形状であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記トナーは、長軸r1、短軸r2、厚さr3で規定され(但し、r1≧r2≧r3とする。)、長軸r1と短軸r2との比(r2/r1)が0.5〜1.0の範囲にあり、厚さr3と短軸r2との比(r3/r2)が0.7〜1.0の範囲にあることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−330457(P2006−330457A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155474(P2005−155474)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】