説明

画像形成装置

【課題】転写ローラの抵抗値が機内の温湿度や通電時間により変化して、使用する転写電圧の値が変わる場合も、所望の転写電流を得るための電流分解能を概略一定にすることが可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上に担持されたトナー像が転写される第2の像担持体若しくは転写材と、前記像担持体上のトナー像を前記第2の像担持体若しくは転写材に転写するための転写部材と、前記転写部材に転写電圧を印加するための転写電圧生成手段と、前記転写電圧生成手段が出力すべき転写電圧を指示する転写電圧指示値を生成するD/Aコンバータで構成された転写電圧指示値生成手段と、前記転写電圧指示値に対して転写電圧が累進的に変化するように転写電圧指示値を変換する転写電圧指示値変換手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機やLBP(レーザービームプリンタ)等の静電記録方式の画像形成装置に関し、感光ドラム上に形成したトナー像を転写材又は中間転写体に転写する方式を採用する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における画像形成装置として、例えば、電子写真方式の複写機やLBP(レーザービームプリンタ)等の画像形成装置は、図7に示すように回転ドラム型を一般的とする像担持体としての電子写真感光体(感光ドラム1)、帯電器2、露光装置3、感光ドラム1の周囲にイエロ(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)、ブラック(Bk)の各色成分の現像器4Y,5M,6C,7Kを備える各色現像器を有している。
【0003】
各色現像器は、磁性キャリアとトナーが混在する現像剤を内包しており、感光ドラム1に対して例えばベルト状の中間転写体(中間転写ベルト9)を対向配置し、感光ドラム1の1回転毎にその感光ドラム1上に形成された各色成分の未定着トナー像を中間転写ベルトに順次静電的に一次転写し、中間転写ベルト上に重ね合わされた4色のフルカラー画像を転写材20へ静電的に二次転写して転写材上にフルカラー画像を形成する。
【0004】
感光ドラム1から中間転写ベルト9へのトナー像の一次転写手段15としては、低出力で電源の低コスト化が図れる接触転写方式が用いられ、定電圧制御された電圧が、図7に示す感光ドラム1の対向位置に配置且つ当接された一次転写手段15に印加される。それによって一次転写手段15には接触回転型のいわゆる転写ローラ(以後、一次転写ローラ15と呼ぶ)を用いた転写手段が近年多用されるようになった。同様に、中間転写ベルト9から転写材20へのトナー像の二次転写手段としても、接触転写方式が用いられ、二次転写内ローラ13の対向位置に配置且つ当接された二次転写手段たる2次転写外ローラ16に定電圧制御された電圧が印加される。
【0005】
一次転写ローラ15及び二次転写外ローラ16は、その抵抗値が1×10 〜1×1010(Ω)程度の値に調整されるが、近年提案されている転写ローラは、図3に示すように、導電性の芯金15aの外周面に弾性層15bを設け、この弾性層15bに導電性を持たせるようにしている。転写ローラは、この導電性の持たせ方により2種類に大きく分けられる。
【0006】
電子導電性の転写ローラは、図3に示すように弾性層15bを有し、この弾性層15bに導電性フィラーを分散させたものであり、例として、カーボンや金属酸化物等の導電性フィラーを分散させたEPDMローラやウレタンローラを挙げることができる。
【0007】
イオン導電性の転写ローラは弾性層15bにイオン導電系の材料を含むもので、例として、ウレタン等の材料自身に導電性を持たせたものや、界面活性剤を弾性層15bに分散させたものが挙げられる。
【0008】
又、転写ローラの抵抗は機内の温湿度や通電時間に応じて変動し易いことが知られている。
【0009】
図4に一次転写ローラにおける抵抗変動の例を示す。
【0010】
図4では、転写電流20μAを得るために必要な電圧値は、耐久初期且つH/H環境においては250Vであるが、耐久末期且つL/L環境では4kV必要であり、耐久時間と環境により大きく変動していることが分かる。一次転写ローラ15の抵抗変動が発生すると上記一次転写部位に適正な電荷を付与することができず、転写不良の発生を誘発することが懸念されている。これは2次転写外ローラ16についても同様である。
【0011】
そこで、適正な転写電圧を求めるため、例えば、特許文献1では、作像直前に一次転写ローラ15に印加する転写電圧をステップ的に増加させ所望の転写電流になったときの転写電圧を作像時に用いる方法を提案している。
【特許文献1】特開平5−006112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、この従来例に代表される回路構成においては、転写高圧電源に転写電圧を指示する指示値であるD/Aコンバータの出力電圧と転写高圧出力電圧が比例するように構成されている。例えば、図8のように8bitD/Aコンバータの出力電圧を0Vから5Vまで変化させた時に転写電圧が0Vから5kVまで変化する場合、1LSB当たりの転写電圧の変化量は19.5Vとなる。前掲の図4のように耐久時間と環境により転写ローラの抵抗値が変化することで、使用する転写電圧が変わる場合、転写電流20μAでの電流分解能は、下表のようになる。
【0013】
【表1】

つまり、耐久末期且つL/L環境では1LSB当たり0.0975μAの値が得られるのに対し、耐久初期且つH/H環境ではその16分の1の1.56となってしまい、十分な分解能が得られない。逆に、H/H環境において、十分な電流分解能を得ようとすると、高価な多ビットのD/Aコンバータが必要になるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、転写ローラの抵抗値が機内の温湿度や通電時間により変化して、使用する転写電圧の値が変わる場合も、所望の転写電流を得るための電流分解能を概略一定にすることが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、トナー像を転写材上に形成する画像形成装置であって、前記トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上に担持されたトナー像が転写される第2の像担持体若しくは転写材と、前記像担持体上のトナー像を前記第2の像担持体若しくは転写材に転写するための転写部材と、前記転写部材に転写電圧を印加するための転写電圧生成手段と、前記転写電圧生成手段が出力すべき転写電圧を指示する転写電圧指示値を生成するD/Aコンバータで構成された転写電圧指示値生成手段と、前記転写電圧指示値に対して転写電圧が累進的に変化するように転写電圧指示値を変換する転写電圧指示値変換手段を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記転写電圧指示値変換手段の出力値が入力値の逆対数に比例することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、転写高圧の指示値を累進的な特性を持つ変換回路で変換することで、転写ローラの抵抗値が機内の温湿度や通電時間により変化して、使用する転写電圧の値が変わる場合も、所望の転写電流を得るための電流分解能を概略一定にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る画像形成装置を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図2は本発明を適用したカラー画像形成装置の概略構成を示す。同図において、1は感光体ドラム(潜像担持体)であり、矢線A方向への回転に伴いその表面には帯電装置2、画像情報に基づいて露光する露光装置3等の周知の電子写真プロセスによって画像情報に応じた静電潜像が形成される。22は感光体ドラム1の表面電位を検出する電位検出手段である。23は感光体ドラム1上のトナー像の濃度を検出する濃度検出手段、34はドラムヒーターで、感光体ドラム1 の表面付近の温度を一定に保ち、その雰囲気中の水分量を調整し、安定した前述の静電潜像形成を行うためである。
【0020】
又、感光体ドラム1の周囲にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各色に対応した現像器4〜7を含む現像器ユニット8が配設されており、感光体ドラム1上に形成された静電潜像を現像器の何れかで現像してトナー像を形成するようになっている。
【0021】
又、9は感光体ドラム1の表面に当接されるよう配設された中間転写ベルトであり、複数の張架ローラ10〜14に張架されて矢印Bの方向へ回動するようになっている。本実施の形態では、張架ローラ10,11は、1次転写位置の近傍に配置され、中間転写ベルト9の平坦な一次転写面の形成に用いられる金属製の従動ローラ、張架ローラ12は、中間転写ベルト9の張力を一定に制御するようにしたテンションローラ、張架ローラ14は中間転写ベルト9の駆動ローラ、張架ローラ13は二次転写用の対向ローラである。
【0022】
そして、本実施の形態では、中間転写ベルト9として、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、塩化ビニル等の樹脂又は各種ゴム等に帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させ、その体積抵抗率を1×10〜1×1013[Ω・cm]、厚みを0.07〜0.1[mm]としたものを用いている。
【0023】
更に、中間転写ベルト9の感光体ドラム1に対向する一次転写位置において、中間転写ベルト9の裏面側には、一次転写ローラ15が配設されており、この一次転写ローラ15に、トナーの帯電極性と逆極性の正極性の一次転写バイアスを印加することで、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト9上に1次転写されるようになっている。19は一次転写後の感光体ドラム1上に残留したトナーを除去するドラムクリーナである。
【0024】
又、転写材20の搬送経路に面した中間転写ベルト9の二次転写位置には、本実施の形態では、中間転写ベルト9のトナー像担持面側に圧接配置される二次転写ローラ16と、中間転写ベルト9の裏面側に配設されて二次転写ローラ16の対向電極を成す接地された張架ローラ13を備えている。二次転写ローラ16には、トナーの帯電極性と逆極性の二次転写バイアスが印加されている。
【0025】
更に、二次転写位置の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト9上に残留したトナーを除去するベルトクリーナ21が設けられている。尚、前記二次転写ローラ16及びベルトクリーナ21は、中間転写ベルト9に対して接離可能に配設されており、複数色のカラー画像が形成される場合には、最終色前のトナー像が二次転写ローラ16及びベルトクリーナ21を通過するまで中間転写ベルト9から離間するようになっている。
【0026】
又、本実施の形態において、レジストローラ17で一旦位置決め停止させた後所定のタイミングで二次転写位置へと転写材20を送り込むようになっており、更に、二次転写後の転写材20を不図示の搬送部材により不図示の定着器へ搬送し、転写材にトナー像を溶融固着するようになっている。
【0027】
本発明による回路構成は、一次転写と二次転写の両方に適用できるが、先に説明した図4の一次転写ローラにおける抵抗変動の例を基に、本発明の基本となる考え方を説明する。
【0028】
転写高圧を生成するための回路構成を図18のブロック図を使用して説明する。
【0029】
CPU101は、D/Aコンバータ102に対して設定値を設定する。D/Aコンバータ102は、CPU101に設定された値により0Vから5Vの範囲で信号電圧xを出力する。D/Aコンバータ102は、一般的なリニアな出力をするタイプであるので、信号電圧xは設定値に対してリニアに変化する。変換回路103は、D/Aコンバータ102の信号電圧xを受け、その値を一定の関数に従って変換し電圧出力する。その出力である信号電圧yは信号電圧xの関数であるので、y=f(x)と書くことができる。転写高圧電源104は入力された信号電圧yを1000倍にして出力し、その高圧出力zが転写ローラに印加される。
【0030】
式にすれば、z=1000f(x)=g(x)と書ける。
【0031】
図4の各条件での電流−電圧特性を原点を通る直線に簡略化して書き直すと図5のようになる。又、分かり易くするために、20μAの転写電流を流すのに、250V,1kV,2kV,4kVの転写電圧が必要となる4環境について考える。各条件において、転写電流1μA当たりの転写電圧は下表のようになる。
【0032】
【表2】

この表のように、ターゲット電圧が小さい条件では、所定の転写電流当たりの転写電圧の変化量が小さく、ターゲット電圧が大きい条件では比例して所定の転写電流当たりの転写電圧の変化量が大きくなっている。環境変動等によりターゲット電圧が変化した場合に、所定電流の分解能を一定にするのが本発明の目的であるから、この表から、転写電圧の分解能はターゲット電圧に比例した値で良いことが分かる。つまり、転写電圧指示値である信号電圧xにより、高圧出力zを微分した値が高圧出力zに比例している。
【0033】
dz/dx=dg(x)/dx=a・g(x) ここでaは定数である。
この微分方程式を解くと、
g(x)=b・exp(a・x)という式が得られる。ここでbは定数である。
g(x)=1000f(x)であったので、変換回路103を定義する関数として、
f(x)=b/1000・exp(a・x)が得られる。
【0034】
つまり、変換回路103として逆対数回路が最適であることが分かる。
【0035】
ここで、信号電圧xが0.25Vの時に高圧出力250V、信号電圧xが4Vの時に高圧出力4kVと決めて、定数a,bを求めると、それぞれ208.1,0.739となる。よって、変換回路103を定義する式は、
f(x)=0.208・exp(0.739・x)
である。
【0036】
尚、逆対数回路自体は既知であるので、ここでは説明しない。
【0037】
この変換経路を使用することで、転写高圧指示値xと転写高圧出力zの関係は図6に示すようになる。
【0038】
このように定義された回路を使用することで、各条件での1LSB当たりの電流分解能は以下のようになる。
【0039】
【表3】

従来の回路では250V設定時に電流分解能が1.56μAだったのに対し、0.29μAの分解能が得られており、5倍の分解能向上が図られていることが分かる。更に、使用する電圧による分解能の差が無いため、環境変動等により抵抗値が変動してもプロセス的に同等の制御が可能となる。
【0040】
以上のように、変換回路として逆対数回路を使用すれば理想的な特性が得られるが、逆対数回路ではなくても特性が累進的であれば、同様の効果を得ることができる。例えば、
f(x)=a・x2 +b・x+c
という2次関数であっても良い。
【0041】
信号電圧xが0.25Vの時に高圧出力250V、信号電圧xが1.75Vの時に高圧出力1kV、信号電圧xが4Vの時に高圧出力4kVと決めて、定数a,b,cを求めると、それぞれ、222,55.5,222となる。
【0042】
変換回路の入出力にこのような特性を持たせれば下表の分解能が得られる。
【0043】
【表4】

逆対数回路の場合とは異なり分解能は一定でないものの、従来のものと比べて分解能の変動が小さく抑えられていることが分かる。
【0044】
尚、以上の実施の形態は、変換回路として逆対数回路、2乗回路を使用した例について説明したが、特性が累進的であれば良く、簡易な回路として折れ線近似回路を採用しても良い。
【0045】
又、転写高圧を掛ける対象として一次転写を例に説明したが、感光体ドラムから直接転写材に転写する直接転写においても使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の画像形成装置概略図である。
【図3】本発明の実施例及び従来例の転写ローラを説明する図である。
【図4】本発明の実施例及び従来例を説明する図である。
【図5】本発明の実施例及び従来例を説明する図である。
【図6】本発明の実施例を説明する図である。
【図7】従来例を説明する図である。
【図8】従来例を説明する図である。
【符号の説明】
【0047】
1 感光体ドラム(潜像担持体)
2 帯電装置
3 露光装置
4〜7 現像器
9 中間転写ベルト
15 一次転写ローラ
16 二次転写ローラ
17 レジストローラ
21 ベルトクリーナ
22 電位検出手段
23 濃度検出手段
34 ドラムヒーター
101 CPU
102 D/Aコンバータ
103 変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を転写材上に形成する画像形成装置であって、
前記トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上に担持されたトナー像が転写される第2の像担持体若しくは転写材と、前記像担持体上のトナー像を前記第2の像担持体若しくは転写材に転写するための転写部材と、前記転写部材に転写電圧を印加するための転写電圧生成手段と、前記転写電圧生成手段が出力すべき転写電圧を指示する転写電圧指示値を生成するD/Aコンバータで構成された転写電圧指示値生成手段と、前記転写電圧指示値に対して転写電圧が累進的に変化するように転写電圧指示値を変換する転写電圧指示値変換手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写電圧指示値変換手段の出力値が入力値の逆対数に比例することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−121508(P2007−121508A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311095(P2005−311095)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】