説明

画像形成装置

【課題】感光体ドラムの寿命が長く、画像品質の良好な画像形成装置を提供する。
【解決手段】カラープリンタの画像形成部6は、感光体ドラム9と、感光体ドラム9の表面9aに形成された静電潜像にトナーを供給して、トナー像を形成する現像装置12とを備える。現像装置12は、4つの現像器14〜17と、シート状のヒータ18と、円柱状のロータリラック19とを有する。4つの現像器14〜17およびヒータ18は、ロータリラック19の外周部19aに、円周方向X1に並んで保持されている。また、4つの現像器14〜17およびヒータ18は、ロータリラック19が回転することによって、感光体ドラム9の表面9aに対向する位置に移動させられる。ヒータ18は、感光体ドラム9の表面9aに対向する位置で、感光体ドラム9を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置には、例えば、感光体ドラムと、帯電装置と、露光装置とを備えるものがある。感光体ドラムは、帯電装置によって帯電され、その後、露光装置によって画像データに基づく光像が照射される。これにより、感光体ドラムに静電潜像が形成される。
ところで、上述の帯電工程では、感光体ドラムの帯電と共に、放電生成物が発生し、感光体ドラムの表面に付着してしまう場合がある。そして、この放電生成物は、空気中の水分を吸収し、感光体ドラムの電気抵抗を低下させてしまう。その結果、感光体ドラムの表面の電荷が流れて、静電潜像に乱れが生じてしまう。
【0003】
この問題を解決するために、特許文献1記載の画像形成装置では、感光体ドラムの表面にローラを圧接し、感光体ドラムの表面を研磨することによって、放電生成物を除去している。また、特許文献2記載の画像形成装置では、感光体ドラムの内部にヒータを設け、放電生成物が吸収した水分を取り除いて、感光体ドラムの電気抵抗の低下を防止している。
【特許文献1】特開平11−2996号公報
【特許文献2】特開平5−333750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の画像形成装置では、感光体ドラムにローラが常時圧接されているので、感光体ドラムの回転速度に周期的なバラツキ(いわゆるジッタ)が生じ、画像形成装置の画像品質が低下してしまう。また、感光体ドラムの表面を研磨することにより、感光体ドラムの表面が削れて、感光体ドラムの寿命が低下してしまう。
そして、特許文献2記載の画像形成装置のように、感光体ドラムの内部にヒータを設けると、感光体ドラムの構造が複雑となり、コストアップとなる。また、近年の画像形成装置の小型化に伴い、感光体ドラムの内部にヒータを配置するのは困難である。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、感光体ドラムの寿命が長く、画像品質の良好な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、画像データに基づく静電潜像が表面(9a)に形成される感光体ドラム(9)と、上記感光体ドラムの表面に対向することにより、感光体ドラムの表面に異なる色のトナーを供給して、静電潜像を顕在化する複数の現像器(14〜17)と、上記感光体ドラムの表面に対向することにより、感光体ドラムを加熱するヒータ(18)と、上記複数の現像器およびヒータを円周方向(X1)に並べて保持し、回転することによって複数の現像器およびヒータをそれぞれ感光体ドラムの表面に対向する位置に移動させるロータリラック(19)とを備え、上記ヒータは、現像器の現像動作の停止中に感光体ドラムを加熱することを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、ヒータによって感光体ドラムを加熱し、感光体ドラムに付着した放電生成物が吸収した水分を取り除いている。これにより、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像が乱れることを防止し、画像形成装置の画像品質を良好にすることができる。
【0008】
また、ロータリラックにヒータを保持させることにより、画像形成装置の小型化を図ることができる。
請求項2記載の発明は、上記ヒータによる感光体ドラムの加熱は、上記複数の現像器による一連の現像動作の前に行われることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
【0009】
この構成によれば、現像器の現像動作に影響を与えることなく、感光体ドラムを加熱することができる。また、感光体ドラムの電気抵抗が良好な状態で、複数の現像器による一連の現像動作を行うことができる。
請求項3記載の発明は、上記ヒータによる感光体ドラムの加熱は、ヒータが感光体ドラムを加熱してから所定時間が経過した後に行われることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
【0010】
この構成によれば、ヒータによって感光体ドラムが加熱されてから所定時間が経過した後であっても、感光体ドラムの電気抵抗を良好な状態に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における画像形成装置としてのカラープリンタ1の概略構成を示す図解的な断面図であり、図2は、図1における画像形成部6の一部を示す拡大図である。図1を参照して、カラープリンタ1は、用紙2が収容されるカセット3と、用紙2をカセット3から用紙搬送路4に繰り出す給紙ローラ5と、用紙搬送路4上に設けられ、用紙2にトナー像を転写する画像形成部6と、用紙搬送路4上に設けられ、用紙2に転写されたトナー像を定着させる定着装置7と、トナー像が定着された用紙2を機外に排出する排出ローラ8とを備える。
【0012】
図1および図2を参照して、画像形成部6は、円筒状の感光体ドラム9と、感光体ドラム9の表面9aを帯電させる帯電装置10と、感光体ドラム9の表面9aに画像データに基づく光像を照射して、静電潜像を形成する露光装置11と、感光体ドラム9の表面9aにトナーを供給して、トナー像を形成する現像装置12と、感光体ドラム9の表面9aに形成されたトナー像が転写され、この転写されたトナー像を用紙2に転写する転写装置13とを含む。これら帯電装置10、露光装置11、現像装置12および転写装置13は、感光体ドラム9を取り囲むように配置されている。
【0013】
現像装置12は、複数(本実施の形態では4つ)の現像器14〜17と、シート状のヒータ18と、4つの現像器14〜17およびヒータ18を保持する円柱状のロータリラック19とを有する。4つの現像器14〜17およびヒータ18は、ロータリラック19の外周部19aに、円周方向X1に並んで保持されている。
4つの現像器14〜17は、それぞれ、異なる色のトナーを感光体ドラム9の表面9aに供給して、感光体ドラム9の表面9aに異なる色のトナー像を形成するものであり、マゼンタのトナーが収容された現像器14と、シアンのトナーが収容された現像器15と、イエローのトナーが収容された現像器16と、ブラックのトナーが収容された現像器17とによって構成されている。
【0014】
ヒータ18は、ロータリラック19の外周19bの一部に設けられており、ロータリラック19の軸方向に延びている。また、ヒータ18は、4つの現像器14〜17の内の2つ(例えば、現像器14と現像器17)の間に設けられている。
ロータリラック19は、図示しない駆動源と接続されており、駆動源によってロータリラック19は回転させられる。これにより、ロータリラック19は、4つの現像器14〜17およびヒータ18のそれぞれを感光体ドラム9の表面9aに対向する位置に移動させることができる。4つの現像器14〜17は、それぞれ、感光体ドラム9の表面9aに対向する位置で、トナーを供給してトナー像を形成する。ヒータ18は、感光体ドラム9の表面9aに対向する位置で、感光体ドラム9を軸方向に亘って加熱する。
【0015】
転写装置13は、複数のローラ13aによって張架された無端状の中間転写ベルト20と、互いに平行に対向する一対の転写ローラ21a,21bとを有する。中間転写ベルト20の一部は、感光体ドラム9に当接されており、この中間転写ベルト20に、感光体ドラム9の表面9aに形成されたトナー像が転写される。
一対の転写ローラ21a,21bの内の一方の転写ローラ21aは、中間転写ベルト20の内部に配置されており、中間転写ベルト20は、一対の転写ローラ21a,21bに挟持されている。また、一対の転写ローラ21a,21bは、用紙搬送路4上に設けられており、用紙搬送路4を搬送される用紙2は一対の転写ローラ21a,21b間を通過させられる。これにより、中間転写ベルト20に転写されたトナー像は、用紙搬送路4を搬送される用紙2に転写される。
【0016】
次に画像形成部6の動作について説明する。
最初に、駆動源がロータリラック19を回転させて、ヒータ18を感光体ドラム9の表面9aに対向する位置に移動させる。ヒータ18は、この位置で感光体ドラム9を、40〜50℃(好ましくは43℃付近)まで加熱する。ヒータ18による感光体ドラム9の加熱中は、感光体ドラム9を均一に加熱するため、感光体ドラム9は回転させられる。
【0017】
次に、駆動源がロータリラック19を回転させて、マゼンタのトナーが収容された現像器14を感光体ドラム9の表面9aに対向する位置に移動させる。そして、帯電装置10が感光体ドラム9を帯電させ、露光装置11が画像データのマゼンタに対応した光像を感光体ドラム9の表面9aに照射し、感光体ドラム9の表面9aにマゼンタに対応した静電潜像を形成する。その後、現像器14が、感光体ドラム9の表面9aにマゼンタのトナーを供給して、感光体ドラム9の表面9aにマゼンタのトナー像を形成する。このマゼンタのトナー像は、中間転写ベルト20に転写される。
【0018】
このような動作が、シアン、イエロー、ブラックのトナーが収容された現像器15〜17にも同様に行われ、中間転写ベルト20には、それぞれのトナーの色に対応したトナー像が積層される。この積層されたトナー像は、一対の転写ローラ21a,21bによって用紙搬送路4を搬送される用紙2に転写され、トナー像が転写された用紙2は、定着装置7によって加熱・加圧される。これによって、用紙2にトナー像が定着される。
【0019】
また、上述の一連の現像工程および転写工程が終了した後に、駆動源は、ロータリラック19を回転させて、ヒータ18を感光体ドラム9の表面9aに対向する位置に移動させる。ヒータ18は、この位置で感光体ドラム9を、40〜50℃(好ましくは43℃付近)まで加熱する。また、ヒータ18による感光体ドラム9の加熱中は、感光体ドラム9を均一に加熱するため、感光体ドラム9は回転させられる。
【0020】
図3は、ヒータ18による感光体ドラム9の加熱のタイミングチャートである。図2および図3を参照して、ヒータ18による感光体ドラム9の加熱は、上述の一連の現像工程の前、一連の現像工程および転写工程が完了した後およびヒータ18が感光体ドラム9を加熱してから所定の時間が経過した後に行われる。また、ヒータ18による感光体ドラム9の加熱は、ヒータ18が感光体ドラム9の表面9aに対向する位置で行われ、ヒータ18による感光体ドラム9の加熱中は、感光体ドラム9は回転させられる。
【0021】
具体的には、カラープリンタ1全体の電源がONにされたとき(T1)に、ヒータ18もONにされ、感光体ドラム9は、40〜50℃(好ましくは43±2℃)まで加熱される。これにより、感光体ドラム9に付着した放電生成物が、カラープリンタ1の停止中に吸収した水分が取り除かれ、感光体ドラム9の電気抵抗の低下を防止することができる。
次に、一連の現像工程が行われる前(T2,T5)に、ヒータ18がONにされ、感光体ドラム9は上述の温度まで加熱される。そして、ヒータ18による感光体ドラム9の加熱が行われた後(T3,T6)、一連の現像工程および転写工程が行われる。これにより、感光体ドラムの電気抵抗が良好な状態で、一連の現像工程および転写工程を行うことができる。
【0022】
続いて、一連の現像工程および転写工程が完了した後(T4,T7)に、ヒータ18がONにされ、感光体ドラム9は上述の温度まで加熱される。これにより、感光体ドラム9の温度を一定に保って、放電生成物が水分を吸収することを防止し、感光体ドラム9の電気抵抗を一定に保つことができる。
さらに、ヒータ18が感光体ドラム9を加熱してから所定の時間(T8〜T9)が経過した後(T9)に、ヒータ18がONにされ、感光体ドラム9は上述の温度まで加熱される。これによって、感光体ドラム9の温度が待機中に低下することを防ぎ、感光体ドラム9の電気抵抗を一定に保つことができる。
【0023】
なお、この所定の時間(T8〜T9)は、感光体ドラム9の温度が低下して、放電生成物が水分を吸収しない範囲で定められる。
以上のように、この実施形態によれば、現像装置12のロータリラック19の外周19bの一部に、ロータリラック19の軸方向に延びるシート状のヒータ18を設けて、感光体ドラム9を加熱している。これにより、感光体ドラム9の表面9aに付着した放電生成物が空気中の水分を吸収することを防いだり、放電生成物が吸収した水分を取り除いたりすることができる。したがって、感光体ドラム9の電気抵抗が低下することを防ぎ、カラープリンタ1の画像品質を良好にすることができる。
【0024】
また、加熱によって感光体ドラム9が損傷したり、摩耗したりすることがないので、感光体ドラム9の長寿命化を図ることができる。さらに、ヒータ18をロータリラック19の外周19bの一部に設けることにより、装置の複雑化を抑え、装置を小型化することができる。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、ヒータは、シート状である例について説明したが、ヒータは、円筒状、棒状、螺旋状であってもよい。
【0025】
また、上述の実施形態では、画像形成装置がプリンタである例について説明したが、画像形成装置は、複写機またはファクシミリであってもよい。さらに、画像形成装置は、プリンタ、複写機またはファクシミリの内の2つ以上の機能を有する複合機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態における画像形成装置としてのカラープリンタの概略構成を示す図解的な断面図である。
【図2】図1における画像形成部の一部を示す拡大図である。
【図3】ヒータによる感光体ドラムの加熱のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0027】
9 感光体ドラム
9a 表面
14〜17 現像器
18 ヒータ
19 ロータリラック
X1 円周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づく静電潜像が表面に形成される感光体ドラムと、
上記感光体ドラムの表面に対向することにより、感光体ドラムの表面に異なる色のトナーを供給して、静電潜像を顕在化する複数の現像器と、
上記感光体ドラムの表面に対向することにより、感光体ドラムを加熱するヒータと、
上記複数の現像器およびヒータを円周方向に並べて保持し、回転することによって複数の現像器およびヒータをそれぞれ感光体ドラムの表面に対向する位置に移動させるロータリラックとを備え、
上記ヒータは、現像器の現像動作の停止中に感光体ドラムを加熱することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記ヒータによる感光体ドラムの加熱は、上記複数の現像器による一連の現像動作の前に行われることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記ヒータによる感光体ドラムの加熱は、ヒータが感光体ドラムを加熱してから所定時間が経過した後に行われることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−140261(P2007−140261A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335715(P2005−335715)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】