説明

画像形成装置

【課題】 画像形成装置の通常の運転状態から緊急停止した時に、クリーニング部材に対する負荷を低減するとともに、装置内への現像剤の飛散を低減して、メンテナンス性の向上を図るとともに、静電潜像担持体の長寿命化を実現できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 感光体ドラム3と、帯電器4と、露光ユニット1と、現像器2と、転写ベルト103と、除電装置41と、感光体ドラム3に張り付いた用紙Pを剥離する用紙剥離爪31と、用紙剥離爪31を感光体ドラム3に接離させるソレノイドとを備え、感光体ドラム3のトナー像を転写電界により用紙上に転写するように制御された画像形成装置1Aにおいて、緊急停止が行われた時、除電装置41以外の駆動部への通電が停止した後に、除電装置41への通電を停止するようにした停止動作制御機能63を備えたことを特徴とするものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に係り、特に、電子写真方式により前記静電潜像担持体の表面に形成された現像剤像を転写電界により記録媒体上に転写するように制御された画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速印字処理を行う電子写真方式による画像形成装置の開発が進んでいる。
例えば、電子写真方式による画像形成装置において、印字処理枚数は、数年前までは標準紙(A4横搬送)で40〜60枚/分であったものが、近年では100〜120枚/分が可能となり、画像形成装置の処理速度が高速化している(特許文献1を参照)。
【0003】
このような画像形成装置の開発において、用紙搬送のトラブル(JAM等)を回避する必要があるが、必ずしも完全な対応策が講じられるとは言いがたい。その理由として、複数種類の用紙サイズを同一条件で搬送すると、用紙の厚み、用紙の形態が同一用紙サイズでも各国の仕様によって異なるため、用紙搬送状態が異なるということが挙げられる。
【0004】
高速画像形成装置において連続印字を行う場合、用紙搬送経路の長さにもよって異なるが、複数枚の用紙が搬送されながら印字処理、定着処理等を同時進行して行われる。
例えば、120枚/分の画像形成装置では、0.5秒の間に各処理(印字処理等々)を1枚毎に行う必要があり、装置内に複数枚が滞留する状態となる。この状態で、用紙搬送にトラブルが発生すると、各部に用紙が滞留しているため、各部の用紙の取り除く処理を行う必要がある。
【0005】
この時、画像記録装置がトラブルを判断して運転を停止する場合、駆動方式にも依るが、駆動源並びに各回転体は、概して停止と同時にストップすることはなく、それぞれの質量に応じた慣性で若干の回転を行った後に停止するのが現状である。
【特許文献1】特開平11−73067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような現状に対し、用紙搬送路上に配置される複数の搬送ローラや定着ローラ等では質量が小さいために慣性があっても影響は少ないが、静電潜像担持体たる感光体ドラムでは、ある程度の質量を有しているため、駆動を停止しても慣性による回転のため、感光体ドラムの表面にキズが発生したりトナーの飛散等を招来する等の問題が生じる場合がある。
【0007】
例えば、搬送途中の用紙が、感光体ドラム近傍で手前にある時に緊急停止が行われると、感光体ドラム上には、電荷及びトナー像(画像情報)がある状態で、慣性で回転した後に停止する。転写ユニット(例えば、転写ベルト方式の場合)においては、転写電界が緊急停止と同一タイミングでOFFされるので、搬送される用紙が転写ベルトに吸着・転写すること無く、感光体ドラムに生じる電界によって該感光体ドラムに吸着した状態となる。
【0008】
一方、感光体ドラムの外周に配置される記録媒体剥離部材たる用紙剥離爪は、転写電界と同様に緊急停止と同一タイミングで通電がOFFされ、感光体ドラムから離間した状態となっているために、感光体ドラムに吸着された用紙はクリーニング部まで搬送され、クリーニング部材たるクリーニングブレードで停止する状態となる。
【0009】
この時、感光体ドラムは、用紙とクリーニングブレードで擦られることによって表面にキズが発生し、これにより、印字品位の低下、並びに感光体ドラムの劣化を招来する。
すなわち、感光体ドラムの表面が用紙とクリーニングブレードとにより繰り返し擦られることで、その表面に形成された感光層が破損してリーク現象が発生するという問題が生じる。
【0010】
さらに、感光体ドラムに張り付いた用紙によりクリーニングブレードが損傷したり、感光体ドラム上に形成されたトナーが装置内に飛散するという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みてなされたものであって、画像形成装置の通常の運転状態から緊急停止した時に、静電潜像担持体への転写媒体の張り付きを防止して、クリーニング部材に対する負荷を低減するとともに、装置内への現像剤の飛散を低減して、メンテナンス性の向上を図るとともに、静電潜像担持体の長寿命化を実現できる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明に係る画像形成装置の構成は、次の通りである。
請求項1に記載した画像形成装置は、現像剤によって現像剤像が形成される静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、前記静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像を現像剤により顕像化する現像手段と、記録媒体を前記静電潜像担持体の表面に沿って搬送する記録媒体搬送手段と、前記静電潜像担持体の表面の現像剤像を記録媒体に転写する転写手段と、前記転写手段による転写工程前に静電潜像担持体に帯電された電位を除去する転写前除電手段と、前記静電潜像担持体に張り付いた記録媒体を剥離する記録媒体剥離部材と、前記記録媒体剥離部材を前記静電潜像担持体に接離させる剥離部材駆動手段とを備え、電子写真方式により前記静電潜像担持体の表面に形成された現像剤像を転写電界により記録媒体上に転写するように制御された画像形成装置において、運転動作中に緊急停止が行われた時、前記転写前除電手段以外の駆動手段への通電を停止した後に、前記転写前除電手段への通電を停止するようにした停止動作制御機能を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
緊急停止とは、記録媒体を搬送するための記録媒体搬送路で記録媒体が詰まって搬送トラブルを生じた場合や、静電潜像担持体に記録媒体が張り付いて搬送トラブルを生じた場合等で、画像形成装置またはそれを制御する制御装置が自動的に又は手動で印字処理工程、作像工程、用紙搬送工程等を停止することを含むものとする。
【0014】
請求項2に記載した画像形成装置は、請求項1に記載した構成に加えて、前記転写前除電手段の構成に、除電ランプ、若しくは除電電極を用いることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載した画像形成装置は、請求項1または2に記載した構成に加えて、前記緊急停止時に通電を停止する駆動手段として、少なくとも前記静電潜像担持体の駆動源および前記記録媒体搬送手段の駆動源を含むものとすることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載した画像形成装置は、請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載した構成に加えて、前記転写前除電手段への通電停止タイミングを、少なくとも搬送される記録媒体が前記静電潜像担持体の記録媒体搬送方向上流側に配置されるレジストローラから前記記録媒体剥離部材に到達するまでの時間が経過した後とすることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に記載した画像形成装置は、請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載した構成に加えて、前記転写前除電手段への通電停止タイミングを、前記静電潜像担持体の駆動手段への通電を停止した時から該静電潜像担持体の慣性による回転が停止するまでの時間が経過した後とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載した発明によれば、電子写真方式により前記静電潜像担持体の表面に形成された現像剤像を転写電界により記録媒体上に転写するように制御された画像形成装置において、運転動作中に緊急停止が行われた時、前記転写前除電手段以外の駆動手段への通電を停止した後に、前記転写前除電手段への通電を停止するようにした停止動作制御機能を備えたことで、画像形成装置の通常の運転状態から緊急停止した時に、静電潜像担持体が慣性により回転し続けても、前記転写前除電手段による電界が静電潜像担持体に生じているので、静電潜像担持体の表面電位を低下させて記録媒体を吸着する吸着力を弱めて、静電潜像担持体上の現像剤を記録媒体に転写し易くするとともに、記録媒体を静電潜像担持体から剥離し易くすることできる。
【0019】
これにより、装置の緊急停止時における静電潜像担持体への転写媒体の張り付きを防止して、クリーニング部材の損傷を防ぐとともに現像剤の装置内での飛散を抑制できるので、記録媒体や記録媒体剥離部材により静電潜像担持体の表面が傷付けられることを防止でき、メンテナンス性の向上を図るとともに、静電潜像担持体の長寿命化を実現できるという優れた効果を奏し得る。
【0020】
また、請求項2〜5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明で得られる上記共通の効果に加え、次の効果を得ることができる。
【0021】
すなわち、請求項2に記載した発明によれば、前記転写前除電手段の構成に、除電ランプ、若しくは除電電極を用いることで、簡単な構成で静電潜像担持体に接触すること無く転写前の除電を行うことができる。
【0022】
請求項3に記載した発明によれば、前記緊急停止時に通電を停止する駆動手段として、少なくとも前記静電潜像担持体の駆動源および前記記録媒体搬送手段の駆動源を含むものとすることで、記録媒体へ画像情報を転写する際に関わる駆動手段を停止させた後でも、前記転写前除電手段による電界が静電潜像担持体に生じているので、静電潜像担持体の表面電位を低下させて記録媒体を吸着する吸着力を弱めて、静電潜像担持体上の現像剤を記録媒体に転写し易くするとともに、記録媒体を静電潜像担持体から剥離し易くすることができる。
【0023】
請求項4に記載した発明によれば、前記転写前除電手段への通電停止タイミングを、少なくとも搬送される記録媒体が前記静電潜像担持体の記録媒体搬送方向上流側に配置されるレジストローラから前記記録媒体剥離部材に到達するまでの時間が経過した後とすることで、通電停止後に、記録媒体が静電潜像担持体へ搬送される状態から前記記録媒体剥離部材に到達するまで静電潜像担持体が慣性で回転しても、前記転写前除電手段による電界が静電潜像担持体に生じているので、該静電潜像担持体の表面電位を低下させて記録媒体を吸着する吸着力を弱めて、静電潜像担持体上の現像剤を記録媒体に転写し易くするとともに、記録媒体を静電潜像担持体から剥離し易くすることができる。
【0024】
請求項5に記載した発明によれば、前記転写前除電手段への通電停止タイミングを、前記静電潜像担持体の駆動手段への通電を停止した時から該静電潜像担持体の慣性による回転が停止するまでの時間が経過した後とすることで、通電停止後に、記録媒体が静電潜像担持体へ搬送される状態から前記記録媒体剥離部材に到達するまで静電潜像担持体が慣性で回転しても、前記転写前除電手段による電界が静電潜像担持体に生じているので、該静電潜像担持体の表面電位を低下させて記録媒体を吸着する吸着力を弱めて、静電潜像担持体上の現像剤を記録媒体に転写し易くするとともに、記録媒体を静電潜像担持体から剥離し易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1,2は本発明を実施する形態の一例であって、図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す説明図、図2は前記画像形成装置の装置本体の構成を示す部分詳細図である。
【0026】
本実施形態に係る画像形成装置1Aは、外部から伝達された画像データを電子写真方式によって、記録媒体となる所定のシート状の記録用紙(以下、用紙と称する。)にモノクロ画像として出力形成するものである。
【0027】
まず、本実施形態に係る画像形成装置1Aの全体構成について図面を参照して説明する。
【0028】
画像形成装置1Aは、図1,2に示すように、主に、露光ユニット(露光手段)1、現像器(現像手段)2、感光体ドラム(静電潜像担持体)3、帯電器(帯電手段)4、除電装置(転写前除電手段)41、クリーナユニット5、定着ユニット6、用紙搬送路7、給紙トレイ8、排紙トレイ9及び転写機構(転写手段)10等より構成される装置本体1A1と、自動原稿処理装置1A2とにより構成されている。
【0029】
装置本体1A1の上面部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台21が設けられ、この原稿載置台21の上方には、自動原稿処理装置1A2が上方に向かい揺動開放自在に設けられ、一方、この原稿載置台21の下方には、原稿の画像情報を読み取る原稿読み取り部であるスキャナ部22が配置されている。
【0030】
そのスキャナ部22の下方には、露光ユニット1、現像器2、感光体ドラム3、帯電器4、除電装置41、クリーナユニット5、定着ユニット6、用紙搬送路7、排紙トレイ9及び転写機構10が配設され、さらに、その下方には、用紙が収納された給紙トレイ8が配設されている。
【0031】
露光ユニット1は、図示しない画像処理部から出力された画像データ(印字用画像情報)に応じてレーザ光を、帯電器4によって均一に帯電された感光体ドラム3の表面に照射して露光することにより、該感光体ドラム3の表面に画像データに応じた静電潜像を書込み形成する機能を有するものである。
【0032】
露光ユニット1は、スキャナ部22の直下で且つ感光体ドラム3上方に配置され、レーザ照射部11および反射ミラー12を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)13a,13bが採用されている。本実施形態では、高速印字処理を行う為に、複数のレーザ光を利用し、照射タイミングの高速化を低減する手法を採用し、2ビーム手法を採用している。
【0033】
尚、本実施形態では、露光ユニット1にレーザスキャニングユニット(LSU)13a,13bを用いているが、発光素子をアレイ状に並べたもの、例えばELやLED書込みヘッドを用いるものであっても良い。
【0034】
感光体ドラム3は、図2に示すように、円筒状を呈し、露光ユニット1の下方に配設され、図示しない駆動手段と制御手段により所定方向(図中の矢印A方向)に回転するように制御されている。この感光体ドラム3の外周面に沿って、画像転写終了後の位置を基準として感光体ドラム回転方向下流側に向かい、用紙剥離爪(記録媒体剥離部材)31、クリーナユニット5、電界発生部としての帯電器4、現像器2、除電装置41の順に配置されている。
【0035】
用紙剥離爪31は、ソレノイド(剥離部材駆動手段)32により感光体ドラム3の外周面に接離可能に配置されている。この用紙剥離爪31は、感光体ドラム3の外周面に当接した状態で、感光体ドラム3上の未定着トナー像を用紙に転写する際にその感光体ドラム3の表面に張り付いた用紙を剥離するものである。
【0036】
尚、用紙剥離爪31の駆動手段として、ソレノイド32の換わりに駆動用モータ等を採用しても良く、その他の駆動手段の選択も可能である。
【0037】
現像器2は、感光体ドラム3上に形成された静電潜像を黒トナーで顕像化するものであって、感光体ドラム回転方向(図中の矢印A方向)で帯電器4より下流側で感光体ドラム3の側方で略水平(図中で右側)に配置されている。この現像器2下方には記録媒体搬送方向上流側にレジストローラ15が配置されている。
【0038】
レジストローラ15は、給紙トレイ8から供給された用紙の先端と感光体ドラム3上のトナー像とを整合して感光体ドラム3と転写ベルト103との間に搬送するように、図示しない駆動手段と制御手段とのより動作制御されている。
【0039】
帯電器4は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であって、感光体ドラム3の上方でその外周面に近接して配置されている。
尚、本実施形態では、チャージャー型の帯電器4を用いているが、接触型のローラ方式によるものやブラシ方式によるものを用いるものであっても良い。
【0040】
除電装置41は、感光体ドラム3の表面に形成されたトナー像を用紙に転写し易くするために該感光体ドラム3の表面電位を低下させるための転写前除電手段であって、感光体ドラム回転方向で現像器2より下流側で、且つ該感光体ドラム3の下方でその外周面に近接して配置されている。
【0041】
尚、本実施形態では、除電装置41は、除電電極を用いて構成されているが、除電電極の替わりに除電ランプを用いたり、その他の方式により除電するようにしたものであっても良い。
【0042】
クリーナユニット5は、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを除去・回収するものであって、感光体ドラム3を挟んで現像器2と略対向する位置で感光体ドラム3の側方で略水平(図中で左側)に配置されている。
【0043】
上述した様に、感光体ドラム3上で顕像化された静電像は、静電像が有する電荷の逆極性の電界が搬送される用紙上に転写機構10から印加されることで用紙上に転写される。
例えば、静電像が(−)極性の電荷を有している時は、転写機構10の印加極性は(+)極性となる。
【0044】
転写機構10は、図2に示すように、駆動ローラ101、従動ローラ102及び他のローラで架橋されるとともに、所定の抵抗値(本実施形態では1×109〜1×1013Ω・cmの範囲)を有する転写ベルト103が配置された転写ベルト式ユニットで構成され、感光体ドラム3の下方で、転写ベルト103の表面が感光体ドラム3の外周面の一部と接触するように配置されている。この転写ベルト103により、用紙を感光体ドラム3に押圧しながら搬送するようになっている。
【0045】
感光体ドラム3と転写ベルト103の接触部104には、駆動ローラ101及び従動ローラ102とは異なる導電性で転写電界を印加可能な弾性導電性ローラ105が配置されている。
【0046】
弾性導電性ローラ105は、弾性ゴム、発泡性樹脂等の軟質材料により構成されている。この弾性導電性ローラ105が弾性を有することで、感光体ドラム3と転写ベルト103とが線接触でなく、所定の幅(転写ニップと呼ばれる。)を有する面接触となるので搬送される用紙への転写効率の向上を図ることができる。
【0047】
更に、転写ベルト103の転写領域の用紙搬送方向下流側には、搬送される用紙が転写領域で印加された電界を除電し、次工程への搬送をスムーズに行う為の除電ローラ106が転写ベルト103の背面側に配置されている。
【0048】
また、転写機構10には、転写ベルト103の残留トナーによる汚れを取るクリーニングユニット107と、転写ベルト103の除電を行う複数の除電機構108が配置されている。この除電機構108に用いられる除電を行うための手法として、装置を介して接地する手法、若しくは積極的に前記転写電界の極性とは逆極性を印加する手法がある。
【0049】
転写機構10で用紙上に転写された静電像(未定着トナー)は、定着ユニット6に搬送されて加圧・加熱されることで未定着トナーが溶融されて用紙上に定着される。
【0050】
定着ユニット6は、図2に示すように、加熱ローラ6a、加圧ローラ6bとを備え、この加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとにより用紙を挟持した状態で加熱ローラ6aを回転させ、加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの間を通過させることにより、用紙上に転写されたトナー像を溶融して定着させるものである。
【0051】
定着ユニット6の用紙搬送方向下流側には、用紙を搬送する搬送ローラ16が設けられている。
【0052】
加熱ローラ6aは、その外周部には用紙剥離爪611、ローラ表面温度検出部材(サーミスター)612、ローラ表面クリーニング部材613が配置され、内周部には加熱ローラ表面を所定温度(定着設定温度:概ね160〜200℃)とする熱源614が設けられている。
【0053】
加圧ローラ6bは、ローラの両端部で加熱ローラ6aに対し所定圧量で加圧ローラ6bが圧接することが可能な加圧部材621が配置され、さらに、加圧ローラ6bの外周には加熱ローラ6aの外周と同様に用紙剥離爪622、ローラ表面クリーニング部材623が配置されている。
【0054】
この定着ユニット6は、図2に示すように、加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの圧接部(いわゆる定着ニップ部と呼ばれる。)600において、搬送される用紙上の未定着トナーを加熱ローラ6aにより加熱して溶融し、該加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの圧接力による用紙上への投鋲作用で、未定着トナーを用紙上に定着するようになっている。
【0055】
給紙トレイ8は、画像情報が出力(印字)されるシート(用紙)を複数枚蓄積しておくためのものであり、露光ユニット1、現像器2、感光体ドラム3、帯電器4、除電装置41、クリーナユニット5、定着ユニット6等で構成される画像形成部14の下側に構成されている。この給紙トレイ8の排紙側上部には、半月状の用紙ピックアップローラ8aが配置されている(図3を参照)。
【0056】
この用紙ピックアップローラ8aは、給紙トレイ8内に積載収容された用紙を最上層から1枚づつピックアップし、下流側に向かって(便宜上の用紙の流れ出し側(カセット側)を上流、排紙側を下流とする。)用紙搬送路7上のレジストローラ(「アイドルローラ」とも称する。)15側に搬送するようになっている。
【0057】
本実施形態に係る画像形成装置1Aでは、高速印字処理を行うことを目的とする為、画像形成部14の下方に定型サイズの用紙を各々のトレイに500〜1500枚収納可能な複数の給紙トレイ8が配置され、一方、装置側面には複数の用紙種類を多量に収納可能な大容量給紙カセット81が配置されるとともに、該大容量給紙カセット81の上方に、主に不定型サイズの印字等に対応する手差しトレイ82が設けられている。
【0058】
排紙トレイ9は、手差しトレイ82とは反対側の装置側面に配置されている。また、排紙トレイ9に変わって、排紙用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等を行う装置)や複数段排紙トレイ等をオプションとして配置することも可能な構成となっている。
【0059】
用紙搬送路7は、前述した感光体ドラム3と給紙トレイ8との間に構成され、給紙トレイ8から供給される用紙を一枚ずつ転写機構10に搬送し、転写機構10において、感光体ドラム3からトナー像が転写された用紙を定着ユニット6に搬送し、定着ユニット6において、未定着トナー像を用紙に定着した後に、指定された処理モードに応じて形成された用紙搬送路や分岐爪によって用紙を搬送するように構成されている。
【0060】
ここで、用紙搬送路7について図面を参照して詳細に説明する。
図3は本実施形態に係る画像形成装置の用紙搬送路の構成を示す説明図、図4は前記用紙搬送路を構成する分岐された用紙搬送路とそれらを連通させる分岐爪の構成を示す部分詳細図である。
【0061】
用紙搬送路7は、図3,4に示すように、主に、給紙トレイ8からレジストローラ15に到る第1用紙搬送路7a1、レジストローラ15から転写機構10を介して定着ユニット6を通過して下流側の搬送ローラ16に到る第2用紙搬送路7a2、搬送ローラ16から排紙トレイ9に排紙するための排紙ローラ17に到る第3用紙搬送路7a3、搬送ローラ16から用紙Pを反転させる第4用紙搬送路7a4、第4用紙搬送路7a4と連通して再びレジストローラ15に用紙Pを搬送する反転搬送ローラ18に到る第5用紙搬送路7a5、排紙ローラ17から反転して用紙Pを搬送する第6用紙搬送路7a6、第6用紙搬送路と連通して第5用紙搬送路7a5を回避する第7用紙搬送路7a7、及び第7用紙搬送路7a7と連通してスイッチバックローラ19に到る第8用紙搬送路7a8とにより構成されている。
【0062】
そして、用紙搬送路7内には、処理モードに応じて複数枚の用紙Pが配置されるようになっている。本実施形態では、図3に示すように、用紙搬送路7内に(1)〜(8)(図中の丸付き数字に示す)の8枚の用紙Pが配置するようになっているが、用紙搬送路内に許容可能な用紙Pの枚数は、用紙搬送路の構成によって如何様にも変更が可能である。
【0063】
また、用紙搬送路7内には、選択された処理モードに応じて用紙搬送路を選択して、用紙Pの搬送経路を変更する複数の分岐爪が用紙搬送路の分岐点に設けられている。
【0064】
図4に示すように、搬送ローラ16の下流側付近には、第3用紙搬送路7a3または第4用紙搬送路7a4と連通させる分岐爪20aが揺動変位可能に設けられている。この分岐爪20aは、図示しないソレノイドによって動作するようになっている。
【0065】
第4用紙搬送路7a4の下流側には、第4用紙搬送路7a4と第5用紙搬送路7a5、または第5用紙搬送路7a5と第6用紙搬送路7a6とを連通させる分岐爪20bが揺動変位可能に設けられている。この分岐爪20bは、図示しないばね部材と用紙Pの弾性力によって動作するようになっている。
【0066】
第6用紙搬送路7a6の下流側には、第5用紙搬送路7a5または第7用紙搬送路7a7と連通させる分岐爪20cが揺動変位可能に設けられている。この分岐爪20cは、図示しないソレノイドによって動作するようになっている。
【0067】
第7用紙搬送路7a7の下流側には、第7用紙搬送路7a7と第8用紙搬送路7a8、または、第5用紙搬送路7a5と第8用紙搬送路7a8とを連通させる分岐爪20dが揺動変位可能に設けられている。この分岐爪20dは、図示しないソレノイドによって動作するようになっている。
【0068】
第5用紙搬送路7a5の上流側には、第4用紙搬送路7a4及び第8用紙搬送路7a8と該第5用紙搬送路7a5とをスムーズに連続させるための分岐爪20eが設けられている。
【0069】
以上のように構成された用紙搬送路7により、要求された処理モードに応じて分岐爪20a〜20dを動作させて、処理モードに対応した用紙Pの搬送経路を選択可能としている。
【0070】
次に、画像形成装置1Aの処理モードに対応する用紙搬送工程について図面を参照して説明する。
【0071】
印字要求に合致する用紙Pは、図3に示すように、前記複数の給紙トレイ8の中から選択され、用紙搬送路7中の搬送ローラによってレジストローラ15まで搬送される。
レジストローラ15に到達して一旦停止した用紙Pは、用紙Pの先端と前記感光体ドラム3上の画像情報を合致させるタイミングでレジストローラが再び回転することで転写機構10に搬送され、用紙P上に感光体ドラム3から未定着トナー像(画像情報)が転写された後、定着ユニット6で用紙P上にトナー像が固着されて排紙トレイ9に排出される。
【0072】
この用紙搬送路7内の搬送経路において、画像形成装置1Aが有する処理モード(コピアモード、プリンタモード、FAXモード)、および印字処理手法(片面印字、両面印字)によって定着ユニット6以降から排紙トレイ9までの搬送方法が異なる。
【0073】
通常、コピアモードでは、ユーザが画像形成装置1Aの近傍で操作を行うことから“フェースアップ排出”と呼ばれる印字面が上側になって排出される手法が多く用いられる。
【0074】
一方、プリンタ、FAX等の各モードでは、ユーザが画像形成装置1Aの近傍にいないことから排出された用紙Pのページ順を揃える“フェースダウン排出”手法が多く用いられている。
【0075】
従って、画像形成装置1Aでは、定着ユニット6を通過した用紙Pを排紙トレイ9に排出するまでの間に、複数の搬送路と複数の分岐爪を経由して、上記目的に合致する用紙排出を行うようになっている。
【0076】
(片面印字でフェースアップの排出)
画像形成装置1Aにおいて、用紙Pの片面印字でフェースアップによる排出方式の場合は、定着ユニット6を通過した用紙Pが搬送ローラ16を通過する直前に、分岐爪20aは、図示しない爪位置切換え手段(ソレノイド等)によって第3用紙搬送路7a3を開放し、第4用紙搬送路7a4を遮蔽する。
【0077】
搬送される用紙Pは、その先端部が分岐爪20aにナビゲートされて、第3用紙搬送路7a3を通過して排紙ローラ17を経て排紙トレイ9に排出される。
【0078】
(片面印字でフェースダウンの排出)
画像形成装置1Aにおいて、用紙Pの片面印字でフェースダウンによる排出方式の場合は、定着ユニット6を通過した用紙Pが搬送ローラ16を通過する直前に、分岐爪20aは、図示しない爪位置切換え手段(ソレノイド等)によって第4用紙搬送路7a4を開放し、第3用紙搬送路7a3を遮蔽する。
【0079】
更に、分岐爪20cは、図示しない爪位置切換え手段によって第5用紙搬送路7a5を開放し、第7用紙搬送路7a7を遮蔽する。
【0080】
搬送される用紙Pは、その先端部が分岐爪20aにナビゲートされて第4用紙搬送路7a4を通過し、用紙P先端の腰(材料の強さ)と搬送力とにより分岐爪20bを移動して第5用紙搬送路7a5を開放した後に、分岐爪20cにナビゲートされて第5用紙搬送路7a5に導かれる。
【0081】
用紙Pの後端が分岐爪20eの位置に到達すると、用紙Pの搬送が一旦停止する。
分岐爪20cは、図示しない爪位置切換え手段によって第6用紙搬送路7a6を開放し、第7用紙搬送路7a7を遮蔽する。
【0082】
この時、分岐爪20bは、図示しない分岐爪保持シャフトに配置される弾性部材(バネ等)によって自然に位置変位して、第4用紙搬送路7a4を遮蔽する状態となっている。
【0083】
その後、反転搬送ローラ18が逆回転することで用紙Pの再搬送が行われ、搬送される用紙Pは、分岐爪20eの位置に滞留する後端側から第6用紙搬送路7a6を通過した後に、排紙ローラ17を経て排紙トレイ9に排出される。
【0084】
(両面印字の印字手法での排出)
画像形成装置1Aにおいて、両面印字を行う場合は、用紙Pの第1面印字(表面印字)が終了し、定着ユニット6を通過した用紙Pが搬送ローラ16を通過する直前に、分岐爪20aは図示しない爪位置切換え手段(ソレノイド等)によって第4用紙搬送路7a4を開放し、第3用紙搬送路7a3を遮蔽する。
【0085】
更に、分岐爪20cは、図示しない爪位置切換え手段によって第7用紙搬送路7a7を開放し、第5用紙搬送路7a5を遮蔽する。また、分岐爪20dは、図示しない爪位置切換え手段によって第6用紙搬送路7a6を開放する。
【0086】
搬送される用紙Pは、その先端部が分岐爪20aにナビゲートされて、第4用紙搬送路7a4を通過し、用紙P先端の腰(材料の強さ)と搬送力とにより分岐爪20bを移動した後に、分岐爪20cにナビゲートされて第7用紙搬送路7a7、そして第6用紙搬送路7a6に導かれる。
【0087】
用紙Pの後端が第6用紙搬送路7a6に到達すると、用紙Pの搬送が一旦停止する(第1面のスイッチバックの完了)。その後、分岐爪20dが図示しない爪位置切換え手段によって第7用紙搬送路7a7を遮蔽し、分岐爪20eへの搬送路が開放されると、スイッチバックローラ19が逆回転することで用紙Pの再搬送が行われる。
【0088】
搬送される用紙Pは、第6用紙搬送路7a6の位置に滞留する後端側から分岐爪20eを介して第5用紙搬送路7a5を通過して、印字処理工程(転写機構における転写工程)の直前に配置されるレジストローラ15まで搬送される。
【0089】
その後、用紙Pの第2面印字(裏面印字)が終了し、定着ユニット6を通過した用紙Pは、前述した(片面印字でフェースアップの排出)と同様の処理が行われて排紙トレイ9に排出される。
【0090】
次に、本実施形態に係る画像形成装置1Aの制御系について、図5に基づき説明する。
図5は本実施形態に係る画像形成装置の電気制御部の構成をブロック図である。
本実施形態に係る画像形成装置1Aは、図5に示すように、画像の読み取り処理、画像処理、画像形成処理、および用紙Pの搬送処理等をROM(Read Only Memory)55に予め記憶されたプログラムにしたがって中央処理ユニット(CPU)54がRAM(Random access Memory)56等の一時的記憶手段を用いて処理を実行する。
尚、ROM55やRAM56に代えてHDD(ハードディスクドライブ)などの記憶手段を用いることができる。
【0091】
画像形成装置1Aにおいて、スキャナ部(原稿読み取り部)22によって読み取った原稿の画像情報(原稿画像データ)、または、図示しない通信ネットワークに繋がれた各端末装置から送信された原稿画像情報は、通信処理部58を介して画像処理部57に入力されるようになっている。
【0092】
画像処理部57は、RAM56等の記憶部に記憶された原稿画像情報を印字(記録用紙への画像形成)に適した印字用画像に上記のプログラムによって処理するものである。
【0093】
印字用画像情報は画像形成部14に入力される。
画像形成部14、用紙搬送部(用紙搬送路7等において用紙の各種検出・制御を行う。)59、定着ユニット6、排紙処理部(排紙ローラ17において用紙の各種の検出・制御を行う。)60は、各々の駆動制御部62と連動している。
【0094】
用紙搬送部59によって搬送される用紙は、印字工程(画像形成部14においての画像情報の印字処理)と、その後に、その印字処理された用紙に対する定着工程(定着ユニット6)を経て用紙排出部(排紙トレイ9)に排出されるようになっている。
尚、用紙搬送部59には、図示しないレジスト前検知スイッチ、定着検知スイッチ、および排紙検知スイッチ等の検出信号が入力されるようになっている。
【0095】
レジスト前検知スイッチは、レジストローラ15に用紙が到達したか否かを検出するスイッチである。定着検知スイッチは、定着ユニット6に用紙が到達したか否かを検出するスイッチである。排紙検知スイッチは、用紙が排紙された否かを検出するスイッチである。
【0096】
また、画像形成装置1Aには、運転条件設定部77が設けられている。
この運転条件設定部77は、操作スイッチ類76によって使用者が設定した画像形成要求または記録媒体(用紙)の種類等の画像形成条件に応じて、画像形成装置1Aの画像形成、または搬送条件等の運転条件を設定するものである。
【0097】
また、画像形成装置1Aは、設定された前記運転条件にしたがって、読み取り部(スキャナ部22)、用紙搬送部59、画像形成部14、定着ユニット6および排紙処理部60などの駆動用アクチュエータである原稿読み取り駆動部64、記録用紙搬送駆動部66、印字処理駆動部68、定着駆動部70および排紙駆動部72の動作、すなわちROM55に記憶されたプログラムに基づくCPU54の指令にしたがって同期した動作を、駆動制御部62の制御によって行うようになっている。
【0098】
駆動制御部62は、上述した制御機能の他に、画像形成装置1Aの運転動作中に緊急停止が行われた時に、各駆動部(駆動手段)の停止動作を制御するための停止動作制御機能63を備えている。
【0099】
この停止動作制御機能63は、除電装置41以外の駆動部(駆動手段)への通電を停止した後に、前記除電装置41への通電を停止するよう制御する機能である。
【0100】
本実施形態においては、緊急停止時に通電を停止する駆動部として少なくとも感光体ドラム3の駆動源(図示省略)、用紙搬送路7上の用紙Pピックアップローラ8a及びレジストローラ15の駆動用モータ(図示省略)への通電を停止した後に、除電装置410への通電を停止するようにしている。
【0101】
原稿読み取り駆動部64は、スキャナ部22の駆動用アクチュエータである。
記録用紙搬送駆動部66は、用紙搬送部59、具体的には、上述の用紙搬送路7上の用紙ピックアップローラ8a、レジストローラ15の駆動用モータである。
印字処理駆動部68は、感光体ドラム3の駆動用モータである。
定着駆動部70は、定着ユニット6の加熱ローラ6aおよび加圧ローラ6bの駆動用モータである。
【0102】
排紙駆動部72は、排紙ローラ17などの駆動用モータである。
これらの各駆動部の駆動用モータは、それぞれ同じまたは異なるモータを駆動源として適宜に動力伝達機構を介して構成できる。
【0103】
さらに、画像形成装置1Aには、オプション構成74として、後処理装置(ステープル、パンチ、複数段排紙トレイ、シフター等々)、自動原稿読み取り装置(自動原稿処理装置1A2等)、大容量給紙カセット81等が配置可能であり、それらオプション構成74は画像形成装置1Aの制御部とは別に各々のオプション構成74内に制御部74aを持ちながら、装置とのタイミング調整を、前記通信処理部58を介して同期するように構成されている。
【0104】
記録媒体検出手段78は、定着ユニット6または搬出部に用紙の先端が到達することを検出するものである。
【0105】
具体的には、記録媒体検出手段78は、用紙搬送路7入り口において用紙を導入するレジストローラ15から用紙が送り出された後の用紙の搬送時間を計測する搬送時間計測手段79aと、このレジストローラ15から制御対象の定着ユニット6および排紙ローラ17のそれぞれまでの距離と用紙の搬送速度に基づき、用紙搬送路7における用紙の搬送タイミングを検出する搬送タイミング検出手段79bとを有している。
【0106】
記録媒体検出手段78は、本実施形態では、定着ユニット6および排紙ローラ17のそれぞれに用紙が到達する(突入する)タイミングを、搬送タイミング検出手段79bによって検出した記録媒体の搬送タイミングに基づいて検出するようにしている。
【0107】
ここで、本実施形態の画像形成装置1Aの印字処理における動作タイミングについて、タイミングチャートを参照して説明する。
図6は本実施形態に係る画像形成装置の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【0108】
画像形成装置1Aの印字処理を行う場合の動作概要は、図6に示すように、タイミングT1で(1)画像形成装置1Aに電源が投入されると、それと同時に、(2)定着ユニット6の熱源614であるヒータがONされる。
【0109】
所定時間経過後のタイミングT2で(3)印字要求がされると、それと同時に、(4)感光体ドラム3が動作を開始するとともに、(5)現像器2が動作を開始する。
【0110】
そして、(3)印字要求を受けた後のタイミングT3で(6)印字要求に合致する用紙Pが給紙トレイ8より給紙が開始される。
【0111】
その後、所定時間経過後のタイミングT4で(7)帯電器4により感光体ドラム3を帯電させる。ここで、該感光体ドラム3上にレーザ光により静電潜像を形成し、現像器2により現像剤(トナー)によるトナー像を形成する作像処理が行われる。
【0112】
そして、タイミングT5で(8)除電装置41により感光体ドラム3の転写前の除電が行われた後に、タイミングT6で(9)転写機構10より搬送される用紙Pにトナー像を転写するための転写帯電が行われ、その後、タイミングT7で(10)用紙剥離爪31を動作させて感光体ドラム3に当接させて用紙剥離作用が可能になる。
【0113】
以上のようなタイミングで、画像形成部14における通常運転時の感光体ドラム3上の作像処理と感光体ドラム3から用紙Pへのトナー像の転写処理に係る動作が行われる。
【0114】
次に、本実施形態に係る画像形成装置1Aにおいて、印字処理工程中に用紙搬送トラブル等が生じて緊急停止が行われた場合の作用について図面を参照して詳細に説明する。
図7は本実施形態に係る画像形成装置の印字処理工程中に緊急停止が行われた時の動作を示すフローチャートである。図中のS1,S2・・・は各工程(ステップ)を示す。
【0115】
画像形成装置1Aによる印字処理は、図7に示すフローチャートに沿って行われる。
まず、画像形成装置1Aが待機状態から、印字要求が行われると(ステップS1)、印字条件の入力が完了したか否かが判断される(ステップS2)。
【0116】
印字条件の入力が完了していない場合、装置の操作部の表示部に条件入力を促す表示を行い(ステップS3)、ステップS2に戻る。
【0117】
印字条件の入力が完了した場合、印字処理が開始される(ステップS4)。
これより印字処理工程が開始され、印字処理工程中にトラブルが発生したか否かが判断される(ステップS5)。
【0118】
トラブルが発生せずに印字処理が終了すると、次の印字が有るか否かが判断される(ステップS6)。次の印字がある場合は、ステップS4に戻り、再び連続して印字処理が開始される。
【0119】
ステップS5にてトラブルが発生したと判断された場合、停止動作制御機能63に基づき緊急停止が行われる(ステップS7)。
【0120】
ここで、ステップS7における停止動作制御機能63に基づく停止動作制御について詳細に説明する。
図8は本実施形態に係る画像形成装置の緊急停止時における停止動作制御を示すフローチャートである。
【0121】
停止動作制御機能63による動作制御は、図8に示すように、緊急停止と同時に除電装置41の停止動作の制御を行うようにしている。
【0122】
まず、除電装置41の通電を継続した状態で、感光体ドラム3の駆動源および転写機構10の駆動源を含むその他の駆動部への通電を停止する(ステップS101)。
【0123】
そして、緊急停止から所定時間が経過した後(ステップS102)、除電装置41への通電を停止して、感光体ドラム3への電界の印加が停止される(ステップS103)。
【0124】
ここで、所定時間とは、本実施形態では少なくとも感光体ドラム3の駆動手段への通電停止後に感光体ドラム3自体の慣性による回転が停止するまでの時間とする。
【0125】
尚、所定時間として、搬送される用紙Pがレジストローラ15から用紙剥離爪31に到達するまでに要する時間としても良い。
【0126】
(緊急停止処理工程の続き)
そして、装置の操作部の表示部にトラブル内容の表示と用紙P搬送路7内に滞留する用紙Pの取り除きを促すメッセージを表示する(ステップS8)。
【0127】
トラブルが解消された否かが判断され(ステップS9)、トラブルが解消された場合は、用紙搬送路7内に滞留する用紙Pが取り除かれた否かが判断される(ステップS10)。
【0128】
トラブルが解消して用紙Pが用紙搬送路7内より取り除かれると、印字を再開するか否かが判断される(ステップS11)。印字を再開しない場合は、画像形成装置1Aは待機状態となる。
【0129】
一方、印字を再開する場合は、装置の操作部の表示部にスタートキーを押す表示を行う(ステップS12)。そして、スタートキーが押されるとステップS4に戻り(図中の丸付き数字1に進む)、再び印字処理が開始される。
以上のようにして、緊急停止が行われた場合、停止動作制御機能63に基づき印字処理や各駆動部の動作が制御される。
【0130】
次に、本実施形態の画像形成装置1Aの印字処理における緊急停止時の停止動作制御機能63に基づく動作タイミングについて、タイミングチャートを参照して説明する。
図9は前記画像形成装置の印字処理工程中に緊急停止が行われた時の各部の動作タイミングを示すタイミングチャート、図10は図9のB部のタイミングにおける感光体ドラム上の用紙の状態を示す説明図である。
尚、図中の動作タイミングにおいて、前述した通常運転時における動作タイミングと同様のものは同じ符号を付することで説明を省略する。
【0131】
画像形成装置1Aの印字処理におけるの各部の動作は、緊急停止が行われた時は停止動作制御機能63に基づき動作制御が行われる。
【0132】
画像形成装置1Aの印字処理において、図9に示すように、装置が正常運転の場合は、図中の(1)〜(10)の各部要素における動作タイミングはT2〜T7のタイミングで連続して行われる。
【0133】
装置にトラブルが発生して緊急停止となった場合は、それと同時にタイミングT8で(1)〜(10)のうちの(8)の感光体ドラム3の転写前の除電を行う除電装置41を除く各部への通電が停止される。
【0134】
(8)の除電装置41は、所定時間が経過した後にタイミングT9で通電が停止されることで、感光体ドラム3への除電処理を停止するように制御されている。
【0135】
また、タイミングT8からT9の間で、通電停止後の感光体ドラム3自体の慣性による回転が停止するようになっている。
【0136】
以上のように構成したので、本実施形態によれば、画像形成装置1Aの緊急停止時に、停止動作制御機能63によって各駆動部を停止するように制御することで、図10に示すように、感光体ドラム3が回転している間は、除電装置41による感光体ドラム3への除電処理が継続しているので、感光体ドラム3による用紙Pへのトナー像の転写状態であっても、感光体ドラム3に用紙が吸着される吸着力を弱めるとともに、トナー像を用紙Pに転写できる。これにより、感光体ドラム3に用紙Pが張り付くこと無く、また、残留トナーを低減できるので、クリーニング部材に負荷を掛けること無く、また、装置内へのトナーの飛散を低減できる。
【0137】
従って、本実施形態によれば、簡単な制御で、感光体ドラム3への用紙Pの張り付きを防止して、用紙を感光体ドラム3から容易に剥離することができるので、緊急停止時における感光体ドラム3周辺や用紙搬送路7のメンテナンス性を著しく向上させることができ、しかも、感光体ドラム3の表面を傷めること無く用紙Pを取り除くことができるので、感光体ドラム3の長寿命化を実現できる。
【0138】
また、本実施形態によれば、画像形成装置1Aを複数の処理モード(コピアモード、プリンタモード、FAXモード)が可能に構成し、用紙搬送路7の構成も複数の処理モードに対応するように構成しているので、運転中に緊急停止が行われた場合には、何れの処理モードにおいても前述した効果と同様の効果を奏し得る。
【0139】
尚、本実施形態では、除電装置41への通電を停止するタイミングT9を、感光体ドラム3の駆動手段への通電停止後に感光体ドラム3自体の慣性による回転が停止するまでの時間としているが、本発明は、除電装置41への通電を停止するタイミングを限定するものではない。
【0140】
例えば、変形例として、除電装置41への通電を停止するタイミングT9を、転写機構10に搬送される用紙Pがレジストローラ15から用紙剥離爪31に到達するまでに要する時間の経過後としても良い。
【0141】
このように構成することで、搬送される用紙Pがレジストローラ15から用紙剥離爪31に到達するまで、除電装置41による除電処理により感光体ドラム3に帯電された電位を低下させることができるので、感光体ドラム3に用紙が吸着される吸着力を弱めるとともに、トナー像を用紙に転写できる。
【0142】
これにより、感光体ドラム3に用紙Pが張り付くこと無く、また、残留トナーを低減できるので、クリーニング部材に負荷を低減できるとともに、装置内へのトナーの飛散を低減できる。
【0143】
従って、変形例によれば、前述した本実施形態と同様に、感光体ドラム3に沿って搬送される用紙が用紙剥離爪31と感光体ドラム3の外周面との間に入り込むことなく、用紙Pを感光体ドラム3の外周面から容易に剥離できるので、感光体ドラム3の表面を傷めること無く滞留した用紙Pを容易に取り出すことができ、感光体ドラム3周辺や用紙搬送路7のメンテナンス性を著しく向上させることができる。
【0144】
さらに、その他の変形例として、除電装置41への通電を停止するタイミングT9を、感光体ドラム3の慣性による該感光体ドラム3の回転が停止するまでの時間の経過後としても良い。
【0145】
このように構成することで、通電停止後に慣性により感光体ドラム3による用紙Pへのトナー像の転写が行われている状態であっても、感光体ドラム3が慣性で回転して間は、除電装置41による感光体ドラム3への除電処理が継続しているので、感光体ドラム3による用紙Pへのトナー像の転写状態であっても、感光体ドラム3に用紙が吸着される吸着力を弱めるとともに、トナー像を用紙Pに転写できる。これにより、感光体ドラム3に用紙Pが張り付くこと無く、また、残留トナーを低減できるので、クリーニング部材に負荷を掛けること無く、また、装置内へのトナーの飛散を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す説明図である。
【図2】前記画像形成装置の装置本体の構成を示す部分詳細図である。
【図3】前記画像形成装置の用紙搬送路の構成を示す説明図である。
【図4】前記用紙搬送路を構成する分岐された用紙搬送路とそれらを連通させる分岐爪の構成を示す部分詳細図である。
【図5】前記画像形成装置の電気制御部の構成をブロック図である。
【図6】前記画像形成装置の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】前記画像形成装置の印字処理工程中に緊急停止が行われた時の動作を示すフローチャートである。
【図8】前記画像形成装置の緊急停止時における停止動作制御を示すフローチャートである。
【図9】前記画像形成装置の印字処理工程中に緊急停止が行われた時の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】図9のB部のタイミングにおける感光体ドラム上の用紙の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0147】
1A 画像形成装置
1A1 装置本体
1A2 自動原稿処理装置
1 露光ユニット(露光手段)
2 現像器(現像手段)
3 感光体ドラム(静電潜像担持体)
4 帯電器(帯電手段)
7 用紙搬送路
7a1 第1用紙搬送路
7a2 第2用紙搬送路
7a3 第3用紙搬送路
7a4 第4用紙搬送路
7a5 第5用紙搬送路
7a6 第6用紙搬送路
7a7 第7用紙搬送路
7a8 第8用紙搬送路
10 転写機構(転写手段)
14 画像形成部
15 レジストローラ
20a,20b,20c,20d,20e 分岐爪
31 用紙剥離爪(記録媒体剥離部材)
32 ソレノイド(剥離部材駆動手段)
41 除電装置(転写前除電手段)
62 駆動制御部
63 停止動作制御機能
101 駆動ローラ
102 従動ローラ
103 転写ベルト(記録媒体搬送手段)
104 接触部
105 弾性導電性ローラ
T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8,T9 タイミング
P 用紙(記録媒体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤によって現像剤像が形成される静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、前記静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像を現像剤により顕像化する現像手段と、記録媒体を前記静電潜像担持体の表面に沿って搬送する記録媒体搬送手段と、前記静電潜像担持体の表面の現像剤像を記録媒体に転写する転写手段と、前記転写手段による転写工程前に静電潜像担持体に帯電された電位を除去する転写前除電手段と、前記静電潜像担持体に張り付いた記録媒体を剥離する記録媒体剥離部材と、前記記録媒体剥離部材を前記静電潜像担持体に接離させる剥離部材駆動手段とを備え、電子写真方式により前記静電潜像担持体の表面に形成された現像剤像を転写電界により記録媒体上に転写するように制御された画像形成装置において、
運転動作中に緊急停止が行われた時、前記転写前除電手段以外の駆動手段への通電を停止した後に、前記転写前除電手段への通電を停止するようにした停止動作制御機能を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写前除電手段は、除電ランプ、若しくは除電電極を用いたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記緊急停止時に通電を停止する駆動手段は、少なくとも前記静電潜像担持体の駆動源および前記記録媒体搬送手段の駆動源を含むものとすることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写前除電手段への通電停止タイミングは、少なくとも搬送される記録媒体が、前記静電潜像担持体の記録媒体搬送方向上流側に配置されるレジストローラから前記記録媒体剥離部材に到達するまでの時間が経過した後とすることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写前除電手段への通電停止タイミングは、前記静電潜像担持体の駆動手段への通電を停止した時から該静電潜像担持体の慣性による回転が停止するまでの時間が経過した後とすることを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−24978(P2007−24978A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203414(P2005−203414)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】