説明

画像形成装置

【課題】感光体ドラムでの像流れの発生を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】アモルファスシリコン系の感光体ドラム13の表面を帯電する帯電ローラ14と、感光体ドラム13への流れ込み電流によって感光体ドラム13に像流れが発生しているか否かを判定する判定回路23と、感光体ドラム13の表面に静電潜像を形成する露光デバイスと、画像形成処理後の感光体ドラム13の帯電電位を除電する除電デバイス19とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ・複写機・ファクシミリ或いはこれらを機能的に備えた複合機といった電子写真方式の画像形成装置に関し、特に、アモルファスシリコン系の感光体ドラムを帯電する帯電デバイスに帯電ローラを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術を応用したプリンタ・複写機・ファクシミリ或いはこれらを機能的に備えた複合機といった画像形成装置の感光体ドラム表面に電荷を乗せる方式として、オゾン発生量の多いスコロトロン帯電方式を搭載することが環境面において問題となっており、オゾン発生量の極めて少ない帯電ローラ方式が主流になりつつある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−126295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、感光体ドラムの帯電電流と帯電電位とは正の相関を有しており、一般的な画像形成処理時には、帯電・露光・現像・転写・除電のプロセスをこの順で繰り返し行っている。
【0004】
この際、所望の帯電電位Voを得るのに必要な電流をIdc−0とした時には、除電工程を経て常に帯電電位0Vからの帯電が必要となるため、感光体ドラムへの流れ込み電流(帯電電流)はIdc−0となる。
【0005】
一方、除電工程を行わない場合、帯電してから再度もとの帯電電位に復帰させるまでの間には、図7に示すような暗減衰特性により、初期のVoよりも低い状態で帯電領域に戻って再帯電が行われる。
【0006】
従って、この時に必要とされる電流は、暗減衰分だけ補う電流で所望の帯電電位Voを得られることになる。
【0007】
さらに、露光行程で感光体ドラムの表面に静電潜像を作成することにより、感光体ドラムの帯電電位は低下するが、微小ドットの潜像を形成した場合に、感光体ドラムが高湿環境下にあって、しかも、感光体ドラムの表面抵抗が低い状態では、潜像の流れ(像流れ)が発生する。
【0008】
これは、潜像が感光体ドラムの表面方向に流れ、潜像が浅くなることを意味している。図8は、このような潜像の変化の状態を示す。したがって像流れが発生している状態と像流れが発生していない状態とでは、潜像状態が異なり、結果として帯電電位も異なることから、再帯電に必要な電流値に差が生じることになり、図9に示すように、像流れが発生していない状態の方が再帯電電流は小さくなるといった問題が生じていた。
【0009】
また、感光体ドラムにアモルファスシリコンを用いた場合、感光体ドラムの表面抵抗は低く、オゾン生成物の付着などにより、光学手段にて形成した潜像が感光体表面方向に流れる、いわゆる像流れの不具合が高湿環境下において発生し易いという問題が発生していた。
【0010】
このため、感光体ドラムの内部にヒータを設けたり、電位センサー等で像流れを判定することも考えられるが、いずれの方式も高価な部材が必要となってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、感光体ドラムでの像流れの発生を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像形成装置は、アモルファスシリコン系の感光体ドラムの表面を帯電する帯電ローラと、前記感光体ドラムへの流れ込み電流によって前記感光体ドラムに像流れが発生しているか否かを判定する検出回路と、前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光デバイスと、画像形成処理後の前記感光体ドラムの帯電電位を除電する除電デバイスと、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この際、検出回路は、前記感光体ドラムを前記帯電ローラで帯電する際の帯電電位Voを得るのに必要な電流をIdc−0、前記除電デバイスによる除電を行わないとした場合に前記帯電ローラにより前記感光体ドラムを再帯電させた時に流れる電流をIdc−1、その時の帯電ローラ直下の帯電電位をVo−1、前記露光デバイスにより前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成した後に前記感光体ドラムが1回転した時に流れる電流をIdc−2、その時の帯電電位をVo−2とした時に、Idc−0とIdc−1との差分αと、Idc−0とIdc−2の差分βとにより画像流れを判定するのが好ましい。
【0014】
また、前記検出回路は、β−αから像流れが発生していると判定した場合に、β−αを常時モニタして像流れが発生していないと判定するまで、前記感光体ドラムのエージング動作を実施するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置は、感光体ドラムでの像流れの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置をプリンタに適用し、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタの説明図、図2は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタの要部(画像形成部)の説明図、図3は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタを用いて像流れの発生を確認する際の印字パターン(25%)の説明図、図4は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタを用いて像流れの発生を確認した際の像流れ発生時と像流れ無時の表面電位と印字率との関係を示す比較グラフ図、図5は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタを用いて像流れの発生を確認した際の感光体ドラムの表面電位と帯電ローラの帯電電流との関係を示すグラフ図、図6は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタにおける判定回路の判定基準を示すグラフ図である。
【0018】
(プリンタ1の全体構成)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタ1は、画像形成装置本体としてのプリンタ本体2の内部にスライド変位可能に格納された給紙カセット3と、給紙カセット3に収納された転写紙(図示せず)を取り出す給紙部4と、プリンタ本体2の正面に設置された手差トレイ5と、手差しトレイ5にセットされた転写紙(図示せず)を取り出す手差給紙部6と、各給紙部4,6から供給された転写紙が搬送される搬送経路7と、搬送経路7のシート搬送方向上流側で各給紙部4,6が合流する部位よりもシート搬送方向下流側に配置されたレジストローラ対8と、レジストローラ対8よりも搬送経路7のシート搬送方向下流側に配置されて転写紙の一面に画像を形成する画像形成部9と、画像形成部9よりも搬送経路7のシート搬送方向下流側に配置されて転写紙の一面に形成された画像(未定着トナー像)を定着する定着装置10と、定着装置10を通過した転写紙の他面に画像を形成する場合に搬送経路7の定着装置10よりも搬送経路下流側からレジストローラ対8よりも搬送経路7のシート搬送方向上流側に引き戻す反転経路11と、搬送経路7の終端部に設けられた排紙部12とを備えている。
【0019】
(画像形成部9の構成)
画像形成部9は、感光体ドラム13と、感光体ドラム13の周囲に配置された帯電ローラ14、露光デバイス15、現像デバイス16、転写デバイス17、クリーニングデバイス18、除電デバイス19等を備えている。
【0020】
感光体ドラム13には、アモルファスシリコン系感光体ドラムが用いられており、その構成は導電性基体上にSi:H:B:Oなどからなるキャリア注入阻止層、Si:Hなどからなるキャリア励起・輸送層(光導電層)、SiC:Hなどからなる表面保護層が順次積層されている。
【0021】
帯電ローラ14は、感光体ドラム13の上方に設置されており、感光体ドラム13を一様に帯電させるための装置である。
【0022】
露光装デバイス15は、例えば、図示を略す画像データ入力部で読み取った原稿画像に対する画像データやパーソナルコンピュータ等から出力された画像データに基づいて、感光体ドラム13上に静電潜像を形成するための装置である。
【0023】
現像デバイス16は、その静電潜像が形成された感光体ドラム13の表面に現像ローラ20を介してトナーを供給してトナー像を形成する装置である。尚、本実施例で用いられるトナーは、磁性粉を含有するほか、トナー粒子の表面に研磨微粒子が固定されている。研磨微粒子として、硬度が大きな微粒子、例えばアルミナ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物が適している。トナー粒子には研磨微粒子の他、流動性や帯電性を調整する目的でシリカなどの微量子を添加しても良い。
【0024】
これにより、画像形成部9は、感光体ドラム13が図示しない駆動手段によって所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動され、その表面が帯電ローラ14によって所定の極性・電位に均一に帯電される。
【0025】
帯電後の感光体ドラム13は、その表面に露光デバイス15によって静電潜像が形成される。ここで、露光デバイス15は、パーソナルコンピュータ等から出力された画像データに基づいて、感光体ドラム13の表面にレーザー光(鎖線参照)を照射し、感光体ドラム13の表面のレーザー光照射部分の電荷を除去して画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【0026】
そして、感光体ドラム13の表面に形成された静電潜像は、現像デバイス16の現像ローラ20によってトナーコンテナ21から供給された電荷を有するトナーが静電的に付着されて未定着トナー像として現像される。さらに、その未定着トナー像は、転写デバイス17によって転写紙に転写像として転写される。
【0027】
さらに、転写紙に未定着トナー像を転写した感光体ドラム13は、クリーニングデバイス18によって残留トナー等が除去された後、次の画像形成時の帯電のために除電デバイス19によって除電処理が施される。
【0028】
ところで、本発明の画像形成装置における帯電ローラ14は、図2に示すように、プリンタ1の全体を制御する制御回路22を介して判定回路23によって帯電電位が制御される。
【0029】
制御回路(CPU)22は、ROM等のメモリ24に格納された各種制御プログラムに基づいて画像形成処理全般に係わる制御を行う。また、メモリ24は、本発明の帯電制御に係わる制御プログラムも格納しており、この制御プログラムを実行する制御回路22とでマイクロコンピュータを構成している。尚、画像形成処理を実行する際の画像データ等は、このメモリ24とは別のRAM又はHDD等の記憶媒体(図示せず)に一時的に記憶される。
【0030】
次に、判定回路23を利用した帯電制御の制御例を、実験例を示しつつ説明する。
【0031】
この実験に使用したアモルファスシリコンの感光体ドラム13は、外径30mm、膜厚20μm、長さ254mmとし、帯電ローラ14は、外径12mm、長さ220mm、芯金の外径6mmのものを使用した。さらに、表面電位は約250Vになるように設定し、帯電ローラ14の印加はDC=400V、AC=1.4KV、周波数1.5kHzに設定した。さらに、感光体ドラム13の周速は150mm/sである。
【0032】
尚、この実験に使用した25%パターン例を図3に示す。この際、印字性能(解像度)が600dpiの場合、1inch=25.4mmであるため、25.4mm/600dpi=0.042mmとなり、1ドットは0.042mm(42.2μm)である。
【0033】
図4に示すように、帯電電位Voを250Vに設定し、印字率25%のパターンを使用したところ、感光体ドラム13に像流れが発生している状態の表面電位は160V、像流れ発生していない状態の表面電位は45Vとなった。また、実際に25%パターンで表面電位が75V以上になると画像上でも流れを検出することができた。
【0034】
ここで、帯電電位Vo=160Vの時の帯電電流をIdc−2、Vo=45Vの時の帯電電流をIdc=1とすると、図5に示すように、その電流値はそれぞれ約59μA、110μAとなり、潜像の差は再帯電電流に差を生じていることが判る。尚、Vo=75Vが限界ラインとすると、電流Idcは85μA以上が必要であることが判る。
【0035】
従って、判定回路23は、感光体ドラム13を帯電ローラ14で帯電する際の帯電電位Voを得るのに必要な電流をIdc−0、除電デバイス19による除電を行わないとした場合に帯電ローラ14により感光体ドラム13を再帯電させた時に流れる電流をIdc−1、その時の帯電ローラ14直下の帯電電位をVo−1、露光デバイス15により感光体ドラム13の表面に静電潜像を形成した後に感光体ドラム13が1回転した時に流れる電流をIdc−2、その時の帯電電位をVo−2とした時に、図6に示すように、Idc−0とIdc−1との差分αと、Idc−0とIdc−2の差分βとにより画像流れの発生を判定する。
【0036】
また、判定回路23は、β−αから像流れが発生していると判定した場合に、β−αを常時モニタし、像流れが発生していないと判定するまで、像流れ発生信号を制御回路22へと出力する。
【0037】
制御回路22は、この判定結果に基づいて、図示しない感光体ドラム13の駆動源を制御し、感光体ドラム13をエージング(空回転)させて感光体ドラム13の水分を除去することにより、像流れを解消する。
【0038】
このように、本発明の画像形成装置によれば、判定回路23によってアモルファスシリコン系の感光体ドラム13の帯電流れ込み電流値より画像流れによる潜像の乱れを検出することにより、画像流れを抑制することができる。
【0039】
ところで、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置をプリンタ1に適用して説明したが、複合機等の画像形成装置全般に適用することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタの説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタの要部(画像形成部)の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタを用いて像流れの発生を確認する際の印字パターン(25%)の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタを用いて像流れの発生を確認した際の像流れ発生時と像流れ無時の表面電位と印字率との関係を示す比較グラフ図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタを用いて像流れの発生を確認した際の感光体ドラムの表面電位と帯電ローラの帯電電流との関係を示すグラフ図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタにおける判定回路の判定基準を示すグラフ図である。
【図7】感光体ドラムにおける暗減衰特性のグラフ図である。
【図8】感光体ドラムの表面電位と露光後電位における高湿化と正常時の電位差の比較グラフ図である。
【図9】感光体ドラムにおける像流れが発生している状態と像流れが発生していない状態との表面電位と電流検出パターンとの関係のグラフ図である。
【符号の説明】
【0041】
1…プリンタ
13…感光体ドラム
14…帯電ローラ
15…露光デバイス
19…除電デバイス
22…制御回路(検出回路)
23…判定回路(検出回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファスシリコン系の感光体ドラムの表面を帯電する帯電ローラと、前記感光体ドラムへの流れ込み電流によって前記感光体ドラムに像流れが発生しているか否かを判定する検出回路と、前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光デバイスと、画像形成処理後の前記感光体ドラムの帯電電位を除電する除電デバイスと、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検出回路は、前記感光体ドラムを前記帯電ローラで帯電する際の帯電電位Voを得るのに必要な電流をIdc−0、前記除電デバイスによる除電を行わないとした場合に前記帯電ローラにより前記感光体ドラムを再帯電させた時に流れる電流をIdc−1、その時の帯電ローラ直下の帯電電位をVo−1、前記露光デバイスにより前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成した後に前記感光体ドラムが1回転した時に流れる電流をIdc−2、その時の帯電電位をVo−2とした時に、Idc−0とIdc−1との差分αと、Idc−0とIdc−2の差分βとにより画像流れを判定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出回路は、β−αから像流れが発生していると判定した場合に、β−αを常時モニタして像流れが発生していないと判定するまで、前記感光体ドラムのエージング動作を実施することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−309973(P2008−309973A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157092(P2007−157092)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】