説明

画像形成装置

【課題】
本発明は、ハードウェア仮想化の技術を利用することで、通常使用する画像形成装置とは別の画像形成装置を使用する場合でも、ユーザが操作性や作業効率を低下させることなく使用することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る画像形成装置は、複数の機能部を有する画像形成装置10であって、ハードウェア・リソースレイヤー部11と、ハードウェア・リソースレイヤー11上のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12と、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の、複数の機能部と、該機能部を制御するコントローラ部13とを有し、複数の機能部は、各々、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上で、独立して動作し、コントローラ部13が、機能部を、他の画像形成装置20のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部22上に移動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に機能毎にオペレーティング・システムを分割して配置するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスでは、コストや専有面積の削減のために、コピー機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等の複数の機能を一台で備えた画像形成装置が使用されている。
【0003】
一方、一台のハードウェアプラットフォーム上に、複数の独立した仮想マシンを構築し、複数のオペレーティング・システムを実行する仮想化技術がサーバ管理の分野で注目されている。当該仮想化技術を利用して、上記のコピー機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等の複数の機能を一台の画像形成装置で実現することもできる。
なお、特許文献1には、複数の論理区画で動作する各オペレーティング・システムに、コンソールとオペレータ・パネルの仮想コピーを与えるハイパーバイザが開示されている。
【特許文献1】特開2002−41306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の機能を有する画像形成装置では、一つの機能についてメンテナンスをする必要が生じた場合、当該画像形成装置の全ての機能を停止させ、メンテナンスを実施するため、メンテナンスをする必要のない他の複数の機能も使用することができなくなる。
【0005】
また、上記のような場合には、他の画像形成装置を代替的に使用することができるが、個々の画像形成装置によって使用されるソフトウェアが異なり、操作画面を通じた操作方法などのユーザインタフェースが異なることに起因して、ユーザの操作性や作業効率が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑み、上記ハードウェア仮想化の技術を利用することで、通常使用する画像形成装置とは別の画像形成装置を使用する場合でも、ユーザが操作性や作業効率を低下させることなく使用することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、複数の機能部を有する画像形成装置であって、ハードウェア・リソースレイヤー部と、前記ハードウェア・リソースレイヤー上のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部と、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上の、前記複数の機能部と、該機能部を制御するコントローラ部とを有し、前記複数の機能部は、各々、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上で、独立して動作し、前記コントローラ部が、前記機能部を、他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に移動させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る画像形成装置は、複数の機能部を有する画像形成装置であって、ハードウェア・リソースレイヤー部と、前記ハードウェア・リソースレイヤー部上の、前記機能部を制御するコントローラ部とを有し、前記コントローラ部は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部と、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上の複数の機能部とを有し、前記複数の機能部は、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上で、独立して動作し、前記コントローラ部が、前記機能部を、他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に移動させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一形態では、前記コントローラ部は前記各機能部での画像データの利用を調整する画像データ管理部を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一形態では、通信ネットワークを介した情報の授受を行うための通信ネットワークインタフェースを有し、前記コントローラ部が前記機能部を前記他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に、前記通信ネットワークインタフェースを介して、移動させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一形態では、記録媒体に対して情報の読み・書きを行うための記録媒体インタフェースを有し、前記コントローラ部が前記機能部を前記他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に、前記記録媒体インタフェースを介して、移動させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一形態では、前記コントローラ部が前記機能部を当該画像形成装置と通信ネットワークで接続されている記憶装置に記憶させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一形態では、各機能部には、それぞれIPアドレスが割り当てられ、前記コントローラ部による移動前の前記機能部に割り当てられた前記IPアドレスと、前記コントローラ部による移動後の前記機能部に割り当てられた前記IPアドレスとは同一であることを特徴とする。
【0014】
従って、本発明は、ハードウェア仮想化の技術を利用することで、通常使用する画像形成装置とは別の画像形成装置を使用する場合でも、ユーザが操作性や作業効率を低下させることなく使用することのできる画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハードウェア仮想化の技術を利用することで、通常使用する画像形成装置とは別の画像形成装置を使用する場合でも、ユーザが操作性や作業効率を低下させることなく使用することのできる画像形成装置、画像形成方法、画像形成プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
<第一の実施の形態>
(本実施の形態における画像形成装置の構成及びその処理動作)
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成例を示す図である。本実施の形態における画像形成装置10は、階層構造を有し、ハードウェア・リソースレイヤー部11の上に、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12があり、そのハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12の上に、コントローラ部13、FAX機能部14、コピー機能部15及びプリンタ機能部16がある構成となっている。
【0018】
ハードウェア・リソースレイヤー部11は、画像形成装置10を構成するハードウェアプラットフォームである。ハードウェア・リソースレイヤー部11は、CPU(Central Processing Unit)111、入出力装置112、メモリ113、HDD(Hard Disk Drive)114、ネットワークI/F(Interface)115、記録媒体I/F116、プロッタ117、スキャナ118、FCU(Facsimile Control Unit)119を有する。
【0019】
CPU111は、ROM(Read-Only Memory)に記憶されたプログラムを実行する装置で、RAM(Random Access Memory)に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、画像形成装置10全体の制御を行う。
【0020】
入出力装置112とは、ハードキーによるキースイッチとLCD(Liquid Crystal Display)とから構成され、画像形成装置10が有する機能をユーザが利用する際に、各種設定を行うなどのユーザインタフェースとして機能する装置である。
【0021】
メモリ113は、CPU111が実行するプログラム、データ及びネットワーク設定を記憶するROMや、CPU111でROMに記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時保持するRAMで構成される。
【0022】
HDD114は、オペレーティング・システムなどの基本ソフトやアプリケーション・ソフトウェアを関連データと共に記憶する装置である。
【0023】
ネットワークI/F115は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を介し、ネットワークに接続された他の装置との情報を交換するためのインタフェースであり、本実施の形態では、LANに接続され、TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)などの通信プロトコルに従ってLANとのデータの送受信を行う。
【0024】
記録媒体I/F116は、記録媒体を介して、他の装置と情報の交換をするためのインタフェースである。
【0025】
プロッタ117は、印刷データを受け取り、印刷を行う装置である。
スキャナ118は、原稿の画像情報を光学的に読み取って、画像データとして出力する装置である。
【0026】
FCU119は、公衆回線網に接続され、ファクシミリ装置内のデジタル信号と公衆回線網内のアナログ信号との変換を行い、G3プロトコルに従って公衆回線網に対してファクシミリ送受信を行う。
【0027】
ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12は、ハードウェア・リソースを複数の仮想マシンに仮想化するものであり、ハードウェア・リソースを複数の論理区画に分割する。また、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12は、オペレーティング・システムとその上で動作するアプリケーションを1つのシステムとして扱い、ハードウェア・リソースを、各システムに対して仮想マシンとして認識させる機能を提供し、1つのハードウェア・リソース上で複数のシステムを同時に実行することを可能にする。
【0028】
また、本実施の形態におけるハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12は、ハイパーバイザの技術を使用する構成としても良い。
【0029】
コントローラ部13は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の独立した仮想マシン上で動作し、本実施の形態における画像形成装置10の各機能部を制御する。また、コントローラ部13は、オペレーティング・システム(OS)131、画像データ管理部132、機能管理部133を有する。OS131は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の独立した仮想マシン上でコントローラ部13に割り当てられたオペレーティング・システムである。
【0030】
画像データ管理部132は、コントローラ部13が有するアプリケーションの一つであり、本実施の形態における画像形成装置10において、当該画像形成装置10の複数の機能部が同時に画像データの利用をする場合に、画像データの利用が干渉しないように調整する。
【0031】
機能管理部133は、コントローラ部13が有するアプリケーションの一つであり、本実施の形態における画像形成装置10が有する機能部を、他の画像形成装置に移動させる場合に、その移動について制御する。また、機能管理部133は、画像形成装置10が有する機能部を受け入れる場合にも、その受け入れについて制御する。
【0032】
FAX機能部14は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の独立した仮想マシン上で動作し、本実施の形態における画像形成装置10のFAX機能を実現させる機能を有する。また、FAX機能部14は、OS141、FAXアプリケーション142を有する。OS141は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の独立した仮想マシン上でFAX機能部14に割り当てられたオペレーティング・システムである。FAXアプリケーション142は、FAX機能を実現するためのプログラムである。
【0033】
コピー機能部15は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の独立した仮想マシン上で動作し、本実施の形態における画像形成装置10のコピー機能を実現させる機能を有する。また、コピー機能部15は、OS151、コピーアプリケーション152を有する。OS151は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の独立した仮想マシン上でコピー機能部15に割り当てられたオペレーティング・システムである。コピーアプリケーション152は、コピー機能を実現するためのプログラムである。
【0034】
プリンタ機能部16は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の独立した仮想マシン上で動作し、本実施の形態における画像形成装置10のプリンタ機能を実現させる機能を有する。また、プリンタ機能部16は、OS161、プリンタアプリケーション162を有する。OS161は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部12上の独立した仮想マシン上でプリンタ機能部16に割り当てられたオペレーティング・システムである。プリンタアプリケーション162は、コピー機能を実現するためのプログラムである。
【0035】
各機能部(FAX機能部14、コピー機能部15、プリンタ機能部16)は、各機能部固有のIPアドレスと画像形成装置において使用するポートとが割り当てられている。例えば、プリンタ機能部16は、IPアドレス「012.012.012.001」のポート番号631でプリンタ機能に係るジョブを受け取り、それを実行する。ここで、IPアドレス「012.012.012.001」は、画像形成装置全体のIPアドレスである。
【0036】
以下に、画像形成装置10の動作処理を説明する。
当該画像形成装置10でFAX処理を行う場合には、CPU111がFAX機能部14のFAXアプリケーション142を実行する。はじめに、ユーザが入出力装置112からFAX操作を行うと、CPU111がスキャナ118に対し、原稿を読み取るように命令を行う。そして、CPU111の命令により、読み取った原稿に係る画像データを一旦、メモリ113に記憶させる。次に、CPU111の命令により、FCU119が、メモリ113に一旦記憶させた画像データを読み出し、ユーザが指定した送信先へ当該画像データを送信する。
【0037】
当該画像形成装置10でコピー処理を行う場合には、CPU111がコピー機能部15のコピーアプリケーション152を実行する。ユーザが入出力装置112からコピー操作を行うと、CPU111がスキャナ118に対し、原稿を読み取るように命令を行う。そして、CPU111の命令により、読み取った原稿に係る画像データを、プロッタ117に印刷させる。
【0038】
当該画像形成装置10でプリンタ処理を行う場合には、CPU111がプリンタ機能部16のプリンタアプリケーション162を実行する。ユーザがネットワークI/F115を介して、画像データをプリントする操作を行うと、画像データはネットワークI/F115を介して、メモリ113に一旦記憶される。そして、CPU111の命令により、当該画像データをメモリ113から読み出し、プロッタ117に印刷させる。
【0039】
(通信ネットワークI/Fを介した機能部の移動)
以下、本実施の形態における画像形成装置10が有する機能部を、当該画像形成装置10と通信ネットワークで接続された他の画像形成装置に移動させることについて説明する。
【0040】
図2に、本実施の形態における画像形成装置10が有する機能部が、当該画像形成装置10と通信ネットワークで接続された他の画像形成装置20に移動する態様を概念的に示す。図2では、画像形成装置10から他の画像形成装置20へ、プリンタ機能部16が移動する。プリンタ機能部16は、画像形成装置10の仮想システムであるため、画像形成装置10が提供する仮想リソースと画像形成装置20が提供する仮想リソースとが同じ環境を提供している場合には、プリンタ機能部16は画像形成装置20に移動しても、画像形成装置10におけるプリンタ機能部の機能と同じ機能が画像形成装置20上でも実現される。画像形成装置20に従来あったプリンタ機能部26と、画像形成装置10から移動してきたプリンタ機能部16は画像形成装置20上で区別される。また、画像形成装置10上のプリンタ機能部16は、画像形成装置20に移動しているため、画像形成装置10上でプリンタ機能は使用できなくなっている。
【0041】
プリンタ機能部16が移動する際に、機能管理部133は、画像形成装置20上で空いているポート(番号)を探して、そのポート番号をプリンタ機能部16に新たに割り当てる。例えば、移動前のプリンタ機能部16に割り当てられたポート番号は「631」(画像形成装置10上のポート)であり、移動後のプリンタ機能部16に割り当てられたポート番号は「6310」(画像形成装置20上のポート番号)となる。ただし、プリンタ機能部16に割り当てられるIPアドレスは、画像形成装置10上であっても、画像形成装置20上であっても、同一のIPアドレスが割り当てられる。こうすることによって、移動先の画像形成装置20上で空いているポートを有効に活用することができ、ユーザ端末においてプリンタ機能部16に割り当てられるIPアドレスを変更せずに、ジョブの実行要求を通知することができる。
【0042】
また、機能管理部133は、画像形成装置10に通知されたプリンタ機能部16向けの処理要求パケットを画像形成装置20へ転送する。機能管理部133のこのIPリレー機能は処理要求に係るTCP/IPパケットのヘッダを変更して、画像形成装置10上のポート番号(例えば、「631番」)宛に通知された処理要求パケットを画像形成装置20上のポート番号(例えば、「6310番」)宛に転送する。こうすることによって、ユーザ端末から通知された印刷処理要求と印刷データを画像形成装置20上へ移動させたプリンタ機能部16へ転送し、プリンタ機能部16に、当該処理要求を実行させることができる(ジョブが印刷される)。
【0043】
次に、本実施の形態における画像形成装置10が有する機能部を、当該画像形成装置10と通信ネットワークで接続された他の画像形成装置20に移動させることについて、フローチャートを用いて詳細に説明する。図3に画像形成装置10が有する機能部を、当該画像形成装置10と通信ネットワークで接続された他の画像形成装置20に移動させることについて、フローチャートを示す。
【0044】
ここでは、図2に示すように、画像形成装置10のプリンタ機能部16を、画像形成装置20に移動させる例について説明する。
【0045】
S31で、移動元である画像形成装置10の機能管理部133が、ネットワークI/F115、215を介して、移動先である画像形成装置20の機能管理部233に接続する。そして、S32で画像形成装置10の機能管理部133は、移動先である画像形成装置20上で、プリンタ機能部16が動作するかの確認要求を行い、画像形成装置20の機能管理部233は、それに対し、当該プリンタ機能部16が動作するか否かについて確認応答をする。具体的には、移動させるプリンタ機能部16が利用する移動元でのハードウェア環境と、移動先でのハードウェア環境が一致するか確認を行い、一致すればプリンタ機能部16を移動先で動作させることができる。S32で機能管理部133が、上記の確認をすると共に、移動先である画像形成装置20上の空いているポート番号を調査する。
【0046】
S32でプリンタ機能部16が移動先でも動作するとの確認ができれば、S33で機能管理部133は、移動元である画像形成装置10のプリンタ機能部16の機能を停止させる。さらに、S33で機能管理部133が、プリンタ機能部16にS32で調査した空きポートの番号を割り当てる。この際、プリンタ機能部16に割り当てられたIPアドレスに変更はない。
【0047】
S34で移動元の画像形成装置10の機能管理部133は、プリンタ機能部16の機能を実現させるためのプログラムであるOS161及びプリンタアプリケーション162とプリンタ機能部16についての設定情報とを、移動先の画像形成装置20に、通信ネットワークを介して、送信する。S35で移動先の画像形成装置20の機能管理部233は、受信したプリンタ機能部16の機能を実現させるためのプログラムとプリンタ機能部16についての設定情報とを、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部22上に保存する。これで、プリンタ機能部16の機能は、他の画像形成装置20において実現される。そして、S36でユーザの操作要求があれば、移動先の画像形成装置20において、プリンタ機能部16の処理が開始される。
【0048】
また、S36で機能管理部133が、IPリレー機能の設定を行う。つまり、機能管理部133は、処理要求に係るTCP/IPパケットのヘッダを変更して、画像形成装置10上の従来のポート番号宛に通知された処理要求パケットを画像形成装置20上の現在のポート番号へ転送する設定を行う。その後、画像形成装置10へ処理要求が通知された場合、機能管理部133は、画像形成装置20上の現在のポート番号へ当該処理要求を転送する。
【0049】
ここで、移動先の画像形成装置20におけるプリンタ機能部16の動作処理は次のようになる。この場合、画像形成装置20のCPU211がプリンタ機能部16のプリンタアプリケーション162を実行する。まず、ユーザがネットワークI/F215を介して、画像データをプリントする操作を行うと、画像データはネットワークI/F215を介して、メモリ213に一旦記憶される。そして、CPU211の命令により、当該画像データをメモリ213から読み出し、画像形成装置20のプロッタ217に印刷させる。
【0050】
これにより、ハードウェア仮想化の技術を利用することで、通常使用する画像形成装置とは別の画像形成装置を使用する場合でも、ユーザが操作性や作業効率を低下させることなく使用することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0051】
また、機能部を他の画像形成装置上に移動させた後であっても、同じ方法で機能部へアクセスすることができ、さらに、ユーザ側の設定を変更せずにアクセスすることができる。
【0052】
(記録媒体I/Fを介した機能部の移動)
本実施の形態における画像形成装置10が有する機能部を、記録媒体を介して、他の画像形成装置20に移動させることについて、フローチャートを用いて詳細に説明する。図4に画像形成装置10が有する機能部を、記録媒体を介して、他の画像形成装置20に移動させることについて、フローチャートを示す。
【0053】
ここでは、図2に示すように、画像形成装置10のプリンタ機能部16を、画像形成装置20に移動させる例について説明する。
【0054】
S41で機能管理部133は、移動元である画像形成装置10のプリンタ機能部16の機能を停止させる。S41で機能管理部133が、先の処理に加えて、移動先である画像形成装置20上の空いているポート番号を調査し、プリンタ機能部16に当該調査した空きポートの番号を割り当てる形態としても良い。この際、プリンタ機能部16に割り当てられたIPアドレスに変更はない。
【0055】
そして、S42で移動元の画像形成装置10の機能管理部133は、プリンタ機能部16の機能を実現させるためのプログラムであるOS161及びプリンタアプリケーション162とプリンタ機能部16についての設定情報とを、記録媒体I/F116を介して、記録媒体に記録する。S43で移動先の画像形成装置20の機能管理部233は、記録媒体I/F216を介して、記録媒体に記録されたプリンタ機能部16の機能を実現させるためのプログラムとプリンタ機能部16についての設定情報とを、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部22上に保存する。これで、プリンタ機能部16の機能は、他の画像形成装置20において実現される。そして、S44でユーザの操作要求があれば、移動先の画像形成装置20において、プリンタ機能部16の処理が開始される。
【0056】
さらに、S44で機能管理部133が、IPリレー機能の設定を行うとしても良い。つまり、機能管理部133は、処理要求に係るTCP/IPパケットのヘッダを変更して、画像形成装置10上の従来のポート番号宛に通知された処理要求パケットを画像形成装置20上の現在のポート番号へ転送する設定を行う。その後、画像形成装置10への処理要求が通知された場合、機能管理部133は、画像形成装置20上の現在のポート番号へ当該処理要求を転送する。
【0057】
ここで、移動先の画像形成装置20におけるプリンタ機能部16の動作処理は次のようになる。この場合、画像形成装置20のCPU211がプリンタ機能部16のプリンタアプリケーション162を実行する。まず、ユーザがネットワークI/F215を介して、画像データをプリントする操作を行うと、画像データはネットワークI/F215を介して、メモリ213に一旦記憶される。そして、CPU211の命令により、当該画像データをメモリ213から読み出し、画像形成装置20のプロッタ217に印刷させる。
【0058】
これにより、ハードウェア仮想化の技術を利用することで、通常使用する画像形成装置とは別の画像形成装置を使用する場合でも、ユーザが操作性や作業効率を低下させることなく使用することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0059】
また、機能部を他の画像形成装置上に移動させた後であっても、同じ方法で機能部へアクセスすることができ、さらに、ユーザ側の設定を変更せずにアクセスすることができる。
【0060】
(通信ネットワーク上の記憶装置への機能部の移動)
本実施の形態における画像形成装置10が有する機能部を、ネットワークI/F115を介して、通信ネットワーク上の記憶装置に移動させ、その移動させた機能部に他の画像形成装置20がアクセスすることで、当該機能部の機能を他の画像形成装置20上で実現させることについて、フローチャートを用いて詳細に説明する。図5に画像形成装置10が有する機能部を、ネットワークI/F115を介して、通信ネットワーク上の記憶装置に移動させ、その移動させた機能部に他の画像形成装置20がアクセスすることで、当該機能部の機能を他の画像形成装置20上で実現させることについて、フローチャートを示す。
【0061】
ここでは、図6に示すように、画像形成装置10のプリンタ機能部16を、通信ネットワーク上の記憶装置30に移動させる例について説明する。
【0062】
S51で、移動元である画像形成装置10の機能管理部133が、画像形成装置20の機能管理部233に、ネットワークI/F115、215を介して、接続する。そして、S52で画像形成装置10の機能管理部133は、画像形成装置20上で、プリンタ機能部16が動作するかの確認要求を行い、画像形成装置20の機能管理部233は、それに対し、当該プリンタ機能部16が動作するか否かについて確認応答をする。具体的には、移動させるプリンタ機能部16が利用するハードウェア環境と、画像形成装置20のハードウェア環境が一致するか確認を行い、一致すればプリンタ機能部16を画像形成装置20で動作させることができる。S52でプリンタ機能部16が移動先でも動作するとの確認ができれば、S53で機能管理部133は、移動元である画像形成装置10のプリンタ機能部16の機能を停止させる。
【0063】
そして、S54で移動元の画像形成装置10の機能管理部133は、プリンタ機能部16の機能を実現させるためのプログラムであるプリンタアプリケーション162を、ネットワークI/F115を介して、通信ネットワークで接続された記憶装置30に記憶させる。また、S54で機能管理部133は、プリンタ機能部16の機能を実現させるためのプログラムであるOS161と、プリンタ機能部16についての設定情報と、当該記憶装置30へのアクセス方法に係る情報とを、他の画像形成装置20の機能管理部233に、送信する。S55で移動先の画像形成装置20の機能管理部233は、受信したOS161に係るプログラムと、プリンタ機能部16についての設定情報と、記憶装置30へのアクセス方法に係る情報とを、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部22上に保存する。
【0064】
S55で移動先の画像形成装置20のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部22上には、プリンタ機能部16のOS161が構築される。S56でユーザの操作要求があれば、画像形成装置20の機能管理部233は、通知を受けたアクセス方法により当該記憶装置30にアクセスし、記憶されたプリンタ機能部16の機能を実現させるためのプログラムであるプリンタアプリケーション162を読み出し、プリンタ機能部16に一時的に保存する。これで、プリンタ機能部16の機能は、他の画像形成装置20において実現される。そして、S57で画像形成装置20において、プリンタ機能部16の処理が開始される。
【0065】
ここで、移動先の画像形成装置20におけるプリンタ機能部16の動作処理は次のようになる。まず、ユーザがネットワークI/F215を介して、画像データをプリントする操作を行うと、画像形成装置20の機能管理部233は、記憶装置30にアクセスし、プリンタアプリケーション162を読み出す。そして、機能管理部233は、それをプリンタ機能部16に保存し、プリンタ機能部16の機能が実現される。そして、画像形成装置20のCPU211はプリンタ機能部16のプリンタアプリケーション162を実行する。次に、画像データはネットワークI/F215を介して、メモリ213に一旦記憶される。そして、CPU211の命令により、当該画像データをメモリ213から読み出し、画像形成装置20のプロッタ217に印刷させる。
【0066】
これにより、ハードウェア仮想化の技術を利用することで、通常使用する画像形成装置とは別の画像形成装置を使用する場合でも、ユーザが操作性や作業効率を低下させることなく使用することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0067】
(本実施の形態における画像形成装置の変形例)
本実施の形態における画像形成装置の変形例について説明する。図7は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の変形例を示す図である。
【0068】
変形例における画像形成装置70は、ハードウェア・リソースレイヤー部71とコントローラ部72から構成される。そして、ハードウェア・リソースレイヤー部71の上に、コントローラ部72があり、当該コントローラ部72は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部73を有し、当該ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部73の上に、FAX機能部74、コピー機能部75及びプリンタ機能部76がある構成となっている。
【0069】
この変形例における画像形成装置70及び画像形成装置70を構成する各部の動作処理は、前述した本実施の形態における画像形成装置10及び画像形成装置10を構成する各部の処理動作と同様である。また、通信ネットワークを介した機能部の移動、記録媒体を介した機能部の移動及び通信ネットワークで接続された記憶装置30への機能部の移動についても、前述した本実施の形態における画像形成装置10の例と同様である。
【0070】
従って、本変形例においても、ハードウェア仮想化の技術を利用することで、通常使用する画像形成装置とは別の画像形成装置を使用する場合でも、ユーザが操作性や作業効率を低下させることなく使用することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態における画像形成装置が有する機能部が、通信ネットワークで当該画像形成装置と接続された他の画像形成装置に移動する態様を概念的に示す図である。
【図3】画像形成装置が有する機能部を、通信ネットワークで当該画像形成装置と接続された他の画像形成装置に移動させることについてのフローチャートを示す図である。
【図4】画像形成装置が有する機能部を、記録媒体を介して、他の画像形成装置に移動させることについてのフローチャートを示す図である。
【図5】画像形成装置が有する機能部を、通信ネットワーク上の記憶装置に移動させることについてのフローチャートを示す図である。
【図6】本実施の形態における画像形成装置が有する機能部が、通信ネットワークで接続された記憶装置に記憶される態様を概念的に示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10 画像形成装置
11 ハードウェア・リソースレイヤー部
12 ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部
13 コントローラ部
14 FAX機能部
15 コピー機能部
16 プリンタ機能部
132 画像データ管理部
133 機能管理部
20 画像形成装置
21 ハードウェア・リソースレイヤー部
22 ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部
23 コントローラ部
24 FAX機能部
25 コピー機能部
26 プリンタ機能部
232 画像データ管理部
233 機能管理部
70 画像形成装置
71 ハードウェア・リソースレイヤー部
72 コントローラ部
73 ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部
74 FAX機能部
75 コピー機能部
76 プリンタ機能部
722 画像データ管理部
723 機能管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能部を有する画像形成装置であって、
ハードウェア・リソースレイヤー部と、
前記ハードウェア・リソースレイヤー部上のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部と、
前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上の、前記複数の機能部と、該機能部を制御するコントローラ部と、を有し、
前記複数の機能部は、各々、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上で、独立して動作し、
前記コントローラ部が、前記機能部を、他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に移動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
複数の機能部を有する画像形成装置であって、
ハードウェア・リソースレイヤー部と、
前記ハードウェア・リソースレイヤー部上の、前記機能部を制御するコントローラ部とを有し、
前記コントローラ部は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部と、
前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上の前記複数の機能部と、を有し、
前記複数の機能部は、各々、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上で、独立して動作し、
前記コントローラ部が、前記機能部を、他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に移動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記コントローラ部は、前記各機能部での画像データの利用を調整する画像データ管理部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
通信ネットワークを介した情報の授受を行うための通信ネットワークインタフェースを有し、
前記コントローラ部が、前記機能部を、前記他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に、前記通信ネットワークインタフェースを介して、移動させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項5】
記録媒体に対して情報の読み・書きを行うための記録媒体インタフェースを有し、
前記コントローラ部が、前記機能部を、前記他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に、前記記録媒体インタフェースを介して、移動させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記コントローラ部が、前記機能部を、当該画像形成装置と通信ネットワークで接続されている記憶装置に記憶させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項7】
各機能部には、それぞれIPアドレスが割り当てられ、
前記コントローラ部による移動前の前記機能部に割り当てられた前記IPアドレスと、前記コントローラ部による移動後の前記機能部に割り当てられた前記IPアドレスとは同一であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項8】
ハードウェア・リソースレイヤー部と、前記ハードウェア・リソースレイヤー部上のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部と、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上の、複数の機能部と、該機能部を制御するコントローラ部とを有し、前記複数の機能部は、各々、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上で、独立して動作する画像形成装置の画像形成方法であって、
前記コントローラ部が、前記機能部を、他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に移動させる工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
ハードウェア・リソースレイヤー部と、前記ハードウェア・リソースレイヤー部上の、機能部を制御するコントローラ部とを有し、前記コントローラ部は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部と、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上の複数の機能部とを有し、前記複数の機能部は、各々、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上で、独立して動作する画像形成装置の画像形成方法であって、
前記コントローラ部が、前記機能部を、他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に移動させる工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
各機能部には、それぞれIPアドレスが割り当てられ、
前記コントローラ部による移動前の前記機能部に割り当てられた前記IPアドレスと、前記コントローラ部による移動後の前記機能部に割り当てられた前記IPアドレスとは同一であることを特徴とする請求項8又は9記載の画像形成方法。
【請求項11】
ハードウェア・リソースレイヤー部と、前記ハードウェア・リソースレイヤー上のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部と、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上の、複数の機能部と、該機能部を制御するコントローラ部とを有し、前記複数の機能部は、各々、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上で、独立して動作する画像形成装置の画像形成プログラムであって、
コンピュータに、
前記コントローラ部が、前記機能部を、他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に移動させる工程を実行させることを特徴とする画像形成プログラム。
【請求項12】
ハードウェア・リソースレイヤー部と、前記ハードウェア・リソースレイヤー部上の、機能部を制御するコントローラ部とを有し、前記コントローラ部は、ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部と、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上の複数の機能部とを有し、前記複数の機能部は、各々、前記ハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上で、独立して動作する画像形成装置の画像形成プログラムであって、
コンピュータに、
前記コントローラ部が、前記機能部を、他の画像形成装置のハードウェア・リソース仮想化レイヤー部上に移動させる工程を実行させることを特徴とする画像形成プログラム。
【請求項13】
各機能部には、それぞれIPアドレスが割り当てられ、
前記コントローラ部による移動前の前記機能部に割り当てられた前記IPアドレスと、前記コントローラ部による移動後の前記機能部に割り当てられた前記IPアドレスとは同一であることを特徴とする請求項11又は12記載の画像形成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−201092(P2009−201092A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217160(P2008−217160)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】