説明

画像形成装置

【課題】ギャップ調整を効率良く実行でき、処理効率の低下を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、記録部に第1軸に沿って移動可能に支持される第1部材を有し、第1軸に沿う記録部に対する第1部材の一方向への相対移動に応じて、第1軸と交差する第2軸に沿う一方向及び逆方向のそれぞれに記録部を移動して、記録部とターゲットとのギャップを調整可能な移動機構と、第1部材を支持した記録部を第1軸に沿って移動する第1駆動機構と、記録部の記録動作が実行される記録領域の外側で、記録部の移動により第1部材と当接可能な位置に配置され、第1部材との当接により第1部材を記録部に対して一方向へ相対移動する当接部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置として、シート状の記録媒体に記録ヘッドよりインクを噴射して、その記録媒体上に画像を形成するインクジェットプリンタが知られている。インクジェットプリンタは、例えば下記特許文献に開示されているように、記録ヘッドと記録媒体とのギャップを調整するギャップ調整装置を備えている。
【特許文献1】特開2004−322515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ギャップの調整動作が時間を要したり、煩雑であったりすると、画像形成装置の処理効率が低下する可能性がある。そのため、ギャップ調整を効率良く実行できる技術の案出が望まれる。
【0004】
本発明は、ギャップ調整を効率良く実行でき、処理効率の低下を抑制できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に従えば、記録部に第1軸に沿って移動可能に支持される第1部材を有し、前記第1軸に沿う前記記録部に対する前記第1部材の一方向への相対移動に応じて、前記第1軸と交差する第2軸に沿う一方向及び逆方向のそれぞれに前記記録部を移動して、前記記録部とターゲットとのギャップを調整可能な移動機構と、前記第1部材を支持した前記記録部を前記第1軸に沿って移動する第1駆動機構と、前記記録部の記録動作が実行される記録領域の外側で、前記記録部の移動により前記第1部材と当接可能な位置に配置され、前記第1部材との当接により前記第1部材を前記記録部に対して前記一方向へ相対移動する当接部材と、を備える画像形成装置が提供される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、当接部材と第1部材の少なくとも一部とを当接させた状態で、記録部に対して第1部材を第1軸に沿う一方向に相対移動するだけで、記録部を第2軸に沿う一方向及び逆方向のそれぞれに移動して、記録部とターゲットとのギャップ調整を効率良く実行できる。したがって、処理効率の低下を抑制できる。
【0007】
本発明の第1の態様において、前記当接部材は、位置が固定され、前記第1駆動機構は、前記当接部材と前記第1部材の少なくとも一部とを当接させた状態で、前記第1部材を支持した前記記録部を前記当接部材に向かう一方向に前記第1軸に沿って移動し、前記第1駆動機構の駆動により、前記第1部材が前記記録部に対して前記一方向へ相対移動する。これにより、記録部を一方向へ移動するだけで、記録部とターゲットとのギャップ調整を良好に実行できる。
【0008】
本発明の第1の態様において、前記相対移動量に応じて、前記第2軸に沿う前記記録部の移動量が調整される。これにより、第1部材の相対移動量を調整するだけで、第2軸に沿う記録部の移動量を調整して、記録部とターゲットとのギャップを効率良く調整できる。
【0009】
本発明の第1の態様において、前記相対移動量に応じて、前記第2軸に沿う前記記録部の移動方向が調整される。これにより、第1部材の相対移動量を調整するだけで、第2軸に沿う記録部の移動方向を調整して、記録部とターゲットとのギャップを効率良く調整できる。
【0010】
本発明の第1の態様において、前記第1部材は、前記第1軸に沿って厚みが変化し、前記記録部の所定面と基準部材の基準面との間を相対移動する。これにより、所定面と基準面との間に配置される第1部材の厚みに応じて、第1物体を移動することができる。
【0011】
本発明の第1の態様において、前記第2軸に沿って前記記録部に相対移動可能に支持され、前記記録部との間で前記第1部材を前記第1軸に沿って移動可能に支持する第2部材を備え、前記基準部材は、前記第2部材を含む。これにより、記録部と第2部材との間に配置される第1部材の厚みに応じて、記録部を移動することができる。
【0012】
本発明の第1の態様において、前記第2軸に沿う前記基準部材の位置がほぼ固定されるように、前記基準部材を支持する支持部材を備える。これにより、記録部は、支持部材に支持された基準部材に対して移動することができる。
【0013】
本発明の第1の態様において、前記記録部と前記基準部材とが接近するように前記記録部と前記基準部材とを付勢する第1付勢部材を備える。これにより、第1付勢部材の付勢力によって、記録部と基準部材との間で第1部材を挟み込むことができ、所定面と基準面との間に配置される第1部材の厚みに応じて、記録部を良好に移動することができる。
【0014】
本発明の第1の態様において、前記当接部材が配置された前記記録領域の外側で、前記記録部の少なくとも一部を覆うキャップ部材を備える。これにより、ギャップ調整動作とキャッピング動作とを同じ領域で実行することができる。
【0015】
本発明の第1の態様において、前記当接部材へ向かう前記記録部の移動に伴って、前記キャップ部材を前記記録部に接近するように移動する第2駆動機構を備える。これにより、ギャップ調整動作とキャッピング動作とを並行して実行できる。
【0016】
本発明の第1の態様において、前記第2駆動機構は、前記キャップ部材に接続され、前記当接部材へ向かって移動する前記記録部の少なくとも一部と接触し、前記記録部の移動と同期して移動可能な接触部と、前記記録部に接近するように前記キャップ部材をガイドするガイド部材とを含む。これにより、記録部の移動に伴って、記録部とキャップ部材とを効率良く接近させることができる。
【0017】
本発明の第1の態様において、前記移動機構は、前記第1部材と前記当接部材とが接触した状態で、前記当接部材へ向かう前記記録部の移動に伴って、前記記録部を前記キャップ部材に接近するように移動する。これにより、記録部の移動に伴って、記録部とキャップ部材とを効率良く接近させることができる。
【0018】
本発明の第1の態様において、前記第1軸に沿う前記記録部に対する前記第1部材の可動範囲を規定する規定部を備え、前記一方向への移動により前記可動範囲の一端に前記第1部材が配置されたときに、前記記録部が前記キャップ部材に最も接近する。これにより、例えば記録部を可動範囲の最も端に移動したときに、記録部とキャップ部材とを良好に接近させることができる。
【0019】
本発明の第1の態様において、前記一方向への移動により前記可動範囲の一端に配置された前記第1部材を他端(第1軸に沿う初期位置)へ戻すリセット機構を備える。これにより、第1部材がの一方向へ所定の位置までの移動するだけでによって、第1部材を他端(第1軸に沿う初期位置)へ戻して、記録部を第2軸に沿う初期位置へ戻すことができる。万が一、何らかのエラーが発生し記録部位の制御に不具合が発生した状況であっても、簡単な動作でエラーの解除が可能となる。
【0020】
本発明の第1の態様において、前記第1軸に沿う所定位置で前記記録部に対する前記第1部材の移動を規制するストッパ機構を備える。これにより、移動が規制された第1部材の所定位置に応じた第2軸に沿う位置において、記録部の位置を固定することができる。
【0021】
本発明の第1の態様において、前記記録部は、流体を噴射可能な噴射ヘッド、及び前記噴射ヘッドを支持するキャリッジの少なくとも一方を含む。これにより、噴射ヘッドとターゲットとのギャップを効率良く調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0023】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る画像形成装置1の一例を示す模式図である。本実施形態においては、画像形成装置1が、インク等の液体(液状体)を噴射して、シート状の記録媒体Pに画像を記録する液体噴射装置(液状体噴射装置)である場合を例にして説明する。本実施形態においては、流体噴射装置1が、記録ヘッド2の噴射口3から記録媒体Pにインクを噴射して、その記録媒体Pに画像を形成するインクジェット式画像形成装置である場合を例にして説明する。本実施形態においては、インクジェット式画像形成装置1の一例として、シート状の記録媒体である記録紙Pにインクの滴を吐出(噴射)して、その記録紙Pに画像を形成するインクジェットプリンタについて説明する。
【0024】
図1において、インクジェットプリンタ1は、ハウジング4と、ハウジング4内に配置され、インクで記録紙Pに画像を形成可能な記録部5と、記録紙Pを支持するプラテン6と、インクジェットプリンタ1全体の動作を制御する制御装置14とを備えている。記録部5は、インクを噴射可能な記録ヘッド2と、記録ヘッド2を支持して移動可能なキャリッジ7とを含む。
【0025】
また、インクジェットプリンタ1は、記録部5をY軸に沿って移動する第1駆動機構8を備えている。第1駆動機構8は、記録部5の移動を案内するガイド部材9と、キャリッジ7を支持するタイミングベルト10と、タイミングベルト10の一端(−Y側の端)に配置された駆動プーリ11と、他端(+Y側の端)に配置された従動プーリ12と、駆動プーリ11を駆動するモータ13とを備えている。
【0026】
また、インクジェットプリンタ1は、記録ヘッド2をメンテナンス可能なメンテナンス装置15を備えている。メンテナンス装置15は、キャッピング装置16及びワイピング装置(不図示)を含む。メンテナンス装置15は、記録部5のホームポジションHPに配置される。ホームポジションHPは、記録部5の移動領域LA内であって、記録部5による記録動作が実行される記録領域MAの外側の端部領域NAに設けられている。
【0027】
プラテン6は、記録領域MAに配置され、記録ヘッド2からのインクが供給される記録紙Pを支持する。制御装置14は、プラテン6に支持された記録紙Pにインクを供給するために、第1駆動機構8を用いて、記録部5を記録領域MAに配置する。
【0028】
また、本実施形態において、インクジェットプリンタ1は、記録部5とプラテン6に支持された記録紙Pとのギャップを調整するギャップ調整装置17を備えている。本実施形態において、ギャップ調整装置17は、記録部5をZ軸に沿って移動する移動する移動機構18を備えている。ギャップ調整装置17は、移動機構18を用いて、Z軸に沿う一方向(+Z方向)及び逆方向(−Z方向)のそれぞれに記録部5を移動して、記録部5とプラテン6に支持された記録紙Pとのギャップを調整する。
【0029】
記録ヘッド2は、所謂、電気機械変換方式の液滴吐出ヘッドである。記録ヘッド2は、ピエゾ素子(圧電素子)と、ピエゾ素子の変形により圧力が変化する空間とを有する。空間は、ピエゾ素子の変形によって変位する可撓性の膜、及び噴射口3を有するプレート(ノズルプレート)等で形成される。空間には、インクが貯留される。ピエゾ素子にパルス的な電気信号が供給されると、その電気信号に基づいてピエゾ素子が変形する。ピエゾ素子の変形によって可撓性の膜が変位すると、インクを貯留した空間の圧力が変化する。その圧力の変化により、空間のインクの一部が、噴射口3より噴射(吐出)される。
【0030】
記録ヘッド2は、インクを噴射する噴射口3が形成された噴射面19を備えている。噴射口3は、インクの滴を吐出可能である。本実施形態において、噴射面19は、XY平面とほぼ平行である。噴射口3は、噴射面19において、例えばY軸に沿って所定間隔で複数形成されている。
【0031】
キャリッジ7は、記録ヘッド2を支持して移動可能である。キャリッジ7は、ボックス部材であり、記録ヘッド2を収容可能な内部空間7Kを有する。キャリッジ7は、プラテン6と対向する下面(−Z側の面)7Uに開口7Hを有する。噴射面19を含む記録ヘッド2の一部は、開口7Hに配置される。
【0032】
プラテン6は、キャリッジ7に支持された記録ヘッド2の噴射面19と対向する位置に配置され、記録紙Pの一方の面を支持する。記録ヘッド2及びキャリッジ7を含む記録部5は、プラテン6の上方(+Z側)に配置されている。
【0033】
第1駆動機構8は、記録部5をY軸に沿って移動する。記録部5は、第1駆動機構8の駆動により、記録領域MA及び端部領域NAを含む、Y軸方向に長い所定の移動領域LA内を移動可能である。
【0034】
ガイド部材9は、キャリッジ7の移動を案内する。ガイド部材9は、Y軸方向に長いロッド部材である。ガイド部材9の両端は、ハウジング4に支持されている。キャリッジ7は、ガイド部材9が配置される孔7Aを有する被ガイド部7Bを有する。被ガイド部7Bは、−X方向を向くキャリッジ7の側面に、Y軸に沿って2つ配置されている。駆動プーリ11は、ガイド部材9の一端(−Y側の端)の近傍に配置されている。従動プーリ12は、ガイド部材9の他端(+Y側の端)の近傍に配置されている。駆動プーリ11は、モータ13の駆動によって回転する。タイミングベルト10は、駆動プーリ11及び従動プーリ12に掛けられている。タイミングベルト10の一部は、キャリッジ7に固定されている。
【0035】
モータ13の駆動により、駆動プーリ11が回転すると、その駆動プーリ11及び従動プーリ12に掛けられているタイミングベルト10が回転する。タイミングベルト10が回転することによって、そのタイミングベルト10に固定(支持)されているキャリッジ7が、ガイド部材9に案内されながら、Y軸に沿って移動する。制御装置14は、モータ13の駆動に基づく駆動プーリ11の回転方向を調整することによって、キャリッジ7を、+Y方向及び−Y方向のそれぞれに移動可能である。このように、キャリッジ7及びそのキャリッジ7に支持された記録ヘッド2を含む記録部5は、Y軸に沿って移動可能であり、Y軸に沿う一方向(+Y方向)及び逆方向(−Y方向)のそれぞれに移動可能である。
【0036】
記録紙Pは、記録紙搬送機構(不図示)により、記録部5とプラテン6との間において、X軸に沿って移動可能である。制御装置14は、第1駆動機構8による記録部5のY軸方向への移動、及び記録紙搬送機構による記録紙PのX軸方向への移動を実行しながら、記録部5の記録ヘッド2より、プラテン6に支持された記録紙Pへインクを吐出する。これにより、記録紙Pに画像が形成される。
【0037】
キャッピング装置16は、記録ヘッド2の噴射面19と対向可能なキャップ部材20を備えている。キャップ部材20は、噴射面19を覆うことができる。キャップ部材20は、記録領域MAの外側の端部領域NAにおいて、噴射面19を覆う。キャップ部材20は、記録ヘッド2及びキャリッジ7を含む記録部5の下方(−Z側)に配置される。
【0038】
キャップ部材20は、噴射面19との間に空間を形成可能である。また、キャッピング装置16は、キャップ部材20と噴射面19との間に形成された空間のインクを吸引可能な吸引装置21を備えている。吸引装置21は、キャップ部材20の底に接続された吸引チューブ21A、及び吸引チューブ21Aに配置された吸引ポンプ21Bを含む。吸引装置21で吸引されたインクは、回収タンク22に回収される。
【0039】
次に、ギャップ調整装置17について、図2〜図10を参照して説明する。図2は、ギャップ調整装置17の一部を示す斜視図、図3は、ギャップ調整装置17によって移動されるキャリッジ7を示す斜視図、図4は、図3のA−A線矢視図、図5は、ギャップ調整装置17の第1部材23を示す斜視図、図6は、図5のB−B線矢視図、図7は、ギャップ調整装置17の第2部材24を示す図、図8は、ギャップ調整装置17の移動機構18を示す斜視図、図9は、移動機構18を上方から見た平面図、図10は、図8のC−C線矢視図である。なお、図3、図8等においては、記録ヘッド2、及びキャリッジ7の被ガイド部7Bの図示を省略してある。
【0040】
ギャップ調整装置17は、キャリッジ7にY軸に沿って移動可能に支持される第1部材23を有し、キャリッジ7に対するY軸に沿う第1部材23の一方向(−Y方向)への相対的な移動に応じて、Y軸と交差するZ軸に沿う一方向(+Z方向)及び逆方向(−Z方向)のそれぞれにキャリッジ7を移動して、キャリッジ7に支持された記録ヘッド2とプラテン6に支持された記録紙Pとのギャップを調整可能な移動機構18を備えている。
【0041】
図3に示すように、キャリッジ7は、記録ヘッド2が配置される内部空間7Kを含む第1部分71と、移動機構18が設けられる第2部分72とを有する。第1部分71は、下面7U及び開口7Hを含む。第2部分72は、第1部分71の+X側に配置される。第2部分72は、下面7Uより+Z側に配置された下面7Sと、下面7Sと逆向きの上面7Tとを有する。下面7Sは、−Z側を向く面であり、XY平面とほぼ平行である。上面7Tは、+Z側を向く面であり、XY平面とほぼ平行である。
【0042】
第2部分72は、上面7Tと下面7Sとを連通するように形成された孔25と、孔25に対して−Y側に配置され、上面7Tと下面7Sとを連通するように形成された開口26とを有する。XY平面内において、孔25は、略円形である。XY平面内において、開口26は、Y軸方向に長い。また、開口26に対して−Y側の第2部分72の側板7Cに、その側板7Cを貫通する第1通路27が形成されている。第1通路27は、開口26と接続するように形成されている。また、開口26に対して+Y側の所定位置に、第1フック部28が配置されている。第1フック部28は、キャリッジ7に固定されている。第1フック部28と開口26と第1通路27とは、Y軸に沿って配置されている。
【0043】
開口26の内面に、第1、第2、第3カム部材29、30、31が配置されている。第1カム部材29は、X軸方向に関する開口26の中心に対して、+X側及び−X側のそれぞれに配置されている。同様に、第2カム部材30は、X軸方向に関する開口26の中心に対して、+X側及び−X側のそれぞれに配置され、第3カム部材31は、X軸方向に関する開口26の中心に対して、+X側及び−X側のそれぞれに配置されている。第1、第2、第3カム部材29、30、31のうち、第1カム部材29は、最も+Y側に配置され、第2カム部材30は、第1カム部材29に次いで+Y側に配置され、第3カム部材31は、最も−Y側に配置されている。
【0044】
図4に示すように、第1カム部材29は、+Y側を向き、Z軸に対して−Y側に傾斜する第1面29Aと、−Y側を向く第2面29Bと、第1面29Aの上端と第2面29Bの上端とを結び、XY平面とほぼ平行な第3面29Cと、第1面29Aの下端と第2面29Bの下端とを結ぶ第4面29Dとを有する。第3面29Cは、上面7Tとほぼ同一平面内に配置されている(面一である)。本実施形態において、上面7Tと第1面29Aとがなす角度θ1は、90度より小さい(鋭角である)。本実施形態においては、角度θ1は、例えば30度である。また、上面7T(第3面29C)と第2面29Bとがなす角度θ2は、90度より小さい。本実施形態においては、角度θ2は、例えば85度である。また、第1カム部材29は、第1面29Aと第4面29Dとの間に、下面7Sより−Z側へ突出する突出部29Tを備える。
【0045】
第2カム部材30は、+Y側を向き、Z軸に対して−Y側に傾斜する第5面30Aと、−Y側を向く第6面30Bと、第5面30Aの上端と第6面30Bの上端とを結び、XY平面とほぼ平行な第7面30Cと、第5面30Aの下端と第6面30Bの下端とを結ぶ第8面30Dとを有する。第7面30Cは、上面7Tとほぼ同一平面内に配置されている(面一である)。第8面30Dは、下面7Sとほぼ同一平面内に配置されている(面一である)。本実施形態において、上面7Tと第5面30Aとがなす角度θ3は、90度より小さい(鋭角である)。本実施形態においては、角度θ3は、例えば30度である。また、上面7T(第7面30C)と第6面30Bとがなす角度θ4は、90度より小さい。本実施形態においては、角度θ4は、例えば85度である。
【0046】
第3カム部材31は、+Y側を向き、Z軸に対して−Y側に傾斜する第9面31Aと、−Y側を向く第10面31Bと、第9面31Aの下端と第10面31Bの下端とを結び、XY平面とほぼ平行な第11面31Dとを有する。第11面31Dは、下面7Sとほぼ同一平面内に配置されている(面一である)。本実施形態において、上面7Tと第9面31Aとがなす角度θ5は、90度より小さい(鋭角である)。本実施形態においては、角度θ5は、例えば30度である。また、上面7Tと第10面31Bとがなす角度θ6は、90度より小さい。本実施形態においては、角度θ6は、例えば85度である。また、第3カム部材31は、第9面31Aと第10面31Bとの間に、上面7Tより+Z側へ突出する突出部31Tを備える。
【0047】
本実施形態において、第1カム部材29と第2カム部材30との間に、第1凹部32が設けられ、第2カム部材30と第3カム部材31との間に、第2凹部33が設けられる。第1凹部32と第2凹部33とは、Y軸に沿ってキャリッジ7(第2部分72)に配置される。第1凹部32は、第2凹部33の+Y側に配置される。
【0048】
また、本実施形態においては、角度θ1と角度θ3と角度θ5とは、ほぼ同じであり、角度θ2と角度θ4と角度θ6とは、ほぼ同じである。
【0049】
本実施形態においては、Y軸方向に関して、第2面29Bと第5面30Aとの距離と、第6面30Bと第9面31Aとの距離とは、ほぼ同じである。また、角度θ2と角度θ4とは、ほぼ同じであり、角度θ3と角度θ5とはほぼ同じである。したがって、本実施形態においては、第1凹部32と、第2凹部33とは、ほぼ同じ形状である。
【0050】
また、本実施形態においては、Y軸方向に関して、第10面31Bと、その第10面31Bと対向する開口26の内面26Yとの距離は、第2面29Bと第5面30Aとの距離、及び第6面30Bと第9面31Aとの距離より十分に大きい。以下の説明において、第10面31Bと、その第10面31Bと対向する内面26Yとの間の開口26の一部を適宜、第2通路34、と称する。
【0051】
図5に示すように、第1部材23は、Y軸方向に長い部材である。第1部材23は、本体部35と、本体部35の−Y側に配置され、Y軸方向に長いアーム部36と、アーム部36の先端に配置された凸部37と、本体部35の−Y側に、アーム部36及び凸部37を囲むように配置されたフレーム部38と、フレーム部38の上面(+Z側を向く面)の−Y側の端に配置された第2フック部39とを備えている。
【0052】
アーム部36は、凸部37を支持する。X軸方向に関して、凸部37は、アーム部36より大きい。凸部37が配置された先端と反対側のアーム部36の基端は、本体部35に接続されている。本実施形態において、第1部材23は、例えば合成樹脂製である。アーム部36は、図5中、矢印R方向(ほぼZ軸方向)に弾性変形可能である。基端を本体部35に支持されたアーム部36の先端に配置されている凸部37は、アーム部36の弾性変形によって、ほぼZ軸方向に移動可能である。
【0053】
本体部35は、Y軸に沿って厚みが変化する。本体部35の厚みは、Z軸方向に関する本体部35のサイズである。本実施形態において、本体部35は、第1厚みH1を有する第1部分41と、第1厚みH1より厚い第2厚みH2を有する第2部分42と、第2厚みH2より厚い第3厚みH3を有する第3部分43とを有する。第1、第2、第3部分41、42、43のうち、第1部分41は、最も−Y側に配置され、第2部分42は、第1部分41に次いで−Y側に配置され、第3部分43は、最も+Y側に配置されている。
【0054】
図5及び図6に示すように、本実施形態において、本体部35、アーム部36、凸部37、及びフレーム部38の上面(+Z側を向く面)のそれぞれは、XY平面とほぼ平行であり、同一平面内に配置される(面一である)。第1部分41、第2部分42、及び第3部分43の下面(−Z側を向く面)のそれぞれは、XY平面とほぼ平行である。第1部分41、第2部分42、及び第3部分43の下面のそれぞれは、Z軸方向に関して位置が異なる。
【0055】
また、本体部35は、本体部35の上面と下面とを連通するように形成された開口40を有する。XY平面内において、開口40は、Y軸方向に長い。以下の説明において、開口40の−Y側の端の内面40Aを適宜、第1当接面40A、と称し、+Y側の端の内面40Bを適宜、第2当接面40B、と称する。
【0056】
図6に示すように、凸部37は、+Y側を向く第12面37Aと、−Y側を向き、Z軸に対して−Y側に傾斜する第13面37Bと、第12面37Aの上端と第13面37Bの上端とを結び、XY平面とほぼ平行な第14面(上面)37Cとを有する。第14面37Cとアーム部36及びフレーム部38の上面とは、同一平面内に配置される(面一である)。
【0057】
図7(A)は、第2部材24を−X側から見た図、図7(B)は、第2部材24を+Y側から見た図である。図7に示すように、第2部材24は、Z軸方向に長いロッド部45と、ロッド部45の下端に配置された下側フランジ部46と、ロッド部45の上端に配置された上側フランジ部47とを有する。XY平面内において、下側フランジ部46及び上側フランジ部47のそれぞれは、ロッド部45より大きい。また、本実施形態においては、XY平面内において、下側フランジ部46は、上側フランジ部47より大きい。また、下側フランジ部46は、X軸方向に関するサイズのほうが、Y軸方向に関するサイズより大きい。下側フランジ部46は、+Z側を向く上面(基準面)44を有する。
【0058】
図8、図9、及び図10に示すように、第1部材23は、第1部材23の上面と、キャリッジ7(第2部分72)の下面7Sとが対向するように配置される。第2部材24のロッド部45は、キャリッジ7の開口25及び第1部材23の開口40に配置される。本実施形態においては、ロッド部45と下側フランジ部46(又は上側フランジ部47)とはリリース可能である。したがって、ロッド部45と下側フランジ部46(又は上側フランジ部47)とをリリースして、ロッド部45を開口25及び開口40に配置した後、そのロッド部45と下側フランジ部46(又は上側フランジ部47)とを接続することができる。
【0059】
第2部材24は、下側フランジ部46の基準面44で、キャリッジ7(第2部分72)の下面7Sとの間で第1部材23を挟むように支持する。第2部材24は、キャリッジ7(第2部分72)との間で、第1部材23をY軸に沿って移動可能に支持する。第1部材23は、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間をY軸方向に移動可能である。
【0060】
第2部材24は、Z軸に沿ってキャリッジ7の第2部分72に相対移動可能に支持される。開口25は、ロッド部45より僅かに大きい。また、開口40は、ロッド部45より十分に大きい。したがって、第2部材24は、Z軸に沿ってキャリッジ7の第2部分72及び第1部材23に対して相対移動可能である。
【0061】
また、本実施形態においては、ギャップ調整装置17は、キャリッジ7と下側フランジ部46とが接近するようにキャリッジ7と下側フランジ部46とを付勢する第1付勢部材48を備えている。本実施形態において、第1付勢部材48は、上側フランジ部47とキャリッジ7(第2部分72)の上面7Tとの間に配置されたコイルばねである。コイルばね48は、僅かに圧縮されている。コイルばね48は、上側フランジ部47とキャリッジ7とが離れる方向に力を発生する。したがって、そのコイルばね48により、下側フランジ部46とキャリッジ7とが近付く方向に力が発生する。
【0062】
また、本実施形態においては、ギャップ調整装置17は、キャリッジ7と第1部材23とを連結する第2付勢部材49を備えている。本実施形態において、第2付勢部材49は、キャリッジ7に設けられた第1フック部28と、第1部材23に設けられた第2フック部39とを連結するコイルばねである。第1部材23の第2フック部39は、キャリッジ7の第1フック部28に対して、−Y側に配置される。
【0063】
また、キャリッジ7と第2部材24の下側フランジ部46との間に配置された状態で、第1部材23(本体部35)の+Y側の端部50は、キャリッジ7より+Y側に配置される。
【0064】
図1及び図2に示すように、第1部材23の端部50と当接可能な位置に、当接部材51が配置されている。当接部材51は、記録部5による記録動作が実行される記録領域MAの外側の端部領域NAに配置されている。当接部材51の位置は固定されている。
【0065】
上述のように、本実施形態においては、キャリッジ7は、第1駆動機構8によって、Y軸に沿って移動可能である。第1駆動機構8は、第1部材23を支持したキャリッジ7をY軸に沿って移動可能である。制御装置14は、第1駆動機構8を用いて、端部領域NAにおいて、キャリッジ7を+Y方向に移動することにより、キャリッジ7に支持されている第1部材23の端部50を当接部材51に当接(接触)させることができる。当接部材51は、キャリッジ7の+Y方向への移動により、第1部材23の端部50と当接可能な位置に配置されている。したがって、制御装置14は、第1駆動機構8を用いて、キャリッジ7を+Y方向に移動することにより、キャリッジ7に支持されている第1部材23の端部50を当接部材51に当接させることができる。第1部材23は、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間において、キャリッジ7に対してY軸に沿って相対的に移動可能である。したがって、第1部材23は、当接部材51との当接により、キャリッジ7に対して、−Y方向へ相対的に移動する。このように、本実施形態においては、第1部材23を支持したキャリッジ7をY軸に沿って移動する第1駆動機構8と、キャリッジ7の+Y方向への移動により第1部材23と当接可能な位置に配置された当接部材51との協働により、キャリッジ7に対して第1部材23を−Y方向へ相対的に移動することができる。
【0066】
本実施形態においては、当接部材51の位置は固定されており、第1部材23の端部50と当接部材51とを当接させた状態で、第1駆動機構8を用いてキャリッジ7を当接部材51に向けて+Y方向に移動することにより、当接部材51に対する第1部材23の位置が変化しない状態で、キャリッジ7及び第2部材24が、当接部材51に接近するように+Y方向へ移動する。すなわち、第1部材23は、当接部材51との当接により、キャリッジ7及び第2部材24に対して、−Y方向へ相対的に移動する。以下、簡単のため、位置が固定された当接部材51と第1部材23の端部50とを当接させた状態で、キャリッジ7を+Y方向に移動することにより、キャリッジ7に対して第1部材23が−Y方向へ相対的に移動することを、単に、キャリッジ7に対して第1部材23が−Y方向へ移動する、と省略して記載する場合がある。
【0067】
また、図1及び図2に示すように、ギャップ調整装置17は、下側フランジ部46の下面を支持する支持部材52を備えている。支持部材52は、Y軸方向に長い部材である。支持部材52の位置は固定されている。支持部材52は、Z軸に沿う下側フランジ部46(第2部材24)の位置がほぼ固定されるように、下側フランジ部46を支持する。
【0068】
下側フランジ部46の下面と対向する支持部材52の上面は、XY平面とほぼ平行である。下側フランジ部46は、支持部材52上を滑るように移動可能である。第1駆動機構8の駆動により、キャリッジ7がY軸方向へ移動すると、第2部材24も、キャリッジ7と一緒にY軸方向へ移動する。第2部材24は、下側フランジ部46の下面を支持部材52に支持されながら、その支持部材52上をY軸に沿って移動可能である。したがって、キャリッジ7がY軸方向に移動した場合においても、Z軸に沿う下側フランジ部46(第2部材24)の位置はほぼ固定される。
【0069】
次に、上述の構成を有するギャップ調整装置17を備えたインクジェットプリンタ1の動作の一例について、図10〜図13を参照して説明する。以下、主にギャップ調整動作を中心に説明する。
【0070】
本実施形態においては、図10に示すように、凸部37が第1カム部材29の+Y側に配置されているとき、第1部材23の第1部分41がキャリッジ7と下側フランジ部46との間に配置される。また、図10に示す状態において、コイルばね49は、僅かに伸張されている。したがって、コイルばね49は、キャリッジ7に対して第1部材23を+Y側に付勢している。すなわち、コイルばね49により、第1部材23には、キャリッジ7に対して+Y方向へ移動する力が作用する。
【0071】
以下の説明において、図10に示すような、凸部37が第1カム部材29の+Y側に配置されている第1部材23の状態を適宜、初期状態、と称する。初期状態においては、第1部分41の第1厚みH1に応じたZ軸方向に関する所定位置に、キャリッジ7が配置される。
【0072】
凸部37が第1カム部材29の+Y側に配置されている初期状態においては、第2部材24のロッド部45と、第1部材23の第1当接面40Aとが当接(接触)する。開口25に支持された第2部材24のロッド部45と、第1部材23の第1当接面40Aとが接触することによって、初期状態においてコイルばね49により第1部材23にキャリッジ7に対して+Y方向へ移動する力が作用しても、第1部材23の+Y方向への過剰な移動が抑制される。
【0073】
制御装置14は、例えば画像を形成するための記録紙Pの厚み等に応じて、ギャップ調整装置17を用いるギャップ調整動作を開始する。制御装置14は、第1駆動機構8を用いて、第1部材23を支持したキャリッジ7を+Y方向に移動し、第1部材23の端部50と、位置が固定されている当接部材51とを当接させる。これにより、第1部材23には、−Y方向への力が作用する。第1部材23は、キャリッジ7に対して−Y方向への相対移動を開始する。
【0074】
当接部材51との当接により、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動が開始されると、第1部材23の凸部37と、キャリッジ7の第1カム部材29の突出部29Tとが当接する。上述のように、アーム部36は、Z軸方向に弾性変形可能である。キャリッジ7の第1カム部材29の突出部29Tと、第1部材23の凸部37とが当接した状態で、キャリッジ7に対して第1部材23が−Y方向へ相対移動することによって、アーム部36は、+Z方向へ弾性変形する。アーム部36の+Z方向への弾性変形により、凸部37は、第1カム部材29の第1面29Aに案内されつつ、+Z方向へ移動することができる。
【0075】
制御装置14は、第1部材23の端部50と、位置が固定されている当接部材51とを当接させた状態で、第1駆動機構8を用いて、キャリッジ7を、当接部材51に向けてさらに+Y方向へ移動する。これにより、第1部材23は、キャリッジ7に対して、さらに−Y方向へ相対移動する。これにより、第1面29Aに案内されつつ+Z方向へ移動する第1部材23の凸部37は、第3面29Cに沿って移動した後、−Z方向へのアーム部36の弾性変形により、第1凹部32に入り込む。これにより、図11に示す状態となる。以下の説明において、図11に示すような、凸部37が第1凹部32に配置されている第1部材23の状態を適宜、第2状態、と称する。
【0076】
第1凹部32の少なくとも一部は、凸部37より小さい。したがって、凸部37は、第1凹部32に配置される。換言すれば、凸部37は、第1カム部材29の第2面29B等と接触し、第1カム部材29に引っかかることができる。第1凹部32に凸部37が配置されることによって、Y軸に沿う第1部材23の移動が規制される。本実施形態においては、コイルばね49によって、第1部材23に−Y方向へ向かう力が作用されている場合でも、凸部37が第1凹部32に配置されることによって、Y軸に沿う第1部材23の移動が規制される。
【0077】
本実施形態においては、図11に示すように、凸部37が第1凹部32に配置されている第2状態のとき、第1部材23の第2部分42がキャリッジ7と下側フランジ部46との間に配置される。支持部材52によって、Z軸に沿う下側フランジ部46の位置がほぼ固定されており、キャリッジ7と下側フランジ部46との間に、第1部分41より厚い第2部分42が配置されるので、キャリッジ7は、初期状態に比べて、+Z方向に移動する。第2状態においては、第2部分42の第2厚みH2に応じたZ軸方向に関する所定位置に、キャリッジ7が配置される。
【0078】
本実施形態において、制御装置14は、初期状態の第1部材23の端部50が当接部材51と当接された状態から、第1部材23の凸部37が第1凹部32に配置されるまで(第1部材23が第2状態になるまで)、第1駆動機構8を用いて、キャリッジ7を+Y方向へ所定量だけ移動する。第1部材23は、第1駆動機構8によるキャリッジ7の+Y方向への移動量に応じた量だけ、キャリッジ7に対して−Y方向に相対移動する。以下の説明において、初期状態から第2状態になるまでの第1部材23の相対移動量を適宜、第1移動量、と称する。第1移動量は、当接部材51と第1部材23の端部50とを当接させた状態で、第1部材23を初期状態から第2状態にするために、当接部材51に向けてキャリッジ7を+Y方向へ移動するときの移動量を含む。
【0079】
また、制御装置14は、キャリッジ7を+Y方向に移動して、第2状態の第1部材23の端部50と、当接部材51とを当接させることができる。当接部材51との当接により、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動が開始されると、第1部材23の凸部37と、キャリッジ7の第2カム部材30との間に作用する力が増す。上述のように、アーム部36は、Z軸方向に弾性変形可能である。キャリッジ7の第2カム部材30と、第1部材23の凸部37とが当接した状態で、キャリッジ7に対して第1部材23が−Y方向へ相対移動することによって、アーム部36は、+Z方向へ弾性変形する。アーム部36の+Z方向への弾性変形により、凸部37は、第2カム部材30の第5面30Aに案内されつつ、+Z方向へ移動することができる。
【0080】
制御装置14は、第1部材23の端部50と、位置が固定されている当接部材51とを接触させた状態で、第1駆動機構8を用いて、キャリッジ7を、当接部材51に向けてさらに+Y方向へ移動する。これにより、第1部材23は、キャリッジ7に対して、さらに−Y方向へ相対移動する。これにより、第5面30Aに案内されつつ+Z方向へ移動する第1部材23の凸部37は、第1凹部32から出て、第7面30Cに沿って移動した後、−Z方向へのアーム部36の弾性変形により、第2凹部33に入り込む。これにより、図12に示す状態となる。以下の説明において、図12に示すような、凸部37が第2凹部33に配置されている第1部材23の状態を適宜、第3状態、と称する。
【0081】
第2凹部33の少なくとも一部は、凸部37より小さい。したがって、凸部37は、第2凹部33に配置される。換言すれば、凸部37は、第2カム部材30の第6面30B等と接触し、第2カム部材30に引っかかることができる。第2凹部33に凸部37が配置されることによって、Y軸に沿う第1部材23の移動が規制される。本実施形態においては、コイルばね49によって、第1部材23に−Y方向へ向かう力が作用されている場合でも、凸部37が第2凹部33に配置されることによって、Y軸に沿う第1部材23の移動が規制される。
【0082】
本実施形態においては、図12に示すように、凸部37が第2凹部33に配置されている第3状態のとき、第1部材23の第3部分43がキャリッジ7と下側フランジ部46との間に配置される。支持部材52によって、Z軸に沿う下側フランジ部46の位置がほぼ固定されており、キャリッジ7と下側フランジ部46との間に、第2部分42より厚い第3部分43が配置されるので、キャリッジ7は、第2状態に比べて、+Z方向に移動する。第3状態においては、第3部分43の第3厚みH3に応じたZ軸方向に関する所定位置に、キャリッジ7が配置される。
【0083】
本実施形態において、制御装置14は、第2状態の第1部材23の端部50が当接部材51と当接された状態から、第1部材23の凸部37が第2凹部33に配置されるまで(第1部材23が第3状態になるまで)、第1駆動機構8を用いて、キャリッジ7を+Y方向へ所定量だけ移動する。第1部材23は、第1駆動機構8によるキャリッジ7の+Y方向への移動量に応じた量だけ、キャリッジ7に対して−Y方向に相対移動する。以下の説明において、第2状態から第3状態になるまでの第1部材23の相対移動量を適宜、第2移動量、と称する。第2移動量は、当接部材51と第1部材23の端部50とを当接させた状態で、第1部材23を第2状態から第3状態にするために、当接部材51に向けてキャリッジ7を+Y方向へ移動するときの移動量を含む。
【0084】
また、制御装置14は、キャリッジ7を+Y方向に移動して、第3状態の第1部材23の端部50と、当接部材51とを当接させることができる。当接部材51との当接により、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動が開始されると、第1部材23の凸部37と、キャリッジ7の第3カム部材31との間に作用する力が増す。上述のように、アーム部36は、Z軸方向に弾性変形可能である。キャリッジ7の第3カム部材31と、第1部材23の凸部37とが当接した状態で、キャリッジ7に対して第1部材23が−Y方向へ相対移動することによって、アーム部36は、+Z方向へ弾性変形する。アーム部36の+Z方向への弾性変形により、凸部37は、第3カム部材31の第9面31Aに案内されつつ、+Z方向へ移動することができる。
【0085】
制御装置14は、第1部材23の端部50と、位置が固定されている当接部材51とを接触させた状態で、第1駆動機構8を用いて、キャリッジ7を、当接部材51に向けてさらに+Y方向へ移動する。これにより、第1部材23は、キャリッジ7に対して、さらに−Y方向へ相対移動する。これにより、第9面31Aに案内されつつ+Z方向へ移動する第1部材23の凸部37は、第2凹部33から出た後、−Z方向へのアーム部36の弾性変形により、第2通路34に入り込む。これにより、図13に示す状態となる。以下の説明において、図13に示すような、凸部37が第2通路34に配置される第1部材23の状態を適宜、開放状態、と称する。
【0086】
第2通路34は、凸部37より大きい。すなわち、第2通路34には、凸部37が引っかかる部分が無い。したがって、凸部37は、第2通路34を通過して、下面7S側に配置される。下面7S側に凸部37が配置されることによって、コイルばね49による、第1部材23に対する−Y方向へ作用する力(付勢力)により、第1部材23は、キャリッジ7に対して、+Y方向へ相対的に移動し、初期状態に戻ることができる。
【0087】
なお、第1部材23を開放状態から初期状態へ戻すとき、実際には、制御装置14は、凸部37が下面7S側に配置された状態で、第1駆動機構8を用いて、キャリッジ7を当接部材51から離れるように−Y方向へ移動する。
【0088】
第1部材23が初期状態に戻ることによって、第1部材23の第1部分41がキャリッジ7と下側フランジ部46との間に配置される。支持部材52によって、Z軸に沿う下側フランジ部46の位置がほぼ固定されており、キャリッジ7と下側フランジ部46との間に、第3部分43より薄い第1部分41が配置されるので、キャリッジ7は、第3状態に比べて、−Z方向に移動する。初期状態においては、第1部分41の第1厚みH1に応じたZ軸方向に関する所定位置に、キャリッジ7が配置される。
【0089】
制御装置14は、第3状態の第1部材23の端部50が当接部材51と当接された状態から、第1部材23の凸部37が第2通路34に配置されるまで(第1部材23が開放状態になるまで)、第1駆動機構8を用いて、キャリッジ7を+Y方向へ所定量だけ移動する。第1部材23は、第1駆動機構8によるキャリッジ7の+Y方向への移動量に応じた量だけ、キャリッジ7に対して−Y方向に相対移動する。以下の説明において、第3状態から開放状態になるまでの第1部材23の相対移動量を適宜、第3移動量、と称する。第3移動量は、当接部材51と第1部材23の端部50とを当接させた状態で、第1部材23を第3状態から開放状態にするために、当接部材51に向けてキャリッジ7を+Y方向へ移動するときの移動量を含む。
【0090】
なお、図12、図13等に示すように、第1部材23の移動方向前方に配置されている側板7Cには、第2フック部39を含む第1部材23の少なくとも一部が通過可能な第1通路27が形成されているので、第1部材23の移動は妨げられない。
【0091】
図13に示すように、開放状態においては、第2部材24のロッド部45と、第1部材23の第2当接面40Bとが接触する。開口25に支持された第2部材24のロッド部45と、第1部材23の第2当接面40Bとが接触することによって、開放状態において、第1駆動機構8及び当接部材51の作用により第1部材23にキャリッジ7に対して−Y方向へ移動する力が作用しても、第1部材23の−Y方向への過剰な移動が抑制される。
【0092】
このように、本実施形態においては、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動量(当接部材51に向かうキャリッジ7の+Y方向への移動量)に応じて、キャリッジ7の+Z方向への移動量、及び−Z方向への移動量が調整される。また、本実施形態においては、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動量(当接部材51に向かうキャリッジ7の+Y方向への移動量)に応じて、キャリッジ7の移動方向が調整される。本実施形態においては、初期状態から第1部材23を−Y方向へ第1移動量で相対移動することで、キャリッジ7は、第1部分41の第1厚みH1と第2部分42の第2厚みH2との差に応じた量だけ、+Z方向へ移動することができる。また、第2状態から第1部材23を−Y方向へ第2移動量で相対移動することで、キャリッジ7は、第2部分42の第2厚みH2と第3部分43の第2厚みH3との差に応じた量だけ、+Z方向へ移動することができる。また、第3状態から第1部材23を−Y方向へ第3移動量で相対移動することで、キャリッジ7は、第3部分43の第3厚みH3と第1部分41の第1厚みH1との差に応じた量だけ、−Z方向へ移動することができる。
【0093】
また、本実施形態においては、初期状態の第1部材23を第1移動量だけ移動して第2状態にする場合、第2状態の第1部材23を第2移動量だけ移動して第3状態にする場合、及び第3状態の第1部材23を第3移動量だけ移動して開放状態(初期状態)にする場合のそれぞれについて説明したが、初期状態の第1部材23の端部50と当接部材51とを当接させた状態で、第1駆動機構8によりキャリッジ7を+Y方向へ所定量移動して、例えば第1移動量と第2移動量との和に相当する移動量でキャリッジ7に対して第1部材23を相対移動することにより、第1部材23を初期状態から第3状態へ変化させることができる。これにより、キャリッジ7は、第1部分41の第1厚みH1と第3部分43の第2厚みH3との差に応じた量だけ、+Z方向へ移動することができる。
【0094】
また、本実施形態においては、Y軸に沿うキャリッジ7に対する第1部材23の可動範囲が、第1当接面40A及び第2当接面40Bを含む開口40によって規定される。すなわち、本実施形態においては、開口40が、Y軸に沿う第1部材23の可動範囲を規定する規定部として機能する。そして、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動により、その第1部材23の可動範囲の一端に配置された状態(ロッド部45と第2当接面40Bとが当接した状態)の第1部材23を、コイルばね40を含むリセット機構53によって、可動範囲の他端に配置される状態(ロッド部45と第1当接面40Aとが当接する状態)に戻すことができる。
【0095】
また、リセット機構53のコイルばね49により、第1部材23に付勢力が作用している場合でも、Y軸に沿ってキャリッジ7に複数配置された第1、第2凹部32、33と、第1部材23に設けられ、第1、第2凹部32、33のそれぞれに配置可能な凸部37とを含むストッパ機構54によって、Y軸に沿う所定位置でキャリッジ7に対する第1部材23の移動を規制することができる。
【0096】
また、本実施形態においては、第1部材23は、凸部37を支持し、弾性変形可能なアーム部36を備えている。したがって、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動に伴うキャリッジ7の第1、第2、第3カム部材29、30、31と凸部37との当接によるアーム部36の弾性変形により、凸部37を第1、第2凸部32、33に対して出入りさせることができる。
【0097】
記録部5を用いて、プラテン6に支持された記録紙Pに画像を形成する場合において、例えばその記録紙Pの厚みが第1厚みの場合、制御装置14は、端部領域NAにおいて第1部材23を初期状態にし、Z軸方向に関して記録部5を所定位置に配置した状態で、第1駆動機構8を用いて、その記録部5を記録領域MAに配置する。また、第1厚みより厚い第2厚みの記録紙Pに画像を形成する場合、制御装置14は、端部領域NAにおいて第1部材23を第2状態にし、Z軸方向に関して記録部5を所定位置に配置した状態で、第1駆動機構8を用いて、その記録部5を記録領域MAに配置する。また、第2厚みより厚い第3厚みの記録紙Pに画像を形成する場合、制御装置14は、端部領域NAにおいて第1部材23を第3状態にし、Z軸方向に関して記録部5を所定位置に配置した状態で、第1駆動機構8を用いて、その記録部5を記録領域MAに配置する。
【0098】
また、本実施形態においては、当接部材51が配置された端部領域NAに、キャッピング装置16が配置されている。キャッピング装置16は、当接部材51が配置された端部領域NAで、記録ヘッド2の噴射面19を覆うことができる。したがって、図14に示すように、例えば第1部材23の端部50と当接部材51とを当接させた状態で、記録ヘッド2の噴射面19をキャップ部材20で覆って、記録ヘッド2をメンテナンスすることができる。換言すれば、当接部材51を用いるギャップ調整動作と、キャップ部材20を用いるメンテナンス動作とを並行して実行することができる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態によれば、キャリッジ7に対して第1部材23を−Y方向に相対移動するだけで、キャリッジ7を+Z方向及び−Z方向(上下方向)のそれぞれに移動することができる。したがって、キャリッジ7に支持された記録ヘッド2とプラテン6に支持された記録紙Pとのギャップ調整を効率良く実行できる。
【0100】
また、ギャップ調整動作は、記録領域MAの一方の端の外側に配置された端部領域NAで実行されるので、インクジェットプリンタ1の大型化を抑制することができる。
【0101】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0102】
図15は、第2実施形態に係る画像形成装置1の一部を示す斜視図、図16は、第2実施形態に係る画像形成装置1の動作の一例を示す模式図である。第2実施形態の特徴的な部分は、キャッピング装置16が、当接部材51へ向かうキャリッジ7の移動(+Y方向への移動)に伴って、キャップ部材20を記録ヘッド2に接近するように移動する第2駆動機構60を備えた点にある。
【0103】
図15及び図16において、第2駆動機構60は、キャップ部材20に接続され、当接部材51へ向かって+Y方向へ移動する記録ヘッド2の一部と接触し、記録ヘッド2の移動と同期して移動可能な接触部61と、記録ヘッド2の移動と同期して記録ヘッド2に接近するように、キャップ部材20をガイドするガイド部材62とを備えている。
【0104】
接触部61は、キャップ部材20の+Y側の側面に接続されたプレート部材63の少なくとも一部に配置される。プレート部材63の上端は、キャップ部材20の上面より+Z側に配置される。本実施形態において、接触部61は、キャップ部材20の上面より+Z側に配置されたプレート部材63の一部である。
【0105】
キャップ部材20の−X側の側面には、凸部64が設けられている。凸部64は、キャップ部材20の−X側の側面において、Y軸方向に複数(本実施形態においては2つ)配置されている。同様に、キャップ部材20の+X側の側面にも、複数(2つ)の凸部64がY軸方向に配置されている。
【0106】
ガイド部材62は、第1プレート65と、第1プレート65と対向する第2プレート66と、第1プレート65及び第2プレート66を支持する第3プレート67とを有する。ガイド部材62は、第1プレート65と第2プレート66との間にキャップ部材20を配置可能である。第1プレート65は、キャップ部材20に対して−X側に配置されている。第2プレート66は、キャップ部材20に対して+X側に配置されている。
【0107】
第1プレート65は、凸部64が配置されるガイド溝68を備えている。凸部64は、ガイド溝68に沿って移動可能である。ガイド溝68は、Y軸方向に長い。ガイド溝68は、Z軸方向に関して第1位置に配置され、Y軸とほぼ平行な第1部分68Aと、第1位置より+Z側の第2位置に配置され、Y軸とほぼ平行な第2部分68Bと、第1部分68Aと第2部分68Bとを結ぶ第3部分68Cとを含む。同様に、第2プレート66にも、第1部分68A、第2部分68B、及び第3部分68Cを含むガイド溝68が形成されている。
【0108】
第2部分68Bは、第1部分68Aの+Y側に配置されている。本実施形態においては、第1部分68Aより第2部分68Bのほうが当接部材51に近い。
【0109】
凸部64がガイド溝68の第1部分68Aに配置されることにより、キャップ部材20の上面(キャップ面)は、Z軸方向に関して第1位置に応じた第3位置に配置される。また、凸部64がガイド溝68の第2部分68Bに配置されることにより、キャップ部材20の上面(キャップ面)は、Z軸方向に関して第2位置に応じた第4位置に配置される。第4位置は、第3位置より+Z側の位置である。
【0110】
以下の説明において、凸部64がガイド溝68の第1部分68Aに配置されているときのキャップ部材20の位置を適宜、待機位置、と称する。また、凸部64がガイド溝68の第2部分68Bに配置されているときのキャップ部材20の位置を適宜、キャップ可能位置、と称する。
【0111】
本実施形態においては、第2駆動機構60は、キャップ部材20とガイド部材62とを連結する第3付勢部材69を備えている。本実施形態において、第3付勢部材69は、ガイド部材62に設けられた第3フック部70と、キャップ部材20に設けられた第4フック部71とを連結するコイルばねである。第3フック部70は、第3プレート67の上面の−Y側の端に配置されている。第4フック部71は、第3フック部70と対向するキャップ部材20の−Y側の側面に配置されている。
【0112】
次に、上述の構成を有するギャップ調整装置17及びキャッピング装置16を備えたインクジェットプリンタ1の動作の一例について説明する。
【0113】
図16(A)は、初期状態の第1部材23の端部50が当接部材51に当接している状態を示す。第1部材23が初期状態のとき、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間に、第1部材23の第1部分41が配置される。また、初期状態の第1部材23の端部50と当接部材51とが当接しているとき、記録ヘッド2と、待機位置に存在するキャップ部材20の接触部61とが接触する。
【0114】
制御装置14は、図16(A)に示す状態から、第1駆動機構8を用いて、第1部材23を支持したキャリッジ7を当接部材51に向けて+Y方向に移動する。位置が固定された当接部材51と第1部材23とを当接させた状態で、キャリッジ7を+Y方向に移動したとき、当接部材51に対して第1部材23は移動せず、キャリッジ7及び第2部材24が、当接部材51に接近するように+Y方向へ移動する。これにより、第1部材23は、当接部材51との当接により、キャリッジ7及び第2部材24に対して、−Y方向へ相対移動する。
【0115】
本実施形態においては、制御装置14は、第1部材23が初期状態から第3状態へ変化するように、キャリッジ7を当接部材51へ向けて+Y方向へ移動する。これにより、図16(B)に示すように、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間に、第1部材23の第3部分43が配置される。キャリッジ7は、Z軸方向に関する第1部分71の下面と第3部分の下面との距離L1だけ、+Z方向に移動する。
【0116】
また、当接部材51へ向かうキャリッジ7の+Y方向への移動に伴って、接触部61を記録ヘッド2に接触させたキャップ部材20が、+Y方向へ移動して、キャップ可能位置に配置される。このように、第2駆動機構60は、第1駆動機構8による記録ヘッド2の+Y方向への移動に伴って、キャップ部材20を記録ヘッド2に接近するように、+Z方向へ移動することができる。
【0117】
本実施形態おいて、Z軸方向に関する待機位置とキャップ可能位置との距離(Z軸方向に関する第1部分68Aと第2部分68Bとの距離)L2は、距離L1より大きい。すなわち、待機位置からキャップ可能位置へ変化したときのキャップ部材20の+Z方向への移動量(上昇量)のほうが、第1部材23が初期状態から第3状態へ変化したときのキャリッジ7(記録ヘッド2)の+Z方向への移動量(上昇量)より大きい。これにより、図16(B)に示すように、記録ヘッド2の噴射面19とキャップ部材20の上面とを接触させることができる。
【0118】
このように、本実施形態によれば、移動機構18を用いるZ軸方向に関する記録ヘッド2の位置調整動作(ギャップ調整動作)と並行して、キャップ部材20による記録ヘッド2に対するキャッピング動作を実行することができる。
【0119】
また、ギャップ調整動作、あるいはキャッピング動作が終了した後、記録部5を−Y方向に移動することによって、記録ヘッド2と接触部61との接触状態が解除される。これにより、キャップ部材20には、コイルばね69によって、−Y方向へ向かう力が作用する。したがって、キャップ部材20は、ガイド部材62(ガイド溝68)に案内されつつ、待機位置へ移動することができる。
【0120】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0121】
図17は、第3実施形態に係るギャップ調整装置17を示す図、図18は、第3実施形態に係る画像形成装置1の動作の一例を示す模式図である。図17に示すように、本実施形態に係る第1部材23の本体部35は、第1厚みH1を有する第1部分41と、第1厚みH1より厚い第2厚みH2を有する第2部分42と、第2厚みH2より厚い第3厚みH3を有する第3部分43とを有する。第1、第2、第3部分41、42、43のうち、第1部分41は、最も+Y側に配置され、第2部分42は、第1部分41に次いで+Y側に配置され、第3部分43は、最も−Y側に配置されている。
【0122】
すなわち、本実施形態においては、凸部37が第1カム部材29の+Y側に配置されている初期状態において、図17に示すように、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間に、第3部分43が配置される。また、凸部37が第1凹部32に配置されている第2状態において、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間に、第2部分42が配置され、凸部37が第2凹部33に配置されている第3状態において、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間に、第1部分41が配置される。すなわち、本実施形態においては、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動に伴って、キャリッジ7が−Z方向に移動する。
【0123】
次に、上述の構成を有するギャップ調整装置17及びキャッピング装置16を備えたインクジェットプリンタ1の動作の一例について説明する。
【0124】
図18(A)は、初期状態の第1部材23の端部50が当接部材51に当接している状態を示す。第1部材23が初期状態のとき、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間に、第1部材23の第3部分43が配置される。また、初期状態の第1部材23の端部50と当接部材51とが当接しているとき、記録ヘッド2と、待機位置に存在するキャップ部材20の接触部61とが接触する。
【0125】
制御装置14は、図18(A)に示す状態から、第1駆動機構8を用いて、第1部材23を支持したキャリッジ7を当接部材51に向けて+Y方向に移動する。これにより、第1部材23は、キャリッジ7に対して、−Y方向へ相対移動する。上述の実施形態と同様、位置が固定された当接部材51と第1部材23とを当接させた状態で、キャリッジ7を当接部材51に向けて+Y方向に移動したとき、当接部材51に対して第1部材23は移動せず、キャリッジ7及び第2部材24が、当接部材51に接近するように+Y方向へ移動する。第1部材23は、当接部材51との当接により、キャリッジ7及び第2部材24に対して、−Y方向へ相対移動する。
【0126】
本実施形態において、制御装置14は、第1部材23が初期状態から第3状態へ変化するように、キャリッジ7を当接部材51へ向けて+Y方向へ移動する。これにより、図18(B)に示すように、キャリッジ7の下面7Sと下側フランジ部46の基準面44との間に、第1部材23の第1部分41が配置される。キャリッジ7は、Z軸方向に関する第1部分71の下面と第3部分の下面との距離L1’だけ、−Z方向に移動する。
【0127】
このように、本実施形態においては、移動機構18は、第1部材23と当接部材51とが接触した状態で、当接部材51へ向かうキャリッジ7の+Y方向への移動に伴って、キャリッジ7に支持された記録ヘッド2を、キャップ部材20に接近するように、−Z方向へ移動することができる。
【0128】
また、当接部材51へ向かうキャリッジ7の+Y方向への移動に伴って、接触部61を記録ヘッド2に接触させたキャップ部材20が、+Y方向へ移動して、キャップ可能位置に配置される。このように、第2駆動機構60は、第1駆動機構8による記録ヘッド2の+Y方向への移動に伴って、キャップ部材20を記録ヘッド2に接近するように、+Z方向へ移動することができる。
【0129】
このように、本実施形態においても、移動機構18を用いるZ軸方向に関する記録ヘッド2の位置調整動作(ギャップ調整動作)と並行して、キャップ部材20による記録ヘッド2に対するキャッピング動作を実行することができる。
【0130】
なお、第3実施形態において、図18(B)に示す状態が、凸部37が第2凹部33に配置されている第3状態である場合について説明したが、凸部37が第2通路34を介して下面7S側に配置される開放状態でもよい。第1部材23が開放状態であっても、キャリッジ7の位置は、第1駆動機構8により、図18(B)に示す位置に維持され、第1部材23の端部50は、当接部材51に当接された状態を維持される。
【0131】
このように、キャリッジ7に対する第1部材23の−Y方向への相対移動により、その第1部材23の可動範囲の一端に第1部材23が配置された開放状態のときに、記録ヘッド2がキャップ部材20に最も接近するように、−Z方向に移動することによって、記録ヘッド2の噴射面19をキャップ部材20で良好に覆うことができる。
【0132】
なお、上述の第1〜第3実施形態の第1部材23(本体部35)において、第1、第2、第3部分41、42、43のうち、例えば第2部分42を、最も−Y側に配置し、第1部分41を、第2部分42に次いで−Y側に配置し、第3部分43を、最も+Y側に配置してもよい。こうすることによっても、第1部材23の−Y方向への移動に応じて、キャリッジ7を、+Z方向及び−Z方向のそれぞれに移動することができる。
【0133】
なお、上述の各実施形態においては、第1部材23(本体部35)が、厚みが異なる3つの部分41〜43を有している場合について説明したが、もちろん、厚みが異なる4つ以上の部分を有してもよいし、厚みが異なる2つの部分を有してもよい。キャリッジ7に配置されるストッパ機構の凹部の数も、第1部材23(本体部35)の厚みが異なる部分に応じて適宜変更される。
【0134】
なお、上述の各実施形態においては、当接部材51の位置が固定される場合を例にして説明したが、当接部材51がY軸に沿って移動してもよい。例えば、当接部材51と第1部材23の端部50とが当接された状態で、当接部材51が−Y方向へ移動することによって、キャリッジ7に対して第1部材23を−Y方向へ移動させることができる。
【0135】
なお、上述の各実施形態においては、ギャップ調整装置17が、噴射したインクで記録紙Pに画像を形成するインクジェットプリンタ1に設けられている場合を例にして説明したが、インクジェットプリンタに限られず、複写機及びファクシミリ等の画像形成装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】第1実施形態に係るギャップ調整装置を備えた画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】第1実施形態に係るギャップ調整装置の一部を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るギャップ調整装置によって移動されるキャリッジを示す斜視図である。
【図4】図3のA−A線矢視図である。
【図5】第1実施形態に係るギャップ調整装置の第1部材を示す斜視図である。
【図6】図5のB−B線矢視図である。
【図7】第1実施形態に係るギャップ調整装置の第2部材を示す図である。
【図8】第1実施形態に係るギャップ調整装置の移動機構を示す斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る移動機構を上方から見た平面図である。
【図10】図8のC−C線矢視図である。
【図11】第1実施形態に係るギャップ調整装置の動作の一例を示す図である。
【図12】第1実施形態に係るギャップ調整装置の動作の一例を示す図である。
【図13】第1実施形態に係るギャップ調整装置の動作の一例を示す図である。
【図14】第1実施形態に係るキャッピング装置の動作の一例を示す図である。
【図15】第2実施形態に係る画像形成装置の一部を示す斜視図である。
【図16】第2実施形態に係る画像形成装置の動作の一例を示す図である。
【図17】第3実施形態に係る画像形成装置の一部を示す斜視図である。
【図18】第3実施形態に係る画像形成装置の動作の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0137】
1…インクジェットプリンタ、2…記録ヘッド、5…記録部、7…キャリッジ、8…第1駆動機構、16…キャッピング装置、17…ギャップ調整装置、18…移動機構、20…キャップ部材、23…第1部材、24…第2部材、32…第1凹部、33…第2凹部、34…第2通路、35…本体部、36…アーム部、37…凸部、40…開口、44…基準面、46…下側フランジ部、48…第1付勢部材、49…第2付勢部材、51…当接部材、52…支持部材、53…リセット機構、54…ストッパ機構、60…第2駆動機構、61…接触部、62…ガイド部材、P…記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録部に第1軸に沿って移動可能に支持される第1部材を有し、前記第1軸に沿う前記記録部に対する前記第1部材の一方向への相対移動に応じて、前記第1軸と交差する第2軸に沿う一方向及び逆方向のそれぞれに前記記録部を移動して、前記記録部とターゲットとのギャップを調整可能な移動機構と、
前記第1部材を支持した前記記録部を前記第1軸に沿って移動する第1駆動機構と、
前記記録部の記録動作が実行される記録領域の外側で、前記記録部の移動により前記第1部材と当接可能な位置に配置され、前記第1部材との当接により前記第1部材を前記記録部に対して前記一方向へ相対移動する当接部材と、を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記当接部材は、位置が固定され、
前記第1駆動機構は、前記当接部材と前記第1部材の少なくとも一部とを当接させた状態で、前記第1部材を支持した前記記録部を前記当接部材に向かう一方向に前記第1軸に沿って移動し、
前記第1駆動機構の駆動により、前記第1部材が前記記録部に対して前記一方向へ相対移動する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記相対移動量に応じて、前記第2軸に沿う前記記録部の移動量が調整される請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記相対移動量に応じて、前記第2軸に沿う前記記録部の移動方向が調整される請求項1〜3のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記第1軸に沿って厚みが変化し、前記記録部の所定面と基準部材の基準面との間を相対移動する請求項1〜4のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2軸に沿って前記記録部に相対移動可能に支持され、前記記録部との間で前記第1部材を前記第1軸に沿って移動可能に支持する第2部材を備え、
前記基準部材は、前記第2部材を含む請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2軸に沿う前記基準部材の位置がほぼ固定されるように、前記基準部材を支持する支持部材を備える請求項5又は6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記記録部と前記基準部材とが接近するように前記記録部と前記基準部材とを付勢する第1付勢部材を備える請求項5〜7のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記当接部材が配置された前記記録領域の外側で、前記記録部の少なくとも一部を覆うキャップ部材を備える請求項1〜8のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記当接部材へ向かう前記記録部の移動に伴って、前記キャップ部材を前記記録部に接近するように移動する第2駆動機構を備える請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第2駆動機構は、前記キャップ部材に接続され、前記当接部材へ向かって移動する前記記録部の少なくとも一部と接触し、前記記録部の移動と同期して移動可能な接触部と、前記記録部に接近するように前記キャップ部材をガイドするガイド部材とを含む請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記移動機構は、前記第1部材と前記当接部材とが接触した状態で、前記当接部材へ向かう前記記録部の移動に伴って、前記記録部を前記キャップ部材に接近するように移動する請求項9〜11のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第1軸に沿う前記記録部に対する前記第1部材の可動範囲を規定する規定部を備え、
前記一方向への移動により前記可動範囲の一端に前記第1部材が配置されたときに、前記記録部が前記キャップ部材に最も接近する請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記一方向への移動により前記可動範囲の一端に配置された前記第1部材を他端へ戻すリセット機構を備える請求項13記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記第1軸に沿う所定位置で前記記録部に対する前記第1部材の移動を規制するストッパ機構を備える請求項1〜14のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記記録部は、流体を噴射可能な噴射ヘッド、及び前記噴射ヘッドを支持するキャリッジの少なくとも一方を含む請求項1〜15のいずれか一項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−248530(P2009−248530A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102420(P2008−102420)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】