説明

画像形成装置

【課題】転写媒体にトナー像の転写不良を発生させることなく、コロナ帯電器のシールド電極の内側面にトナーを侵入させにくくした画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置4Kと一次転写部T1との間で感光ドラム1Kに対向させてコロナ帯電器25を配置されて、転写前のブラックトナー像に荷電粒子を照射してトナー帯電量を強化する。コロナ帯電器25は、シールド電極27の一次転写部T1側の下縁Qが現像装置4K側の上縁Pよりも感光ドラム1Kの反対側へ平面位置で後退している。シールド電極27の下縁Qは、ワイヤ電極26を中間転写ベルト5から遮蔽するように、先端が現像装置4K側へ向かって折り曲げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ帯電器を用いて像担持体に担持された転写前のトナー像に荷電粒子を照射する画像形成装置、詳しくはコロナ帯電器のシールド電極の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体に形成された静電像に帯電したトナーを付着させてトナー像を形成し、転写部で感光体に重ねて移動される転写媒体(中間転写体又は記録材)にトナー像を転写する画像形成装置が広く用いられている。そして、現像装置と転写部との間にコロナ帯電器を配置して、感光体に担持された転写前のトナー像に荷電粒子を照射することにより、トナー像のトナー帯電量を転写に最適化する画像形成装置が実用化されている。
【0003】
現像装置と転写部との間にコロナ帯電器を配置した画像形成装置では、現像装置から飛散するトナーがコロナ帯電器に侵入すると種々の不具合が発生するため、トナーの侵入を阻止する対策が様々に提案されている。
【0004】
特許文献1には、現像装置と転写部との間にコロナ帯電器を配置し、感光ドラムに担持されたブラックトナー像の帯電量をコロナ帯電器により増加させて転写部へ送り込む画像形成装置が示される。ここでは、現像装置から筐体内に飛散して降り積もるトナーを回収するために排気ファンを配置している。
【0005】
特許文献2には、現像装置の下に配置されたコロナ帯電器に現像装置からトナーが侵入する不具合を解消するために、ワイヤ電極の3方を囲むシールド電極にトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加している。
【0006】
【特許文献1】特開平08−110738号公報
【特許文献2】特開平11−184214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像形成装置の小型化に伴って感光ドラムが小径化される一方で、コロナ帯電器は、中心のワイヤ電極と周囲3方向を囲むシールド電極との間隔で均等に所定の放電を発生させる制約から断面の小型化が困難である。
【0008】
このため、現像装置と転写部との間では、感光ドラムに対向させてかなり上向きにシールド電極を開口させるようにコロナ帯電器が配置されるため、シールド電極の内側面にトナーが降り積もり易くなった。そして、導電性のシールド電極の内側面に絶縁性のトナーが堆積すると、中心のワイヤ電極との間の正常な放電が妨げられるので、コロナ帯電器の性能が低下してしまう。
【0009】
これに対して、特許文献1に示される排気ファンは、コロナ帯電器の周囲には配置するスペースがそもそも無く、特許文献2に示される電圧印加は、帯電量の少ない飛散トナーには効果が薄い。
【0010】
そこで、斜め上向きに開口したシールド電極の転写部側の縁を単純に切り詰めて、現像装置側の縁よりも感光ドラム側から後退させることで、現像装置から落下するトナーをシールド電極の内側面に進入しにくくすることが提案された(図5参照)。
【0011】
しかし、実際にシールド電極の転写部側の縁を切り詰めて実験してみると、転写部を通過した転写媒体上にトナー像の転写不良が発生し易くなることが確認された。
【0012】
本発明は、転写媒体にトナー像の転写不良を発生させることなく、コロナ帯電器のシールド電極の内側面にトナーを侵入させにくくした画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体にトナー像を担持させる像形成手段と、前記像担持体に担持されたトナー像を転写媒体に転写する転写部と、前記像形成手段と前記転写部との間に配置されて、転写前のトナー像に荷電粒子を照射するコロナ帯電器とを備えたものである。そして、前記コロナ帯電器のシールド電極は、像形成手段側よりも転写部側を平面位置で前記像担持体から後退させるとともに、前記シールド電極の転写部側に、ワイヤ電極を前記転写媒体から遮蔽する遮蔽部が形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置では、像担持体とコロナ帯電器との対向間隔に上方から降り注いでくるトナー等がシールド電極内に堆積しないように、下側のシールド電極が上側のシールド電極よりも像担持体から後退している。また、下側のシールド電極は、同一部材又は別部材で形成された遮蔽部と協働して、ワイヤ電極から転写媒体に向かって開かれる立体角を遮蔽している。このため、ワイヤ電極の周囲でコロナ放電に伴って発生する荷電粒子が転写媒体を直射しにくく、転写分へ突入する転写媒体が荷電粒子で帯電されにくくなっている。
【0015】
従って、転写媒体にトナー像の転写不良を発生させることなく、コロナ帯電器のシールド電極の内側面にトナーを侵入させにくくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、コロナ帯電器のシールド電極の下側の縁が上側の縁よりも感光ドラムから後退している限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0017】
従って、感光ドラムから中間転写ベルトへトナー像を転写する一次転写部のみならず、中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する二次転写部についてもコロナ帯電器を配置して実施可能である。中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する画像形成装置に限らず、記録材搬送ベルトに担持させた記録材へトナー像を転写する画像形成装置、枚葉式に給送される記録材へ感光ドラムからトナー像を転写する画像形成装置でも実施できる。
【0018】
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0019】
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0020】
<画像形成装置>
図1は第1実施形態の画像形成装置の構成の説明図、図2はブラック画像形成部の構成の説明図である。
【0021】
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト5に沿って、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部PY、PM、PC、PKを配置したタンデム型フルカラープリンタである。
【0022】
画像形成部PYでは、感光ドラム1Yにイエロートナー像が形成されて、中間転写ベルト5に一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム1Mにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト5のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部PC、PKでは、それぞれ感光ドラム1C、1Kにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、同様に中間転写ベルト5のトナー像に位置を重ねて順次一次転写される。
【0023】
中間転写ベルト5に担持された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送され、中間転写ベルト5に重ねて二次転写部T2を挟持搬送される記録材Sへ一括二次転写される。二次転写部T2でトナー像を二次転写された記録材Sは、定着装置9で加熱加圧を受けて、表面にトナー像を定着された後に外部へ排出される。
【0024】
記録材カセット16から引き出された記録材S(例えば、紙、透明フィルム)は、分離ローラ13で1枚ずつに分離されてレジストローラ15へ給送される。記録材Sは、レジストローラ15で待機し、中間転写ベルト5のトナー像にタイミングを合わせて、二次転写部T2へ送り出される。
【0025】
中間転写ベルト5は、駆動ローラ21、テンションローラ22、対向ローラ23に掛け渡して支持され、駆動ローラ21に駆動力が伝達されることにより、矢印R2方向に回転する。駆動ローラは、金属芯金上に、1×10〜1×10Ωに抵抗調整された導電ゴム層を有し、芯金は接地されている。
【0026】
中間転写ベルト5は、厚さ85μmのポリイミド樹脂フィルムを基材としており、カーボンブラックを分散させて、表面抵抗率で1×1012Ω/□、体積抵抗率で1×10Ω・cmとなるように抵抗調整してある。中間転写ベルト5の回転速度(プロセススピード)は、200mm/secである。
【0027】
中間転写ベルト5は、内周面に配置された一次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kによって感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面に押圧される。これにより、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと中間転写ベルト5との間には、それぞれ一次転写部(一次転写ニップ部)T1が形成される。
【0028】
また、中間転写ベルト5の外側における対向ローラ23に対応する位置には、二次転写外ローラ24が配設される。中間転写ベルト5は、対向ローラ23によって二次転写ローラ24に押圧されることにより、二次転写ローラ24との間に二次転写部(二次転写ニップ部)T2を形成する。
【0029】
定着装置9は、中心にヒータを配置した加熱ローラ9aに加圧ローラ9bを圧接させて記録材の定着ニップを形成している。ベルトクリーニング装置10は、中間転写ベルト5にクリーニングブレードを摺擦させて二次転写部T2を通過した中間転写ベルト5に付着した転写残トナーを除去する。
【0030】
なお、画像形成装置100は、画像形成部PKのみを用いて、ブラック単色画像を形成することもできる。この場合、画像形成部PKにおいてのみ、トナー像の形成工程を行い、中間転写ベルト5にブラック単色のトナー像のみを担持させ、このトナー像を記録材Sに二次転写した後に定着する。画像形成装置100は、使用頻度が高く、高いプロセススピードと高解像度が求められるブラック単色画像に対応させて、感光ドラム1Kの口径が84mmである。これに対して、他の感光ドラム1Y、1M、1Cは口径30mmである。
【0031】
画像形成部PY、PM、PC、PKは、付設された現像装置4Y、4M、4C、4Kで用いるトナーの色と、転写前のトナー像の帯電量を調整するコロナ帯電器25の有無以外は、ほぼ同様に構成される。以下では、コロナ帯電器25が配設された画像形成部PKについて説明し、他の画像形成部PY、PM、PCについては、説明中の符号末尾のKを、Y、M、Cに読み替えて説明されるものとする。
【0032】
図2に示すように、画像形成部PKは、感光ドラム1Kの周囲に、帯電ローラ3K、露光装置2K、現像装置4K、コロナ帯電器25、一次転写ローラ6K、及びクリーニング装置7Kを配置している。
【0033】
感光ドラム1Kは、帯電極性が負極性の感光層を表面に形成した金属円筒で構成され、200mm/secのプロセススピードで矢印R1方向に回転する。
【0034】
感光ドラム1Kとしては、通常使用される有機感光体等を用いることができるが、好ましくは、抵抗値が10〜1014Ω・cmの表面層を持つものや、アモルファスシリコン感光体などを用いる。これにより、電荷注入帯電を実現でき、オゾン発生の防止、および消費電力の低減に効果があり、帯電性についても向上させることが可能となる。
【0035】
本実施形態では、負帯電性の有機感光体を採用しており、直径84mmのアルミニウム製のドラム基体上に、次の第1層〜第5層の5層を下から順に設けて感光層を形成している。
【0036】
第1層は下引き層であり、アルミニウム基体の欠陥等を均すために設けられた層で、厚さ20μmの導電層からなる。第2層は正電荷注入防止層であり、ドラム基体から注入された正電荷が感光体表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する役割を果たす。正電荷注入防止層は、アラミン樹脂とメトキシメチル化ナイロンによって1×10Ω・cm程度に抵抗調整した厚さ1μmの中抵抗層からなる。
【0037】
第3層は電荷発生層であり、ジアゾ系の顔料を樹脂に分散した厚さ約0.3μmの層であり、露光を受けることによって正負の電荷対を発生する。第4層は電荷輸送層であり、ポリカーボネート樹脂にヒドラゾンを分散したものであり、P型半導体である。従って、感光層の表面に帯電された負電荷はこの層を移動することができず、電荷発生層で発生した正電荷のみを感光層の表面に輸送することができる。
【0038】
第5層は電荷注入層であり、絶縁性樹脂のバインダーにSnO超微粒子を分散した材料の塗工層である。具体的には、絶縁性樹脂に光透過性の絶縁フィラーであるアンチモンをドーピングして低抵抗化(導電化)し、この樹脂に対して粒径0.03μmのSnO粒子を70重量パーセント分散した材料の塗工層である。このように調合してと交易をディッピング法、スプレー塗工法、ロール塗工法、ビーム塗工法等の適当な塗工法で厚さ約3μmに塗工して、電荷注入層を形成することができる。
【0039】
帯電ローラ2Kは、感光ドラム1Kに圧接して従動回転する。電源D3は、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を帯電ローラ2Kへ印加して、感光ドラム1Kの表面を一様な負極性の電位に帯電させる。
【0040】
露光装置3Kは、画像データを展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを多面体ミラーで走査して、帯電した感光ドラム1Kの表面に画像の静電像を書き込む。
【0041】
現像装置4Kは、現像容器41内で二成分現像剤を攪拌して非磁性トナーを負極性に、磁性キャリアを正極性にそれぞれ帯電させる。固定マグネット43の周囲で回転する現像スリーブ42は、固定マグネット43の磁力によって表面に帯電した二成分現像剤を穂立ち状態で担持させて感光ドラム1Kを摺擦する。電源D4は、負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を現像スリーブ42に印加して、感光ドラム1Kとの間でトナーを飛翔させて静電像に付着させることにより、静電像を反転現像する。
【0042】
トナー補給容器8Kは、補充用のブラックトナーを収容しており、現像装置4Kで感光ドラム1Kの静電像を現像するために消費しただけの未使用トナーを現像容器41に補給する。
【0043】
コロナ帯電器25は、現像装置(像形成手段)4Kと一次転写部(転写部)T1との間に配置されて、転写前のトナー像に荷電粒子を照射する。シールド電極27は、ワイヤ電極26を中心にして三方向を囲んで感光ドラム(像担持体)側を斜め上向きに開口しており、開口長さが14mm、開口の深さが15mmである。コロナ帯電器25は、ワイヤ電極26に沿ってパッドを摺擦させて異物をクリーニングするクリーニング機構28を付設しており、クリーニング機構28を含めた外観寸法が30mm×15mm×350mmである。
【0044】
コロナ帯電器25は、シールド電極27の一次転写部T1側(転写部側)が現像装置4K側(像形成手段側)よりも感光ドラム(像担持体)1Kの反対側へ平面位置で後退している。シールド電極27の一次転写部T1側(転写部側)には、ワイヤ電極26を中間転写ベルト(転写媒体)5から遮蔽するように、遮蔽部が同一部材によって形成される。具体的には、シールド電極27の先端が、現像装置4K側(像形成手段側)へ向かって折り曲げられている。
【0045】
電源D5は、ワイヤ電極26を通じた総放電電流が300〜500μAに保たれるように、ワイヤ電極26に印加する負極性の電圧を定電流制御する。総放電電流の10%〜20%が感光ドラム1Kに照射される荷電粒子となって、トナー像の帯電量を調整する。
【0046】
コロナ帯電器25と感光ドラム(像担持体)との対向間隔に対して平面位置を重ねるように、コロナ帯電器25と中間転写ベルト(転写媒体)5との間に、受け皿(落下トナー受け部材)30が配置される。
【0047】
一次転写ローラ6Kは、中間転写ベルト5に圧接して、感光ドラム1Kと中間転写ベルト5との間にトナー像の一次転写部T1を形成する。転写電源DKは、一次転写ローラ6Kに定電圧制御された正極性の直流電圧を印加して、負極性に帯電して感光ドラム1Kに担持されたトナー像を、中間転写ベルト5に一次転写させる。
【0048】
一次転写ローラ6Kは、導電性金属からなる直径φ8mmの円柱型の芯金部材の周囲に、抵抗値5×10[Ω・cm]で厚さ4.0mmの導電性発泡体を配置して外径φ16mmに仕上げたものである。一次転写ローラ6Kは、ニトリルゴムとエチレン−エピクロルヒドリン共重合体とのブレンドにより形成されたイオン導電性スポンジローラを用いた。一次転写ローラ6Kの抵抗値は、温度23℃、湿度50%の環境下で印加電圧2kVにより測定したところ、106〜108Ω程度であった。
【0049】
一次転写ローラ6Kは、中間転写ベルト5を感光体ドラム6Kに接触させるために、中間転写ベルト5の内側面から両端部のバネによって鉛直方向上方に総圧5kPaにて加圧されている。一次転写ローラ6kの位置は、感光ドラム1Kの中心鉛直方向よりも中間転写ベルト5の回転方向の下流側へ1.5mmシフトさせてある。
【0050】
なお、一次転写ローラ6Kとしては、2000V印加時の抵抗値が10〜10Ωの半導電性のものを用いることが好ましい。
【0051】
クリーニング装置7Kは、感光ドラム1Kにクリーニングブレード7bを摺擦させて、一次転写部T1を通過した感光ドラム1Kの表面に付着した転写残トナーを除去して回収する。
【0052】
<コロナ帯電器>
図3は各色トナーのトナー帯電量の説明図、図4はコロナ帯電器に進入したトナーの挙動の説明図である。図5はシールド電極の下側の縁を切り詰めたコロナ帯電器の説明図、図6は一次転写電流に対するシールド電極の切り詰め量の影響の説明図である。
【0053】
図3に示すように、高湿・高温環境下におけるトナー帯電量の耐久枚数に対する挙動は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色毎に異なる。画像形成装置100の耐久寿命期間を通じてブラックトナーは、トナー帯電量が他色よりも5〜10μC/g程度小さく、トナー帯電量が他色と異なると、二次転写部T2で記録材Sへ一括二次転写する際に、二次転写部T2における転写特性に差が生じてしまう。このため、ブラックトナーのトナー帯電量を、中間転写ベルト5へ一次転写する時点で、他色のトナーのトナー帯電量と揃えておく必要がある。
【0054】
このため、ブラックの画像形成部PKにのみコロナ帯電器25を設置し、感光ドラム1Kに担持されたブラックトナー像に負極性の荷電粒子を照射して、ブラックトナー像のトナー帯電量を他色トナー像並みに補強している。ブラックトナーだけ他色トナーよりもトナー帯電量が低いのは、ブラックトナーがカーボンを含んで他色トナーに比較して抵抗が低いため、帯電電荷が逃げ易いからである。特に高温高湿環境において抵抗の低下が著しく、トナー帯電量が他色トナーよりも際立って低くなる。
【0055】
このため、本実施形態では、温度23℃以上、あるいは相対湿度50%RH以上の時に、コロナ帯電器25を作動させている。また、以下の実験では、温度30℃相対湿度80%RHの環境下で画像形成を行ってコロナ帯電器25の改良効果を確認した。
【0056】
図4の(a)に示すように、コロナ帯電器25を配置して反射濃度0.5のハーフトーン画像による連続画像形成の実験を行ったところ、50000枚の累積枚数以降に回転方向の縦スジ状の濃度ムラ画像が発生するようになった。
【0057】
コロナ帯電装置25のシールド電極27の一次転写部T1側を観察すると、縦スジ発生箇所に対応するように飛散トナーが集中的に蓄積していたため、飛散トナーによる汚れの蓄積が画像不良の原因と考えられる。そこで、中間転写ベルト5上で濃度ムラ発生箇所のトナーを採取してトナー帯電量を測定した。すると、濃度ムラ未発生箇所のトナー帯電量が23μC/g程度であったのに対して、濃度ムラ箇所では15μC/gと低いことが確認された。なお、トナー帯電量の測定は、特開2008−233373号公報に記載されている吸引式ファラデーケージ法にて行った。
【0058】
実験結果から、シールド電極27にトナーが蓄積した部分ではコロナ放電が他の部位と比べて発生しづらくなって、帯電効率が悪化し、感光ドラム1K上のトナー像にトナー帯電量のムラが形成されたと考えられる。トナー帯電量のムラが中間転写ベルト5に対する一次転写ムラとなって最終画像に濃度ムラを発生させていたと考えられる。
【0059】
図4の(b)に示すように、そこで、コロナ帯電器25を感光ドラム1Kに近付けて配置し、シールド電極27の現像装置4K側の縁を、現像装置4Kによる感光ドラム1Kの現像位置よりも感光ドラム1K側に食い込ませた。
【0060】
このように配置することで、現像部から落下するトナーがコロナ帯電器25内に侵入しにくくなり、シールド電極27の一次転写部T1側における飛散トナーの蓄積を抑制できることが確認された。しかし、このような配置で画像形成枚数を重ねると、シールド電極27の上面に飛散トナーやキャリアが降り積もり、飛散トナーがシールド電極27の現像装置4K側の先端部にランダムに付着する。すると、シールド電極27の先端に付着物が堆積した箇所で、感光ドラム1K上のトナー像との間で異常放電が発生するようになり、縦スジ状の不良画像が形成されるようになった。
【0061】
図5に示すように、そこで、シールド電極27の上縁Pが感光ドラム1Kの現像部GBの直下位置になるまでコロナ帯電器25を後退させて、シールド電極27の上縁Pと感光ドラム1Kとの間に十分な距離を確保した。そして、コロナ帯電器25の断面におけるシールド電極27の下縁(転写部側)Qを短く切り詰めて、現像部GBから落下するトナーがシールド電極27の内側に降り積もる余地を無くした。
【0062】
そして、シールド電極27の下縁Qの切り詰め量を異ならせて、コロナ帯電器25を作動させた状態での50000枚の連続画像形成を実験し、最終画像の濃度ムラの発生を評価した。シールド電極27の上縁Pに重なる平面位置を原点S2=0として、シールド電極27の下縁Qの位置S2を表1に示す7段階の条件に異ならせた。
【0063】
【表1】

【0064】
表1中、S=−3、−1は、切り詰め状態、S=1、2、3、4は、上縁P(先端P)よりも感光ドラム1K側へ下縁Q(先端Q)が突き出して、シールド電極27の内側にトナーが降り積もる余地がある状態である。また、画像濃度ムラのレベルの判断は、反射濃度計X−riteにて測定した紙上画像濃度の最大値と最小値の濃度差Δが0.3以上の場合を×、濃度差Δが0.3〜0.15の場合を△、同じく0.1以下の場合を○と評価した。
【0065】
表1に示すように、シールド電極27の下縁Q(先端Q)が上縁P(先端P)に対して、平面位置で感光ドラム1K側に重なる(S2=0)か、又は感光ドラム1Kの反対側へ後退している(S=−1、−3)の条件1〜3において好結果が得られる。条件1〜3では、シールド電極27の内側面のトナー汚れが大幅に改善され、画像濃度ムラも発生しないことが確認された。
【0066】
しかし、条件1〜3でベタ画像を出力すると、記録材S上の最終画像で斑点状に画像濃度が低下する豹柄模様の不良画像が発生した。そこで、表1の条件1、3、5、7について、一次転写部T1における電圧−電流特性を測定した。
【0067】
図6に示すように、その結果、シールド電極27の下縁Qが感光ドラム1Kから遠ざかるに従って放電開始電圧がマイナス側にシフトしていることが判明した。
【0068】
図5の(b)に示すように、次に、一次転写部T1の上流側の中間転写ベルト5の位置に除電針51を設置し、コロナ帯電器25から中間転写ベルト5方向へ流れる荷電粒子の漏れ電流量を測定した。その結果、表1に示すように、シールド電極27の下縁Qが感光体ドラム1Kから遠ざかるに従って漏れ電流量が増加していることが判明した。
【0069】
また、豹柄模様の画像不良は一次転写電流を上げることによって消滅することが確認された。
【0070】
従って、豹柄模様の画像不良は、一次転写ローラ6Kに印加する一次転写電圧のプラス電位に引き寄せられた負極性の荷電粒子が中間転写ベルト5を負極性に帯電させて、必要な転写電流を嵩上げすることが原因と判明した。
【0071】
<実施例1>
図7は実施例1のコロナ帯電器におけるシールド電極の説明図、図8は比較例のシールド電極の説明図である。
【0072】
図7に示すように、実施例1では、シールド電極27の上縁Pと下縁Qとで平面位置が重なり合うようにするとともに、上縁Pに向かって下縁Qの先端部を少しL字型に折り曲げて形成した。ワイヤ電極26と下縁Qとを結ぶ直線と、感光体ドラム1Kの中心とワイヤ電極26とを結ぶ直線とのなす角度をθとする。ワイヤ電極の位置Wと感光ドラムの中心Oとを結ぶ線分上の位置Wから感光ドラム1Kまでの距離をLとする。
【0073】
このとき、角度θを変化させて、コロナ帯電器25を作動させた状態での50000枚の連続画像形成を実験し、最終画像の濃度ムラの発生を評価した。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例1では、感光ドラム1Kの外径Φが60mm、ワイヤ電極26と感光ドラム1Kとの距離Lが8mmである。ワイヤ電極26の位置Wとシールド電極27の下縁Qとを結ぶ直線WQが半径Rの感光ドラム1Kの外周に接する角θmaxは、下式のように求められる。
θmax=sin−1(R/(R+L))=61.9度
【0076】
図8に示すように、角θが角θmaxより大きい場合、ワイヤ電極26の周囲で発生する荷電粒子が中間転写ベルト5を照射する。
【0077】
表2に示すように、これに対応して、角θが0度以上で62度未満のとき、豹柄模様の不良画像が出ず、良好な最終画像を得ることができる。従って、感光ドラム1Kの半径をRとし、ワイヤ電極26の位置Wと感光ドラム1Kの中心Oとを結ぶ線分OW上の位置Wから感光ドラム1Kまでの距離をLとするとき、数式条件は以下となる。
0<θ<θmax=sin−1(R/(R+L))
【0078】
これにより、コロナ帯電器25から流出する荷電粒子が感光ドラム1Kのみに向かって流れて、感光ドラム1Kに担持されたトナー像を効率的に帯電する。
【0079】
一方、角θが62度以上の場合は、コロナ帯電器25から一次転写部T1へ向かって荷電粒子が流入し易くなり見かけ上の転写電流を大きくしてしまうとともに、感光ドラム1K方向へ付与されるべき荷電粒子が損なわれる。
【0080】
<実施例2>
図9は実施例2のコロナ帯電器におけるシールド電極の説明図である。
【0081】
図9に示すように、実施例2では、コロナ帯電器25のシールド電極27の下縁Qを斜め上方へ折り曲げた。これにより、実施例1よりも、ワイヤ電極26からシールド電極27の内面の各部までの距離差が少なくなって、放電の偏りが減った。
【0082】
また、シールド電極27の内側の飛散トナーによる汚れ防止として、コロナ帯電器25のシールド電極27の下縁Qの平面位置を上縁Pの平面位置よりも感光ドラム1Kの反対側へシフトさせた。
【0083】
このとき、シールド電極27の上縁Pと感光ドラム1Kの中心Oとを結ぶ線分OPの水平方向に対する傾き角度をαとし、長さをLopとする。また。シールド電極27の下縁Qと感光ドラム1Kの中心Oとを結ぶ線分OQの水平方向に対する傾き角度をβとし、長さをLoqとする。そして、線分OPの水平投射線よりも線分OQの水平投射線が長くなるように以下の数式で規定した。
Lop×cosα<Loq×cosβ
【0084】
かつ、ワイヤ26の位置Wと下縁Qとを結ぶように直線WQを定義して、直線WQの延長線が感光ドラム1Kと交点を持つように下縁Qを配置した。
0<θ<sin−1(R/(R+L))
【0085】
実施例2によっても、コロナ帯電器25のトナー汚れに起因する帯電ムラと、異常放電による画像劣化とを共に抑制して、長期間に渡って良好な最終画像を得ることができた。
【0086】
<実施例3>
図10は実施例3のコロナ帯電器における落下トナー受け部材の説明図である。
【0087】
図10に示すように、実施例3では、実施例2のコロナ帯電器25の下に落下トナー受け部材として受け皿30を配置した。下式の場合には、感光ドラム1Kとコロナ帯電器25との隙間を通じて、感光ドラム1Kの現像部GBから中間転写ベルト5の上へ直接に飛散トナーが落下する。
R<OP×cosα
【0088】
このため、感光ドラム1Kとコロナ帯電器25との対向間隔に平面位置を重ねて受け皿30を配置することにより、飛散トナーを回収している。
【0089】
図2に示す現像装置4Kの場合、二成分現像剤の経時劣化に伴って、現像部で未帯電トナーを現像してしまった場合、トナーの感光ドラム1Kによる保持力が弱いため重力方向に落下し易い。また、現像装置4Kの周辺部材に付着して蓄積したトナーが意図しないタイミングで落下して、中間転写ベルト5の画像上に落下して不良画像が発生する場合がある。これらボタ落ちトナーは、トナー帯電量がほとんど0近傍であるため、重力方向に落下し、コロナ帯電器25上や中間転写ベルト5上に落下してしまう。
【0090】
実施例3は、上記欠点に鑑みなされたもので、コロナ帯電器25への飛散トナー汚れのムラを防止して長期間に渡ってトナーの帯電量を維持させる。同時に、コロナ帯電器25による一次転写部T2への荷電粒子の干渉を抑制し、良好な画像を得ることができる。
【0091】
<実施例4>
今日、画像形成装置としては市場からの要求に伴って、カラー複写機やカラープリンタなどの、カラー画像が形成できるものが主流となりつつある。カラー画像形成装置の種類として1ドラム方式のものとタンデム方式のものとがある。1ドラム方式のものは1つの感光ドラムのまわりに複数色の現像装置を備えてあり、それらの現像装置で各色トナー像を形成して中間転写体上で重ね合わせ、中間転写体上のカラー画像を最終的に記録材に転写することによってカラー画像を得る。
【0092】
1ドラム方式とタンデム方式とを比較すると、1ドラム方式は、感光ドラムが1つであるため、画像形成装置を比較的小型化できてコストも低減できるが、1つの感光ドラム上に複数回画像形成を行うため、画像形成の生産性は低い。
【0093】
実施例4では、このような1ドラム方式のフルカラー画像形成装置において、感光ドラムに実施例3のようなコロナ帯電器を対向配置して、トナー像のトナー帯電量を転写に最適化する。
【0094】
<実施例5>
感光ドラムを複数用いるタンデム方式の画像形成装置には、直接転写方式と中間転写方式とがある。直接転写方式のタンデム方式画像形成装置は、記録材搬送体に沿って複数の感光ドラムを配置しており、記録材搬送体に吸着させた記録材に順次、各感光ドラム上に形成した画像を転写して重ね合わせる。
【0095】
直接転写方式は、横に並べた複数の感光ドラムの更に上流側に給紙装置を配置し、下流側に定着装置を配置しなければならず、記録材の搬送方向に大型化する。これに対して図1に示す中間転写方式は、給紙装置や定着装置を比較的自由に配置でき、給紙装置および定着装置を感光ドラム列の下方に配置して、記録材の搬送方向に小型化が可能となる。
【0096】
実施例5では、記録材搬送ベルトに感光ドラムを当接配置したブラックの画像形成部に、実施例3に示すようなコロナ帯電器を配置する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】ブラック画像形成部の構成の説明図である。
【図3】各色トナーのトナー帯電量の説明図である。
【図4】コロナ帯電器に進入したトナーの挙動の説明図である。
【図5】シールド電極の下側の縁を切り詰めたコロナ帯電器の説明図である。
【図6】一次転写電流に対するシールド電極の切り詰め量の影響の説明図である。
【図7】実施例1のコロナ帯電器におけるシールド電極の説明図である。
【図8】比較例のシールド電極の説明図である。
【図9】実施例2のコロナ帯電器におけるシールド電極の説明図である。
【図10】実施例3のコロナ帯電器における落下トナー受け部材の説明図である。
【符号の説明】
【0098】
1Y、1M、1C、1K 像担持体(感光ドラム)
2Y、2M、2C、2K 露光装置
3Y、3M、3C、3K 帯電ローラ
4Y、4M、4C、4K 現像装置
5 転写媒体(中間転写ベルト)
6Y、6M、6C、6K 一次転写ローラ
25 コロナ帯電器
26 ワイヤ電極
27 シールド電極
P シールド電極の像形成手段側(上縁)
PY、PM、PC、PK 画像形成部
Q シールド電極の転写部側(下縁)
T1 転写部(一次転写部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体にトナー像を担持させる像形成手段と、
前記像担持体に担持されたトナー像を転写媒体に転写する転写部と、
前記像形成手段と前記転写部との間に配置されて、転写前のトナー像に荷電粒子を照射するコロナ帯電器と、を備えた画像形成装置において、
前記コロナ帯電器は、シールド電極の転写部側が像形成手段側よりも前記像担持体の反対側へ平面位置で後退しているとともに、前記シールド電極の転写部側に、ワイヤ電極を前記転写媒体から遮蔽する遮蔽部が形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シールド電極の転写部側の先端が前記像形成手段側へ向かって折り曲げられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記コロナ帯電器と前記像担持体との対向間隔に対して平面位置を重ねるように、前記コロナ帯電器と前記転写媒体との間に落下トナー受け部材を配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体が感光ドラムであって、
前記シールド電極の像形成手段側の先端Pと前記感光ドラムの中心Oとを結ぶ線分OPの水平方向に対する傾き角度をαとし、長さをLopとし、
前記シールド電極の転写部側の先端Qと前記感光ドラムの中心Oとを結ぶ線分OQの水平方向に対する傾き角度をβとし、長さをLoqとし、
感光ドラムの半径をRとし、前記ワイヤ電極の位置Wと感光ドラムの中心Oとを結ぶ線分上の位置Wから感光ドラムまでの距離をLとするとき、
Lop×cosα<Loq×cosβ
であるとともに、
0<θ<θmax=sin−1(R/(R+L))
であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−113140(P2010−113140A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285469(P2008−285469)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】