説明

画像形成装置

【課題】生産性が高く,高寿命で省資源であるとともに,裏紙を使用した際にも表裏面の区別が容易である画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のカラープリンタ10は,中間転写ベルト12上にトナー像を形成する各色の画像形成部20と,形成されたトナー像を印刷用紙の第1面に転写する2次転写部16と,トナー像が転写された印刷用紙に画像を定着させる定着部17とを有するものであって,2次転写部16と,定着部17のうち印刷用紙の第2面に対向する部材(加圧ローラ17a)と,の少なくとも一方による印刷用紙の第2面への汚れの付着を防止する制御を行う制御部35を有し,制御部35は,実行指示された印刷が裏紙への印刷であるか否かに応じて,裏紙への印刷である場合には当該制御を行わず,裏紙への印刷でない場合には当該制御を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,コピー機,プリンタ,FAX等の電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,オフィス等においては,用紙の使用量を減らすために,片面に一度印刷した用紙の裏側(いわゆる裏紙)を印刷用紙として使用することが行われている。このような印刷物では,例えば表裏で同じような内容のものであったり,多数枚の印刷物を散乱させてしまったような場合等に,いずれの面が最新の印刷であるかが分からなくなることがあった。これに対して,例えば特許文献1では,裏紙への印刷時には,画像を形成した後に反転装置を用いて用紙を反転させ,裏面に裏であることを明示するマークを画像形成する装置が提案されている。また,例えば特許文献2には,画像形成の前か後に,裏面にスタンプを押印する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−199738号公報
【特許文献2】特開平10−339974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の技術には,以下のような問題点があった。例えば,特許文献1に記載の技術では,用紙を反転させてマークを印刷するため,生産性が大きく低下する。また,消耗品を消費し,部品の寿命を短くするという問題点もあった。あるいは,裏面にスタンプを押す装置では,そのための専用部分としてスタンプ装置を新たに付け加える必要がある。そのため,コスト増や,スペース増の問題があった。さらには,スタンプのインクが消耗品に加わるという問題点もあった。
【0005】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,生産性が高く,高寿命で省資源であるとともに,裏紙を使用した際にも表裏面の区別が容易である画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,像担持体を有しその像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成部と,印刷用紙を挟んで像担持体に対向し,トナー像形成部によって形成されたトナー像を印刷用紙の第1面に転写する転写部と,転写部によってトナー像が転写された印刷用紙に画像を定着させる定着部材の対とを有する画像形成装置であって,転写部と,定着部材の対のうち印刷用紙の第2面に対向する部材(以下,加圧部材という)と,の少なくとも一方による印刷用紙の第2面への汚れの付着を防止する制御を行う裏汚れ防止制御部を有し,裏汚れ防止制御部は,実行指示された印刷が裏紙への印刷であるか否かに応じて,裏紙への印刷である場合には当該制御を行わず,裏紙への印刷でない場合には当該制御を行うものである。
【0007】
本発明の画像形成装置によれば,像担持体上に形成されたトナー像は,転写部によって印刷用紙の第1面に転写される。従って,転写工程においては,転写部が印刷用紙の第2面に対向する。次に,印刷用紙に転写されたトナー像は,定着部材の対に挟まれて定着される。この定着工程においては,加圧部材が印刷用紙の第2面に対向する。そのため,これらの転写部および加圧部材のいずれかの表面に汚れが付着していると,その汚れが印刷用紙の第2面に付着するおそれがある。そのため,従来より,これらの部材を清掃して,第2面への汚れの付着を防止することが行われていた。
【0008】
本発明では,印刷用紙の第2面への汚れの付着を防止する制御を行う裏汚れ防止制御部を有し,印刷用紙が裏紙であるか否かに応じてその制御を行うか否かを選択する。すなわち,印刷用紙が裏紙であれば,第2面への汚れの付着を防止する制御を行わない。それにより,裏紙の第2面に汚れが付着するので,表裏面の区別が容易である。本発明の画像形成装置では,印刷用紙を反転させる必要がないので,生産性が高い。また,消耗品を使用したり,専用の部材を必要としないので,高寿命で省資源である。これにより,生産性が高く,高寿命で省資源であるとともに,裏紙を使用した際にも表裏面の区別が容易な画像形成装置となっている。
【0009】
なお,本発明でいう像担持体は,その上にトナー像が形成される部材であり,感光体と中間転写体とを含む。また,転写部は,印刷用紙にトナー像が転写される際に,印刷用紙の第2面側に配置される部材である。例えば,中間転写ベルトを有する2回転写方式では,2次転写部がこれに当たる。また,中間転写ベルトを有しない直接転写方式では,直接転写ベルトがこれに当たる。
【0010】
さらに本発明では,転写部に接触してその表面をクリーニングする転写クリーニング部を有し,裏汚れ防止制御部は,汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,転写クリーニング部を転写部から離隔させ,汚れの付着を防止する制御を行う場合には,転写クリーニング部を転写部に接触させることが望ましい。
このようにすれば,転写部の表面の汚れが印刷用紙の第2面に付着することを防止するかしないかの制御は容易である。
【0011】
さらに本発明では,加圧部材に接触してその表面をクリーニングする定着クリーニング部を有し,裏汚れ防止制御部は,汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,定着クリーニング部を加圧部材から離隔させ,汚れの付着を防止する制御を行う場合には,定着クリーニング部を加圧部材に接触させることが望ましい。
このようにすれば,加圧部材の表面の汚れが印刷用紙の第2面に付着することを防止するかしないかの制御は容易である。
【0012】
また本発明では,転写部または加圧部材に接触してその表面をクリーニングするクリーニングローラと,クリーニングローラの表面から汚れを掻き取る掻き取り部材と,掻き取り部材から落下する汚れを受ける汚れ溜め部材とを有し,裏汚れ防止制御部は,汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,汚れ溜め部材と掻き取り部材とを近接させ,汚れの付着を防止する制御を行う場合には,汚れ溜め部材と掻き取り部材とを離隔させるものであってもよい。
汚れ溜め部材と掻き取り部材とを近接させると,汚れ溜め部材に溜められた汚れが,掻き取り部材を介してクリーニングローラへと逆流する。そのため,転写部または加圧部材の表面に汚れを付着させることとなる。従って,印刷用紙の第2面に汚れを付着させるので,表裏面の区別は容易となる。
【0013】
さらに本発明では,裏汚れ防止制御部は,汚れの付着を防止する制御を行う場合には,加圧部材の温度を印刷用紙の第2面のトナー像が溶融する温度より低い温度とし,汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,加圧部材の温度を汚れの付着を防止する制御を行う場合に比較して高い温度とするようにしてもよい。
加圧部材の温度を例えば第2面のトナー像が溶融する温度以上とすると,第2面にトナー像やトナー汚れがあればこれが溶融される。すなわち,印刷用紙の第2面にトナー像があれば,これが溶融されて画像が乱される。さらに,溶融したトナーと印刷用紙の第2面が接触すれば,印刷用紙の第2面に汚れが付着する。従って,このようにしても,印刷用紙の第2面に汚れが付着することを防止しないものとなる。
【0014】
さらに本発明では,画像形成に供する印刷用紙の第2面の画像の有無を検知して,画像があると検知した場合には裏紙への印刷であると判断し,画像がないと検知した場合には裏紙への印刷でないと判断する裏紙判断部を有することが望ましい。
このようにすれば,印刷用紙が裏紙であるかどうかの判断は容易であり,ユーザの指示入力等を必要としないので,使用は簡便である。
【0015】
さらに本発明では,転写部へ向けて印刷用紙を給紙する複数の給紙部を有し,給紙部のうちの予め定めた1つからの給紙の際には裏紙への印刷であると判断し,それ以外の給紙部からの給紙の際には裏紙への印刷でないと判断する裏紙判断部を有することが望ましい。
裏紙を給紙するための給紙部は,予め決められていることが多い。そこで,その給紙部からの給紙の場合に,裏紙であると判断することとすれば,使用は簡便である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像形成装置によれば,生産性が高く,高寿命で省資源であるとともに,裏紙を使用した際にも表裏面の区別が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】2次転写クリーナおよび定着部クリーナが接離する様子を示す説明図である。
【図3】裏紙センサを示す説明図である。
【図4】裏汚れを防止する状態の別の機構を示す説明図である。
【図5】裏汚れを防止しない状態とするための別の機構を示す説明図である。
【図6】裏汚れを防止する状態の別の機構を示す説明図である。
【図7】裏汚れを防止しない状態とするための別の機構を示す説明図である。
【図8】裏汚れを防止しない状態を示す説明図である。
【図9】第2の形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明を具体化した形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,タンデム方式のカラープリンタに本発明を適用したものである。
【0019】
(第1の形態)
第1の形態のカラープリンタ10は,図1に示すように,カラー画像の形成が可能ないわゆるタンデム方式の画像形成装置である。図中中ほどには,4色の画像形成部が,図中左から右へ,イエロー20Y,マゼンタ20M,シアン20C,ブラック20Kの順に中間転写ベルト12に沿って配置されている。中間転写ベルト12の図中上方には,各色のトナーを収容する4つのトナー収容部11(11Y,11M,11C,11K)が設けられている。すなわち,本形態は,各色の画像形成部で形成されたトナー像を,中間転写ベルト12に一旦転写し,さらに中間転写ベルトから印刷用紙に転写する中間転写方式の画像形成装置である。
【0020】
また,カラープリンタ10の図1中で下部には,着脱可能な複数の給紙カセット13が装着されている。さらに,図中右側には,下から上向きに用紙搬送路14が設けられている。用紙搬送路14に沿って,下から順に,給紙ローラ15,2次転写部16,定着部17,排紙ローラ18が設けられている。また,カラープリンタ10の上面には,排紙トレイ19が設けられている。
【0021】
各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kは,それぞれの感光体21を中心に,図1中で時計回りに,帯電部22,現像部24,1次転写部25,クリーナ26を有している。さらに,各色の画像形成部の下部に,露光部23が設けられている。露光部23は,各色で共通のものとなっている。また,各感光体21において露光部23によって露光される箇所は,帯電部22と現像部24との間である。図では,イエローの画像形成部20Yのみに符号を付しているが,他の色についても同様の構成となっている。
【0022】
さらに本形態では,2次転写部16の図中右下に,2次転写クリーナ31が設けられている。また,定着部17には,加圧ローラ17aが含まれており,加圧ローラ17aの図中右下に,定着部クリーナ32が設けられている。これらの2次転写クリーナ31および定着部クリーナ32は,いずれも,それぞれのクリーニング対象に接触して,その表面をクリーニングするためのものである。さらにそれぞれ,そのクリーニング対象に対して接離可能にされている。また,本形態のカラープリンタ10は,2次転写クリーナ31および定着部クリーナ32の位置制御を含んで,装置各部の制御を行う制御部35を有している。
【0023】
次に,このカラープリンタ10によってカラー画像が形成される際の,各部の動作を簡単に説明する。画像形成時には,中間転写ベルト12および各色の感光体21は,図1中に矢印で示すように回転される。感光体21は,帯電部22によって一様に帯電され,続いて露光部23によって露光される。これにより,感光体21の表面には,画像データに基づいた静電潜像が形成される。次に,現像部24によって,静電潜像にトナーが供給され,感光体21上にトナー像が形成される。各色のトナー像は,1次転写部25によって中間転写ベルト11上に転写され,重ね合わされる。1次転写領域を通過後も感光体21に残留しているトナーは,クリーナ26によって掻き取られる。
【0024】
一方,給紙カセット13に収容されている用紙は,給紙ローラ15によって1枚ずつ引き出される。そして,中間転写ベルト12上に重ね合わされたトナー像は,用紙搬送路14を搬送されてきた用紙に,2次転写部16において転写される。トナー像が転写された用紙は,さらに上方へ搬送され,定着部17に至る。定着部17において,加熱されるとともに加圧されることにより,トナーが用紙に定着される。これにより,画像形成された用紙は排紙ローラ18によって排紙トレイ19に排出される。
【0025】
さらに,2次転写クリーナ31によって,2次転写部16がクリーニングされる。定着部クリーナ32によって,加圧ローラ17aがクリーニングされる。図2に示すように,用紙搬送路14を搬送される用紙の図中左側が,2次転写部16によってトナー像が転写される印刷面(第1面)である。そして,2次転写部16や加圧ローラ17aは,用紙搬送路14の図中右側に配置されており,用紙の印刷面に対して裏面(第2面)側に接触している。これらの部材にトナー等の汚れが付着したまま用紙に接触すると,印刷用紙の裏面を汚すおそれがある。
【0026】
印刷用紙の裏面の汚れを防止するために,通常,2次転写処理を実行中には2次転写クリーナ31が2次転写部16に接触して,その表面をクリーニングする。また,定着処理を実行中には,定着部クリーナ32が加圧ローラ17aに接触して,その表面をクリーニングする。すなわち,2次転写クリーナ31および定着部クリーナ32によって,用紙の裏面への汚れの付着が防止される。
【0027】
本形態では,図2に示すように,2次転写クリーナ31および定着部クリーナ32は,各クリーニング対象に対して接離可能にされている。すなわち,制御部35の制御によって,それぞれ図中に矢印で示すように上下に移動可能にされている。そして,図中に実線で示す下位置(対象から離隔した状態)では,いずれも,その対象をクリーニングすることが出来ない。このようにすると,2次転写部16や加圧ローラ17aがクリーニングされないので,その表面に汚れが付いていてもそのまま用紙に対面する。従って,この配置が,用紙裏面に汚れが付着することを防止しない配置である。
【0028】
本形態では,制御部35は,裏紙への印刷であると判断した場合には,用紙の裏面への汚れの付着を防止しない。そのために,2次転写クリーナ31および定着部クリーナ32を下位置へ移動させて,それぞれのクリーニング対象の部材から離隔させる。両方とも離隔してもよいし,いずれか一方のみでもよい。裏紙印刷時の裏面は不要の印刷面であるので,表側の画像品質には影響しない。また,この面が汚れることにより,その面が裏面であることが示唆される。すなわち,表裏面の区別が容易となる。なお,裏汚れはその全面にわたって行う必要はなく,横線が描かれる程度でもよい。また,次回の印刷用紙が新品用紙である場合にそれに影響を与えることのないように,適切なタイミングで再び各クリーナを対象部材に接触させる。
【0029】
なお,用紙の裏面への汚れの付着を防止するか否かの判断は,給紙カセット13の選択またはユーザによる指示入力によって行うとよい。例えば,予め,複数の給紙カセット13のうちの1つを,裏紙用として設定しておく。そして,裏紙用と設定された給紙カセット13からの給紙が開始されたときには,用紙の裏面への汚れの付着を防止しないこととすればよい。あるいは,ユーザが,装置外面に設けられた設定入力キー等を用いて,裏紙を使用するか否かを指示入力できるようにしてもよい。いずれの場合にも,1つのジョブが終了したら,再び,用紙の裏面への汚れの付着を防止するようにしておくことが好ましい。
【0030】
あるいは,図3に示すように,用紙搬送路14中に,用紙の裏面を検知する画像センサ41を配置しておいてもよい。画像センサ41によって,用紙の裏面に画像が検知されたら,裏紙であると判断する。このようにすれば,裏紙を使用する給紙カセット13を予め決めておく必要がない。また,プリント時にいちいち指示する必要もないので,ユーザの手間が省けるものとなっている。
【0031】
次に,他の形態の定着部クリーナ43を図4に示す。この定着部クリーナ43は,吸引ローラ45,ブラシ46,汚れ溜め47を有している。吸引ローラ45は,加圧ローラ17aに接触して回転し,加圧ローラ17aの表面の汚れを吸い付けるものである。ブラシ46は,ブラシ毛の先端部を吸引ローラ45に当接させながら回転し,吸引ローラ45から汚れを掻き落とすためのものである。また,汚れ溜め47は,ブラシ46によって掻き落とされた汚れを受けて,溜めておくためのものである。通常,汚れ溜め47は,ブラシ46からやや離して下方に配置され,ブラシ46のブラシ毛と汚れ溜め47に溜められた汚れとが接触しないようにされている。
【0032】
そして,用紙の裏面への汚れの付着を防止しない場合には,定着部クリーナ32を加圧ローラ17aから離隔させる代わりに,図5に示すように,汚れ溜め47を上昇させて,ブラシ46と汚れ溜め47とを接触させる。このようにすれば,ブラシ46に汚れ溜め47の汚れが付着し,ブラシ46の汚れを増加させることになる。そして,吸引ローラ45を介して,加圧ローラ17aに汚れを付着させる。従って,このようにしても,用紙の裏面に汚れを付着させることになる。なお,これと同様の機構を2次転写クリーナ31に適用することもできる。その場合には,図中の加圧ローラ17aを2次転写部16に読み替えればよい。
【0033】
さらに,他の形態の定着部クリーナ32を図6に示す。この定着部クリーナ32は,ゴムブレード51,クリーナケース52,搬送ローラ53を有している。この定着部クリーナ32は,加圧ローラ17aの上方に配置される。ゴムブレード51は,加圧ローラ17aの表面に当接して,トナー等の汚れを掻き取るものである。クリーナケース52の図中下部は,開口52aとなっている。そして,ゴムブレード51によって掻き取られた汚れは開口52aから,搬送ローラ53によって,クリーナケース52の内部へと運ばれ溜められる。
【0034】
本形態では,定着部クリーナ32は,図6に示すように,加圧ローラ17aの上部に配置され,図中上下方向に移動可能とされている。通常,定着部クリーナ32は,加圧ローラ17aの表面に接触している。そのため,開口52aは,加圧ローラ17aの表面によって塞がれている。裏紙への印刷であると判断された場合には,図7に示すように,加圧ローラ17aの表面から離して,やや上方へ移動させる。このような配置では,開口52aは,塞がれていない。従って,クリーナケース52の内部に溜められた汚れは,開口52aから流れ出して,加圧ローラ17aの表面に付着する。これにより,用紙の裏面への汚れの付着を防止しない状態となる。なお,これと同様の機構を2次転写クリーナ31に適用することもできる。その場合には,図中の加圧ローラ17aを2次転写部16に読み替えればよい。
【0035】
また,加圧ローラ17aの温度を制御しているものでは,その温度制御を停止することによってもよい。画像形成装置によっては,定着処理時の加圧ローラ17aの温度があまり高温とならないように温度制御を行っているものがある。加圧ローラ17aが定着温度と同程度に高温となっていると,裏面の画像が溶融し,加圧ローラ17aに付着することがあるからである。
【0036】
そこで,本形態では,この温度制御を停止して,加圧ローラ17aを定着温度程度まで高温となるようにする。例えば,加熱側とは別に加圧ローラ17aにも熱源を有するものとしてもよい。あるいは,加圧ローラ17a専用の熱源は持たず,加熱側の加熱による温度上昇を放熱することによって制御しているものでは,放熱の程度を下げるようにしてもよい。このようにすれば,図8に示すように,裏面の画像が溶融し,加圧ローラ17aに付着する。裏面の画像が溶融して乱れること,および,この加圧ローラ17aに付着した画像を再び用紙裏面に付着させることにより,用紙の裏面への汚れの付着を防止しないことと同様の効果が得られる。
【0037】
本形態では,制御部35によって,印刷用紙の第2面への汚れの付着を防止する制御を行う,あるいは行わない構成として,以上に記載した種々の構成のうち,いずれのものを使用してもよい。2次転写部16と定着部17とのいずれか一方について行っても良いし,両方にそれぞれ行っても良い。さらに,両方について行う場合でも,各構成の組合せは任意である。
【0038】
以上詳細に説明したように,本形態のカラープリンタ10によれば,裏紙への印刷であるか否かに応じて,裏紙への印刷であると判断された場合には,制御部35によって,用紙の裏面への汚れの付着を防止しないように制御される。従って,裏紙の裏面が汚されるので,表裏面の区別は容易となる。このようにすれば,用紙を反転する必要はないので生産性が高い。また,表裏面の区別のために何らかの消費材を消費することもない。これにより,生産性が高く,高寿命で省資源であるとともに,裏紙を使用した際に表裏面の区別が容易である画像形成装置となっている。
【0039】
(第2の形態)
次に,本発明を具体化した第2の形態について説明する。本形態のカラープリンタ60は,図9に示すように,直接転写ベルト61を有する直接転写方式の画像形成装置である。第1の形態と同様の部材については,同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
本形態のカラープリンタ60では,直接転写ベルト61に沿って,図9中上下方向に各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kが並べられている。また,直接転写ベルト61は,2つのローラ62,63に架け渡されている。そして,画像形成時には,図中に矢印で示すように,図中時計回りに回転される。図中下方のローラ63近傍には,直接転写ベルト61に対して接離可能に,直接転写クリーナ65が配置されている。この直接転写クリーナ65は,直接転写ベルト61の表面をクリーニングするためのものである。
【0041】
本形態では,画像形成時には,直接転写ベルト61と各色の感光体21との間を通って,下から上向きに用紙が搬送される。そして,各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kの各感光体21上に形成されたトナー像が,搬送される用紙に直接転写される。すべての感光体21からのトナー像の転写が終わった用紙は,図9に示すように,そのままさらに上方へ搬送される。そして,用紙上のトナー像は,定着部17によって定着される。
【0042】
従って,本形態のカラープリンタ60では,用紙の印刷面が各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対面しているときに,用紙の裏面が直接転写ベルト61の表面に接触する。そのため,直接転写ベルト61の表面に汚れが付着していると,用紙の裏面が汚れるおそれがある。すなわち,本形態では,制御部35によって直接転写クリーナ65の接離が制御されることによって,用紙の裏面への汚れの付着を防止するか否かが制御される。
【0043】
そこで,制御部35は,画像形成に供する用紙が裏紙であると判断したら,直接転写クリーナ65を直接転写ベルト61から離隔する。これにより,その用紙の裏面は,汚れの付着したままの直接転写ベルト61に接触するので,直接転写ベルト61の汚れが付着することが防止されていない。従って,用紙の裏面が汚れるので表裏の区別は容易である。この形態では,直接転写ベルト61が転写部の一部に相当する。
【0044】
さらに本形態においても,第1の形態と同様に種々のバリエーションが考えられる。また,第1の形態と同様に,定着部17による印刷用紙の第2面への汚れの付着を防止する制御を行う,あるいは行わないとすることもできる。直接転写ベルト61と定着部17とのいずれか一方について行っても良いし,両方にそれぞれ行っても良い。さらに,両方について行う場合でも,各構成の組合せは任意である。
【0045】
以上詳細に説明したように,本形態のカラープリンタ60によっても,生産性が高く,高寿命で省資源であるとともに,裏紙を使用した際に表裏面の区別が容易である画像形成装置とすることができる。
【0046】
なお,上記の各形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,図示のカラープリンタは1つの例であり,これに限らず,コピー機,FAX機等にも適用可能であることは言うまでもない。画像形成部や定着部の構成もこれに限らない。また,手差しトレイをさらに有する画像形成装置では,手差しトレイを裏紙用とすることもできる。
【符号の説明】
【0047】
10,60 カラープリンタ
13 給紙カセット
16 2次転写部
17 定着部
17a 加圧ローラ
31 2次転写クリーナ
32,43 定着部クリーナ
35 制御部
41 画像センサ
45 吸引ローラ
46 ブラシ
47 汚れ溜め
65 直接転写クリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を有しその像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成部と,印刷用紙を挟んで前記像担持体に対向し,前記トナー像形成部によって形成されたトナー像を印刷用紙の第1面に転写する転写部と,前記転写部によってトナー像が転写された印刷用紙に画像を定着させる定着部材の対とを有する画像形成装置において,
前記転写部と,前記定着部材の対のうち印刷用紙の第2面に対向する部材(以下,加圧部材という)と,の少なくとも一方による印刷用紙の第2面への汚れの付着を防止する制御を行う裏汚れ防止制御部を有し,
前記裏汚れ防止制御部は,実行指示された印刷が裏紙への印刷であるか否かに応じて,裏紙への印刷である場合には当該制御を行わず,裏紙への印刷でない場合には当該制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記転写部に接触してその表面をクリーニングする転写クリーニング部を有し,
前記裏汚れ防止制御部は,
汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,前記転写クリーニング部を前記転写部から離隔させ,
汚れの付着を防止する制御を行う場合には,前記転写クリーニング部を前記転写部に接触させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記加圧部材に接触してその表面をクリーニングする定着クリーニング部を有し,
前記裏汚れ防止制御部は,
汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,前記定着クリーニング部を前記加圧部材から離隔させ,
汚れの付着を防止する制御を行う場合には,前記定着クリーニング部を前記加圧部材に接触させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の画像形成装置において,
前記転写部に接触してその表面をクリーニングするクリーニングローラと,
前記クリーニングローラの表面から汚れを掻き取る掻き取り部材と,
前記掻き取り部材から落下する汚れを受ける汚れ溜め部材とを有し,
前記裏汚れ防止制御部は,
汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,前記汚れ溜め部材と前記掻き取り部材とを近接させ,
汚れの付着を防止する制御を行う場合には,前記汚れ溜め部材と前記掻き取り部材とを離隔させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記加圧部材に接触してその表面をクリーニングするクリーニングローラと,
前記クリーニングローラの表面から汚れを掻き取る掻き取り部材と,
前記掻き取り部材から落下する汚れを受ける汚れ溜め部材とを有し,
前記裏汚れ防止制御部は,
汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,前記汚れ溜め部材と前記掻き取り部材とを近接させ,
汚れの付着を防止する制御を行う場合には,前記汚れ溜め部材と前記掻き取り部材とを離隔させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記裏汚れ防止制御部は,
汚れの付着を防止する制御を行う場合には,前記加圧部材の温度を印刷用紙の第2面のトナー像が溶融する温度より低い温度とし,
汚れの付着を防止する制御を行わない場合には,前記加圧部材の温度を汚れの付着を防止する制御を行う場合に比較して高い温度とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
画像形成に供する印刷用紙の第2面の画像の有無を検知して,画像があると検知した場合には裏紙への印刷であると判断し,画像がないと検知した場合には裏紙への印刷でないと判断する裏紙判断部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記転写部へ向けて印刷用紙を給紙する複数の給紙部を有し,
前記給紙部のうちの予め定めた1つからの給紙の際には裏紙への印刷であると判断し,それ以外の前記給紙部からの給紙の際には裏紙への印刷でないと判断する裏紙判断部を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−204521(P2010−204521A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51674(P2009−51674)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】