説明

画像形成装置

【課題】ユーザの接近を検知して低消費電力状態から通常消費電力状態へ復帰させる場合の無駄な復帰動作と復帰動作開始の応答性悪化とを防止する。
【解決手段】複合機は低消費電力状態中に、IDカードを携帯したユーザが接近してIDカード内のICタグに記憶されているユーザIDを装置内のICタグリーダ(認証情報読取部)で読み取ることによりユーザの接近を検知し(S101;Yes)、そのユーザIDを予め登録されている認証情報と照合してユーザ認証を行う(S102)。認証許可(S103;Yes)および排紙トレイに印刷物が有る場合には(S104;Yes)、通常消費電力状態への復帰判定を行う(S105)。ここで、排紙トレイ上に認証ユーザの印刷物が有ると判断した場合は低消費電力状態を継続させる判定を下し、同印刷物が無いと判断した場合は通常消費電力状態へ復帰させる判定を下し、その判定結果に基づいた制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの接近を検知して低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子タグや無線タグなどとも呼ばれる非接触型のIC(Integrated Circuit)タグを用いた無線通信による個体識別技術は広く利用されている。
【0003】
画像形成装置においては、ICタグを組み込んだID(IDentification)カードや携帯端末などを携帯するユーザが接近したときに、ICタグに記憶されているID情報(ユーザID)を非接触型リーダで読み取ってユーザを識別し認証するなどしている。また、このような自動認証機能を用いて、画像形成装置が低消費電力状態となっているときにユーザの接近を検知すると、自動的に通常消費電力状態へ復帰させるなどして利便性を高めている。
【0004】
しかし、画像形成装置を使用しないユーザの接近時にもそのような復帰動作を行うと、消費電力の抑制効果(省エネルギー効果)が薄れてしまう問題がある。たとえば、画像形成装置の近くを素通りするユーザ、あるいは、クライアント端末からのプリント指示による印刷物やファクシミリ受信による印刷物を取りに来るだけのユーザなどに対しても上記の復帰動作を行うことは無駄である。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1に記載の画像形成装置では、自動認証機能で認証したユーザの操作意思を確認してから復帰動作を開始するようにしている。操作意思については、原稿セットやパネル操作、あるいは、認証したユーザが装置の近くに所定時間以上滞在していることの検知で確認するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−47765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の技術では、低消費電力状態となっている画像形成装置をユーザが使用する際に、装置に到着して原稿セットやパネル操作などの行為を行った後は、通常消費電力状態への復帰動作が開始されそれが完了して装置を通常使用できるまでの間、待たされることになる。このように、ユーザが装置に対して所定の行為を行わないと復帰動作が開始されない構成では、応答性が悪化して利便性が低下する問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、ユーザの接近を検知して低消費電力状態から通常消費電力状態へ復帰させる場合の無駄な復帰動作と復帰動作開始の応答性悪化とを防止することができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0010】
[1]ユーザの特定されたジョブの画像データに対応する画像を用紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により前記画像が形成された用紙である印刷物が排出される排出部と、
接近するユーザからそのユーザを識別するための識別情報を取得する取得部と、
通常動作を実行可能な通常消費電力状態から消費電力を抑えた低消費電力状態へ移行しているときに、前記取得部が前記識別情報を取得することでユーザの接近を検知し、その識別情報に対応するユーザである識別ユーザの印刷物が前記排出部に有るか無いかに応じて前記低消費電力状態から前記通常消費電力状態への復帰制御を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【0011】
上記発明では、画像形成装置は画像形成部により、ユーザの特定されたジョブの画像データに対応する画像を用紙に形成し、その印刷物を排出部に排出する。また、通常消費電力状態から低消費電力状態へ移行しているときに、接近するユーザから識別情報を取得することでユーザの接近を検知し、その識別情報に対応する識別ユーザの印刷物が排出部に有るか無いかに応じて低消費電力状態から通常消費電力状態へ復帰させる復帰制御(状態遷移制御)を行う。これにより、ユーザの接近を検知して低消費電力状態から通常消費電力状態へ復帰させる場合の無駄な復帰動作と復帰動作開始の応答性悪化とを防止することができる。
【0012】
[2]前記制御部は、前記識別ユーザの印刷物が前記排出部に有ると判断した場合は前記低消費電力状態から前記通常消費電力状態へ復帰させない制御を行う
ことを特徴とする[1]に記載の画像形成装置。
【0013】
上記発明では、画像形成装置に接近した識別ユーザの印刷物が排出部に有ると判断した場合は、識別ユーザがその印刷物を取得するために接近したものと認識して低消費電力状態を継続する。これにより、無駄な復帰動作が防止される。
【0014】
[3]前記制御部は、前記識別ユーザの印刷物が前記排出部に無いと判断した場合は前記低消費電力状態から前記通常消費電力状態へ復帰させる制御を行う
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の画像形成装置。
【0015】
上記発明では、画像形成装置に接近した識別ユーザの印刷物が排出部に無いと判断した場合は、識別ユーザが画像形成装置を使用するために接近したものと認識して通常消費電力状態へ復帰させる。これにより、復帰動作開始の応答性悪化が防止される。
【0016】
[4]前記制御部は、前記識別ユーザに対する接近の検知がその識別ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてである場合に、前記識別ユーザの印刷物が前記排出部に有ると判断し、前記識別ユーザに対する接近の検知がその識別ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてでない場合に、前記識別ユーザの印刷物が前記排出部に無いと判断する
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0017】
上記発明では、識別ユーザに対する接近の検知がその識別ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてである場合は、その識別ユーザの印刷物が未だ取得されておらず排出部に有ると判断し、たとえば[2]に記載したように、識別ユーザが自分の印刷物を取得するために接近したものと認識して低消費電力状態を継続する。識別ユーザに対する接近の検知がその識別ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてでない場合は、その識別ユーザの印刷物が既に取得されていて排出部に無いと判断し、たとえば[3]に記載したように、識別ユーザが画像形成装置を使用するために接近したものと認識して通常消費電力状態へ復帰させる。
【0018】
識別ユーザの印刷物が排出部に有るか無いかの判断は、印刷物を検出したりユーザと対応付けて追跡したりするための構成(検出手段/追跡手段)を付加するなどしなくとも、上記のように、識別ユーザに対する接近の検知がその識別ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてであるかないかを確認するだけで可能であり、簡単な構成により行うことができる。
【0019】
[5]前記取得部は、前記識別情報が記憶されてユーザに携帯された携帯装置と当該画像形成装置を含む所定の交信範囲内で交信することにより前記携帯装置から前記識別情報を取得する
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0020】
上記発明では、識別情報が記憶された携帯装置を携帯するユーザが画像形成装置に接近し、所定の交信範囲内に携帯装置が入ると、取得部は携帯装置と交信して識別情報を取得する。このような構成により、接近するユーザからそのユーザを識別するための識別情報を取得することができる。
【0021】
[6]前記ユーザの特定されたジョブは、前記ユーザの識別情報が付加されたプリントジョブと、宛先が前記ユーザに指定されたファクシミリジョブと、前記ユーザからの前記識別情報の取得後に操作部を通して指示されたコピージョブとの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0022】
上記発明では、たとえば、画像形成装置と通信可能に接続された端末装置などからユーザの識別情報が付加されたプリントジョブを受信した場合は、そのプリントジョブに対応するユーザを識別情報に基づいて特定できる。これにより、ユーザの特定されたプリントジョブの印刷物を排出部に排出したか否かを把握できる。
【0023】
画像形成装置とファクシミリ通信可能に接続されたファクシミリ機能を有する外部装置などから宛先がユーザに指定されたファクシミリジョブを受信した場合は、そのファクシミリジョブに対応するユーザを宛先に基づいて特定できる。これにより、ユーザの特定されたファクシミリジョブの印刷物を排出部に排出したか否かを把握できる。
【0024】
ユーザからの識別情報の取得後に画像形成装置の操作部を通して指示されたコピージョブでは、そのコピージョブに対応するユーザは指示の直前に取得された識別情報に対応するユーザであると特定できる。これにより、ユーザの特定されたコピージョブの印刷物を排出部に排出したか否かを把握できる。
【0025】
[7]画像データに対応する画像を用紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により前記画像が形成された用紙である印刷物が排出される排出部と、
ユーザの接近を検知する検知部と、
通常動作を実行可能な通常消費電力状態から消費電力を抑えた低消費電力状態へ移行しているときに、前記排出部における前記印刷物の有無と前記検知部による前記ユーザの接近の検知とに基づいて前記低消費電力状態から前記通常消費電力状態への復帰制御を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【0026】
上記発明では、画像形成装置は画像形成部により画像データに対応する画像を用紙に形成し、その印刷物を排出部に排出する。また、検知部によりユーザの接近を検知する。そして通常消費電力状態から低消費電力状態へ移行しているときは、排出部における印刷物の有無と検知部によるユーザの接近の検知とに基づいて低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を行う。
【0027】
たとえば、排出部における印刷物の有無にかかわらず、ユーザの接近を検知しない場合は、画像形成装置がユーザに使用されることはないため、低消費電力状態を継続する。排出部に印刷物が有るときにユーザの接近を検知した場合は、ユーザが印刷物を取得するために接近した可能性が高いため、低消費電力状態を継続する。排出部に印刷物が無いときにユーザの接近を検知した場合は、ユーザが画像形成装置を使用するために接近した可能性が高いため、通常消費電力状態へ復帰させるなどの制御を行う。
【発明の効果】
【0028】
本発明の画像形成装置によれば、ユーザの接近を検知して低消費電力状態から通常消費電力状態へ復帰させる場合の無駄な復帰動作と復帰動作開始の応答性悪化とを防止することができる。このように、無駄な復帰動作を防止できることで、消費電力を抑制できるようになり、復帰動作開始の応答性悪化を防止できることで、利便性が向上するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成システム5のシステム構成例を示している。画像形成システム5は、オフィスなどで使用されるシステムであり、複合機(MFP;Multi Function Peripheral/Multi Function Printer)10と、任意台数のクライアント端末11とをLAN(Local Area Network)などのネットワーク2に接続して構成される。
【0031】
複合機10は、原稿のコピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能などを備えたデジタル複合機と呼ばれる装置(画像形成装置)である。また、無線通信による個体識別技術(RFID(Radio Frequency IDentification)技術)を用いてユーザを識別し認証する機能(自動認証機能)、ジョブの実行を含む通常動作を実行可能な通常消費電力状態にてジョブ完了後の無操作状態が所定時間を経過するとまたはジョブ完了後のユーザの無認証状態が所定時間を経過すると消費電力を抑えた低消費電力状態へ移行する機能(省電力機能)、低消費電力状態にて操作の有無または認証(識別)したユーザの印刷物の有無に応じて通常消費電力状態への復帰制御を行う機能を備えている。上記の所定時間は予め設定されており、管理者などが初期設定を変更することも可能となっている。
【0032】
ユーザ認証(個人認証)は、一般にはユーザ本人を識別するためのユーザIDなどの識別情報とユーザ本人であることを証明するためのパスワードなどの証明情報とを1セットにして認証情報として使用し、ユーザから取得した認証情報を予め登録されている認証情報と照合することで認証許可または認証不可を判断するものである。これに対し、本実施の形態に係る自動認証機能では、識別情報のみを認証情報として使用し、識別情報のみでユーザ認証を行うようにしている。この認証情報として使用される識別情報をユーザから取得することでユーザを識別すると共に、その識別情報(認証情報)を予め登録されている認証情報と照合することで認証許可または認証不可を判断するようにしている。
【0033】
また複合機10は、コピー、スキャン、ファクシミリ送信などの対象となる原稿が積載され1枚ずつ読取位置に自動で送り込む自動原稿送り装置(Auto Document Feeder;ADF)15と、サイズや紙種の異なる複数種類の用紙を種類毎に積載して複合機10内のプリンタ部に供給する複数の給紙トレイ16と、プリンタ部により用紙に画像が形成された印刷物が排出される排出部としての排紙トレイ17とを備えている。
【0034】
クライアント端末11は、複合機10に対してネットワーク2を通じてアクセスし、プリントジョブなど各種作業の依頼や操作の依頼などを行う装置であり、たとえば、パーソナルコンピュータ(Personal Computer;PC)に複合機10のドライバプログラムなどを組み込んで構成される。
【0035】
図2は、複合機10の概略構成を示している。複合機10は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)21に、バス22を介してROM(Read Only Memory)23と、RAM(Random Access Memory)24と、不揮発メモリ25と、ハードディスク装置(Hard Disk Drive;HDD)26と、操作表示部27と、認証情報読取部28と、電源制御部29と、ファクシミリ通信部30と、ネットワーク通信部31と、原稿送り装置制御部32と、スキャナ部33と、画像処理部34と、プリンタ部35とを接続して構成される。
【0036】
CPU21は、ROM23に格納されているプログラムに基づいて複合機10の動作を制御する。RAM24はCPU21がプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するワークメモリとして使用されるほか、画像データを一時的に保存するための画像メモリなどにも使用される。
【0037】
不揮発メモリ25は、電源がオフされても記憶が保持されるメモリであり、装置固有の情報や各種の設定情報、ユーザ認証に使用される各ユーザの認証情報(識別情報)、ジョブの実行履歴に関する情報(ジョブ実行履歴テーブル)などが記憶される。ハードディスク装置26は、複合機10を動作させるオペレーティングシステム(Operating System;OS)や複合機10の各種機能を動作させるアプリケーションプログラム、各種の保存データなどを格納するほか、原稿のスキャンやコピーなどにおける画像データ、クライアント端末11から依頼された印刷における画像データ(印刷データ)なども保存する。また、ユーザの認証情報やジョブの実行履歴に関する情報は、不揮発メモリ25ではなくこのハードディスク装置26に保存するようにしてもよい。
【0038】
操作表示部27は、各種の画面を表示する表示部としての機能と、ユーザなどが複合機10に対して行う各種の操作を受け付ける操作部としての機能とを果たす。ここでは、操作表示部27は液晶ディスプレイとその画面上に設けられたタッチパネル(タッチスクリーン)と、各種のボタン類とで構成される。
【0039】
ユーザ認証に使用される各ユーザの認証情報は、この操作表示部27を通して登録することができる。また、複合機10とネットワーク2で接続された前述のクライアント端末11などからも登録することができる。
【0040】
認証情報読取部28は、接近するユーザからユーザ認証を行うための認証情報(ユーザを識別するための識別情報)を取得する取得部としての機能を果たす。ここでは、非接触(近距離無線通信)による自動認証を行うためにICタグと専用のICタグリーダを用いており、認証情報読取部28はICタグリーダで構成されている。
【0041】
ICタグは、情報記憶機能(データ記憶機能)と交信機能(無線通信機能)を備えた電子荷札であり、交信を行うためのアンテナと情報(データ)の記憶や送信制御などを行うICチップを内蔵している。ICタグは、アンテナで電磁波を受信するとICチップに電力が供給されてICチップが動作し、記憶されている情報をアンテナから送信するようになっている。
【0042】
ICタグリーダは、ICタグと交信(無線通信)を行うためのアンテナと交信制御部を備え、交信制御部がアンテナから電磁波を放射してICタグに電力を供給し、ICタグから送信される情報をアンテナで受信するようになっている。ICタグとの交信可能距離は、固定されていてもよく、変更可能とされていてもよい。交信の指向性は、無指向性(全指向性)でもよく、変更可能とされていてもよい。
【0043】
図1に示すように、ユーザUは、ICタグ51が組み込まれた身分証明用のIDカード50を所有しており、IDカード50内のICタグ51(ICチップ)にはユニークなユーザIDが記憶されている。このユーザIDは、上述したユーザ本人を識別するための識別情報であると共にユーザ認証に使用される認証情報である。またIDカード50は、認証情報(識別情報)が記憶されてユーザに携帯されると共に複合機10の認証情報読取部28との交信で認証情報を送信する携帯装置としての機能を果たす。
【0044】
複合機10の認証情報読取部28(ICタグリーダ)は、ICタグ51との交信可能距離Rが変更可能で予め設定されている。交信可能距離Rは、複合機10を使用する場所(オフィスなど)の広さや設置位置などの使用環境に応じて適宜設定すればよく、たとえば1mまたは数mなどに設定されている。
【0045】
これにより、認証情報読取部28(実質的には複合機10)は自身を中心とする交信可能距離Rまでの範囲がIDカード50内のICタグ51と交信可能な交信範囲Saとなる。複合機10の設置フロア上(平面上)で見た場合は、交信可能距離Rを半径とする円内が交信範囲Saとなる。この交信範囲Saが複合機10における非接触でユーザ認証が可能な認証範囲Sbとなる。認証情報読取部28による交信の指向性が変更可能な場合には、上記のような使用環境に応じて指向性を適宜設定することにより、交信範囲Saおよび認証範囲Sbの主方向を設定することも可能となる。
【0046】
電源制御部29は、図示しない電源を制御する機能を果たす。また、電源を制御して複合機10の各部への電力供給を制御し、複合機10の起動停止制御(電源オン/オフ制御)や、通常消費電力状態から低消費電力状態への移行および低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰などの状態遷移制御を行う機能を果たす。
【0047】
ファクシミリ通信部30は、ファクシミリ機能を備えた外部装置と公衆回線を通じて通信する機能を果たす。ネットワーク通信部31は、クライアント端末11やサーバなどの外部装置とネットワーク2を通じて通信する機能を果たす。
【0048】
原稿送り装置制御部32は、自動原稿送り装置15(図1参照)の動作を制御する機能を果たす。自動原稿送り装置15は、前述したように、スキャナ部33による読取位置に原稿を自動で送り込む機能を備えている。たとえば、原稿が積載される原稿トレイと、原稿トレイに積載された原稿をスキャナ部33の読取位置に案内し排出するための搬送通路と、原稿トレイに積載された原稿を1枚ずつ搬送通路に送り込み、スキャナ部33の読取位置を通過させて搬送通路から排出する複数の搬送ローラと、スキャナ部33による読み取りの済んだ原稿が搬送通路から排出される排出トレイなどで構成される。
【0049】
スキャナ部33は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。たとえば、原稿に光を照射する光源と、原稿からの反射光を受光して原稿を幅方向に1ライン分読み取るイメージセンサと、原稿からの反射光をイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーからなる光学経路などで構成される。
【0050】
画像処理部34は画像データに対して、画像補正、回転、拡大/縮小、圧縮(圧縮暗号化)/伸張(伸張復号化)など各種の画像処理を施す機能を果たす。また、クライアント端末11から依頼された印刷における印刷データ(ベクタ形式のイメージデータ)に対してラスタライズ処理を施す機能を果たす。
【0051】
プリンタ部35は、入力された画像データに対応する画像を用紙に形成して出力する機能を果たす。たとえば、用紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置などを備え、電子写真プロセスによって用紙上に画像を形成するレーザープリンタなどとして構成される。
【0052】
プリンタ部35により画像が形成された用紙である印刷物は、前述したように排紙トレイ17に排出される。排紙トレイ17には、図示しない紙検知センサが設けられており、紙検知センサは排紙トレイ17における印刷物の有無に応じた検知信号をCPU21に出力する。CPU21は、この紙検知センサからの検知信号に基づいて、排紙トレイ17に排出された印刷物の有無を把握する。
【0053】
また、CPU21はプログラムを実行することで、認証情報読取部28がIDカード50内のICタグ51から非接触でユーザIDを読み取る(無線で受信する)ことによりユーザの接近を検知する機能と、読み取ったユーザIDを不揮発メモリ25に記憶されている認証情報と照合してユーザ認証(個人認証)を行う機能とを果たす。またジョブの実行履歴を管理するために、実行した個々のジョブについて、ジョブの内容、実行日時、そのジョブに係るユーザの識別情報などを関連付け、不揮発メモリ25に格納されているジョブ実行履歴テーブルに登録する機能を果たす。
【0054】
通常消費電力状態では、ジョブ完了後の無操作状態またはジョブ完了後のユーザの無認証状態が所定時間を経過すると電源制御部29を通じて複合機10を低消費電力状態へ移行させる機能を果たす。低消費電力状態では、上記のユーザ認証を行い、認証していないユーザなどにより操作表示部27が操作されると電源制御部29を通じて複合機10を通常消費電力状態へ復帰させる機能と、ユーザを認証した場合はその認証ユーザ(識別ユーザ)の印刷物が排紙トレイ17に有るか無いかに応じて低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を行う機能とを果たす。
【0055】
詳細には、上記の復帰制御では排紙トレイ17に認証ユーザの印刷物が有ると判断した場合は低消費電力状態を継続し、排紙トレイ17に認証ユーザの印刷物が無いと判断した場合は通常消費電力状態へ復帰させる制御を行う。印刷物の有無判断では、認証ユーザに対する接近の検知がその認証ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてである場合(1回目の場合)は排紙トレイ17に認証ユーザの印刷物が有ると判断し、認証ユーザに対する接近の検知がその認証ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてでない場合(2回目以降の場合)は排紙トレイ17に認証ユーザの印刷物が無いと判断するように動作する。なお、「最新の印刷物の排出後」とは、「印刷物の排出を行う最新のジョブ実行後」と同義である。
【0056】
図3は、上記の復帰制御において使用される条件テーブル40を示している。この条件テーブル40はROM23などに格納されている。
【0057】
図示のように、条件テーブル40は、認証ユーザに係るジョブの有無といった条件項目と(行方向に配列)、認証ユーザによる複合機10への接近(排紙トレイ17上における認証ユーザの印刷物の有無)に関する条件項目と(列方向に配列)、それらの条件項目における制御内容とを登録したマトリックステーブルで構成されている。
【0058】
認証ユーザに係るジョブは、認証ユーザ自身が実行したジョブ(クライアント端末11から指示したプリントジョブなど)と、認証ユーザ宛てに実行したジョブ(認証ユーザ宛てのファクシミリ受信ジョブなど)との2種類である。認証ユーザによる複合機10への接近は、認証ユーザに係るジョブ実行有りの場合のみ、その認証ユーザに係る最新のジョブ実行後1回目(初めての場合)と、2回目以降(初めてでない場合)とに分けている。
【0059】
制御内容は、通常消費電力状態へは復帰せずに低消費電力状態を継続することを示す情報(図中では「低消費電力状態を継続」と表記)と、低消費電力状態から通常消費電力状態へ復帰することを示す情報(図中では「通常消費電力状態へ復帰」と表記)との2種類である。
【0060】
ここでは、認証ユーザ自身が実行したジョブまたは認証ユーザ宛てに実行したジョブが有り、認証ユーザによる複合機10への接近がその認証ユーザに係る最新のジョブ実行後1回目の場合は、低消費電力状態を継続する。2回目以降の場合は、通常消費電力状態へ復帰する。複合機10へ接近した認証ユーザ自身が実行したジョブまたは複合機10へ接近した認証ユーザ宛てに実行したジョブが無い場合は、通常消費電力状態へ復帰する、といった制御内容の情報が条件テーブル40に登録されている。
【0061】
次に、複合機10の動作について説明する。
【0062】
図4および図5は、複合機10による低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御の処理の流れを示している。詳細には、図4は復帰制御のメイン処理の流れを示し、図5はそのメイン処理における復帰判定のサブ処理(サブルーチン)の流れを示している。
【0063】
複合機10では通常消費電力状態にてジョブ完了後の無操作状態またはジョブ完了後のユーザの無認証状態が所定時間を経過すると、CPU21は、電源制御部29を通じて複合機10を通常消費電力状態から低消費電力状態へ移行させる。この移行(状態遷移)を契機に本処理を開始し(Start)、ユーザの接近を監視する(ステップS101;No〜ステップS101のループ)。
【0064】
IDカード50を携帯していないユーザが複合機10に接近し、図1に示す交信範囲Sa(認証範囲Sb)に入った場合には、そのユーザからユーザIDを取得できないためユーザ認証は行わず、低消費電力状態のまま次のユーザの接近監視を継続する。
【0065】
IDカード50を携帯したユーザが複合機10に接近し、交信範囲Sa(認証範囲Sb)に入った場合には、認証情報読取部28はIDカード50内のICタグ51と交信して記憶されているユーザID(認証情報/識別情報)を非接触で読み取る。CPU21は、認証情報読取部28がユーザIDを読み取ることでユーザの接近を検知すると共に(ステップS101;Yes)、読み取ったユーザIDを不揮発メモリ25に記憶されている認証情報と照合してユーザ認証を行う(ステップS102)。
【0066】
認証不可の場合は(ステップS103;No)、ステップS101へ戻り、低消費電力状態のまま次のユーザの接近監視を継続する。認証許可の場合は(ステップS103;Yes)、CPU21は排紙トレイ17に印刷物が有るか無いかを紙検知センサからの検知信号に基づいて判断する(ステップS104)。
【0067】
排紙トレイ17に印刷物が有る場合には(ステップS104;Yes)、CPU21は、通常消費電力状態への復帰判定をサブルーチンで行う(ステップS105/詳細は図5参照)。
【0068】
このサブルーチンによる判定結果が通常消費電力状態への復帰ではなく低消費電力状態の継続である場合には(ステップS104;No(図5のステップS116参照)、ステップS101へ戻り、低消費電力状態のまま次のユーザの接近監視を継続する。判定結果が通常消費電力状態への復帰である場合には(ステップS104;Yes(図5のステップS117参照)、複合機10を通常消費電力状態へ復帰させ(ステップS107)、本処理を終了する(End)。
【0069】
また、排紙トレイ17に印刷物が無い場合には(ステップS104;No)、CPU21は、複合機10を通常消費電力状態へ復帰させ(ステップS107)、本処理を終了する(End)。
【0070】
なお、図4に示すフローチャートでは、ユーザを認証した場合の復帰動作を主として示しており、認証していないユーザやIDカード50を携帯していないユーザなどが操作表示部27を操作した場合の復帰動作については割愛している。この操作表示部27に対する操作を契機とした復帰動作を図4のフローチャートに加える場合は、たとえば、ユーザの接近監視のほかに(ステップS101)、操作表示部27に対する操作の監視も行い、操作を受けた場合にステップS107へ移行し、複合機10を通常消費電力状態へ復帰させるなどの流れとすればよい。
【0071】
図5に示すように、通常消費電力状態への復帰判定では、CPU21は、不揮発メモリ25に格納されているジョブ実行履歴テーブルから過去に実行したジョブの情報、詳細には、ジョブの内容、実行日時、そのジョブに係るユーザの識別情報などを取り出し(ステップS111)、ユーザの識別情報に基づいて、認証ユーザに対応するジョブの実行履歴を抽出し解析する(ステップS112)。そして認証ユーザに対応するジョブ(完了ジョブ)、詳細には、認証ユーザ自身が実行したプリントジョブや認証ユーザ宛てに実行したファクシミリ受信ジョブなどの有無を確認し(ステップS113)、ROM23に格納されている図3に示した条件テーブル40を参照して通常消費電力状態への復帰判定(復帰制御)を行う。
【0072】
ここで、認証ユーザに対応するジョブが無い場合には(ステップS113;No)、CPU21は、条件テーブル40に基づいて排紙トレイ17上に認証ユーザの印刷物が無いと判断し、通常消費電力状態へ復帰させる判定を下して(ステップS117/判定結果=復帰)、メイン処理に戻る(Return)。
【0073】
認証ユーザに対応するジョブが有る場合には(ステップS113;Yes)、CPU21は、その認証ユーザにおける最新のジョブ実行後(最新の印刷物排出後)のその認証ユーザの複合機10への接近回数を確認する(ステップS114)。ここでの接近回数は、認証ユーザにおける最新のジョブ実行後にその認証ユーザの接近を検知した回数であり、認証ユーザにおける最新のジョブ実行後にその認証ユーザを認証した回数でもある。
【0074】
接近回数のカウントについては、ユーザ毎にカウンタを設けるなどして行うことができる。たとえば、不揮発メモリ25にユーザ毎の接近回数を記憶する記憶領域を設けてカウンタを構成し、初期値として「0」を記憶する。このカウンタをユーザの特定されたジョブ(ユーザ自身が実行した最新のジョブまたはユーザ宛てに実行した最新のジョブ)の実行後にそのユーザが複合機10に接近したことを検知する度に(そのユーザを認証する度に)、1加算して更新すると共に、更新後の値がそのユーザの今回の接近回数であると把握する。また、当該ユーザに係る新たなジョブが実行された場合には、当該ユーザのカウンタを初期値「0」に戻して当該ユーザが複合機10に接近したことを検知する度に同様のカウント更新と接近回数の把握を行う。
【0075】
このようなユーザ毎に設けたカウンタなどを用いることにより、認証ユーザにおける最新のジョブ実行後のその認証ユーザの複合機10への接近回数を把握することができる。
【0076】
接近回数が1回目である場合には(ステップS115;Yes)、CPU21は、条件テーブル40に基づいて排紙トレイ17上に認証ユーザの印刷物が有ると判断し、低消費電力状態を継続させる判定を下して(ステップS116/判定結果=継続)、メイン処理に戻る(Return)。
【0077】
接近回数が2回目以降である場合には(ステップS115;No)、CPU21は、条件テーブル40に基づいて排紙トレイ17上に認証ユーザの印刷物が無いと判断し、通常消費電力状態へ復帰させる判定を下して(ステップS117/判定結果=復帰)、メイン処理に戻る(Return)。
【0078】
このように、本実施の形態に係る複合機10は、プリンタ部35により、ユーザの特定されたジョブの画像データに対応する画像を用紙に形成し、その印刷物を排紙トレイ17に排出する。また、通常消費電力状態から低消費電力状態へ移行しているときに、IDカード50を携帯するユーザUが複合機10に接近して所定の交信範囲Sa(認証範囲Sb)内にIDカード50が入ると、IDカード50内のICタグ51からユーザIDを読み取ることでユーザの接近を検知すると共に、読み取ったユーザIDを用いてユーザの識別および認証を行う。
【0079】
認証許可の場合は、そのユーザの印刷物が排紙トレイ17に有るか無いかに応じて、低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を行う。
【0080】
詳細には、低消費電力状態中のユーザに対する接近の検知(識別/認証)がそのユーザに係る最新のジョブ実行後(最新の印刷物の排出後)初めてである場合は、そのユーザの印刷物が未だ取得されておらず排紙トレイ17に有ると判断し、ユーザがその印刷物を取得するために接近したものと認識して低消費電力状態を継続する。これにより、無駄な復帰動作が防止される。
【0081】
低消費電力状態中のユーザに対する接近の検知がそのユーザに係る最新のジョブ実行後初めてでない場合は、そのユーザの印刷物が既に取得されていて排紙トレイ17に無いと判断し、ユーザが複合機10を使用するために接近したものと認識して通常消費電力状態へ復帰させる。これにより、復帰動作開始の応答性悪化が防止される。
【0082】
また、認証したユーザの印刷物が排紙トレイ17に有るか無いかの判断は、上記のように、ユーザに対する接近の検知がそのユーザに係る最新のジョブ実行後(最新の印刷物の排出後)初めてであるかないかを確認するだけで可能であり、印刷物をユーザに対応付けて追跡したりするための構成などを設ける必要がないため、簡単な構成により行うことができる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0084】
たとえば、実施の形態ではユーザがクライアント端末11から指示したプリントジョブやユーザ宛てのファクシミリ受信ジョブを例に説明したが、これらのほかに、ユーザが操作表示部27を通して指示したコピージョブなどを対象にしてもよい。
【0085】
印刷枚数(部数も含む)の多いコピージョブなどは開始から完了までに時間が掛かるため、ユーザは複合機10でコピーの開始操作を行った後に、他の作業などを行うために一旦、複合機10から離れ、しばらくしてから印刷物を取得するために複合機10に戻るようなことがある。そこで、複合機10が上記コピージョブの印刷物を排出完了し(ジョブ完了)、通常消費電力状態から低消費電力状態へ移行した後にユーザが戻ってきて接近を検知(識別/認証)したような場合に、上述したような低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を行うようにしてもよい。
【0086】
また実施の形態では、ユーザに対する接近の検知がそのユーザに係る最新のジョブ実行後(最新の印刷物排出後)初めてであるかないか(1回目であるかないか)の判断を(図5のステップS114)、ユーザ毎に設けたカウンタなどを用いてカウントすることにより行っているが、カウントせずにフラグのオン/オフや最新のジョブ情報の記憶/消去などで行うようにしてもよい。
【0087】
フラグを用いる場合は、たとえば、ユーザの接近検知がそのユーザに係る最新のジョブ実行後初めてであるかないかを示すフラグをユーザ毎に設けて初期値はオフとし、ユーザの特定されたジョブを実行完了したときにそのユーザに対応するフラグをオンにセットする。また、このジョブの実行後に対応するユーザの接近を検知したときは、そのユーザに対応するフラグをオフにセットする。これにより、ユーザの接近を検知したときにそのユーザに対応するフラグを確認し、フラグがオンであればそのユーザの複合機10への接近がそのユーザにおける最新のジョブ実行後初めてであると把握でき、フラグがオフであればそのユーザの複合機10への接近がそのユーザにおける最新のジョブ実行後初めてでないと把握できる。
【0088】
また、このようなフラグのオン/オフを最新のジョブ情報の記憶/消去に置き換えて行うこともできる。たとえば、ユーザ毎に最新のジョブ情報を記憶するためのジョブ情報記憶領域を設け、ユーザの特定されたジョブを実行完了したときにそのユーザに対応するジョブ情報記憶領域に最新のジョブ情報を記憶する。また、このジョブの実行後に対応するユーザの接近を検知したときは、そのユーザに対応するジョブ情報記憶領域に記憶されているジョブ情報を消去する。これにより、ユーザの接近を検知したときにそのユーザに対応するジョブ情報記憶領域を確認し、ジョブ情報が記憶されていればそのユーザの複合機10への接近がそのユーザにおける最新のジョブ実行後初めてであると把握でき、ジョブ情報が記憶されていなければそのユーザの複合機10への接近がそのユーザにおける最新のジョブ実行後初めてでないと把握できる。
【0089】
また、ユーザの認証履歴を保存している場合は、最新のジョブの実行日時以降におけるユーザの認証履歴を調べることでユーザの接近が初めてであるかないかを判断することも可能である。
【0090】
また実施の形態では、複合機10がユーザの自動認証機能を備えており、複合機10のCPU21がユーザ認証を行うようにしているが、ユーザ認証は、複合機10とネットワーク2で接続された認証サーバなどが行うようにしてもよい(サーバ認証)。
【0091】
この場合は、複合機10は認証情報読取部28で読み取った認証情報(ユーザID)をネットワーク通信部31からネットワーク2を通じて認証サーバに送信しユーザ認証を依頼する。認証サーバは、複合機10から受信した認証情報と予め登録されている認証情報を照合してユーザ認証を行い、その結果(認証許可/認証不可)をネットワーク2を通じて依頼元の複合機10に返信する。複合機10は、認証サーバからネットワーク2を通じてネットワーク通信部31で受信したユーザ認証の結果が認証許可である場合に、実施の形態で説明した動作、すなわち、低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を行うような構成とすればよい。
【0092】
また、実施の形態に係る複合機10は接近したユーザから認証情報(ユーザID)を取得することでユーザの接近検知、識別、および認証を行うように構成されているが、ユーザ認証を行わない構成であってもかまわない。実施の形態で説明したようなIDカードを利用する場合も含め、複合機10が接近するユーザからそのユーザを識別するための識別情報を取得できる構成であれば本発明に係る低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を実現できる。
【0093】
識別情報の取得については、識別情報(ユーザID)の記憶と無線送信が可能なICタグを組み込んでいるIDカードを使用して行うようにしているが、このようなカード類のほかに、ICタグを組み込んだ携帯電話機などの携帯端末を使用して行うようにしてもよい。またICタグに限らず、同様の機能を備えた他の汎用の非接触型素子を用いるようにしてもよい。さらには、非接触型素子などからユーザの識別情報を非接触で読み取って取得する他に、ユーザの生体情報などを識別情報として非接触で取得するようにしてもよい。たとえば、ユーザを撮影して取得した顔画像に基づきユーザを識別する技術(顔認証技術)などが利用可能である。この場合は、ユーザを撮影するカメラなどの撮影手段が、接近するユーザからそのユーザを識別するための識別情報としての顔画像を取得する取得部となる。
【0094】
また、ユーザの接近を検知したときに、ユーザの識別は行わずに低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を行う構成としてもよい。すなわち、排出部(排紙トレイ17)における印刷物の有無と検出部によるユーザの接近を検知とに基づいて低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御を行う構成としてもよい。
【0095】
たとえば、排紙トレイ17における印刷物の有無にかかわらず、ユーザの接近を検知しない場合は、複合機10がユーザに使用されることはないため、低消費電力状態を継続する。排紙トレイ17に印刷物が有るときにユーザの接近を検知した場合は、ユーザが印刷物を取得するために接近した可能性が高いため、低消費電力状態を継続する。排紙トレイ17に印刷物が無いときにユーザの接近を検知した場合は、ユーザが複合機10を使用するために接近した可能性が高いため、通常消費電力状態へ復帰させるなどの制御を行う構成としてもよい。
【0096】
またこの場合の検知部には、検知エリア内の熱(人体から放射される遠赤外線)の動きを検知して人の接近を検知するような汎用の人検知センサなどを用いることができる。
【0097】
また、実施の形態に係る複合機10ではタッチパネル式の操作表示部27が操作部と表示部の機能を兼ね備えているが、この操作部と表示部とは個別に構成するようにしてもよい。複合機10におけるプリンタ部35は、レーザ光に代えてLED(Light Emitting Diode)で感光体ドラムを走査露光するLEDプリンタなどの他の方式のプリンタとしてもよい。
【0098】
また本発明は、実施の形態で説明した複合機に限らず、複写機、プリンタ機、ファクシミリ機などの他の画像形成装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成システムのシステム構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置としての複合機の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る複合機による低消費電力状態から通常消費電力状態への復帰制御において使用される条件テーブルの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る復帰制御のメイン処理を示す流れ図である。
【図5】図4の復帰制御のメイン処理における通常消費電力状態への復帰判定のサブルーチンを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0100】
2…ネットワーク
5…画像形成システム
10…複合機(MFP)
11…クライアント端末(PC)
15…自動原稿送り装置
16…給紙トレイ
17…排紙トレイ
21…CPU
22…バス
23…ROM
24…RAM
25…不揮発メモリ
26…ハードディスク装置(HDD)
27…操作表示部
28…認証情報読取部(ICタグリーダ)
29…電源制御部
30…ファクシミリ通信部
31…ネットワーク通信部
32…原稿送り装置制御部
33…スキャナ部
34…画像処理部
35…プリンタ部
40…条件テーブル
50…IDカード
51…ICタグ
R…交信可能距離
Sa…交信範囲
Sb…認証範囲
U…ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの特定されたジョブの画像データに対応する画像を用紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により前記画像が形成された用紙である印刷物が排出される排出部と、
接近するユーザからそのユーザを識別するための識別情報を取得する取得部と、
通常動作を実行可能な通常消費電力状態から消費電力を抑えた低消費電力状態へ移行しているときに、前記取得部が前記識別情報を取得することでユーザの接近を検知し、その識別情報に対応するユーザである識別ユーザの印刷物が前記排出部に有るか無いかに応じて前記低消費電力状態から前記通常消費電力状態への復帰制御を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記識別ユーザの印刷物が前記排出部に有ると判断した場合は前記低消費電力状態から前記通常消費電力状態へ復帰させない制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記識別ユーザの印刷物が前記排出部に無いと判断した場合は前記低消費電力状態から前記通常消費電力状態へ復帰させる制御を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記識別ユーザに対する接近の検知がその識別ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてである場合に、前記識別ユーザの印刷物が前記排出部に有ると判断し、前記識別ユーザに対する接近の検知がその識別ユーザに係る最新の印刷物の排出後初めてでない場合に、前記識別ユーザの印刷物が前記排出部に無いと判断する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記識別情報が記憶されてユーザに携帯された携帯装置と当該画像形成装置を含む所定の交信範囲内で交信することにより前記携帯装置から前記識別情報を取得する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ユーザの特定されたジョブは、前記ユーザの識別情報が付加されたプリントジョブと、宛先が前記ユーザに指定されたファクシミリジョブと、前記ユーザからの前記識別情報の取得後に操作部を通して指示されたコピージョブとの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像データに対応する画像を用紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により前記画像が形成された用紙である印刷物が排出される排出部と、
ユーザの接近を検知する検知部と、
通常動作を実行可能な通常消費電力状態から消費電力を抑えた低消費電力状態へ移行しているときに、前記排出部における前記印刷物の有無と前記検知部による前記ユーザの接近の検知とに基づいて前記低消費電力状態から前記通常消費電力状態への復帰制御を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−23467(P2010−23467A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191231(P2008−191231)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】