説明

画像形成装置

【課題】記録媒体の状態測定のために装置を複雑化することなく、高湿状態においても転写抜けを起こすことなく、記録媒体のジャムを起こしたりすることのない電子写真複写装置を提供することにある。
【解決手段】画像形成装置は、記録媒体収容手段40に収容された記録媒体Pを、最上層から順に送り出す記録媒体送出手段42と、前記記録媒体収容手段中での前記記録媒体の放置時間を計測する計測手段46と、前記記録媒体Pの種類、材質を設定する設定手段49と、を備え、転写装置が、転写電圧を供給する転写電源を有し、前記転写装置は、前記設定された記録媒体と前記計測された放置時間とに基づいて、前記転写電源から供給される転写電流を定電流制御し、最適の転写性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙バンクと言われる大量給紙装置から大量又は多種類の記録媒体を供給する複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真方式を用いた画像形成装置は、光導電性感光体を帯電、露光し、感光体上に静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像を、着色剤等を含有した微粒子状トナーによって現像し、得られたトナー像を記録媒体上に転写、定着して記録画像が得られる。
トナーを現像する方法としては、高速、高画質現像が可能なトナーと磁性キャリアよりなる2成分現像剤を用いる磁気ブラシ現像法がよく用いられている。近年、高画質化の要求から微細になった静電潜像を現像する目的で、トナーとキャリアの粒子径も小さくなり、体積平均粒径が10μm以下の微粒子トナーと重量平均粒径が100μm以下の微粒子キャリアの適用が進められている。
カラー画像が求められる画像形成装置では、現像装置内に充填された通常、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーによって、感光体上に形成される可視像を、中間転写体に順次重ねて転写して、その重ねられた可視像を、転写装置によって記録媒体に一括転写することにより、記録媒体上にトナー像を形成、その後当該トナー像を、定着装置によって定着するようにしている。
【0003】
トナー像を定着する方法としては、熱効率が高く高速定着が可能な熱ローラ定着法がよく用いられている。熱ローラ定着法は、内部に熱源を有し、トナーを溶融するに十分な温度に加熱された金属からなる加熱ローラにトナー像を直接接触させ、同時に加圧ローラで圧力を加えてこの両ローラ間に記録媒体を通過させることにより定着を行なう方法である。
このような電子写真方式を用いた画像形成装置においては、普通紙、上質紙等からなる記録媒体として、所定の寸法にカットされたシート、所謂、カットシートが通常用いられる。画像形成装置の一部に記録媒体であるシートを装填し、1シート毎に画像形成部まで送出する、所謂、給紙部が設置されている。
近年、画像形成装置では、要求に応じて印刷する方法であるPOD(Print On Demand)市場の拡大により、給紙部が画像形成部と別体となり、給紙装置が独立して設置されるケースが増大しており、前記給紙装置は、記録媒体を数千枚オーダーで大量給紙できることが特徴である。前記給紙装置においては、大量給紙された記録媒体がほぼ全数、すなわち、装填された量がほぼ使い切られるケースが多い。
【0004】
一般的に、塗工紙やプラスチックフィルムで包装された記録媒体の束を包装体から取り出し、給紙装置にこの記録媒体の束を装填し、これを1枚ずつ画像形成部に給紙コロ又はエアを用いた手段によって送出することにより、画像形成部の転写部、定着部等まで記録媒体が運ばれることによって画像形成が行われてきた。
従来、記録媒体としては、普通紙や上質紙が用いられ、重なり合う記録媒体間の密着力が低く、透気度が小さいことから、給紙部に記録媒体を束で装填した際、記録媒体束が給紙部の設置環境に馴染み易く、画像形成時は設置環境に合った普通紙や上質紙に対する画像形成条件によって高画質を確保することができていた。
しかしながら、近年では、表面平滑度の高いものも含めて多種の記録媒体の搬送が要求されるようになってきており、とくに、カラー化技術の進展に伴い白色度を上昇させ、光沢を出した塗工紙(シートの両面又は片面を印刷適性の改良を目的としたコート層を塗工した記録媒体)が使用されるようになっている。
【0005】
このような画像形成装置では、用紙としての記録媒体の抵抗値がトナー像を静電転写する際に大きな影響を及ぼす。すなわち、記録媒体の抵抗値が許容される範囲よりも高すぎると、静電転写時に放電等が生じることによって画質欠陥を招いてしまう。記録媒体の抵抗値には、この記録媒体の含水率が大きな影響を及ぼすことが知られている。
そこで、転写装置に向けて記録媒体を供給する給紙装置内に、記録媒体の含水率を低減させる(記録媒体の抵抗値を高くする)ためのヒータ及び記録媒体の含水率を増加させる(記録媒体の抵抗値を低くする)ための加湿器を取り付け、記録媒体を所望とする含水率(抵抗値)に設定することが可能な画像形成装置が提案されている(特許文献1乃至3参照)。
しかしながら、上記従来技術の装置は、消費電力、また、装置コストから見ると大きな問題となる。また、これらの塗工紙は重なり合う記録媒体間の密着力が強いことが知られている。塗工紙は上質になるほど塗工量が増して白色光沢度が上昇するとともに、紙表面の凹凸が減って平滑度が高くなる。
表面の平滑度が高くなると、重ねた時の紙同士の間隔に空気を通しにくい状態となり、接した紙同士を引き剥がそうとすると負圧が維持され、記録媒体(用紙)は強く密着し引き剥がし難くなる。このような給送時における記録媒体に対する密着を解消する方法として、特許文献2では、積載された記録媒体の側面からエアを吹き付ける技術が提案されている。
【0006】
このような記録媒体間の密着が強い記録媒体は、当然、記録媒体同士の吸着力のみならず記録媒体が接触する部材との密着も同様の原理から非常に強くなっている。一方、記録媒体の密着については、記録媒体が含む水分の量、すなわち含水量の影響が大きく、記録媒体の含水量が多くなると密着度が高くなるので接触相手の部材から引き剥がし難いことが知られている。従って、常温環境時に設定された条件では、像担時体からの分離性能を確保することが困難になっている。
また、湿度を測定して分離電流にフィードバックするものもあるが、湿度を測定した後、一律的にこの湿度ならこの分離電流といった具合に定められていて、記録媒体のスタック位置に関して注意が払われておらず、連続20枚以上高湿で通紙すると電流過多で前述のように画質上転写はじきという問題の現象を起こしてしまう。
ところで従来技術においては、記録媒体の吸湿に対し、紙詰まりや重送を防止するという観点での対策がとられていたが、給紙された印刷用紙である記録媒体に画像欠陥、また分離不良に対しての配慮が不足しており、吸湿し、含水率が増加した記録媒体に対して、固有の画像形成条件を設定しておらず、記録媒体のコンディションによっては、画像抜け又はジャムという重大障害を引き起こすことがあった。
また、特許文献3に開示されている記録媒体の抵抗値を検出する構成によれば、画像形成装置を設置した環境温湿度に影響されることなく、或る程度まで良好に転写プロセスを実行できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3の技術では、給紙カセットから転写装置に至る給紙系の装置構成が複雑となり、給紙タイミングと電圧印加のタイミングとを同期するための制御が複雑になる。また、転写紙上に残存する電荷により転写不良・分離不良の原因になる場合があった。
さらに、記録媒体(転写紙)の抵抗値を1枚ずつ測定することは機構が大がかりになり、その上、記録媒体のジャムが発生して好ましくない。また、同様に含水率を1枚ずつ測定することも作業が煩雑で好ましくない。また、画像形成装置内での記録媒体の分離不良によるジャムは、一度発生すると頻発する傾向にあり、これの対策が重要となっていた。
本発明者は画像形成装置の記録媒体収納手段に収納される記録媒体における記録媒体収納手段内部の雰囲気の相対湿度に着目して検討を重ねた結果、収納される記録媒体の含水量と記録媒体収納手段内部の相対湿度とは密接な関わりがあることを見出した。また、記録収納手段内部の環境に放置した時間によって積層された最上部から順に湿度の影響を受け、それが時間の経過とともに変化し、さらにその変化は非常に短時間で生じることを見出した。
【0008】
そして、記録媒体収納手段内部の記録媒体の放置時間が所定の範囲にない場合には給紙を禁止することにより、含水状態が不安定なままの記録媒体を給送する時に発生する紙詰まりや画像欠陥を防止できることを見出した。
なお、記録媒体の表面抵抗と記録媒体の含水率との関係は、記録媒体の表面加工の方法によって変動するものであるから記録媒体の表面加工の方法、つまり記録媒体の種類に関する情報も重要になっている。従って、記録媒体の種類の情報を反映させておくことが重要であることも解かった。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、記録媒体の状態測定のために装置を複雑化することなく、高湿状態においても転写抜けを起こすことなく、記録媒体のジャムを起こしたりすることのない電子写真複写装置を提供することにある。
また、記録媒体に画像を形成する際に、吸湿による画質欠陥の発生を抑制し、記録媒体を像担持体から分離する際、吸湿による像担持体からの分離不良の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電子写真方式を用いて像担持体上にトナー画像を形成し、前記記録媒体にトナーを転写させてから該記録媒体を前記像担持体から分離させる画像形成装置において、前記記録媒体を積層して収容する記録媒体収容手段と、該記録媒体収容手段に収容された前記記録媒体を、最上層から順に送り出す記録媒体送出手段と、前記記録媒体収容手段中での前記記録媒体の放置時間を計測する計測手段と、前記記録媒体の種類、材質を設定する設定手段と、を備え、前記像担持体上の画像を前記記録媒体に転写する転写装置が、転写電圧を供給する転写電源を有し、前記転写装置は、前記設定手段により設定された記録媒体と前記計測手段により計測された放置時間とに基づいて、前記転写電源から供給される転写電流を定電流制御し、最適の転写性を確保する画像形成装置を特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記記録媒体収容手段への前記記録媒体の前記放置時間に基づいて、前記転写装置での前記記録媒体の転写条件を変更する請求項1に記載の画像形成装置を特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記記録媒体を前記像担持体から分離させる除電・分離装置は、前記像担持体から前記記録媒体を分離するための分離電圧を供給する除電・分離電源を有し、前記除電・分離装置は、前記設定された記録媒体と前記計測された放置時間とに基づいて、前記除電・分離電源から供給される除電・分離電圧を定電圧制御し、最適の分離性を確保する請求項1又は2に記載の画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像形成装置本体が設置された場所の湿度の計測手段と、所定の場所にセットされた記録媒体の大量給紙装置に放置されて経過した放置時間の計測手段と、これらの計測手段の計測結果に基づいて、記録媒体の送出の可否を判断する制御手段とを具備したため、記録媒体の状態を予測でき、画像の安定化を図ることができる。また、記録媒体を乾燥する必要が無く、記録媒体乾燥ヒータ等を使用することなく、電力のムダを省けるとともに、記録媒体の走行性や像担持体の温度上昇を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による画像形成装置の実施の形態の構成を示す概略図である。
【図2】本発明による画像形成装置における制御回路を示す概略ブロック図である。
【図3】大量給紙装置内での記録媒体の放置時間と含水率との関係をグラフで示す図である。
【図4】大量給紙装置内での記録媒体の放置時間と記録媒体の変形度との関係をグラフで示す図である。
【図5】塗工紙の大量給紙装置内での放置時間とその時の画像欠損の有無、ジャムの有無のデータを表で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明による画像形成装置の実施の形態の構成を示す概略図である。図1の画像形成装置100において、中央部にはドラム状の像担持体として感光体ドラム1が配置されており、図1中矢印A方向へ回転するようになっている。
感光体ドラム1の周囲には帯電装置2、露光装置8、現像装置3、転写装置5、除電・分離装置6が配置されている。帯電装置2により感光体ドラム1の表面を一様に帯電させた後、露光装置8より画像信号に従って照射されたレーザ光により感光体ドラム1のその表面に静電潜像を形成する。現像装置3によって、トナーが静電潜像上に現像され、可視化像を形成する。
記録媒体を積層して収容する記録媒体収容手段である大量給紙装置40は、その側壁、例えば図面左側の側壁上部に湿度センサ41を備えている。大量給紙装置40の給紙方向の湿度センサ41に対向する側壁近傍に設けた給紙ローラ42から大量給紙装置40外部の所定の距離に給紙センサ43を設け、これらにより記録媒体Pの通過を検知して積載順序を検知する構成になっている。
【0013】
その後、レジストローラ対44は、感光体ドラム1上のトナー像と記録媒体Pの位置合わせを行う適切なタイミングでレジストローラ対44間のニップに記録媒体Pを搬送するようになっている。
感光体ドラム1の表面に形成されたトナー像は、図示してない搬送ガイドを介して図1中矢印B方向に搬送されてきた記録媒体Pに転写装置5によって転写される。転写装置5は、感光体ドラム(OPC)1上に静電的に担持したトナー像に記録媒体Pを重ね、この記録媒体Pの裏側から電荷を注入することにより、記録媒体P上にトナーを転写するものである。
転写装置5は、コロトロンであることが望ましいが、これに限定されるものではなく、転写ローラ等、静電的に転写するものであれば何でも良い。除電・分離装置6は、感光体ドラム1に静電的に吸着した記録媒体Pを除電することにより感光体ドラム1から記録媒体Pを分離するものである。この除電・分離装置6は、コロトロンや除電針等何でも良い。その後、定着装置7で記録媒体Pの表面に固着され、画像形成が終了する。
【0014】
一般的に連続的に画像形成動作を実施する場合、大量給紙装置40には、包装紙でパッキングされた記録媒体P、ここでは用紙である記録媒体を束の状態で積み重ねていくことになる。大量給紙装置40の図示してない扉を開いて、パックから取り出した記録媒体を大量給紙装置40内部に積み重ねた(P1〜Pn)後、前記扉を閉じる。
積み重ねられた記録媒体(P1〜Pn)は、クライアントコンピュータ等の上位機器から制御手段(CPU)20へ指示される画像形成指示を待ち、最上部の記録媒体P1から順に送出されるタイミングを待っている。送出されるまで、記録媒体(P1〜Pn)は大量給紙装置40内に保持されて待機することになる。
大量給紙装置40の内部は、通常、大量給紙装置40が設置されている環境にそのままさらされている。積載された記録媒体(P1〜Pn)が高湿度環境下に長時間放置された場合、周りの雰囲気と直接接触する積載の上層部の含水率が高くなる。
なお、図中符号9は現像装置3へトナーを補給するトナー補給ホッパ、31は感光体ドラム1の表面にトナー像を形成するためにトナーを供給する現像ローラ、32は現像ローラ31にトナーを供給する供給搬送ローラ、45は記録媒体Pの情報を制御手段20に入力する記録媒体情報入力手段である。
【0015】
図2は本発明による画像形成装置における制御回路を示す概略ブロック図である。図2において、本体制御装置30には、画像形成部を構成する感光体ドラム1、転写装置5、除電・分離装置6、大量給紙装置40、記録媒体送出手段である給紙ローラ42等が接続され、また、クライアントコンピュータ等の上位機器、すなわち、本体制御装置30からの画像形成指示を待つ制御手段(CPU)20が接続されている。
制御手段20には、記録媒体情報入力手段45、記録媒体収容手段40又は画像形成部に装填されかつ放置されて経過した記録媒体の放置時間を計測する放置時間計測手段46、転写電源47、除電・分離電源48、記録媒体の種類、材質を設定する記録媒体設定手段49等が接続されている。
【0016】
図1及び図2を参照して説明すると、上述したように、画像形成装置100の記録媒体収納手段である大量給紙装置40に収納される記録媒体Pの含水量と大量給紙装置40内部の相対湿度とは密接な関わりがあるので、湿度センサ41によって湿度を測定する。
大量給紙装置40内部の環境に放置した時間によって記録媒体Pは積層された最上部から順に湿度の影響を受け、それが時間の経過とともに変化し、さらにその変化は非常に短時間で生じるので、放置時間計測手段であるクロックカウンタ46によって大量給紙装置40又は画像形成部に記録媒体Pを放置した経過時間を計測する。
画像形成指示により大量給紙装置40から送り出される記録媒体Pは、最上層から順に送り出す記録媒体送出手段42を通ってレジストローラ対44で次のプロセスへ送出されるタイミングを待っている。
画像形成にタイミングを合わせた記録媒体Pは、レジストローラ対44を通過して、電子写真方式を用いてトナー画像を形成された感光体ドラム1と転写装置5との間に感光体ドラム1上の画像を記録媒体Pに転写するために感光体ドラム1と転写装置5との間のニップに送られる。
【0017】
制御手段20には、感光体ドラム1上の画像を記録媒体Pに転写するための転写電圧を供給する転写装置5の転写電源47が接続され、この転写電源47から供給される転写電流を定電流制御する。なお、ここでは、図1に記載の転写構成が定電流制御のため、転写電源47を転写電流−定電流制御としているが、別の構成、例えば、転写ローラで定電圧制御でも効果は同じになる。
また、制御手段20には、感光体ドラム1から記録媒体Pを分離するために除電・分離装置6の分離電圧を供給する分離電源48が接続され、この分離電源48から供給される分離電圧を定電圧制御する。
記録媒体Pの表面抵抗と記録媒体の含水率との関係は、記録媒体Pの表面加工の方法によって変動するものであるから記録媒体Pの表面加工の方法、つまり記録媒体Pの種類に関する情報も重要になってくる。
【0018】
そのため、記録媒体情報入力手段45が制御手段20に接続され、記録媒体Pの種類、材質を設定するために制御手段20に接続された記録媒体設定手段49が本体制御装置30を介して制御手段20に接続された記録媒体情報入力手段45からの情報により記録媒体Pの種類、材質を設定する。
従って、設定された記録媒体Pの種類、材質に対して大量給紙装置40に記録媒体Pを装填してからの放置時間計測手段であるクロックカウンタ46によって測定された経過時間に基づいて、最適の転写性を確保するために転写装置5を制御し、また、最適の分離性を確保するために除電・分離装置6を制御する。
このように、記録媒体転写条件、分離条件を設定する制御手段20を設けているため、狙われた湿度範囲で給紙バンクである大量給紙装置40に所定の記録媒体Pが装填された時点から、前記放置時間情報が所定の範囲に達するまで画像形成装置の転写条件、分離条件をシート毎に設定可能となるので、記録媒体Pの状態を予測でき、画像の安定化を図ることができる。また、記録媒体Pを乾燥する必要が無く、記録媒体乾燥ヒータ等使用することなく、電力のムダを省けるとともに、記録媒体Pの走行性や感光体ドラム1の温度上昇を最小限に抑えることができる。
【0019】
図3は大量給紙装置内での記録媒体の放置時間と含水率との関係をグラフで示す図である。図3には、高湿環境下に放置した或る記録媒体の含水率の時間経過による推移を示しており、縦軸は含水率(%)、横軸は給紙装置である大量給紙装置40に記録媒体(P1〜Pn)を装填してからの時間(分)である。また、P1、P2、P3…Pnは、大量給紙装置40に積層された記録媒体Pの上部からシート毎にP1、P2、P3…Pnと示している。グラフから夫々の記録媒体Pは、一定の含水率に収束する。
大量給紙装置40内で保持された記録媒体Pはこの記録媒体Pの塊の周囲から大量給紙装置40内の環境の影響を受けることになっていた。例えば、27°C/80%の環境に装置が放置されていた場合、給紙バンクである大量給紙装置40内の記録媒体Pの塊は、その周囲から吸湿し始め、多くの場合、記録媒体Pの塊の底面及び側面は大量給紙装置40の構成部品ならびに側板等で囲まれていることもあり、記録媒体Pの塊の内、最上部の記録媒体P1から吸湿の影響が顕著に現れることとなっていることが分かった。
【0020】
図4は大量給紙装置内での記録媒体の放置時間と記録媒体の変形度との関係をグラフで示す図である。図4には、次に、図3に或る塗工紙(塗工紙A)に関しての27℃/80%環境下で3000枚が給紙バンクである大量給紙装置40内に放置された記録媒体束の最上部の記録媒体P1の時間経過による変形度合いを示している。
ここで言う記録媒体束の変形度は、記録媒体Pを100mmの長さで突き出した時の鉛直方向への変形量で、記録媒体Pの吸湿による膨張を見極めるための独自の指標である。これによると、大量給紙装置40に放置された記録媒体Pは放置時間とともに変形度が増し、10分経過後は安定領域に入っていることが分かった。なお、放置時間が5分に満たない場合は、変形度が3分付近で最大となり、時間経過とともに、変化量が大きいことが分かった。
これは、記録媒体Pの吸湿が記録媒体P表面で部分的に開始されるため、記録媒体Pの変形が局所的に進み、その結果、記録媒体P全体として変形が不安定な状態であり、変形度が大きく変化しているものであることが分かった。この現象は記録媒体の図3に示す含水率のデータと一見相関があるように見えるが、変化の形態が異なっている。少なくとも、図3に示す含水率は経過時間5分以内に最大値になることは無い。
【0021】
また、同様の評価を記録媒体束の最上部より2枚目P2以降の記録媒体についても実施した。3枚目P3より下層にある記録媒体は、殆ど吸湿の影響を受けず、ほぼ同一の特性を示す傾向となった。この結果から、塗工紙からなる記録媒体Pについては、最適な画像形成条件で画像を形成するためには、大量給紙装置40内での放置時間に応じ、送出される記録媒体の1枚目と2枚目と3枚目以降で画像形成条件を変更することが有効であることが分かった。
かかる画像形成条件の変更は、湿度センサ41の情報と、CPU20からの記録媒体Pの大量給紙装置40への装填からの放置時間、そして、記録媒体情報入力手段45の結果とをマッピングして記録媒体の1枚目、2枚目、3枚目以降の転写条件、分離条件を個別に設定することが有効である。
なお、発明者の評価において、他の塗工紙からなる記録媒体についても記載はしないが、図4で示した結果と同様の傾向があることが分かった。記録媒体Pの特性としては、常温環境(例えば、23℃/50%)で測定された記録媒体の透気度と相関が大きく、透気度が0〜5000秒、5000〜10000秒、10000〜15000秒、15000秒以上の条件で画像形成条件を切り換えると有効である結果となった。
【0022】
図5は塗工紙の大量給紙装置内での放置時間とその時の画像欠損の有無、ジャムの有無のデータを表として示す図である。図5の結果から、大量給紙装置40内での放置時間が5分以内では画像欠損ならびにジャムが発生する結果となることが解かった。
この結果は、前記放置時間が5分以下の領域で画像形成を実施した場合は、記録媒体Pの吸湿条件が不安定で、転写又は分離を実施すると、1枚の記録媒体の中で局所的に転写不良による画像欠損又は分離不良として発現し易いというメカニズムであった。とくに前記放置時間が2〜4分の間は不安定であった。
上記の検討結果より、大量給紙装置40内の記録媒体Pの放置時間を計測する計測手段46と大量給紙装置40内の記録媒体Pの放置環境を同時に計測することが画像欠損とジャムとの対策に有効であることが解かった。
そこで、本発明では大量給紙装置40の側板に湿度センサ41を配置して大量給紙装置40内の湿度を測定するとともに、CPU20のクロックカウンタである放置時間計測手段46のクロックカウントにより大量給紙装置40に記録媒体Pが装填されてからの放置時間を計測した。なお、この時間の計測は、別途カウンタやタイマを設置することでも良く、計測できれば手段は問わない。
【0023】
そこで、本発明では、前記時間が5分以下の場合、大量給紙装置40の中で積み重ねられた記録媒体Pは、クライアントコンピュータ等の上位からの画像形成指示後、最上部の記録媒体から順に送出される。この際、塗工紙条件、放置時間値、湿度センサ検出値から転写電流、分離電圧をマッピングしておき、最適条件に設定した。これにより、1枚の記録媒体の中で、含水率の差による転写装置5での画像抜け等の画像欠損が無くその後の分離も不良が無く達成されることが確認された。
なお、一般オフィスで用いられている複写機等においては、ファーストプリントタイムが重要視され、記録媒体装填から数分待つことは許容できないが、プロダクションプリンタの場合、印刷品質の安定性を確保する理由から、装置立ち上げ時や印刷開始前に色補正や印刷位置補正等の動作を入れることが多く、印刷開始までに数分経過することが有り、本発明の給紙装置への記録媒体装填から数分経過後に記録媒体の送出許可が出るケースも少なくない。
従って、本発明はプロダクションプリンタ等の画質の安定性が必要な装置に極めて有効である。なお、一般的にプロダクションプリンタとして使用されるプリンタはA4で毎分30頁以上のプリンタが使用されることが多い。また、転写条件、分離条件は記録媒体の種類、坪量等で異なるため、実験検証結果に基づき、紙種によって変更できるようにすることで、画像欠損を生じることが無い画像形成装置を提供することができる。
【0024】
なお、本発明は中間転写方式を用いた電子写真装置においても効果は同等であり、中間転写体方式で、2次転写部材に転写ローラ、記録媒体の分離に除電針を用いる構成でも同様の効果があることは言うまでも無い。
また、本実施の形態で、大量給紙装置での湿度検出のための湿度センサは給紙装置の側板に設置されていたが、大量給紙装置固有でセンサを配置しないでも、画像形成部のプロセス制御のために配置された湿度センサからの情報で判断しても装置が設置されている環境の検知には大きな差が無いため、同様の効果が得られることが確認できた。本発明は、印刷機等の給紙が必要な装置全般に活用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 像担持体(感光体ドラム)、5 転写装置、6 自伝・分離装置、20 制御手段(CPU)、30 本体制御装置、40 記録媒体収容手段(大量給紙装置)、41 湿度センサ、42 記録媒体送出手段(給紙ローラ)、43 給紙センサ、45 記録媒体情報入力手段、46 放置時間計測手段(クロックカウンタ)、47 転写電源、48 除電・分離電源、49 記録媒体設定手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平11−5643号公報
【特許文献2】特開平4−345447号公報
【特許文献3】特開昭53−57042号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式を用いて像担持体上にトナー画像を形成し、前記記録媒体にトナーを転写させてから該記録媒体を前記像担持体から分離させる画像形成装置において、
前記記録媒体を積層して収容する記録媒体収容手段と、該記録媒体収容手段に収容された前記記録媒体を、最上層から順に送り出す記録媒体送出手段と、前記記録媒体収容手段中での前記記録媒体の放置時間を計測する計測手段と、前記記録媒体の種類、材質を設定する設定手段と、を備え、前記像担持体上の画像を前記記録媒体に転写する転写装置が、転写電圧を供給する転写電源を有し、
前記転写装置は、前記設定手段により設定された記録媒体と前記計測手段により計測された放置時間とに基づいて、前記転写電源から供給される転写電流を定電流制御し、最適の転写性を確保することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体収容手段への前記記録媒体の前記放置時間に基づいて、前記転写装置での前記記録媒体の転写条件を変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体を前記像担持体から分離させる除電・分離装置は、前記像担持体から前記記録媒体を分離するための分離電圧を供給する除電・分離電源を有し、前記除電・分離装置は、前記設定された記録媒体と前記計測された放置時間とに基づいて、前記除電・分離電源から供給される除電・分離電圧を定電圧制御し、最適の分離性を確保することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249864(P2010−249864A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96029(P2009−96029)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】