説明

画像形成装置

【課題】画像補正動作に起因するデッドタイムと資材消費量の低減を図り、生産性、操作性を向上させた画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像補正手段、環境検知手段、実行状況記憶手段、制御手段を有し、制御手段は、画像補正動作中に中断要因が検知された場合には実行中の補正動作を中断させ、中断要因が解除され補正動作の再開が指示された場合には、実行状況記憶手段に記憶された中断時点での最新の環境パラメータと補正動作の再開が指示された時点での環境検知手段により検知された環境パラメータとを比較し、環境パラメータの変動量が許容範囲の場合は、実行状況記憶手段に記憶済みの実行ステップから補正データを引き継いで中断された実行ステップから画像補正を再開し、変動量が許容範囲外の場合は、中断された画像補正手段の実行ステップの最初から補正を再実行するように制御する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置に関する。詳しくは、画像形成装置における画像補正に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を形成するための画像形成装置としては種々の方式が知られているが、その一つとしてタンデム方式と呼ばれる方式がある。このタンデム方式の画像形成装置は、像担持体である感光体ドラムと、これに画像情報データを書き込む光走査装置と、感光体ドラムに形成された静電潜像を現像する現像器等を有する複数の画像形成装置と、各画像形成装置にて感光体ドラムに形成されたトナー像である画像を一つの記録材上に転写する転写ユニットを備えている。
【0003】
前記転写ユニットを備える画像形成装置としては、像担持体上に形成した画像を転写ユニットの無端ベルトからなる中間転写体に転写し、該中間転写体上の画像を記録材に転写するものが知られている。前記中間転写体を用いた画像形成装置は、像担持体上に形成した画像を中間転写体上に重ね合わせることができるので、カラー画像を記録材上に形成するカラー画像形成装置に広く応用されている。このカラー画像形成装置では、各像担持体に形成したイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色、或いはこれに黒(Bk)を加えた各色の画像を中間転写体に重ね合わせて転写した後、この重ね合わせた画像を、静電気力を利用して記録材に一括転写される。
【0004】
一般に、上記のような電子写真方式による画像形成装置では、一定の画像品質を確保するため、帯電、露光、現像、転写のそれぞれの出力値調整やカラー画像のレジスト補正などの画像の補正を所定の条件を満たした場合に実行するようにしている。この画像の補正動作は、一旦実行されるとそれが終了するまで他の動作(特に、画像形成動作)を実施することができず、その間はユーザ(操作者)にとっては待機時間(以下、デッドタイムともいう)となり、装置の生産性の低下を招いた。
【0005】
これに対し、色ずれを補正する色ずれ補正手段、環境温度を検出する検出手段、制御手段を備え、電源投入がされると、起動動作と並行して色ずれ補正動作を行い、前記起動動作がその途中で中断した時には、この起動動作が再開した時点で色ずれ補正動作を再実行する画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、前記色ずれ補正は、既に色ずれ補正動作が終了している場合は、起動動作再開時の検出温度が所定値以下の場合にのみ行われる。
【0006】
また、複数の画像補正手段で順次画像補正をする際に、外的要因により中断された画像補正の再開時に、画像補正の中断時と再開時における温度または湿度の変動を比較し、所定範囲内である時に、既に終了した画像補正手段を再度作動させることなく未終了の画像補正手段を作動させる画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−157413号公報
【特許文献2】特開2007−316195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、既に色ずれ補正動作が終了している場合に、起動動作再開時の検出温度が所定値以下の場合にのみ色ずれ補正を再実行し、所定値を超える場合には色ずれ補正の再実行を行わないように構成することにより、色ずれ補正の実行による操作者の待機時間の低減を図るものである。
【0009】
しかしながら、起動動作の中断時に色ずれ補正動作が終了しているとは限らず、補正動作も途中であることが多い。特許文献1では、補正動作が途中の場合、環境温度に関係なく常に補正動作を最初から行うこととなり、効果的な待機時間の低減は困難であった。
【0010】
特許文献2は、画像補正の中断時と再開時における温度または湿度の変動が所定範囲内である時には、既に終了した画像補正手段を再度作動させることなく、中断して未終了の画像補正手段を作動させるものである。また、前記変動が所定範囲外の場合には、複数の画像補正手段の最初から再度作動させている。これにより、画像補正の実行による操作者の待機時間の低減を図り、更にトナー等の資材消費量の削減を図っている。
【0011】
しかしながら、中断した画像補正手段は常に最初のステップから作動することになり、効果的な待機時間の低減、資材消費量の削減は困難であった。
【0012】
本発明は、上記状況に鑑みなされたもので、画像補正動作に起因するデッドタイムと資材消費量の低減を図り、生産性、操作性を向上させた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、下記の構成により達成される。
【0014】
1.複数の実行ステップからなる画像の補正動作実行中に、前記実行ステップの任意の実行ステップで補正動作が中断した時に、前記任意の実行ステップから補正動作を再開するために必要な補正データが存在すれば、前記任意の実行ステップから補正動作を再開、実行することが可能な複数の画像補正手段と、
画像の補正動作実行中における環境パラメータを検知する環境検知手段と、
画像の補正動作実行中の補正動作状況として、実行ステップ、補正データ、前記環境パラメータを随時記憶する実行状況記憶手段と、
補正動作の実行ステップの継続実行が不可能となる中断要因を監視する中断要因監視手段と、
前記画像補正手段を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記画像補正手段を、補正動作を開始する際には、実行ステップの最初から実行させ、中断要因が検知された場合には実行中の補正動作を中断させ、中断要因が解除され補正動作の再開が指示された場合には、前記実行状況記憶手段に記憶された中断時点での最新の環境パラメータと補正動作の再開が指示された時点での前記環境検知手段により検知された環境パラメータとを比較し、環境パラメータの変動量が許容範囲の場合は、前記実行状況記憶手段に記憶済みの中断された実行ステップの補正データを引き継いで中断された実行ステップから画像補正を再開し、変動量が許容範囲外の場合は、中断された画像補正手段の実行ステップの最初から補正を再実行するように制御することを特徴とする画像形成装置。
【0015】
2.前記補正データは、測定データまたは補正量導出過程の計算結果であることを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0016】
3.前記環境パラメータは、温度、湿度、時刻の何れか1つ以上であることを特徴とする前記1または2に記載の画像形成装置。
【0017】
4.前記実行状況記憶手段に記憶される前記実行ステップは、前記複数の画像補正手段の内、実行中の画像補正手段を判別可能とする情報を含むことを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0018】
5.前記中断要因は、扉開閉動作、電源遮断、操作者によるプリント指示の割り込み動作の何れか1つであることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0019】
6.前記中断要因監視手段は、補正動作実施中に操作者によるプリント指示を受けた際には、補正動作を中断してプリント動作を実施するか否かを、操作者に選択させる機能を有することを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0020】
7.前記変動量の許容範囲は、前記複数の画像補正手段に応じ、個別に設定可能であることを特徴とする前記1から6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、画像補正の信頼性を損ねることなく、画像補正動作の中断に起因するデッドタイムと資材消費量の低減を図ることができ、画像形成装置の生産性、操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る画像補正の制御を示すブロック図である。
【図3】割り込みプリントに対するメッセージの表示例を示す図である。
【図4】中断要因が解除され画像補正動作が再開される際のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る画像形成装置の実施の形態について図を参照して説明する。なお、本発明は、以下に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例を示す図である。
【0025】
本発明に係る画像形成装置GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10K、無端ベルト状の中間転写体6を有する転写ユニット60、給紙搬送手段及び定着装置9等からなる。
【0026】
以下、画像形成部10Y、10M、10C、10Kを総称して画像形成部10ともいう。
【0027】
画像形成装置GHの上部には、自動原稿送り装置201と原稿画像走査露光装置202から成る画像読取装置YSが設置されている。自動原稿送り装置201の原稿台上に載置された原稿dは搬送手段により搬送され、原稿画像走査露光装置202の光学系により原稿の片面または両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0028】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0029】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像装置4Y及びクリーニング手段8Yを配置している。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像装置4M及びクリーニング手段8Mを配置している。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体ドラム1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像装置4C及びクリーニング手段8Cを配置している。黒(Bk)色の画像を形成する画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像装置4K及びクリーニング手段8Kを配置している。そして、帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C、及び帯電手段2Kと露光手段3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0030】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0031】
定着装置9は、芯金上に弾性体層を有する第1加圧ローラ93と、内部に加熱手段を有する加熱ローラ92と、第1加圧ローラ93と加熱ローラ92の間に張架された無端状の定着ベルト91と、第1加圧ローラ93と対向する位置に定着ベルト91に圧接可能に配設され、定着ニップ部を形成する第2加圧ローラ94と、を備え、未定着画像を担持する記録材Pの未定着トナー面が定着ベルト91と接触する向きで定着ニップ部を通過することで未定着トナーを記録材Pに、加熱・加圧して定着する。
【0032】
かくして、画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に転写手段7Y、7M、7C、7Kにより逐次重ね合わせて転写されて(1次転写)、カラー画像が合成された画像が形成される。
【0033】
給紙カセット20内に収容された記録材Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23等を経て、転写手段7Aに搬送され、記録材P上にカラー画像が転写される(2次転写)。
【0034】
カラー画像が転写された記録材Pは定着装置9において加熱・加圧され、記録材P上のカラー画像が定着される。その後、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
【0035】
一方、転写手段7Aにより記録材Pにカラー画像を転写した後、記録材Pを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8Aにより残留トナーが除去される。
【0036】
画像形成装置GHは、基本的には、トナーの補給以外はメンテナンス不要で長期にわたって画像形成が行えるように構成されている。しかし、環境条件(温度・湿度)の変化やユーザの使用頻度などにより画像が劣化してしまう場合がある。そこで、画像品位を一定に保持するために画像補正手段が設けられ、必要に応じ画像補正が行われる。
【0037】
図2は、本発明に係る画像補正の制御を示すブロック図である。
【0038】
画像形成装置GHは複数の画像補正手段を備え、複数の画像補正手段により複数種類の画像補正が行われる。複数の画像補正手段として、本実施の形態では高濃度補正手段31a、中濃度補正手段31b、画像位置合わせ補正手段31cがあり、3種類の画像補正が行われる。以下、高濃度補正手段31a、中濃度補正手段31b、画像位置合わせ補正手段31cを総称して画像補正手段31という。
【0039】
画像補正手段31は、帯電手段2Y、2M、2C、2K、露光手段3Y、3M、3C、3K、現像装置4Y、4M、4C、4K、転写手段7Y、7M、7C、7Kの出力値などを所定の条件に設定して中間転写体6上にテスト用のパッチ画像(以下、パッチという)を転写する。更に、パッチセンサ65にて中間転写体6上のパッチ画像を光学的に測定し、その測定データに基づいて画像形成部10(10Y、10M、10C、10K)の画像補正を行う。
【0040】
この画像補正に際し、高濃度補正手段31aにより帯電出力値補正が、中濃度補正手段31bにより現像出力値補正が、画像位置合わせ補正手段31cにより各カラー画像の位置合わせ補正が行われる。
【0041】
画像補正手段31の補正動作は、複数の実行ステップからなり、順次実行ステップが実行されることにより、各画像補正が行われる。
【0042】
画像補正手段31は、画像形成装置GHの電源が投入(オン)され、画像補正実施の条件が満たされた時、補正動作を開始する。また、補正動作実行中に任意の実行ステップで中断要因が生じ補正動作が中断された時、補正動作を再開するために必要な補正データがあれば、任意の実行ステップから補正動作を再開、実行可能に構成されている。補正データとして、前述のパッチ画像を測定した測定データ、或いは測定データに基づき補正量を導出する補正量導出過程の計算結果が用いられる。
【0043】
環境検知手段35は、環境センサ66を備え、画像形成装置GHの内部に配置され、環境パラメータとして温度及び湿度を検知する。環境センサ66は、一般的に知られている温度・湿度センサを用いることができる。
【0044】
実行状況記憶手段33は、補正動作実行中の補正動作状況として、実行中の実行ステップ、補正データ、環境検知手段で検知された温度及び湿度を環境パラメータとして随時記憶する。実行ステップには、複数の画像補正手段31の内、実行中の画像補正手段31が何れか、例えば高濃度補正手段31a、中濃度補正手段31b、画像位置合わせ補正手段31cのうち、何れかを判別可能とする情報を含む。補正データは、前述のように測定データまたは補正量導出過程の計算結果であり、何れとするかは予め設定される。
【0045】
また、実行状況記憶手段33は、上記に加え、装置の電源オフからオンまでの経過時間、即ち装置休止時間、及び補正動作中断時から補正動作再開時までの経過時間、即ち補正動作中断時間を計測し、環境パラメータとして記憶する。装置休止時間には、装置の電源オン状態でプリントが行われていないプリント休止時間も含む。この場合、電源オフ時は前回の最終プリント終了時に相当し、電源オン時はプリント指示時に相当する。
【0046】
中断要因監視手段34は、画像補正手段31の補正動作実行中に、実行ステップの継続実行が不可能になる中断要因の発生を監視する。中断要因として、操作者による装置の扉開閉動作、電源遮断(オフ)、プリント指示の割り込み動作がある。
【0047】
装置の扉開閉は、装置に設けられた開閉検知手段(不図示)、例えばスイッチ等で検知される。
【0048】
制御手段32は、上述の各手段のデータ、信号等を参照しながら画像補正手段31を制御する。制御手段32は、画像形成装置GH及び画像読取装置YS全体を制御する制御装置(不図示)の一部として構成してもよいし、独立した構成として前記制御装置の制御下とする構成としてもよい。また、制御手段32は、補正動作が任意の実行ステップで中断した時に再開方法を判断する再開方法判断部32aを有する。再開方法判断部32aは、任意の実行ステップで中断した補正動作を再開する時に、任意の実行ステップから再開するか、或いは中断した補正動作の初期から再開するかを判断する。再開方法判断部32aは制御手段32とは別に、独立した機構としてもよい。
【0049】
次に、画像補正動作の制御について説明する。
【0050】
操作者により、画像形成装置GHの電源がオンされると、制御手段32は、実行状況記憶手段に記憶された前回電源オフ時の環境パラメータと電源オン時の環境パラメータを比較し、環境パラメータの変動量が画像補正実施の条件(画像補正実施条件)を満たす場合には画像補正動作を開始する。画像補正は、複数の画像補正手段(画像補正種類)31のうち、画像補正実施条件を満たす画像補正手段31に実施される。
【0051】
表1に画像補正種類と画像補正実施条件の例を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
本実施の形態では高濃度補正、中濃度補正、画像位置合わせ補正の3種類の画像補正としているので、各補正に対応した画像補正実施条件が設定される。なお、画像補正実施条件はこれに限定されるものではない。
【0054】
画像補正動作が開始されると、前述のパッチ画像の形成が行われ、高濃度補正手段31a、中濃度補正手段31b、画像位置合わせ補正手段31cの各実行ステップが実行され、高濃度補正、中濃度補正、画像位置合わせ補正が順次行われる。なお、実行順序はこれに限定されるものではない。
【0055】
画像補正動作実行にともない、実行状況記憶手段33は、補正動作実行中の補正動作状況として、実行中の実行ステップ、補正データ、環境検知手段35で検知された温度及び湿度、現在時刻を環境パラメータとして随時記憶する。また、実行中の画像補正手段31が何れか、例えば高濃度補正手段31a、中濃度補正手段31b、画像位置合わせ補正手段31cの内、何れかを記憶する。
【0056】
中断要因監視手段34は、画像補正手段31の補正動作実行中に、実行ステップの継続実行が不可能になる中断要因の発生を監視する。中断要因が発生した場合には、中断要因監視手段34から制御手段32に信号が出され、制御手段32は画像補正動作中断の処理を開始する。
【0057】
以下、中断要因が、操作者によるプリント指示の割り込み動作での中断の場合を例にして説明する。
【0058】
操作者によるプリント指示の割り込み動作として、操作者が画質を問題にせず急ぎプリントをしたいために、原稿を自動原稿送り装置201にセットし、操作部(不図示)のスタートボタンを押しプリント開始動作を行った場合等がある。この場合、画像形成装置GHは、操作者に対し補正動作の中断を確認するメッセージを表示装置(不図示)に表示する。
【0059】
図3は、メッセージの一例を示す図である。操作者が、メッセージを見て「はい」を選択し指示した場合には、中断要因監視手段34から制御手段32に画像補正動作中断の指示が出され、制御手段32は画像補正手段31の画像補正動作を中断する。また、画像形成装置GHは、プリント動作を開始する。
【0060】
プリント動作が終了すると、装置全体を制御する制御装置から制御手段32に画像補正再開の指示が出される。
【0061】
制御手段32は、実行状況記憶手段33に記憶された実行ステップから、中断された画像補正手段31の種類と中断した実行ステップを判断する。
【0062】
次に、制御手段32の再開方法判断部32aは、実行状況記憶手段33に記憶された中断時の環境パラメータ(温度、湿度、時刻)と現在の環境パラメータ(温度、湿度、時刻)とを比較し、環境パラメータの変動量が許容範囲か否かを判断し、補正データの再利用が可能か否かを判断する。環境パラメータの変動量が許容範囲か否かは、環境パラメータの変動量と予め設定された画像補正種類に対応した補正データの再利用可能条件とに基づき行われる。
【0063】
前記変動量は、画像補正種類、即ち高濃度補正手段31a、中濃度補正手段31b、画像位置合わせ補正手段31c毎に個別に設定可能である。
【0064】
表2に画像補正種類と再利用可能条件の例を示す。
【0065】
【表2】

【0066】
更に、再開方法判断部32aは、補正データの再利用が可能か否かの判断に基づき、画像補正動作の再開方法を判断する。制御手段32は、再開方法の判断に基づき画像補正手段31での画像補正動作を再開する。画像補正動作は、補正データの再利用が可能な場合には、実行状況記憶手段33に記憶された中断した画像補正手段31の実行ステップから再開される。また、補正データの再利用が不可能な場合には、実行状況記憶手段33に記憶された中断した画像補正手段31の最初の実行ステップから再開される。
【0067】
画像補正において、画像補正動作に起因するデッドタイムと資材消費量の低減を図るためには、画像補正動作に中断が生じた場合、再開する時に、中断された実行ステップから中断時の補正データを用いて再開することが好ましい。しかしながら、中断時と再開時の環境パラメータの変動量によっては、中断時の補正データを用いると適正な画像補正を行うことが困難になり、画像補正の信頼性を損なうこととなる。
【0068】
これに対し、本発明では、上記のように環境パラメータの変動量を規定の許容量の範囲か否かを判断し、許容量の範囲であれば、中断した画像補正手段31の中断した実行ステップから、中断時の補正データを継続して画像補正動作を再開する。許容量の範囲外の場合は、複数の画像補正手段31の全ての最初からではなく、複数の画像補正手段31のうちの中断した画像補正手段31の最初の実行ステップから画像補正動作を再開する。この場合、中断時の補正データを用いることはない。
【0069】
これにより、画像補正の信頼性を損ねることなく、画像補正動作に起因するデッドタイムと資材消費量の低減を図ることができる。
【0070】
図4は、画像補正動作が中断された後、中断要因が解除され画像補正動作が再開される際のフロー図である。
【0071】
ステップS101で、中断要因が解除された後、環境パラメータの変動量が許容範囲か否かが判断される。許容範囲の場合(S101;Yes)には、ステップS102へ移る。許容範囲外の場合(S101;No)には、ステップS104に移り、中断された画像補正手段31の最初の実行ステップから画像補正動作が再開される。
【0072】
ステップS102で、画像補正動作の中断時の実行ステップ、補正データが参照される。
【0073】
ステップS103で、中断時の実行ステップから画像補正動作が再開される。
【0074】
上述の画像補正動作が終了するとプリントモードに移り、プリントが可能となる。
【0075】
上記により、画像補正の信頼性を損ねることなく、画像補正動作の中断に起因するデッドタイムと資材消費量の低減を図ることができ、画像形成装置の生産性、操作性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0076】
GH 画像形成装置
YS 画像読取装置
P 記録材
10、10Y、10M、10C、10K 画像形成部
60 転写ユニット
6 中間転写体
9 定着装置
31 画像補正手段
31a 高濃度補正手段
31b 中濃度補正手段
31c 画像位置合わせ補正手段
32 制御手段
32a 再開方法判断部
33 実行状況記憶手段
34 中断要因監視手段
35 環境検知手段
65 パッチセンサ
66 環境センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の実行ステップからなる画像の補正動作実行中に、前記実行ステップの任意の実行ステップで補正動作が中断した時に、前記任意の実行ステップから補正動作を再開するために必要な補正データが存在すれば、前記任意の実行ステップから補正動作を再開、実行することが可能な複数の画像補正手段と、
画像の補正動作実行中における環境パラメータを検知する環境検知手段と、
画像の補正動作実行中の補正動作状況として、実行ステップ、補正データ、前記環境パラメータを随時記憶する実行状況記憶手段と、
補正動作の実行ステップの継続実行が不可能となる中断要因を監視する中断要因監視手段と、
前記画像補正手段を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記画像補正手段を、補正動作を開始する際には、実行ステップの最初から実行させ、中断要因が検知された場合には実行中の補正動作を中断させ、中断要因が解除され補正動作の再開が指示された場合には、前記実行状況記憶手段に記憶された中断時点での最新の環境パラメータと補正動作の再開が指示された時点での前記環境検知手段により検知された環境パラメータとを比較し、環境パラメータの変動量が許容範囲の場合は、前記実行状況記憶手段に記憶済みの中断された実行ステップの補正データを引き継いで中断された実行ステップから画像補正を再開し、変動量が許容範囲外の場合は、中断された画像補正手段の実行ステップの最初から補正を再実行するように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記補正データは、測定データまたは補正量導出過程の計算結果であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記環境パラメータは、温度、湿度、時刻の何れか1つ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記実行状況記憶手段に記憶される前記実行ステップは、前記複数の画像補正手段の内、実行中の画像補正手段を判別可能とする情報を含むことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記中断要因は、扉開閉動作、電源遮断、操作者によるプリント指示の割り込み動作の何れか1つであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記中断要因監視手段は、補正動作実施中に操作者によるプリント指示を受けた際には、補正動作を中断してプリント動作を実施するか否かを、操作者に選択させる機能を有することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記変動量の許容範囲は、前記複数の画像補正手段に応じ、個別に設定可能であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−262101(P2010−262101A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111932(P2009−111932)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】