説明

画像形成装置

【課題】ノズルのメンテナンス時に発生するインクミストの装置内への拡散を防ぐ。
【解決手段】ノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッド11を有するキャリッジユニット1が往復移動することにより画像を形成し、かつ、ノズルのメンテナンスを目的としてノズルから空吐出受け5に向けてインクの空吐出動作を行う画像形成装置において、空吐出動作時にノズルと空吐出受け5との間に形成される空間を遮蔽する遮蔽手段13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。さらに詳述すると、ノズルのメンテナンス時に発生するインクミストの装置内への拡散の防止に好適な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを含む装置を用いて、媒体(以下用紙ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する)を搬送しながら、液体としての記録液(以下、インクともいう)を用紙に付着させて画像形成(以下、記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる)を行なう、いわゆるインクジェット方式の画像形成装置(以下、インクジェット画像形成装置)がある。
【0003】
インクジェット画像形成装置では、印字部であるキャリッジ走査方向(主走査方向)および用紙搬送方向(副走査方向)において、正確に送り量を制御するためにエンコーダシートによる送り量制御が行われている。このうち、装置内部の印字領域近傍に配置されている主走査エンコーダシート(以下、エンコーダシート)においては、印字の際にノズル面から噴出される霧状のインク(インクミスト)がシート表面に付着し、堆積していくという問題がある。このインクミストの堆積によりエンコーダシート上のスケール部の光透過性能が低下することで、透過型フォトセンサによるエンコーダシートの読み取り不良が生じ、キャリッジの位置精度に狂いが生じ、異常画像を引き起こすこととなる。
【0004】
また、インクジェット画像形成装置では、ノズル口でのインク乾燥による目詰まりを防止するため、キャリッジ動作中にノズルメンテナンス動作を実施する。このメンテナンス動作のうち、ノズルからインクを吐出する動作(空吐出動作)においては、図13に示すように印字時でのインク吐出に比べてインクミストの発生量が多いことが知られている。
【0005】
図13は、主走査方向距離(mm)とアナログセンサ(透過型フォトセンサ)出力振幅(V)との関係を示すグラフであって、初期値(印字前のセンサ出力値)と1000枚印字後のセンサ出力値との比較を示すものである。図13によれば、印字後の左右の空吐出領域(維持ユニット側および反対側)付近でのセンサ出力値が変化していることが分かる。
【0006】
すなわち、エンコーダシートへのインクミストの付着は空吐出領域付近が一番多いと考えられ、空吐出領域付近からセンサの読み取り不良が発生するといえる。よって、空吐出動作時におけるエンコーダシートへのインクミストの付着を低減することが画像形成装置の性能維持および装置寿命の改善に有効であるといえる。
【0007】
このような問題に対し、特許文献1には、予備吐出時に発生するインクミストが装置内に飛散、浮遊するのを低減することを目的として、インク受け部にミスト吸引ポンプやミスト吸引ファンを設けて、インクミストを吸引するインクジェット記録装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、インクを吐出する吐出口のメンテナンスを行う際に、吐出口からのインクを受けるメンテナンス部材(キャッピング手段)とプラテンとを回転軸を中心に一体的に回転移動させることにより、メンテナンス部材が吐出口の対向位置にくるように配置を切り換えて、メンテナンスを実行するインクジェットプリンタが開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、ノズルメンテナンス時にキャッピング手段で記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態において、記録ヘッドに対して印刷とは関係のない駆動信号を与えて、インク滴を空吐出させるインクジェット式記録装置が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、記録紙が印刷位置にないときに遮蔽部材を上昇させて記録ヘッドに近接させてから目詰まり防止用インク滴を吐出するインクジェット記録装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、空吐出動作時に発生するインクミストのうち空吐出受けの内部で浮遊するインクミストについての飛散については防止することができるが、空吐出動作時に空吐出受けの外部に発生するインクミストについては回収されず、そのまま装置内で浮遊してしまうという問題があった。
【0012】
また、特許文献4に記載の技術にいう遮蔽部材とは、空吐出受けに相当するものであり、空吐出動作時に遮蔽部材を記録ヘッドに近接させて空吐出を行ったとしても、特許文献1と同様に、遮蔽部材の外部に発生するインクミストについては回収されず、そのまま装置内で浮遊してしまうという問題があった。また、特許文献4に記載の技術は、記録ヘッドを走査しない定置型の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に関するものであるため、位置検出のためのリニアエンコーダ機構を装置内に有せず、装置内へのインクミストの拡散により生じるエンコーダ読み取り不良という問題が生じない。
【0013】
さらに、特許文献2および3に記載の技術のように、ノズルメンテナンス時にキャッピング手段を作動させてノズルを封止する構成によれば、装置内へのインクミストの拡散は発生しないが、キャッピング手段を作動させるメンテナンス動作には、時間がかかるため、メンテナンス時間が長くなるという問題がある。また、キャッピング手段を移動させるための制御機構および他の部材との配置関係が複雑なものとなり、画像形成装置のコストアップの要因となる。
【0014】
そのため、空吐出受けへのインク空吐出によるノズルメンテナンスか、または空吐出受けへのインク空吐出によるノズルメンテナンスとキャッピング手段によるノズルメンテナンスと空吐出受けへのインク空吐出によるノズルメンテナンスとを併用してメンテナンス時間を短縮させることが望まれる。
【0015】
そこで本発明は、ノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドを有するキャリッジユニットが往復移動することにより画像を形成し、かつ、ノズルのメンテナンスを目的としてノズルから空吐出受けに向けてインクの空吐出動作を行う画像形成装置において、空吐出動作時にノズルと空吐出受けとの間に形成される空間を遮蔽する遮蔽手段を備えることにより、ノズルのメンテナンス動作において、キャッピング手段を作動させるメンテナンス動作を行うことなく、固定配置された空吐出受けに向けてインク空吐出動作を実行し、この際に空吐出受けの内側および外側で発生しうるインクミストの装置内への浮遊、拡散を防ぐことができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の画像形成装置は、ノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドを有するキャリッジユニットが往復移動することにより画像を形成し、かつ、ノズルのメンテナンスを目的としてノズルから空吐出受けに向けてインクの空吐出動作を行う画像形成装置において、空吐出動作時にノズルと空吐出受けとの間に形成される空間を遮蔽する遮蔽手段を備えるものである。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、遮蔽手段は、キャリッジユニットまたは空吐出受けに設けられ、空吐出動作時にキャリッジユニットから空吐出受けの方向に降下、または、空吐出受けからキャリッジユニットの方向に上昇動作をするものである。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、遮蔽手段は凸部材を有し、キャリッジユニットが空吐出受けの上部位置まで移動すると、凸部材が装置内の押さえ部材に押し付けられ、遮蔽手段が上昇または降下するものである。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、キャリッジユニットまたは空吐出受けに駆動手段を設け、該駆動手段により遮蔽手段を上昇または昇下させるものである。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4までのいずれかに記載の画像形成装置において、遮蔽手段の昇降動作を、設定された印字モードに基づいて実行するか否かを判断するものである。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5までのいずれかに記載の画像形成装置において、遮蔽手段は、壁面内側に吸収体を備えるものである。
【0022】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6までのいずれかに記載の画像形成装置において、遮蔽手段および/または空吐出受けをインクミスト回収手段と接続したものである。
【0023】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像形成装置において、インクミスト回収手段は、ファンによりインクミストを回収するものである。
【0024】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の画像形成装置において、ファンの風量および/または駆動時間を、設定された印字モードに基づいて切り換えるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、空吐出受けの内側および外側で発生しうるインクミストの装置内への浮遊、拡散を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の概略構成図である。
【図2】画像形成装置の上面概略図である。
【図3】空吐出動作時のインクミスト発生の様子を示す図である。
【図4】凸部材を備えた遮蔽手段の一例を示す模式図である。
【図5】凸部材を備えた遮蔽手段の他の例を示す模式図である。
【図6】キャリッジユニットに昇降手段を設けた例を示す模式図である。
【図7】空吐出受けに昇降手段を設けた例を示す模式図である。
【図8】昇降手段のモータの制御フローチャートである。
【図9】吸収体を設けた遮蔽手段の一例を示す模式図である。
【図10】インクミストを回収するインクミスト回収手段の模式図である。
【図11】インクミストを回収するファンの風量制御フローチャートである。
【図12】インクミストを回収するファンの稼働時間制御フローチャートである。
【図13】印字によるセンサ出力値の低下を説明するグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る構成を図1から図12に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0028】
(画像形成装置構成)
本実施形態の画像形成装置は、ノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドを有するキャリッジユニットが往復移動することにより画像を形成し、かつ、ノズルのメンテナンスを目的としてノズルから空吐出受けに向けてインクの空吐出動作を行う画像形成装置において、空吐出動作時にノズルと空吐出受けとの間に形成される空間を遮蔽する遮蔽手段を備えるものである。このように構成することにより、以下に詳細に述べるように、遮蔽部材によりノズル周辺の空間を遮蔽するようにして発生するインクミストの装置内への浮遊、拡散を防止するものである。
【0029】
図1に本発明に係る画像形成装置の一実施形態であるインクジェット画像形成装置の機構部構成の一例を示す。符号1は印字を行うユニットであって、交換可能なメインインクタンク(インクカートリッジ)2からインクチューブ3を介して供給されたインクを貯蔵するサブタンクおよびインクを吐出するノズルを有するヘッド部を内部に搭載したキャリッジユニット(印字機構)1であり、用紙の幅方向である主走査方向に往復運動する。
【0030】
また、主走査方向に直行する副走査方向に用紙を搬送する手段としての紙送り手段(紙送り機構)が設けられており、この印字機構と紙送り機構の動作を制御部により制御することで、用紙への画像形成を行うものである。
【0031】
また、図1に示す例では、用紙幅の両側に維持ユニット4および空吐出受け(左空吐出受け)5を備えることにより、インクの増粘、固化、または気泡の混入などにより発生するインク吐出不具合を解消する機能を有する。
【0032】
また、キャリッジユニット1の主走査方向に沿ってエンコーダシートが張装され、キャリッジユニット1はリニアスケールのスリットを検知する透過型フォトセンサ(エンコーダセンサ)を備えている。
【0033】
図2に図1に示したインクジェット画像形成装置の上面概略図を示す。キャリッジユニット1は、初期位置として維持ユニット4の位置(鉛直方向上側)に待機している。維持ユニット4は、右吐出受け7、吸引キャップ8および保湿キャップ9を備えており、吸引キャップ8および保湿キャップ9がヘッド上のノズル面を密閉することで、ノズル内のインクが乾燥するのを防止する。なお、符号6は用紙搬送部を示す。
【0034】
また、ノズルメンテナンス動作時に、右空吐出受け7に向けてノズルからインクを吐出(空吐出)することによりノズルのメンテナンスを行っている。この右空吐出受け7には、ワイパーブレード10が内蔵されており、ノズル吸引や空吐出で汚れたノズル面を払拭する。さらに、維持ユニット4の反対側には、左空吐出受け5が設置され、右空吐出受け7と同様に空吐出動作を実施する構成となっている。
【0035】
ここで、印字時以外のノズルメンテナンス動作時におけるインク吐出動作は、(i)右空吐出、(ii)キャップ内空吐出、(iii)左空吐出の3つのパターンがあり、それぞれ、右空吐出受け7、吸引キャップ8、左空吐出受け5で空吐出動作が行われる。ここで(ii)キャップ内空吐出は、ヘッド面を吸引キャップで密閉した状態でインクを吐出しながらポンプで強制的に吸引することにより、強力なノズルメンテナンスを実現することができるが、動作にかかる時間が多い。一方、(i)右空吐出および(iii)左空吐出は、ノズルから各空吐出受けの開口部に向けて直接インクを吐出するものであるので、(ii)キャップ内空吐出に比べ動作にかかる時間が少ない。このような複数パターンの空吐出動作をノズルの状況に応じて適宜組み合わせて、メンテナンス動作が引き起こす印字速度の低下を防ぐ制御を行うものである。なお、本実施形態では、(i)右空吐出、(ii)キャップ内空吐出、(iii)左空吐出の3つのパターンのインク吐出動作が可能な画像形成装置の(i)右空吐出および(iii)左空吐出について説明するが、(ii)キャップ内空吐出を実行するための構成(吸引キャップ8,保湿キャップ9等)を備えず(i)右空吐出および(iii)左空吐出のみ実行可能な画像形成装置であっても良いのは勿論である。
【0036】
このような空吐出動作のうち、(i)右空吐出および(iii)左空吐出では、ヘッド面をキャッピングしていないため、ノズルからインクが吐出される際、霧状のインクミストが発生し、装置内に飛散してしまうという問題がある。
【0037】
図3に(iii)左空吐出時のインクミスト発生の様子を示す。(iii)左空吐出においては、キャリッジユニット1に搭載されたヘッド部11のノズルから左空吐出受け5へ向けてインクが吐出されるが、インクが吐出される瞬間、霧状のインクミストが発生する。
【0038】
すなわち、ノズルから左空吐出受け5の開口部12に向けてインクが吐出されると、左空吐出受け5の内部および開口部12周辺の左吐出受け外部にインクミストが浮遊する。このうち、外部に浮遊したインクミストについては、画像形成装置内でさらに拡散されてしまい問題となる。
【0039】
(遮蔽手段構成)
そこで、本実施形態に係るインクジェット画像形成装置は、空吐出動作時に空吐出受け近傍に発生するインクミストの装置内への拡散を防ぐための遮蔽手段を備えるものである。以下、遮蔽手段の詳細について説明する。
【0040】
<第1の実施形態>
図4に、遮蔽手段の第1の実施形態を示す。本実施形態の遮蔽手段13は、図4(a)に示すように、四角柱形状の筒状体であって、キャリッジユニット1の周囲全面を覆うようにキャリッジユニット1に設けられる。また、遮蔽手段13は、鉛直方向に昇降動作する構造となっている。
【0041】
図4(b)に、図4(a)に示す遮蔽手段13の詳細を示す。遮蔽手段13は、係止手段(例えば、スプリング14)によってキャリッジユニット1に保持されている。また、画像形成装置の側板16には押さえ部材17が設けられている。また、押さえ部材17が設けられた遮蔽手段13の一側面の上側を凸形状としている。本実施形態では、遮蔽手段13に凸部材15を設けている。
【0042】
ここで、キャリッジユニット1が主走査方向(図4(b)中の矢印方向)に移動し、左空吐出受け5の上側位置まで移動したとき、遮蔽手段13の凸部材15は、押さえ部材17と接触して下方向に負荷を受けるようにしている。これにより、キャリッジユニット1の走査に伴い遮蔽手段13を最大で凸部材15の高さ分、降下させることができる。
【0043】
図4(b)は降下途中の様子を示す図であるが、このように遮蔽手段13が降下することにより、ヘッド部11近傍の周方向が遮蔽され、遮蔽空間が形成される。また、空吐出動作が終了し、キャリッジユニット1が左空吐出位置から右方向に移動すると、凸形状15による付勢が解除されて、遮蔽手段13はスプリング14によって上昇し、スプリング14で保持された初期の高さ位置に戻るものである。
【0044】
<第2の実施形態>
次に、図5に、遮蔽手段の第2の実施形態を示す。本実施形態の遮蔽手段13は、図4に示した遮蔽手段と同様の形状によるものであるが、左空吐出受け5の周囲全面を覆うように左空吐出受け5に設けられる。また、遮蔽手段13は、鉛直方向に昇降動作する構造となっている。
【0045】
図5(b)に、図5(a)に示す遮蔽手段13の詳細を示す。遮蔽手段13は、係止手段(例えば、スプリング14)によって左空吐出受け5に保持されている。また、画像形成装置の側板16には押さえ部材17が設けられている。また、押さえ部材17が設けられた遮蔽手段13の一側面の下側を凸形状としている。本実施形態では、遮蔽手段13に凸部材15を設けている。
【0046】
ここで、キャリッジユニット1が主走査方向(図5(b)中の矢印方向)に移動し、左空吐出受け5の上側位置まで移動したとき、押さえ部材17を図示しない駆動手段により駆動させる。本実施形態の押さえ部材17は、主走査方向に対して伸縮自在に設けられており、押さえ部材17を主走査方向に対して伸長させることにより、遮蔽手段13の凸部材15と接触させ、遮蔽手段13が上方向に負荷を受けるようにしている。これにより、遮蔽手段13を最大で凸部材15の高さ分、上昇させることができる。
【0047】
図5(b)は上昇途中の様子を示す図であるが、このように遮蔽手段13が上昇することにより、ヘッド部11近傍の周方向が遮蔽され、遮蔽空間が形成される。また、空吐出動作が終了すると、押さえ部材17を収縮させることにより、凸形状15との接触を解除して、遮蔽手段13はスプリング14によって下降し、スプリング14で保持された初期の高さ位置に戻るものである。
【0048】
<第3の実施形態>
次に、図6に、遮蔽手段の第3の実施形態を示す。本実施形態の遮蔽手段13は、図6に示すように、四角柱形状の筒状体であって、キャリッジユニット1の周囲全面を覆うようにキャリッジユニット1に設けられる。なお、遮蔽手段13は、係止手段(例えば、スプリング14)によってキャリッジユニット1に保持されている。
【0049】
本実施形態では、キャリッジユニット1にモータ18、ギヤ19、ギヤ20およびカム21からなる昇降手段が設けられている。昇降手段のモータ18は、制御部により制御され、モータ18を駆動させることにより、ギヤ19、ギヤ20を介して、カム21を回転させる。また、カム21は、遮蔽手段13の一側面の上端に接している。
【0050】
ここで、キャリッジユニット1が主走査方向(図6中の矢印方向)に移動し、左空吐出受け5の上側位置まで移動したとき、モータ18を所定量回転させてカム21を回転させる。遮蔽手段13は、カム21により下方向に負荷を受け、降下動作をすることで、ヘッド部11近傍の周方向が遮蔽され、遮蔽空間が形成される。また、空吐出動作が終了し、キャリッジユニット1が左空吐出位置から移動するとき、モータ1をさらに所定量回転させてカム21での付勢を解除し、遮蔽手段13はスプリング14によって上昇し、スプリング14で保持された初期の高さ位置に戻るものである。
【0051】
<第4の実施形態>
次に、図7に、遮蔽手段の第4の実施形態を示す。本実施形態の遮蔽手段13は、図7に示すように、四角柱形状の筒状体であって、キャリッジユニット1の周囲全面を覆うように左空吐出受け5に設けられる。なお、遮蔽手段13は、係止手段(例えば、スプリング14)によって左空吐出受け5に保持されている。
【0052】
本実施形態では、左空吐出受け5にモータ18、ギヤ19、ギヤ20およびカム21からなる昇降手段が設けられている。昇降手段のモータ18は、制御部により制御され、モータ18を駆動させることにより、ギヤ19、ギヤ20を介して、カム21を回転させる。また、カム21は、遮蔽手段13の一側面の下端に接している。
【0053】
ここで、キャリッジユニット1が主走査方向(図7中の矢印方向)に移動し、左空吐出受け5の上側位置まで移動したとき、モータ18を所定量回転させてカム21を回転させる。遮蔽手段13は、カム21により上方向に負荷を受け、上昇動作をすることで、ヘッド部11近傍の周方向が遮蔽され、遮蔽空間が形成される。また、空吐出動作が終了し、キャリッジユニット1が左空吐出位置から移動するとき、モータ1をさらに所定量回転させてカム21での付勢を解除し、遮蔽手段13はスプリング14によって下降し、スプリング14で保持された初期の高さ位置に戻るものである。
【0054】
以上説明した第1〜第4の実施形態の遮蔽手段13によれば、空吐出動作時にキャリッジユニット1のヘッド部11周辺を遮蔽することにより、ヘッド面と空吐出受け口を別部材により接続し密閉するための複雑かつ高価な機構を用いることなく、空吐出動作時に発生するインクミストの回収効率を高めてインクミストの装置内への拡散を防止することができ、キャリッジユニット1近傍に設けられているエンコーダシート26へのインクミスト付着を防止することが可能となる。なお、遮蔽手段13を昇降動作させるための機構は、上述の例に限られるものではないのは勿論である。
【0055】
なお、右吐出受け7への右空吐出時についても同様に遮蔽手段13を用いた制御が可能である。上記第1〜第2の実施形態の場合は、例えば、凸部材15を対称位置にも設けることで同様に昇降させることができる。
【0056】
(昇降手段制御)
次に、ここで、図8に示すフローチャートを参照しつつ、第3および第4実施形態の遮蔽手段13の昇降手段のモータ18の制御について説明する。
【0057】
まず、画像形成装置の制御部は設定された印刷モードを検知する(S1)。なお、印刷モードの設定は、画像形成装置の操作パネルや画像形成装置に接続された情報処理装置(パーソナルコンピュータなど)から設定が可能であり、設定内容は画像形成装置のRAM等に一時記憶されている。
【0058】
本実施形態では、設定された印刷モードが、(i)きれいモード、(ii)高画質モード、(iii)封筒モードのいずれかのモードである場合(S1:Yes)に、以下に述べるように遮蔽手段の動作制御を行う(S2へ)。一方、印字モードが上記(i)〜(iii)のいずれのモードにも該当していない場合(S1:No)は、遮蔽手段の昇降動作は行わない(S8)。これは、上記(i)〜(iii)以外のモードでは、発生するインクミストは比較的少量であることによるものである。しかしながら、遮蔽手段の動作制御を行うモードの組み合わせについては、上記の例に限られるものではなく、全ての印刷モードで遮蔽手段の動作制御を行うようにしても良いのは勿論である。また、印刷モードを基準に判断せず、遮蔽手段の動作を実行するか否かを設定可能としても良い。
【0059】
次に、キャリッジが空吐出動作を検知する、すなわち、空吐出位置で一定時間停止すると(S2)、モータ18を作動(一定量回転)させて(S3)、遮蔽手段を昇降させてヘッド11と空吐出受け5の間に遮蔽された空間を形成する。
【0060】
この状態において、ヘッド11に設けられたノズルから空吐出動作が開始する(S4)。空吐出動作終了を検知した後(S5)は、予め設定された時間t(空吐出口とヘッド面周辺に浮遊するインクミストがなくなる時間)が経過したのを検知し(S6)、遮蔽手段昇降モータを作動(一定量回転)させ、遮蔽状態を解除する(S7)。以後、再度キャリッジの走査が開始する。以上が、遮蔽手段昇降動作フローである。
【0061】
(その他の実施形態)
また、遮蔽手段13の内側(内壁)にインクミストを吸着可能な吸収体22を設けることが好ましい。図9に吸収体22を設けた遮蔽手段の一例を示す。
【0062】
図9に示す例では、キャリッジユニット1に遮蔽手段13が保持されており、遮蔽手段13は矢印方向に昇降動作をして、ヘッド部11と左空吐出受け5との間で遮蔽された空間を形成し、発生したインクミストを閉じ込める構成になっている。さらに、遮蔽手段13の内側には、吸収体22が貼付されており、インクミストを吸着可能としている。ここで、吸収体22としては、例えば、
フェルトなどの繊維素材を用いることができる。また、吸収体22は必ずしも遮蔽手段13の内側全面(四面)に設ける必要はない。また、吸収体22を取換え可能とすることも好ましい。
【0063】
このように遮蔽手段13に吸収体22を設けることにより、インクミストの吸着効率を高め、インクミストの装置内への拡散を、より効果的に低減することが可能となる。
【0064】
また、空吐出時に発生するインクミストを回収するインクミスト回収手段を備えることも好ましい。図10に、ダクト23、ファン(ミストファン)24、回収容器25からなるインクミスト回収手段の一例を示す。
【0065】
図10においては、キャリッジユニット1に遮蔽手段13が保持されており、左空吐出受け5とヘッド部11の間で遮蔽された空間を形成し、発生したインクミストを閉じ込める構成になっている。さらに、遮蔽手段13および左空吐出受け5には通気口が設けられ、そこに接続する形で二股のダクト23が設置されている。ダクト23の通気口の反対側にはファン24が取り付けられており、ヘッド部11周辺のインクミストおよび左空吐出受け5内のインクミストを吸引し、ファン24によって吸引されたインクミストは、別に設置された回収容器25内に廃液として蓄えられる。
【0066】
なお、図10に示す例では、ダクト23は、遮蔽手段13および左空吐出受け5の双方に設けられた通気口に接続されているが、いずれか一方のみに設けるようにしてもよい。また、遮蔽手段13および左空吐出受け5の双方に、それぞれにインクミスト回収手段(ダクト23、ファン24、回収容器25)を設けるようにしても良い。
【0067】
このように遮蔽手段13および/または空吐出受けに通気口を設けてそこからファン24などの回収手段によりインクミストを回収することにより、さらにインクミストの回収効率を上げることができ、インクミストの装置内への拡散を、より効果的に低減することが可能となる。
【0068】
(ファンの風量制御)
また、ファンの風量を設定された印字モードに基づいて切り換えることも好ましい。以下、図11に示すフローチャートを参照しつつ、インクミスト回収手段のファン24の風量制御の一例について説明する。
【0069】
まず、設定された印刷モードを検知する(S1)。なお、印刷モードの設定は、画像形成装置の操作パネルや画像形成装置に接続された情報処理装置(パーソナルコンピュータなど)から設定が可能であり、設定内容は画像形成装置に記憶される。
【0070】
本実施形態では、設定された印刷モードが、(i)きれいモード、(ii)高画質モード、(iii)封筒モードのいずれかのモードである場合(S1:Yes)に、以下に述べるようにファン24の稼動制御を行う(S2へ)。一方、印字モードが上記(i)〜(iii)のいずれのモードにも該当していない場合(S1:No)は、ファン24の稼動制御および遮蔽手段の昇降制御(図8参照)は行わない(S10)。これは、上記(i)〜(iii)以外のモードでは、発生するインクミストは比較的少量であることによるものである。しかしながら、ファン24の稼動制御を行うモードの組み合わせについては、上記の例に限られるものではなく、全ての印刷モードでファン24の稼動制御を行うようにしても良いのは勿論である。また、印刷モードを基準に判断せず、ファン24の稼動制御を実行するか否かを設定可能としても良い。
【0071】
次に、キャリッジが空吐出動作を検知する、すなわち、空吐出位置で一定時間停止すると(S2)、モータ18を作動(一定量回転)させて(S3)、遮蔽手段を昇降させてヘッド11と空吐出受け5の間に遮蔽された空間を形成する。
【0072】
この状態において、ファン24を稼動させるが、この際、S1で検知した印刷モードに従って、電流値の制御により3種類の風量モードで動作するようにしている。本実施形態では、(i)きれいモード、(ii)高画質モード、(iii)封筒モードとなるに従って、発生するインクミスト量が増えるため、ファンの風量を(i)きれいモードの場合は風量小、(ii)高画質モードの場合は風量中、(iii)封筒モードの場合は風量大と制御している(S4)。
【0073】
次に、ノズル部11から空吐出動作が開始され(S5)、空吐出動作終了を検知した後(S6)は、予め設定された時間t(空吐出口とヘッド面周辺に浮遊するインクミストがなくなる時間)が経過したのを検知し(S7)、ファン24が停止動作をする(S8)。以上の動作が終了した後、遮蔽手段昇降モータ18を作動(一定量回転)させ(S9)て、遮蔽状態を解除した後に再度キャリッジの走査が開始する。以上が、ファンの風量制御フローである。
【0074】
(ファンの駆動時間制御)
また、ファンの駆動時間を設定された印字モードに基づいて切り換えることも好ましい。以下、図12に示すフローチャートを参照しつつ、インクミスト回収手段のファン24の稼働時間制御の一例について説明する。
【0075】
まず、設定された印刷モードを検知する(S1)。なお、印刷モードの設定は、画像形成装置の操作パネルや画像形成装置に接続された情報処理装置(パーソナルコンピュータなど)から設定が可能であり、設定内容は画像形成装置に記憶される。
【0076】
本実施形態では、設定された印刷モードが、(i)きれいモード、(ii)高画質モード、(iii)封筒モードのいずれかのモードである場合(S1:Yes)に、以下に述べるようにファン24の稼動制御を行う(S2へ)。一方、印字モードが上記(i)〜(iii)のいずれのモードにも該当していない場合(S1:No)は、ファン24の稼動制御および遮蔽手段の昇降制御(図8参照)は行わない(S10)。これは、上記(i)〜(iii)以外のモードでは、発生するインクミストは比較的少量であることによるものである。しかしながら、ファン24の稼動制御を行うモードの組み合わせについては、上記の例に限られるものではなく、全ての印刷モードでファン24の稼動制御を行うようにしても良いのは勿論である。また、印刷モードを基準に判断せず、ファン24の稼動制御を実行するか否かを設定可能としても良い。
【0077】
次に、キャリッジが空吐出動作を検知する、すなわち、空吐出位置で一定時間停止すると(S2)、モータ18を作動(一定量回転)させて(S3)、遮蔽手段を昇降させてヘッド11と空吐出受け5の間に遮蔽された空間を形成する。
【0078】
この状態において、ファン24を稼動させる(S4)が、この際、ノズル部11から空吐出動作が開始され(S5)、空吐出動作終了を検知した後(S6)は、予め設定された時間t(空吐出口とヘッド面周辺に浮遊するインクミストがなくなる時間)が経過したのを検知し(S7)、ファン24が停止動作をする(S8)。
【0079】
この際に設定される時間tは、S1で検知した印刷モードに従って決定されるようにしている。本実施形態では、(i)きれいモード、(ii)高画質モード、(iii)封筒モードとなるに従って、発生するインクミスト量が増えるため、ファンの稼働時間を(i)きれいモードの場合は時間短、(ii)高画質モードの場合は時間中、(iii)封筒モードの場合は時間長と制御している(S8)。
【0080】
次に、以上の動作が終了した後、モータ18を作動(一定量回転)させ(S9)て、遮蔽状態を解除した後に再度キャリッジの走査が開始する。以上が、ファン24の稼働時間制御フローである。
【0081】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 キャリッジユニット
2 メインインクタンク(インクカートリッジ)
3 インクチューブ
4 維持ユニット
5 空吐出受け(左空吐出受け)
6 用紙搬送部
7 右空吐出受け
8 吸収キャップ
9 保湿キャップ
10 ワイパーブレード
11 ヘッド部(ヘッド)
12 開口部
13 遮蔽手段
14 スプリング
15 凸部材
16 側板
17 押さえ部材
18 モータ
19,20 ギヤ
21 カム
22 吸収体
23 ダクト
24 ファン
25 回収容器
26 エンコーダシート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開2008−149538号公報
【特許文献2】特開2004−9513号公報
【特許文献3】特開2001−322296号公報
【特許文献4】特開平9−300658号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドを有するキャリッジユニットが往復移動することにより画像を形成し、かつ、前記ノズルのメンテナンスを目的として前記ノズルから空吐出受けに向けてインクの空吐出動作を行う画像形成装置において、
空吐出動作時に前記ノズルと前記空吐出受けとの間に形成される空間を遮蔽する遮蔽手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記遮蔽手段は、前記キャリッジユニットまたは前記空吐出受けに設けられ、空吐出動作時に前記キャリッジユニットから前記空吐出受けの方向に降下、または、前記空吐出受けから前記キャリッジユニットの方向に上昇動作をすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記遮蔽手段は凸部材を有し、
前記キャリッジユニットが前記空吐出受けの上部位置まで移動すると、前記凸部材が装置内の押さえ部材に押し付けられ、前記遮蔽手段が上昇または降下することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記キャリッジユニットまたは前記空吐出受けに駆動手段を設け、
該駆動手段により前記遮蔽手段を上昇または昇下させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記遮蔽手段の昇降動作を、設定された印字モードに基づいて実行するか否かを判断することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記遮蔽手段は、壁面内側に吸収体を備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の画像形成装置、
【請求項7】
前記遮蔽手段および/または前記空吐出受けをインクミスト回収手段と接続したことを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記インクミスト回収手段は、ファンによりインクミストを回収することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置
【請求項9】
前記ファンの風量および/または駆動時間を、設定された印字モードに基づいて切り換えることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−110840(P2011−110840A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270009(P2009−270009)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】