説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置の使用者等の荷重を支持部材が受けても、その荷重が直接的に画像読取部に影響しない構成とすることにより、スキュー画像を未然に防ぎ、安定した画像を得られるとともに、支持部材の強度を従来よりも低減する。
【解決手段】左スキャナ支持部材8の正面側に対応した左カバー20上に鉛直下方向の荷重を受けたとき、左カバー20とともに左スキャナ支持部材8の正面側のみが鉛直下方向に変位する構成とした。具体的には、左スキャナ支持部材8の正面側は、画像読取部1が上面載置部9bに載置された状態において鉛直下方向に変位可能に、左スキャナ支持部材8と画像読取部1とが段付きネジ16で締結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、詳しくは、画像読取部と画像形成部(電子写真方式による画像形成、インクジェット記録等またはそれら複数の機能の組み合わせを含む)との間に、画像が記録されたシートを排出するシート排出部を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取部と画像形成部とを有する電子写真方式の画像形成装置では、その設置面積を少なくするために、いわゆる胴内排紙方式(画像読取部と画像形成部との間に形成された胴内排出空間に排紙する方式)としたものが一般的である。その際、画像読取部を支える本体構造体の支持部材は、胴内に排紙された転写紙を取り出しやすくするため、転写紙の排出先端側の構造が片持ち形態となっていることが知られている。(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
特許文献1および2には、胴内に排紙された転写紙を取り出しやすくする目的で、原稿画像読取装置やスキャナユニットなどの画像読取部の支持方法について、画像読取部の右または左側の支持を片持ち形状の支持部材で保持している構成が開示されている。
【0004】
特許文献3の段落「0024」および図3には、画像読取ユニット(スキャナ)の上下方向の高さを調整可能とするように、長孔のねじ挿通孔(44)が形成された第1取付部材(40)が示されていて、ねじ挿通孔(44)にビス(46)をねじ込んで画像読取ユニットの上下方向の位置を決めている(段落「0026」参照)。スキャナを理想の位置に調整できるように調整板を持っていること、そしてその調整板を通常のネジにより完全固定していて、固定した後は動かない構成である。
【0005】
特許文献4の段落「0019」には、位置調整・固定部品として段付きネジを調整機構(装置本体側の構造体(B)への前方定着ガイド板(4)の位置を調整して固定する方法)に使用するとともに、前方定着ガイド板を固定する固定用の穴を多数持ち(図5、図8〜図11)、どの穴を使用するかによって前方定着ガイド板の位置を決め、その前方定着ガイド板を段付きネジで完全固定してもよいことが記載されている。通常のネジであればネジ形成部(螺合部)の表面がギザギザ(ネジが切られているため)で、ネジ直径も精度も安定しないが、段付きネジの頭部を除く非ネジ部であるフラット部(頭部およびネジ部以外の円柱表面)の直径は高精度で製作可能であるため、上記ような前方定着ガイド板の固定に段付きネジを使えば、より高精度に前方定着ガイド板を固定することができるというものである。すなわち、前方定着ガイド板のネジ穴を高精度に作っても固定用のネジが通常のネジだと高精度ではないため、前方定着ガイド板のネジ穴とネジとの間にガタができ、高精度の固定はできないというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献記載の技術を含め、従来における片持ち形状の支持部材を有する画像形成装置では、その使用者が装置本体の正面側(胴内排紙部の記録紙等取り出し開口部側)に対応した画像読取部(スキャナ)や操作部などに手やひじなどを突いたような場合、支持部材がその荷重を受けることで撓んでしまうとともに、これによる影響で画像読取部も撓むことによって生じるスキュー画像を防止すべく、支持部材に対して過剰な強度を持たせなければならないという問題は依然として解消されていない。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、画像形成装置の使用者等の荷重を支持部材が受けても、その荷重が直接的に画像読取部に影響しない構成とすることにより、スキュー画像を未然に防ぎ、安定した画像を得られるとともに、支持部材の強度を従来よりも低減することのできる画像形成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、原稿の画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部で読み取られた画像をシートに記録する画像形成部と、前記画像読取部と前記画像形成部との間に画像が記録されたシートを排出する空間を形成するとともに、排出されたシートを取り出すための開口部を装置本体の正面およびこれと隣り合う側面に形成されたシート排出部と、前記シート排出部の前記側面が開放するように、略鉛直上方向に立ち上がって延設され前記装置本体側の構造体に固定される延設部と、該延設部に対して略直角をなすように前記正面側に向けて延び、該正面側が鉛直下方向に変位可能なように前記画像読取部の下面を載置する載置部を備えた水平部とが略L字状に形成された支持部材と、前記支持部材に固定され、前記画像読取部における上面の上縁部分と隙間を開けて前記上縁部分ならびに前記支持部材の上部および側面部を覆う外装カバー部材とを有し、前記支持部材の前記正面側に対応した前記外装カバー部材上に前記鉛直下方向の荷重を受けたとき、前記外装カバー部材とともに前記支持部材の前記正面側のみが前記鉛直下方向に変位する構成としたことを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記支持部材の前記正面側は、前記画像読取部が前記載置部に載置された状態において前記鉛直下方向に変位可能に、前記支持部材と前記画像読取部とが段付きネジで締結されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置において、前記段付きネジで締結される前記支持部材の締結部には、鉛直上下方向に沿って長穴が形成されており、前記長穴における前記鉛直上下方向と直交する短径が、前記段付きネジにおける頭部を除く非ネジ部の直径より十分に大きいことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の画像形成装置において、前記長穴は、前記支持部材の前記構造体への組付け主基準を中心とした円弧と同じ曲率を持つ形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記課題を解決して新規な画像形成装置を実現し提供することができる。請求項ごとの効果を挙げれば次のとおりである。
本発明によれば、前記構成により、画像形成装置の使用者等の荷重を支持部材が受けても、その荷重が直接的に画像読取部に影響しないので、スキュー画像を未然に防ぐことができ、安定した画像が得られるとともに、支持部材の強度を従来よりも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す画像形成装置全体の外観斜視図である。
【図2】画像形成装置から外装カバーを取り外した、画像読取部、装置本体側構造体の概略形状を示す斜視図である。
【図3】(a),(b)は、左スキャナ支持部材の左フレームに対する取付け方法を示す要部の斜視図である。
【図4】図3(a)のS4−S4断面図である。
【図5】画像読取部の左・右スキャナ支持部材への取り付け・載置状態を示す分解斜視図である。
【図6】画像読取部と右スキャナ支持部材との取り付け・固定状態を示す要部の斜視図である。
【図7】画像読取部と左スキャナ支持部材との取り付け方法を説明する要部の斜視図である。
【図8】左カバー、左スキャナ支持部材、画像読取部の取り付け関係を示す要部の断面図である。
【図9】(a),(b)は、前ブラケットを介しての段付きネジによる左スキャナ支持部材と画像読取部との締結前後の状態を示す図7のS9−S9断面図である。
【図10】左カバーを介して左スキャナ支持部材の左前方に負荷される荷重による変形を説明する図である。
【図11】(a),(b)は、図10における左スキャナ支持部材の長穴と段付きネジのフラット部との関係を説明する図である。
【図12】変形例における左スキャナ支持部材の長穴と段付きネジのフラット部との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施形態を詳細に説明する。同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。
【0015】
図1〜図9を参照して、本発明の一実施形態を説明する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置100の全体の構成を説明する。画像形成装置100は、例えば電子写真方式の複写機である。
画像形成装置100は、原稿(図示せず)の画像を読み取る画像読取部1と、画像読取部1で読み取られた画像をシート状記録媒体の一例としての転写紙(図示せず)に記録する画像形成部2A、および前記転写紙を画像形成部2Aに給送するシート給送部としての給紙部2Bを含むプリンタ部2と、画像読取部1と画像形成部2Aとの間に画像が記録された転写紙を排出するシート排出空間(以下、「空間」という)3aを形成するとともに、排出された転写紙を取り出すための開口部3bを装置本体の正面およびこれと隣り合う側面に形成されたシート排出部としての排紙部3とを有する。
ここで、「装置本体の正面」とは、図1において画像形成装置100の手前側に配置された操作部(操作パネル)15側を指し、「装置本体の正面と隣り合う側面」とは、図1において画像形成装置100の左側を指す。図1において、Zは鉛直上下方向を示す。
【0016】
画像形成装置100を構成する画像読取部1、プリンタ部2(画像形成部2A、給紙部2B)、排紙部3の具体的構成および動作例としては、例えば特許文献2(特許第3621259号公報)の段落「0024」〜「0029」等に記載され、図7に例示されている内容とほぼ同様であるため、その説明を省略する。
画像形成部2Aにおいて電子写真方式を用いて顕像化され画像が形成された転写紙は、画像読取部1と画像形成部2Aとの間の空間3aに設けられたシート積載部としての排紙トレイ3cに、図中太矢印で示す排紙方向Xに排出・積載される。
【0017】
画像読取部1の上部には、図1の平面視で矩形状をなすコンタクトガラス1aが配設されていて、画像読取部1の上面はコンタクトガラス1a外表面となっている。画像読取部1の下部には、画像読取部1の構造体(骨組み)をなすとともに後述する載置部に載置されるフレーム(図示せず)が配設されていて、画像読取部1の下面は前記フレーム下面となっている。
画像読取部1には、外装カバー部材としての、左カバー20、前カバー21、後カバー22、右カバー23が取り付けられている。これらのカバー20〜23によって、画像読取部1の上部上面に配置された矩形状をなすコンタクトガラス1aの四囲上縁部分およびこれら周囲部が覆われている。左カバー20の画像読取部1に対する取り付け関係は、図8を参照して後述する。
装置本体側の後述する構造体を構成するフレーム、各側板等も外装カバー部材(以下、「本体カバー」という)で覆われているが、その説明を省略する。各カバー20〜23および本体カバーは、それぞれ適宜の樹脂で一体的に形成されている。
【0018】
図2は、画像形成装置100の前記した各カバー20〜23および本体カバーを取り外した構造体の概略形状を示している。
図2において、右側が装置本体の正面側である。構造体は、本体ベース6を基台として、この本体ベース6上に後側板4と前側板11とが立設した状態で図示しないネジを介して取り付け固定されている。本体ベース6の上方の後側板4と前側板11との間には、ステー部材13が図示しないネジで取り付け固定されていて、前・後側板4、11間の距離が所定の距離に維持されている。
【0019】
また、後側板4の左側後方には左フレーム5が、後側板4の右側後方には右フレーム14が、それぞれ図示しないネジで後側板4に取り付け固定されている。左フレーム5には、略L字形状をなす支持部材としての左スキャナ支持部材8が後述する特有の取り付け状態で設けられている。前側板11と後側板4の右側上部には、右スキャナ支持部材7が設けられていて、この右スキャナ支持部材7は前側板11と後側板4とに固定されている。
前記した本体ベース6、後側板4、前側板11、ステー部材13、左フレーム5、右フレーム14は、前記構造体を構成していて、それぞれ鋼板等の薄い板金で一体的に形成されている。左スキャナ支持部材8および右スキャナ支持部材7も、それぞれ鋼板等の薄い板金で一体的に形成されている。後述する図5に示す前ブラケット9および後ブラケット10も、鋼板等の板金で一体的に形成されている。
【0020】
図3(a),(b)、図4を参照して、左スキャナ支持部材8(以下、「支持部材8」ともいう)の左フレーム5に対する取付け方法を説明する。図3(a),(b)に示すように、支持部材8は、左フレーム5に対する取り付け状態で倒立した略L字形状をなしている。支持部材8には、その上下に形成されたバーリング穴8a,8bと、バーリング穴8a,8bの間に形成された上下に長い3箇所の長穴8dとが設けられている。支持部材8のバーリング穴8a,8bが、これらバーリング穴8a,8bに対応して左フレーム5の上下に形成された穴5a,5bにそれぞれ嵌合する(図4参照)ことで、前記構造体側の左フレーム5に対する支持部材8の位置決めが行われると共に、支持部材8は支持部材8の3箇所の長穴8dに対応して左フレーム5に形成された上下3箇所の長穴8dにネジを介して左フレーム5に取り付け固定される。
図4は、図3(a)における支持部材8のバーリング穴8aと、左フレーム5の穴5aとの嵌合状態を示すS4−S4断面図である。
【0021】
図5〜図7を参照して、プリンタ部2の構造体と画像読取部1との取り付け・接合方法を説明する。図5において、左側が装置本体の正面側である。図5における紙面前側の上部左右(図5では省略されている前側板11、後側板4および右フレーム14、図2参照)には、前述した右スキャナ支持部材7(以下、「支持部材7」ともいう)が固設され、図5における紙面奥側の上部左右(図5では省略されている左フレーム5、図2参照)には、前述した支持部材8が固設されている。支持部材7には、画像読取部1のフレーム(図示せず)に固定するための切り曲げ部7a,7bが一体形成されている。これらの切り曲げ部7a,7bは、画像読取部1を取り付ける際に、画像読取部1のフレーム下面(図示せず)を載置する支持部材7の上面載置部7cから切り曲げられて形成されている。
【0022】
図5に示すように、支持部材8には、画像読取部1のフレーム下面(図示せず)を受けて載置する載置部としての前ブラケット9と後ブラケット10とが固設されている。支持部材8と前ブラケット9とは、図7に示す固定ネジ17によって3箇所で取り付け・固定されている。支持部材8と後ブラケット10とは、図7に示すようにネジによって取り付け・固定されている。
図5〜図7に示すように、前ブラケット9には画像読取部1のフレーム下面(図示せず)を受けて載置する上面載置部9bが、後ブラケット10には画像読取部1のフレーム下面(図示せず)を受けて載置する上面載置部10aがそれぞれ形成されている。
【0023】
上述したとおり、支持部材8は、図2および図3等に示すように、図1において排紙部3(シート排出部)の側面が開放するように、略鉛直上方向に立ち上がって延設され装置本体側の構造体に固定される延設部8Aと、該延設部8Aに対して略直角をなすように装置本体の正面側に向けて延び、該正面側が鉛直下方向に変位可能なように画像読取部1の下面1cを載置する載置部(前ブラケット9の上面載置部9b、後ブラケット10の上面載置部10a)を備えた水平部8Bとが形成されていて、略L字状をなしている。
【0024】
画像読取部1を支持部材7と支持部材8とに取り付けるには、図5に示すように、画像読取部1を上方から支持部材7の上面載置部7cと、支持部材8に固設されている後ブラケット10の上面載置部10aと、支持部材8に固設されている前ブラケット9の上面載置部9bとに載せられ、その後、ネジ12によって紙面奥右側1点(後ブラケット10側、図2参照)、紙面手前側左右2点(切り曲げ部7a,7b、図6参照)の合計3点の部位を固定される(図2、図6参照)。
そして、図7に示すように、支持部材8の同図において右側部(装置本体の正面側)は、段付きネジ16によって、後述するように支持部材8が鉛直下方向に変位可能に、支持部材8と画像読取部1とが取り付けられている。
【0025】
ここで、図8を参照して、左カバー20と画像読取部1および支持部材8との取り付け関係を説明する。左カバー20は、図8に示す断面図のとおり、画像読取部1における上面1bの上縁部分と所定の隙間C2を開けて上面1bの上縁部分、支持部材8の上部および側面部を覆うように、固定ネジ18を用いて2箇所(図1参照)で支持部材8に取り付け・固定されている。このように、左カバー20は、画像読取部1に対して直接締結・固定されておらず、画像読取部1に対して鉛直下方向に所定の隙間C2だけ画像読取部1の上面1bに干渉することなく変位可能に取り付けられている。所定の隙間C2は、後述する図9〜図11で詳述するように、従来技術の支持部材よりも強度低減した支持部材8の撓みによる変位分に見合うように、例えば0.1mm〜5.0mm程度に設定される。
【0026】
説明が前後するが、図9〜図11を参照して、本実施形態に特有の段付きネジ16の使用方法による支持部材8と画像読取部1との取り付け関係を詳述する。図9は、図2および図7における右正面(図2の構造体に対する左前方)側における支持部材8と画像読取部1との段付きネジ16による固定状態を明示する図7のS9−S9断面図である。
図9(a),(b)に示すように、段付きネジ16は、支持部材8に形成された長穴8cと前ブラケット9に形成された長穴9a(図5参照)を通り、画像読取部1の構造体であるフレーム1dの雌ネジに螺合することで固定される。その際、長穴8cおよび長穴9aにおける鉛直・上下方向と直交する短径Dは、段付きネジ16のフラット部16a(頭部を除く非ネジ部の平滑な円柱部分を指す)の直径φdよりも十分に大きい形状(D>φd)となっている。よって、支持部材8は、画像読取部1に対して、上下方向でフリーな状態で画像読取部1に締結されている。
この状態であれば、図1において、画像読取部1の左前方に画像形成装置100の使用者が腕やひじなどで荷重Pをかけた場合でも、図8に示す左カバー1aを介して支持部材8が撓むだけで直接画像読取部1に荷重がかからないので、画像読取部1の変形等により生じる先端スキューなどの異常画像が発生することがない。なお、画像読取部1の構造体が自重で撓まないような強度を持っていることは言うまでもない。
【0027】
左カバー1aを介して支持部材8の左前方に負荷される荷重Pによる変形をより詳細に述べると、図10に示すような変形となる。すなわち、支持部材8は、図4に示したように、バーリング穴8aが左フレーム5の穴5aに嵌合している状態で固定されているため、バーリング穴8aを中心にして撓み方向Aに撓み変形する。その際、図11(b)に示すように、支持部材8の先端部にある長穴8cの短径Dが段付きネジ16のフラット部16aの直径φdより0.1mm程度大きい形状となっていると(D≧φdのような状態)、支持部材8の撓み方向Aは前記バーリング嵌合部を中心とした円弧方向であるが、長穴8cは鉛直・上下方向Zに長いため、お互いに干渉して、荷重Pによる支持部材8の撓みが画像読取部1に影響してしまい、画像読取部1の構造体(フレーム)が変形し、スキュー画像となってしまう。
よって、図11(b)に示すように、長穴8cの短径Dが段付きネジ16のフラット部16aの直径φdよりも十分に大きい(0.2mm程度大きい)形状となっていれば、上記のような長穴8cと段付きネジ16のフラット部16aとの干渉もないので、支持部材8の撓みが画像読取部1へ影響することもない。
なお、図9(b)に示すように、段付きネジ16のフラット部16aの長さは、スライド部材の案内やストッパ部材等として通常使用されている段付きネジと同様に、支持部材8の厚みと前ブラケット9の厚みとのトータルの厚み寸法よりも若干長く形成されていて、画像読取部1を段付きネジ16で固定したときに若干の隙間C1が形成されるように設定されていることが好ましい。
【0028】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、画像形成装置100の使用者等の荷重Pを支持部材8が受けても、その荷重Pが直接的に画像読取部1に影響しないので、スキュー画像を未然に防ぐことができ、安定した画像が得られるとともに、支持部材8の強度を従来よりも低減することができるので、支持部材8を安価に形成できる。
また、段付きネジ16により画像読取部1と段付きネジ16との間を支持部材8が摺動可能になっていることで、画像読取部1と支持部材8とが前後左右には固定状態であるが鉛直上下方向には移動可能状態で、完全には固定されていないので、画像形成装置100の使用者がかける荷重Pで支持部材8は撓むが、その撓みが直接画像読取部1に影響しないので、スキュー画像を防ぎ、安定したコピー画像を提供できる(請求項2)。
他の効果として、段付きネジ16の直径に対し支持部材8の長穴8cが大きいため、両者のガタが大きい状態である。よって、画像形成装置100の使用者がかける荷重Pで支持部材8が変形しても段付きネジ16と長穴8cとが接しないので、より効率的に画像読取部1に荷重の影響を与えないようにすることができる(請求項3)。
【0029】
上記の実施形態の技術内容から直ちに以下の上位概念的な実施形態を導くことができる。上記の実施形態例は現状実施されている従来技術に対する改良例として説明したものであり、実施されている従来技術内容は支持部材8の長穴を位置調整用として用い、通常のネジで前ブラケット9を介して支持部材8と画像読取部1とを完全固定しているものであった。
上記の実施形態では特有の段付きネジ16は撓み方向Aに変位する支持部材8の案内部材としての機能を果たすものでないとみなせるから、支持部材8の長穴8cである必要はなく、段付きネジ16を単に逃げるような形状(例えば段付きネジ16よりも十分に大きい逃げ穴等)であっても良いし、また段付きネジ16で前ブラケット9を介して支持部材8と画像読取部1とを固定している機能は支持部材8の画像読取部1からの横方向への単なる浮き止めとしての機能しか果たしていないものとみなせる。
【0030】
従って、支持部材の正面側に対応した外装カバー部材上に鉛直下方向の荷重を受けたとき、外装カバー部材とともに支持部材の正面側のみが鉛直下方向に変位する構成であれば良いと言える(請求項1)。
このような実施形態によれば、画像形成装置の使用者等の荷重を支持部材が受けても、その荷重が直接的に画像読取部に影響しないので、スキュー画像を未然に防ぐことができ、安定した画像が得られるとともに、支持部材の強度を従来よりも低減することができるので、支持部材を安価に形成できる(請求項1)。
【0031】
図12を参照して、本実施形態の変形例を説明する。
図12に示す変形例は、上述した実施形態の支持部材8の8cに代えて、長穴8dを形成したことのみ相違する。すなわち、同図に示すように、支持部材8の長穴8dの形状が支持部材8の構造体への組付け主基準を中心とした円弧である支持部材8の撓み方向Aと同じ曲率を持つ形状となっている。このような形状であれば、支持部材8の撓み方向Aと長穴8dの形状が一致しているため、長穴8dの短径Dがネジ16のフラット部16aの直径φdより0.1mm程度大きいぐらいの関係でも、長穴8dと段付きネジ16のフラット部16aとの干渉もないので、支持部材8の撓みが画像読取部1へ影響することもない。
従って、本変形例によれば、長穴8dの形状が支持部材8の構造体への組付け主基準を中心にした円弧と同じ曲率を持つ形状であるため、画像形成装置100の使用者がかける荷重Pで支持部材8が変形しても段付きネジ16と長穴8dが接しないので、より効率的に画像読取部1に荷重Pの影響を与えないようにすることができる(請求項4)。
【0032】
以上説明したとおり、本発明を特定の実施形態や変形例等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態や変形例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1 画像読取部
1b 画像読取部の上面
1c 画像読取部の下面
2 プリンタ部
2A 画像形成部
3 排紙部(シート排出部)
3a 空間
3b 開口部
4 後側板(構造体)
5 左フレーム(構造体)
6 本体ベース(構造体)
7 右スキャナ支持部材
8 左スキャナ支持部材(支持部材)
8c,8d 長穴
9a 長穴
9b 前ブラケットの上面載置部(支持部材の載置部)
10a 後ブラケットの上面載置部(支持部材の載置部)
12 ネジ
16 段付きネジ
17,18 固定ネジ
20 左カバー(外装カバー部材)
100 画像形成装置
A 撓み方向
X 排紙方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2005−258303号公報
【特許文献2】特許第3621259号公報
【特許文献3】特許第3774611号公報
【特許文献4】特開2008−46154号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部で読み取られた画像をシートに記録する画像形成部と、
前記画像読取部と前記画像形成部との間に画像が記録されたシートを排出する空間を形成するとともに、排出されたシートを取り出すための開口部を装置本体の正面およびこれと隣り合う側面に形成されたシート排出部と、
前記シート排出部の前記側面が開放するように、略鉛直上方向に立ち上がって延設され前記装置本体側の構造体に固定される延設部と、該延設部に対して略直角をなすように前記正面側に向けて延び、該正面側が鉛直下方向に変位可能なように前記画像読取部の下面を載置する載置部を備えた水平部とが略L字状に形成された支持部材と、
前記支持部材に固定され、前記画像読取部における上面の上縁部分と隙間を開けて前記上縁部分ならびに前記支持部材の上部および側面部を覆う外装カバー部材と、
を有し、
前記支持部材の前記正面側に対応した前記外装カバー部材上に前記鉛直下方向の荷重を受けたとき、前記外装カバー部材とともに前記支持部材の前記正面側のみが前記鉛直下方向に変位する構成としたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記支持部材の前記正面側は、前記画像読取部が前記載置部に載置された状態において前記鉛直下方向に変位可能に、前記支持部材と前記画像読取部とが段付きネジで締結されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記段付きネジで締結される前記支持部材の締結部には、鉛直上下方向に沿って長穴が形成されており、
前記長穴における前記鉛直上下方向と直交する短径が、前記段付きネジにおける頭部を除く非ネジ部の直径より十分に大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置において、
前記長穴は、前記支持部材の前記構造体への組付け主基準を中心とした円弧と同じ曲率を持つ形状であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−112772(P2011−112772A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267560(P2009−267560)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】