説明

画像形成装置

【課題】ベルト部材に偏りが発生した際に、偏り量を速やかに相殺して、偏り量が小さい状態で安定してベルト部材を走行させることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ステアリングローラ22の上流側にスリップローラ25を配置して制動機構55により制動/制動解除可能に構成する。中間転写ベルト20偏りを修正する過程で偏り量が大きい段階では、スリップローラ25を回転ロックさせて中間転写ベルト20の摺動状態でステアリングローラ22による寄り制御を行うことで傾動角に対する応答性を高める。そして、偏り量が所定値に収束した段階でスリップローラ25による中間転写ベルト20の制動を解除して中間転写ベルト20に従動回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングローラを傾動させてベルト部材の走行の偏りを修正する画像形成装置、詳しくはベルト部材の偏り量を速やかに収束させる制御に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルト又は記録材搬送ベルトに沿って現像色の異なる複数の画像形成部を配列したタンデム型フルカラー画像形成装置が広く用いられている。また、転写ベルトに担持させた記録材へ感光体からトナー像を転写するモノクロ高速プリンタも広く用いられている。定着ローラ/加圧ベルト、定着ベルト/加圧ローラ、又は定着ベルト/加圧ベルトの組み合わせで、トナー像を担持した記録材の加熱ニップを形成する定着装置等を備えた画像形成装置も実用化されている。
【0003】
これらのベルト部材は、複数の支持回転体に掛け渡して支持されており、形成される画像への悪影響を避けるために、支持回転体の長手方向の一定の位置で、偏りなく安定して回転し続けることが望まれる。しかし、画像形成装置のベルト部材は、支持回転体の配置誤差や運転中の当接状態の変化等によって支持回転体の長手方向に移動して偏ってしまうことがある。そのため、検出した偏り量に応じてステアリングローラを傾動させて、ベルト部材の走行の偏りを能動的に相殺するステアリング機構を備えた画像形成装置が実用化されている(特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1には、ステアリング機構を備えた中間転写ベルトが示される。ここでは、ステアリングローラの傾動によるベルト部材の傾きが画像形成部に影響しないように、ステアリングローラと画像形成部との間に支持回転体(25:図1)が配置されている。そして、ベルトエッジセンサの出力変動を取り除いてステアリング機構を作動させることで、ベルトエッジの乱れたベルト部材でもその偏りを安定して収束させている。
【0005】
特許文献2には、ステアリング機構を備えた中間転写ベルトが示される。ここでは、特許文献1の支持回転体(25:図1)を「ベルト部材の回転方向を拘束しない支持部材」に置き換えることで、ステアリングローラの傾動に対するベルト部材の移動の応答性を特許文献1よりも高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−295948号公報
【特許文献2】特開2004−359438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、画像形成装置のベルト部材は、起動/停止/速度切り替えや運転中の他部材の当接状態の変化によって支持回転体の長手方向に移動して走行の偏りが発生する。このような場合、検出したベルト部材の偏り量に応じた傾動量をステアリングローラに設定して、偏りを相殺する方向へベルト部材を移動させる。
【0008】
しかし、このとき、特許文献1に示されるステアリング機構では、ステアリングローラと画像形成部との間に配置された支持回転体(25:図1)がベルト部材の移動の応答性を低下させていることが判明した。
【0009】
一方、特許文献2に示されるステアリング機構では、ステアリングローラと画像形成部との間に配置された支持部材がベルト部材の移動方向を束縛しないため、ベルト部材の移動の応答性は高まる。しかし、応答性が高まった分、ベルト部材がステアリング動作に過剰反応して制御が発散し易くなり、定常状態での走行の安定性にも欠けることが判明した。
【0010】
本発明は、ベルト部材に偏りが発生した際に、偏り量を速やかに相殺して、偏り量が小さい状態で安定してベルト部材を走行させることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置は、ベルト部材と、回転する前記ベルト部材の偏りを検出する検出手段と、傾動して前記ベルト部材の偏りを修正可能なステアリングローラと、前記検出手段の出力に基づいて前記ステアリングローラの傾動を制御するステアリングローラ制御手段とを備えたものである。そして、前記ステアリングローラと並列に前記ベルト部材を支持するとともに、前記ベルト部材との周速度差を変更可能なスリップローラと、前記ステアリングローラ制御手段が前記ベルト部材の偏りを収束させていく過程で前記周速度差を小さくするように前記スリップローラを制御するスリップローラ制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像形成装置は、ベルト部材の偏りを修正する過程で偏り量が大きい段階では、スリップローラによるベルト部材の回転方向の拘束を少なくして、ステアリングローラの傾動に対するベルト部材の移動の応答性を高める。従って、ステアリングローラの傾動量が小さくても大きな偏り量を速やかに縮小させることができる。
【0013】
そして、偏り量が小さくなった段階でスリップローラによるベルト部材の回転方向の拘束を大きくして、ステアリングローラの傾動に対するベルト部材の移動の応答性を低下させる。図10に示すように、スリップローラによるベルト部材の回転方向の拘束によって偏りの変動が長周期化し、偏り量の収束状態が安定的に維持される。
【0014】
従って、ベルト部材に偏りが発生した際に、偏り量を速やかに相殺して、偏り量が小さい状態で安定してベルト部材を走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】画像形成部と二次転写部の構成の説明図である。
【図3】中間転写ベルトのステアリング制御機構の説明図である。
【図4】ステアリングローラの動作の説明図である。
【図5】エッジセンサの動作の説明図である。
【図6】ステアリングモータの制御の説明図である。
【図7】スリップローラを停止させた際と回転させた際の寄り速度の比較図である。
【図8】スリップローラを停止させた際と回転させた際の蛇行量の比較図である。
【図9】実施例1で用いる制動機構の説明図である。
【図10】実施例1の制御のフローチャートである。
【図11】実施例1のステアリング制御の説明図である。
【図12】偏り量の変化の説明図である。
【図13】実施例2で用いる制動機構の説明図である。
【図14】実施例3の画像形成装置の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、ステアリングローラに近接して回転速度可変の支持ローラが配置される限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0017】
従って、ベルト部材を用いて画像形成を行う画像形成装置であれば、中間転写ベルト、記録材搬送ベルト、転写ベルト、定着ベルトの区別無く、それらのステアリング機構として実施できる。また、ステアリング制御されるベルト部材を用いる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/記録材搬送型の区別無く実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0018】
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0019】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図2は画像形成部と二次転写部の構成の説明図である。
【0020】
図1の(a)に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト20に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部10Y、10M、10C、10Bkを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0021】
画像形成部10Yでは、感光ドラム11Yにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト20に一次転写される。画像形成部10Mでは、感光ドラム11Mにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト20上のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部10C、10Bkでは、それぞれ感光ドラム11C、11Bkにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて同様に中間転写ベルト20上に順次重ねて一次転写される。
【0022】
中間転写ベルト20に担持された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。四色のフルカラートナー像を二次転写された記録材Pは、中間転写ベルト20から曲率分離して搬送ベルト43に受け渡され、搬送ベルト43に搬送されて定着装置44へ送り込まれる。定着装置44は、記録材Pを加熱加圧して表面にトナー像を定着させる。その後、記録材Pが排出トレイ45へ排出される。
【0023】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、現像装置14Y、14M、14C、14Kで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。以下では、イエローの画像形成部10Yについて説明し、他の画像形成部10M、10C、10Bkについては、説明中の構成部材に付した符号の末尾のYをM、C、Bkに読み替えて説明されるものとする。
【0024】
図2の(a)に示すように、画像形成部10Yは、感光ドラム11Yの周囲に、コロナ帯電器13Y、露光装置12Y、現像装置14Y、一次転写ローラ17Y、ドラムクリーニング装置15Yを配置している。
【0025】
感光ドラム11Yは、帯電極性が負極性の感光層をアルミニウムシリンダの表面に形成され、所定のプロセススピードで矢印R1方向に回転する。コロナ帯電器13Yは、コロナ放電に伴う荷電粒子を照射して感光ドラム11Yの表面を、負極性の暗部電位VDに帯電させる。露光装置12Yは、イエローの分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、感光ドラム11Yの表面に画像の静電像を書き込む。
【0026】
現像装置14Yは、トナーとキャリアを含む現像剤を帯電させて、回転する現像スリーブ14sに担持させ、感光ドラム11Yとの対向部へ搬送して磁気ブラシ状態で感光ドラム11Yの静電像を摺擦させる。直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を現像スリーブに印加することで、負極性に帯電したトナーが相対的に正極性になった感光ドラム11Yの表面部分へ移転して静電像が反転現像される。
【0027】
一次転写ローラ17Yは、中間転写ベルト20の内側面を押圧して感光ドラム11Yと中間転写ベルト20の間に一次転写部TYを形成する。一次転写ローラ17Yに正極性の電圧を印加することで、感光ドラム11Yに担持されたトナー像が中間転写ベルト20へ一次転写される。
【0028】
ドラムクリーニング装置15Yは、感光ドラム11Yにクリーニングブレードを摺擦させて、中間転写ベルト20への一次転写を逃れて感光ドラム11Yに残った転写残トナーを回収する。
【0029】
図2の(b)に示すように、二次転写ローラ30は、対向ローラ23によって内側面を支持された中間転写ベルト20に当接して二次転写部T2を形成する。図1に示すように、記録材カセット40からピックアップローラ41によって引き出された記録材Pは、分離ローラ46で1枚ずつに分離して、レジストローラ42へ送り出される。レジストローラ42は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト20のトナー像にタイミングを合わせて二次転写部T2へ記録材Pを送り出す。
【0030】
トナー像と重ねて記録材Pが二次転写部T2を挟持搬送される過程で、二次転写ローラ30に正極性の直流電圧が印加されることにより、フルカラートナー像が中間転写ベルト20から記録材Pへ二次転写される。転写されずに中間転写ベルト20の表面に残った転写残トナーは、ベルトクリーニング装置26によって回収される。
【0031】
<中間転写ベルト>
中間転写ベルト20は、無端状に形成されるとともに、駆動ローラ21、対向ローラ23、ステアリングローラ22、テンションローラ24、及びスリップローラ(張架ローラ)25に掛け渡して支持されて矢印R2方向に回転する。中間転写ベルト20は、ポリイミド系樹脂で構成され、厚さ60〜90μmの薄膜フィルムシートの両端を互いに溶着して無端状に形成されている。
【0032】
図2の(b)に示すように、二次転写ローラ30は、中間転写ベルト20に対して接離自在に構成され、中間転写ベルト20に当接した動作位置(実線位置)と離間した退避位置(破線位置)とを取り得る。中間転写ベルト20の回転が停止している間は、二次転写ローラ30を退避位置に移動させて二次転写ローラ30の弾性層30bの永久変形を回避している。中間転写ベルト20の回転開始後、二次転写ローラ30が中間転写ベルト20に当接して二次転写部T2を構成する。
【0033】
図2の(a)に示すように、一次転写ローラ17Y(17M、17C)は、中間転写ベルト20に対して接離自在に構成されている。一次転写ローラ17Yは、上昇して中間転写ベルト20を感光ドラム11Yに当接させる動作位置(実線位置)と、下降して中間転写ベルト20を感光ドラム11Yから離間させる退避位置(破線位置)とを取り得る。
【0034】
図1の(b)に示すように、画像形成装置100は、上述したフルカラーモードの他に、画像形成部10Bkのみを作動させてモノクロ画像を出力するブラック単色モードを実行可能である。ブラック単色モードでは、プリントジョブ中、接離機構18が一次転写ローラ17Y、17M、17Cを中間転写ベルト20から退避させて、不必要な電力消費や感光ドラム11Y、11M、11Cの摩耗を回避している。
【0035】
また、画像形成装置100の主電源が投入されてプリントジョブの開始を待っているプリント待機状態でも、ブラック単色モードに対応させて、接離機構18が一次転写ローラ17Y、17M、17Cを退避位置へ移動させている。中間転写ベルト20の回転を停止させ、一次転写ローラ17Y、17M、17Cを退避位置に移動させて、中間転写ベルト20から離間させている。
【0036】
フルカラーモードのプリントジョブを開始する際には、一次転写ローラ17Y、17M、17Cが退避位置から上昇して動作位置へ移動する。フルカラーモードは、ブラック単色モードに比べて画像処理に時間を要するので、その処理時間を利用して一次転写ローラ17Y、17M、17Cを上昇させることで、プリントジョブの開始待ち時間が目立たせない。フルカラーモードの場合、先ず、中間転写ベルト20の回転を開始した後に、退避位置に移動していた二次転写ローラ30が当接位置へ移動する。続いて、退避位置に移動していた一次転写ローラ17Y、17M、17Cが当接位置へ移動し、ブラックの一次転写ローラ17Bkを含む総ての一次転写ローラが感光ドラム11Y、11M、11C、11Bkとの間に中間転写ベルト20を挟み込む。
【0037】
これに対して、ブラックの画像形成部10Bkの一次転写ローラ17Bkは、昇降せず、常に中間転写ベルト20と接しており、直ぐにブラック単色モードのプリントジョブを開始可能となっている。画像形成部10Bkのみがトナー像を中間転写ベルト20に一次転写できる状態にあり、ブラック単色モードの場合、一次転写ローラ17Y、17M、17Cを退避位置にした状態でプリントジョブを実行する。ブラック単色モードの場合、先ず、中間転写ベルト20の回転を開始した後に、退避位置に下降していた二次転写ローラ30を上昇させて動作位置へ復帰させる。
【0038】
<ステアリング機構>
フルカラー画像を形成する画像形成装置においては、画像情報に応じて像担持体に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各トナー像を記録材上に重ね合わせて転写することが必要とされる。記録材上で各色のトナー像を重ねる方式としては、無端状の記録材搬送ベルトに記録材を静電吸着させ、記録材搬送ベルトの回動に伴って搬送される記録材に対して像担持体から各色のトナー像を順次転写するものがある。また、各色トナー像を像担持体から記録材へ直接転写せず、無端状の中間転写ベルトへ一次転写した後に記録材へ二次転写するものもある。
【0039】
中間転写ベルトを用いる後者の方式は、中間転写ベルト上で各色トナー像の重ね合わせを行うので、湿度変化に伴う記録材の抵抗値変動の影響を受けることなく複数色のトナー像を重ね合わせできる。また、記録材に対しては、前者の場合と比較して、カラー画像を形成する際のトナー像の転写条件の制御が容易となる他、記録材の搬送も簡易なものとなり、記録材のジャムの発生を可及的に防止することができる。
【0040】
記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトを用いる場合、色ずれの無い高品位なカラー記録画像を形成するためには、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトが一定の位置で回転して幅方向に偏らないことが重要である。しかし、ベルト部材や搬送ローラの径には成形誤差があり、ベルト部材を掛け渡す複数の搬送ローラ等にも組み立て誤差があり、画像形成装置の設置に伴って装置フレームの歪みも発生する。このため、一般的に、無端状のベルト部材を駆動ローラ及び従動ローラを含む複数の搬送ローラに架け回して回転させると、ベルト部材には搬送ローラの長手方向の一方へ寄り力が作用する。そして、ベルト部材は、安定的な回転位置を求めて搬送ローラの長手方向、すなわちベルト部材の幅方向へ移動して偏りを発生してしまう。
【0041】
このため、ベルト部材を架け回した搬送ローラの1本を自在に傾動し得るステアリングローラとして構成し、かかるステアリングローラの傾動量を制御することによってベルト部材の偏りを押さえ込むステアリング方式が実用化されている。
【0042】
ステアリング方式の最も簡易な構成は、画像形成装置の組立完了時や設置時に、上述した固定的な要因による偏りを相殺するように、ステアリングローラの傾動量を固定値で設定するものである。ステアリングローラに固定値の傾動量を与えて、固定的な要因による寄り力と反対方向の寄り力を作用させて釣り合い状態となれば、以降は新たな寄り力が発生しない限り、ベルト部材は偏ることなく安定的に回転する。
【0043】
しかし、記録材搬送ベルトや中間転写ベルトには、画像形成プロセスの実行中、転写部材、クリーニング部材、記録材等がベルト部材に対する接触状態を変化させるため、新たな寄り力が発生してベルト部材が偏ってしまう。このため、固定値の傾動量では、ベルト部材の幅方向への移動を押さえ込むことができない。
【0044】
そこで、ベルト部材の偏りを常時検出し、検出結果に基づいてステアリングローラの傾動量を刻々と変換させるアクティブ・ステアリング方式が実用化されている。具体的には、ベルトエッジセンサを設けてベルト部材の幅方向の移動量を検出し、検出結果に基づいてステアリングローラの傾動量を設定する。これによって、回転するベルト部材の幅方向の移動を抑えると共に修正し、かかるベルト部材を幅方向の所定の基準位置で継続的に回転させる(特許文献1)。
【0045】
また、特許文献2には、複数の搬送ローラのうちの一つをなすと同時に、その他の搬送ローラに対する配設角度を任意に変更可能なステアリングローラを備えたベルト搬送装置が示される。そして、ベルト部材の回転方向に関してステアリングローラの上流側又は下流側に隣接する搬送ローラが無指向性搬送部材として構成されている。搬送ローラが無指向性搬送部材として構成されることで、ステアリングローラに与える傾動量に対してベルト部材の蛇行量を敏感に反応させることができる。無指向性搬送部材は、ベルト部材を特定の搬送方向へ案内することはない。無指向性搬送部材がステアリングローラと近接している場合であっても、ステアリングローラがベルト部材に対して及ぼす寄り力を減殺することはない。従って、ステアリングローラに与える傾動量に対してベルト部材の蛇行量を敏感に反応させることができ、その結果、ベルト部材の幅方向への変位に関する制御性能が向上する。これにより、ベルト部材の幅方向への変位に関する制御性能を向上させることができる。
【0046】
図3は中間転写ベルトのステアリング制御機構の説明図である。図4はステアリングローラの動作の説明図である。図5はエッジセンサの動作の説明図である。図6はステアリングモータの制御の説明図である。図7はスリップローラを停止させた際と回転させた際の寄り速度の比較図である。図8はスリップローラを停止させた際と回転させた際の蛇行量の比較図である。
【0047】
図3の(a)に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト20上で各色トナー像を高精度に重ね合わせるため、いわゆるアクティブ・ステアリング方式によって中間転写ベルト20の走行状態の偏りを抑制している。回転する中間転写ベルト20の縁をエッジセンサ1で検出し、検出結果に基づいてステアリングモータ54の回転角度を設定して、ステアリングローラ22を傾動させている。ステアリングローラ22が傾動することで、図4の(b)、(c)に示すように、中間転写ベルト20に対して幅方向へ作用する補正外力を加えている。
【0048】
ステアリングローラ22の回転軸の一端は、装置フレーム50に固定的に設けられた軸受け部によって回転自在に支承され、他端は、揺動アーム51の一端に回転自在に支承されている。揺動アーム51は、回転軸52の周りに揺動自在に設けられており、ステアリングローラ22を支持している反対側の揺動端部が偏心カム53に圧接している。偏心カム53は、ステアリグモータ54に接続されており、ステアリングモータ54を回転させると、偏心カム53が回転して、これにより、ステアリングローラ22を支承した揺動アーム51の一端側が上下へ揺動する。ステアリングモータ54には、入力パルス数に応じて回転角度を高精度に位置決めて停止させる制御が可能なステッピングモータが用いられている。
【0049】
図3の(b)に示すように、マイクロコンピュータシステムから構成される制御部2は、中間転写ベルト20の走行位置をステアリングローラ22の長手方向の所定の基準位置に位置決めるように走行位置を修正する。
【0050】
ステアリングローラ制御手段の一例である制御部2は、中間転写ベルト20の幅方向への位置変動をエッジセンサ1で検出し、位置変動を相殺する方向にステアリングモータ54を回動させてステアリングローラ22の傾動量を変化させる。その結果、中間転写ベルト20の幅方向への移動を抑え、更にステアリングローラ22上における幅方向の位置を修正可能とし、結果として、中間転写ベルト20を蛇行させることなく一定の経路で安定的に走行させる。
【0051】
ステアリングローラ22に与える傾動量は、制御部2によって演算され、ステアリングモータ54に与えられる。制御部2は、エッジセンサ1の検出結果を取り込むとともに、検出結果、すなわち中間転写ベルト20の幅方向の現実の位置を所定の基準位置と比較し、ステアリングローラ22に与えるべき傾動量を演算する。
【0052】
図4の(a)に示すように、偏心カム53が所定の角度で停止し、その停止角度に対応してステアリングローラ22が、ほぼ水平(傾きがほぼゼロ)に保持された状態を想定する。この状態で、走行中の中間転写ベルト20がy1方向に偏ると、図4の(b)に示すようにステアリングローラ22が傾動され、y2方向に偏ると、図4の(c)に示すようにステアリングローラ22が傾動される。ステアリングローラ22を傾動させることによって、軸方向の寄り力が中間転写ベルト20に与えられる。この寄り力によって、ステアリングローラ22の長手方向における中間転写ベルト20の移動が抑制され、あるいは偏り量が相殺されて中間転写ベルト20が所定位置に押し戻される。
【0053】
図4の(b)に示すように、ステアリングモータ54を作動させて偏心カム53を時計廻りに偏り量に応じた所定角度回転させると、偏心カム53の偏心量に応じて揺動アーム51がθ1方向に揺動する。これにより、ステアリングローラ22の一端が揺動アーム51によって持ち上げられるため、その持ち上げ量に応じて、ステアリングローラ22に傾きが生じる。このとき、ステアリングローラ22に巻き付けられた中間転写ベルト20は、揺動アーム51にて持ち上げられた側に移動する。
【0054】
図4の(c)に示すように、ステアリングモータ54を作動させて偏心カム53を反時計廻りに偏り量に応じた所定角度回転させると、偏心カム53の偏心量に応じて揺動アーム51がθ2方向に揺動する。これにより、ステアリングローラ22の一端が揺動アーム51によって押し下げられるため、その押し下げ量に応じて、ステアリングローラ22に傾きが生じる。このとき、ステアリングローラ22に巻き付けられた中間転写ベルト20は、揺動アーム51にて押し下げられた反対側に移動する。
【0055】
図5の(a)に示すように、受光部91にはスリット91aが設けられている。発光部(90:図3)で発せられた光のうち、スリット91aを通過した光量を検出することにより、所定の電圧が出力される。中間転写ベルト20のエッジ部20aがスリット91aに位置した状態で幅方向yの変移量が変化すると、図5の(b)に示すように、ベルトエッジセンサ1の出力電圧が変化する。エッジ部20aが所定位置X0から変移してX1へ動いた場合を考えると、エッジ部20aがスリット91aを遮る量が減少して、その結果、受光部91で検出される光量が増加する。
【0056】
このとき、ベルトエッジセンサ1からは、電圧V1が出力される。この出力電圧V1の情報をもとに、図3の(b)に示す制御部2により、ステアリングモータ54の駆動パルス数が決定される。
【0057】
図6に示すように、ベルトエッジセンサ1の出力電圧に応じてステアリングモータ54へ出力する駆動パルス数が設定される。ベルトエッジセンサ1から電圧V1が出力されたとき、制御部2は、ステアリングモータ54の駆動パルス数としてP1を決定する。駆動パルス信号P1は、ステアリングモータ54に送られ、ステアリングモータ54はパルス数P1だけ矢印M1の方向に回転する。
【0058】
ところで、ステアリングローラ22を傾動させると、ステアリングローラ22による中間転写ベルト20の搬送方向が本来の回転方向に対して傾斜し、その結果として中間転写ベルト20に寄り力が作用する。そして、ステアリングローラ22に付与する傾動量(ステアリング量)を大きくするほど、中間転写ベルト20に作用する幅方向への寄り力が大きくなる。ステアリング量を大きくするほど、ステアリングローラ22の1回転当たりの中間転写ベルト20の移動量が大きくなって、その結果、中間転写ベルト20の幅方向の移動速度も大きくなる。
【0059】
図7はステアリングローラ22のステアリング角度と中間転写ベルト20のステアリングローラ22の軸方向の寄り速度との関係を表している。ステアリング角度は、図4の(b)に示す角度θ1を正方向とし、図4の(c)に示す角度θ2を負方向としている。図8はベルトエッジセンサ1が検出するベルトエッジの軌跡をプロットした図である。
【0060】
図7に示すように、実線で表される中間転写ベルト20の幅方向の移動速度(寄り速度)は、ステアリング量が大きくなるにつれて大きくなる。図8に示すように、実線1の曲線で表される中間転写ベルト20の蛇行量は、偏り量の減少に伴ってステアリング量を減少させるようにステアリング量を制御することによって、徐々に偏り0の状態へ収束する。
【0061】
<スリップローラ>
図1に示すように、駆動ローラ21とスリップローラとで支持された中間転写ベルト20の転写平面に画像形成部10Y、10M、10C、10Bkが配置されて各色のトナー像を中間転写ベルト20に一次転写する。スリップローラ25は、中間転写ベルト20の回転方向に関してステアリングローラ22の上流側に隣接させて配置され、中間転写ベルト20に従動回転して、中間転写ベルト20の回転方向を拘束して、特定の搬送方向へ案内する。
【0062】
ここで、スリップローラ25を強制的に回転停止させた状態で中間転写ベルト20を回転させて同様な実験を行った。スリップローラ25は、回転停止させることで、特許文献2に示されるものと同様に、中間転写ベルト20に対して無指向性となる。その結果を、図8に、従動回転させた場合(実線1)と比較して破線2で示す。
【0063】
図8に示すように、破線2で表されるスリップローラ25回転停止時の中間転写ベルト20の幅方向の移動速度は、実線で示される従動回転時と比較してステアリング量に対する応答性が向上している。そして、破線2で表されるスリップローラ25回転停止時の中間転写ベルト20の蛇行量は、ステアリング制御が開始されてから収束量が0に戻るまでの時間が実線1で示される従動回転時に比べて短縮されている。
【0064】
しかし、スリップローラ25の回転停止時は、ステアリングローラ22の傾動量に対して中間転写ベルト20の幅方向の移動の感度が良いため、ステアリングローラ22の微小な傾動量に対しても中間転写ベルト20が応答する。このため、中間転写ベルト20が偏り0の状態へ収束できず、ステアリングローラ22に沿った方向の振動が発生してしまう結果、中間転写ベルト20の安定走行時の蛇行量が増えて、走行安定性は低下している。これにより、各色トナー像の重ね合わせ誤差が増大している。つまり、中間転写ベルト20をステアリングローラ22方向に対して安定して走行させたい時には、ステアリングローラ22の制御量に対する制御感度の良さが逆効果になる。
【0065】
そこで、以下の実施例では、ステアリングローラの回転方向上流側又は下流側でステアリングローラと並列にベルト部材を支持して回転可能なスリップローラの回転状態を制御する。スリップローラ制御手段は、ベルト部材の偏りを修正していく過程で、スリップローラとベルト部材の周速度差を小さくするように、スリップローラを制御する。スリップローラの周速度をベルト部材の回転速度よりも低下させた状態でベルト部材の偏りの修正を開始させ、その後、スリップローラの周速度をベルト部材の回転速度に一致させた状態でベルト部材の偏りの修正を終了させる。制動機構を設けて、スリップローラの回転を制動して、スリップ状態と従動回転状態とを切り換える。制動機構によってスリップローラを停止させた状態でベルト部材の偏りの修正を開始させ、その後、徐々に制動を解除してスリップローラをベルト部材に従動させた状態でベルト部材の偏りの修正を終了させる。
【0066】
<実施例1>
図9は実施例1で用いる制動機構の説明図である。図10は実施例1の制御のフローチャートである。図11は実施例1のステアリング制御の説明図である。図12は偏り量の変化の説明図である。
【0067】
図3の(b)に示すように、制御部2は、スリップローラ制御手段の一例である制動機構55を制御することにより、スリップローラ(スリップローラ25)に第1の周速度と第2の周速度の少なくとも2つの周速度を設定できる。第1の周速度は、ベルト部材の走行速度と等しく設定され、スリップローラとベルト部材との間に滑りが発生しないため、ステアリングローラによるベルト部材の幅方向の位置変動を抑制する力を作用させることができる。これに対して、第2の周速度は、ベルト部材の走行速度とは異なり、スリップローラ(スリップローラ25)とベルト部材の間に滑りを発生させることで、ステアリングローラによるベルト部材の幅方向の位置変動に対し抑制する力を作用させない。
【0068】
制御部2は、ベルト部材の幅方向の位置が所定の範囲内に収まり安定走行状態であると判断した場合は、スリップローラを第1の周速度に設定して従動回転状態とする。一方、ベルト部材の走行開始時及び外部要因によって幅方向の位置が所定の偏り許容範囲外に変動した場合は、スリップローラを第2の周速度に設定した状態でステアリングローラによるベルト部材の幅方向の位置制御を行わせる。
【0069】
図9に示すように、実施例1の制動機構55は、係合カム61をスリップローラ25の係合部63に係合させてスリップローラ25の回転と停止を制御する。ステアリングローラ22は、直径30mm、長さ400mmである。スリップローラ25は、直径20mm、長さ400mm、アルミニウムの筒状部材で形成され、表面は鏡面加工後、ガラスビースでブラスト処理を行ってある。
【0070】
係合部63は、スリップローラ25の軸端部に固定されて一体に回転する。制動機構55は、制動モータ62を作動させて係合カム61を回転駆動して上下に突き出し量を変化させることにより、スリップローラ25の回転を停止させる。
【0071】
係合カム61が下に位置する時には係合部63に干渉しないため、スリップローラ25は中間転写ベルト20に従動回転する。係合カム61が上に位置する時は係合部63が係合カム61に干渉してスリップローラ25が制動される。
【0072】
図3を参照して図12に示すように、制御部2は、中間転写ベルト20の走行が開始されると同時にステアリングローラ22による蛇行制御を開始する(S11)。スリップローラ(25)の周速度をベルト部材(20)の回転速度よりも低下させた状態でベルト部材(20)の偏りの修正を開始させる。そして、スリップローラ(25)の周速度をベルト部材(20)の回転速度に一致させた状態でベルト部材(20)の偏りの修正を終了させる。
【0073】
蛇行制御の開始時、スリップローラ25の回転は停止されている(S12)。次に、制御部2は、ベルトエッジセンサ1で検出される中間転写ベルト20の蛇行量が所定値以下であるか否かを判定する(S13)。蛇行量が所定値を超えている間(S13のNO)はそのまま蛇行制御を継続し、蛇行量が所定値以下になった場合(S12のYES)に、スリップローラ25の従動回転を開始させる(S14)。
【0074】
次に、制御部2は、蛇行量が所定値以下の状態を保持しているか判定し(S15)、蛇行量が所定値を越えた場合(S15のNO)は、再びスリップローラ25の回転を停止させる(S12)。
【0075】
そして、蛇行量が所定範囲の状態を保持している状態(S15のYES)で、中間転写ベルト20を寄り制御しつつ画像形成を行う(S16)。そして、画像形成が終了すると(S17のYES)、寄り制御しつつ中間転写ベルト20を停止させる。
【0076】
このように、スリップローラ25の制動/制動解除の制御を行うことにより、図8に示すように、実線1で示したT2以降の安定走行時の蛇行量を所定範囲に確保しつつ、破線2で示した安定走行に至るまでの時間をT2からT1まで短縮できる。これにより、図11に示すような、収束が速やかであるにもかかわらず、収束後は外乱に対して安定した走行を維持できる中間転写ベルト20の蛇行制御を行うことができる。
【0077】
図12の(b)に示すように、スリップローラ25が中間転写ベルト20の走行に合わせて回転している場合には、中間転写ベルト20とスリップローラ25との間には静止摩擦力が働く。これに対して、図12の(a)に示すように、スリップローラ25が停止している場合は、スリップローラ25の表面を常に中間転写ベルト20が滑っていることになるため動摩擦力が働く。そのため、スリップローラ25が停止している場合の方が、同じステアリング角度でも寄り速度が速くなる。このため、図7に示すように、スリップローラ25を中間転写ベルト20の走行に合わせて回転している実線1の場合、回転が停止している破線2の場合よりもステアリング角度に対する寄り速度は小さくなる。
【0078】
図10に示すように、中間転写ベルト20の蛇行方向の制御を開始した直後は、過渡状態にあり、蛇行量も大きいため寄り速度を速くする必要がある。そこで、制御部2は、スリップローラ25の回転を停止して、中間転写ベルト20との間に動摩擦力が働くようにする。これにより、ステアリングローラ22のステアリング角度に対する中間転写ベルト20の応答性が向上するため、すばやく目標の位置へ中間転写ベルト20を移動させることができる。
【0079】
次に、中間転写ベルト20の蛇行量が所定範囲に収束した場合、安定状態にあり、蛇行量を極力小さくするため、寄り速度を遅くする必要がある。そこで、制御部2は、スリップローラ25が中間転写ベルト20の走行に追従して回転するようにし、中間転写ベルト20との間に静止摩擦力が働くようする。これにより、ステアリングローラ22のステアリング角度に対する中間転写ベルト20の応答性が悪化するため、中間転写ベルト20がローラ軸方向に対して移動しにくくなり、より安定した走行を行える。
【0080】
実施例1の制御によれば、ステアリング制御開始時や外部要因により中間転写ベルト20の幅方向に大きく変動した過渡状態では、中間転写ベルト20と搬送部材の抑制力を小さくする。これにより、ステアリングローラ22の傾動量に対する中間転写ベルト20の幅方向への移動の応答速度を高めてステアリングローラ22の傾動量に対する制御感度を高くする。
【0081】
しかし、中間転写ベルト20の走行状態がステアリングローラ22の軸方向に対して安定し、定常状態で制御を行う際は、中間転写ベルト20と搬送部材の抑制力を大きくする。これにより、ステアリング制御量と中間転写ベルト20のステアリングローラ22の軸方向の移動に対しての感度を低くする。
【0082】
このような構成により、中間転写ベルト20のステアリングローラ22の軸方向に対しての感度を変えることで、すばやく安定した中間転写ベルト20の走行へ移行することができる。また、安定状態では、中間転写ベルト20の安定度の高い中間転写ベルト20の走行を保つことができる。
【0083】
なお、スリップローラ25による中間転写ベルト20の静止摩擦による軸方向の拘束力を変化させる方法は、スリップローラ25の制動/制動解除には限られない。例えば、中間転写ベルト20に対するスリップローラ25の押し付け圧力を変化させてもよい。拘束力の異なる2種類の部材を切り換えてもよい。しかし、いずれも機構が複雑で中間転写ベルト20の幅方向の移動の外乱となるため、制動/制動解除が好ましい。
【0084】
<実施例2>
図13は実施例2で用いる制動機構の説明図である。実施例2では、図9に示す制動機構55が図13に示すステッピングモータ65に置き換えている以外は実施例1と同様に構成される。従って、図1〜図8、図10〜図12を用いて説明し、実施例1と重複する説明は省略する。
【0085】
図13に示すように、スリップローラ25は、スリップローラ(25)の回転速度を任意に設定可能なパルスモータの一例であるステッピングモータ65を接続される。ステッピングモータ65を制動機構として制御することで、スリップローラ25には、任意の周速度及び周速度変化を設定可能である。
【0086】
実施例2では、ステッピングモータ65を励磁ONすることでスリップローラ25に制動力を作用させて、中間転写ベルト20とスリップローラ25との間に動摩擦力を働かせることができる。また、ステッピングモータ65を励磁OFFすることで、スリップローラ25を空転させて中間転写ベルト20に従動回転させて、中間転写ベルト20とスリップローラ25との間に静止摩擦力を働かせることができる。
【0087】
また、ステッピングモータ65は、制動のみならず、加速方向に制御してスリップローラ25と中間転写ベルト20との間にスリップを発生させて動摩擦力を働かせることができる。
【0088】
また、駆動ローラ21とスリップローラ25とを等しく構成して別のステッピングモータで駆動し、2つのステッピングモータ65を同期させて等しい回転数で回転させることで、中間転写ベルト20の駆動を行ってもよい。
【0089】
また、スリップローラ25の停止/従動回転の切り替え時に、スリップローラ25と中間転写ベルト20との速度差が徐々に拡大し、あるいは徐々に等速度へ収束するように連続的に周速度を調整する制御を行ってもよい。これにより、動摩擦と静摩擦との切り替えが円滑になって中間転写ベルト20の走行状態にショックを与えないで済む。
【0090】
<実施例3>
図14は実施例3の画像形成装置の構成の説明図である。実施例3では、実施例1でステアリングローラ22の上流側に配置されたスリップローラ25がステアリングローラ22の下流側に配置される。それ以外の構成は実施例1と同一であり、スリップローラ25の周速度制御、静止摩擦と動摩擦の切り替えも実施例と等しく実行される。
【0091】
図14に示すように、実施例2の画像形成装置200は、中間転写ベルト20の走行に対してスリップローラ25の配置をステアリングローラ22の下流側に設置してある。このような構成において、図4の(b)、(c)で説明したステアリング角度に対するベルト部材の移動方向は逆転するが、図10を参照して説明したスリップローラ25の制御シーケンスは、実施例1で説明した内容と同様の制御で同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 ベルトエッジセンサ、2 制御部
11Y、11M、11C、11K 感光ドラム
17Y、17M、17C、17K 一次転写ローラ
20 中間転写ベルト、21 駆動ローラ、22 ステアリングローラ
25 スリップローラ、30 二次転写ローラ
50 装置フレーム、51 揺動アーム、52 回転軸、53 偏心カム
54 ステアリングモータ、57 制動機構
61 係合カム、63 係合部、65 ステッピングモータ
66 バネ、67 支持部材、90 発光部、91 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト部材と、回転する前記ベルト部材の偏りを検出する検出手段と、傾動して前記ベルト部材の偏りを修正可能なステアリングローラと、前記検出手段の出力に基づいて前記ステアリングローラの傾動を制御するステアリングローラ制御手段とを備えた画像形成装置において、
前記ステアリングローラと並列に前記ベルト部材を支持するとともに、前記ベルト部材との周速度差を変更可能なスリップローラと、
前記ステアリングローラ制御手段が前記ベルト部材の偏りを収束させていく過程で前記周速度差を小さくするように前記スリップローラを制御するスリップローラ制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記スリップローラ制御手段は、前記スリップローラの周速度を前記ベルト部材の回転速度よりも低下させた状態で前記ベルト部材の偏りの修正を開始させ、前記スリップローラの周速度を前記ベルト部材の回転速度に一致させた状態で前記ベルト部材の偏りの修正を終了させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記スリップローラ制御手段は、前記スリップローラの回転を制動する制動機構を有し、前記制動機構によって前記スリップローラを停止した状態で前記ベルト部材の偏りの修正を開始させ、制動を解除して前記スリップローラを前記ベルト部材に従動回転させた状態で前記ベルト部材の偏りの修正を終了させることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記スリップローラ制御手段は、前記ベルト部材の偏り量が所定範囲に収束すると前記スリップローラの制動を解除し、その後、前記ベルト部材の偏り量が所定範囲を超えると、前記スリップローラを制動して停止させることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記スリップローラを制動している間は画像形成を待機させ、前記スリップローラの制動を解除した状態で画像形成を実行することを特徴とする請求項3又は4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記スリップローラ制御手段は、前記スリップローラの回転速度を任意に設定可能なパルスモータであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−128180(P2011−128180A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283607(P2009−283607)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】