説明

画像形成装置

【課題】稀に発生する軽度の故障でサービスマンが呼び出されてしまうのを防止でき、サービス効率やユーザの作業効率の向上が図られた画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、画像形成に係る操作を制御するとともに故障を検知する制御部21と、故障の検知/不検知に係る情報を故障の種類別に記憶する記憶部24と、画像形成に係る情報を表示するとともに操作入力を受け付ける操作パネル10と、を備え、制御部21は、故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知したとき故障についての情報を操作パネル10で報知させるとともに装置を停止させ、所定期間内に同じ故障を検知しなかったとき記憶部24に記憶した当該故障の検知に係る情報を不検知の情報に変更する。これにより、画像形成装置1は故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかったとき、その故障に係る直近の発生履歴を消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタに代表される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の画像形成装置の一般的な構成は、原稿表面の画像を読み取る画像読取部や、原稿を画像読取部に向けて送り出す原稿搬送装置、印刷前の用紙を積載して収容する給紙カセット、トナー像を形成する画像形成部、トナー像を用紙に転写する転写部、未定着トナー像を用紙に定着させる定着部などからなる。
【0003】
このような画像形成装置は他の電子機器や家電製品などと同様、構成要素の各所で故障が発生する場合がある。そして、画像形成装置には故障が発生した際にその故障を検知し、故障の種類やその発生箇所を識別する機能を備えたものがある。故障を検知し、識別する機能を備えた画像形成装置は故障の検知とともに装置の動作を停止したり、表示パネル等を通じて故障に係る情報をユーザに報知したりするのが一般的である。
【0004】
ユーザは画像形成装置の表示パネル等に表示された故障情報に基づき故障からの復旧を試みることになる。そして、ユーザが対応できない故障の場合、画像形成装置はサービスコール、すなわちサービスマンの呼び出しをユーザに報知する。
【0005】
ここで、誤検知などにより、サービスマンを呼ぶまでもない故障でサービスマンを呼び出してしまう問題が発生することがある。そこで、このような問題の発生防止を図った画像形成装置が提案され、その一例を特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された画像形成装置はサービスマンを呼ぶまでもない、電源のON/OFFによって復旧する可能性の高い故障に対して自動的に且つ適切にリブート(再起動、リセット)するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−219247号公報(第9頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された画像形成装置の場合、リブート対象となる故障を印刷枚数に基づいて判定しているので、使用頻度が比較的低い画像形成装置においては稀に発生する軽度の故障がリブート対象となる故障であると判定されない虞がある。これにより、サービスマンを呼ぶまでもない軽度の故障により、サービスマンが呼び出されてしまうという問題が発生する可能性がある。その結果、ユーザはサービスマンによる対応を待つことになり作業効率が低下する虞がある。また、サービスマンにとってもサービス効率が低下する虞がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、稀に発生する軽度の故障でサービスマンが呼び出されてしまうのを防止することができ、サービス効率やユーザの作業効率の向上が図られた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は画像形成装置において、画像形成に係る操作を制御するとともに故障を検知する制御部と、故障の検知/不検知に係る情報を故障の種類別に記憶する記憶部と、画像形成に係る情報を表示するとともに操作入力を受け付ける操作パネルと、を備え、前記制御部は、故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知したとき故障についての情報を前記操作パネルで報知させるとともに装置を停止させ、所定期間内に同じ故障を検知しなかったとき前記記憶部に記憶した当該故障の検知に係る情報を不検知の情報に変更することとした。
【0010】
この構成によれば、画像形成装置は故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知したとき、故障についての情報をユーザに報知するとともに装置を自動的に停止する。また、画像形成装置は故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかったとき、その故障に係る直近の発生履歴を消去する。
【0011】
なお、上記「所定期間」は予め定められた任意の時間であり、例えば10時間、30時間といった時間としても構わないし、1日、3日といった日数としても構わないし、時間と日数を組み合わせても構わない。この「所定期間」を、後述する実施形態では例えば故障の程度が4段階にランク付けされた最も重度の故障から順に「10時間」、「20時間」、「30時間」、「40時間」としているが、これらの時間に限定されるわけではない。
【0012】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかった状態が所定回数を超えたとき故障についての情報を前記操作パネルで報知させるとともに装置を停止させることとした。この構成によれば、画像形成装置は所定期間内に同じ故障を二度検知するという条件に代わる条件に基づき、故障についての情報をユーザに報知するとともに装置を自動的に停止する。
【0013】
なお、上記「所定回数」は予め定められた任意の回数であり、例えば2回、3回といった回数として構わない。この「所定回数」を、後述する実施形態では例えば故障の程度が4段階にランク付けされた最も重度の故障から順に「3回」、「4回」、「6回」、「8回」としているが、これらの回数に限定されるわけではない。
【0014】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知したとき、または故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかった状態が所定回数を超えたとき前記操作パネルを用いた画像形成装置のリセットを受け付けることとした。この構成によれば、例えば意図せず所定時間内に軽度の故障を二度検知してしまった場合、ユーザは操作パネル上で画像形成装置のリセットを操作できる。
【0015】
また、上記構成の画像形成装置において、前記所定期間及び/または前記所定回数が、故障の種類別に異なることとした。この構成によれば、故障の頻度や程度により画像形成装置を自動的に停止するタイミングが変わる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成によれば、故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかったときにはその故障に係る直近の発生履歴を消去するので、稀に発生する軽度の故障でサービスマンが呼び出されてしまうの防止することができる。その結果、ユーザはサービスマンの対応を待つことなく画像形成装置を用いた作業を円滑に進めることができる。また、サービスマンも無駄に呼び出されることが減少する。このようにして、サービス効率やユーザの作業効率の向上が図られた画像形成装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置の故障検知に係る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1〜図3に基づき説明する。
【0019】
最初に、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図1及び図2を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の模型的垂直断面正面図、図2は画像形成装置の構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、中間転写ベルトを用いてトナー像を用紙に転写するカラー印刷タイプのものである。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の内部下方には給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3はその内部に印刷前のカットペーパーなどの用紙Pを積載して収容している。そして、この用紙Pは図1において給紙カセット3の左上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット3は本体2の正面側から水平に引き出すことが可能である。
【0021】
本体2の内部であって給紙カセット3の左方には第1用紙搬送部4が備えられている。第1用紙搬送部4は本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。そして、第1用紙搬送部4は給紙カセット3から送り出された用紙Pを受け取り、本体2の左側面に沿って垂直上方に二次転写部5まで搬送する。
【0022】
給紙カセット3の上方であって第1用紙搬送部4が形設された本体2の左側面とは反対側の側面である右側面の箇所には手差し給紙部6が備えられている。手差し給紙部6には給紙カセット3に入っていないサイズの用紙や厚紙、OHPシートのように1枚ずつ手で送り込みたいものが載置される。
【0023】
手差し給紙部6の左方には第2用紙搬送部7が備えられている。第2用紙搬送部7は給紙カセット3のすぐ上方にあって、手差し給紙部6から第1用紙搬送部4まで略水平に延びて第1用紙搬送部4に合流している。そして、第2用紙搬送部7は手差し給紙部6から送り出された用紙を受け取り、略水平に第1用紙搬送部4まで搬送する。
【0024】
一方、画像形成装置1の本体2の上面には原稿搬送装置8が、その下方の本体2内部には画像読取部9が備えられている。ユーザが原稿の複写を行う場合には、文字や図形、模様などの画像が描かれた原稿を、原稿搬送装置8に積載したり、画像読取部9上面のコンタクトガラス9a上に載置したりする。原稿搬送装置8では1枚或いは複数枚の原稿が1枚ずつ分離して送り出され、画像読取部9によってその画像が読み取られる。コンタクトガラス9a上の原稿に対しては、画像読取部9内で光を走査させることによって画像が読み取られる。
【0025】
原稿画像の読み取り、すなわち画像形成の開始は本体2の上部であって画像読取部9の正面側に備えられた操作パネル10を用いて実行される。操作パネル10はユーザによる印刷に使用する用紙の種類やサイズ、部数、拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件設定や、ファクシミリにおける送信先設定などを受け付ける。
【0026】
原稿の画像データの情報は第2用紙搬送部7の上方であって、本体2の中央部に配置された露光部11に送られる。露光部11により、画像データに基づいて制御されたレーザ光Lが画像形成部12に向かって照射される。
【0027】
露光部11の上方には計4台の画像形成部12が、さらにそれら各画像形成部12の上方には中間転写体を無端ベルトの形で用いた中間転写ベルト13が備えられている。中間転写ベルト13は複数のローラに巻き掛けられて支持され、図示しない駆動装置により図1において時計方向に回転する。
【0028】
4台の画像形成部12は、図1に示すように中間転写ベルト13の回転方向に沿って回転方向上流側から下流側に向けて一列にして配置された所謂タンデム方式である。4台の画像形成部12とは、上流側から順にイエロー用の画像形成部12Y、マゼンタ用の画像形成部12M、シアン用の画像形成部12C、及びブラック用の画像形成部12Bである。これらの画像形成部12には、各色に対応する現像剤供給容器及び搬送手段(図示せず)により現像剤(トナー)が補給される。
【0029】
なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、画像形成部12の「Y」「M」「C」「B」の識別記号は省略するものとする。また、画像形成装置1はカラー印刷と白黒印刷とを選択可能であるが、特に指定する場合を除きカラー印刷を実施するものとする。
【0030】
各画像形成部12では、露光部11によって照射されたレーザ光Lにより原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナー像は、各画像形成部12の上方に備えられた一次転写部14で、中間転写ベルト13表面に一次転写される。そして、中間転写ベルト13の回転とともに所定のタイミングで各画像形成部12のトナー像が中間転写ベルト13に転写されることにより、中間転写ベルト13表面にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0031】
中間転写ベルト13が用紙搬送路に懸かる箇所には二次転写部5が配置されている。中間転写ベルト13表面のカラートナー像は第1用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた用紙Pに、二次転写部5に形成される二次転写ニップ部で転写される。
【0032】
二次転写後、中間転写ベルト13表面に残留するトナーなどの付着物は中間転写ベルト13に対してイエロー用の画像形成部12Yの回転方向上流側に設けられた中間転写ベルト13用のクリーニング装置15によってクリーニングされ、回収される。
【0033】
二次転写部5の上方には定着部16が備えられている。二次転写部5にて未定着トナー像を担持した用紙Pは定着部16へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0034】
定着部16の上方には用紙案内装置17が備えられている。定着部16から排出された用紙Pは両面印刷を行わない場合、用紙案内装置17から画像形成装置1の上部に設けられた胴内用紙排出部18に排出される。
【0035】
用紙案内装置17から胴内用紙排出部18に向かって用紙Pが排出されるその排出口部分はスイッチバック部19としての機能を果たす。両面印刷を行う場合にはこのスイッチバック部19において定着部16から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは用紙案内装置17を通過し、定着部16の左方、及び転写部5の左方に設けられた両面印刷用用紙搬送路20を通して下方に送られ、再度第1用紙搬送部4を経て二次転写部5へと送られる。
【0036】
また、画像形成装置1は装置全体の動作制御のため、図2に示すようにその本体2内にCPU22やその他の図示しない電子部品で構成された制御部21を備えている。制御部21は中央演算処理装置であるCPU22と画像処理部23とを利用し、記憶部24に記憶、入力されたプログラム、データに基づき画像読取部9、画像形成部12、中間転写ベルト13、定着部16などといった構成要素を制御して一連の画像形成動作を実現する。また、制御部21はその内部(外部でも良い)に時間を計時する計時部25を備え、故障発生日時などの各種時間を把握できる。
【0037】
そして、画像形成装置1はその装置各部に温度センサ16aや用紙検知スイッチ26などといった各種センサを備えている。各種センサは装置内の各部における温度や湿度、用紙等の障害物の有無などを電気信号として出力する。制御部21は各種センサの出力信号に基づいて故障を検知する。また、制御部21はポリゴンモータ11a、ドラムモータ12a、ベルトモータ13aといったモータなどの機能部材の動作電流、電圧等や、記憶部24に記憶されたデータの異常等に基づいて故障を検知することもある。
【0038】
制御部21が検知する故障は種類別にランク付けがなされている。例えば、定着部16に係る故障が最も重度の故障である設定され、続いて記憶部24に記憶されたデータの異常、露光部11や画像形成部12等のモータなど駆動系のトラブル、各種スイッチ異常、搬送系のトラブルといった順に各種故障が種類別にランク付けされている。制御部21はこれらの故障を種類別に故障コードを割り当てるとともに、故障の検知/不検知に係る情報、故障発生日時、故障発生回数等を記憶部24に記憶させている。なお、故障の検知/不検知に係る情報は故障フラグが立っている、或いは立っていないというデータにして故障の種類別に記憶されている。
【0039】
ここで、制御部が検知する故障の一例をランクごとに説明する。
【0040】
例えば、最も重度の故障と設定される定着部16に係る故障について説明する。例えば、定着部16は熱ローラや加圧ローラの温度を検知するための温度センサ16a(例えばサーミスタを含む)を備えている。例えば、温度センサ16aは熱ローラと接するように設けられる(非接触式でもよい)。制御部21は温度センサ16aと接続され、温度センサ16aの出力に基づいて熱ローラの温度を把握する。そして、例えば、制御部21は熱ローラ内のヒータ16bへの通電を制御して、画像形成時に熱ローラをトナー溶融における適切な温度(例えば180〜200°C程度)で維持する。
【0041】
もし、制御部21と温度センサ16aを接続する導線に断線があれば、制御部21は熱ローラの温度を検知できない。これにより、定着部16では制御部21がヒータ16bによる加熱を続けさせて熱ローラ及び定着部16自体が過昇温状態となり、定着部16内部及びその周辺の部材の溶融等が生ずる可能性がある。そこで、制御部21は一定時間ヒータ16bを点灯させても温度センサ16aによる温度上昇が確認できなければ、断線発生として故障を検知する。
【0042】
また、制御部21はヒータ16bの通電を制御するが、例えばヒータ16bへの通電をOFFにしても温度センサ16aからの出力を見て熱ローラが温度上昇し続けていれば、定着部16における故障発生と判断する。これは、ヒータ16bの通電をON/OFFする構成要素(通電制御部16c、例えばスイッチで構成)の故障によって、熱ローラの温度が上昇し続ける可能性があるためである。
【0043】
また、制御部21がヒータ16bへの通電を行っても、熱ローラの温度が一定以上上昇しない場合等も故障であると検知しても良い。適切にトナーを溶融できず、画像形成を適切に行えないためである。
【0044】
定着部16は熱を扱うので、過昇温によって定着部16の交換等、手間のかかるメンテナンスとなり得る。そこで、本実施形態では、定着部16に関する故障が最も重度の故障と定義している。
【0045】
次に、本実施形態で、定着部16の故障よりも1ランク下の故障としてランク付けされる記憶部24に記憶されたデータの異常について説明する。
【0046】
例えば、記憶部24には画像形成における各種パラメータ等のデータや、各部を制御するためのプログラムが記憶されている。例えば、画像形成装置1のメンテナンスや寿命管理の観点から累計の印刷枚数が記憶される。また、露光部11によって照射されたレーザ光の走査を行うポリゴンモータ11aの回転速度を示すデータや、帯電装置により感光体ドラムを帯電させる電圧、トナーを飛翔させる際の現像装置での電圧、一次転写部14での電圧等の各種電圧を示すデータがパラメータを示すデータとして記憶部24に記憶されている。また、各種電圧を印加するタイミング等を定めるプログラムも記憶されている。
【0047】
制御部21は記憶部24に記憶されたパラメータのデータやプログラムを用いて画像形成を行うことで印刷を適切に実行する。また、記憶部24に累計の印刷枚数を記憶させておくことにより、定着部16や画像形成部12等の構成要素のうち寿命に到達した要素を把握して交換時期を知ることができる。
【0048】
記憶部24はこれらのパラメータのデータやプログラムを不揮発的に記憶するが、例えば静電気やノイズ等によって記憶部24内のデータが壊れてしまう場合がある。また、記憶部24での回路の短絡等によって、記憶部24の回路自体が壊れている場合もある。
【0049】
これにより、例えば累計印刷枚数等のデータを記憶できず、画像形成装置1や画像形成装置内の各部の寿命管理を適切に実行できない虞がある。また、電圧等のパラメータのデータが破損すれば、形成される画像が乱れたり、場合によっては印刷機能が完全に失われてしまったりする場合もある。そこで、実施形態では、記憶部24に記憶されたデータの破損を定着部16に関する故障の1つ下のランクに定義する。
【0050】
制御部21は記憶部24のデータ異常検知のため、主電源投入時や一定周期で記憶部24に記憶される一定領域のデータのチェックサムを行う。各回のチェックサムによって得られた値が常に同じ値を取ることで、制御部21は記憶部24内のデータ、プログラムが正常であることを確認することができる。そして、制御部21はチェックサムの値が一定の値を示さない場合、データの破損(場合により、改変も検知できる)があり、故障と検知する。
【0051】
次に、本実施形態において、記憶部24のデータ異常、故障よりも1ランク下の故障としてランク付けされる露光部11や画像形成部12等の各モータなど駆動系のトラブル(故障)について説明する。
【0052】
例えば、画像形成装置内1は、露光部11内に設けられ、感光体ドラムの走査、露光を行うため、レーザ光を反射するポリゴンミラーを回転させるポリゴンモータ11aを備えている。また、各感光体ドラムを回転させるドラムモータ12aや、中間転写ベルト13を回転させるベルトモータ13a、定着部の熱ローラ等を回転させる定着モータ16d、搬送路内の搬送ローラ対を回転させる搬送モータ27等の各種モータが画像形成装置1内に設けられている。制御部21はこれらの各モータの回転速度を制御することができる。
【0053】
さらに、制御部21は各モータの回転速度を把握することができる(例えば、各モータにはロータリエンコーダ、ホール素子等が設けられ、その出力を制御部21が把握する)。ここで、各モータのうち何れかの回転速度に異常があれば、印刷不可ではないが適切な画像形成ができないことがある。例えば、ポリゴンモータ11aやドラムモータ12aやベルトモータ13aの回転速度に異常があれば、トナー像の形成や転写にずれが生ずる虞がある。また、定着モータや搬送モータに異常があれば、用紙の詰まり(ジャム)や折れ等が生ずることもある。
【0054】
そこで、本実施形態では、各モータの回転における異常を記憶部24に記憶されたデータ等の破損の1つ下のランクに定義する。例えば、制御部21は何れかのモータで異常な回転速度(例えば各モータに定められた回転速度との差が一定値以上)の状態が続く場合、故障発生と検知する。
【0055】
次に、本実施形態で、モータの回転異常よりも1ランク下の故障としてランク付けされる用紙搬送を検知するスイッチ異常や搬送系のトラブルの検知について説明する。
【0056】
例えば、画像形成装置1内にはレジストローラ対の手前や、給紙カセット3の下流側、定着部16の上流側及び下流側等に、用紙Pの到達や通過を検知するための用紙検知スイッチ26が設けられている。例えば、用紙検知スイッチ26は透過型の光センサを用いて構成されるが、光センサに限られず、用紙Pの到達、通過を検知できればよい。例えば、用紙検知スイッチ26は用紙Pと接し回動する回動板と、回動板を挟むように発光部と受光部が設けられる光センサとを備えている。例えば、用紙検知スイッチ26の箇所に用紙Pが存在しない状態では発光部からの光が回動板に遮られるが、用紙Pが存在して回動板に接すると回動板が動き、発光部からの光が受光部に到達する。すなわち、用紙検知スイッチ26は、用紙Pの存在の有無によって出力信号のHigh、Lowが切り替わるスイッチである。
【0057】
制御部21は各用紙検知スイッチ26の出力を受け、機内での用紙搬送状況を把握する。例えば、1枚の用紙Pに着目すると、給紙カセット3から用紙搬送方向下流側に向かって順番に用紙検知スイッチ26の出力が変化することを確認して、制御部21は用紙Pが適切に搬送されているか否かを把握する。
【0058】
また、例えば、制御部21はある用紙検知スイッチ26が用紙Pの到達を検知(用紙検知スイッチ26の出力変化、例えばHigh→Lowへの変化)すべき時間から許容時間が経過しても用紙Pの到達を検知しない場合、用紙ジャム発生と判断する。或いは、制御部21はある用紙検知スイッチ26が用紙Pの通過を検知(用紙検知スイッチ26の出力変化、例えばLow→Highへの変化)すべき時間から許容時間が経過しても用紙Pの通過を検知しない場合、用紙ジャム発生と判断する。
【0059】
さらに、用紙検知スイッチ26自体でも故障は発生することがある。例えば、ジャム処理(用紙Pの搬送路からの除去処理)の場合、用紙Pを介して用紙検知スイッチ26に過負荷がかかることによる破損が考えられる。また、各用紙検知スイッチ26から制御部21への導線での断線等が発生することもある。そして、制御部21は各用紙検知スイッチ26からの出力を受けられなくなれば、印刷が不可能となるわけではないが用紙Pの搬送状況を把握し難くなる。
【0060】
例えば各用紙検知スイッチ26の出力が全く変化しないとき(例えばLow状態を維持)、制御部21は用紙検知スイッチ26に異常が発生したことを検知、把握する。また、例えば搬送方向に並んだ3つの用紙検知スイッチ26のうち上流側及び下流側の2つの用紙検知スイッチ26が用紙Pの到達等を検知しているにもかかわらず、中間の用紙検知スイッチ26の出力が変化しないとき、制御部21は用紙検知スイッチ26に異常が発生したことを検知、把握する。このように、本実施形態では、用紙搬送に係る各用紙検知スイッチ26の故障を、モータにおける故障の1つ下のランクに定義する。
【0061】
なお、上記の故障のランク付けは一例であり、故障とランクは適宜設定できる。例えば、上記以外の他の故障を何れかのランクに含ませても良い。また、ランクを更に複数設けても良い。また、上記のランク付けにおける順位を異ならせても良い。
【0062】
また、記憶部24は故障の発生頻度を計る目安としての時間を予め定められた所定時間として故障の種類別に記憶している。この所定時間としては例えば故障の程度が4段階にランク付けされた最も重度の故障から順に10時間、20時間、30時間、40時間などが設定され、記憶部24に記憶されている。制御部21は故障フラグが立っているか否かと、その故障に係る上記所定時間とを確認することで故障の発生頻度を識別することができる。また、記憶部24はこの所定時間に関連して、故障を検知した後、所定時間内に同じ故障を検知しなかった回数を予め定められた所定回数として故障の種類別に記憶している。この所定回数としては例えば故障の程度が4段階にランク付けされた最も重度の故障から順に3回、4回、6回、8回などが設定され、記憶部24に記憶されている。
【0063】
一方、記憶部24は故障に係るサービスセンターの名称、電話番号等の連絡先も記憶している。
【0064】
次に、画像形成装置1の故障検知に係る動作について、図2に加えて図3に示すフローに沿って説明する。図3は画像形成装置の故障検知に係る動作を示すフローチャートである。
【0065】
図3に示す動作フローのスタートは例えば画像形成装置1の主電源投入後や省電力モードからの復帰時など、制御部21が駆動を開始した時点である。画像形成装置1は常時、各種センサ25等からの出力信号や記憶部24における記憶状態などに基づいて異常、すなわち故障が発生していないかどうかを判別している(図3のステップ#101)。制御部21は故障を検知した場合(ステップ#101のYes)、異常情報の発信先に基づいて故障の種類を確認する(ステップ#102)。
【0066】
続いて、制御部21は記憶部24に記憶された情報をチェックし、同じ種類の故障フラグが既に立っているか否かを判定する(ステップ#103)。これにより、制御部21は先に故障を検知した後、所定時間内に同じ種類の故障が再発したか否かを識別することができる。
【0067】
ステップ#103において同じ種類の故障フラグが立っていない、すなわち所定時間内に同じ種類の故障が再発していない場合(ステップ#103のNo)、制御部21は故障を検知した後、所定時間内に同じ故障を検知しなかった状態が所定回数を超えたか否かを判定する(ステップ#104)。所定回数を超えていない場合(ステップ#104のNo)、制御部21は画像形成装置1のリセット動作を実行する(ステップ#105)。そして、制御部21は故障フラグを立てて記憶部24に記憶し、故障の発生頻度を計測すべくタイマをスタートさせる(ステップ#106)。引き続き制御部21は故障が発生していないかどうかを判別する(ステップ#101)。
【0068】
画像形成装置1において故障が発生していない場合(ステップ#101のNo)、制御部21は故障の種類別に予め定められた所定時間を経過したか否かを判定する(ステップ#107)。ステップ#106でスタートさせたタイマについて所定時間が経過していない場合(ステップ#107のNo)、制御部21はそのまま再び故障が発生していないかどうかを判別する(ステップ#101)。所定時間が経過した場合(ステップ#107のYes)、制御部21はステップ#106で立てた故障フラグをクリアし、故障フラグが立っていない状態にする。
【0069】
すなわち、制御部21は故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかったとき記憶部24に記憶した当該故障の検知に係る情報を不検知の情報に変更する。これにより、画像形成装置1は故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかったとき、その故障に係る直近の発生履歴を消去する。
【0070】
一方、ステップ#103において同じ種類の故障フラグが立っていない、すなわち所定時間内に同じ種類の故障が再発した場合(ステップ#103のYes)、或いは故障を検知した後、所定時間内に同じ故障を検知しなかった状態が所定回数を超えた場合(ステップ#104のYes)、制御部21は故障についての情報、すなわち故障コードやサービスセンターの連絡先などを操作パネル10で報知させ、画像形成装置1を停止させる(ステップ#109)。そして、故障検知に係る動作フローが終了する(図3のエンド)。
【0071】
すなわち、画像形成装置1は故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知したとき、故障についての情報をユーザに報知するとともに自動的に停止する。また、画像形成装置1は所定期間内に同じ故障を二度検知するという条件に代わる条件に基づき、故障についての情報をユーザに報知するとともに自動的に停止する。これにより、同じ故障を複数回検知しているにもかかわらず自動的にリセット動作が繰り返される状態が延々と続くのを防止することが可能である。
【0072】
なお、ステップ#109において、制御部21は操作パネル10を用いた画像形成装置1のリセットを受け付けることにしても構わない(ステップ#109の括弧書き)。これにより、例えば意図せず所定時間内に軽度の故障を二度検知してしまった場合、ユーザは操作パネル10上で画像形成装置1のリセットを操作できる。
【0073】
上記のように、画像形成装置1は故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかったときにはその故障に係る直近の発生履歴を消去するので、稀に発生する軽度の故障でサービスマンが呼び出されてしまうの防止することができる。その結果、ユーザはサービスマンの対応を待つことなく画像形成装置1を用いた作業を円滑に進めることができる。また、サービスマンも無駄に呼び出されることが減少する。このようにして、サービス効率やユーザの作業効率の向上が図られた画像形成装置1を提供することが可能である。
【0074】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0075】
例えば、本発明の上記実施形態における画像形成装置1は、中間転写ベルトを用いてトナー像を用紙に転写するカラー印刷用の画像形成装置であるが、発明の適用対象となる画像形成装置がこのような種類に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを用いない画像形成装置や白黒印刷用の画像形成装置であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、画像形成装置全般において利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 画像形成装置
10 操作パネル
11 露光部
11a ポリゴンモータ
12 画像形成部
12a ドラムモータ
13 中間転写ベルト
13a ベルトモータ
16 定着部
16a 温度センサ
16b ヒータ
16d 定着モータ
21 制御部
24 記憶部
25 計時部
26 用紙検知スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成に係る操作を制御するとともに故障を検知する制御部と、
故障の検知/不検知に係る情報を故障の種類別に記憶する記憶部と、
画像形成に係る情報を表示するとともに操作入力を受け付ける操作パネルと、を備え、
前記制御部は、故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知したとき故障についての情報を前記操作パネルで報知させるとともに装置を停止させ、所定期間内に同じ故障を検知しなかったとき前記記憶部に記憶した当該故障の検知に係る情報を不検知の情報に変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかった状態が所定回数を超えたとき故障についての情報を前記操作パネルで報知させるとともに装置を停止させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知したとき、または故障を検知した後、所定期間内に同じ故障を検知しなかった状態が所定回数を超えたとき前記操作パネルを用いた画像形成装置のリセットを受け付けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定期間及び/または前記所定回数が、故障の種類別に異なることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−131536(P2011−131536A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294711(P2009−294711)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】